JP7083984B2 - ガス放出装置、及び、エネルギー発生装置 - Google Patents
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Description
特許文献1には、過酸化水素検知用電極および酵素を固定化してなる多孔体膜からなり、前記多孔体膜の過酸化水素検知用電極側に酸素を水素受容体とする酸化還元酵素を固定化し、他方の側にカタラーゼを固定化したことを特徴とする酵素電極が記載されている。
また、例えば大気中で用いられている従来の材料、機器、装置等に対し、ガスを供給することができれば、より有用な効果が得られる場合があると考えられる。
例えば、一例として、大気中の酸素を利用してエネルギーを発生する「空気電池」が開発されている。空気電池としては、例えば大気中の酸素と亜鉛を利用した空気亜鉛電池、大気中の酸素及び生体の酵素を利用し、糖等の生体成分の酸化還元反応によりエネルギーを発生する空気バイオ電池等が挙げられる。
このような大気中の酸素を利用した空気電池に対して酸素を供給することにより、発電出力が向上するという効果が得られると考えられる。
また、本開示に係る発明の別の一態様が解決しようとする課題は、酸素及び酵素反応を用いてエネルギーを発生することが可能なエネルギー発生装置を提供することである。
<1> 第一の酵素固定化部材と、第二の酵素固定化部材と、前記第一の酵素固定化部材に固定化された酵素の基質及び前記第二の酵素固定化部材に固定化された酵素の基質よりなる群から選ばれた少なくとも一方の基質を含む溶液と、を備え、
前記第一の酵素固定化部材及び前記第二の酵素固定化部材が前記溶液と接しており、
前記第二の酵素固定化部材における前記溶液と接している側とは反対側へガスを放出する、
ガス放出装置。
<2> 前記第一の酵素固定化部材に固定化された酵素がグルコース酸化酵素及びピラノース酸化酵素であり、前記第二の酵素固定化部材に固定化された酵素がカタラーゼであり、前記溶液に含まれる基質がD-グルコースであり、前記ガスが酸素である、前記<1>に記載のガス放出装置。
<3> 前記<1>又は<2>に記載のガス放出装置と、前記ガス放出装置により放出されるガスを利用してエネルギーを発生するエネルギー発生部と、を備える
エネルギー発生装置。
<4> 前記エネルギー発生部が、第一の酵素固定化電極である正極と、第二の酵素固定化電極である負極と、前記負極に固定化された酵素の基質を含む電解質と、を含み、前記正極に固定化された酵素が前記電解質と接し、前記負極に固定化された酵素が前記電解質と接して電力を発生する、前記<3>に記載のエネルギー発生装置。
<5> 第一の酵素固定化電極である正極と、
第二の酵素固定化電極である負極と、
前記負極に固定化された酵素の基質を含む電解質と、
前記電解質を漏出させることなく気体の透過が可能な気液隔離部材と、を含み、
前記正極に固定化された酵素が前記電解質及び前記気液隔離部材と接し、前記負極が前記電解質と接して電力を発生する
エネルギー発生装置。
また、本開示に係る発明の別の一態様によれば、酸素及び酵素反応を用いてエネルギーを発生することが可能なエネルギー発生装置が供給される。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
各図面において、同一の構成要件に対しては同一の符号を付して説明する。また、図面中の符号は省略されることがある。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下、本開示を詳細に説明する。
本開示に係るガス放出装置は、第一の酵素固定化部材と、第二の酵素固定化部材と、前記第一の酵素固定化部材に固定化された酵素の基質及び前記第二の酵素固定化部材に固定化された酵素の基質よりなる群から選ばれた少なくとも一方の基質を含む溶液(以下、「特定溶液」ともいう。)と、を備え、前記第一の酵素固定化部材及び前記第二の酵素固定化部材が前記溶液と接しており、前記第二の酵素固定化部材における前記溶液と接している側とは反対側へガスを放出する。本開示に係るガス放出装置は、酵素反応を利用して前記第二の酵素固定化部材における前記溶液と接している側とは反対側へガスを放出する。
本開示に係るガス放出装置は、前記第一の酵素固定化部材における前記溶液と接している側とは反対側からガスを吸収し、前記第二の酵素固定化部材における前記溶液と接している側とは反対側へガスを放出して必要な対象に供給するガス供給装置であることが好ましい。
上記吸収されるガスと、上記供給されるガスは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
ここで、酵素反応は非可逆的に近い反応であることが多いため、上記吸収されるガスと、上記供給されるガスが同一のガスであったとしても、ガスの濃度勾配に逆らってガスを供給することが可能となると考えられる。
また、本開示に係るガス放出装置は、設計次第であるが、例えば入手が容易な特定溶液(例えば、グルコース溶液など)を用いることにより、簡便にガス供給を実用することが可能となるという点において、非常に有用であると考えられる。上記グルコース溶液などとしては、例えば、血液、汗、組織液等の体液を用いることも考えられ、例えば生体埋め込み型の電池や後述する電池等と併用する場合の親和性にも優れやすいと考えられる。また、動物、昆虫、植物などへの応用も考えられ、さらには、ジュース等の飲料や食物の利用も考えられる。
