<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出装置10の部分的な構成図である。本実施形態の液体吐出装置10は、液体の例示であるインクを媒体12に吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体12は、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象を媒体12とすることもできる。図1に示す液体吐出装置10は、制御ユニット20と搬送機構22とキャリッジ24と液体吐出ヘッド26とを具備する。図1では、1個の液体吐出ヘッド26をキャリッジ24に搭載した場合を例示しているが、これに限られず、複数個の液体吐出ヘッド26をキャリッジ24に搭載してもよい。液体吐出装置10にはインクを貯留する液体容器14(カートリッジ)が装着される。
液体容器14は、液体吐出装置10の本体に着脱可能な箱状の容器からなるインクタンクタイプのカートリッジである。なお、液体容器14は、箱状の容器に限られず、袋状の容器からなるインクパックタイプのカートリッジであってもよい。また、インクを補充可能なインクタンクを液体容器14とすることもできる。液体容器14に貯留されるインクは、黒色インクであってもよく、カラーインクであってもよい。液体容器14のインクは、ポンプ(図示略)によって液体吐出ヘッド26に供給(圧送)される。
制御ユニット20は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置202と半導体メモリー等の記憶装置203とを含んで構成され、記憶装置203に記憶された制御プログラムを制御装置202が実行することで液体吐出装置10の各要素を統括的に制御する。図1に示すように、媒体12に形成すべき画像を表す印刷データGがホストコンピューター等の外部装置(図示略)から制御ユニット20に供給される。制御ユニット20は、印刷データGで指定された画像が媒体12に形成されるように液体吐出装置10の各要素を制御する。
搬送機構22は、制御ユニット20による制御のもとで媒体12をY方向に搬送する。液体吐出ヘッド26は、略箱状のキャリッジ24に搭載され、液体容器14から供給されるインクを制御ユニット20による制御のもとで媒体12に吐出する。制御ユニット20は、Y方向に交差するX方向に沿ってキャリッジ24を往復させる。搬送機構22による媒体12の搬送とキャリッジ24の反復的な往復とに並行して液体吐出ヘッド26が媒体12にインクを吐出することで媒体12の表面に所望の画像が形成される。なお、液体容器14を液体吐出ヘッド26とともにキャリッジ24に搭載することも可能である。
液体吐出ヘッド26の吐出面260(媒体12との対向面)には、ノズル列が配置される。ノズル列は、Y方向に沿って直線状に配列された複数のノズルNの集合である。ノズルNからは、液体容器14から供給されるインクが吐出される。なお、ノズル列の数や配置は、例示したものに限られず、液体吐出ヘッド26の吐出面260に、2つ以上のノズル列を配置してもよく、複数のノズル列を例えば千鳥配列またはスタガ配列とすることも可能である。X-Y平面(媒体12の表面に平行な平面)に垂直な方向をZ方向と表記する。
図2は、液体吐出装置10の機能的な構成図である。図2では、搬送機構22やキャリッジ24等の図示を便宜的に省略している。制御装置202が制御プログラムを実行することで、制御装置202が駆動信号生成部40と制御部50として機能する。制御部50は、駆動信号生成部40を制御する。記憶装置203には、データテーブルCが記憶されている。
駆動信号生成部40は、駆動信号COMを生成する。駆動信号COMは、所定の周期ごとに駆動パルス(駆動波形)を含む電圧信号である。すなわち駆動信号COMは、例えば後述する図6や図7に示すように、基準電位VMに対して電位差を有する電位を含む電圧信号である。駆動パルスの波形形状は任意である。例えば駆動パルスの波形形状を変えることでノズルNから吐出されるインクの吐出重量を変えることができる。また、駆動信号COMの1周期Tに複数の駆動パルスを含む構成や、波形が相違する複数の駆動信号COMを利用する構成も採用され得る。駆動信号COMを生成するためのデータ(例えば電位データ)は、データテーブルCに記憶されている。制御部50は、各駆動信号COMを生成する場合には、駆動信号COMの波形に対応するデータをデータテーブルCから読み出して、駆動信号生成部40によって駆動信号COMを生成する。
図2に示すように、液体吐出ヘッド26は、駆動部262と液体吐出部264を具備する。駆動部262は、制御ユニット20による制御のもとで液体吐出部264を駆動する。液体吐出部264は、液体容器14から供給されるインクを複数のノズルNから媒体12に吐出する。液体吐出部264は、複数のノズルNに対応する複数の吐出部266(吐出セグメント)を包含する。各吐出部266は、駆動部262から供給される駆動信号Vに応じてノズルNからインクを吐出したり、インクを吐出しない程度に吐出部266のインクを微振動させたりすることができる。
制御ユニット20が受信した印刷データGに応じてインクを吐出する場合は、印刷データGに応じて駆動信号生成部40が生成した駆動信号COMと、印刷データGに応じてインクの吐出の有無を指示する選択信号SIとが制御ユニット20から駆動部262に供給される。駆動部262は、駆動信号COMと選択信号SIとに応じた駆動信号Vを吐出部266ごとに生成して複数の吐出部266に並列に出力する。具体的には、駆動部262は、複数の吐出部266のうち選択信号SIがインクの吐出を指示する吐出部266には駆動信号COMを駆動信号Vとして供給し、選択信号SIがインクの非吐出を指示する吐出部266には基準電位VMを駆動信号Vとして供給する。
