JP7098840B2 - 量子ノイズプロセスの解析方法、装置、機器及び記憶媒体 - Google Patents

量子ノイズプロセスの解析方法、装置、機器及び記憶媒体 Download PDF

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Description

本願は、2019年5月10日に中国特許庁に出願した出願番号が201910390722.5号、発明名称が「量子ノイズプロセスの解析方法、装置、機器及び記憶媒体」の中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を本願に参照により援用する。
本発明の実施例は、量子技術の分野に関し、特に量子ノイズプロセス解析技術に関する。
量子ノイズプロセスは、量子系若しくは量子デバイスと環境との相互作用、又は制御自体の不完全性による量子情報の汚染プロセスである。
関連技術では、量子プロセストモグラフィ(QPT:Quantum Process Tomography)を利用して量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングの関連情報を抽出する。量子プロセストモグラフィとは、ノイズチャネルに一群の標準量子状態を入力し、一連の測定プロセスにより量子ノイズプロセスの数学的な記述を再構築することを指す。
純粋な量子プロセストモグラフィは、取得された量子ノイズプロセスに関する情報が限られているため、量子ノイズプロセスを正確、且つ全面的に解析するには不十分である。
本発明の実施例は、関連技術に存在する上記の技術的問題を解決することができる量子ノイズプロセスの解析方法、装置、機器及び記憶媒体を提供する。
本発明の実施例の1つの態様では、コンピュータ機器に適用される、量子ノイズプロセスの解析方法であって、ターゲット量子系の量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、前記量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得するステップと、前記動力学的なマッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングを抽出するステップであって、前記テンソル移転マッピングは前記量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表す、ステップと、前記テンソル移転マッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスを解析するステップと、を含む、方法を提供する。
本発明の実施例のもう1つの態様では、量子ノイズプロセスの解析装置であって、ターゲット量子系の量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、前記量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得する取得モジュールと、前記動力学的なマッピングから前記量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングを抽出する抽出モジュールであって、前記テンソル移転マッピングは前記量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表す、抽出モジュールと、前記テンソル移転マッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスを解析する解析モジュールと、を含む、装置を提供する。
本発明の実施例のもう1つの態様では、プロセッサとメモリとを含むコンピュータ機器であって、前記メモリには、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶され、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は前記命令セットは、上記の量子ノイズプロセスの解析方法を実現するように、前記プロセッサによりロードされて実行される、コンピュータ機器を提供する。
本発明の実施例のもう1つの態様では、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記記憶媒体には、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶され、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は前記命令セットは、上記の量子ノイズプロセスの解析方法を実現するように、プロセッサによりロードされて実行される、記憶媒体を提供する。
本発明の実施例のもう1つの態様では、コンピュータプログラムプロダクトであって、前記コンピュータプログラムプロダクトが実行される際に、上記の量子ノイズプロセスの解析方法を実行させる、コンピュータプログラムプロダクトを提供する。
本発明の実施例に係る態様は、少なくとも以下の有利な効果を有する。
本発明に係る態様では、量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得し、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングから量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングをさらに抽出する。テンソル移転マッピングは、量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表し、即ち、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングの経時的な進化法則を反映する。これによって、純粋な量子プロセストモグラフィに比べて、量子ノイズプロセスに関するより豊富、且つ全面的な情報を取得することができるため、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングに基づいて量子ノイズプロセスを解析する際に、より豊富、且つ全面的な情報に基づいて量子ノイズプロセスをより正確、且つ全面的に解析することができる。
本発明の実施例に係る態様をより明確に説明するために、以下は実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介する。なお、以下に説明される図面は単なる本発明の実施例であり、当業者は創造的な作業を行うことなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
本発明の技術の全体的なフローチャートである。 本発明の1つの実施例に係る量子ノイズプロセスの解析方法のフローチャートである。 シミュレーション環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 シミュレーション環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 シミュレーション環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 シミュレーション環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 シミュレーション環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 シミュレーション環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 実環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 実環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 実環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 実環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 実環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 実環境における複数の実験結果を例示的に示す概略図である。 本発明の1つの実施例に係る量子ノイズプロセスの解析装置のブロック図である。 本発明のもう1つの実施例に係る量子ノイズプロセスの解析装置のブロック図である。 本発明の1つの実施例に係るコンピュータ機器の構成の概略図である。
本発明の目的、解決手段、利点をより明確にするために、以下は、図面を参照しながら本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
本発明の実施例を説明する前に、まず、本発明に係る用語を解釈、説明する。
1.量子系:運動則が量子力学に従う宇宙全体の一部である。
2.量子状態:量子系の全ての情報は量子状態ρにより表される。ρはd×dの複素行列であり、ここで、dは量子系の次元である。
3.量子ノイズプロセス:量子系若しくは量子デバイスと環境との相互作用、又は制御自体の不完全性による量子情報の汚染プロセスである。数学的には、このプロセスは、ハイパー演算子で表示されるチャネルであり、高次元に拡張すると、行列で表示されてもよい。
4.記憶カーネル:量子状態に作用する演算子であり、環境により引き起こされるシステムのデコヒーレンスに関する全ての情報を含む。
5.2次記憶カーネル:記憶カーネルの量子系と環境の結合強度についての2次級数展開である。
6.ノイズの2次相関関数:ノイズの周波数スペクトルを計算するための、システムノイズの2つの異なる時点での相関関数である。
7.テンソル移転マッピング(TTM:Tensorial Transfer Mapping):量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングから再帰的に抽出された一組のマッピングであり、この一組のマッピングは、量子系の記憶カーネルをエンコードしており、量子系の動力学的な進化(dynamical evolution)を予測し、ノイズの性質を判断するために用いられてもよい。
8.量子プロセストモグラフィ:ノイズチャネルに一連の標準量子状態を入力し、一連の測定プロセスにより量子ノイズプロセスの数学的な記述を再構築する。
量子情報処理では、量子系の全ての情報は、量子状態の時間tに伴う進化ρ(t)により表される。ρ(t)はd×dの複素行列である。量子プロセスは、量子情報処理プロセス及び量子ノイズプロセスを含み、システムと環境が初期状態で分離可能な状態である場合、動力学的なマッピングで表されてもよい。
Figure 0007098840000001

ここで、Aもd×dの行列であり、且つ
Figure 0007098840000002
を満たし、環境の量子系への影響のk番目の成分を表し、Iは単位行列である。ここで、
Figure 0007098840000003

はAのエルミート共役を表し、即ち、転置をとってから複素共役をとる。有限次元の複素行列空間が完全であるため、d×d行列空間における一組の直交基底行列集合{E}を定義すると、以下の式を得ることができる。
Figure 0007098840000004

ここで、
Figure 0007098840000005

Figure 0007098840000006
は複素数の集合を表し、Eは{E}の要素であり、i及びmは何れも正の整数である。
このように、以下の式を得ることができる。
Figure 0007098840000007

ここで、
Figure 0007098840000008

、複素変換行列χのインデックスがm,nの要素であり、
Figure 0007098840000009

はEのエルミート共役を表し、Eは{E}における要素であり、ρは入力状態を表す。
関連技術では、量子プロセストモグラフィに基づく量子ノイズプロセスの解析方法が提供される。d2×d2個の線形独立の入力状態ρを用いて、各入力状態ρを量子ノイズプロセスに伝達し、出力状態ε(ρ)を取得する。入力状態が完全であるため、出力状態は入力状態の線形的な組み合わせとして表すことができる。
Figure 0007098840000010

