JP7073739B2 - 光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2は、光ファイバ及びその製造方法に関し、重水素処理の途中で波長1410~1430nmのいずれか1つの波長における伝送損失を測定することで、構造欠陥と重水素分子との反応が完了したか否かを判断し、処理時間の短縮を図ることが開示されている。
ゲルマニウムが添加されたシリカガラスからなるコア部と、前記コア部の外周に形成された純シリカガラスからなるクラッド部と、を備える光ファイバを、所定の濃度の重水素を含むガスを所定の圧力で満たした処理槽に投入し、前記光ファイバを所定の温度で所定の時間、前記ガスに暴露させ、重水素分子を前記光ファイバ中に拡散させる光ファイバの製造方法において、
前記コア部と前記純シリカガラスとの比屈折率差に応じて、前記処理槽内の圧力、前記処理槽内の重水素濃度、前記ガスの暴露温度、および前記ガスの暴露時間のうち少なくとも1つを変化させる。
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、
(1)ゲルマニウムが添加されたシリカガラスからなるコア部と、前記コア部の外周に形成された純シリカガラスからなるクラッド部と、を備える光ファイバを、所定の濃度の重水素を含むガスを所定の圧力で満たした処理槽に投入し、前記光ファイバを所定の温度で所定の時間、前記ガスに暴露させ、重水素分子を前記光ファイバ中に拡散させる光ファイバの製造方法において、
前記コア部と前記純シリカガラスとの比屈折率差に応じて、前記処理槽内の圧力、前記処理槽内の重水素濃度、前記ガスの暴露温度、および前記ガスの暴露時間のうち少なくとも1つを変化させる。
上記方法によれば、簡便な設備を用いて、重水素ガスの使用量を抑えつつ、水素ロス増を確実に抑えることができる。
上記方法によれば、水素ロスの増加に起因する伝送特性の劣化を抑制することができる。
P×C×t≧37000×Δn2.5
となるように、前記P、前記C、および前記tの値を定めてもよい。
比屈折率差が比較的大きい光ファイバに対して上記のような方法で重水素処理を行うことが特に有効である。
水素爆発を防止するため、重水素濃度は上記範囲とすることが好ましい。
本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
まず、光ファイバの製造に使用される光ファイバ母材が用意される。光ファイバ母材は、製造される光ファイバが有すべき光伝送特性を実現するよう構成されている。例えば、光ファイバ母材は、ゲルマニウムまたはゲルマニウムを含む化合物(例えばGeO2)が添加されたシリカガラスからなるコア部と、コア部の外周に設けられた高純度シリカガラス(純シリカガラスの一例)からなるクラッド部とを有する。ゲルマニウムは、コア部の屈折率を高くするために添加される。コア部の高純度石英ガラスに対する比屈折率差は、例えば、Δn=0.30~0.80%程度である。
次に、光ファイバ素線をファイバボビンに巻取り、光ファイバ素線をファイバボビンごと光ファイバ処理装置に置き、重水素処理を行う。
図1は、本実施形態に係る光ファイバの製造方法を説明するための概略図である。図1に示すように、光ファイバ処理装置10は、処理槽12と、ガス供給部20と、ガス混合機30とを備えている。ガス供給部20は、第一ガス供給路22および第二ガス供給路24を介してガス混合機30に連通されている。ガス混合機30は、第三ガス供給路32を介して処理槽12に連通されている。また、処理槽12には、ガス排出路40が連通されている。
まず、密閉容器14内に光ファイバ素線3が巻き取られたファイバボビン1を収納し、密閉容器14を密閉状態に保つ。次に、オン・オフ弁23,25,33,42を操作して、第一ガス供給路22、第二ガス供給路24、第三ガス供給路32を開状態にするとともに、ガス排出路40を開状態にする。
(実施例1)
本実施形態に係る光ファイバ処理装置10を用いて、処理槽12の密閉容器14のガス置換を行い、光ファイバを重水素処理した。具体的には、コア部と純シリカガラスとの比屈折率差Δnが0.330%の光ファイバ素線3をボビン2に巻き付けたファイバボビン1を用意し、当該ファイバボビン1を処理槽12の密閉容器14内に投入した。そして、重水素(D2)の濃度が2%、窒素(N2)の濃度98%の混合ガスを密閉容器14に供給し、当該混合ガスを100kPaの内圧で密閉容器14内に充填した。次に、光ファイバ素線3の表面温度が45℃となるようにヒータ16により密閉容器14を加熱し、光ファイバ素線3を密閉容器14内で混合ガスに36時間浸漬させた。そして、この重水素処理後の光ファイバ素線3の波長損失特性を測定した。
