JP7076115B1 - 間質性肺炎の病態特異的バイオマーカー - Google Patents

間質性肺炎の病態特異的バイオマーカー Download PDF

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Abstract

呼吸困難症状を呈し急性増悪が疑われる間質性肺炎患者において、急性増悪であるか、急性増悪以外の病態に起因する急性呼吸増悪であるかを迅速に分析するための手段を提供する。呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のヘムオキシゲナーゼ-1濃度の測定値を得る工程、及び、その測定値に基づいて、患者における当該症状が急性増悪に起因するか、あるいは急性増悪以外の病態に起因するかを判定する工程を含む方法が提供される。その方法を行うためのキット、並びに、その方法に基づく患者の選別方法及び治療方針の決定方法も提供される。

Description

本開示は、バイオマーカーに関する。より具体的には、本開示は、間質性肺炎の診断・治療の分野で有用となり得るバイオマーカーに関する。
間質性肺炎は、肺の間質に炎症をきたし、間質の肥厚化・線維化に伴ってガス交換に障害を起こす疾患である。間質性肺炎のなかには、原因を特定できない特発性間質性肺炎(Idiopathic Interstitial Pneumonias:IIPs)が含まれ、さらにそのなかに、特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis:IPF)が含まれる。IIPsは、日本国の「難病の患者に対する医療等に関する法律」に指定された指定難病の1つである。
間質性肺炎は一般的に緩徐に進行するものが主であるが、なかでも短期間に急激に呼吸不全が進行する現象は「急性増悪(Acute Exacerbation:AE)」と呼ばれ、慢性期の治療に加えて集中治療を中心とする介入が必要となり得る予後不良の病態として医学的に認識されている。日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会と厚生労働科学研究特定疾患対策事業びまん性肺疾患研究班による「特発性間質性肺炎の診断・治療ガイドライン」(2004年)は、「IPFの経過中に,1カ月以内の経過で,(1)呼吸困難の増強,(2)HRCT所見で蜂巣肺所見+新たに生じたすりガラス陰影・浸潤影,(3)動脈血酸素分圧の低下(同一条件下でPaO210mmHg以上),のすべてがみられる場合を“急性増悪”とする.明らかな肺感染症,気胸,悪性腫瘍,肺塞栓や心不全を除外する.」と定義している。同様の定義はIPF以外の間質性肺炎の急性増悪にも適用され得る(非特許文献1)。
急性増悪(以下、AEと略すこともある)を有さない間質性肺炎患者とは、大部分の場合、上述した呼吸困難の増強等の症状を呈していない間質性肺炎、すなわち進行が緩やかで病状が安定している間質性肺炎の患者を意味する。このような間質性肺炎を安定期間質性肺炎ということもできる。しかしながら、上記の定義から理解されるように、呼吸困難の増強等の症状を呈してはいるが呼吸器感染症等の別個の原因によってその症状を説明できる少数の場合も、定義上、AEから除外される。
一般的に、間質性肺炎の経過中に、明らかな呼吸困難の増強等の症状を呈した病態を、広く急性呼吸増悪(Acute Respiratory Worsening:ARW)と呼び、呼吸器感染症等の、AEとは別個の理由によってその症状を説明できる間質性肺炎患者のサブグループ(以下、「AE以外のARW」ということもある)もARWに含まれる。
非特許文献2は、AEを有する間質性肺炎患者群が、AEを有さない間質性肺炎患者群と比べて、血清中のヘムオキシゲナーゼ-1(以下、HO-1と記す)のレベルがより高かったことを報告している。非特許文献2はまた、間質性肺炎患者が院内死亡をするか否かを予測するためのバイオマーカーとして血清HO-1が有用になり得るという可能性を記載している。ただし、非特許文献2は、28人という少数の特定の間質性肺炎患者を「AEを有する」と「AEを有さない」とに区別することができたという前提から出発して、群としては前者の方がより高い血清HO-1レベルを有していたことを観察したものであった。
しかしながら、現実の臨床現場では、明らかな安定期の間質性肺炎患者とは異なり呼吸困難の症状を呈している間質性肺炎患者については、その症状がAEに起因するのか、あるいは、呼吸器感染症等に起因する(いわゆる「AE以外のARW」)かを区別すること自体が、非常に難しいことが多い。つまり、このような現実の臨床現場では、呼吸困難の症状を呈している患者に関し、非特許文献2の研究における前提条件自体が容易には成立しない。従って、呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者に対しては、比較的頻度の高い呼吸器感染症に起因したARWを疑い、まず抗菌薬を一定期間投与し、それに対する治療反応性を確認できれば、呼吸困難の症状は呼吸器感染症によるものだったと事後的に判断し、一方で、抗菌薬の治療反応性が見られない場合は、AEを考慮し、その時点からAEに特化した治療(主な治療としてステロイドパルス療法)を開始するというのが典型的な臨床経過である。この現状のアプローチでは、結果的にAEだと判明した患者が、抗菌薬投与という不必要な処置を受けたことになり、しかもAEのための適切な治療の開始が遅れたことになる。仮に抗菌薬ではなくステロイド薬の方を先に投与し始める場合でも同様の問題が存在し、特に、実際にはAEではない患者に対してステロイド薬を投与することは患者に対する著しい負担と無駄なコストを生じることになり得る。
