JP7079715B2 - ヘッドシェル - Google Patents
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Description
しかし、このようなピックアップカートリッジであっても、これを使用したアナログレコードの再生において、ターンテーブルが回転するときに発生する振動、トーンアーム嵌合部のがたつき等により生ずる振動といったレコードプレーヤーの機能的に不可避な振動や、トーンアームの材質や形状を要因として発生する共振動などを、トーンアームを通じて受け取ってしまうため、このような振動に起因した音質劣化が生ずる。また、レコードプレーヤーを設置した環境において生ずる自然的あるいは人為的な振動もピックアップカートリッジに伝達される。さらに、レコード針がレコードに刻まれた音溝をトレースする際に生ずる複雑な振動に対して、共振や共鳴が生ずる場合がある。このような振動がレコードプレーヤーに与える影響により、音の波形が歪み、実音の音像とは差異がある音再生となってしまう。
そのため、共振防止の観点より、ヘッドシェルに合成樹脂からなる振動吸収体を固着一体化させ、あるいは、ピックアップカートリッジを、ヘッドシェルと別部材の振動吸収材を介して、ヘッドシェルの本体のうち振動吸収体の取付け面側の一面に接するようにピックアップカートリッジを取り付けるものや、ヘッドシェル本体に防振材が充填された切欠き、孔、溝を設けたもの、さらには金属製のヘッドシェル基体の上面、下面のいずれか一方の面に振動吸収性の成形板を貼着するものがある。(例えば特許文献1-5)
また、特許文献5のヘッドシェルにあっては、防振材が充填された切欠き、孔 、溝がヘッドシェルの外周部に設けられているに過ぎない。
さらに、特許文献6のヘッドシェルのように、ヘッドシェルの素材自体に軽量チタンや硬質プラスチックの素材を用いることで、振動吸収効果を得ようとする構造を備えるものもある。
(1)弾性体等の振動吸収体がある程度の振動吸収効果を発揮する性質のものであっても、ヘッドシェル本体の振動吸収体の取付け面と、振動吸収体が面一に形成されて貼り合わされているため、その面の部分においては、ピックアップカートリッジから吸い上げた振動を逃がすことができずに受け止めることになる。
すなわち、水平、垂直の別はあるとしても、振動吸収体がピックアップカートリッジとヘッドシェル間で固着した状態で挟まれている構造となっているために、ピックアップカートリッジから伝播する、すなわち下からの振動がヘッドシェルの取り付け面において逃がすことができず受け止めることになってしまい、十分な防振効果が達成できない。
(2)ヘッドシェルの切欠き、孔 、溝やヘッドシェルの外周部に防振材を充填する構造や、防振材でカバーする場合も振動吸着材とヘッドシェルの接地面が広いため、振動を逃がすことができず十分な防振効果が達成できない。
(3)確かにピックアップカートリッジの取り付け面とヘッドシェルの間には振動吸収体があるが、ピックアップカートリッジを取り付けるネジあるいはボルトの軸部や頭部がヘッドシェルから脱落しないように、ヘッドシェル本体の一部と接触・固着した状態で絞められている。このため、結局はターンテーブルの振動がピックアップカートリッジを通じてヘッドシェルに伝播してしまうし、トーンアームから発生する振動もピックアップカートリッジに取り付けネジ又はボルトを通じて伝播してしまうから、レコード針がレコードに刻まれた音溝をトレースする際に生ずる複雑な振動に影響し、共振や共鳴を十分に押さえることができない。
(4)ヘッドシェルの材質を剛性かつ軽量な素材としてチタン等を採用しても、ターンテーブルが回転するときに発生する振動や、レコード針がレコードに刻まれた音溝をトレースする際に生ずる複雑な振動に対して生ずる共振や共鳴に対する防振対策としては不十分である。
(5)一方、振動吸収体は、振動吸収効果が高いものほど柔軟性があり液状性が高い素材が求められるが、そのような材質は使用上の劣化速度も速い。この点において、ヘッドシェルと振動吸収体が固着一体化されたヘッドシェルでは、振動吸収体が劣化した場合にその部分のみの交換・取り換えが利かず不経済である。
すなわち、前記ピックアップカートリッジ5は、取り付け面である同ピックアップカートリッジの上平面の全面が前記ロアーアブソーバー3とのみ接した状態で、棒状の連結部材6とナット8により前記ロアーアブソーバー3及び前記アッパーアブソーバー4にのみ軟着されている。
なお、図6では、前記ヘッドシェルの本体1が備える上下の段部12に、前記ロアーアブソーバー3及び前記アッパーアブソーバー4が格納されている状態を示す断面図であり、塗りつぶされている部分は、ロアーアブソーバー3及び前記アッパーアブソーバー4を示すものである。
参照する図7は、ピックアップカートリッジを固着化したヘッドシェルとピックアップカートリッジを軟着化したヘッドシェル本体をレコードプレーヤーのトーンアームに装着し、電気的接続を行った後に、実際にレコード針がレコードに刻まれた音溝をトレースした場合の比較波形図である。
