JP7085954B2 - アンテナ駆動装置、アンテナ駆動方法、およびアンテナ駆動プログラム - Google Patents
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Description
このようなアンテナ駆動軸は、冗長性および追尾性を考慮して3から4の駆動軸を設けることが多い。しかし、小型で簡易な機構が必要な場合は、2つの駆動軸によるアンテナ駆動を行う。この2軸駆動方式として、アジマス軸(以下、AZ軸)とエレベーション軸(以下、EL軸)による駆動方式がある。AZ軸は、アンテナを全周囲方向に旋回させるための垂直軸周りの旋回軸である。EL軸は、アンテナに俯仰動作を与えるための水平軸周りの回転軸である。
この2軸駆動方式は、小型なアンテナ機構および簡素な制御方式を実現する。しかし、天頂付近、すなわち高度角90°付近を精度よく追尾できないという欠点がある。天頂付近の対象物を追尾する場合、短時間で大きなAZ軸回転が必要となる。通常、駆動用アクチュエータには角速度制約が存在するため、大きなAZ軸回転、すなわちAZ軸大回転を実現できない。その結果、追尾誤差が発生し、追尾誤差が許容値を超えると通信瞬断が発生する。目標となる追尾方向、すなわち目標方向を指向するアンテナ姿勢のうち、上述のような状態となり、構造的に制御が困難になるアンテナ姿勢を特異点と呼ぶ。
前記アンテナを中心とする単位半球面と前記アジマス軸との交点である天頂を含む円領域を設定し、前記アンテナが追尾する目標方向の目標方向パスが前記円領域を通過する際には、前記アンテナの指向方向が前記天頂を向くように前記アジマス軸を回転させた後に前記エレベーション軸を前記目標方向に回転させ、前記目標方向パスが前記円領域を離れると、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるように前記アンテナを駆動する駆動角速度を算出する角速度演算部を備えた。
2軸駆動アンテナ装置10は、小型なアンテナ機構および簡素な制御方式を実現する。しかし、天頂Pt付近、すなわち高度角90°付近を精度よく追尾できないという欠点がある。
天頂Ptとは、例えば、アンテナを中心とする単位半球面とAZ軸との交点である。アンテナが天頂Ptを指向する場合、EL軸角度が0°となる。天頂Pt付近の対象物を追尾する場合、短時間で大きなAZ軸回転が必要となる。通常、アンテナ駆動用のアクチュエータには角速度制約が存在する。このため、このようなAZ軸大回転を実現できない。その結果、追尾誤差が発生し、追尾誤差が許容値を超えると通信瞬断が発生する。ここで、目標となる追尾方向、すなわち目標方向を指向するアンテナ姿勢のうち、AZ軸大回転が発生しうるアンテナ姿勢を特異点と呼ぶ。言い換えると、特異点とは、構造的に制御が困難になるアンテナ姿勢である。図3では、アンテナが、特異点に陥った場合の指向方向を特異点領域33で示している。図3に示すように、アンテナは、指向方向が天頂Pt付近において特異点に陥ると言える。
2軸駆動アンテナ装置10は、2軸駆動方式、あるいはAZ/EL駆動方式ともいう。また、目標方向は目標指向方向ともいい、目標方向のパスを目標方向パス35とする。
***構成の説明***
図4を用いて、本実施の形態に係る2軸駆動アンテナ装置10の構成を説明する。
2軸駆動アンテナ装置10は、アンテナ駆動装置100とアンテナ部200を備える。
アンテナ駆動装置100は、AZ軸とEL軸とによる2軸駆動式のアンテナ230を駆動する。アンテナ駆動装置100は、目標方向演算部110、現在方向演算部120、角速度演算部130、およびドライバ140を備える。アンテナ部200は、アクチュエータ210、角度検出器220、およびアンテナ230を備える。
プロセッサ910は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ910の具体例は、CPU、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
補助記憶装置922は、データを保管する記憶装置である。補助記憶装置922の具体例は、HDDである。また、補助記憶装置922は、SD(登録商標)メモリカード、CF、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVDといった記憶媒体あるいは記録媒体であってもよい。なお、HDDは、Hard Disk Driveの略語である。SD(登録商標)は、Secure Digitalの略語である。CFは、CompactFlash(登録商標)の略語である。DVDは、Digital Versatile Diskの略語である。
