JP7091305B2 - 冷却構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に設けられた電動機の冷却を行うための冷却構造に関する。
近年では、発電用の第一電動機(MG1)と駆動用の第二電動機(MG2)との二つの電動機を備え、エンジンにより第一電動機を駆動させて発電し、その電力の供給を受けて第二電動機が駆動して走行するハイブリッド車(シリーズ式ハイブリッド車)が提供されている。このようなハイブリッド車の電動機を冷却するものとして、下記特許文献1には電動機を冷却する冷却装置が開示されている。
特開2017-61226号公報
特許文献1の冷却装置では、ロータ軸の内部に挿入された冷却パイプに熱媒体であるオートマティックトランスミッションフルード(ATF)を供給して、冷却パイプの貫通孔からATFを噴出させる。これにより、特許文献1の冷却装置では、ロータの内側から熱媒体を供給して回転電機を冷却可能としている。
しかしながら、特許文献1の冷却装置では、冷却パイプからオイルを噴出させる貫通孔の大きさや、冷却パイプ内に熱媒体を圧送する圧力などによりロータ軸に流入させる熱媒体の量の調整を行う必要がある。この場合、冷却パイプの加工の難易度が上がる、冷却パイプに別部材を設ける必要があるなど、コスト増加の要因となる。
そこで本発明は、コストを抑制しつつ、ロータ軸内の所望の位置に効率的にオイルを到達させることができる冷却構造の提供を目的とした。
上述の課題を解決すべく提供される本発明の冷却構造は、ロータ軸を備える電動機と、前記電動機を収容するケース体と、前記電動機を冷却するオイルの流路となる油路と、を備える電動機の冷却構造であって、吐出口を備え、前記油路からオイルが供給されるノズル部を有し、前記ロータ軸が、中空部と、前記中空部から前記ロータ軸の外側に連通する軸連通孔と、前記ロータ軸の内周に内周方向に向けて突出する突起部と、を備え、前記ノズル部が、前記中空部に配置されており、前記吐出口が、前記ロータ軸の軸線方向において、前記突起部と前記軸連通孔との間に位置していることを特徴とするものである。
本発明の冷却構造によれば、ロータ軸の内部に供給したオイルを効率的に中空部に留めつつ、オイルを軸連通孔に到達させることができる。すなわち、本発明の冷却構造によれば、突起部によりオイルの流れを制限して、ロータ軸の内部における軸連通孔が設けられた箇所にオイルが溜まりやすくなる。その結果、オイルを確実にロータに供給するとともにロータ軸内周にオイルを這わせて、熱交換によりロータを冷やすことができる。
また、別の観点から本発明の冷却構造を説明すると、ロータ軸の内部(中空部)において、ノズル部の先端がロータ軸に設けられた軸連通孔の手前となるように、ノズル部の長さが設定されている。そのため、本発明の冷却構造は、ノズル部の長さを短くすることで、コストダウンや軽量化を実現することができる。
本発明の冷却構造は、前記突起部が、前記吐出口の近傍に設けられているものであるとよい。
仮に、突起部と離れた位置に吐出口がある場合、突起部を乗り越えて突起部よりも外側に流出する量のオイルを、突起部よりも前に溜めることができないことが想定される。これに対して、上述の構成では、吐出口を突起部近傍(かつ、突起部と軸連通孔の間)に設けている。そのため本発明の冷却構造は、オイルが確実に突起部を乗り越えて、軸受を潤滑することができる。
本発明の冷却構造は、前記ロータ軸を支持する軸受を備え、前記軸受が、前記ロータ軸の軸線方向の両側のうち少なくとも前記ケース体の外側部側に設けられており、前記吐出口が、前記軸受の近傍に設けられているものであるとよい。
上述の構成によれば、ロータの軸線方向におけるケース体側から(ノズル部の挿入方向よりも手前側から)オイルを流入させることができる。これにより、本発明の冷却構造は、ロータ軸の内周面にオイルを這わせて効率的に熱交換を行うことができる。
ここで、本発明の発明者らは、ノズル部から吐出されるオイルの吐出圧について、さらに効率的な構成を検討した。具体的に説明すると、油路の圧力が高い場合、ノズル部から吐出されるオイルの勢いが強くなり、オイルがロータ軸内に拡散して、効率良く連通孔に到達しない場合があることが判明した。さらに本発明の発明者らが検討したところ、ノズル部の開口(吐出口)を下向きとすれば、吐出口からオイルが流下するようにロータ軸内に供給することができるとの知見に至った。また、これにより、コストの増加を抑制しつつ、ロータ軸内の所望の位置にオイルを効率的に到達させることができるとの知見に至った。