図3は、液体吐出ヘッド26をZ方向の負側(媒体12とは反対側)からみた場合の液体吐出部264の流路構成の模式図である。図4は、任意の1個の吐出部266(吐出セグメント)に着目した液体吐出部264の断面図であり、液体吐出部264をX-Z平面で切断した場合の断面図である。図5は、吐出部266を拡大した断面図と圧電素子74の平面図である。図5の平面図(図5の上側の図)は、圧電素子74をZ方向から見たものであり、図5の断面図(図5の下側の図)は、吐出部266をX-Z平面で切断したものである。
図3および図4に示すように液体吐出部264は、一方向(Y方向)に配列した複数の吐出部266を備える。1個の吐出部266は、駆動素子の例示である圧電素子74と振動板73と圧力室SCと連通流路772と第1流路716と第2流路718とノズルNとを包含する部分で構成される。本実施形態では、圧力室SC側から連通流路772側に渡って、第1流路716と第2流路718の流路断面積が同等である場合を例示する。
図4に示すように、液体吐出部264は、流路基板71の一方側に圧力室基板72と振動板73と圧電素子74と支持体75とが配置されるとともに、他方側に連通板77とノズル板76が配置された構造体である。流路基板71と圧力室基板72と連通板77とノズル板76とは例えばシリコンの平板材で形成され、支持体75は例えば樹脂材料の射出成形で形成される。複数のノズルNはノズル板76に形成される。ノズル板76のうち媒体12に対向する面が、液体吐出ヘッドの吐出面260を構成する。
支持体75には、共通液室SR(リザーバー)を構成する凹部752が形成される。具体的には、凹部752と流路基板71とで囲まれる空間が、導入流路754を介して液体容器14から供給されるインクを貯留する共通液室SRとして機能する。
圧力室基板72には、圧力室SC(キャビティ)を構成する開口部722と分岐流路714とがノズルNごとに形成される。分岐流路714は、共通液室SRから分岐して、共通液室SRを各開口部722に連通する。図3および図4では、分岐流路714を、圧力室SCよりもY-Z平面の流路面積積が小さい絞り流路として構成した場合を例示する。ただし、分岐流路714を絞り流路とせずに、圧力室SCのY-Z平面の流路面積積とが同等になるようにしてもよい。インクは共通液室SRから圧力室SCへ圧送されるので、圧力室SCから共通液室SRへインクが逆流し難い構成であるが、分岐流路714を絞り流路とすることで、共通液室SRへのインクの逆流抑制効果を高めることができる。
振動板73は、圧力室基板72のうち流路基板71とは反対側の表面に設置された弾性的に振動可能な板状部材である。振動板73は、圧力室基板72に積層して接合され、圧力室SCの壁面(典型的には上面)を構成する。なお、本実施形態では、圧力室基板72と振動板73とを別々に形成する場合を例示するが、圧力室基板72と振動板73とを一体に形成してもよい。例えば所定の厚みの板状部材のうち開口部722に対応する領域について厚み方向の一部を選択的に除去することで、圧力室基板72と振動板73とを一体に形成することが可能である。
以上の構成によれば、圧力室基板72の各開口部722の内側で振動板73と流路基板71とに挟まれた空間が、共通液室SRから分岐流路714を介して供給されるインクが充填される圧力室SCとして機能する。
連通板77には、ノズルNに連通する連通流路772がノズルNごとに形成される。流路基板71には、圧力室SCを連通流路772に接続する第1流路716と、第1流路716とは異なる位置で圧力室SCを連通流路772に接続する第2流路718とが形成される。第1流路716と第2流路718は、圧力室SCごとに形成された一対の貫通孔である。本実施形態の連通流路772は、圧力室SCとほぼ同様の形状であり、X方向に長尺である。平面視において圧力室SCに一部または全部が重なるように配置される。本実施形態の圧力室SCと連通流路772の形状は、平面視で(Z方向からみて)矩形(長方形、正方形など)である。ただし、圧力室SCと連通流路772の形状は、例示したものに限られず、平行四辺形、楕円形、円形などの形状であってもよい。
第1流路716と第2流路718とはそれぞれ、連通流路772または圧力室SCの延在方向であるX方向に交差するZ方向に延出し、連通流路772と圧力室SCとの間に配置される。このような第1流路716と第2流路718によって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れを形成できる。なお、第1流路716と第2流路718は、Z方向に交差する方向に傾斜していてもよく、また平面視において連通流路772と圧力室SCとの間から一部がはみ出て配置されていてもよい。
振動板73のうち圧力室基板72とは反対側の表面にはノズルNごとに圧電素子74が形成される。本実施形態の圧力室SCは、その配列方向であるY方向(第2方向の例示)の長さよりも配列方向に交差するX方向(第1方向の例示)の長さの方が長い。このような圧力室SCの形状に合わせて、圧電素子74も圧力室SCの配列方向であるY方向の長さよりも圧力室SCの配列方向に交差するX方向の長さの方が長い。