間質性肺炎患者が呼吸困難の症状を呈する際に、それが急性増悪であるか他の原因による呼吸困難であるのかを早期に区別できれば、早期に適切な治療介入が可能となる。従って、そのような区別を行うための、バイオマーカーのような客観的指標に対するニーズが存在する。上述した非特許文献2は、特に「AE以外のARW」のサブグループに着目しているわけではなく、14人の患者からなる特定の非AE群の血清HO-1レベルが、やはり14人の患者からなるAE群のものより低かったことを記載しているにすぎない(一般に、間質性肺炎の非AE患者のなかでARW群に属するのは僅かなマイノリティである)。すなわち非特許文献2は、「AE以外のARW」群をAE群から区別するという特定の目的のためにいかなるバイオマーカーが有用になり得るかは教示しておらず、「AE以外のARW」群とAE群とを区別するためにHO-1が有用になり得ることも教示していない。実際、進行性の呼吸困難又は呼吸不全によって特徴付けられる他の疾患(例えば、肺炎、喘息等)でも、肺などにおけるHO-1レベルが上昇することが知られているため(非特許文献3~6)、間質性肺炎患者のうち呼吸困難の症状を呈しているAE群及び「AE以外のARW」群の両群においてHO-1レベルが上昇し、HO-1レベルによって両群を区別することは困難であると推測することができた。
CHEST 2007; 132:214-220 Canadian Respiratory Journal, Volume 2018, Article ID 7260178 Oxidative Medicine and Cellular Longevity, Volume 2019, Article ID 3214196 Mediators of Inflammation, Volume 2016, Article ID 4158698 Am J Respir Cell Mol Biol, Vol 36. pp 158-165, 2007 Canadian Respiratory Journal, Volume 2018, Article ID 9627420
本開示の実施形態は、呼吸困難症状を呈しAEが疑われる間質性肺炎患者において、AEであるか「AE以外のARW」であるかを迅速に分析するための手段を提供する。
本発明者らは、呼吸困難症状を呈しAEが疑われる間質性肺炎の患者群に着目した詳細な研究を行った。その結果、AEと「AE以外のARW」との混在が事後的に確認された上記患者群において、安定期の間質性肺炎患者の不在にも関わらず、血中HO-1の濃度がAEと予測外に強い正の相関を維持していたことが明らかになった。従って、血中HO-1の濃度が、「AE以外のARW」の可能性を早期に排除すること、すなわち、AEであると早期に判断することのために有用であることが見出され、本発明が完成するに至った。
本開示は以下の実施形態を含む。
[1]
呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のHO-1濃度の測定値を得る工程、及び、
前記測定値に基づいて、前記患者における当該症状が急性増悪に起因するか、あるいは急性増悪以外の病態に起因するかを判定する工程を含む、
方法。
[2]
前記判定する工程において、前記HO-1濃度の測定値が、前記症状が急性増悪以外の病態ではなく急性増悪に起因する可能性と正に相関する指標として用いられる、[1]に記載の方法。
[3]
前記判定する工程が、
前記HO-1濃度の測定値が基準値以上である場合には、呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者における当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定する
という基準に従って判定を行うことを含む、[1]に記載の方法。
[4]
前記基準値が28ng/mL~38ng/mLの範囲から決定される、[3]に記載の方法。
[5]
前記HO-1濃度の測定値を得る工程は、HO-1を特異的に認識する抗体又は抗体断片を用いてHO-1の濃度を測定することを含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]
急性増悪以外の病態が、呼吸器感染症、気胸、悪性腫瘍、肺塞栓、心不全、又はこれらのいずれかの組合せによる病態である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]
前記血液検体が、全血、血清又は血漿である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]
(a)HO-1を特異的に認識する抗体若しくは抗体断片、及び/又は