上述の知見に基づき提供される本発明の冷却構造は、ロータ軸を備える電動機と、前記電動機を収容するケース体と、前記電動機を冷却するオイルの流路となる油路と、を備える電動機の冷却構造であって、吐出口を備え、前記油路からオイルが供給されるノズル部を有し、前記ロータ軸が、中空部と、前記中空部から前記ロータ軸の外側に連通する軸連通孔と、を備え、前記ノズル部が、前記中空部に配置されており、前記吐出口が、前記電動機を車両に搭載した状態における上下方向において下方側に向けて開口していることを特徴とするものである。
本発明の冷却構造によれば、コストの増加を抑制しつつ、ロータ軸内の所望の位置にオイルを効率的に到達させることができる。
ここで、本発明の発明者らは、ノズル部に流入するオイルの流量や、吐出口から吐出されるオイルの勢いを調整する手法についてさらに検討した。吐出口から吐出されるオイルの勢いを調整する場合、ノズル部に孔を形成するなどにより、吐出口を設けることが考えられる。しかしながら、パイプ状の部材に孔を形成する工程が生じる上、精度を出すためのコストも生じる。
本発明の発明者らがコストを抑制しつつオイル流量を調整するための手法を模索した結果、ノズル部と油路との間に区画壁を設け、区画壁に貫通孔を設定することで、ノズル部に流入するオイル量を柔軟に調整することができるとの知見に至った。具体的に説明すると、区画壁に貫通孔を設ける構成とすれば、ノズル部に流入するオイルの勢いや流量を貫通孔の大きさを調整することで柔軟に設定することができる。また、筒状の部品に孔を設ける場合(加工により吐出口を形成する場合)と比較して、板状のものに孔を形成するほうが、加工を容易に行うことができる上、コストを抑制しつつ精度よくオイル量を設定することができる。
上述の知見に基づき提供される本発明の冷却構造は、前記油路と前記ノズル部の内部空間とを区画する区画壁を備え、前記区画壁には、前記油路と前記ノズル部の内部空間とを連通させる貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
上述の構成によれば、コストを抑制しつつオイル量を精度良く調整することができる。
さらに、本発明の冷却構造は、前記ロータ軸が、前記ロータ軸の内周に内周方向に向けて突出する突起部を備え、前記突起部の近傍には、前記ロータ軸を支持する軸受が取り付けられており、前記突起部と前記ノズル部の外周面との間には、オイルが流出可能な隙間が形成されているものであるとよい。
上述の構成によれば、ロータ軸の内部に供給したオイルを効率的に中空部に留めつつ一部を中空部から流出させて、軸受を潤滑することができる。
ところで、トランスアクスルでは、電食カバー(介在部材)などとケース体との間に、絶縁処理などが施されたプレート部材(介在部材)が配置される場合がある。本発明の発明者らは、このようなプレート部材に貫通孔(オリフィス)を設定することで、ノズル部に到達する前の段階でオイルの流量を柔軟に調整することができることに加え、既存部品を活用してオイル量の調整を行い得るとの知見に至った。なお、本発明の冷却構造では、貫通孔の一例として、小孔として設けてもよい。
上述の知見に基づき提供される本発明の冷却構造は、前記油路と前記ノズル部との間を隔てるように設けられるプレート部材を備え、前記プレート部材には、前記油路と前記ノズル部の内部空間とを連通させる貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
上述の構成によれば、既存の部品を活用して、ノズル部に流入するオイル量を調整することができる。
さらに、本発明の冷却構造は、前記油路と前記ノズル部の内部空間とを区画する区画壁を備え、前記区画壁には、前記油路と前記ノズル部の内部空間とを連通させる貫通孔が形成されており、前記貫通孔が、前記ノズル部の軸芯に対してオフセットするように設けられているものであるとよい。
上述の構成によれば、貫通孔を通過したオイルは、ノズル部の先端の内壁に当たり、勢いを削がれた状態で吐出口から流下する。その結果、中空部内でのオイル拡散を抑制し、効率良くオイルを軸連通孔に案内することができる。