ここで、
Figure 0007098840000011
、ε(ρ)は量子状態ρの動力学的なマッピング後の出力量子状態である。このように、同一の量子状態ρを複数回入力し、出力状態に対して量子状態トモグラフィを行うことで、合計係数cjkを実験的に解くことができる。具体的なプロセスは以下の通りである。
Figure 0007098840000012

ここで、Bm,n,j,kは複素数であり、Bm,n,j,kは{m,n}及び{j,k}インデックスにより構成された複素行列と見なされ、m、n、j及びkは何れも正の整数である。この場合、
Figure 0007098840000013

{ρ}が線形独立であるため、以下の式を得ることができる。
Figure 0007098840000014

m,n,j,kを転置することで、以下の式を得ることができる。
Figure 0007098840000015

χm,nに量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングの全ての情報が含まれているため、量子プロセストモグラフィによりχm,nが取得されると、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングの全ての情報が取得される。
しかし、純粋な量子プロセストモグラフィでは、取得された量子ノイズプロセスに関する情報が限られ、量子ノイズプロセスを正確、且つ全面的に解析するには十分ではない。例えば、量子ノイズプロセスがマルコフ過程であるか、それとも非マルコフ過程であるかを判定しておらず、量子ノイズプロセスの周波数スペクトルを取得しておらず、量子系における異なる量子デバイス間の相関ノイズを解析していない。
上記の技術的問題を解決するために、本発明の実施形態は、量子ノイズプロセスの解析方法を提供する。図1は本発明の技術の全体的なフローチャートである。本発明に係る技術では、量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得し、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングから量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングをさらに抽出し、該テンソル移転マッピングに基づいて量子ノイズプロセスを解析する。ここで、テンソル移転マッピングは、量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表し、即ち、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングの経時的な進化法則を反映する。これによって、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングに基づいて量子ノイズプロセスを解析することで、純粋な量子プロセストモグラフィに比べて、量子ノイズプロセスに関するより豊富、且つ全面的な情報を取得することができるため、量子ノイズプロセスをより正確、且つ全面的に解析することができる。
本発明に係る技術は、例えば量子コンピュータ、量子セキュア通信、量子インターネット、又はその他の量子系などの任意の量子系の量子ノイズプロセスの解析に適用される。量子系が量子ノイズの影響を受けるため、量子系の性能への影響は非常に深刻であり、量子系の実用化を妨げる最大の障害となっている。従って、量子ノイズプロセスを解析し、ノイズの性質を知ることは、量子系の開発にとって非常に重要である。本発明に係る技術は、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングに基づいて量子ノイズプロセスを解析し、以下の解析内容を含んでもよい。図1に示すように、例えば、マルコフ過程の判断を行い、即ち、量子ノイズプロセスがマルコフ過程であるか、それとも非マルコフ過程であるかを判定し、非マルコフノイズについて特別なノイズ抑制スキームを設定し、例えば動力学的なデカップリングによりノイズの発生を抑制してもよい。状態進化の予測を行い、即ち量子ノイズプロセスの状態進化を予測してもよい。相関関数及び周波数スペクトルの抽出を行い、即ち、量子デバイスを製造する際に対応する周波数帯域のフィルタを統合するように、量子ノイズプロセスの相関関数及び周波数スペクトルを取得してもよい。相関ノイズの解析を行い、即ち、相関ノイズを抑制するための対応するスキームを設計するように、量子系における異なる量子デバイス間の相関ノイズを解析し、相関ノイズのノイズ源を取得してもよい。従って、本発明に係る技術は、量子ノイズプロセスに関するより豊富、且つ全面的な情報を取得することができるため、量子系の性能向上のためにより多い情報を提供することができる。
図2は本発明の1つの実施例に係る量子ノイズプロセスの解析方法のフローチャートである。該方法はコンピュータ機器に適用されてもよく、該コンピュータ機器は、データ処理及び記憶機能を有する任意の電子機器であってもよく、例えばPC(Personal Computer:パーソナルコンピュータ)、サーバ、コンピュータホストなどの電子機器であってもよい。該方法は、以下のステップ(ステップ201~ステップ203)を含んでもよい。
ステップ201:ターゲット量子系の量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得する。
以上は、量子系の量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得することについて既に説明したため、ここでその説明を省略する。
好ましくは、本実施例では、量子ノイズプロセスにおける離散の時点に対して量子プロセストモグラフィを行ってもよく、例えばK個の異なる時点で量子プロセストモグラフィを行う場合、量子ノイズプロセスのK個の時点での動力学的なマッピングを取得してもよく、Kは1以上の整数である。好ましくは、上記のK個の時点のうち、隣接する2つの時点の間の間隔の時間長さは等しくなる。なお、隣接する2つの時点の間の間隔の時間長さは等しくなくてもよく、本実施例はこれに限定されない。
ステップ202:動力学的なマッピングに基づいて量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングを抽出する。
本発明の実施例では、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングは、該量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表し、即ち、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングの経時的な進化法則を反映する。
好ましくは、ステップ201において量子ノイズプロセスのK個の時点での動力学的なマッピングが取得された場合、ステップ201の1つの可能な態様では、量子ノイズプロセスのK個の時点での動力学的なマッピングに基づいて、量子ノイズプロセスのK個の時点でのテンソル移転マッピングを計算してもよい。例示的な実施例では、K個の時点のテンソル移転マッピングを再帰的に抽出する。例えば、以下の式に従って、量子ノイズプロセスのn番目の時点でのテンソル移転マッピングTを計算する。
Figure 0007098840000016

ここで、T=ε、εは量子ノイズプロセスのn番目の時点での動力学的なマッピングを表し、εは該量子ノイズプロセスのm番目の時点での動力学的なマッピングを表し、Tn-mは該量子ノイズプロセスのn-m番目の時点でのテンソル移転マッピングを表し、n及びmは何れも正の整数である。
ステップ203:テンソル移転マッピングに基づいて量子ノイズプロセスを解析する。
量子ノイズプロセスのK個の時点でのテンソル移転マッピングを抽出した後に、それに応じて量子ノイズプロセスを解析してもよい。
例示的な実施例では、Tを決定した後に、定義に従って、n>1となり、|T|の値が無視できるほど小さい場合、量子ノイズプロセスがマルコフ過程であると見なしてもよい。そうでない場合、該量子ノイズプロセスが非マルコフ過程であると見なしてもよい。即ち、量子ノイズプロセスの第1時点でのテンソル移転マッピングのノルムが何れも所定閾値よりも小さい場合、量子ノイズプロセスがマルコフ過程であると決定し、第1時点はK個の時点のうちの1番目の時点以外の他の時点である。量子ノイズプロセスの第2時点でのテンソル移転マッピングのノルムが所定閾値よりも大きい場合、量子ノイズプロセスが非マルコフ過程であると決定し、第2時点はK個の時点のうちの1番目の時点以外の少なくとも1つの時点である。
上記の方法により、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングに基づいて、量子ノイズプロセスがマルコフ過程であるか、それとも非マルコフ過程であるかを判定することができる。非マルコフノイズについて特別なノイズ抑制スキームを設定し、例えば動力学的なデカップリングによりノイズの発生を抑制してもよい。
また、動力学的なマッピングに比べて、量子系の開放環境における進化を記述する一般的な方程式は、非時間局所性の量子マスタ方程式であり、量子ノイズプロセスの数学的構造をよりよく明らかにすることができる。この方程式は微分積分方程式である。
Figure 0007098840000017


