以下に、本開示に係るロールニップ機構及び複合材料シート製造装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
<複合材料シート製造装置1の構成>
図1は、実施形態に係る複合材料シート製造装置1の模式図である。なお、以下の説明では、複合材料シート製造装置1の通常の使用態様での設置状態における水平方向を、本実施形態においても水平方向として説明し、上方を本実施形態においても上方または上側として説明し、下方を本実施形態においても下方または下側として説明する。また、複合材料シート製造装置1の通常の使用態様での設置状態における水平方向のうち、無端ベルト20によって搬送する複合組成物105(図3参照)の搬送方向に直交する方向を、幅方向として説明する。
複合材料シート製造装置1は、駆動ロール10と、従動ロール15と、無端ベルト20と、加熱装置30と、冷却装置35と、駆動モータ40とを有している。このうち、駆動モータ40は、駆動ロール10を回転駆動させるための駆動力を発生する駆動部になっており、外部の電源(図示省略)から供給される電力により、駆動力を発生する。
また、駆動ロール10と従動ロール15と無端ベルト20とは、無端ベルト20によって搬送する複合組成物105(図3参照)の厚さ方向における両側に2組が配置されている。本実施形態では、複合組成物105は厚さ方向が上下方向になる向きで搬送されるため、複合組成物105の厚さ方向は上下方向になっている。詳しくは、複合材料シート製造装置1は、上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とを有しており、上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とのそれぞれが、無端ベルト20と、無端ベルト20が巻き掛けられて無端ベルト20を循環させる駆動ロール10と従動ロール15の対とを有している。つまり、上側ベルトユニット6は、第1の駆動ロール10である上側駆動ロール11と、第1の従動ロール15である上側従動ロール16と、第1の無端ベルト20である上側無端ベルト21とを有している。また、下側ベルトユニット7は、第2の駆動ロール10である下側駆動ロール12と、第2の従動ロール15である下側従動ロール17と、第2の無端ベルト20である下側無端ベルト22とを有している。また、上側ベルトユニット6は、他に第1の駆動モータ40である上側駆動モータ41を有しており、下側ベルトユニット7は、第2の駆動モータ40である下側駆動モータ42を有している。
なお、駆動モータ40は、上側駆動モータ41と下側駆動モータ42との2つを有していなくてもよく、上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とで駆動モータ40を共用してもよい。即ち、1つの駆動モータ40で発生する駆動力を上側駆動ロール11と下側駆動ロール12とに伝達し、上側駆動ロール11と下側駆動ロール12とを回転駆動させてもよい。上側駆動ロール11と下側駆動ロール12との双方を回転駆動させることができれば、駆動手段の構成は問わない。
これらのように構成される上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とは、相対的に上側ベルトユニット6が上側に配置され、下側ベルトユニット7が上側ベルトユニット6の下側に配置されている。
上側ベルトユニット6が有する上側駆動ロール11と下側ベルトユニット7が有する下側駆動ロール12とは、それぞれ略円柱状の形状で形成され、円柱の軸心を回転軸として回転可能になっており、略水平方向に回転軸が延びる向きで配置されている。また、上側駆動ロール11は、動力伝達機構(図示省略)を介して上側駆動モータ41に接続されており、動力伝達機構を介して上側駆動モータ41から伝達される駆動力により、回転軸を中心として回転駆動することが可能になっている。同様に、下側駆動ロール12は、動力伝達機構(図示省略)を介して下側駆動モータ42に接続されており、動力伝達機構を介して下側駆動モータ42から伝達される駆動力により、回転軸を中心として回転駆動することが可能になっている。なお、動力伝達機構は、シャフトやチェーン、ベルト等、上側駆動モータ41や下側駆動モータ42で発生する動力を上側駆動ロール11や下側駆動ロール12に対して伝達することが出来る手段であれば、構成は問わない。
上側従動ロール16は上側駆動ロール11と対になって設けられ、下側従動ロール17は下側駆動ロール12と対になって設けられており、上側駆動ロール11や下側駆動ロール12と同様に、略円柱状の形状で形成されて円柱の軸心を回転軸として回転可能になっている。また、上側従動ロール16は、回転軸が上側駆動ロール11の回転軸と略平行な向きで配置され、上下方向における位置が、上側駆動ロール11の上下方向における位置とほぼ同じ位置に配置されている。同様に、下側従動ロール17は、回転軸が下側駆動ロール12の回転軸と略平行な向きで配置され、上下方向における位置が、下側駆動ロール12の上下方向における位置とほぼ同じ位置に配置されている。さらに、上側従動ロール16は、上側無端ベルト21を介して上側駆動ロール11から伝達される駆動力により回転軸を中心として回転することが可能になっており、下側従動ロール17は、下側無端ベルト22を介して下側駆動ロール12から伝達される駆動力により回転軸を中心として回転することが可能になっている。