(b)呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者の血液検体中のHO-1濃度の測定値が基準値以上である場合には、当該症状が急性増悪に起因すると判定し、前記HO-1濃度の測定値が基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行う旨が説明された添付文書
を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法を行うためのキット。
[9]
以下を含む、治療が必要な間質性肺炎患者を選別する方法:
(1)呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のHO-1濃度の測定値を得ること;
(2)前記測定値が、基準値以上である場合には、前記患者における当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行うこと;及び
(3)当該症状が急性増悪に起因すると判定された場合に、前記患者を、ステロイド薬による治療が必要な間質性肺炎患者として選別すること。
[10]
以下を含む、間質性肺炎患者における治療方針の決定方法:
(1)呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のHO-1濃度の測定値を得ること;
(2)前記測定値が、基準値以上である場合には、前記患者における当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行うこと;及び
(3)当該症状が急性増悪に起因すると判定された場合に、前記患者はステロイド薬による治療が必要であると決定し、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定された場合には、前記患者はステロイド薬以外による治療が必要であると決定する、という基準に従って治療方針を決定すること。
本開示の実施形態によれば、従来行われていた、抗菌薬等による治療反応性を確認するステップを経ることなく、迅速にAEと「AE以外のARW」とを区別し、それらに対する特異的治療に迅速に移行することが可能になる。
図1は、AE群、「AE以外のARW」群(図中では単に「ARW」と表示している)、及び安定期(Stable)群の間質性肺炎患者において、HO-1及びその他のマーカーの測定値の分布を比較した実施例1の結果を示す。 図2は、AE群と「AE以外のARW」群(図中では単に「ARW」と表示している)とのあいだでHO-1並びにその他の指標及びマーカーの測定値の分布を比較した実施例2の結果を示す。
一側面において、本開示は、呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のHO-1濃度の測定値を得る工程、及び、その測定値に基づいて、上記患者における当該症状が急性増悪に起因するか、あるいは急性増悪以外の病態に起因するかを判定(あるいは分析)する工程を含む、方法を提供する。
本開示において、間質性肺炎の文脈における急性増悪という用語は、当業者に知られる定義に基づいて、「1カ月以内に(1)呼吸困難の増強、(2)HRCT所見で蜂巣肺所見+新たに生じたすりガラス陰影・浸潤影、(3)動脈血酸素分圧の低下(同一条件下でPaO 10mmHg以上)のすべてがみられる場合、ただし明らかな呼吸器感染症、気胸、悪性腫瘍、肺塞栓や心不全を除外する」と定義される。従って、本開示における患者は、単に呼吸困難を有するだけなく、呼吸困難の増強を呈している、あるいは進行性の呼吸困難症状を呈している患者であり得る。さらに、本開示における患者は、上記呼吸困難症状に加えて、その1カ月以内に、HRCT(高分解能コンピュータ断層撮影)により蜂巣肺と新たに生じたすりガラス陰影及び/又は浸潤影とを示すこと、及び、動脈血酸素分圧の有意な低下(同一測定条件下でPaO 10mmHg以上の低下)を示すことのうちのいずれか又は両方に該当し得る。ここでいう同一測定条件下でのPaOとは、同じ酸素投与量下で測定されるPaOを意味する。
HO-1自体は、当業者に知られたタンパク質であり、ヘム代謝を担う酵素の一種である。HO-1は、ヘムをビリベルジン、鉄、及び一酸化炭素へと分解する反応を触媒し、ヒトを含む哺乳類において抗炎症・抗酸化作用を示し得ることが知られている。HO-1は、Heat shock protein 32という別名でも知られている。
本開示において、血液検体中のHO-1濃度という場合の血液検体とは、特に末梢血の検体であり、全血、血清、又は血漿であり得る。従って、血液検体中のHO-1濃度の測定値を得る工程は、例えば、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)等、当業者に知られる方法によって、全血、血清、又は血漿中のHO-1濃度を測定することを含み得る。最適なELISA測定法の一例が非特許文献6に記述されている。これは修正(modified)ELISA法と呼ばれ、検出抗体を反応させるアッセイバッファーとして、1% BSA(ウシ血清アルブミン)、0.05% Tween20、0.1M NaCl、5mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、及び50μg/mLマウスIgGを含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を用い、血清を1:20希釈で用いて、抗HO-1ポリクローナル抗体によってHO-1濃度を測定するものである。