以下、本開示に係るガス放出装置の代表的な態様について、図面を用いて説明するが、本開示に係るガス放出装置は図面により限定されるものではない。
また、本文中の説明において、図面中の符号は省略される場合がある。
図1に示すガス供給装置10は、第一の酵素固定化膜12(第一の酵素固定化部材の一例)と、第二の酵素固定化膜22(第二の酵素固定化部材の一例)と、特定溶液30とを備える。
図1に示すガス供給装置10において、第一の酵素固定化膜12(第二の酵素固定化膜22)は、膜の強度を考慮し、特定溶液30を透過する第一の支持体14(第二の支持体24)により固定されている。しかし、膜強度に問題がない場合、所定の強度を有する板状等の酵素固定化部材とした場合等は、第一の支持体14(第二の支持体24)を省略してもよい。
また、図1に示すガス供給装置10において、第一の酵素固定化膜12、第一の支持体14、特定溶液30、第二の支持体24及び第二の酵素固定化膜22は、ケース40により支持されている。ケース40の形状は特に限定されない。
図1に示すガス供給装置10においては、例えば、第一の酵素固定化膜12における特定溶液30と接している側とは反対側(開口部42)からガスを吸収し、第二の酵素固定化膜22おける特定溶液30と接している側とは反対側(開口部46)へガスを放出することが可能である。また、開口部46へ放出されたガスは、開口部44を通じて外部に供給される。
図1に示すガス供給装置10は、第一の酵素固定化膜12に固定化された酵素、第二の酵素固定化膜22に固定化された酵素、特定溶液30に含まれる基質等を適宜変更することにより、供給するガスを選択することが可能である。
ガス供給装置10により供給されるガスとしては、酸素(O2)、水素(H2)、二酸化炭素(CO2)等が挙げられ、産業上の利用しやすさの観点からは、例えば酸素であることが好ましい。
例えば、ガス供給装置10において、第一の酵素固定化膜12に固定化された酵素がグルコース酸化酵素(Glucose oxidase、GOD)及びピラノース酸化酵素(POX)であり、特定溶液30に含まれる基質がD-グルコースであり、第二の酵素固定化膜22に固定化された酵素がカタラーゼ(CAT)である態様が好ましく挙げられる。以下、上記態様のガス供給装置を、「ガス供給装置A」ともいう。ガス供給装置Aによれば、酸素を供給するガス供給装置を提供することが可能となる。
ガス供給装置Aにおいて引き起こされる酵素反応の詳細を下記に示す。
その後、上記(1)~(3)の酵素反応において発生した上記過酸化水素が特定溶媒30を通して第二の酵素固定化膜22へと移動し、第二の酵素固定化膜22において、上記(4)の酵素反応により酸素へと変換されることにより、最終的に開口部44から酸素が供給される。
上記(1)~(4)の反応は酵素反応であり、非可逆的に近い反応であるため、上記酸素の供給は、ガス供給装置Aにおける開口部42の酸素濃度よりも、開口部46の酸素濃度が高い場合であっても反応が進行すると考えられる。
すなわち、ガス供給装置Aにおける開口部42の酸素濃度よりも、開口部46の酸素濃度を高くすることが可能である。言い換えれば、本開示に係るガス供給装置10によれば、開口部42と開口部46との間におけるガスの濃度勾配に逆らったガスの輸送が可能であるといえる。
また、第一の酵素固定化膜12には、グルコース酸化酵素に加えてピラノース酸化酵素が固定化されている。そのため、上記(1)の酵素反応に加えて上記(2)及び(3)の酵素反応が起こり、より多くの過酸化水素が発生する。その結果、上記(4)の酵素反応によって、より高濃度の酸素を発生させることができる。
例えば、第一の酵素固定化膜12に固定化された酵素として、大気中のガスを用いて特定溶液30中の基質を生成物へと変化させ、上述の過酸化水素等の副生成物を生成する酵素を用い、第二の酵素固定化膜22に固定化された酵素として、上記副生成物を目的とするガスへと変換する酵素を用いることが可能である。
第一の酵素固定化部材又は第二の酵素固定化部材に固定化された酵素としては、1種単独の酵素を用いてもよいし、複数の酵素を組み合わせて使用してもよい。
第一の酵素固定化部材に固定化された酵素として複数の酵素を組み合わせて使用する場合、例えば、ガス供給能の向上の観点からは、グルコース酸化酵素とピラノース酸化酵素の組み合わせのように、特定溶液30(グルコース溶液)中の化合物を基質とする酵素と、上記酵素と上記基質の反応により生成される生成物を基質とする酵素と、を組み合わせて用いることが好ましい。
第一の酵素固定化部材又は第二の酵素固定化部材に固定化された酵素の至適pH、至適pH等は、特に限定されず、用途、設計に応じて決定すればよい。
第一の酵素固定化部材は、酵素を含む。
図1においては、第一の酵素固定化部材としての第一の酵素固定化膜12を、第一の支持体14上に形成した態様を記載しているが、第一の酵素固定化膜12を、例えば酵素を含む樹脂の膜として形成し、第一の支持体14を省略してもよいし、第一の支持体14に第一の酵素固定化膜12の酵素を染み込ませて、第一の支持体14と第一の酵素固定化膜12との少なくとも一部が一体化していてもよい。
