JP7097056B2 - 通信装置、通信方法及びプログラム - Google Patents
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Description
天候マージンは、大容量伝送に応えるために広帯域信号が使用可能な周波数を高くするほど、また可視時間の長い低運用仰角運用時ほど大きくなり、伝送速度の低下及び可視エリアの高仰角化といったデメリットが生じる。この影響は、上述の地球観測衛星のような単体衛星のシステム効率低下のほかに、衛星コンステレーションのような複数衛星同時運用時においても、衛星機数の増加等につながるため、双方において大きな課題となっている。
衛星通信系においては、シンボルレートやロールオフ率が変わることでスペクトラムの周波数変動が発生する。また符号化方式(符号化率)が変わる場合でも、データフレーム長を固定にしない限りシンボルレートが可変となるため、同じくスペクトラムの変動が発生してしまう。
特許文献1では、符号化方式(符号化率)および変調方式を同時に制御しており、VCMによって通信方式、特に符号化方式を変更する際、(データフレーム長が変動して)スペクトラムが急峻に変動する可能性が高く、それによってキャリアロックが外れる、ということが課題となる。データ伝送容量を増加させるために多値数を増加させる、またより低Eb/Noで運用させるほど、スペクトラムの周波数変動によるキャリアアンロックはより発生しやすくなる。ゆえに昨今の地球周回衛星では、スペクトラムの周波数特性を一定に保ったままVCM制御を実施する手法の確立が求められている。
まず、予め天候(晴天/曇天/雨天等)に応じて運用時刻毎の通信方式を個別に計画しておき、天候や仰角に応じて通信方式の制御パラメータを適切にスケジューリングする実施形態を以下に示す。
図1に示すように、通信システム1は、人工衛星2に搭載された通信装置10と、地上に設置され、通信装置10から送信されたデータを受信する地上局である受信局3とを含む。なお、本発明は、静止衛星も含めた人工衛星に適用可能であるが、本実施形態でいう人工衛星2は地球周回衛星である。図1において、符号4は通信装置10から受信局3に送信される電波を示している。
図2に示すように、通信装置10は、送信方式の制御パラメータである変調方式が可変可能で、無線通信により受信局3にデータを送信する送信部20と、天候情報を取得する取得部30と、取得部30により取得された天候情報から受信局3との間の典型的には視線方向の電波の伝搬経路の天候による減衰量を推定し、推定した減衰量に応じて、送信方式の制御パラメータを制御する制御部40とを有する。
誤り訂正符号化回路21は、送信データをシリアル-パラレル変換するS/P変換部211と、パラレル変換された送信データから誤り訂正符号を生成する誤り訂正符号化部212と、これらの送信データをインターリーブするインターリーブ部213とを有する。
変調処理回路22は、入力されたデータをシリアル-パラレル変換し並列化するS/P変換部221と、並列化されたデータからI-ch及びQ-chのシンボルを生成するシンボルマッピング部222I,222Qと、パルス整形フィルタ部223I,223Qと、APSK変調部224と、合成部225とを有する。
視線方向の電波4の伝搬経路は、図4に示すように、仰角θから地上局(受信局3)の位置と人工衛星2の位置の2点が決まると、その2点を結ぶ直線L1として一意に決まる。制御部40は、取得部30の気象データベースから、これらの間の伝搬経路の伝搬エリア及び高度(A1~A4、H1~H4)の天候情報を基に、伝搬経路の天候、例えば「晴れ」、「曇り」、「雨」を推定する。
なお、ゲリラ豪雨等突発的な天候変化を除けば、天候が短時間で変化することはほとんどないため、1回の運用時間が短い地球周回衛星では、天候データを人工衛星の運用開始前に予めTT&C回線にて伝送しておくだけでよく、パス中にデータを書き換えるような運用は必要ない。ゆえに本発明の適用により、リアルタイム天候フィードバックシステムを持たずとも、天候マージンの大部分を容易に有効利用することが可能となる。
送信部20では、誤り訂正符号化回路21におけるS/P変換部211及びインターリーブ部213が前記の制御情報に応じて処理を実行し、変調処理回路22におけるS/P変換部221及びシンボルマッピング部222I,222Qが前記の制御情報に応じて処理を実行する。例えば、制御情報が図5に示す16APSKに応じた情報であるとき、S/P変換部211では4bitのデータがシリアル-パラレル変換され、インターリーブ部213ではその長さに応じてインターリーブ処理が施され、S/P変換部221ではインターリーブされたデータがシリアル-パラレル変換され、シンボルマッピング部222I,222Qでは16APSKに応じたシンボルが生成される。