全血、血清、及び血漿におけるHO-1濃度は互いに相関するが、定量化の正確さの観点から血清を用いることが特に好ましくなり得る。
HO-1濃度の測定値を得る工程は、HO-1を特異的に認識する抗体又は抗体断片を用いてHO-1の濃度を測定することを含み得る。HO-1を特異的に認識する抗体又は抗体断片を用いてHO-1の濃度を測定することは、より具体的には、該抗体又は抗体断片を検体に接触させて、検体中のHO-1に結合した抗体又は抗体断片を検出することにより結合量を測定することを含み得る。このように抗体又は抗体断片の特異的認識に基づいてタンパク質量を測定する多様な方法が当業者に知られている。ELISAはその一例である。
本開示における「濃度」は、検体の単位量当たりのHO-1存在量を意味し、典型的には検体の単位体積当たりのHO-1の質量又はモル数として表される。ただし、「濃度」は、必ずしも質量又はモル数の単位で定量化されるとは限らず、具体的な測定方法に応じて、単位体積当たりのHO-1の存在量に基づくシグナル強度(例えば吸光度)としても定量化され表示され得る。また、濃度は、必ずしも検体の単位体積当たりのHO-1量として定量化されるとは限らず、例えば検体の単位重量当たりのHO-1量でもあり得る。
本開示の実施形態に用いられる血液検体は、上記判定が行われる対象となる間質性肺炎患者から採取されたもの、すなわち当該間質性肺炎患者に由来するものである。ヒト患者から全血、血清、又は血漿を採取する方法は当業者によく知られている。
HO-1濃度の測定値を得る工程の前に、当該間質性肺炎患者から血液検体を採取する工程、及び/又は当該間質性肺炎患者から採取された検体を提供する工程を含むこともできる。
本開示における「急性増悪以外の病態」とは、呼吸器感染症、気胸、悪性腫瘍、肺塞栓、心不全、又はこれらのいずれかの組合せによる病態であり得る。急性増悪以外の病態は、最も典型的には肺感染症による病態である。「AE以外のARW」の患者において、これらの病態に加えて、併存する他の疾患が呼吸困難症状にさらに寄与していることもあり得る。
本開示において、Aであるか、あるいはBであるかを「判定する」とは、AであるかBであるかのどちらかに結論付けて二分判定する実施形態だけでなく、例えば、Aである可能性がより高いというように可能性の大きさを分析し相対的に評価する実施形態も包含し得る。すなわち、判定する工程において、HO-1濃度の測定値は、呼吸困難症状が急性増悪以外の病態ではなく急性増悪に起因する可能性と正に相関する指標として用いられることができる。つまり、血液検体中HO-1濃度の測定値は、高ければ高いほど、呼吸困難症状が急性増悪以外の病態ではなく急性増悪に起因する可能性が高いと評価でき、低ければ低いほど、呼吸困難症状が急性増悪ではなく急性増悪以外の病態に起因する可能性が高いと評価できるという指標を与えるものである。換言すると、本実施形態は、間質性肺炎患者における呼吸困難症状が急性増悪以外の病態ではなく急性増悪に起因する可能性を示す、あるいはその可能性を評価するバイオマーカーとしての、血液検体中HO-1の使用を提供するものである。
従来は、呼吸困難症状が急性増悪以外の病態ではなく急性増悪に起因する可能性の程度(又は、呼吸困難症状が急性増悪ではなく急性増悪以外の病態に起因する可能性の程度)を分析又は定量化するためには何を測定すればよいかという基本的な知識が欠如していたところ、本開示は、その分析又は定量化を行うための具体的な手段を初めて提供するものである。
また、複数の個体のなかで、HO-1濃度がより高い個体は、HO-1濃度がより低い個体と比べて、呼吸困難症状が急性増悪以外の病態ではなく急性増悪に起因する可能性がより高いと評価することができる。あるいは、同一個体から複数の時点でHO-1濃度が測定された場合、HO-1濃度がより高くなっている時点では、HO-1濃度がより低くなっている時点と比べて、その個体の呼吸困難症状が急性増悪以外の病態ではなく急性増悪に起因している可能性がより高くなっていると評価することができる。
本実施形態の方法は、呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者における当該症状が急性増悪に起因するか、あるいは急性増悪以外の病態に起因するかを判定するためのデータを収集する方法としてとらえることもできる。本実施形態の方法は、間質性肺炎の医学的分析の方法としてとらえることもできる。本実施形態の方法はインビトロで行うことができる。
一実施形態において、判定する工程は、HO-1濃度の測定値が基準値以上である場合には、呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者における当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行うことを含む。すなわち、HO-1濃度の測定値を基準値と比較し、ここで、基準値以上のHO-1濃度測定値は当該症状が急性増悪に起因することを示し、基準値未満のHO-1濃度測定値は当該症状が急性増悪以外の病態に起因することを示す。