第一の酵素固定化膜12は、酵素と、バインダーと、を含むことが好ましい。
第一の酵素固定化膜12に含まれる酵素は、上述の組み合わせから用途に応じて選択すればよい。
第一の酵素固定化膜12に含まれるバインダーとしては、特に限定されないが、例えば硬化型樹脂を使用することができる。
本開示において、硬化型樹脂とは、硬化性樹脂を硬化した樹脂をいい、硬化性樹脂とは、紫外線の照射、加熱等により硬化する性質を有する樹脂をいう。
第一の酵素固定化膜12における硬化型樹脂としては、取り扱いの容易性の観点から、紫外線により硬化された紫外線硬化型樹脂であることが好ましい。
また、第一の酵素固定化膜12における硬化型樹脂としては、少なくとも硬化後に非水溶性となる樹脂であることが好ましい。
具体的には、紫外線硬化型樹脂は、25℃の水100質量部に対する溶解量が0.1質量部未満であることが好ましく、0.05質量部未満であることがより好ましい。上記溶解量の下限は特に限定されず、0質量部以上であればよい。
第一の酵素固定化膜12の形成に用いられる上記硬化性樹脂としては、特に限定されず、公知の紫外線硬化性樹脂を用いることが可能であるが、例えば、PVA-SbQ(紫外線硬化性樹脂、スチリルピリジニウム塩を付加したポリビニルアルコール)が好ましく挙げられる。
第一の支持体14としては、特に限定なく公知の材料を使用することが可能であるが、透析膜を使用することが好ましい。
透析膜としては、第一の酵素固定化膜12に固定化された酵素の基質を透過する透析膜が好ましく使用され、例えば、セルロース、親水性ポリテトラフルオロエチレン、疎水性コットン等が挙げられる。また、透析膜以外に、軟質や硬質の各種の多孔質体等も使用できる。
第一の支持体14と第一の酵素固定化膜12との位置関係は、特に限定されないが、第一の酵素固定化膜12における酵素反応においてガスが使用される場合、第一の酵素固定化膜12と、特定溶液30との間に第一の支持体14が存在することが好ましい。上記位置関係であれば、第一の酵素固定化膜12における酵素反応において、特定溶液30中のガスではなく、装置の外部のガスを使用しやすくなるため、ガス供給装置10におけるガス供給能がより向上しやすいと考えられる。
第二の酵素固定化部材は、第一の酵素固定化部材と同様の構成をとることができる。すなわち、第二の酵素固定化部材としての第二の酵素固定化膜22、及び、第二の支持体24は、含まれる酵素の種類が異なる以外は第一の酵素固定化膜12と同様の構成をとることができ、好ましい態様も同様である。
第二の支持体24と第二の酵素固定化膜22との位置関係は、特に限定されないが、第二の酵素固定化膜22と、特定溶液30との間に第二の支持体24が存在することが好ましい。上記位置関係であれば、第二の酵素固定化膜22における酵素反応により発生するガスが、特定溶液30に溶解することが抑制されるため、ガス供給装置10におけるガス供給能がより向上しやすいと考えられる。
特定溶液30としては、特に限定されないが、安全性等の観点からは、水溶液であることが好ましい。
特定溶液30は、前記第一の酵素固定化膜に固定化された酵素の基質及び前記第二の酵素固定化膜に固定化された酵素の基質よりなる群から選ばれた少なくとも一方の基質を含む溶液であり、前記第一の酵素固定化膜に固定化された酵素の基質を少なくとも含む溶液であることが好ましい。
特定溶液30中の基質の濃度は特に限定されず、用途に応じて設定すればよい。濃度が高いほど酵素反応が進行しやすく、ガス供給能が向上することが考えられる。また、用途に応じて、温度変化による基質化合物の析出、変性等を考慮して濃度を低くすることも考えられる。
特定溶液30のpHは、特に限定されず、例えば第一の酵素固定化膜に固定化された酵素及び/又は第二の酵素固定化膜に固定化された酵素の至適pHとするか、又は、これに近いpHとすることが好ましい。
基質以外の化合物としては、公知の防腐剤、湿潤材、消泡剤、安定化剤、有機溶剤等が挙げられる。また、体液等を用いる場合は、生体成分中のタンパク質やイオンなども含まれることが考えられる。これらの化合物の含有量は、適宜設定することが可能である。
図1に示すガス供給装置10における開口部42と、開口部46及び開口部44とは、いずれも気体と接していてもよいし、いずれか一方が水等の液体と接していてもよいし、両方が水等の液体と接していてもよい。
いずれも気体と接している場合、例えば、開口部42が開放されて大気と接しており、開口部46及び開口部44が密閉された空間における気体と接している態様が挙げられる。このような態様によれば、上記密閉された空間にガス供給装置10を通して特定のガスが供給され、上記密閉された空間内の特定のガスの濃度が上昇する。
開口部42が液体と接し、開口部46及び開口部44が密閉された空間における気体と接している場合、ガス供給装置10により、上記液体中の特定のガスを、密閉された空間における上記気体に供給することが可能となる。
開口部42が気体と接し、開口部46及び開口部44が液体と接している場合、ガス供給装置10により、上記気体中の特定のガスを、上記液体に供給することが可能となる。
いずれも液体と接している場合、例えば、開口部42において接している液体中のガスを、開口部44及び開口部46において接している液体へと供給することが可能となる。