アンテナ駆動プログラムは、上述の各部の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程を、コンピュータに実行させる。また、アンテナ駆動方法は、アンテナ駆動装置100がアンテナ駆動プログラムを実行することにより行われる方法である。
アンテナ駆動プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に格納されて提供されてもよい。また、アンテナ駆動プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
まず、アンテナ駆動装置100で実施される計算処理の内容について示す。
アンテナ駆動装置100のAZ/EL駆動方式において、アンテナの指向方向単位ベクトルuは、AZ軸およびEL軸の角度(θAZ,θEL)より、以下の数1のように表現される。
sinθELが閾値ε以下の場合、A†の2行の要素は全て数3と同じである。しかし、A†の1行の(1,1)要素および(1,2)要素は数3と異なる。具体的には、A†の1行の(1,1)要素および(1,2)要素は、符号が逆で、分母に、任意の正の定数λ0を目標方向速度ノルム|u・ c|で割った値が設定されている。つまり、EL軸角速度θ・ ELについては数3と同じ出力値が計算される。しかし、AZ軸角速度θ・ AZについては、極性が数3と逆で、かつ、駆動速度が目標方向速度ノルム|u・ c|の大きさに比例して変化する。
アンテナの指向誤差が許容範囲内であるとは、指向誤差が、通信瞬断が発生しない誤差範囲内であることである。つまり、sinθELが閾値εよりも大きい場合とは、アンテナの指向誤差が許容範囲内でない場合を意味する。よって、sinθELが閾値εよりも大きい場合は、アンテナの指向方向を目標方向に追従させる。一方、sinθELが閾値ε以下の場合とは、アンテナの指向誤差が許容範囲内である場合を意味する。よって、sinθELが閾値ε以下の場合は、アンテナの指向方向が天頂Ptを向くようにAZ軸を回転させた後に、EL軸を目標方向に回転させ、AZ軸の回転が大回転とならないように制御する。
角速度演算部130は、アンテナを中心とする単位半球面においてAZ軸と交わる天頂Ptを含む円領域R1を設定する。角速度演算部130は、特異点問題を回避する特異点問題回避ロジックを用いて、駆動角速度24を算出する。角速度演算部130は、アンテナ230が追尾する目標方向の目標方向パス35が円領域R1を通過する際には、アンテナ230の指向方向が天頂Ptを向くようにAZ軸を回転させた後にEL軸を目標方向に回転させ、目標方向パス35が円領域R1を離れると、アンテナ230の指向方向を目標方向パス35に追従させるようにアンテナ230を駆動する駆動角速度を算出する。角速度演算部130は、アンテナを駆動角速度24で駆動した場合に、アンテナの指向誤差が許容範囲内の領域を円領域R1、すなわち閾値εとして設定する。また、角速度演算部130は、現在方向ベクトル23と目標方向ベクトル21との差分に基づいて、アンテナ230の指向方向を目標方向パス35に追従させる。
具体的には、角速度演算部130は、上述した計算方式の数4および数5を用いて、駆動角速度(θ・ AZ,θ・ EL)を算出する。
一方で、数4および数5を使用した図7では、閾値εの円領域R1内において、AZ軸が図6とは逆方向に動作して指向方向単位ベクトルuが天頂Pt、すなわち特異点領域33に向かっている。そして、天頂PtにおいてEL軸が回転することにより+Xから-Xへの指向方向転換を実現している。このとき、天頂Pt付近におけるAZ軸の回転角度は図6よりも図7の方が小さい。
評価方法は以下の通りである。
(1)図8のP1,P2,P3の3ポイントを通過する時系列指向パス(uc1,uc2,uc3)を生成する。具体的な値は、以下の通りとする。
uc1=[1 -0.002 0]
uc2=[0 -0.010 1]
uc3=[-1 -0.002 0]
(2)指向パスの時間変化率ωは7.0°/s
(3)閾値εは2.0°、任意の定数λ0は0.12
(4)数式3の駆動角速度の計算方式と、本実施の形態に係る数式4および数5の駆動角速度の計算方式との2つを適用する。
図9では、AZ軸が180°回転している。一方、図10では、AZ軸は24°の回転となっている。このように、本実施の形態に係る数式4および数5の駆動角速度の計算方式を適用することで、AZ軸角度の変化量が非常に小さく抑えられていることが分かる。
