以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態にかかるキャリブレーション方法が適用される電子ミラーシステムについて説明する。電子ミラーシステムは、車両に搭載されるものであり、ディスプレイを通じて車両の右後方や左後方の画像表示などを行うシステムである。以下、図1および図2を参照して、電子ミラーシステムの構成について説明する。
図1および図2に示すように、電子ミラーシステムは、電子ミラー用電子制御装置(以下、電子ミラーECUという)100およびディスプレイ200に加えて、車載カメラ10、11、各種スイッチ20~23、ドアセンサ30等を備えた構成とされている。また、電子ミラーシステムでは、外部端末300を用いてキャリブレーションの実行の指示等が行えるようになっている。
電子ミラーECU100は、ディスプレイ200での表示を制御し、所定の表示モードでの画像表示を行わせるもので、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータなどを備えた構成とされている。電子ミラーECU100は、図示しないが、車両1におけるバッテリなどの定電圧源を電源として駆動されるもので、図示しないイグニッションスイッチ(以下、IGという)などの発進スイッチがオンさせられると、電源からの電力供給に基づいて駆動される。そして、電子ミラーECU100は、ROM、RAM等の非遷移的実体的記録媒体に相当するメモリに記憶されたプログラムに従って様々な処理を実行することで、ディスプレイ200の表示の制御を行う。
電子ミラーECU100は、画像入力インターフェース(以下、IFという)101、画像受信部102、画像処理部103、画像出力部104、画像出力IF105、カメラ制御部106、車両情報IF107、システム制御部108、ディスプレイ制御部109を有した構成とされている。なお、後述するように、車載カメラ10、11およびディスプレイ200が左右それぞれに1つずつ備えられている。このため、図1では、電子ミラーECU100の構成要素として、各構成を1つずつ記載したが、一部共通の構成とされているものもあるものの、概ね2セット備えられている。本実施形態の場合、車両情報IF107およびシステム制御部108以外の構成については2セット備えてある。
画像入力IF101は、車載カメラ10、11からの画像データを受信し、画像受信部102に伝える役割を果たす。画像受信部102は、画像入力IF101から入力された画像データをバッファに格納する。
画像処理部103は、画像受信部102がバッファに格納した画像データを用いて、ディスプレイ200で表示するための画像データに加工したりするなどの画像処理を行う。また、画像処理部103は、キャリブレーションの実行を指示する入力信号が入力されるとキャリブレーションを行い、ディスプレイ200による表示がキャリブレーションを反映した表示となるように画像処理を行う。具体的には、画像処理部103は、画像取得部103a、画像加工部103bおよび画像描画部103cを有した構成とされている。
画像取得部103aは、画像受信部102がバッファに格納した画像データを取り出す役割を果たす。
画像加工部103bは、画像取得部103aが取り出した画像に対する加工処理を行う。例えば、画像加工部103bでは、加工処理として、撮像範囲から所定範囲の画像を切り出す処理を行っている。また、画像加工部103bでは、キャリブレーションの実行を指示する指示信号が入力されると、後述する手法によってキャリブレーションを行う。画像加工部103bでは、キャリブレーションし易くなるように、加工処理として、切り出した画像のサイズ調整を行う拡縮処理、画像の歪みを補正する歪み補正処理、さらには白黒画像や二値化画像などへの色補正処理なども行っている。
画像描画部103cは、画像加工部103bが加工した画像に対して文字や線もしくは絵などの装飾を加えた描画を行うものである。本実施形態の場合、画像描画部103cにて、キャリブレーションの状態を示す表示を加えるようにしている。具体的には、「キャリブレーション中」、「キャリブレーションNG」、「キャリブレーション完了」のように、キャリブレーションの途中であること、失敗したこと、完了したことを示す表示を画像描画部103cで加えている。
画像出力部104は、画像処理部103にて処理された画像をバッファに格納する役割を果たす。画像出力IF105は、画像出力部104がバッファに格納した画像データを取り出して、ディスプレイ200に送信し、その画像データにて表される画像をディスプレイ200に表示させる。