ここで、ρ(t)は量子系の時間tでの量子状態を表し、d×dの複素行列で表される。Lはリウビル演算子であり、量子系の進化プロセスにおけるコヒーレントの部分を表す。sは積分パラメータである。κ(t)は記憶カーネルであり、環境により引き起こされるシステムのデコヒーレンスに関する全ての情報を含む。量子ノイズプロセスのL及びκ(t)が取得されると、該ノイズメカニズムを完全に知ることができる。本発明の技術の基本的な思想は、実験及び量子プロセストモグラフィによりテンソル移転マッピングを計算し、L及びκ(t)の関連情報を抽出することである。
一方、量子系と環境の共同進化は、共同ハミルトニアンにより決定される。共同ハミルトニアンは以下のように表されてもよい。
Figure 0007098840000018


ここで、Hは量子系のハミルトニアンであり、Hsbは量子系と環境の相互作用ハミルトニアンであり、σ αはシステムのi番目の量子ビット(qubit)に作用するα種類目のパウリ演算子(Pauli Operator)であり、ここで、i及びαは何れも正整数のインデックスであり、B α(t)はi番目の量子ビットと結合されるα種類目の環境演算子(bath operator)である。ここで、α=x,y,zは時空間の3つの方向を表す。gはシステムと環境との結合強度(coupling strength between system and bath)である。
量子系の状態関数の進化は以下の通りである。
Figure 0007098840000019


ここで、ρ(t)は量子系の時間tでの量子状態を表し、ρ(0)は量子系の初期の量子状態を表し、ρは環境の量子状態を表し、Trは環境の自由度について部分トレース(partial trace)演算を求めることを表し、exp及びexpはそれぞれ時計回り及び反時計回りの時間順序指数演算子(chronological operator)であり、ε(t)は量子系の時間tでの動力学的な進化を表し、iは単位純虚数であり、sは積分パラメータである。
k+1-t=δt(kは正の整数である)となるように時間が離散化されている場合、時間の経過に伴って進化する一組の動力学的なマッピング
Figure 0007098840000020

を定義してもよい。実験上、これらの動力学的なマッピングは、異なる時点で量子プロセストモグラフィを行うことで取得されてもよい。
テンソル移転マッピングに関する上記の式の定義により、εをTnで表し、上述した状態関数の式に代入することで、以下の式を得ることができる。
Figure 0007098840000021

ここで、ρ(t)はn番目の時点tの量子状態を表し、ρ(tn-m)はn-m番目の時点tn-mの量子状態を表し、Tはm番目の時点のテンソル移転マッピングを表す。この式から明らかに分かるように、ノイズが存在する場合、量子系の状態進化は量子系自体の履歴的な進化に依存する。一般的には、動力学的な進化の履歴への依存は、所定の時間スパンを超えない。これは、上記の式の畳み込みにより切り捨てを行い、K(Kは正の整数である)個の時点を保留することでノイズの状態への影響を正確に推定することができることを意味し、即ちt>tの項目を全て破棄してもよい。このように、短期間の動力学的なマッピングの量子プロセストモグラフィによりこの期間のテンソル移転マッピングを取得することができる。その後、この短期間のテンソル移転マッピングを用いて、長期間の開放系進化を予測してもよい。ここで、n番目の時点tでの量子状態ρ(t)は上記の式により算出されてもよい。また、予測された量子状態と実験とを直接比較して、テンソル移転マッピングにより開放系動力学を記述する有効性を検証してもよい。言い換えれば、本発明の技術の有効性の予備的な判断基準を提供する。
以上のことから、本発明に係る態様では、量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得し、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングから量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングをさらに抽出する。テンソル移転マッピングは、量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表し、即ち、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングの経時的な進化法則を反映する。これによって、純粋な量子プロセストモグラフィに比べて、量子ノイズプロセスに関するより豊富、且つ全面的な情報を取得することができるため、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングに基づいて量子ノイズプロセスを解析する際に、より豊富、且つ全面的な情報に基づいて量子ノイズプロセスをより正確、且つ全面的に解析することができる。
また、本発明に係る態様では、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングに基づいて、量子ノイズプロセスがマルコフ過程であるか、それとも非マルコフ過程であるかを判定することができる。量子ノイズプロセスのある期間内のテンソル移転マッピングに基づいて、該量子ノイズプロセスの後続期間における状態進化を予測することができる。
例示的な実施例では、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングが抽出された後に、それに基づいて量子ノイズプロセスの相関関数及び周波数スペクトルをさらに取得してもよい。このプロセスは、以下のステップを含んでもよい。
1.量子ノイズプロセスが定常状態ノイズである場合、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングに基づいて、量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを抽出する。
定常状態ノイズ(例えばガウス定常状態ノイズ)の場合、ノイズの性質はノイズプロセスの相関関数により決定される。ノイズプロセスの相関関数は、該ノイズプロセスの2次記憶カーネルに基づいて算出されてもよい。
本発明の実施例では、量子ノイズプロセスについて、該量子ノイズプロセスが定常状態ノイズである場合、該量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングに基づいて、該量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを抽出する。
時間が離散化され、時間ステップ長さδtの2次に近似されていることを考慮すると、テンソル移転マッピングの近似を取得してもよい。
Figure 0007098840000022

ここで、δtは時間間隔(time step)であり、δn,1はクロネッカー関数(Kronecker function)であり、n=1の場合にその値は1であり、それ以外の場合にその値は0であり、nは正の整数である。κ(t)は、時間tでの記憶カーネルの値である。
一方、開放系理論から、動力学的な記憶カーネルκの正確な式は以下の通りである。
Figure 0007098840000023

ここで、
Figure 0007098840000024


はマッピング演算子であり、
Figure 0007098840000025


となり、Lはシステムと環境に作用する共同リウビル演算子であり、ρSBはシステムと環境の共同状態(joint state of system and bath)であり、Q=I-PはPと単位演算子I(identity operator)との差である。
一般的な量子系では、ノイズはプロセスにおいて予備的に制御されるため、量子系と環境との結合強度は比較的弱くなる。ターゲット量子系と環境が弱く結合している場合、2次摂動近似を確立できるため、以下の式を得ることができる。
Figure 0007098840000026

κ(t)は2次記憶カーネルの時間tでの値であり、C αα’(t)はCαα’(t)の複素共役である。なお、上記の式はシュレーディンガー表示におけるものであり、共同システムのハミルトニアンが時間に伴って変化するものでないと仮定する。ここで、2次相関関数Cαα’(t)は以下のように定義される。
Figure 0007098840000027

それは一組の環境相関関数である。2次摂動に基づいて、動力学的なマッピングを実験で抽出し、量子プロセストモグラフィによりテンソル移転マッピングを取得し、近似により記憶カーネルκexpを取得してもよい。即ち、κexpは、実験で得られた近似の2次記憶カーネルである。
ターゲット量子系と環境が強く結合している場合、2次摂動はもはや適切な近似ではないため、より適切な近似を得るためにより高次の項が必要であるが、依然として実験データからテンソル移転マッピングを抽出することで2次記憶カーネルを抽出してもよい。具体的なステップは以下の通りである。N個の異なるパラメータを選択し、量子ノイズプロセスに対して実験を行い、実験からN個の異なるパラメータにそれぞれ対応する記憶カーネルを抽出し、該N個の異なるパラメータにそれぞれ対応する記憶カーネルに基づいて、量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを算出する。
まず、N次の切り捨て近似記憶カーネルを定義する。
Figure 0007098840000028