次に、当該光ファイバ素線3を、水素(H2)濃度1%で窒素(N2)濃度99%の混合ガスを1気圧以下の内圧で充填した処理槽にて48時間浸漬した。この水素処理後の光ファイバ素線3の波長損失特性を測定した。
水素処理前後(すなわち、重水素(D2)処理後と水素(H2)処理後)での1380nm帯の伝送損失を比較した結果、水素処理前(重水素処理後)の伝送損失の値は0.30dB/kmであり、水素処理後の伝送損失の値は0.30dB/kmであり、水素処理後においても水素ロス増はなかった。
P×C×t≧37000×Δn2.5(以下、条件式(1)と称す。)
となるように、圧力P、濃度C、および暴露時間tの値を定めた。
一方、比較例1においては、実施例3と同様の比屈折率差Δnを有する光ファイバを用い、重水素ガスの暴露時間tを実施例3の暴露時間(27hr)よりも短い時間(20hr)に設定した。なお、比較例1では、密閉容器14内の圧力P、重水素ガスの濃度C、光ファイバの表面温度について実施例2~5と同値としたため、上記の条件式(1)を満たしていない。
一方、比較例2においては、実施例6よりも比屈折率差Δnの大きい光ファイバを用い、密閉容器14内の圧力Pを実施例6の圧力(38kPa)と同値の圧力(38kPa)に設定した。なお、比較例2では、重水素ガスの暴露時間t、重水素ガスの濃度C、光ファイバの表面温度について実施例6~8と同値としたため、条件式(1)を満たしていない。
一方、比較例3においては、実施例10と同値の比屈折率差Δnを有する光ファイバを用い、重水素ガスの濃度Cを実施例10の濃度(3%)よりも低い濃度(2%)に設定した。なお、実施例10では、密閉容器14内の圧力Pを実施例10の圧力(100kPa)よりも低い圧力(50kPa)に設定し、重水素ガスの暴露時間tを実施例10の暴露時間(18hr)よりも長い時間(24hr)に設定するとともに、光ファイバの表面温度は実施例10と同値(40℃)に設定した。このように設定された比較例3は条件式(1)を満たしていない。
2:ボビン
3:光ファイバ素線
10:光ファイバ処理装置
12:処理槽
14:密閉容器
16:ヒータ
18:圧力計
19:圧力調整器
20:ガス供給部
22:第一ガス供給路
23:オン・オフ弁
24:第二ガス供給路
25:オン・オフ弁
26:重水素ガス供給部
28:希釈ガス供給部
30:ガス混合機
31:濃度計
32:第三ガス供給路
33:オン・オフ弁
40:ガス排出路
42:オン・オフ弁
44:濃度計
46:温度計
Claims (6)
- ゲルマニウムが添加されたシリカガラスからなるコア部と、前記コア部の外周に形成された純シリカガラスからなるクラッド部と、を備える光ファイバを、所定の濃度の重水素を含むガスを所定の圧力で満たした処理槽に投入し、前記光ファイバを所定の温度で所定の時間、前記ガスに暴露させ、重水素分子を前記光ファイバ中に拡散させる光ファイバの製造方法において、
前記コア部と前記純シリカガラスとの比屈折率差に応じて、前記処理槽内の圧力、前記処理槽内の重水素濃度、前記ガスの暴露温度、および前記ガスの暴露時間のうち少なくとも1つを変化させる工程を含み、
前記工程は、
前記処理槽内の前記圧力を、前記比屈折率差が大きいほど高くすること、
前記処理槽内の前記重水素濃度を、前記比屈折率差が大きいほど高くすること、
前記ガスの前記暴露温度を、前記比屈折率差が大きいほど高くすること、
前記ガスの前記暴露時間を、前記比屈折率差が大きいほど長くすること、
の少なくとも一つを含む、
光ファイバの製造方法。 - 前記暴露温度が35℃以上50℃以下である、請求項1に記載の光ファイバの製造方法。
- 前記比屈折率差をΔn(%)、前記処理漕内の圧力をP(kPa)、前記処理漕内の重水素濃度をC(%)、前記ガスの暴露時間をt(時間)としたときに、
P×C×t≧37000×Δn2.5
となるように、前記P、前記C、および前記tの値を定める、請求項2に記載の光ファイバの製造方法。 - 前記比屈折率差が大きいほど前記暴露時間を長くするとともに、前記圧力、前記重水素濃度、前記暴露温度は変化させない、請求項1に記載の光ファイバの製造方法。
- 前記比屈折率差が0.3%以上である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光ファイバの製造方法。
- 前記重水素濃度は3%以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバの製造方法。
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