本発明によれば、コストを抑制しつつ、ロータ軸内の所望の位置に効率的にオイルを到達させることができる冷却構造を提供することができる。
本発明の実施形態に係る冷却構造を備えるトランスアクスルを示す模式図である。 図1のトランスアクスルのギア室を示す側面図である。 図1のトランスアクスルを前方側の側面図である。 図1のトランスアクスルのモータ室側の構成を示す分解斜視図である。 図1のトランスアクスルのロータ軸及びノズル部を示す断面図である。 図1の冷却構造におけるオイル流れの全体を示す斜視図である。 図1の冷却構造を示す側面視における概念図である。
以下、本発明の実施形態に係る冷却構造10について、図面を参照しつつ説明する。
なお、以下の説明では、冷却構造10の詳細に先立って、冷却構造10を備えるトランスアクスル1の全体構成について説明する。冷却構造10は、トランスアクスル1における第一電動機20(MG1)や第二電動機30(MG2)を冷却するための構造である。
なお、本発明の冷却構造は、シリーズ式ハイブリッド車のトランスアクスルに設けられるものに限定されず、車両のモータ(電動機)を冷却するものとして、パラレル式ハイブリッド車、AT車、電気自動車などに好適に採用することができる。また、本発明の冷却構造は、トランスアクスルに設けられるものに限定されず、電動機を冷却するものとして採用することができる。
トランスアクスル1は、図1に示す車両Vに設けられている。車両Vには、エンジン(図示を省略)及び図示を省略したバッテリが設けられている。車両Vは、エンジンを動力源として後述する第一電動機20を駆動させ、第一電動機20の駆動により後述する第二電動機30を駆動させて走行可能とされているとともに、エンジンを停止させてバッテリを動力源として駆動させて第二電動機30を駆動させて走行(EV走行)することができる、いわゆるシリーズ式ハイブリッド車とされている。
なお、以下の説明では、トランスアクスル1を車両Vに搭載した状態における上下方向を、単に「上下方向H」と記載して説明する。また、上下方向Hにおいて、上方を単に「上方Up」と、下方を単に「下方Lw」と記載して説明する。
また、以下の説明では、トランスアクスル1を車両Vに搭載した状態において、車両Vの前後方向を、単に「前後方向X」と記載して説明する。また、前後方向Xにおいて、前方を単に「前方Fr」と、後方を単に「後方Rr」と記載して説明する。
さらに、以下の説明では、トランスアクスル1を車両Vに搭載した状態において、車両Vの幅方向を、単に「幅方向W」と記載して説明する。
図1に示すとおり、トランスアクスル1は、トランスアクスルハウジング40、第一電動機20(電動機)、第二電動機30(電動機)、デファレンシャル機構32を備えている。
また、トランスアクスル1には、オイルポンプ60、区画プレート61(区画部)、オイルポンプボデー62、リリーフ弁63(圧力調整装置)、ストレーナ64、オイルクーラ70、電食カバー80、絶縁プレート84、温度センサ86、及び冷却パイプ90が設けられている。
第一電動機20(MG1)は、モータジェネレータからなる。第一電動機20には、インバータなどを内蔵する発電機コントローラが接続されている。なお、図示を省略するが、発電機コントローラは、トランスアクスル1の上部に搭載されている。第一電動機20から出力される交流電力は、発電機コントローラにより直流電力に変換されて、その直流電力が電池に供給されることにより、電池が充電される。第一電動機20は、エンジン(図示を省略)の駆動により回転動力が伝達されて駆動する。
第二電動機30(MG2)は、モータジェネレータからなる。第二電動機30には、インバータなどを内蔵するモータコントローラが接続されている。なお、図示を省略するが、発電機コントローラは、トランスアクスル1の上部に搭載されている。モータコントローラには、電池が接続されている。電池から出力される直流電力がモータコントローラに供給され、その直流電力がモータコントローラにより交流電力に変換されて、交流電力が第二電動機30に供給されることにより、第二電動機30が駆動される。
なお、以下の説明では、第一電動機20(MG1)及び第二電動機30(MG2)を総称して、単に「電動機18」と記載して説明する場合がある。