上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とは、それぞれ無端帯状の形状で形成されており、上側無端ベルト21は上側駆動ロール11と上側従動ロール16とに巻き掛けられ、下側無端ベルト22は下側駆動ロール12と下側従動ロール17とに巻き掛けられている。これにより、上側無端ベルト21は、上側駆動ロール11の回転駆動時には、上側駆動ロール11に沿って上側駆動ロール11と上側従動ロール16と間で走行することが可能になっており、上側駆動ロール11からの駆動力を上側従動ロール16に伝達することが可能になっている。同様に、下側無端ベルト22は、下側駆動ロール12の回転駆動時には、下側駆動ロール12に沿って下側駆動ロール12と下側従動ロール17と間で走行することが可能になっており、下側駆動ロール12からの駆動力を下側従動ロール17に伝達することが可能になっている。上側無端ベルト21及び下側無端ベルト22は、例えば、銅、鉄、ステンレス等の金属や、ガラスクロス等によって形成されている。
また、上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とは、上側駆動ロール11と上側従動ロール16との間、及び下側駆動ロール12と下側従動ロール17との間で走行することにより、後述する複合組成物105(図3参照)を搬送可能になっている。即ち、上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とは、複合組成物105を搬送するための一対の無端ベルト20として設けられている。詳しくは、上側駆動ロール11と上側従動ロール16とが共に、回転軸が水平方向に向かう向きで配置されることにより、上側無端ベルト21は、上側駆動ロール11や上側従動ロール16の上側を通る経路と、上側駆動ロール11や上側従動ロール16の下側を通る経路を有している。また、下側駆動ロール12と下側従動ロール17とが共に、回転軸が水平方向に向かう向きで配置されることにより、下側無端ベルト22は、下側駆動ロール12や下側従動ロール17の上側を通る経路と、下側駆動ロール12や下側従動ロール17の下側を通る経路を有している。
このうち、上側無端ベルト21における、上側駆動ロール11や上側従動ロール16の下側を通る経路、及び、下側無端ベルト22における、下側駆動ロール12や下側従動ロール17の上側を通る経路は、搬送経路25になっている。また、上側無端ベルト21における、上側駆動ロール11や上側従動ロール16の上側を通る経路、及び、下側無端ベルト22における、下側駆動ロール12や下側従動ロール17の下側を通る経路は、戻り経路26になっている。無端ベルト20は、搬送経路25における外周面側が、複合組成物105を搬送する際に複合組成物105に接触する接触面25aになっている。つまり、上側無端ベルト21は、搬送経路25の下面が、複合組成物105に接触する接触面25aになっており、下側無端ベルト22は、搬送経路25の上面が、複合組成物105に接触する接触面25aになっている。
それぞれ搬送経路25と戻り経路26とを有する上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とは、上側ベルトユニット6が下側ベルトユニット7の上側に配置されるため、上側ベルトユニット6の搬送経路25と、下側ベルトユニット7の搬送経路25とが、対向して配置されている。つまり、上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とは、複合組成物105に対するそれぞれの接触面25aが対向して配置されている。また、上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とは、上側駆動ロール11が下側駆動ロール12の上方付近に位置し、上側従動ロール16が下側従動ロール17の上方付近に位置している。このため、上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とは、上側駆動ロール11や下側駆動ロール12の駆動時に、上側無端ベルト21の搬送経路25と下側無端ベルト22の搬送経路25とが、同じ方向に走行する向きで配置されている。