図4に示すように、本実施形態の圧電素子74は、それぞれ独立して変形可能な第1圧電素子74A(第1駆動素子の例示)と第2圧電素子74B(第2駆動素子の例示)とを含む。第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bは、X方向に沿って並べて配置される。第1圧電素子74Aは、平面視で第1流路716側(Z方向からみてX方向の負側)にあり、第2圧電素子74Bは、平面視で第2流路718側(Z方向からみてX方向の正側)にある。本実施形態では、第1圧電素子74Aが第1流路716に平面視で重なり、第2圧電素子74Bが第2流路718に平面視で重なる場合を例示する。
図5の平面図に示すように、本実施形態の圧電素子74は、相互に対向する第1電極742と第2電極746との間に圧電体層744を介在させた積層体である。本実施形態では、1つの圧電素子74において、駆動パルスの印加によって変形可能な2つの能動領域のうちの一方を第1圧電素子74Aとし、他方を第2圧電素子74Bとする。具体的には、第1電極742および第2電極746の一方に駆動信号Vが供給され、所定の基準電位VMが他方に供給されることで、第1電極742と第2電極746と圧電体層744とが平面視で(Z方向から見て)重なる2つの能動領域が変形して振動する。この2つの能動領域がそれぞれ、第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとして機能する。
なお、相互に独立した個別の第1電極742と第2電極746を有する第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとを別々に配置するようにしてもよい。ただし、本実施形態のように第1駆動素子と第2駆動素子とを1つの圧電素子の能動領域として形成する方が、相互に独立した個別の第1電極742と第2電極746を有する第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとを別々に配置するよりも、集積度を高めることができ、電気配線も簡素化できる。
本実施形態の第1電極742は、各吐出部266に対応する圧電素子74のすべてに渡って連続するように振動板73の表面に形成され、各圧電素子74の共通電極として構成される。したがって、第1電極742は、各圧電素子74に含まれる第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bにも共通する共通電極である。第1電極742の表面(振動板73とは反対側の表面)には、圧電素子74ごとに個別に、圧電体層744が形成される。第2電極746は、第1圧電素子74Aの能動領域と、第2圧電素子74Bの能動領域に個別に配置される。各第2電極746は、第1電極742に対して振動板73とは反対側に積層され、圧電体層744は、各第2電極746に渡り、第1電極742と各第2電極746とに挟まれるように積層される。このように、本実施形態の各第2電極746は、第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとで相互に電気的に独立した個別電極である。
第1圧電素子74Aの第2電極746と第2圧電素子74Bの第2電極746とは、圧力室SCごとに形成される。第1電極742と各第2電極746はそれぞれ、リード電極(図示略)を介して駆動部262に電気的に接続される。このような構成の本実施形態の圧電素子74では、共通電極である第1電極742に基準電位VMが供給され、個別電極である第1圧電素子74Aの第2電極746と第2圧電素子74Bの第2電極746とに別々に駆動信号Vが供給される。なお、本実施形態の圧電素子74では、第1電極742を共通電極にして、第2電極746を個別電極にした場合を例示したが、この構成に限られず、第2電極746を共通電極にして、第1電極742を個別電極にしてもよい。
図6および図7は、本実施形態の圧電素子74を駆動する駆動パルスの具体例を示す図である。図6は、インクをノズルNから吐出させるための吐出用駆動パルスW1の例示であり、図7は、インクをノズルNから吐出させずに循環させるための循環用駆動パルスW2の例示である。図8は、循環用駆動パルスW2による振動板73の変位の例示である。図9は、図6の吐出用駆動パルスW1で圧電素子74を駆動した場合の吐出部266の作用説明図である。図10は、図7の循環用駆動パルスW2で圧電素子74を駆動した場合の吐出部266の作用説明図である。
図6の上段は、第1圧電素子74Aに印加する吐出用駆動パルスW1aの例示であり、図6の下段は、第2圧電素子74Bに印加する吐出用駆動パルスW1bの例示である。吐出用駆動パルスW1a、W1bは、媒体12への印刷時にインクをノズルNから吐出する動作、液体吐出ヘッド26のメンテナンス時にインクをノズルNから吐出して増粘インクや付着物を除去するフラッシング動作を行う場合などに用いられる。
本実施形態の吐出用駆動パルスW1a、W1bは、同じ形状の波形で同位相である。ただし、吐出用駆動パルスW1a、W1bの波形は、振幅や周波数などが異なる形状であってもよい。このように、第1圧電素子74Aに印加する駆動パルスと、第2圧電素子74Bに印加する駆動パルスとを同位相にすることで、インクを吐出する際に第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとを同時に同方向に駆動できる。これにより、インクを吐出する際に圧力室SCのインクが第1流路716と第2流路718とから連通流路772に向かう流れが形成され易くなるので、ノズルNからのインクの吐出量を増大できる。