ここまで説明した画像入力IF101、画像受信部102、画像処理部103、画像出力部104、画像出力IF105が、車載カメラ10、11で撮像した画像データに基づいてディスプレイ200に画像表示を行わせるのに用いられる基本構成となる。
カメラ制御部106は、車載カメラ10、11の露光やホワイトバランスなどの撮像に係わる各種パラメータを制御するものである。カメラ制御部106は、画像処理部103に入力された画像データから車載カメラ10、11の各種パラメータの補正量を求め、自動的に補正を行って各種パラメータを制御している。
車両情報IF107は、各種車両情報を入力する部分である。車両情報としては、各種スイッチ20~23やドアセンサ30の操作状態を示す各種信号などを入力する。ここでは、各種信号として、各種スイッチ20~23やドアセンサ30の操作状態を示す信号を例に挙げているが、他の信号、例えば車速やシフト位置、方向指示器に関する信号なども入力されるようになっている。各種スイッチ20~23のうちの一部の操作状態を示す信号については電子ミラーECU100に直接入力されている。また、各種スイッチ20~23のうちの残りやドアセンサ30の操作状態を示す信号については、例えばCAN(Controller Area Networkの略)通信などによる車内LAN(Local Area Networkの略)を通じて入力されている。ただし、車両情報IF107への入力の形態はどのようなものであっても良く、車内LANを通じて入力されても、直接入力されても良い。
システム制御部108は、車両情報IF107に入力された各種車両情報に応じて画像処理部103において適切な画像処理が行われるように、各種車両情報に対応する制御信号を画像処理部103に出力している。これに基づき、画像処理部103では、画像加工部103bにおいて、画像データを加工する際に、システム制御部108から送られてきた制御信号に基づく加工を行うことで、車両状態に応じた加工処理が行われるようになっている。
ディスプレイ制御部109は、ディスプレイ200の輝度やコントラストなど画像表示に係わる各種パラメータを制御するものである。ディスプレイ制御部109には、画像処理部103での画像処理後の画像データなどが入力されるようになっている。また、図示していないが、ナビゲーションシステムのディスプレイなどを通じて画像表示を調整のための操作を行えるようになっており、ディスプレイ制御部109にその操作内容のデータが入力されるようになっている。これらの入力内容に基づいて、補正を行うための各種パラメータの補正値などを自動的にディスプレイ200に伝え、画像表示に係わる各種パラメータを制御している。
なお、後述するように、各種スイッチ20~23の操作に基づいてディスプレイ200中に画像表示に関する補正MENUが表示されるようにし、その補正MENUを選択することで各種パラメータを補正することもできる。その場合、各種スイッチ20の操作状態などがディスプレイ制御部109に入力されることとなる。
以上のようにして、電子ミラーECU100が構成されている。続いて、車載カメラ10、11、各種スイッチ20~23、ドアセンサ30、ディスプレイ200などについて説明する。
車載カメラ10、11は、ディスプレイ200に映し出す映像を撮像するものであり、車両1の周辺の様子、ここでは車両1の後方の様子を撮像するものとされている。右側方カメラ10は車両1の右後方における所定角度範囲を撮像し、左側方カメラ11は車両1の左後方における所定角度範囲を撮像する。例えば、各車載カメラ10、11は、フロントドアのうちAピラーの最下部と隣接する位置、つまり図2に示すように、従来のサイドミラーの取り付け位置に、車両1の後方に向けられて取り付けられる。後述するように、ディスプレイ200は、車両1の右後方に対応する画像を表示する右側ディスプレイ201と、車両1の左後方に対応する画像を表示する左側ディスプレイ202とを有した構成とされている。そして、右側方カメラ10で撮像した映像については、右側ディスプレイ201での表示に用いられ、左側方カメラ11で撮像した映像については、左側ディスプレイ202での表示に用いられる。