これらに対し、加熱装置30と冷却装置35とは、上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とで共通のものが用いられている。詳しくは、加熱装置30は、上側駆動ロール11と上側従動ロール16との間、及び下側駆動ロール12と下側従動ロール17との間に配置されており、上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とによって搬送する複合組成物105を加熱する加熱部として設けられている。加熱装置30は、複合組成物105に含まれる熱可塑性樹脂が、結晶性樹脂の場合は融点以上の温度に、非結晶性樹脂の場合は軟化点以上の温度またはガラス転移点以上の温度になるように複合組成物105を加熱し、熱可塑性樹脂を溶融する。
加熱装置30には、上側無端ベルト21の搬送経路25の一部と下側無端ベルト22の搬送経路25の一部とを覆う炉31が設けられ、炉31の内部には加熱手段である加熱ロール32が複数配置されている。複数の加熱ロール32は、それぞれ回転軸が上側駆動ロール11や上側従動ロール16、下側駆動ロール12、下側従動ロール17の回転軸と略平行になる向きで、上側無端ベルト21の搬送経路25の内周面側と、下側無端ベルト22の搬送経路25の内周面側とに配置されている。加熱ロール32は、搬送経路25の内周面側から上側無端ベルト21や下側無端ベルト22に接触することにより、上側無端ベルト21及び下側無端ベルト22を支持している。複数の加熱ロール32は、上側無端ベルト21の搬送経路25の内周面側から上側無端ベルト21に接触する加熱ロール32と、下側無端ベルト22の搬送経路25の内周面側から下側無端ベルト22に接触する加熱ロール32とが、対になって配置されている。対になる上側無端ベルト21側の加熱ロール32と下側無端ベルト22側の加熱ロール32とは、複合組成物105の搬送方向における位置がほぼ同じ位置になっており、この対になる加熱ロール32は、複合組成物105に対して上下方向の力を付与するニップロール65としても設けられている。
このように配置される加熱ロール32は、発熱可能になっており、上側無端ベルト21や下側無端ベルト22に接触しながら発熱することにより、上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とで搬送する複合組成物105を、上側無端ベルト21や下側無端ベルト22を介して加熱することが可能になっている。加熱装置30に配設される加熱手段は、加熱ロール32以外のものが用いられていてもよく、例えば、赤外線ヒータ等の非接触の熱源を加熱装置30内に配置してもよい。また、加熱装置30に配設される加熱手段は、種類が異なる複数の加熱手段を併用してもよい。
冷却装置35は、上側駆動ロール11と上側従動ロール16との間、及び下側駆動ロール12と下側従動ロール17との間における、加熱装置30よりも上側駆動ロール11、下側駆動ロール12寄りの位置に配置されており、加熱装置30によって加熱された複合組成物105を冷却する冷却部として設けられている。冷却装置35には、加熱装置30と同様に、上側無端ベルト21の搬送経路25の一部と下側無端ベルト22の搬送経路25の一部とを覆う炉36が設けられ、炉36の内部には冷却手段である冷却ロール37が複数配置されている。複数の冷却ロール37は、それぞれ回転軸が上側駆動ロール11や上側従動ロール16、下側駆動ロール12、下側従動ロール17の回転軸と略平行になる向きで、上側無端ベルト21の搬送経路25の内周面側と、下側無端ベルト22の搬送経路25の内周面側とに配置されている。冷却ロール37は、搬送経路25の内周面側から上側無端ベルト21や下側無端ベルト22に接触することにより、上側無端ベルト21及び下側無端ベルト22を支持している。複数の冷却ロール37は、上側無端ベルト21の搬送経路25の内周面側から上側無端ベルト21に接触する冷却ロール37と、下側無端ベルト22の搬送経路25の内周面側から下側無端ベルト22に接触する冷却ロール37とが、対になって配置されている。対になる上側無端ベルト21側の冷却ロール37と下側無端ベルト22側の冷却ロール37とは、複合組成物105の搬送方向における位置がほぼ同じ位置になっている。
このように配置される冷却ロール37は、例えば、水や油等の冷媒が内部を通っており、冷媒は、冷却ロール37の内外を循環可能になっている。冷却ロール37は、上側無端ベルト21や下側無端ベルト22に接触することにより、冷却ロール37の内部を通る冷媒と、上側無端ベルト21や下側無端ベルト22との間で熱交換を行わせることが可能になっており、この熱交換により、上側無端ベルト21及び下側無端ベルト22を冷却することが可能になっている。これにより冷却ロール37は、上側無端ベルト21や下側無端ベルト22とで搬送する複合組成物105を、上側無端ベルト21や下側無端ベルト22を介して冷却することが可能になっている。冷却装置35に配設される冷却手段は、冷却ロール37以外のものが用いられていてもよく、例えば、クーラ等により冷風を吹きつけてもよい。また、冷却装置35に配設される冷却手段は、種類が異なる複数の冷却手段を併用してもよい。