以下、吐出用駆動パルスW1a、W1bによる吐出部266の動作について具体的に説明する。図6の吐出用駆動パルスW1a、W1bはそれぞれ、基準電位VMに対する高位側電位VHおよび低位側電位VLを有する。吐出用駆動パルスW1a、W1bによれば、基準電位をVMとすると、基準電位VMよりも電位を低くすることで、ノズルN内のメニスカスを圧力室SC側へ引き込むことができる。逆に、基準電位VMよりも電位を高くすることで、ノズルN内のメニスカスを圧力室SCとは反対側のノズルNの開口部(インクが吐出されるノズルNの開口部)側に押し出してインクを吐出できる。なお、吐出用駆動パルスW1a、W1bの波形は図6に示すものに限られない。吐出用駆動パルスW1a、W1bの波形は、例えばノズルN内のメニスカスを圧力室SC側へ引き込む場合には基準電位VMよりも電位が高く、逆にノズルN内のメニスカスをノズルNの開口部側に押し出す場合には基準電位VMよりも電位が低い波形でもよい。
吐出用駆動パルスW1aによる駆動信号Vの供給により第1圧電素子74Aが変形し、吐出用駆動パルスW1bによる駆動信号Vの供給により第2圧電素子74Bが変形することで振動板73が振動し、圧力室SCの圧力が変化する。このとき、図9の矢印に示すように、圧力室SCのインクは、第1流路716および第2流路718から連通流路772に流れ、ノズルNから吐出される。吐出用駆動パルスW1a、W1bの場合には、ノズルNからインクが吐出されるので、第1流路716および第2流路718には、圧力室SCに戻って循環する流れよりも、ノズルNに向かう流れが発生し易い。しかも、吐出用駆動パルスW1a、W1bは、同位相であるから、連通流路772には、第1流路716と第2流路718の両方からノズルNに向かう流れが生じ易くなるので、第1流路716および第2流路718の一方のみを備える場合に比較して、インクの吐出量を増大できる。
なお、吐出用駆動パルスW1a、W1bは、図6に例示したものに限られない。例えば吐出用駆動パルスW1a、W1bの波形の傾き、電位の最大値、電位の最小値、波形の振幅、波形の周波数の少なくとも1つ以上を変えることによって、ノズルNから吐出されるインクの吐出量を変えることができる。例えば波形の振幅を大きくすることで、インクの吐出量を増大できる。また、1周期Tに含まれる吐出用駆動パルスW1a、W1bの数や波形の形状を変えることによって、媒体12に着弾されるインクのドットサイズを変えることもできる。
図7の上段は、第1圧電素子74Aに印加する循環用駆動パルスW2aの例示であり、図7の下段は、第2圧電素子74Bに印加する循環用駆動パルスW2bの例示である。循環用駆動パルスW2a、W2bは、インクをノズルNから吐出させずに各吐出部266内で循環させる場合に用いられる。例えば液体吐出ヘッド26をX方向に移動させながら、1パスごとにインクの吐出を行う場合に、パスとパスとの間で循環用駆動パルスW2により圧力室SCを振動させてインクを循環させる。また、印刷ジョブと印刷ジョブとの間でインクを循環させるようにしてもよく、メンテナンス時にインクを循環させてもよい。
ノズルN内に形成されるメニスカスは、インクと空気との気液界面である。そのため、メニスカスでは乾燥により水分などの溶媒の蒸発が進み、インクに含まれる溶媒と溶質とのバランスが崩れ、インクの増粘や溶質の析出などが進行し易い。インクの増粘や溶質の析出などが進むと、インクがノズルNから吐出され難くなり、吐出不良やノズルNの目詰まりの原因となる虞がある。本実施形態では、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で、すなわちノズルNの近傍でインクを循環させることができるので、ノズルNのメニスカスにおけるインクの乾燥と増粘を効果的に抑制できる。また、上記フラッシング動作によって増粘インクをノズルNから排出させる場合に比較してインクの無駄な消費を抑制できる。
本実施形態の循環用駆動パルスW2a、W2bは、同じ形状の波形で異なる位相である。ただし、循環用駆動パルスW2a、W2bの波形は、振幅や周波数などが異なる形状であってもよい。このように、第1圧電素子74Aに印加する駆動パルスと、第2圧電素子74Bに印加する駆動パルスとを異なる位相にすることで、第1圧電素子74Aの駆動によって第1流路716側に伝わる振動と、第2圧電素子74Bの駆動によって第2流路718側に伝わる振動との位相を異ならせることができる。これによれば、インクを循環させる際に第1流路716と第2流路718のうち一方が往路となると、他方が復路となり易いから、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れを形成し易くすることができる。
以下、循環用駆動パルスW2a、W2bによる吐出部266の動作について具体的に説明する。図7の循環用駆動パルスW2a、W2bはそれぞれ、基準電位VMに対する高位側電位VHおよび低位側電位VLを有する。循環用駆動パルスW2a、W2bのそれぞれは、吐出用駆動パルスW1a、W1bのそれぞれよりも振幅が小さい波形である。このような波形によれば、周期Tを繰り返して複数の循環用駆動パルスW2を印加することで圧力室SCを微振動させることができるので、ノズルNからインクが吐出されずに循環する流れが形成され易くなる。なお、図7では、循環用駆動パルスW2a、W2bの波形が同じ形状である場合を例示するが、これに限られず、振幅や周波数などが互いに異なる形状であってもよい。