車載カメラ10、11は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラなどで構成されるが、撮像可能なものであれば構わないし、車載カメラ10、11の撮像範囲についても任意である。ただし、ディスプレイ200による表示範囲よりも広い範囲を車載カメラ10、11で撮像できるものとされる。具体的には、ディスプレイ200の表示形態として、光学ミラー相当の表示画角で映像を映し出す形態(以下、光学画角表示という)と、それよりも広い表示画角で映像を映し出す形態(以下、広角表示という)などがある。例えば、光学画角表示は、表示画角の角度範囲が20~30度であり、広角表示は、表示画角の角度範囲が30度よりも大きくされる。そして、光学画角表示や広角表示は、車載カメラ10、11で撮像した画像データを部分的に切り出すことで行われる。このため、より広い角度範囲とされる広角表示が可能となるように、車載カメラ10、11による撮像範囲が設定されている。
各種スイッチ20~23は、ディスプレイ200の操作に用いられる。各種スイッチ20~23としては、十字スイッチ20、LRスイッチ21、ON/MENUスイッチ22および電格スイッチ23がある。
十字スイッチ20は、光学ミラーで構成されたサイドミラーの向き調整と同様に、ディスプレイ200の表示画像の表示中心の位置調整を行うためのスイッチである。図1に示すように、十字スイッチ20は、上下左右それぞれに向けられた矢印表示を有しており、押下された方向に対応する信号が電子ミラーECU100に入力されるようになっている。
例えば、車載カメラ10、11で撮像した映像画面の中心がディスプレイ200の中心と一致するようにディスプレイ200での表示が行われる状態が基準状態とされる。十字スイッチ20が操作されると、ディスプレイ200による表示中心の位置が基準状態での表示に対して操作方向に沿ってずらされる。例えば、十字スイッチ20の上矢印位置が押下されると、押下前よりも、ディスプレイ200での表示画像が上方位置の画像となるように調整される。
また、十字スイッチ20は、ディスプレイ200の輝度やコントラストなどの補正を行う際の操作などにも用いられる。例えば、十字スイッチ20は、ON/MENUスイッチ22が押下されてMENU表示が為されたときに、MENU表示にて表示される複数のMENU内容から任意のMENUを選択する操作に使用される。そのMENU表示にディスプレイ200の輝度やコントラストなどの補正MENUがあり、十字スイッチ20を操作したのち、ON/MENUスイッチ22を押下することで、その補正MENUの補正内容を決定できるようになっている。
LRスイッチ21は、右側ディスプレイ201と左側ディスプレイ202のいずれについて、十字スイッチ20による表示中心の位置調整を行うかを選択するためのスイッチである。LRスイッチ21は、シーソースイッチによって構成されており、「L」と「R」いずれかの選択するためのL位置やR位置と、いずれも選択しないニュートラル位置とに切り替え可能とされている。そして、LRスイッチ21の操作状態に対応する信号が電子ミラーECU100に入力されるようになっている。LRスイッチ21は十字スイッチ20の操作前に操作され、「L」と「R」のうち選択したい方に倒した状態で十字スイッチ20を操作することで、選択された側のディスプレイ200について、表示中心の位置調整が行われる。また、LRスイッチ21は、表示画面の輝度やコントラストなどの画面表示の補正を行う際にも、右側ディスプレイ201と左側ディスプレイ202のいずれについて補正を行うかの選択のために用いることができる。この場合も、十字スイッチ20やON/MENUスイッチ22を押下する前に、LRスイッチ21を操作することで、補正対象の選択を行えば良い。
ON/MENUスイッチ22は、設定スイッチに相当するもので、ディスプレイ200による特別表示のオンオフや特別表示を行う際のMENU表示を行わせるためのスイッチである。特別表示とは、ディスプレイ200による広角表示などの光学画角表示以外のモードでの表示、つまり光学ミラーでは行えないがディスプレイ200であれば行える表示を意味している。ON/MENUスイッチ22が押下されると、ディスプレイ200にMENU表示が為される。これに基づき、十字スイッチ20を操作することで、MENU表示された複数の内容の中から任意の内容を選択し、ディスプレイ200にて、その選択された内容に沿った表示が行われるようにすることができる。そして、MENU表示中に、ディスプレイ200による特別表示を行うか否かを設定するオンオフ設定のMENUがあり、それに基づいて特別表示のオンオフについても設定できるようになっている。
電格スイッチ23は、車載カメラ10、11を格納するためのスイッチである。車載カメラ10、11は、図示しない電格モータ等の収納機構によって展開状態と格納状態との切り替えが行えるようになっており、電格スイッチ23は、その駆動を行うためのスイッチとして用いられる。例えば、電格スイッチ23は、プッシュスイッチによって構成され、押下されていない状態であれば車載カメラ10、11を展開状態に、押下された状態であれば車載カメラ10、11を格納状態に制御する。