基準値は、HO-1濃度を測定するアッセイの具体的な種類及び本実施形態の方法を実施する具体的な目的に応じて、実施者が適宜設定できる。例えば、高めの基準値を用いれば、呼吸困難症状がAEに起因すると判定することについての特異度が上がり、結果として「AE以外のARW」患者を見逃さず正しく「AE以外のARW」と判定できる能力がより高まり、真の「AE以外のARW」患者をAEと誤認する可能性が低下するが、ただし真のAE患者を見逃さず正しくAEと判定できる能力が犠牲になる。低めの基準値を用いれば、呼吸困難症状がAEに起因すると判定することについての感度が上がり、従ってAE患者を見逃さず正しくAEと判定できる能力がより高まり、真のAE患者を「AE以外のARW」と誤認する可能性が低下するが、ただし真の「AE以外のARW」患者を見逃さず正しく「AE以外のARW」と判定できる能力が犠牲になる。
基準値は事前に定められた値であり得る。例えば、基準値は、AE又は「AE以外のARW」のいずれであったかが決定された複数の患者(本開示において基準患者ともいう)の対応するHO-1濃度の測定値に基づいて事前に定められた値であり得る。少なくともそれぞれ9人以上、10人以上、20人以上、50人以上、又は100人以上の、AEであったと決定された基準患者及び「AE以外のARW」であったと決定された基準患者のHO-1濃度の測定値に基づいて定められた基準値を用いることが好ましい。ここでいう複数の基準患者は、いずれも、判定対象となる患者と同じく、呼吸困難症状を呈していた間質性肺炎患者であり、上記対応するHO-1濃度の測定値は、その基準患者から、呼吸困難症状を呈していた時点で採取された血液検体中のHO-1濃度である。「対応する」とは、HO-1濃度を測定する検体の種類及びアッセイの種類が共通していることを意味する。これら複数の基準患者は、特定の医療機関、国、地域、年齢範囲、性別、又はこれらのいずれかの組合せのような、共通のカテゴリーに属する患者であり得る。判定対象となる患者と同じカテゴリーに属する複数の基準患者のHO-1濃度の測定値に基づいて基準値が定められることが好ましい。
一実施形態では、基準値は、AEであったことが決定された複数の基準患者のHO-1濃度の測定値の中央値(又は平均値)より低く、かつ、「AE以外のARW」であったことが決定された複数の基準患者のHO-1濃度の測定値の中央値(又は平均値)より高い範囲の中から選択される値である。
別の実施形態では、基準値は、これら複数の基準患者のHO-1濃度測定値についてのROC(受信者操作特性)曲線分析により得られるカットオフ値である。ROC曲線分析及びカットオフ値の決定は当業者によく知られている。すなわち、上向きの縦軸に感度(つまり真陽性率)を、縦軸の下端から右に伸びる横軸に(1-特異度)(つまり偽陽性率)をプロットし、グラフの左上隅の点(感度=1、特異度=1となる理想点)に対して最短距離となる点、又は、Youden Index(感度+特異度-1)が最大になる点がカットオフ値である。呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者について血液検体中HO-1をバイオマーカーとしてAEと「AE以外のARW」とを見分ける場合、ROC曲線分析において少なくとも0.6以上のAUC(曲線下面積)が典型的に得られるが、0.6以上のAUCを生じる基準患者群に基づいて基準値が定められることが好ましく、0.7以上のAUCを生じる基準患者群に基づいて基準値が定められることがより好ましく、0.8以上のAUCを生じる基準患者群に基づいて基準値が定められることがより好ましく、0.9以上のAUCを生じる基準患者群に基づいて基準値が定められることがさらに好ましい。
特定の一実施形態において、基準値は、28ng/mL~38ng/mLの範囲内から決定あるいは選択される値である。基準値は、30ng/mL~35ng/mLの範囲内から決定あるいは選択される値であってもよい。特に血液検体が血清である場合にこれらの基準値が好ましく使用され得る。
本開示における、基準値としてのHO-1濃度は、非特許文献6に記述された修正(modified)ELISA法により決定される濃度、又は、当該修正ELISA法と相関関係が認められる他の測定法により決定される濃度であり得る。
ここで、当該修正ELISA法と当該他の測定法との間で、使用する基準物質や測定原理等が異なる場合、同一試料であっても、それぞれの測定法から得られる濃度が異なることがある。しかし、当該他の測定により決定される濃度が当該修正ELISA法により決定される濃度と異なる場合であっても、当該修正ELISA法により決定される濃度を基準として、当該他の測定法により決定される濃度を当該修正ELISA法により決定される濃度に換算し、基準値を決定することができる。例えば、同一試料群を測定した際、当該他の測定法により決定される濃度が、当該修正ELISA法により決定される濃度のx倍の濃度である場合、当該他の測定法により決定される濃度を1/x倍した値(換算値)を用いて、基準値を決定することができる。