そして、システムの記憶カーネルがそれにより近似できると仮定する。次に、パラメータが調整可能なシステムがあると仮定し、各実験でシステムパラメータωs,iを調整でき、そのハミルトニアンは以下の通りである。
Figure 0007098840000029

ここで、iはi番目のパラメータを選択して行われた実験を表し、σはパウリz演算子
Figure 0007098840000030

である。選択されたパラメータωs,i(ωs,iは実験が到達できる範囲に属する)について、ハミルトニアンを正規化し、以下の式を得ることができる。
Figure 0007098840000031

ここで、
Figure 0007098840000032

は正規化されたハミルトニアンであり、
Figure 0007098840000033


となる。N個の異なるωs,iについて実験を行うことで、物理単位のない一組の記憶カーネルを構築でき、その関係は以下の通りである。
Figure 0007098840000034

ここで、γ=ωs,0/ωs,iは正規化パラメータであり、
Figure 0007098840000035


はωs,iの場合は2n次の記憶カーネルを表す。このように、以下の行列を定義できる。
Figure 0007098840000036

そして、以下の方程式がある。
Figure 0007098840000037

ここで、AはN次の正規化パラメータ行列であり、方程式の右側の記憶カーネルは、量子プロセストモグラフィ及びデータ処理により実験から直接抽出されてもよい。Aがフルランク行列であるため、線形方程式を解いて物理単位のない2次乃至N次の記憶カーネルを取得することにより、2次記憶カーネルが取得される。
2.量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルに基づいて、量子ノイズプロセスの相関関数を計算する。
好ましくは、以下の式に従って量子ノイズプロセスの相関関数Cαα’を数値的に抽出する。
Figure 0007098840000038

ここで、κは量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを表し、tはn番目の時点を表し、Cαα’(t)は上記のn番目の時点tでの2次相関関数であり、κexpは実験により取得された近似の2次記憶カーネルを表し、δtn,t0はクロネッカー関数であり(n=0の場合、その値は1であり、それ以外の場合、その値は0である)、λは調整可能なパラメータであり、Cαα’(tn-1)はn-1番目の時点tn-1での2次相関関数である。なお、λは、目的関数が最小化された後でも、相関関数が連続的なものであることを確保するために用いられる。λの選択は、まず初期値を選択し、目的関数の大きさを観察し、反復的に調整することで行われてもよく、その値の選択は一定のロバスト性を有する。
好ましくは、非ガウス定常状態ノイズの場合、ノイズの統計的特性を十分に表現するために、2次よりも高い相関関数が必要である。以上は、この線形方程式
Figure 0007098840000039

を解くことでノイズの2次相関関数を取得することを紹介した。非ガウス定常状態ノイズを処理する場合、ノイズの記憶カーネルは以下のように記述されていると仮定してもよい。
Figure 0007098840000040

このより広義的な記憶カーネルに基づいて、上述したスキームに基づいて以下の式を得ることができる。
Figure 0007098840000041

この線形方程式を解くことで、2次以上の次数の相関関数を取得することができる。
3.量子ノイズプロセスの相関関数に対してフーリエ変換を行い、量子ノイズプロセスの周波数スペクトルを取得する。
量子ノイズプロセスの相関関数が取得されると、該相関関数に対してフーリエ変換を行い、該量子ノイズプロセスの周波数スペクトルJαα’(ω)を取得してもよい。
Figure 0007098840000042

このような量子ノイズプロセスの周波数スペクトルを取得する方法は、量子ノイズ(システムがノイズ源にフィードバックする)又は古典的なノイズに限定されず、特定のノイズ種類に限定されない。
以上のことから、本発明に係る技術では、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングを抽出した後に、それに基づいて量子ノイズプロセスの相関関数及び周波数スペクトルをさらに取得することで、量子デバイスを製造する際に対応する周波数帯域のフィルタを統合することができる。
例示的な実施例では、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングが抽出された後に、それに基づいてターゲット量子系における異なる量子デバイス間の相関ノイズを解析し、相関ノイズのノイズ源を知ることができる。このプロセスは、以下のステップを含んでもよい。
1.ターゲット量子系に含まれるs個の量子デバイスについて、該s個の量子デバイスのそれぞれに対応するテンソル移転マッピングに基づいて、該s個の量子デバイス間の相関テンソル移転マッピングを計算し、sは1よりも大きい整数である。
2.相関テンソル移転マッピングに基づいて、該s個の量子デバイス間の相関ノイズのノイズ源を解析する。
1つの量子系は複数の量子デバイスを含むことができる。量子ビットは、2つの量子状態のみを含む最も簡単な量子デバイスである。テンソル移転マッピングを用いることで、同一の量子系における複数の量子デバイス間のノイズの相関を完成させることができる。以下は、主に2つの量子デバイスの場合を紹介するが、他の場合に適用されてもよく、例えば本発明の実施例に係る方法に従って任意の2つの量子デバイス間のノイズの相関、又は任意の3つ以上の量子デバイス間のノイズの相関を判定してもよい。
任意の2つの量子系(又は量子デバイス)の動力学的なマッピングは、以下のように分解されてもよい。
Figure 0007098840000043

ここで、εn,1は第1量子デバイスの動力学的なマッピングを表し、εn,2は第2量子デバイスの動力学的なマッピングを表し、δεは分離できない部分(unseparated part)であり、相関ノイズ(correlated noise)の影響を表す。以上の動力学的なマッピングの分解は、Choi行列の形式で動力学的なマッピングε→χを表してもよく、即ち、χは、Choi行列(Choi matrix)であり、動力学的なマッピングの等価表示であり、Choi行列のトレースを取得する。
Figure 0007098840000044


Figure 0007098840000045


、又は。
Figure 0007098840000046


次に、単一の量子デバイスのChoi行列χn,iを動力学的なマッピングに戻して表現する。2つの量子デバイスの動力学的なマッピングεは、何れもこの2つの量子デバイスに対して共同の量子プロセストモグラフィを行うことで取得されてもよい。δεは相関ノイズを解析するために用いられてもよい。2次摂動の場合、通常、δεのノルムは
Figure 0007098840000047

よりも遥かに小さい。非摂動の領域では、δεのノルムと
Figure 0007098840000048

のノルムとは略等しい場合があり、|δε|は
Figure 0007098840000049

よりも遥かに大きい場合がある。このため、純粋な量子プロセストモグラフィは、相関ノイズの強度について予備的な判定を行うことができる。しかし、全てのデータが混在しているため、相関ノイズのノイズ源を解析することは困難である。通常、2つの量子デバイス間の相関ノイズの発生源は、(1)2つの量子デバイス間の直接結合により生成される相関ノイズ、(2)2つの量子デバイスにより共有環境を介して誘発された相関ノイズ、(3)上記の両方を含む。
本発明の実施例は、相関ノイズに関するより多くの情報を取得することができる、テンソル移転マッピングに基づく相関ノイズの解析方法を提供する。まず、
Figure 0007098840000050

により、分離可能なテンソル移転マッピング
Figure 0007098840000051

を計算する。
Figure 0007098840000052
Figure 0007098840000053

ここで、
Figure 0007098840000054


となり、δTはテンソル移転マッピングのノイズ相関部分(noise correlation in transfer tensor map)である。同様に、δTを以下のように分解してもよい。
Figure 0007098840000055