図7は、1周期Tの波形を1波形としたときに、循環用駆動パルスW2a、W2bの位相差dTが1周期Tの1/2波形である場合を例示する。これによれば、循環用駆動パルスW2a、W2bとで互いに逆位相になるから、循環用駆動パルスW2aが高位側電位VHのときに、循環用駆動パルスW2bが低位側電位VLになり、循環用駆動パルスW2aが低位側電位VLのときに、循環用駆動パルスW2bが高位側電位VHになる。したがって、第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとが互いに逆方向に振動するので、第1流路716と第2流路718の一方が往路で他方が復路となって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で一方向に循環するインクの流れを生じさせ易い。
具体的には、循環用駆動パルスW2aを第1圧電素子74Aに印加し、循環用駆動パルスW2bを第2圧電素子74Bに印加することによって、第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとがそれぞれ別々に変形して微振動する。これにより、振動板73のうち第1圧電素子74Aに平面視で重なる領域は、図8の上段に示すように振動し、振動板73のうち第2圧電素子74Bに平面視で重なる領域は、図8の下段に示すように位相がずれて振動する。これによれば、圧力室SCのうち第1圧電素子74Aに平面視で重なる領域と第2圧電素子74Bに平面視で重なる領域とは、逆位相で振動させることができる。
したがって、本実施形態では、第1圧電素子74A側にある第1流路716と第2圧電素子74B側にある第2流路718には、圧力室SCからの振動が逆位相で伝わる。すると、図10の矢印に示すように、例えば圧力室SCのインクが第1流路716を通って連通流路772に流れ、ノズルNからインクが吐出されずに、第2流路718を通って圧力室SCに戻るというインクの流れ(Y方向を中心とする反時計回りの流れ)が発生する。これにより、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れを形成できるので、インクの乾燥と増粘を抑制できる。
なお、循環用駆動パルスW2a、W2bは、図7に例示したものに限られない。例えば図7では、高位側電位VHおよび低位側電位VLの間の電位を基準電位VMとした場合を例示したが、図7の低位側電位VLを基準電位VMとしてもよい。また、循環用駆動パルスW2の波形の傾き、電位の最大値、電位の最小値、波形の振幅、波形の周波数の少なくとも1つ以上を変えたり、1周期Tに含まれる循環用駆動パルスW2a、W2bのそれぞれの数や波形の形状を変えたりすることによって、循環するインクの流れの流速やインクの振動周波数を変えることもできる。またインクの種類に応じて、循環用駆動パルスW2a、W2bのそれぞれの波形や数を変えることもできる。例えば顔料系インクのような凝集性の高いインクの方が、染料系インクのような凝集性の低いインクよりも、ノズルNのメニスカス近傍で増粘し易い。したがって、高凝集性のインクの場合の方が、低凝集性のインクの場合よりも循環効率が高くなるように、循環用駆動パルスW2a、W2bのそれぞれの波形の形状や数を変えるようにしてもよい。
このように、本実施形態によれば、第1流路716と第2流路718によって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で、循環するインクの流れを形成できる。したがって、1つの吐出セグメントである吐出部266の中、すなわち圧力室SCごとの個別流路の中で循環するインクの流れを形成できる。このような本実施形態によれば、上述した特許文献1のように圧力室SCごとではなく、複数の圧力室SCに連通する循環用共通流路を介してインクを循環させる場合に比較して、インクが循環する流路の長さを極めて短くできるので、インクを循環させる際には流路抵抗が低減されるから、インクの循環効率を高めることができる。
しかも本実施形態ではノズルNのメニスカスに近い連通流路772において吐出部266ごとに循環するインクの流れを形成できるので、ノズルNのメニスカスから遠い循環用共通流路を介してインクを循環させる場合に比較して、メニスカスからのインクの乾燥とそれによる増粘を抑制する効果が極めて高い。また、本実施形態では、複数の圧力室SCを連通する循環用共通流路を備えなくても、圧力室SCごとに吐出部266の個別流路の中でインクを循環させることができる。したがって、インクをノズルNから吐出する際に、圧力室SCのインクの一部が循環用共通流路に排出されてしまうということもないので、循環用共通流路を備える場合に比較して、ノズルNからのインクの吐出量の低減を抑制できる。
本実施形態のような構成の液体吐出ヘッド26では、圧力室SCの配列方向であるY方向における圧力室SCの長さを短くするほど、圧力室SCの配列方向に液体吐出ヘッド26を小型化できる。ところが、圧力室SCの長さを短くするほど、圧力室SCの容量も小さくなる。そのため、もし圧力室SCとノズルNとを第1流路716と第2流路718の一方だけで接続して圧力室SCを微振動させる場合には、圧力室SCの微振動がノズルNまで伝わり難くなってしまう。これに対して、本実施形態では、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間を第1流路716と第2流路718によって接続するので、圧力室SCの容量を小さくしても、ノズルNの近傍で循環するインクの流れを形成し易い。したがって、本実施形態の構成によれば、圧力室SCの配列方向の長さを短くしても、ノズルNの近傍でインクを循環させることができるので、インクの増粘を抑制しつつ、液体吐出ヘッド26を圧力室SCの配列方向に小型化できる。