本開示における、「判定する工程」は、患者の呼吸困難症状が急性増悪に起因すること若しくは急性増悪以外の病態に起因すること、又は、患者の呼吸困難症状が急性増悪に起因する可能性の程度若しくは急性増悪以外の病態に起因する可能性の程度を示す判定結果を、固形媒体に印刷すること、及び/又は、電子的表示装置に表示することを含み得る。固形媒体は例えば紙、樹脂フィルム等であり得る。電子的表示装置は例えば液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ等であり得る。可能性の程度を印刷・表示する具体的な様式は実施者が適宜選択することができ、例えばAEではなく「AE以外のARW」であるという可能性の大きさを数値(例えば、10が最も可能性が高く、数字が小さくなるほど可能性がより低いことを表す)や文字(例えば、Aが最も可能性が高く、アルファベットがB,C…と進むにつれ可能性がより低いことを表す)によるスコアによって印刷・表示することができる。
別の側面において、本開示は、上述した実施形態による方法を行うためのキットを提供する。一実施形態によるキットは、HO-1を特異的に認識する抗体又は抗体断片を含み得る。キットは、例えばELISAキットであり得、その場合のキットは、上記抗体又は抗体断片(それぞれ複数可)のほか、アッセイバッファー、アッセイプレート、上記抗体又は抗体断片のいずれかに結合できる発色酵素(例えば二次抗体にコンジュゲート化された発色酵素)、及び発色酵素のための発色基質のうちのいずれか1つ又は複数を含み得る。
それに加えて、又はそれに代えて、キットは、上記実施形態による方法に従って判定を行うための説明書を含み得る。この説明書は、呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者の血液検体中のHO-1濃度の測定値が、基準値以上である場合には、当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行う旨が説明された添付文書であり得る。この説明書には、例えば基準値の説明など、方法の実施形態について上述してきた特定事項のうちの1つ又は複数がさらに記載され得る。
説明書(あるいは添付文書)は、典型的には印刷された紙その他のシート状材料の形態で提供されるものであるが、説明データが記録された非一時的なコンピュータ読み取り可能記録媒体の形態で提供されてもよい。上記シート状材料がキットの容器を形成していてもよい。
別の側面において、本開示は、治療が必要な間質性肺炎患者を選別する方法を提供する。この方法は、(1)呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のHO-1濃度の測定値を得ること;(2)測定値が、基準値以上である場合には、患者における当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行うこと;及び(3)当該症状が急性増悪に起因すると判定された場合に、その患者を、ステロイド薬による治療が必要な間質性肺炎患者として選別することを含む。
この方法はさらに、ステロイド薬による治療が必要な間質性肺炎患者として選別された患者に、ステロイド薬を投与することを含み得る。薬剤を投与することを含む方法は治療方法としてとらえることができる。ステロイド薬の例としては、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメサゾン、ヒドロコルチゾン等のグルココルチコイドが挙げられるが、これらに限定されない。これらステロイド薬は、共通の受容体に結合し共通の作用を提供することができ、互換的に使用され得ることが当業者に知られている。異なる種類のステロイド薬のあいだで強度の違いに応じて投与量を調節し等価用量を定めることも当業者の技量の範囲内のことである。
ステロイド薬による治療は、ステロイド薬を経口投与及び/又は静脈投与することを含み得る。本開示におけるステロイド薬による治療の好適な一例は、ステロイドパルス療法である。ステロイドパルス療法は、500mg~1000mg/日のメチルプレドニゾロンを3日間、点滴静注することを典型的に含むものであり、1週間ごとにこれを(典型的には4回まで)繰り返してもよい。ステロイド薬による治療の別の一例は、メチルプレドニゾロン2mg/kg/日を2週間、次いで0.5~1mg/kg/日を2週間静注投与するものである。メチルプレドニゾロンを等価用量の他のステロイド薬で代替することもあり得る。好ましくは、ステロイド薬による治療は、当該患者から上記血液検体が採取された時から1週間以内、5日以内、3日以内、2日以内、又は1日以内に開始される。なお、病勢の程度によっては、ステロイド治療として、通常3日間のステロイドパルス療法後に、経口ステロイド内服を長期間(例えば数か月から数年間)継続する必要が生じる場合もある。一実施形態では、本方法は、HO-1濃度を測定するための血液試料を患者から採取する時点(またはHO-1濃度の測定値を得る時点)と、ステロイド薬を患者に投与する時点との間に、抗微生物薬(例えば抗菌薬、または抗生物質)を投与することを含まない。