ここで、リウビルハイパー演算子δLは、2つの量子デバイス間の直接の結合により生成された相関ノイズがあるか否かを示し、δκは共有環境により誘発された相関ノイズを表す。δLにより引き起こされる結合増分とδtとが線形関係であり、δκにより引き起こされる結合増分とδtとが線形関係であることが分かる。2つの異なるタイムステップ長さδt及びδt’を選択し、2つの異なる動力学的なマッピングε及びε’を生成し、相関ノイズのノイズ源を判断してもよい。相関ノイズがフォールトトレラント量子計算への影響が大きいことを考慮すると、本発明に係る技術は、相関ノイズをより良く知り、それを制御するために、δL及びδκについて異なるノイズ抑制スキームを設計する。
例えば、量子プロセストモグラフィにより、ターゲット量子系における2つの量子デバイスの共同動力学的なマッピングεを取得し、テンソル移転マッピングTをさらに取得し、εにより2つの量子デバイスについてトレースをそれぞれ求めることで、εn,1及びεn,2、並びに
Figure 0007098840000056

を取得することができる。そして、
Figure 0007098840000057


により
Figure 0007098840000058

を取得する。最後に、
Figure 0007098840000059


を取得する。
そして、2組の異なる時間ステップ長さδt及びδt’
を考慮する。
Figure 0007098840000060

そして、δL及びδκnをそれぞれ求める。
以上のことから、本発明に係る技術では、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングが抽出された後に、それに基づいてターゲット量子系における異なる量子デバイス間の相関ノイズをさらに解析し、相関ノイズのノイズ源を知り、相関ノイズを抑制するための対応するスキームを設計することができる。
本発明の技術の有効性をさらに検証するために、典型的なモデルに対して数値解析を行う。その後、IBMのQuantum Experience(Quantum ExperienceはIBMにより提供される量子コンピューティング・クラウド・プラットフォームである)において本発明の技術を用いて実際の超伝導量子ビットを実験的に観察し、その中からノイズプロセスに関する情報を抽出した。
典型的なモデルに対して数値解析を行った結果は以下の通りである。
ケース1:単一の量子ビットの純粋な位相デコヒーレンスでの数値シミュレーション
図3には、
Figure 0007098840000061


とする場合の、単一の量子ビットが自由に進化するテンソル移転マッピングの結果を示している。図3の(a)は、テンソル移転マッピングのFrobeniousノルムの経時的な変化を示し、この図から分かるように、t→tの範囲内のテンソル移転マッピングの寄与が重要であり、即ちノイズプロセスが非マルコフの性質を示している。図3の(b)の線31は、初期状態
Figure 0007098840000062

に対応する密度行列の非対角要素の実数部の経時的な変化を表す。線32、線33及び線34は様々なテンソル移転マッピングの長さ(即ち、Kはそれぞれ1、3、5の場合)の密度行列についての予測効果をそれぞれ示している。この図から分かるように、Kを5とする場合、テンソル移転マッピングにより得られた進化が正確な解と良く重なり、長期間の実験的進化を十分に予測することができる。
また、図4はブロッホ体積の経時的な変化を示している。ブロッホ体積V(t)は、一定期間(t、t、t)内で増加し、該動力学的なプロセスの非マルコフ特性を明確に示しており、図3の結論を証明している。
ケース2:単一の量子ビットの純粋な位相デコヒーレンスでのノイズ相関関数の抽出
Figure 0007098840000063


とし、単一の量子ビットが自由に進化するテンソル移転マッピング方法により量子ノイズプロセスの周波数スペクトル(環境ノイズスペクトルに相当)を取得する。図5の(a)は、量子系と環境とが弱く結合している場合の、ノイズ相関関数Czz(t)の経時的な変化を示している。線51はノイズ相関関数の正確な理論的な結果を示し、各円は
Figure 0007098840000064

の仮定で記憶カーネルから得られた数値結果を示している。以上から分かるように、弱い結合の場合、テンソル移転マッピングにより得られた二次近似での記憶カーネルが量子ノイズプロセスを良く表現できる。
図5の(b)では、
Figure 0007098840000065


とし、量子系と環境とが強く結合している場合の、特定の時点Czz(t=15δt)のノイズ相関関数がノイズシステム結合強度Czz(0)=λに伴って変化する結果を示している。線42は正確な理論的な結果である。線53は、1種類目の数値結果を示し、即ち、
Figure 0007098840000066

と直接仮定し、強い結合の場合に実際のノイズスペクトルとの間に大きな差があることが分かった。線54は、2種類目の結果を示し、即ち、
Figure 0007098840000067

と直接仮定し、検討された強い結合の場合であっても、テンソル移転マッピングにより得られた記憶カーネルは、高次を考慮して実際のノイズスペクトルを良く反映できる。
ケース3:単一の量子ビットのビット・フリップ・ノイズでの相関関数の抽出
Figure 0007098840000068


とし、単一の量子ビットが自由に進化するテンソル移転マッピング方法により量子ノイズプロセスの周波数スペクトル(環境ノイズスペクトルに相当)を取得する。なお、この場合は、ノイズは純粋な位相デコヒーレントノイズではない。図6に示すように、円で示されているテンソル移転マッピングの記憶カーネルから取得された相関関数
Figure 0007098840000069


は、線61で示されている実際のノイズスペクトルと非常に一致している。この一連のシミュレーションから分かるように、環境ノイズによる影響が純粋なデフェージングを超え、例えばB(t),B(t)の場合、テンソル移転マッピングの記憶カーネルに基づいてノイズスペクトルを推定する方法は、依然として適用できる。
ケース4:デュアル量子ビットでの2つの純粋なデフェージングモデルにおける2つの量子ビットが自由に進化するテンソル移転マッピングの結果
図7の(a)は、z方向に互いに結合している2つの量子ビットがそれぞれ独立した環境ノイズにあり、この2つの量子ビットが自由に進化するテンソル移転マッピングの結果を示している。
システムハミルトニアンは、
Figure 0007098840000070


であり、環境ハミルトニアンは、
Figure 0007098840000071


であり、相関関数は、
Figure 0007098840000072


である。
線71、線72及び線73は、完全なテンソル移転マッピングT、分離可能なテンソル移転マッピング
Figure 0007098840000073


及び相関テンソル移転マッピングδTをそれぞれ表す。この図に示すように、相関テンソル移転マッピングの1番目の項目、即ちδTのみが非自明である。言い換えれば、結果から分かるように、独立したノイズ環境でのテンソル移転マッピングの相関部分が実質的にマルコフ性のものである。更なる解析から分かるように、ノイズ源が空間的に分離され、或いは互いに独立する場合であっても、δLにより生じた2つの量子のエンタングルメントが相関のデコヒーレンス効果につながる。
図7の(b)は、直接結合されていない2つの量子ビットが相関する環境ノイズにあり、この2つの量子ビットが自由に進化するテンソル移転マッピングの結果を示している。
システムハミルトニアンは、
Figure 0007098840000074

であり、環境ハミルトニアンは、
Figure 0007098840000075


である。
線74、線75及び線76は、完全なテンソル移転マッピングT、分離可能なテンソル移転マッピング
Figure 0007098840000076

、及び相関テンソル移転マッピングδTをそれぞれ表す。この場合、複数のδTは非自明である。解析により分かるように、δK(t)はδTへの主な貢献要素である。よって、テンソル移転マッピングの仕様の時間に伴う分布に基づいて、集合的なデコヒーレンスにつながる様々な物理的メカニズムの相対的な重要性を直接推定できる。
ケース5:デュアル量子ビットでのテンソル移転マッピングの開放系の動力学的な予測の有効性。
δTの重要性を調べるために、図8は、2つの量子ビットの密度行列の非対角行列要素の動力学的な進化を示している。長さがK(即ち、Kはそれぞれ1、8、16とする)のテンソル移転マッピングによる物理状態の予測結果と実際の動力学的なシミュレーション結果とを対比する。図8(a)、(b)は、1種類目のモデルにおける完全なテンソル移転マッピング及び分離可能なテンソル移転マッピングに基づく
Figure 0007098840000077