制御部40は、運用計画の作例を開始すると(時刻T=T0)、時刻Tでの当該人工衛星2の位置情報(x、y、z)を決定し(ステップ601)、仰角θを算出する(ステップ602)。
制御部40は、図3に示したテーブルから、仰角情報及び推定減衰量に基づき制御パラメータ(送信方式)を決定し、その決定結果をその時刻における制御パラメータとして保存する(ステップ605,606)。
以下、制御部40は、運用終了予定時刻までの時刻ごとの制御パラメータを決定し、保存する(ステップ607,608,609)。図7にこのようにして作成された運用計画の一例を示す。
制御部40は、通信の運用を開始すると(時刻T=T0)、時刻Tを設定し(ステップ611)、時刻Tにおける制御パラメータ(変調方式)を運用計画から呼び出し(ステップ612)、その制御パラメータに応じた制御情報を送信部20に出力する(ステップ613)。具体的には、制御情報は、制御部40から、誤り訂正符号化回路21におけるS/P変換部211及びインターリーブ部213、並びに変調処理回路22におけるS/P変換部221及びシンボルマッピング部222I,222Qに出力される。送信部20は、この制御情報に応じた変調方式により送信データを送信する。
以下、制御部40は、運用終了時刻まで以上のステップ611~613の処理を実行する(ステップ614,615)。
本発明の一形態に係る通信装置では、人工衛星から光学センサや電波センサ等の観測センサを用いて静的または動的に伝搬経路の状況を取得し、人工衛星の通信装置内でその情報を処理することで、地上局(受信局)方向を見たときの伝搬経路の物理パラメータをリアルタイムに推定してもよい。これにより、フィードバック系を持たずにリアルタイムな天候推定ができる。
図8は、このようなリアルタイム情報を利用した通信装置を含む通信システムの構成を示す図である。
図8に示すように、通信システム100は、人工衛星2に搭載された通信装置10の取得部が観測センサ101である点が、上記の実施形態に係るシステムと構成が異なる。
観測センサ101は、電波の伝搬経路方向、つまり地上局(受信局3)方向に向けて天候状況を観測する。これにより減衰の発生する伝搬経路そのものの状況を把握することができる。観測センサ101としては、光学センサや電波センサなどを用いることができる。
観測センサ101として、例えば光学センサを使用する場合には、晴天時は伝搬経路には遮る物がないため、地上の状況がそのまま観測されるが、曇天・雨天時は伝搬経路上に雲が存在するため、データに雨雲が映りこむことになる。通信装置10の制御部40は典型的な晴天時と曇天・雨天時のデータをデータベースに保持し、このデータを用いて取得部である観測センサ101で取得した天候情報を評価することで、経路中の雲量を導出し、伝搬経路の物理パラメータである天候による電波の減衰量を推定する。なお、2点間の距離は所定時刻の仰角及び軌道高度から導き出せる。
制御部40は、運用が開始されると(このときの時刻T=T0)、現在の時刻Tでの当該人工衛星2の位置情報(x、y、z)を決定し(ステップ901)、仰角θを算出する(ステップ902)。
制御部40は、取得部30からリアルタイム環境情報である観測センサ101の観測結果を取得する(ステップ903)。
制御部40は、観測センサ101で取得したデータを評価することで、現在時刻Tにおける天候よる減衰量を推定する(ステップ904)。
制御部40は、図3に示したテーブルから、仰角情報及び推定減衰量に基づき制御パラメータ(送信方式の制御パラメータ)を決定し(ステップ905)、その制御パラメータに応じた制御情報を送信部20に出力する(ステップ906)。送信部20は、この制御パラメータに応じた変調方式により送信データを送信する。
以下、制御部40は、運用終了時刻まで以上のステップ901~907の処理を実行する(ステップ907,908)。
上記の実施形態では、制御パラメータが可変可能な変調方式としてAPSK(Amplitude & Phase Shift Keying:振幅位相変調)を用いていたが、他の変調方式であってもよい。例えば、変調方式としてQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅位相変調)を用いてもよい。図10にその一例として16QAMの信号空間ダイヤグラムを示す。
この場合も上記の実施形態と同様に、制御部40の制御のもとで、天候などによる推定減衰量に応じて、16QAM,32QAM,64QAM,・・・のうち一つを変調方式として選択し、その制御パラメータで送信部20からデータを送信するように構成すればよい。