本実施形態の方法は、呼吸困難症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定された場合に、その患者を、ステロイド薬以外による治療が必要な間質性肺炎患者として選別することをさらに含み得る。この方法は、さらに、ステロイド薬以外による治療が必要な間質性肺炎患者として選別された患者に、抗微生物薬を投与することを含み得る。本開示における抗微生物薬は、経口投与されてもよいし静脈投与されてもよい。好適な抗微生物薬の例としては、セフェム系、ペニシリン系、マクロライド系、キノロン系、カルバペネム系、アミノグリコシド系抗菌薬等の抗菌薬が挙げられるがこれらに限定されない。これらは天然または合成の抗生物質であり得る。好ましくは、抗微生物薬による治療は、当該患者から上記血液検体が採取された時から1週間以内、5日以内、3日以内、2日以内、又は1日以内に開始される。一実施形態では、本方法は、HO-1濃度を測定するための血液試料を患者から採取する時点(またはHO-1濃度の測定値を得る時点)と、抗微生物薬を患者に投与する時点との間に、ステロイド薬を投与することを含まない。
さらに別の側面において、本開示は、間質性肺炎患者における治療方針の決定方法を提供する。この方法は、(1)呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のHO-1濃度の測定値を得ること;(2)測定値が、基準値以上である場合には、患者における当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行うこと;及び(3)当該症状が急性増悪に起因すると判定された場合に、患者はステロイド薬による治療が必要であると決定し、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定された場合には、患者はステロイド薬以外による治療が必要であると決定する、という基準に従って治療方針を決定することを含む。
この方法は、ステロイド薬による治療が必要であると決定された患者に、上述したようにステロイド薬を投与することをさらに含み得る。
ステロイド薬以外による治療の典型的な例としては、抗微生物薬を投与することが挙げられる。従ってこの方法は、ステロイド薬以外による治療が必要であると決定された患者に、上述したように抗微生物薬を投与することをさらに含み得る。
以下、実施例により具体的な実施形態を説明するが、これらは例示の目的で提供されるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
実施例1は、比較的少ない数の患者データを用いて行われた初期段階の研究である。呼吸困難症状を呈している間質性肺炎患者から採血し(第1日:D1)、常法により血清試料を調製した。比較のために、呼吸困難症状を呈していない安定期の間質性肺炎患者からも採血し血清試料を調製した。採血後に、呼吸困難症状を呈している患者に対して、抗菌薬投与による診断的処置が行われ、最終的に、急性増悪(AE)であるか、又は肺感染症による「AE以外のARW」であるかのどちらかに確定診断がされた。
非特許文献6に記述された修正ELISA法を用いて、血清試料中のHO-1濃度を測定した。図1の左上パネルは、AE、「AE以外のARW」、及び安定期(Stable)の間質性肺炎患者群の血清試料において測定されたHO-1濃度(単位ng/mL)の分布を示している。比較のために、図1の他のパネルでは、公知の他の間質性肺炎マーカー(KL-6、SP-A、SP-D)及び炎症マーカー(CRP、LDH)の測定結果も示している。図1に見られるように、HO-1濃度は、AE群だけにおいて明確な上昇を有しており、HO-1は、安定期群だけでなく「AE以外のARW」群からも、AE群を区別することができた。「AE以外のARW」群のHO-1濃度は安定期群のものと実質的に変わらないことが見出された。図1に示すマーカーのうち、AE群を、安定期群及び「AE以外のARW」群の両方から統計学的有意差をもって判別できたのは、HO-1だけであった。
本実施例では、診断的処置及び確定診断がなされる前の時点で血液検体が採取され、その血液検体についてHO-1濃度が測定された。つまり、血中HO-1は、初期段階でAEと「AE以外のARW」とを予測的に鑑別することができるバイオマーカーであり、抗菌薬等による治療反応性を確認する診断的処置を省略することを可能にし、AE又は「AE以外のARW」のどちらかに特化した治療を早期に開始することを可能にする。
[実施例2]
実施例1からさらに患者データ数を増やして同様の研究を行った。このデータにおけるAEは33例であり、「AE以外のARW」は9例であって呼吸器感染症、心不全、及び急性肺血栓塞栓症の患者を含んでいた。図2の左上パネルに示されているように、HO-1濃度の分布は、AE群と「AE以外のARW」群との間で明確な違いを有していた。この違いは統計学的に有意であった(Wilcoxon/Kruskal-Wallisの 検定(順位和)におけるp値は0.0029(2標本検定(正規近似))及び0.0028(一元配置検定(カイ二乗近似)))。
CTスキャン像に基づいて肺の炎症性変化の範囲をスコア化したものであるGGO(ground glass opacity)スコアも、統計学的有意差をもってAE群と「AE以外のARW」群とを区別することができた(図2右上;上記p値はそれぞれ0.0015及び0.0014)。しかしながら図2に示す他の指標及びマーカーは、この区別を行うことができなかった。
[実施例3]