の予測結果をそれぞれ示している。図8の(c)、(d)は、2種類目のモデルにおける完全なテンソル移転マッピング及び分離可能なテンソル移転マッピングに基づく
Figure 0007098840000078


予測結果をそれぞれ示している。この2つの場合、集合的なデコヒーレンス(collective decoherence)の効果は、何れも
Figure 0007098840000079

により単独して表現できない。図7から分かるように、δT全体が非常に小さく、影響がない。しかし、δTの物質の状態に対する予測は依然として重要な役割を果たしている。これによって、高度な非マルコフシステムの複雑な特性が証明されている。
また、本発明の技術の実用性を検証するために、IBMのQuantum Experienceでテストを実施した。IBM Quantum Experienceは、IBMにより提供される超伝導量子コンピューティング・クラウド・プラットフォームであり、全ての計算は実際の超伝導量子コンピュータで実行される。超伝導量子ビットの場合、量子ゲートの動作時間が環境の関連時間に比べて長すぎ(~100ns)、一方ではノイズプロセスが純粋な位相デコヒーレントではないため、CPMG動力学的なデカップリングに基づく周波数スペクトルの抽出方法は適用できない。
図9は、IBM量子コンピューティング・クラウド・プラットフォーム「ibmq 16 Melourne」での単一の量子ビットの自由進化のテンソル移転マッピングの研究を示している。ここで、δt=2.2μsとなる。図9の(a)は、テンソル移転マッピングの仕様の時間に伴う分布を示している。図9の(b)は状態
Figure 0007098840000080

の動力学的な進化を示し、線91は実験結果である。線92、線93及び線94は、それぞれ(1、3、5)個のテンソル移転マッピングによる
Figure 0007098840000081

進化の予測結果である。記憶カーネルのタイムスケールはμsレベルであり、100nsの量子ゲート時間に比べて短くないことが分かる。
図10は、単一の量子ビットのブロッホ体積V(t)の時間に伴う分布を示している。短い増加は、量子系の非マルコフ特性を示している。
図11は、IBM量子コンピューティング・クラウド・プラットフォーム「ibmq 16 Melourne」での単一の量子ビットの動的なデカップリング(DD)の進化を示し、ここで、δt=2.64μsとなる。XY4DDプロトコルにおける4つの初期状態(a)
Figure 0007098840000082


、(b)
Figure 0007098840000083


、(c)
Figure 0007098840000084


及び(d)
Figure 0007098840000085


の3つのスピン方向の測定結果を示している。量子コヒーレンスの拡張を観察することができる。
図12は、IBM量子コンピューティング・クラウド・プラットフォーム「ibmq 16 Melourne」での単一の量子ビットの動的なデカップリング(DD)の進化を示し、ここで、δt=2.64μsとなる。XY4DDプロトコルにおけるテンソル移転マッピングの仕様の時間に伴う分布を示している。ここで、量子コヒーレンスの拡張の内部メカニズムは、このテンソル移転マッピングにより反映され、XY4DDプロトコルにおける有効なノイズは、自由進化の結果に比べてより多くのマルコフ特性を持っている。
図13は、IBM量子コンピューティング・クラウド・プラットフォーム「ibmq 16 Melourne」での2つの量子ビットの自由進化のテンソル移転マッピングの研究を示し、ここで、δt=2.2μsとなる。完全なテンソル移転マッピング|T|、分離可能なテンソル移転マッピング
Figure 0007098840000086

、及び相関テンソル移転マッピング|δT|の仕様の時間に伴う分布を示している。この一連の実験から分かるように、テンソル移転マッピングは比較的に長い時間スケールで非自明であり、強い非マルコフ特性を持っている。数値シミュレーションの結果を考慮すると、IBM量子クラウド・プラットフォーム上の2つの隣接するビットは、ビット間の結合を有し、環境ノイズの相関も有すると考えられる。
図14は、IBM量子コンピューティング・クラウド・プラットフォーム「ibmq 16Melourne」での2つの量子ビットの自由進化のテンソル移転マッピングの研究を示し、ここで、δt=2.2μsとなる。黒い点で構成された黒い線は密度行列の進化の実験結果であり、円、三角形、正方形で構成された3本の線は、それぞれ(1、2、4)個のテンソル移転マッピングを選択した密度行列の進化を予測する効果である。図14における(a)、(b)は、初期状態が非エンタングルメント状態
Figure 0007098840000087


の場合の完全なテンソル移転マッピング及び分離可能なテンソル移転マッピングに基づく予測結果をそれぞれ示している。図14(c)、(d)は、初期状態がエンタングルメント状態
Figure 0007098840000088


の場合の完全なテンソル移転マッピング及び分離可能なテンソル移転マッピングに基づく予測結果をそれぞれ示している。相関テンソル移転マッピングを含まない場合、エンタングルメント状態又は非エンタングルメント状態であっても、その進化を正確に予測できないことが分かる。δTについての更なる解析から分かるように、δLは重要な寄与を持っており、そもそも2つの量子ビット間に結合が存在することを意味する。
以下は、本発明の方法の実施例を実行するための本発明の装置の実施例を説明する。本発明の装置の実施例に開示されていない詳細について、本発明の方法の実施例を参照してもよい。
図15は本発明の1つの実施例に係る量子ノイズプロセスの解析装置のブロック図である。該装置は、上記の方法の例を実現する機能を有し、該機能は、ハードウェアにより実現されてもよいし、ハードウェアにより対応するソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。該装置は、コンピュータ機器であってもよいし、コンピュータ装置に設置されてもよい。該装置1500は、取得モジュール1510、抽出モジュール1520、及び解析モジュール1530を含んでもよい。
取得モジュール1510は、ターゲット量子系の量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、該量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得する。
抽出モジュール1520は、該動力学的なマッピングから該量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングを抽出する。該テンソル移転マッピングは、該量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表す。
解析モジュール1530は、該テンソル移転マッピングに基づいて該量子ノイズプロセスを解析する。
以上のことから、本発明に係る技術では、量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得し、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングから量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングをさらに抽出する。テンソル移転マッピングは、量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表し、即ち、量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングの経時的な進化法則を反映する。これによって、純粋な量子プロセストモグラフィに比べて、量子ノイズプロセスに関するより豊富、且つ全面的な情報を取得することができるため、量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングに基づいて量子ノイズプロセスを解析する際に、より豊富、且つ全面的な情報に基づいて量子ノイズプロセスをより正確、且つ全面的に解析することができる。
可能な態様では、該動力学的なマッピングは、該量子ノイズプロセスのK個の時点での動力学的なマッピングを含み、該Kは正の整数である。
抽出モジュール1520は、該量子ノイズプロセスの該K個の時点での動力学的なマッピングに基づいて、該量子ノイズプロセスの該K個の時点でのテンソル移転マッピングを計算する。
可能な態様では、抽出モジュール1520は、以下の式に従って該量子ノイズプロセスのn番目の時点でのテンソル移転マッピングTを計算する。
Figure 0007098840000089