各種スイッチ20~23のうちON/MENUスイッチ22以外は、光学ミラーで構成されたサイドミラーの調整のために用いられていた既存のスイッチである。ディスプレイ200によって多彩な表示モードを状況に応じて設定できるようにすることが望まれるが、そのためだけに新たにスイッチを増加することは難しい。このため、概ね既存のスイッチを用いて各種設定を行えるようにしている。
ドアセンサ30は、車両1のドアの開閉状態を検出し、それに応じた検出信号を出力するものである。このドアセンサ30の検出信号が電子ミラーECU100に入力されることで、ドアが開かれていて車載カメラ10、11の角度が変わっているときにキャリブレーションが行われないようにしている。
なお、ディスプレイ200では、キャリブレーション時の表示以外にも、リバース走行時や右左折走行時といった車両走行状態などに応じて広角表示が行われるようになっている。それらの表示モードの切替えのために、車両情報として、シフト位置センサや方向指示器の操作状態も入力されるようになっている。
ディスプレイ200は、電源IC(Integrated Circuit)や制御部が内蔵されたもので、電子ミラーECU100から入力される画像データに基づいて画像表示を行う。ディスプレイ200は、上記したように右側ディスプレイ201と左側ディスプレイ202とを有した構成とされている。各ディスプレイ200は、車載カメラ10、11で撮像した映像の反転映像を映し出すことで、光学ミラーのように車両1の後方の様子を反射させて映し出すようなミラーとして機能する。
ディスプレイ200における表示部は、液晶やELなどによって構成され、制御部が電子ミラーECU100から取り込んだ画像データに基づいて映像を映し出す。ディスプレイ200を通じての表示となるため、光学画角表示に加えて広角表示も可能となる。このため、ON/MENUスイッチ22の操作等に基づいて特別表示がオンされているときには、状況に応じて、ディスプレイ200による光学画角表示が行われたり、広角表示が行われたりする。
また、ディスプレイ200は、光学ミラーと異なり、車両1の外部に備えられる必要はないため、車室内に取り付け可能である。ディスプレイ200を車室内に取り付ける場合、光学ミラーで構成されるサイドミラーのように、ミラーもしくはフロントドアガラスに雨が付着したときのような視認が困難になることを抑制できる。
ディスプレイ200の取り付け位置については任意であるが、ドライバにとってサイドミラーを視認しているのと変わらないように、車室内におけるインストルメントパネルの左右端部、もしくは、左右のAピラーそれぞれに配置されるのが好ましい。
外部端末300は、ディーラ等の整備工場等において使用されるテスターなどである。本実施形態の場合、この外部端末300の入力信号が車両情報の1つとして車両情報IF107に入力されるようになっており、この入力信号等に基づいてキャリブレーションが行われる。
以上のようにして、電子ミラーシステムが構成されている。このように構成された電子ミラーシステムでは、車載カメラ10、11で撮像した映像をディスプレイ200に映し出すことで、ドライバに車両1の左右後方の様子を認識させることができる。そして、通常走行時等にはディスプレイ200を通じて光学画角表示を行うことで、光学ミラーで構成されるサイドミラーと同様の表示をドライバに提供し、車両情報に基づいて、必要時には広角表示等の特別表示をドライバに提供する。例えば、リバース走行時や右左折走行時には広角表示が行われるようになっている。また、キャリブレーションの際には、「キャリブレーション中」、「キャリブレーションNG」、「キャリブレーション完了」のように、キャリブレーションの途中であること、失敗したこと、完了したことを示す表示する。これにより、車両製造工場などにおいて、キャリブレーションの状況をディスプレイ200で確認しつつ、キャリブレーションを実行することが可能となる。
続いて、本実施形態にかかる電子ミラーシステムにおけるキャリブレーション方法について説明する。