本開示に係るガス放出装置は、例えば、本開示に係るガス放出装置と、前記ガス放出装置から放出されるガスを利用してエネルギーを発生するエネルギー発生部(例えば、電池部)と、を備えるエネルギー発生装置(例えば、電池)として用いることが可能である。
ここで、ガスを利用してエネルギーを発生(発電)するエネルギー発生部(電池部)としては、公知の空気亜鉛電池、空気リチウム電池等の公知の空気電池、又は、後述する空気バイオ電池等が挙げられる。
エネルギー発生部(電池部)において利用される上記ガスとしては、特に限定されないが、現時点で実用化されているという観点からは、酸素が好ましい。
これらのエネルギー発生部(電池部)は、ガス濃度が高いほど発電出力が向上することが考えられる。そのため、本開示に係るガス放出装置を用い、エネルギー発生部(電池部)におけるガスを利用する手段が含まれる雰囲気のガス濃度を上昇させることにより、エネルギー発生部(電池部)における発電出力を向上させることができると考えられる。
ここで、本開示に係るガス放出装置によれば、簡便な方法によりガスを放出することが可能となるため、本開示に係るガス放出装置はエネルギー発生部(電池部)の発電出力を更に向上するという観点から非常に有用であると考えられる。
なお、本開示に係るガス放出装置は、上記電池だけでなく、放出されるガスを利用して動力を発生する動力発生部(エネルギー発生部の一例)を備える動力装置(エネルギー発生装置の一例)として用いることも可能である。例えば、放出ガスの圧力でピストンを作動させるガス圧アクチュエータ、ゴムチューブへの加圧による変形を利用したゴム人工筋、ダイアフラムと逆止弁を組み合わせたダイアフラムポンプ、放出ガスの燃焼を利用した内燃機関等、各種の適用が考えられる。
特に、特定溶液30として血液を用い、ダイアフラムを薬剤注入機構としてインスリンポンプを構成した場合には、血液中のグルコース濃度(血糖値)に応じて酸素が放出され、インスリンリザーバーに接続されており、放出された酸素の圧力で駆動する薬剤注入機構によってインスリンを注入できるようになる。これにより、血糖を駆動力源とした自律的・連続的な血糖値制御が可能となり、人工膵臓システムを実現できる。
本開示におけるエネルギー発生部を電池部とする場合は、第一の酵素固定化電極である正極と、第二の酵素固定化電極である負極と、前記負極に固定化された酵素の基質を含む電解質(以下、単に「電解質」ともいう。)と、を含み、前記正極と前記電解質、及び、前記負極と前記電解質とが接している電池部(本開示において、このような電池部を「空気バイオ電池」ともいう。)であることが好ましい。
以下、本開示におけるエネルギー発生装置としての空気バイオ電池の一例を図2を参照して説明するが、空気バイオ電池は図2に記載の態様に限定されるものではない。
図2に示す空気バイオ電池100においては、ケース140中に、第一の酵素固定化電極である正極110と、第二の酵素固定化電極である負極120と、電解質130と、を備え、前記正極と前記電解質とが接し、前記負極と前記電解質とが接している。また、正極110は、電解質供給部材118(気液隔離部材の一例)を介して外気と接している。
正極110は、電極114の表面に酵素112が固定化された構造である。また、正極110には、電子メディエータが更に固定化されていることが好ましい。
負極120は、電極124の表面に酵素122が固定化された構造である。また、負極120には、電子メディエータが更に固定化されていることが好ましい。
また、正極110及び負極120よりなる群から選ばれた少なくとも1つの電極には、電極に固定化された酵素の基質が更に固定化されていてもよい。
図2に示す空気バイオ電池100において、正極110(負極120)は、第一の電極支持体116(第二の電極支持体126)に固定化されているが、第一の電極支持体116(第二の電極支持体126)は省略されていてもよい。
また、ケース140の形状は特に限定されない。
図2に示す空気バイオ電池100においては、正極110及び負極120は同一の電解質130に接しているが、別々の電解質130に接してもよい。具体的には、例えば、正極110が接する電解質と、負極120が接する電解質とが別の電解質であり、電解質同士が半透膜(透析膜)を介して接している態様が挙げられる。
また、電解質供給部材118は、正極110に電解質130を供給しつつ、電解質130をケース140外に漏出させることなく気体(外気)の透過が可能なものである。
図2に示す空気バイオ電池100は、正極110に固定化された酵素112、負極120に固定化された酵素122、電解質130に含まれる基質等を適宜変更することができる。
例えば、正極110に酵素112としてビリルビン酸化酵素(Bilirubin oxidase、BOD)を、電子メディエータとしてK3[Fe(CN)6]を固定化した電極を用い、負極120に酵素122としてグルコース脱水素酵素(glucose dehydrogenase、GDH)及びジアホラーゼ(diaphorase、Dp)を、基質としてNADHを、電子メディエータとしてビタミンK3を固定化した電極を用い、電解質130がD-グルコースを含む態様が挙げられる。以下、上記態様の空気バイオ電池を、「空気バイオ電池A」ともいう。