本実施形態に係る通信装置10では、天候情報を取得し、それをもとに天候に応じた適切な運用を行うことで、フィードバック系を持たずに天候減衰を予測可能になるため、人工衛星2側で自律的に送信方式を設定することが可能となり、天候マージンの有効活用が実現できる。そして、VCM運用の際にその天候マージンを利用することで、変調方式の多値数を増加させることができ、またはより低い運用仰角から多値数の増加を進めることができるようになり、通信データ伝送容量の更なる増大化が達成される。
Ka帯では降雨減衰の影響が非常に大きい。特に低仰角時においては、晴天時と降雨時で回線マージンに大きな開きがある。なお、回線マージン仕様とは、システムが要求するC/No に対する当該回線で得られる受信 C/ Noの比である。
天候情報に応じたスケジューリングを行った場合、晴天時においては降雨減衰がなくなるため、雨天時よりも多くの回線マージンを確保できる。従って、より多値の変調方式を採用したスケジューリングを実行できる。
天候マージンを活用する場合、従来のシステムと比べてより高い多値数の変調方式が採用されるようになる。しかし特許文献1に記載の技術のような符号化方式及び変調方式を変更パラメータとしたVCMの場合、誤り訂正符号化回路において変調処理が複雑化し、それに伴って回路規模も大幅に増加する、といった課題が生じる。符号化率/符号化方式を可変としたVCMを実施する場合、データ処理の関係から符号化率//符号化方式の数だけ誤り訂正符号化回路を並列に並べる必要があるため、回路規模の大幅増加が見込まれる。符号化情報記憶部をその都度書き換える手法をとれば回路を並列に並べなくて済むが、天候情報を活用する本発明ではリアルタイムなデータの符号化が必要とされるため、搭載リソースの制約から、現状の地球周回衛星では困難と考えられる。
これに対して、本発明の如く変調方式を可変する回路に関しては、信号の振幅情報のみを制御することで変調方式が変更可能であるため、多値数が増加した場合でも回路構成や処理内容をほとんど変更させることなく通信方式の切り替えが実施できる。ゆえに、変調方式のみを可変パラメータとし、符号化方式等他のパラメータは不変とすることで、より小さいシステムリソースで効率のよりデータ通信を実施することが可能となる。
上記の実施形態では、送信方式の制御パラメータのうち変調方式を制御していたが、他の制御パラメータ、例えば符号化方式や符号化率、送信電力なども推定した天候による減衰量などに応じて制御してもよい。この場合に、変調方式に加えて他の制御パラメータを制御してもよいし、変調方式以外の制御パラメータを制御してもよい。
図11に示すように、通信装置10では、制御部40から送信部20に変調方式に加えて符号化方式、符号化率及び送信電力を制御するための制御情報を送る点が上記の実施形態とは異なる。
制御部40は、図12に示すように、仰角θごと(例えば5°ごと)に天候及び天候による推定減衰量と変調方式と符号化方式と符号化率と送信電力の関係を規定するテーブルを有する。ここで、符号化方式とは、低密度パリティ検査(Low-Density Parity Check : LDPC)符号 やリード・ソロモン符号(Reed-Solomon Coding:R-S)、ターボ符号等がある。
上記の実施形態は、地球周回衛星に本発明に係る通信装置を適用した通信システムを例にとり説明したが、例えば静止衛星と航空機との間で通信を行う通信システムにも本発明を適用できる。図13にその例を示す。
図13に示すように、航空機204は雲よりも低く飛行する場合がある。この条件下では静止衛星201と航空機204との間の通信環境が天候によってリアルタイムに大きく変化する。そこで、この通信システム200では、静止衛星201に本発明に係る通信装置(図示を省略)を搭載する。これにより、静止衛星201から航空機204への通信容量を増大させることができる。図中、符号203は静止衛星201が搭載する本発明に係る通信装置のアンテナ、符号202は本発明に係る通信装置の観測センサを示している。また、符号205は航空機204が搭載する通信用のアンテナを示している。
航空機204のように移動経路が予め予測できる移動体と静止衛星201との間の通信では、静止衛星201が持つ観測センサ202によって航空機204が次に移動する場所(未来のサービス地域)の環境情報を直前に容易に取得できるため、リアルタイムに回線マージンを管理可能であり、伝送容量の最大化を図ることができる。
なお、上記の例は静止衛星が本発明に係る通信装置を搭載していたが、上記のシステムにおいて航空機側が本発明に係る通信装置を搭載してもよい。
例えば、船舶等で用いられる海上通信を考える。特に遠洋での海洋通信の場合、伝搬環境は見通し、かつ長距離通信となる。現状そのような環境では、回線設計は降雨時・高波時等のワースト条件にて実施されており、衛星通信と同様、晴天時や凪時は、大幅な回線マージンが生じている。