また、一般にレコードによる音再生は、CDによる音再生に比べて倍音効果が高いともいわれている。
また、取り付けボルト方式でピックアップカートリッジを固定するが、ボルトの頭部とヘッドシェル本体の貫通孔及び同ヘッドシェル本体の上平面の一部が接触しているものである。
一方のヘッドシェルは本発明の実施家態様に即した試作品を使用した。
実験では、同曲の冒頭箇所を抜粋して、両ヘッドシェルをそれぞれ交互に装着したレコードプレーヤー及びオーディオユニットによりレコード再生を行い、波形測定装置によりそれらの波形データを採取した。
一方、同図中の下部に表示される波形図が、本発明の実施家態様に即した試作品を使用してレコードを再生した場合における同楽曲の冒頭部分を採取した波形である。
両方の波形を比較すると、曲の最初の導入部分において、確かな相違が見られる。まず曲が開始される際の最初の和音に相当する波形について説明する。
これに対して、同図下部波形の右点線部の枠内が示す波形は、文字通り波打つような波形を示している。これは音響学と音楽理論に基づいて検討すると、いわゆる倍音効果を伴った音が忠実に再現されているためと推認される。すなわち、音楽理論は良い音楽をつくるために体系付けられた経験則であり、この理論においては、高周波音又は高周波音素を組み合わせた和音は、倍音成分を多く含み、音をクリーンにして済んだ透明感を与える音域といわれ、ハイパーソニック・エフェクトを達成する。
一方、同図上部の波形が示すように、ヘッドシェルに振動吸収体を固着して一体的に成形され、ピックアップカートリッジも完全に固定されている従来品では、これらの高周波音の再生を阻害する振動・共振の影響を受けてしまい、再生音がクリーンな状態にならず、よって、倍音効果は阻害され、ハイパーソニック・エフェクトも達成しえなかったものと推認されるべきものである。
このため、前記アブソーバーは、ターンテーブルが回転するときに発生する振動を極めて高度に吸収することができ、その一方で、トーンアーム嵌合部のがたつき等により生ずる振動や、トーンアームの材質や形状を要因として発生する共振動などがヘッドシェルを通じてピックアップカートリッジに伝播されることを防止できる。
本実施形態に係るヘッドシェルによれば、例えば以下の効果が達成される。
次に、本実施形態に係る変形例について説明する。
このようなレコードの溝に針を置いて再生する場合に安定さを欠く場合に、中間プレート15が軟着を安定させる。
したがって、中間プレート15を介在させても、前記ヘッドシェルの本体1が直接接触するのは、前記ロアーアブソーバー3及び前記アッパーアブソーバー4のみであることには変わりなく、前記ヘッドシェルの本体1と前記ピックアップカートリッジ5の非接触性が担保されることには変わりがない。
すなわち、具体例の詳細及び添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
2 スペーサー
3 ロアーアブソーバー
4 アッパーアブソーバー
5 ピックアップカートリッジ
6 連結部材
8 ナット
9 コネクタプラグ
10 孔
11 取り付け面
12 段部
13 溝
14 貫通孔
15 中間プレート
Claims (4)
- ピックアップカートリッジが取り付けられる取り付け面と、前記取り付け面と対向する非取り付け面とを有するヘッドシェル本体と、
前記ヘッドシェル本体の前記非取り付け面の上面側に位置するアッパーアブソーバーと、
前記ヘッドシェル本体の取り付け面と前記ピックアップカートリッジのとの間に位置するロアーアブソーバーと、
前記ピックアップカートリッジ、前記ヘッドシェル本体の取り付け面と非取り付け面、前記アッパーアブソーバー及び前記ロアーアブソーバーにそれぞれ設けられた一対の貫通孔に挿通され、これらを連結する棒状の連結部材とを備え、
前記ヘッドシェル本体の取り付け面と非取り付け面に設けられた一対の貫通孔の直径は前記連結部材の直径より大きく、前記連結部材とは非接触であることを特徴とするヘッドシェル。 - 前記ロアーアブソーバーに設けられた一対の貫通孔の直径は前記連結部材の直径と実質的に等しいことを特徴とする請求項1に記載のヘッドシェル。
- 前記アッパーアブソーバー及び/又は前記ロアーアブソーバーは、ゼリー状又はゲル状の流動性プラスチックであることを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドシェル。
- 前記ヘッドシェルは、本体が高剛性高分子複合材を超高圧化で一体成型した導電性を有する特殊プラスチックであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヘッドシェル。
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