本明細書において、NADHは還元型ニコチンアミドジヌクレオチドを、NAD+は酸化型ニコチンアミドジヌクレオチドをそれぞれ示す。
空気バイオ電池Aの正極又は負極における反応の詳細を下記に示す。
正極110又は負極120に固定化された酵素の至適pH、至適pH等は、特に限定されず、用途、設計に応じて決定すればよい。
正極110は、電極114の表面に酵素112が固定化された構造とすることができる。
酵素112は、電解質130と接するのであれば、例えば電極114の内部に固定化してもよい。
電極110としては、特に限定されず、電池の分野において公知の電極を使用することが可能であり、グラッシーカーボン等のカーボン電極、プラチナ電極等の金属電極等が用いられ、様々な方法による酵素固定化を行いやすいという観点からは、プラチナ電極が好ましい。
図2に示す空気バイオ電池100においては、第一の電極支持体116に蒸着されたプラチナ電極を使用している。
電極の大きさ及び形状は特に限定されず、用途等に応じて設計すればよい。
第一の電極支持体としては、特に限定されないが、金属電極を蒸着して用いた場合に酵素反応が効率よく進行するという観点からは、多孔質状の材料であることが好ましい。
また、第一の電極支持体としては、特に限定されないが、疎水性の材料が好ましく、疎水性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PETなどのプラスチックが好ましく挙げられる。
第一の電極支持体としては、特に限定されないが、取り扱いの容易さの観点からは、例えば膜状の支持体が好ましく挙げられる。
電極に酵素を固定化する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いればよく、LbL(Layer-by-Layer)法、包括固定化法、架橋法等が挙げられる。
固定化された酵素の量等は特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。
酵素を固定化する際に、基質、メディエータ、更にその他の化合物を併せて固定化してもよい。
LbL法とは、陽イオンが含まれる溶液と陰イオンが含まれる溶液とに基材を交互に浸漬することにより、静電相互作用によりイオンを吸着させて薄膜を形成する方法である。
LbL法として、自己組織化単分子膜(SAM)を形成する方法(SAM/LbL法)も好ましく用いられる。
例えば、正に帯電するpoly(diallyldimethyl ammonium chloride) (PDDA)を含む溶液と、負に帯電するpoly(sodium 4-stylenesulfonate) (PSS)を含む溶液を用い、PDDA溶液、酵素と、必要に応じて基質及び/又はメディエータを含む溶液、PSSを含む溶液の順に電極へと付与することにより形成する方法が挙げられる。
また、SAM/LbL法として、2-mercaptoethanesulfonic acid sodium saltを含む溶液を用いて公知の方法により形成してもよい。
包括固定化法とは、酵素等を高分子材料でゲル状又は固体状に固め、酵素を含む高分子材料の層を形成することにより酵素等を電極に固定化する方法である。
包括固定化法に用いられる高分子材料としては、上述の紫外線硬化性樹脂が挙げられ、例えば、PVA-SbQ(紫外線硬化性樹脂、スチリルピリジニウム塩を付加したポリビニルアルコール)が好ましく挙げられる。
例えば、PVA-SbQと、酵素と、必要に応じて基質及び/又はメディエータを含む溶液、PSSを含む溶液を調整し、電極上に付与した後に紫外線照射を行う方法が挙げられる。
架橋法とは、多官能試薬と、酵素と、必要に応じて他のタンパク等の化合物と、を反応させ、巨大な分子を形成させることにより酵素を含む分子を不溶化する方法である。
多官能試薬としては、グルタルアルデヒド等が挙げられる。
他のタンパク等としては、特に限定されないが、BSA(ウシ血清アルブミン、Bovine Serum Albumin)等が挙げられる。
例えば、酵素とBSAと、酵素と、必要に応じてメディエータ及び/又は基質とを混合した溶液を電極上に付与した後、グルタルアルデヒド溶液を付与して乾燥する方法が挙げられる。
負極120(固定化された酵素122、電極124)及び第二の電極支持体126としては、酵素、必要に応じて付与される基質及び/又はメディエータとして用いられる化合物種が異なる以外は、正極110と同様の電極が用いられる。
正極と負極のイオン化傾向の差等による正極又は負極の損傷を抑制する観点からは、正極と負極とは、酵素、基質、メディエータ以外は同じ材料により構成されることが好ましい。
電解質130としては、特に限定されないが、安全性等の観点からは、水溶液であることが好ましい。
電解質130は、前記負極120に固定化された酵素の基質を含む電解質である。
電解質130中の基質の濃度は特に限定されず、用途に応じて設定すればよい。濃度が高いほど酵素反応が進行しやすく、発電出力が向上することが考えられる。また、用途に応じて、温度変化による基質化合物の析出等を考慮して濃度を低くすることも考えられる。
電解質130のpHは、特に限定されず、例えば負極に固定化された酵素の至適pHとするか、又は、これに近いpHとすることが好ましい。