第一電動機20及び第二電動機30は、それぞれステータ、及びロータ軸を有するロータを備えている。
図5に示すとおり、第一電動機20のロータ軸24には、中空部24a、軸連通孔24b、及び突起部24cが形成されている。中空部24aには、後述するノズル部82からオイルが供給され、中空部24aのオイルは軸連通孔24bからロータ軸24の回転による遠心力によりロータ軸24の外側に流出する。なお、ロータ軸24に案内されたオイルの流れについては、後で詳述する。
デファレンシャル機構32は、左右の駆動輪を駆動する左右一対のドライブシャフト(図示を省略)の間の差動を許容するとともに、これら左右一対のドライブシャフトに回転動力を伝達するように構成されている。図1に示すとおり、デファレンシャル機構32には、デフリングギア32a、デファレンシャルギア32bを含む複数のギアにより構成されている。
第二電動機30の動力は、複数のギアを介して、デファレンシャル機構32のデフリングギア32aに伝達され、デファレンシャル機構32から駆動輪2に伝達される。これにより、駆動輪2が回転し、車両Vが走行する。
トランスアクスルハウジング40(ケース体)は、第一電動機20や第二電動機30等を収容するための収容体である。図1に示すとおり、トランスアクスルハウジング40(ケース体)は、三つの構成部材によりひとつの収容体をなしている。より具体的に説明すると、トランスアクスルハウジング40は、第一構成体40a、第二構成体40b、及び第三構成体40cにより構成されている。
図1に示すとおり、第一構成体40aは、トランスアクスルハウジング40において幅方向Wの中間部分を形成している。図1に示すとおり、第一構成体40aには、区画壁43が形成されており、区画壁43によりモータ室41となる空間と、ギア室42となる空間とが仕切られている。また、第二構成体40bは、第一構成体40aのモータ室41側に取り付けられている。さらに、第三構成体40cは、ギア室42側に取り付けられている。
以下の説明では、第一構成体40a、第二構成体40b、及び第三構成体40cを総称して、トランスアクスルハウジング40と記載して説明する場合がある。
上述のとおり、トランスアクスルハウジング40の内部空間は、区画壁43によりモータ室41とギア室42とに仕切られている。図1に示すとおり、モータ室41には、第一電動機20及び第二電動機30が収容されている。ギア室42には、デファレンシャル機構32が収容されている。
また、トランスアクスルハウジング40の内部にはオイルが収容されており、後述するオイルポンプ60によりオイルが圧送され、第一電動機20や第二電動機30が冷却されている。
なお、本実施形態の冷却構造10におけるトランスアクスルハウジング40は、上述のとおり、三つの構成部材により構成されるものとした例を示したが、本発明の冷却構造におけるケース体は本実施形態に限定されず、二つ、あるいは四つ以上の構成体により形成されるものであってもよい。
トランスアクスルハウジング40には、複数の貫通孔や凹部が形成されている。トランスアクスルハウジング40に形成された貫通孔や凹部の少なくとも一部は、後述する油路100のうち、内部油路100aを構成している。なお、油路100の詳細については後で詳述する。
図2は、トランスアクスル1のギア室42を示す側面図である。図2に示すとおり、トランスアクスルハウジング40のギア室42側の底部には、オイル貯留部50が設けられている。オイル貯留部50は、後述する油路100を循環するオイルが溜められる部分である。オイル貯留部50には、ストレーナ64が配置されている。図7及び図6に示すとおり、ストレーナ64を介してオイル貯留部50からオイルポンプ60に汲み上げられ、圧送されたオイルは油路100を経由して各電動機18の冷却に用いられる。また、電動機18の冷却等に用いられたオイルは、モータ室41からギア室42に連通する貫通孔などを介して、再びオイル貯留部50に戻る。
オイルクーラ70は、オイルと水との間で熱交換を行う熱交換器である(水冷式クーラ)。図3に示すとおり、オイルクーラ70は、前方Fr側から側面視した状態において、略四角の外観を備えている。図3に示すとおり、オイルクーラ70には、オイルの入口となるオイル入口70aと、オイルの出口となるオイル出口70bとが設けられている。また、オイルクーラ70には、オイルを冷却するための水の出入口70c,70dが設けられている。