なお、図5に示すように、本実施形態の圧電素子74では、第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとの間の領域D’は、平面視で(Z方向からみて)第1流路716と第2流路718との間の領域Dにある(後述する第2実施形態および第3実施形態も同様)。領域D’は、第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとが変形しない非能動領域であり、領域Dは、流路基板71のうち第1流路716と第2流路718との間における圧力室SC側の壁面の領域である。したがって、このような第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとの非能動領域(領域D’)が平面視で第1流路716または第2流路718に重なる場合に比較して、第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bによる圧力室SCの振動が第1流路716と第2流路718に伝わり易い。したがって、インクを循環させる際には循環効率を高めることができ、インクを吐出する際にはノズルNからのインクの吐出量を増大できる。
ところで、本実施形態では、第1流路716と第2流路718との流路断面積が、圧力室SC側から連通流路772側に渡って同等である。すなわち図5に示すように第1流路716の流路断面積A1は、第2流路718の流路断面積A2と同等である。図5の例示では、第1流路716は、圧力室SCに接続する圧力室側流路口716aから連通流路772に接続する連通流路側流路口716bまで流路断面積A1は変わらない。第2流路718も、圧力室SCに接続する圧力室側流路口718aから連通流路772に接続する連通流路側流路口718bまで流路断面積A2は変わらない。
このように流路断面積が同等の第1流路716と第2流路718を備える吐出部266では、もし1つの圧電素子で圧力室SCを振動させるとすれば、図10の矢印とは逆向きの流れ(Y方向を中心とする時計回りの流れ)、すなわち圧力室SCのインクが第2流路718を通って連通流路772に流れ、第2流路718を通って圧力室SCに戻るというインクの流れも発生し得る。このような流れによるインクの循環でもインクの増粘を抑制できるが、連通流路772と圧力室SCとの間で逆向きに循環するインクの流れが発生し得る構成よりも、一方向に循環するインクの流れが形成され易い構成の方が、短時間で効率よく循環するインクの流れを形成できる。
この点、本実施形態の圧電素子74は、第1流路716側にある第1圧電素子74Aと第2流路718側にある第2圧電素子74Bを含むから、これらを独立して駆動させることができる。具体的には上述したように、圧力室SCから第1流路716と第2流路718への振動の伝わり方を異ならせることができる。圧力室SCのインクは、第1流路716と第2流路718とのうち圧力室SCの振動が伝わり易い方に流れ易いから、上記のように第1流路716と第2流路718への振動の伝わり方を異ならせることで、連通流路772と圧力室SCとの間で一方向に循環するインクの流れが形成され易くなる。したがって、1つの圧電素子で圧力室SCの圧力を変化させる場合に比較して、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れを短時間で効率よく形成でき、インクの循環効率を高めることができる。
例えば図7によれば、最初に循環用駆動パルスW2aが高位側電位VHになるから、第1圧電素子74Aが駆動することで、圧力室SCから第1流路716に向けてインクを押し出す方向に振動板73が変位する。このとき、第2圧電素子74Bには未だ循環用駆動パルスW2bが印加されないから、第1圧電素子74Aによる圧力室SCの圧力の変化は、第2流路718よりも第1流路716に伝わり易い。したがって、図10の矢印に示すように、圧力室SCのインクが第1流路716を通って連通流路772に流れ、第2流路718を通って圧力室SCに戻るというインクの流れ(Y方向を中心とする反時計回りの流れ)が形成され易くすることができる。その後は、第1圧電素子74Aと第2圧電素子74Bとが交互に逆向きに駆動するから、第1流路716と第2流路718とで交互に、インクを押し出す方向と引き込む方向に振動するので、図10に示すように循環するインクの流れが加速する。これにより、インクの循環効率が飛躍的に向上する。
図7では、第1圧電素子74Aが第2圧電素子74Bよりも先に駆動するように循環用駆動パルスW2a、W2bの位相をずらした場合を例示したが、これに限られず、第2圧電素子74Bが第1圧電素子74Aよりも先に駆動するように循環用駆動パルスW2a、W2bの位相をずらすようにしてもよい。これによれば、最初に循環用駆動パルスW2bが高位側電位VHになるから、第2圧電素子74Bが駆動することで、圧力室SCから第2流路718に向けてインクを押し出す方向に振動板73が変位する。このとき、第1圧電素子74Aには未だ循環用駆動パルスW2aが印加されないから、第2圧電素子74Bによる圧力室SCの圧力の変化は、第1流路716よりも第2流路718に伝わり易い。したがって、図10の矢印とは逆向きに、圧力室SCのインクが第2流路718を通って連通流路772に流れ、第1流路716を通って圧力室SCに戻るというインクの流れ(Y方向を中心とする時計回りの流れ)が形成され易くすることができる。