基質以外の化合物としては、公知の防腐剤、湿潤材、消泡剤、安定化剤、有機溶剤等が挙げられる。これらの化合物の含有量は、適宜設定することが可能である。
図2に記載の空気バイオ電池100は、電解質供給部材118(気液隔離部材の一例)を備える。
電解質供給部材118は、電解質130と接しており、正極110と接していて、正極110の反対側が開放されていることが好ましく、電解質130をケース140外に漏出させることなく気体(外気)の透過が可能なものである。
電解質供給部材としては、例えばコットンメッシュやPTFEからなる膜等の空隙を有する部材を用いることにより、正極110の少なくとも一部が外気と接するか、又は、外気と正極110の間に存在する電解質の量が、電解質供給部材が存在しない場合と比較して少なくなるため、正極110における反応において酸素等のガスが使用されやすくなり、発電出力が向上しやすくなると考えられる。
電解質供給部材としては、空隙を有する部材であれば特に制限なく使用することが可能であるが、例えば、電解質を供給しやすい観点からは、吸水性の部材が好ましく用いられる。
正極110、負極120、電解質130等の位置関係は、特に限定されない。
正極110における酵素反応がガスを用いる反応である場合、ガスを利用しやすくする観点から、正極110は電解質130と外気との界面付近に存在する(特に、電解質供給部材118と密着させる)ことが好ましい。
図3は、本開示に係るエネルギー発生装置として、本開示に係るガス放出装置の一実施形態であるガス供給装置と、前記ガス供給装置により供給されるガスを利用してエネルギーを発生する電池部と、を備える電池の一例(図1に示すガス供給装置10と、図2に示す空気バイオ電池100との組み合わせに相当)を示す概略断面図である。
図3に記載の電池200は、
ケース40(下部ケース)、第一の酵素固定化膜12、第二の酵素固定化膜22、第一の支持体14、第二の支持体24、特定溶液30、及び、上部ケース48を備えるガス供給装置と、
ケース140、正極110、電解質供給部材118、第一の電極支持体116、負極120、第二の電極支持体126、及び、電解質130を備える電池部(空気バイオ電池)と、を備える。
なお、特定溶液30と電解質130とは、同一の溶液であっても異なる溶液であってもよいが、同一として相互に流通可能であれば、一つの溶液で電池200を構成できるので好ましい。
図3中、52a及び52b、54a及び54b、並びに、56a及び56bはそれぞれ1本のO-リングの断面を表す。図3に示すように、O-リング等の部材を用いて各部材を固定することによりガス供給装置と電池部とを構成することが可能である。O-リングとしてはゴム製、シリコン製等のものが挙げられる。
図3に記載の電池200において、上記ガス供給装置より開口部46及び開口部44を含む空間142にガスが供給され、上記電池部の正極110におけるガスを用いる酵素反応が進行しやすくなると考える。
例えば、上記電池部が上述の空気バイオ電池Aである場合、ガス供給装置として上述のガス供給装置Aを用いることが好ましい。
空気バイオ電池Aとガス供給装置Aとを組み合わせて用いることにより、空気バイオ電池Aの正極に高濃度の酸素が供給され、酸素を使用した反応が進行しやすくなるため、空気バイオ電池Aの発電出力が上昇すると考えられる。
このように、本開示に係るガス供給装置と、前記ガス供給装置により供給されるガスを利用してエネルギーを発生する電池部と、を備える電池は、発電出力に優れると考えられる。
本開示に係るエネルギー発生装置は、第一の酵素固定化電極である正極と、第二の酵素固定化電極である負極と、前記負極に固定化された酵素の基質を含む電解質と、前記電解質を漏出させることなく気体の透過が可能な気液隔離部材と、を含み、前記正極に固定化された酵素が前記電解質及び前記気液隔離部材と接し、前記負極が前記電解質と接して電力を発生する。
本開示に係るエネルギー発生装置は、上述の気液隔離部材を必須の構成として含み、正極に固定化された酵素が気液隔離部材とも接する以外は上述のエネルギー発生部と同様であり、各構成の好ましい態様も同様である。
また、本開示に係るエネルギー発生装置の好適な例としては、上述の空気バイオ電池が挙げられる。
また、本開示に係る電池(エネルギー発生装置の一例)は、第一の酵素固定化電極である正極と、第二の酵素固定化電極である負極と、前記負極に固定化された酵素の基質を含む電解質と、を含み、前記正極と前記電解質とが接し、前記負極と前記電解質とが接している。
本開示に係る電池は、上述の空気バイオ電池と同様であり、好ましい態様も同様である。
<第一の酵素固定化膜の作製>
グルコース酸化酵素(Sigma-Aldrich社製、10 units/cm2)とピラノース酸化酵素(Sigma-Aldrich社製、2 units/cm2)とPVA-SbQ(東洋合成工業社製、6.25 mg/cm2)、リン酸緩衝液(pH7、50 mmol/l、3 μl/cm2)を溶媒とした混合液を調整した。
上記混合液を第一の支持体である透析膜(家田貿易(株)製)に、塗布し、紫外線照射にて包括固定化して第一の酵素固定化膜を作製した。
カタラーゼ(Sigma-Aldrich社製、18.3 units/cm2)とPVA-SbQ(東洋合成工業社製、6.25 mg/cm2)、及び、リン酸緩衝液(pH7、50 mmol/l、3 μl/cm2)を混合して溶媒の混合液を調整した。