図3に示すとおり、オイルクーラ70のオイル入口70aとオイル出口70bとは、オイルクーラ70の対角となる位置に設けられている。また、オイル入口70a及びオイル出口70bは、トランスアクスル1が車両Vに搭載された状態において、上下方向Hに沿うように配置されている。
図5に示すとおり、電食カバー80(介在部材)は、ロータ軸24とトランスアクスルハウジング40との間に介在するように設けられている。また、電食カバー80には、ロータ軸24を支持する軸受88が取り付けられている。電食カバー80や軸受88は、アルマイト処理が施されており、トランスアクスルハウジング40とロータ軸24との間の電位差による腐食(電食)を抑制している。
図4に示すとおり、電食カバー80には、ノズル部82が設けられている。図5に示すとおり、ノズル部82は、ロータ軸24の中空部24aに配置されており、中空部24aにオイルを供給するためのものである。ノズル部82には、オイルの流出口となる吐出口82aが形成されている。本実施形態の電食カバー80は、鋳造により成型されている。
図4や図5に示した絶縁プレート84(介在部材、プレート部材)は、絶縁処理が施された板状部材である。絶縁プレート84は、電食カバー80とトランスアクスルハウジング40との間に介在するように設けられている。図4に示すとおり、絶縁プレート84には、貫通孔84a(オリフィス)が形成されている。貫通孔84aは、吐出口82aに対してオフセットするように設けられている。これにより、貫通孔84aから勢いよく出たオイルが直接ノズル部82の吐出口82aを通って、ロータ軸24の先に供給されることを抑制することができる。言い方を換えれば、ロータ軸24の内周面に確実にオイルを供給することができる。また、貫通孔84aは、絶縁プレート84がトランスアクスルハウジング40(第二構成体40b)に組み付けられた状態において、ロータ軸24の軸芯C(ノズル部82の軸芯)に対して、距離L2分オフセットするように形成されている。
温度センサ86は、オイルの温度を検出するために設けられている。図5に示すとおり、温度センサ86は、先端が袋小路部47に差し込まれており、他端側が絶縁プレート84と向かい合うように取り付けられている。トランスアクスル1では、絶縁プレート84や電食カバー80が、温度センサ86の抜け止めとして機能している。なお、これらの配置の詳細については、後述する。
冷却パイプ90は、オイルを噴出させて電動機18を冷却するためのパイプ部材である。冷却パイプ90は、トランスアクスルハウジング40内のモータ室41に設けられている。図7に示すとおり、冷却パイプ90は、第一電動機20の上方Upと、第二電動機30の上方Upとの、それぞれに設けられている。冷却パイプ90には、オイル噴出口93が設けられており、冷却パイプ90に供給されたオイルは、オイル噴出口93から各電動機18に向けてシャワー状に噴出されて各電動機18を冷却する。
なお、以下の説明では、第一電動機20の冷却を行う冷却パイプ90を第一冷却パイプ91と記載して説明し、第二電動機30の冷却を行う冷却パイプ90を第二冷却パイプ92と記載して説明する。
<冷却構造の油路について>
続いて、冷却構造10における油路100について説明する。図6は、油路100の全体の構成を示す概念図である。油路100は、各電動機18を冷却するオイルの流路として設けられている。
本実施形態の冷却構造10の油路100には、内部油路100a及び外部油路100bが含まれている。内部油路100aは、トランスアクスルハウジング40に形成された貫通孔、あるいはトランスアクスルハウジング40に凹部を形成して当該凹部を別部材により閉塞されて、オイルの流路をなしているものである。また、外部油路100bは、トランスアクスルハウジング40とは異なる部材(例えば、パイプ部材など)によりオイルの流路をなしているものである。
図7に示すとおり、冷却構造10では、オイル貯留部50のオイルがストレーナ64を介してオイルポンプ60により上方Upに汲み上げられる。図6及び図7に示すとおり、オイルポンプ60により汲み上げられたオイルは、オイルポンプボデー62に形成された圧力調整室53を経由して第一電動機20の外側を迂回するように形成された内部油路100aに案内され、オイルクーラ70に到達する。