車両製造工場などにおいて、外部端末300を通じてキャリブレーションの実行を指示する入力信号が電子ミラーECU100に入力されると、それが車両情報IF107、システム制御部108を通じて画像処理部103に入力される。これに基づいて、画像処理部103において、キャリブレーションが実行される。このとき、ドアが開いているとキャリブレーションを良好に行えないことから、車両情報として、ドアセンサ30の検出信号からドアが開かれていないことが確認されたときにキャリブレーションが実行されるようにしている。キャリブレーションとしては、車載カメラ10、11のロールずれの補正やリアガイド線ずれの補正などを行っている。
ロールずれ補正は、車載カメラ10、11の撮像中心軸に対する回転方向のずれ、つまりロール方向のずれを補正するものである。リアガイド線ずれは、車載カメラ10、11の撮像中心軸のピッチング方向およびヨーイング方向のずれを補正するものである。これらの補正は、車載カメラ10、11にて2つのマークを撮像し、その撮像したマークをディスプレイ200に表示したときにそれぞれのずれ量を確認し、所望の状態となるように調整することで行われる。
具体的には、車両製造工場内にキャリブレーションを実施するための設備が備えられている。例えば、図3に示すように、キャリブレーションは、三方が壁面で囲まれたキャリブレーションスペースで行われる。キャリブレーションスペースの中央に駐車スペースが備えられており、その駐車スペース内に電子ミラーシステムが搭載された車両1が駐車させられることでキャリブレーションが行われる。
ここで、従来は、図4に示すように、車両J1の前後および左右両側をそれぞれ確認するための周辺監視用の車載カメラJ11~J14が備えられた車両J1についてキャリブレーションが行われていた。この場合、各車載カメラJ11~J14の撮像範囲が広く、画角が広いことから、車両J1の近辺にマーカJ21~J24を接地することで、各車載カメラJ11~J14の撮像範囲にマーカJ21~J24の2つが含まれる状態となる。このため、図5Aに示すように、車両J1の前後の車載カメラJ11、J12に対応する画像のディスプレイ表示についても、図5Bに示すように、車両J1の左右側方の車載カメラJ13、J14に対応する画像のディスプレイ表示についても、共に、映し出される映像がディスプレイの左右両端に離れて配置されるようにできる。このため、良好にキャリブレーションを行うことが可能となる。
これに対して、本実施形態のように、車両1の右側後方や左側後方の様子を車載カメラ10、11で撮像する場合、上記した問題が発生する。すなわち、図6Aに示したように車両1の後方において左右に並べてマーカ601~604を配置すれば、図7Aに示すように、ディスプレイの左右両端に離れるように2つのマーカを映し出すことが可能になる。しかし、マーカ601~604を配置するのに広いスペースが必要になる。また、図6Bに示したように、車両1の前後方向に沿ってマーカ601、602やマーカ603、604を2つずつ並べて配置すると、狭いスペースに2つずつを配置できる。しかし、図7Bに示すように、2つのマーカがディスプレイの画像の同じ端に偏って映し出されることになり、キャリブレーションがし難くなる。
このため、本実施形態では、図3に示す各場所にマーカ401~404を配置している。具体的には、右側方カメラ10のキャリブレーションに用いるマーカ401、402については、右側方カメラ10の撮像範囲内において、車両1の右側方に対向する壁面501と車両1の後方に対応する壁面502それぞれに備えてある。これらのうちのマーカ401は右側方マーカ、マーカ402は右後方マーカに相当する。また、左側方カメラ11のキャリブレーションに用いるマーカ403、404については、左側方カメラ11の撮像範囲内において、車両1の左側方に対向する壁面503と車両1の後方に対応する壁面502それぞれに備えてある。これらのうちのマーカ403は左側方マーカ、マーカ404は左後方マーカに相当する。
各マーカ401~404は、各壁面501~503に描かれたり、マーカ401~404を構成するボードなどを貼り付けたり、設置することで備えられている。本実施形態の場合、壁面502に備えたマーカ402、404については正方形とされている。また、壁面501、503に備えたマーカ401、403については車両1の前後方向が長辺とされた長方形、もしくは、車両1の前後方向が高さ方向となり、車両1の前方側が短辺となる上底、後方側が長辺となる下底で構成される台形で構成されている。図8は、マーカ401、402を備えた壁面501、502の斜視図であり、両壁面501、502の角部を挟んだ両側にマーカ401、402を配置してある。