ここで、T=ε、εは該量子ノイズプロセスの該n番目の時点での動力学的なマッピングを表し、εは該量子ノイズプロセスのm番目の時点での動力学的なマッピングを表し、Tn-mは該量子ノイズプロセスのn-m番目の時点でのテンソル移転マッピングを表し、n及びmは何れも正の整数である。
可能な態様では、図16に示すように、解析モジュール1530は、マルコフ判定サブモジュール1531を含む。
マルコフ判定サブモジュール1531は、該量子ノイズプロセスの第1時点でのテンソル移転マッピングのノルムが何れも所定閾値よりも小さい場合、該量子ノイズプロセスがマルコフ過程であると決定する。該第1時点は、該K個の時点のうちの1番目の時点以外の他の時点である。マルコフ判定サブモジュール1531は、該量子ノイズプロセスの第2時点でのテンソル移転マッピングのノルムが前記所定閾値よりも大きい場合、該量子ノイズプロセスが非マルコフ過程であると決定する。該第2時点は、該K個の時点のうちの1番目の時点以外の少なくとも1つの時点である。
可能な態様では、図16に示すように、解析モジュール1530は、状態進化予測サブモジュール1532を含む。
状態進化予測サブモジュール1532は、該K個の時点のテンソル移転マッピングに基づいて、該量子ノイズプロセスの後続期間における状態進化を予測する。
可能な態様では、状態進化予測サブモジュール1532は、以下の式に従って該量子ノイズプロセスのn番目の時点tでの量子状態ρ(t)を計算する。
Figure 0007098840000090

ここで、Tはm番目の時点のテンソル移転マッピングを表し、ρ(tn-m)はn-m番目の時点tn-mの量子状態を表し、n及びmは何れも正の整数である。
可能な態様では、図16に示すように、解析モジュール1530は、記憶カーネル抽出サブモジュール1533、相関関数計算サブモジュール1534、及び周波数スペクトル取得サブモジュール1535を含む。
記憶カーネル抽出サブモジュール1533は、該量子ノイズプロセスが定常状態ノイズである場合、該テンソル移転マッピングに基づいて、該量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを抽出する。
相関関数計算サブモジュール1534は、該量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルに基づいて、該量子ノイズプロセスの相関関数を計算する。
周波数スペクトル取得サブモジュール1535は、該量子ノイズプロセスの相関関数に対してフーリエ変換を行い、該量子ノイズプロセスの周波数スペクトルを取得する。
可能な態様では、記憶カーネル抽出サブモジュール1533は、N個の異なるパラメータを選択し、該量子ノイズプロセスに対して実験を行い、実験から該N個の異なるパラメータにそれぞれ対応する記憶カーネルを抽出し、該N個の異なるパラメータにそれぞれ対応する記憶カーネルに基づいて、該量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを算出する。
可能な態様では、相関関数計算サブモジュール1534は、以下の式に従って該量子ノイズプロセスの相関関数Cαα’を数値的に抽出する。
Figure 0007098840000091

ここで、κは該量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを表し、tはn番目の時点を表し、κexpは実験により取得された近似の2次記憶カーネルを表し、δtn,t0はn番目の時点と初期時点との間の間隔時間長さを表し、λは調整可能なパラメータであり、Cαα’(tn-1)はn-1番目の時点tn-1での2次相関関数である。
可能な態様では、図16に示すように、解析モジュール1530は、相関ノイズ解析サブモジュール1536を含む。
相関ノイズ解析サブモジュール1536は、該ターゲット量子系に含まれるs個の量子デバイスについて、該s個の量子デバイスのそれぞれに対応するテンソル移転マッピングに基づいて、該s個の量子デバイス間の相関テンソル移転マッピングを計算し、該相関テンソル移転マッピングに基づいて、該s個の量子デバイス間の相関ノイズのノイズ源を解析する。該sは1よりも大きい整数である。
なお、上記の実施例に係る装置は、単にその機能を実現する際の上記の各機能モジュールの区分を一例にして説明しているが、実際に応用する際に、必要に応じて上記の機能を異なる機能モジュールで実行してもよく、即ち、上述した全て又は一部の機能を遂行するように、装置の内部構成を異なる機能モジュールに区分してもよい。また、上記の実施例に係る装置は、方法の実施例と同一の思想に属し、その実施プロセスは方法実施例を参照してもよく、ここでその説明を省略する。
図17は本発明の1つの実施例に係るコンピュータ機器の構成の概略図である。該コンピュータ機器は、上記の実施例に係る量子ノイズプロセスの解析方法を実施するために用いられる。具体的には以下の通りである。
コンピュータ機器1700は、中央処理ユニット(CPU)1701、ランダムアクセスメモリ(RAM)1702及び読み取り専用メモリ(ROM)1703を含むシステムメモリ1704、並びにシステムメモリ1704及び中央処理ユニット1701に接続されるシステムバス1705を含む。コンピュータ機器1700は、コンピュータ内の各デバイス間で情報を伝送するための基本的な入力/出力システム(I/Oシステム)1706、並びにオペレーティングシステム1713、アプリケーションプログラム1714及び他のプログラムモジュール1715を記憶するための大容量記憶装置1707をさらに含む。
基本的な入力/出力システム1706は、情報を表示するためのディスプレイ1708、ユーザが情報を入力するためのマウス、キーボードなどの入力装置1709を含む。ディスプレイ1708及び入力装置1709は、何れもシステムバス1705に接続された入力出力コントローラ1710を介して中央処理ユニット1701に接続されている。基本的な入力/出力システム1706は、キーボード、マウス、又は電子スタイラスなどの他の複数のデバイスからの入力を受信及び処理するための入力出力コントローラ1710をさらに含んでもよい。同様に、入力出力コントローラ1710は、表示画面、プリンタ、又は他のタイプの出力装置への出力をさらに提供する。
大容量記憶装置1707は、システムバス1705に接続された大容量記憶コントローラ(図示せず)を介して中央処理ユニット1701に接続されている。大容量記憶装置1707及びそれに関連するコンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータ機器1700に不揮発性ストレージを提供する。即ち、大容量記憶装置1707は、ハードディスク又はCD-ROMドライブなどのコンピュータ読み取り可能な媒体(図示せず)を含んでもよい。
なお、コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでもよい。コンピュータ記憶媒体は、例えばコンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール、又はその他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法又は技術で実現される揮発性及び不揮発性、取り外し可能及び取り外し不可能な媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のソリッドステートストレージテクノロジ、CD-ROM、DVD又はその他の光ストレージ、テープカートリッジ、磁気テープ、ディスクストレージ、又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。なお、当業者が分かるように、コンピュータ記憶媒体は上記のものに限定されない。上記のシステムメモリ1704及び大容量記憶装置1707は、メモリと総称されてもよい。
本発明の各実施例では、コンピュータ機器1700は、さらに、動作するために、インターネットなどのネットワークを介してネットワーク上の遠隔コンピュータに接続されてもよい。即ち、コンピュータ機器1700は、システムバス1705に接続されたネットワークインターフェースユニット1711を介してネットワーク1712に接続されてもよく、言い換えれば、ネットワークインターフェースユニット1711を用いて他のタイプのネットワーク又はリモートコンピュータシステム(図示せず)に接続されてもよい。
該メモリには少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットがメモリに記憶され、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットは、上記の実施例に係る量子ノイズプロセスの解析方法を実現するように、1つ又は1つ以上のプロセッサにより実行される。
例示的な実施形態では、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。該記憶媒体には、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶され、該少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットは、コンピュータ機器のプロセッサにより実行される際に、上記の実施例に係る量子ノイズプロセスの解析方法を実現する。例示的な実施例では、上記のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ記憶装置などであってもよい。
例示的な実施例では、コンピュータプログラムプロダクトをさらに提供する。該コンピュータプログラムプロダクトが実行される際に、上記の実施例に係る量子ノイズプロセスの解析方法を実現する。
なお、本明細書で言及される「複数」は、2つ以上を指す。「及び/又は」は、関連付けられたオブジェクトの関連付け関係を表し、例えばA及び/又はBは、Aのみが存在すること、AとBが同時に存在すること、Bが単独で存在することの3種類の存在関係を表してもよい。文字「/」は通常、関連するオブジェクトが「又は」の関係にあることを表す。また、本明細書で説明されるステップの番号付けは、単にステップ間の実行の可能な順序を例示的に示し、他の実施例では、上記のステップは、2つの異なる番号の順序で実行されなくてもよく、例えば2つの異なる番号のステップが同時に実行されてもよいし、2つの異なる番号のステップが図示する順序とは逆の順序で実行されてもよく、本発明の実施例はこれらに限定されない。
以上は、単なる本発明の例示的な実施例であり、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の主旨及び原則の範囲内で行われる如何なる変更、均等的な置換、改善などは、本発明の保護範囲内のものである。