このように、本実施形態によれば、第1流路716と第2流路718とで流路断面積が同等の場合であっても、一方向に循環するインクの流れが形成され易くすることができるから、短時間で効率よく循環するインクの流れを形成でき、循環効率を高めることができる。本実施形態では、循環用駆動パルスW2a、W2bの位相差dTが1周期Tの1/2波形分である場合を例示したが、これに限られず、例えば位相差dTを1周期Tの1波形分や複数波形分としてもよい。循環用駆動パルスW2a、W2bの位相差dTを大きくすることで、一方向に循環するインクの流れが形成され易くすることができる。
なお、第1流路716と第2流路718とで流路断面積が同等の場合に限られるものではなく、例えば図11の第1変形例に係る吐出部266に示すように、第1流路716と第2流路718とでは、互いに流路断面積が異なる部分があるように構成するようにしてもよい。ここでの流路断面積は、第1流路716と第2流路718とのそれぞれが延びる方向に交差する流路断面の断面積であり、第1流路716と第2流路718とをそれぞれ、X-Y平面で切断した場合の流路断面の断面積である。
図11の吐出部266では、第1流路716のうち圧力室側流路口716aの流路断面積A1は、第2流路718のうち圧力室側流路口718aの流路断面積A2よりも大きい。このように、第1流路716と第2流路718とで圧力室SCに接続する圧力室側流路口の流路断面積が異なるようにすることで、位相の異なる循環用駆動パルスW2a、W2bによってインクを循環させる際に、圧力室SCのインクは、流路断面積が大きい第1流路716に流れ出し易く、流路断面積の小さい第2流路718から圧力室SCにインクが流れ込み易くなる。したがって、第1流路716が往路で第2流路718が復路となって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で一方向に循環するインクの流れを生じさせ易い。
なお、図11の構成に限られず、例えば第2流路718のうち圧力室側流路口718aの流路断面積A2が、第1流路716のうち圧力室側流路口716aの流路断面積A1よりも大きくなるようにしてもよい。これによれば、インクを循環させる際に、圧力室SCのインクは、流路断面積が大きい第2流路718に流れ出し易く、流路断面積の小さい第1流路716から圧力室SCにインクが流れ込み易くなるから、第2流路718が往路で第1流路716が復路となって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で一方向に循環するインクの流れを生じさせ易い。
図5の第1流路716と第1流路718とはそれぞれ、圧力室SCに接続する圧力室側流路口716aから連通流路772に接続する連通流路側流路口716bまで流路断面積が変わらない。このような構成に限られず、例えば図12の第2変形例に係る吐出部266に示すように、第1流路716および第2流路718のそれぞれについて、圧力室側流路口と連通流路側流路口とで流路断面積が異なるようにしてもよい。
図12の吐出部266では、第1流路716のうち圧力室側流路口716aの流路断面積A1の方が、連通流路772に接続する連通流路側流路口716bの流路断面積B1よりも大きい。これにより、圧力室SCのインクは第1流路716を通って連通流路772に流れ易くなる。他方、第2流路718は、圧力室側流路口718aの流路断面積A2の方が、連通流路772に接続する連通流路側流路口718bの流路断面積B2よりも小さい。これにより、連通流路772のインクは第2流路718を通って圧力室SCに戻り易くなる。
図12の構成によれば、インクを循環させる際には、圧力室SCのインクは第1流路716を通って連通流路772に流れ、連通流路772のインクは第2流路718を通って圧力室SCに戻るという一方向に循環するインクの流れが形成され易くなるので、インクの循環効率を高めることができる。
さらに図12の第1流路716は、圧力室側流路口716aから連通流路側流路口716bに向けて流路断面積が小さくなるテーパー形状である。これにより、圧力室SCから第1流路716を通る液体の流速を高めることができる。第2流路718は、圧力室側流路口718aから連通流路側流路口718bに向けて流路断面積が大きくなるテーパー形状である。これにより、連通流路772から第2流路718を通るインクの流速を高めることができる。したがって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流速を高めることができるので、循環効率を高めることができる。
なお、本実施形態では、圧電素子74が第1流路716と第2流路718に平面視で重なる場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば圧電素子74は、第1流路716に平面視で重なり、第2流路718に平面視で重なる部分と重ならない部分があるように構成してもよい。例えば平面視において圧電素子74が第1流路716から第2流路718の途中まで延在するように構成してもよい。このような構成によれば、第1圧電素子74Aによる圧力室SCの振動が第2流路718よりも第1流路716に大きく伝わり易い。そのため、圧力室SCのインクは、第1流路716と第2流路718のうち圧力室SCの振動が伝わり易い第1流路716の方に流れ易くなる。したがって、インクを循環させる際には、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れが形成され易いため、循環効率を高めることができる。また、インクを吐出させる際には、圧力室SCから第1流路716を通るインクを増やすことができるので、ノズルNからのインクの吐出量を増大させることができる。