上記混合液を第二の支持体である透析膜(家田貿易(株)製)に、塗布し、紫外線照射にて包括固定化して第二の酵素固定化膜を作製した。
作製した第一の酵素固定化膜及び第二の酵素固定化膜を用いて、ガス供給装置を作製した。
図4は実施例において作製したガス供給装置の写真である。
図4A及び図4Bに示すように、上部ケース210と下部ケース212に、透明な第一の支持体14の一面に塗布された第一の酵素固定化膜12と、透明な第二の支持体24の一面に塗布された第二の酵素固定化膜22と、をそれぞれセットした。第一の酵素固定化膜12は半透明のO-リング52を用いて、第二の酵素固定化膜22は半透明のO-リング54を用いてそれぞれ固定した。
続いて、図Cに示すように、上部ケース210と下部ケース212を嵌め合わせることによりガス供給装置を作製した。
第一の酵素固定化膜12と第二の酵素固定化膜22の間には、5mmol/lのD-グルコース水溶液214(図5参照)を充填した。D-グルコース水溶液214は、上述の特定溶液30に該当する。
図5は、図4に記載したガス供給装置における第一の酵素固定化膜12、及び、第二の酵素固定化膜22の取り付けの向きを示す概略断面図である。
図5において、矢印Aの示す方向が図4における上部ケース側であり、矢印Bの示す方向が図4における下部ケース側である。
図5に示すように、実施例において作製したガス供給装置においては、第一の酵素固定化膜12と、D-グルコース水溶液214との間に第一の支持体14が存在し、かつ、第二の酵素固定化膜22と、D-グルコース水溶液214との間に第二の支持体24が存在する。
得られたガス供給装置において、第一の支持体14とD-グルコース水溶液214が接する面積は、第一の酸素固定化膜12と空気が接する面積である7.1cm2よりもやや大きく、第二の支持体24とD-グルコース水溶液214とが接する面積は、第二の酸素固定化膜12と空気が接する面積である7.1cm2よりもやや大きくした。
得られたガス供給装置の酸素供給能力を測定し、ガス供給装置のガス供給能の評価とした。
具体的には、図4Dにおける開口部42にチューブを接続し、チューブの先に酸素濃度計(エイブル社製)を接続した。チューブ内に外気が入り込まないよう、開口部42及び酸素濃度計に接続されたチューブの内部は、密閉空間とした。チューブの内径は1mm、チューブの長さは5cmとした。
酸素濃度は毎秒測定し、計40分間測定を継続した。測定環境は室温(25℃)とした。
測定に際しては、上記D-グルコース溶液を純水へと変更したガス供給装置を用いて、測定開始後2分の時点で純水を5mmol/LのD-グルコース溶液(pH=7.0)へと変更した。
測定結果を図6に示す。
図6の縦軸は酸素濃度(体積%)、横軸は時間(分)を表している。
図6から、今回の実施条件においては、大気中の酸素濃度(約)20.9%(体積%)が、約20分で約29%(体積%)まで上昇していることがわかる。
すなわち、本実施例におけるガス供給装置は、酵素反応を用いてガスを供給することが可能であることがわかる。なお、図5の変形例として、第一の支持体14と、D-グルコース水溶液214との間に第一の酵素固定化膜12を存在させる構成や、第二の支持体24と、D-グルコース水溶液214との間に第二の酵素固定化膜22を存在させる構成も考えられるが、第一の支持体14を矢印A側に配置及び/又は第二の支持体24を矢印B側に配置した場合には、酸素濃度の上昇が鈍くなるため、図5に示す取り付け方向とすることが好ましい。
また、5mmol/LのD-グルコース溶液は、健常者の血液中の血糖値に相当する量である。すなわち、本実施例におけるガス供給装置によれば、血液等を用いることによるガス供給も可能である点が示唆されているといえる。
<正極の作製>
正極は、グラッシーカーボン(ガラス状炭素、GC)電極又はプラチナ(Pt)電極上に、SAM/LbL法により単層の自己組織化単分子膜を形成する方法により作製した。
GC電極としては、研磨装置(PK-3 Electrode Polishing kit, ALS社製)を用いて端面を研磨処理した電極を用いた。
Pt電極は、疎水性多孔質PTFE膜(直径:0.22μm,厚さ:150μm,Millipore)に、スパッタ法にてPt(厚さ:200nm)を成膜して作製した。
次に、Pt電極表面と溶液の親和性を高めるために、大気圧プラズマ装置(Aiplasma,Panasonic Electric)を用いて親水処理を施した。最後に、電極感応部及び端子部以外をpolydimethylsiloxane(PDMS)を用いて絶縁化被覆した。
上述のGC電極には、PDDA溶液、BOD(天野エンザイム(株)製)、K3[Fe(CN)6](富士フイルム和光純薬(株)製)を含む溶液、PSSを含む溶液を、この順に付与することにより酵素の固定化を行った。
また、親水処理及び絶縁化被覆されたPt電極を2-mercaptoethanesulfonic acid sodium salt (MESNA, 東京化成工業製)溶液(1mM、溶媒:エタノール)中に1時間浸漬し、Pt電極表面にMESNAの自己組織化単分子膜を形成した。その後、GC電極と同様の手順で酵素の固定化を行った。