実施例2のHO-1濃度のデータを用いて、「AE以外のARW」と区別してAEと判定することについてのROC曲線分析を行った。その結果、AUCは0.788であり、Youden Indexに基づくカットオフ値は32.0ng/mLであった。このカットオフ値において、感度は0.697、特異度は0.800であった。「AE以外のARW」群を肺感染症の患者だけに限定した場合のカットオフ値は30.1ng/mLとなった。驚くべきことに、「AE以外のARW」群に安定期群を加えた場合に、AUCはさらに0.847に向上したもののカットオフ値はほぼ変化しなかった。このことは、「AE以外のARW」群は呼吸困難の増強を示す間質性肺炎患者群ではあってもそのHO-1濃度は安定期群のものと実質的に変わらないことを示唆し、AEと「AE以外のARW」との鑑別にける血中HO-1濃度の有用性をさらに裏付けている。実施例2からさらに、AEを41例に、「AE以外のARW」を19例(全て肺感染症例)に増やして行った分析においても、本質的には全く同じ結果が得られ、カットオフ値も32.0ng/mLのままであった。

Claims (10)

  1. 呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者における当該症状が急性増悪に起因するか、あるいは急性増悪以外の病態に起因するかを判定するためのデータを収集する方法であって、前記患者から採取された血液検体中のヘムオキシゲナーゼ-1(以下、HO-1と記す)濃度の測定値を得る工程を含む、方法。
  2. 前記判定をするためのデータの収集において、前記HO-1濃度の測定値が、前記症状が急性増悪以外の病態ではなく急性増悪に起因する可能性と正に相関する指標として用いられる、請求項1に記載の方法。
  3. 呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のヘムオキシゲナーゼ-1(以下、HO-1と記す)濃度の測定値を得る工程、及び、
    前記HO-1濃度の測定値が基準値以上である場合には、呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者における当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定する
    という基準に従って判定を行う工程を含む、方法。
  4. 前記基準値が28ng/mL~38ng/mLの範囲から決定される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記HO-1濃度の測定値を得る工程は、HO-1を特異的に認識する抗体又は抗体断片を用いてHO-1の濃度を測定することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 急性増悪以外の病態が、呼吸器感染症、気胸、悪性腫瘍、肺塞栓、心不全、又はこれらのいずれかの組合せによる病態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記血液検体が、全血、血清又は血漿である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. (a)HO-1を特異的に認識する抗体若しくは抗体断片、及
    b)呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者の血液検体中のHO-1濃度の測定値が基準値以上である場合には、当該症状が急性増悪に起因すると判定し、前記HO-1濃度の測定値が基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行う旨が説明された添付文書
    を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を行うためのキット。
  9. 以下を含む、治療が必要な間質性肺炎患者を選別する方法:
    (1)呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のヘムオキシゲナーゼ-1(以下、HO-1と記す)濃度の測定値を得ること;
    (2)前記測定値が、基準値以上である場合には、前記患者における当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行うこと;及び
    (3)当該症状が急性増悪に起因すると判定された場合に、前記患者を、ステロイド薬による治療が必要な間質性肺炎患者として選別すること。
  10. 以下を含む、間質性肺炎患者における治療方針の決定方法:
    (1)呼吸困難症状を呈する間質性肺炎患者から採取された血液検体中のヘムオキシゲナーゼ-1(以下、HO-1と記す)濃度の測定値を得ること;
    (2)前記測定値が、基準値以上である場合には、前記患者における当該症状が急性増悪に起因すると判定し、基準値未満である場合には、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定するという基準に従って判定を行うこと;及び
    (3)当該症状が急性増悪に起因すると判定された場合に、前記患者はステロイド薬による治療が必要であると決定し、当該症状が急性増悪以外の病態に起因すると判定された場合には、前記患者はステロイド薬以外による治療が必要であると決定する、という基準に従って治療方針を決定すること。
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