そこで、このような通信に本発明に係る通信装置を適用する。本発明に係る通信装置を適用によって、エリアごと環境ごとの降雨減衰量が推定可能となるため、降雨時のワースト条件にて回線設計をする必要がなくなり、回線マージンの有効活用が可能となる。
本発明は上記の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内で変形や応用して実施することが可能であり、その実施の範囲も本発明の技術的範囲に属する。
本発明に係る制御部や取得部、送信部、その他の処理部は、専用のハードウェアであっても、メモリとメモリに格納されるプログラムを実行するCPUとを備える制御回路であってもよい。これらは、専用のハードウェアとして実現される場合、例えば単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プロセッサ化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものであってもよい。
2 :人工衛星
3 :受信局
10 :通信装置
20 :送信部
30 :取得部
40 :制御部
100 :通信システム
101 :観測センサ
200 :通信システム
201 :静止衛星
202 :観測センサ
204 :航空機
Claims (7)
- 送信方式の制御パラメータが可変可能で、無線通信により受信局にデータを送信する送信部と、
伝搬エリアごと高度ごとの天候情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された天候情報から前記受信局との間の電波の伝搬経路の天候による減衰量を推定し、前記推定した減衰量に応じて前記制御パラメータを制御する制御部と
を具備する通信装置であって、
前記制御部は、前記受信局との仰角から前記受信局との間の電波の伝搬経路を決め、前記電波の伝搬経路の伝搬エリア及び高度の前記天候情報を基に、前記電波の伝搬経路の天候による減衰量を推定し、前記推定した減衰量に応じて前記制御パラメータを制御する
通信装置。 - 前記取得部は、予め、天候データを取得し、取得した天候データから所定の各エリアの高度ごとの天候情報を予測し、その予測した天候情報をデータベースとして保持する
請求項1に記載の通信装置。 - 前記取得部は、前記受信局との間の電波の伝搬経路の天候状況を観測するセンサを有し、
前記制御部は、予め保持する天候に関するデータを用いて前記センサでの観測結果を評価し、評価結果から前記受信局との間の電波の伝搬経路の天候による減衰量を推定する
請求項1に記載の通信装置。 - 前記送信部は、前記送信方式の制御パラメータのうち変調方式が可変可能であり、
前記制御部は、前記推定した減衰量に応じて、前記変調方式を制御する
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の通信装置。 - 前記送信部は、更に、前記送信方式の制御パラメータのうち符号化方式、符号化率及び送信電力のうち少なくとも1つを可変可能に構成され、
前記制御部は、前記変調方式に加えて、前記符号化方式、前記符号化率及び前記送信電力のうち少なくとも1つの制御パラメータを前記推定した減衰量に応じて制御する
請求項4に記載の通信装置。 - 伝搬エリアごと高度ごとの天候情報を取得し、
前記取得した天候情報から受信局との間の電波の伝搬経路の天候による減衰量を推定し、
前記推定した減衰量に応じて送信方式の制御パラメータを決定し、
前記決定した送信方式の制御パラメータによって前記受信局にデータを送信する
通信方法であって、
前記受信局との仰角から前記受信局との間の電波の伝搬経路を決め、前記電波の伝搬経路の伝搬エリア及び高度の前記天候情報を基に、前記電波の伝搬経路の天候による減衰量を推定し、前記推定した減衰量に応じて前記制御パラメータを制御する
通信方法。 - 伝搬エリアごと高度ごとの天候情報を取得し、
前記取得した天候情報から受信局との間の電波の伝搬経路の天候による減衰量を推定し、
前記推定した減衰量に応じて送信部の送信方式の制御パラメータを決定し、
前記決定した送信方式の制御パラメータによって前記送信部から前記受信局にデータを送信させる
ステップをコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記受信局との仰角から前記受信局との間の電波の伝搬経路を決め、前記電波の伝搬経路の伝搬エリア及び高度の前記天候情報を基に、前記電波の伝搬経路の天候による減衰量を推定し、前記推定した減衰量に応じて前記制御パラメータを制御する
ステップをコンピュータに実行させるプログラム。
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