また、本実施形態の吐出部266では、第1流路716の方が第2流路718よりもノズルNに近い位置にある。図5では、第1流路716が平面視でノズルNに重なる場合を例示する。このように、ノズルNに近い第1流路716の方が第2流路718よりも圧力室側流路口の流路断面積が大きいから、ノズルNからインクを吐出する際に、圧力室SCからのインクは、ノズルNに近い第1流路716の方に流れ込み易くなるので、ノズルNからのインクの吐出量を増大できる。なお、ノズルNの位置は、図5の例示に限られず、連通流路772に対してどの位置にノズルNが連通していてもよい。例えば平面視で第2流路718に重なるようにノズルNが配置されていてもよく、平面視で連通流路772の中央にノズルNが連通されていてもよい。本実施形態によれば、連通流路772と圧力室SCとの間でインクを循環させることができるから、連通流路772に対してどの位置にノズルNが連通していても、ノズルNのメニスカスにおけるインクの乾燥と増粘を効果的に抑制できる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。図13は、第2実施形態に係る液体吐出部264の構成を示す断面図であり、図4に対応する。第1実施形態では、第1圧電素子74AのX方向の長さと第2圧電素子74BのX方向の長さとが同等である場合を例示した。第2実施形態では、第1圧電素子74AのX方向の長さと第2圧電素子74BのX方向の長さとが異なる場合を例示する。
図13に示す圧電素子74では、第1圧電素子74AのX方向の長さの方が、第2圧電素子74BのX方向の長さよりも長い。この構成によれば、第1流路716側の第1圧電素子74Aの方が第2流路718側の第2圧電素子74Bよりも変位量が大きくなるので、圧力室SCのインクは第2流路718よりも第1流路716の方に流れ出し易くなる。したがって、インクを循環させる際には、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れが形成され易いため、循環効率を高めることができる。また、インクを吐出させる際には、圧力室SCから第1流路716を通るインクを増やすことができるので、ノズルNからのインクの吐出量を増大させることができる。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態の液体吐出部264では、共通液室SRからのインクがX方向から分岐流路714に供給される場合を例示したが、第3実施形態では、共通液室SRからのインクがY方向から分岐流路714に供給される場合を例示する。
図14は、第3実施形態に係る液体吐出部264の構成を示す断面図であり、図4に対応する。図14の液体吐出部264では、支持体75に形成される凹部752と流路基板71に形成される開口部712とで構成される空間が共通液室SRとして機能する。図14の分岐流路714は、Y方向に延在する接続流路713によって開口部712に連通することで、共通液室SRに接続される。接続流路713は、分岐流路714ごとに形成された貫通孔であり、開口部712は複数の分岐流路714にわたり連続する開口である。
このような第3実施形態によれば、接続流路713を介してY方向から共通液室SRからのインクを分岐流路714に供給するように液体吐出部264を構成することで、図4または図13の構成に比較して、流路基板71に形成される開口部712まで共通液室SRの容量を増やすことができる。また、図14に示すように、第2圧電素子74Bを分岐流路714に平面視で重なる程度まで延在するように配置してもよい。この構成によれば、圧力室SCが延在するX方向に第2圧電素子74Bを長くすることができるので、第2圧電素子74Bの変位を大きくすることができる。したがって、第2圧電素子74Bの駆動による圧力室SCの振動も大きくできるので、インクを循環させる場合には循環効率を高めることができ、インクを吐出する場合には吐出量を増大することができる。
<変形例>
以上に例示した態様および実施形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示や上述の態様から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)上述した実施形態では、液体吐出ヘッド26を搭載したキャリッジ242をX方向に沿って反復的に往復させるシリアルヘッドを例示したが、液体吐出ヘッド26を媒体12の全幅にわたり配列したラインヘッドにも本発明を適用可能である。
(2)上述した実施形態では、圧力室に機械的な振動を付与する圧電素子を利用した圧電方式の液体吐出ヘッド26を例示したが、加熱により圧力室の内部に気泡を発生させる発熱素子を利用した熱方式の液体吐出ヘッドを採用することも可能である。
(3)上述した実施形態で例示した液体吐出装置10は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置10の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等を形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、液体の一種として生体有機物の溶液を吐出するチップ製造装置としても利用される。