図6に示すとおり、オイルクーラ70は、下方Lw側の油路100と上方Up側の油路100とを連結するように設けられている。別の観点から説明すると、油路100は、オイルクーラ70を介して下方Lw側の油路100と上方Up側の油路100とが連結されており、オイルクーラ70が上方Upに向けてオイルを搬送する流路をなしている。
図6に示すとおり、オイルクーラ70から流出したオイルは、電動機18の軸線方向Gの両側に分岐して分配され、さらに枝分かれするように分配される。具体的には、オイルクーラ70から流出したオイルは、第一電動機20の上方Up側に向かう第一供給路111と、第二電動機30の上方Up側に向かう第二供給路112と、第一電動機20のロータ軸24に向かう第三供給路113との、三つの経路に分配される。
このように、冷却構造10では、オイルポンプ60によりオイルをオイルクーラ70に向けて圧送し、オイルクーラ70から流出したオイル(冷却されたオイル)が複数箇所に向けて分配される。
第一供給路111は、第一冷却パイプ91と接続されており、第一電動機20を冷却するためのオイルの供給路となっている。また、第二供給路112は、第二冷却パイプ92と接続されており、第二電動機30を冷却するためのオイルの供給路となっている。
図5に示すとおり、第三供給路113を経由したオイルは、ノズル部82を通ってロータ軸24の内側(中空部24a)に供給され、ロータ軸24の軸連通孔24bを通じて第一電動機20を内側から冷却する。
このように、本実施形態の冷却構造10では、ひとつのオイルクーラ70により冷却されたオイルを、各電動機18を上方Upから冷却する経路と、第一電動機20を内側から冷却する経路とに分配している。
続いて、トランスアクスル1に設けられた冷却構造10の詳細について説明する。冷却構造10は、油路100、ノズル部82、絶縁プレート84、及びロータ軸24などにより構成されている。
ここで、本実施形態のトランスアクスル1では、上述のとおり、第一電動機20とトランスアクスルハウジング40との間の電位差による腐食(電食)を抑制するために、取付部46に電食カバー80を設けている。また、電食カバー80とトランスアクスルハウジング40との間には、絶縁プレート84を介在させている。
上述のとおり、電食カバー80は、第一電動機20とトランスアクスルハウジング40との間に設けられている。また、冷却構造10では、電食カバー80及び絶縁プレート84が、温度センサ86の袋小路部47から離間する方向(モータ室41側)への移動を制限するように配置されており、温度センサ86の抜け止めとしての機能を発揮している。
より具体的に説明すると、図5に示すとおり、温度センサ86は、先端部(検知部)が袋小路部47に嵌め込まれており、他端側が第一電動機20に向かうように袋小路部47から露出している。また、温度センサ86の他端側は、取付部46の空間内に収まっており、他端側には絶縁プレート84を介して電食カバー80とトランスアクスルハウジング40との間に位置している。そのため、温度センサ86が袋小路部47から離間するように変位した場合、絶縁プレート84に阻まれて変位が制限される。その結果、冷却構造10では、絶縁プレート84や電食カバー80を温度センサ86の抜け止めとして機能させることができる。
このように、冷却構造10によれば、電食抑制のために設けられている電食カバー80や絶縁プレート84(既存の部品)を、温度センサ86の抜け止めとして機能させて、温度センサ86を固定するための締結部材などを削減することができる。
なお、本実施形態の冷却構造10では、第一電動機20とトランスアクスルハウジング40との間に介在させる部材(介在部材)として、電食カバー80及び絶縁プレート84を一例として説明したが、本発明の冷却構造は本実施形態に限定されない。例えば、本発明の冷却構造では、電動機とケース体との間には、電食カバー及び絶縁プレートのうちいずれか一方を介在させるものとしてもよい。また、本実施形態の冷却構造では、介在部材として、電動機とケース体との間の電位差による腐食(電食)を抑制するための部材とした例を示したが、本発明の冷却構造はこれに限定されない。すなわち、電動機とケース体との間に介在させる部材は、軸受など他の部材であってもよい。