壁面502に備えたマーカ402、404については、各車載カメラ10、11によってほぼ正面視の状態で撮像され、その形状でディスプレイ200に表示されることになる。このため、マーカ403、404の形状については、ディスプレイ200に映し出したい形状そのものとして、正方形としてある。一方、壁面501、503に備えたマーカ401、403については、壁面501、503が撮像中心軸に対して傾斜した状態となっていることから、マーカ401、403の形状がディスプレイ200に映し出される形状と異なったものとなる。すなわち、マーカ401、403は、撮像中心軸を法線方向とする平面に対してマーカ401、403を投影した形状でディスプレイ200に映し出されることになる。このため、ディスプレイ200に表示されたときに、正方形に近い形状となるように、上下方向よりも水平方向を長くした形状、つまり正方形を横長とした形状である長方形、もしくはそれに更に遠近法を加味した台形としてある。
図9は、右側方カメラ10でマーカ401、402を撮像した画像データをディスプレイ200で表示した場合の様子を示した図である。この図に示されるように、ディスプレイ200の左右両端それぞれにマーカ401、402の映像が映し出されている。マーカ401とマーカ402は、離れて映し出されている。
ここで、上記したように、キャリブレーションとして、車載カメラ10、11のロールずれ補正やリアガイド線ずれの補正が行われることになる。
ロールずれ補正については、2つのマーカ401、402の中心を結んだ線が所望の状態になっているか否かを判定し、所望の状態となるように画像中心に対してロール方向に回転させる処理が画像処理部103において自動的に行われる。例えば、図10に示すように、ロールずれが無い場合に映し出されるマーカ401とマーカ402の中心位置を結んだ線がディスプレイ200の左右方向に対して所定角度θ傾斜しているのであれば、その角度θを基準値とする。そして、ロールずれ補正前のマーカ401とマーカ402の中心を結んだ線とディスプレイ200の左右方向との成す角度が基準値となるように、画像をロール方向に回転させることでロールずれ補正を行っている。
このようなロールずれ補正を行う場合、マーカ401とマーカ402の距離が離れている方がより良好な補正を行える。すなわち、両者の距離が長い場合の方が短い場合と比較して、より両者の中心を結ぶ線をずれなく引くことが可能となり、より良好な補正が行えるようになる。したがって、図9に示したように、ディスプレイ200の左右両端それぞれにマーカ401、402の映像が映し出されるようにすることで、良好にロールずれ補正を行うことが可能となる。
また、リアガイド線ずれ補正については、2つのマーカ401、402の位置ずれや形状の歪みもしくは大きさなどに基づいて補正が行われる。リアガイド線ずれが生じた場合、生じていない場合と比較して、マーカ401、402の位置がずれたり、形状や大きさがずれたりし、マーカ401、402の映し出される位置がディスプレイ200の中心から離れる程、ずれが大きくなる。このため、リアガイド線ずれが生じていないマーカ401、402、つまり所定位置において所定形状、所定寸法のものを基準値として、その基準値となるように画像面をピッチング方向およびヨーイング方向に回転移動させることでリアガイド線ずれ補正を行っている。
このようなリアガイド線ずれを行う場合、基準値からのずれ量が大きく現れるようにすることが好ましい。そして、上記したように、マーカ401、402の映し出される位置がディスプレイ200の中心から離れる程、すれが大きくなる大きく現れる。したがって、図9に示したように、ディスプレイ200の左右両端それぞれにマーカ401、402の映像が映し出されるようにすることで、良好にリアガイド線ずれ補正を行うことも可能となる。
このように、ディスプレイ200の左右両端それぞれにマーカ401、402の映像が映し出されるようにすることで、良好にキャリブレーションを行うことが可能となる。なお、ここでは右側方カメラ10について例に挙げて説明したが、左側方カメラ11についても同様のことが言える。
以上説明したように、本実施形態では、車載カメラ10、11の撮像範囲において、車両1の後方にマーカ402、404を設置すると共に車両1の側方にマーカ401、403を設置している。これにより、ディスプレイ200の左右両端それぞれにマーカ401、402の映像が映し出されるようにできる。したがって、良好にキャリブレーションを行うことが可能となる。