負極は、GC電極又はPt電極上に、LbL法により作製した。
GC電極又はPt電極としては、正極に使用したものと同様のものを使用した。
上述の親水処理及び絶縁化被覆されたPt電極の表面に対し、PDDA溶液、GDH(東洋紡(株)製)、Dp(オリエンタル酵母(株)製)、NADH(オリエンタル酵母(株)製)及びビタミンK3(ナカライテスク(株)製)を含む溶液、PSSを含む溶液を、この順に付与することにより酵素の固定化を行った。
上述の正極及び負極を図2に記載のように組み合わせて、電池1~電池2を作製した。
上述の実施例において作製したガス供給装置、及び、上述の正極及び負極を図3に記載のように組み合わせて、電池3~電池4を作製した。
電解質供給部材118としては、コットン製メッシュ(直径:700μm、厚さ:100μm)を用いた。
電池5においては、上述の正極及び負極を図2に記載のように組み合わせて、正極部分に存在する外気における酸素濃度を、市販のエアチャージャー(MS-X1、Panasonic)を用いて26.8%(体積%)とした。
電池1~電池5において、使用した正極及び負極の組み合わせは表3に記載した。
電解質130としては、5mmol/LのD-グルコース溶液を用いた。
表3中、ガス供給装置の欄における括弧内の%の記載は、正極部分に存在する外気に含まれる酸素濃度(体積%)を示す。
バイオ電池を構築し、5 mmol/lグルコース溶液中における発電特性を調べた。作製した酵素固定化電極をエレクトロメータ(8240,ADCMT)に接続した後、両電極間に可変抵抗器(0~1000kΩ)を接続する。可変抵抗の抵抗値を変化させた際の出力をエレクトロメータにて測定し、抵抗値と記録した電圧値から発電による電流密度及び電力密度を算出し、発電特性を評価した。
上記方法により得られた最大電力密度を発電出力の指標とし、表3に記載した。
図7中、縦軸は電力密度(μW/cm2)を、横軸は電圧(mV)を示しており、各グラフにおける縦軸方向の最大値が最大電力密度である。
また、上記電池における電解質として用いた5mmol/LのD-グルコース溶液は、健常者の血液中の血糖値に相当する量である。すなわち、本実施例における電池によれば、血液等を用いることによる発電も可能となることが示唆されているといえ、例えばペースメーカーのような生体埋め込み型の電子機器において、半永久的に電池交換が必要なくなる。また、汗中の乳酸等による発電も考えられ、アスリートの疲労管理や熱中症の監視向け自己駆動型ウェアラブル・ヘルスケアデバイス等への応用も可能といえる。
電池1及び電池2の結果から、正極及び負極としてPt電極を用いた場合には、正極及び負極としてPt電極を用いた場合と比較して、約2.3倍の発電出力が得られていることがわかる。
また、電池2及び電池4の結果から、本開示に係るガス供給装置を用いた場合には、約1.3倍の発電出力が得られていることがわかる。
12 第一の酵素固定化膜
14 第一の支持体
22 第二の酵素固定化膜
24 第二の支持体
30 特定溶液
40 ケース
42、44、46 開口部
48 上部ケース
52、52a、52b、54、54a、54b、56a、56b O-リング
100 空気バイオ電池
110 正極
112 酵素
114 電極
116 第一の電極支持体
118 電解質供給部材
120 負極
122 酵素
124 電極
126 第二の電極支持体
130 電解質
140 ケース
142 空間
200 電池
210 上部ケース
212 下部ケース
214 D-グルコース水溶液
A 上部ケース側
B 下部ケース側
Claims (4)
- 第一の酵素固定化部材と、第二の酵素固定化部材と、前記第一の酵素固定化部材に固定
化された酵素の基質及び前記第二の酵素固定化部材に固定化された酵素の基質よりなる群
から選ばれた少なくとも一方の基質を含む溶液と、を備え、
前記第一の酵素固定化部材及び前記第二の酵素固定化部材が前記溶液と接しており、
前記第二の酵素固定化部材における前記溶液と接している側とは反対側へガスを放出す
る、
ガス放出装置。 - 前記第一の酵素固定化部材に固定化された酵素がグルコース酸化酵素及びピラノース酸
化酵素であり、前記第二の酵素固定化部材に固定化された酵素がカタラーゼであり、前記
溶液に含まれる基質がD-グルコースであり、前記ガスが酸素である、請求項1に記載の
ガス放出装置。 - 請求項1又は請求項2に記載のガス放出装置と、前記ガス放出装置により放出されるガ
スを利用してエネルギーを発生するエネルギー発生部と、を備える
エネルギー発生装置。 - 前記エネルギー発生部が、第一の酵素固定化電極である正極と、第二の酵素固定化電極
である負極と、前記負極に固定化された酵素の基質を含む電解質と、を含み、前記正極に
固定化された酵素が前記電解質と接し、前記負極に固定化された酵素が前記電解質と接し
て電力を発生する、請求項3に記載のエネルギー発生装置。
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Biosensors and Bioelectronics,2017年12月11日,Vol.103,pp.171-175 |
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