<ロータ軸へのオイル供給について>
次いで、本実施形態の冷却構造10における第三供給路113の詳細、及びノズル部82やロータ軸24の詳細について説明する。
上述のとおり、本実施形態の冷却構造10では、ノズル部82が設けられている。ノズル部82は、電食カバー80に対して設けられている。ノズル部82は、吐出口82aを備えている。ノズル部82は、油路100(第三供給路113)からオイルが供給される。ノズル部82は、中空部24aに配置されている。
図5に示すとおり、吐出口82aは、下方Lw側に向けて開口している。また、上述のとおり、ロータ軸24は、中空部24aと、中空部24aからロータ軸24の外側に連通する軸連通孔24bとを備えている。
本実施形態の冷却構造10では、ノズル部82の吐出口82aが下向きに開口している。そのため、ノズル部82に案内されたオイルがノズル部82の先端壁に当たって下方に流下し、さらに吐出口82aから滴下してロータ軸24の中空部24aに供給される。その結果、冷却構造10は、ロータ軸24内に供給されたオイルの勢いを抑制して、ロータ軸24の軸連通孔24bなど、所望の位置に効率的にオイルを到達させることができる。
さらに、本実施形態の冷却構造10では、絶縁プレート84が、油路100(第三供給路113)とノズル部82の内部空間とを区画する部材(区画部)として機能している。絶縁プレート84(区画壁)には、油路100とノズル部82の内部空間とを連通させる貫通孔84a(オリフィス)が形成されている。
図4に示すとおり、貫通孔84aは、吐出口82aに対してオフセットするように設けられている。
そのため、冷却構造10では、貫通孔84aを通過したオイルは、ノズル部82の先端の内壁に当たり、勢いを削がれた状態で吐出口82aから流下する。その結果、効率良くオイルを軸連通孔24bに案内することができる。
ここで、ノズル部82を介して中空部24aに供給されるオイル量は、コストを抑えつつ設定を行い得ることが望ましい。ノズル部82を介して中空部24aに供給されるオイル量の調整を行う場合、ノズル部82の吐出口82aの大きさや形状を調整することでも行い得る。しかしながら、ノズル部82の先端部を切削する、あるいは別部材を取り付けるなどの手法による場合、加工の困難さや別部材を準備するコストなどが増加するおそれがある。
これに対して、本実施形態の冷却構造10では、ノズル部82と油路100との間に介在する絶縁プレート84(区画壁)に対し、貫通孔84aを設定することで、ノズル部82に流入するオイル量を、さほどコストをかけずに柔軟に調整可能としている。具体的に説明すると、絶縁プレート84などの板状部材(区画壁)に貫通孔84aを設ける構成とすれば、貫通孔84aの大きさを調整することで柔軟に設定することができる。そのため、ノズル部82側の吐出口82aを径方向から孔を設ける加工と比較して、容易に加工することができる。その結果、コストを抑制しつつオイル量を柔軟に設定することができる。
図5に示すとおり、ロータ軸24には、ロータ軸24の内周に内周方向に向けて突出する突起部24cが設けられている。突起部24cは、中空部24aのオイルをロータ軸24の軸線方向Gへの流出を制限するように設けられている。突起部24cは、ロータ軸24の内壁から軸芯Cに向けて突出するように形成されている。このように、冷却構造10では、ロータ軸24の中空部24aのオイルが中空部24aからの流出を制限している。これにより、冷却構造10は、ロータ軸24内に効率的にオイルを溜めることができる。
すなわち、冷却構造10によれば、突起部24cによりオイルの流れを制限して、ロータ軸24の内部における軸連通孔24bが設けられた箇所にオイルが溜まりやすくなる。その結果、オイルを確実にロータ22に供給するとともにロータ軸24の内周にオイルを這わせて、熱交換によりロータ22を冷やすことができる。
なお、中空部24aから軸連通孔24bに到達したオイルは、ロータ軸24の回転による遠心力で第一電動機20の径方向に案内され、第一電動機20の内側からの冷却に寄与する。