Claims (14)

  1. コンピュータ機器に適用される、量子ノイズプロセスの解析方法であって、
    ターゲット量子系の量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、前記量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得するステップと、
    前記動力学的なマッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングを抽出するステップであって、前記テンソル移転マッピングは前記量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表す、ステップと、
    前記テンソル移転マッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスを解析するステップと、を含む、方法。
  2. 前記動力学的なマッピングは、前記量子ノイズプロセスのK個の時点での動力学的なマッピングを含み、前記Kは正の整数であり、
    前記動力学的なマッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングを抽出するステップは、
    前記量子ノイズプロセスの前記K個の時点での動力学的なマッピングに基づいて、前記量子ノイズプロセスの前記K個の時点でのテンソル移転マッピングを計算するステップ、を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記量子ノイズプロセスの前記K個の時点での動力学的なマッピングに基づいて、前記量子ノイズプロセスの前記K個の時点でのテンソル移転マッピングを計算するステップは、
    以下の式に従って前記量子ノイズプロセスのn番目の時点でのテンソル移転マッピングTを計算するステップ、を含み、
    Figure 0007098840000092

    ここで、T=ε、εは前記量子ノイズプロセスの前記n番目の時点での動力学的なマッピングを表し、εは前記量子ノイズプロセスのm番目の時点での動力学的なマッピングを表し、Tn-mは前記量子ノイズプロセスのn-m番目の時点でのテンソル移転マッピングを表し、n及びmは何れも正の整数である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記テンソル移転マッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスを解析するステップは、
    前記量子ノイズプロセスの第1時点でのテンソル移転マッピングのノルムが何れも所定閾値よりも小さい場合、前記量子ノイズプロセスがマルコフ過程であると決定するステップであって、前記第1時点は前記K個の時点のうちの1番目の時点以外の他の時点である、ステップと、
    前記量子ノイズプロセスの第2時点でのテンソル移転マッピングのノルムが前記所定閾値よりも大きい場合、前記量子ノイズプロセスが非マルコフ過程であると決定するステップであって、前記第2時点は前記K個の時点のうちの1番目の時点以外の少なくとも1つの時点である、ステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
  5. 前記テンソル移転マッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスを解析するステップは、
    前記K個の時点のテンソル移転マッピングに基づいて、前記量子ノイズプロセスの後続期間における状態進化を予測するステップ、を含む、請求項2に記載の方法。
  6. 前記K個の時点のテンソル移転マッピングに基づいて、前記量子ノイズプロセスの後続期間における状態進化を予測するステップは、
    以下の式に従って前記量子ノイズプロセスのn番目の時点tでの量子状態ρ(t)を計算するステップ、を含み、
    Figure 0007098840000093
    ここで、Tはm番目の時点のテンソル移転マッピングを表し、ρ(tn-m)はn-m番目の時点tn-mの量子状態を表し、n及びmは何れも正の整数である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記テンソル移転マッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスを解析するステップは、
    前記量子ノイズプロセスが定常状態ノイズである場合、前記テンソル移転マッピングに基づいて、前記量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを抽出するステップと、
    前記量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの相関関数を計算するステップと、
    前記量子ノイズプロセスの相関関数に対してフーリエ変換を行い、前記量子ノイズプロセスの周波数スペクトルを取得するステップと、を含む、請求項乃至6の何れかに記載の方法。
  8. 前記K個の時点のテンソル移転マッピングに基づいて、前記量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを抽出するステップは、
    N個の異なるパラメータを選択し、前記量子ノイズプロセスに対して実験を行い、実験から前記N個の異なるパラメータにそれぞれ対応する記憶カーネルを抽出するステップと、
    前記N個の異なるパラメータにそれぞれ対応する記憶カーネルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを算出するステップと、を含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルに基づいて、前記量子ノイズプロセスの相関関数を計算するステップは、
    以下の式に従って前記量子ノイズプロセスの相関関数Cαα’を数値的に抽出するステップ、を含み、
    Figure 0007098840000094
    ここで、κは前記量子ノイズプロセスの2次記憶カーネルを表し、tはn番目の時点を表し、Cαα’(t)は前記n番目の時点tでの2次相関関数であり、κexpは実験により取得された近似の2次記憶カーネルを表し、δtn,t0はクロネッカー関数であり、λは調整可能なパラメータであり、Cαα’(tn-1)はn-1番目の時点tn-1での2次相関関数である、請求項7に記載の方法。
  10. 前記テンソル移転マッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスを解析するステップは、
    前記ターゲット量子系に含まれるs個の量子デバイスについて、前記s個の量子デバイスのそれぞれに対応するテンソル移転マッピングに基づいて、前記s個の量子デバイス間の相関テンソル移転マッピングを計算するステップであって、前記sは1よりも大きい整数である、ステップと、
    前記相関テンソル移転マッピングに基づいて、前記s個の量子デバイス間の相関ノイズのノイズ源を解析するステップと、を含む、請求項1乃至6の何れかに記載の方法。
  11. 量子ノイズプロセスの解析装置であって、
    ターゲット量子系の量子ノイズプロセスに対して量子プロセストモグラフィを行い、前記量子ノイズプロセスの動力学的なマッピングを取得する取得モジュールと、
    前記動力学的なマッピングから前記量子ノイズプロセスのテンソル移転マッピングを抽出する抽出モジュールであって、前記テンソル移転マッピングは前記量子ノイズプロセスの動力学的な進化を表す、抽出モジュールと、
    前記テンソル移転マッピングに基づいて前記量子ノイズプロセスを解析する解析モジュールと、を含む、装置。
  12. プロセッサとメモリとを含むコンピュータ機器であって、
    前記メモリには、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶され、
    前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は前記命令セットは、請求項1乃至10の何れかに記載の方法を実現するように、前記プロセッサによりロードされて実行される、コンピュータ機器。
  13. コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
    前記記憶媒体には、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶され、
    前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は前記命令セットは、請求項1乃至10の何れかに記載の方法を実現するように、プロセッサによりロードされて実行される、記憶媒体。
  14. コンピュータプログラムであって、
    前記コンピュータプログラムが実行される際に、請求項1乃至10の何れかに記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
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