<変形例1>
本実施の形態では、目標方向演算部110、現在方向演算部120、角速度演算部130、およびドライバ140の機能がソフトウェアで実現される。変形例として、目標方向演算部110、現在方向演算部120、角速度演算部130、およびドライバ140の機能がハードウェアで実現されてもよい。
アンテナ駆動装置100は、電子回路909、メモリ921、および補助記憶装置922を備える。
電子回路909は、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、または、FPGAである。GAは、Gate Arrayの略語である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略語である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略語である。
目標方向演算部110、現在方向演算部120、角速度演算部130、およびドライバ140の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。
別の変形例として、目標方向演算部110、現在方向演算部120、角速度演算部130、およびドライバ140の一部の機能が電子回路で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
本実施の形態に係るアンテナ駆動装置は、移動体に搭載する指向性アンテナを、AZ軸とEL軸の2軸機構により衛星方位に指向制御させるものであり、特異点問題を有している。本実施の形態に係るアンテナ駆動装置では、天頂付近において、特異点をあえて通過させることで、短時間で大きなAZ軸回転を生じさせることなく方向転換を可能にする。また、本実施の形態に係るアンテナ駆動装置では、天頂付近通過後、目標方向からの追従誤差を早く収束させるために、現在の指向角と目標指向角の差分のフィードバックを行う。
以上のように、本実施の形態によれば、特異回避駆動ロジックを有するアンテナ駆動装置、アンテナ駆動方法およびアンテナ駆動プログラムを提供することができる。
また、実施の形態1のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、この実施の形態のうち、1つの部分を実施しても構わない。その他、この実施の形態を、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施しても構わない。
すなわち、実施の形態1では、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
Claims (7)
- アジマス軸とエレベーション軸とによる2軸駆動式のアンテナを駆動するアンテナ駆動装置において、
前記アンテナを中心とする単位半球面と前記アジマス軸との交点である天頂を含む円領域を設定し、前記アンテナが追尾する目標方向の目標方向パスが前記円領域を通過する際には、前記アンテナの指向方向が前記天頂を向くように前記アジマス軸を回転させた後に前記エレベーション軸を前記目標方向に回転させ、前記目標方向パスが前記円領域を離れると、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるように前記アンテナを駆動する駆動角速度を算出する角速度演算部であって、前記アンテナを前記駆動角速度で駆動した場合に、前記アンテナの指向誤差が許容範囲内の領域を前記円領域として設定する角速度演算部を備えたアンテナ駆動装置。 - アジマス軸とエレベーション軸とによる2軸駆動式のアンテナを駆動するアンテナ駆動装置において、
前記アンテナを中心とする単位半球面と前記アジマス軸との交点である天頂を含む円領域を設定し、前記アンテナが追尾する目標方向の目標方向パスが前記円領域を通過する際には、前記アンテナの指向方向が前記天頂を向くように前記アジマス軸を回転させた後に前記エレベーション軸を前記目標方向に回転させ、前記目標方向パスが前記円領域を離れると、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるように前記アンテナを駆動する駆動角速度を算出する角速度演算部と、
前記アンテナの現在の指向方向を示す現在方向ベクトルを演算する現在方向演算部と、
前記目標方向を示す目標方向ベクトルを演算する目標方向演算部と
を備え、
前記角速度演算部は、