また、車両1の後方に位置するマーカ402、404の形状についてはディスプレイ200に映し出したい形状のままとしている。そして、車両1の側方に位置するマーカ401、403については、壁面501、503が撮像中心軸に対して傾斜した状態となっていることを考慮して、車両1の前後方向に長くしている。つまり、マーカ401、403については、ディスプレイ200に映し出されたときに所望の形状となるように、その所望形状を横長とした形状、もしくは更にそれに遠近法を加味した形状としている。
これにより、ディスプレイ200の左右両端それぞれに好ましい形状でマーカ401、402の映像が映し出されるようにできる。したがって、より良好にキャリブレーションを行うことが可能となる。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してマーカ401、403を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図11に示すように、本実施形態では、車両1の左右側方に配置されるマーカ401、403に庇部401a、403aを備えてある。庇部401a、403aは、マーカ401、403のうちのマーカ402、404側の辺において、マーカ401、402のうちの車両1の左右側面と対向する一面から立設されている。
このような庇部401a、403aを備えることにより、車両1の後方からの光の反射を抑制することが可能となる。すなわち、後方の壁面502で反射した光がマーカ401、403で反射すると、その光によって車載カメラ10、11でマーカ401、403を良好に撮像できない可能性がある。このため、庇部401a、403aを設けてマーカ401、403による後方からの光の反射を抑制できるようにすることで、マーカ401、403の画像を良好に撮像できる。これにより、より良好のキャリブレーションを行うことが可能となる。
なお、ここでは第1実施形態のように、マーカ401、403を長方形や台形とする場合に庇部401a、403aを備える形態を例に挙げたが、長方形や台形に限らず、庇部401a、403aを備えることができる。すなわち、マーカ401、403のうち車両1の左右側面と対向する一面から立設されるように、庇部401a、403aを備えるようにすれば良い。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、マーカ401、403を長方形もしくは台形、マーカ402、404を正方形とする場合を例に挙げて説明したが、これら以外の形状であっても良い。すなわち、ディスプレイ200の左右両側にマーカ401~404が表示されるように、車両1の後方と側方それぞれにマーカ401~404が配置される構造としてあれば良い。また、マーカ402、404についてはディスプレイ200で表示される形状そのままの形状とし、マーカ401、403についてはディスプレイ200に表示される形状を横長とした形状とすれば、マーカ401~404の形状を認識し易くでき、より好ましい。さらに、各マーカ401~404の中心位置を認識しやすい形状とすると好ましく、四角形の他、スコープ図形等であっても良い。
また、マーカ401~404が壁面501~503に備えられている場合を例に挙げたが、必ずしも壁面501、503に備えられている必要はない。例えば、マーカ401~404の少なくとも一部の設置台に備えられていて、キャリブレーションを実行するスペースの地面に設置されるようなものであっても良い。例えば、壁面以外の障害物などの存在によってキャリブレーションのスペースに制約があることも想定される。そのような場合にも、良好にキャリブレーションができるようにすることが必要である。そのような状況に対して、マーカ401~404の少なくとも一部の設置台に備えられたようなものを用いると有効である。
また、キャリブレーションだけでなく、他の機能の調整、例えばソナーによる障害物認識も同時に行われるようなスペースにおいて、キャリブレーションが行われる場合もある。そのような場合、キャリブレーション時にのみ、マーカ401~404が壁面501~503に立て掛けられたり、壁面501~503から出てきたりする構造であっても良い。
さらに、上記実施形態では、キャリブレーションのスペースとして壁面501、503と壁面502とが垂直になるようなものを想定しているが、必ずしも垂直である必要は無い。例えば、スペースの入口側よりも壁面502側の方が車両1の左右方向の幅が狭くなっていて、壁面501、503が壁面502に対して傾斜させられていても良い。
また、第2実施形態では、庇部401a、403aによって車両1の後方からの光の反射を抑制したが、マーカ401、403自体が反射し難いものとされていても良い。例えば、マーカ401、403の表面を粗面で構成するようにしても良い。