ここで、吐出口82a、突起部24c、軸連通孔24b、及び軸受88の軸線方向Gにおける配置について説明する。先ず、吐出口82aは、ロータ軸24の軸線方向Gにおいて、突起部24cと軸連通孔24bとの間に位置している。図5に示すとおり、吐出口82aから吐出されたオイルは、下方Lwに向けて流下する。また、突起部24cは、吐出口82aから吐出されたオイルが流下する位置の近傍となる位置に形成されている。そのため、冷却構造10は、ロータ軸24の内部に供給したオイルを効率的に中空部24aに留めつつ、オイルを連通孔に到達させることができる。仮に、突起部24cと離れた位置に吐出口82aがある場合、突起部24cを乗り越えて突起部24cよりも外側に流出する量のオイルを、突起部24cよりも前に溜めることができないことが想定される。これに対して、冷却構造10では、吐出口82aを突起部24c近傍(かつ、突起部24cと軸連通孔24bの間)に設けている。そのため冷却構造10は、オイルが確実に突起部24cを乗り越えて、軸受88を潤滑することができる。
また、別の観点から冷却構造10における軸連通孔24bと吐出口82aとの位置を説明すると、ロータ軸24の内部(中空部24a)において、ノズル部82の先端がロータ軸24に設けられた軸連通孔24bの手前となるように、ノズル部82の長さが設定されている。そのため、冷却構造10は、ノズル部82の長さを短くすることで、コストダウンや軽量化を実現することができる。
また、図5に示すとおり、突起部24cの近傍には、ロータ軸24を支持する軸受88が取り付けられている。さらに、突起部24cとノズル部82の外周面との間には、オイルが流出可能な隙間Sが形成されている。そのため、冷却構造10は、ロータ軸24の内部に供給したオイルを効率的に中空部24aに留めつつ一部を中空部24aから流出させて、軸受88を潤滑することができる。
以上、本発明の実施形態に係る冷却構造10について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、各機能や構成については適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、冷却させたオイルを三箇所に分配する構成とした例を示したが、本発明の冷却構造はこれに限定されず、一箇所又は二箇所、あるいは四箇所以上にオイルを分配して搬送するものとしてもよい。
また、上述の実施形態に係る冷却構造10では、ノズル部82を電食カバー80に設けたものとした例を示したが、本発明の冷却構造はこれに限定されず、ノズル部を電食カバーとは別部材として設けてもよい。
本発明の冷却構造は、電動機を冷却するためのものとして、好適に採用することができる。
1 トランスアクスル
10 冷却構造
20 第一電動機(電動機)
24 ロータ軸
40 トランスアクスルハウジング(ケース体)
80 電食カバー(介在部材)
82 ノズル部
82a 吐出口
84 絶縁プレート(介在部材、プレート部材)
100 油路

Claims (3)

  1. ロータ軸を備える電動機と、前記電動機を収容するケース体と、前記電動機を冷却するオイルの流路となる油路と、を備える電動機の冷却構造であって、
    吐出口を備え、前記油路からオイルが供給されるノズル部を有し、
    前記ロータ軸が、
    中空部と、
    前記中空部から前記ロータ軸の外側に連通する軸連通孔と、
    前記ロータ軸の内周に内周方向に向けて突出する突起部と、を備え、
    前記ノズル部が、前記中空部に配置されており、
    前記吐出口が、前記ロータ軸の軸線方向において、前記突起部と前記軸連通孔との間に位置するとともに、前記ロータ軸の内周面に向けて開口するように設けられていることを特徴とする冷却構造。
  2. 前記突起部が、前記吐出口の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷却構造。
  3. 前記ロータ軸を支持する軸受を備え、
    前記軸受が、前記ロータ軸の軸線方向の両側のうち少なくとも前記ケース体の外側部側に設けられており、
    前記吐出口が、前記軸受の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却構造。
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