前記現在方向ベクトルと前記目標方向ベクトルとの差分に基づいて、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるアンテナ駆動装置。 - 前記角速度演算部は、
前記アンテナを前記駆動角速度で駆動した場合に、前記アンテナの指向誤差が許容範囲内の領域を前記円領域として設定する請求項2に記載のアンテナ駆動装置。 - アジマス軸とエレベーション軸とによる2軸駆動式のアンテナを駆動するアンテナ駆動装置のアンテナ駆動方法において、
コンピュータが、前記アンテナを中心とする単位半球面と前記アジマス軸との交点である天頂を含む円領域を設定し、前記アンテナが追尾する目標方向の目標方向パスが前記円領域を通過する際には、前記アンテナの指向方向が前記天頂を向くように前記アジマス軸を回転させた後に前記エレベーション軸を前記目標方向に回転させ、前記目標方向パスが前記円領域を離れると、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるように前記アンテナを駆動する駆動角速度を算出するアンテナ駆動方法であって、前記アンテナを前記駆動角速度で駆動した場合に、前記アンテナの指向誤差が許容範囲内の領域を前記円領域として設定するアンテナ駆動方法。 - アジマス軸とエレベーション軸とによる2軸駆動式のアンテナを駆動するアンテナ駆動装置のアンテナ駆動方法において、
コンピュータが、前記アンテナを中心とする単位半球面と前記アジマス軸との交点である天頂を含む円領域を設定し、前記アンテナが追尾する目標方向の目標方向パスが前記円領域を通過する際には、前記アンテナの指向方向が前記天頂を向くように前記アジマス軸を回転させた後に前記エレベーション軸を前記目標方向に回転させ、前記目標方向パスが前記円領域を離れると、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるように前記アンテナを駆動する駆動角速度を算出するアンテナ駆動方法であって、
コンピュータが、前記アンテナの現在の指向方向を示す現在方向ベクトルを演算し、
コンピュータが、前記目標方向を示す目標方向ベクトルを演算し、
コンピュータが、前記現在方向ベクトルと前記目標方向ベクトルとの差分に基づいて、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるアンテナ駆動方法。 - アジマス軸とエレベーション軸とによる2軸駆動式のアンテナを駆動するアンテナ駆動装置のアンテナ駆動プログラムにおいて、
前記アンテナを中心とする単位半球面と前記アジマス軸との交点である天頂を含む円領域を設定し、前記アンテナが追尾する目標方向の目標方向パスが前記円領域を通過する際には、前記アンテナの指向方向が前記天頂を向くように前記アジマス軸を回転させた後に前記エレベーション軸を前記目標方向に回転させ、前記目標方向パスが前記円領域を離れると、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるように前記アンテナを駆動する駆動角速度を算出する角速度演算処理であって、前記アンテナを前記駆動角速度で駆動した場合に、前記アンテナの指向誤差が許容範囲内の領域を前記円領域として設定する角速度演算処理をコンピュータである前記アンテナ駆動装置に実行させるアンテナ駆動プログラム。 - アジマス軸とエレベーション軸とによる2軸駆動式のアンテナを駆動するアンテナ駆動装置のアンテナ駆動プログラムにおいて、
前記アンテナを中心とする単位半球面と前記アジマス軸との交点である天頂を含む円領域を設定し、前記アンテナが追尾する目標方向の目標方向パスが前記円領域を通過する際には、前記アンテナの指向方向が前記天頂を向くように前記アジマス軸を回転させた後に前記エレベーション軸を前記目標方向に回転させ、前記目標方向パスが前記円領域を離れると、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるように前記アンテナを駆動する駆動角速度を算出する角速度演算処理と、
前記アンテナの現在の指向方向を示す現在方向ベクトルを演算する現在方向演算処理と、
前記目標方向を示す目標方向ベクトルを演算する目標方向演算処理と
をコンピュータである前記アンテナ駆動装置に実行させるアンテナ駆動プログラムであって、
前記角速度演算処理は、
前記現在方向ベクトルと前記目標方向ベクトルとの差分に基づいて、前記アンテナの指向方向を前記目標方向パスに追従させるアンテナ駆動プログラム。
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