さらに、複合材料シート製造装置1は、張力調整機構50を有している。張力調整機構50は、駆動ロール10と従動ロール15との間隔を変化させる方向に、駆動ロール10を油圧シリンダによって移動させることにより、駆動ロール10と従動ロール15とに巻き掛けられる無端ベルト20の張力を調整することが可能になっている。具体的には、張力調整機構50は、上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とがそれぞれ有している。上側ベルトユニット6が有する張力調整機構50である上側調整機構51は、上側駆動ロール11と上側従動ロール16との間隔を変化させる方向に、上側駆動ロール11を油圧シリンダによって移動させることにより、上側無端ベルト21の張力を調整することが可能になっている。同様に、下側ベルトユニット7が有する張力調整機構50である下側調整機構52は、下側駆動ロール12と下側従動ロール17との間隔を変化させる方向に、下側駆動ロール12を油圧シリンダによって移動させることにより、下側無端ベルト22の張力を調整することが可能になっている。
なお、張力調整機構50は、これ以外の構成であってもよく、例えば、従動ロール15を移動させることにより駆動ロール10と従動ロール15との間隔を調整してもよい。または、張力調整機構50は、駆動ロール10や従動ロール15以外で無端ベルト20に接触するロールを移動させることにより、無端ベルト20の張力を調整するように構成されていてもよい。張力調整機構50は、無端ベルト20の張力を適切に調整することができるものであれば、その構成は問わない。
また、複合材料シート製造装置1は、ガイドロール55を有している。ガイドロール55は、無端ベルト20における内周面側に配置されており、即ち、ガイドロール55は、無端ベルト20における戻り経路26の内周面側に配置されている。ガイドロール55は、無端ベルト20の戻り経路26の内周面側から無端ベルト20に接触することにより、無端ベルト20の走行経路を、所望の経路にすることが可能になっている。例えば、ガイドロール55は、駆動ロール10や従動ロール15の円周方向における無端ベルト20の接触範囲を所望の範囲にしたり、戻り経路26の走行経路を、他の機器の配置構成に応じて調整したりすることが可能になっている。
ガイドロール55は、上側ベルトユニット6と下側ベルトユニット7とがそれぞれ有しており、上側ベルトユニット6が有するガイドロール55である上側ガイドロール56と、下側ベルトユニット7が有するガイドロール55である下側ガイドロール57とを有している。上側ガイドロール56は、上側無端ベルト21の戻り経路26の内周面側から上側無端ベルト21に接触することにより、上側無端ベルト21の走行経路を、所望の経路にすることが可能になっている。下側ガイドロール57は、下側無端ベルト22の戻り経路26の内周面側から下側無端ベルト22に接触することにより、下側無端ベルト22の走行経路を、所望の経路にすることが可能になっている。
これらのガイドロール55の数や、加熱ロール32の数、冷却ロール37の数は、複合材料シート製造装置1の仕様に応じて適宜設定されるのが好ましい。
図2は、図1のA-A矢視図であり、ロールニップ機構60の説明図である。本実施形態に係る複合材料シート製造装置1が備えるロールニップ機構60は、ニップロール65と、ベアリングケース61と、油圧シリンダ70と、測長センサ75と、ライナ80と、ライナ当接部88と、サーボモータ86と、ロードセル78とを有している。
このうち、ニップロール65は、加熱装置30が有する加熱ロール32に用いられており、本実施形態では、加熱装置30が有する加熱ロール32は、全てロールニップ機構60におけるニップロール65が用いられている。ニップロール65は、略円柱状の形状で形成され、円柱の軸心を回転軸として回転可能になっており、幅方向に回転軸が延びる向きで配置されている。また、ニップロール65は、無端ベルト20における接触面25aの反対の面側にそれぞれ配置されており、接触面25aの反対の面側から無端ベルト20に接触している。ニップロール65は、上側無端ベルト21側と下側無端ベルト22側とに配置されており、上側無端ベルト21側のニップロール65である上側ニップロール66は、上側無端ベルト21における接触面25aの反対の面側に配置され、下側無端ベルト22側のニップロール65である下側ニップロール67は、下側無端ベルト22における接触面25aの反対の面側に配置されている。
また、ニップロール65は、上側無端ベルト21側と下側無端ベルト22側とにそれぞれ複数が配置されており、複数の上側ニップロール66と下側ニップロール67とのうち、複合組成物105(図3参照)の搬送方向における位置がほぼ同じ位置になるニップロール65同士が、対になっている。対となるニップロール65は、複合組成物105の厚さ方向におけるニップロール65同士の距離であるクリアランスを、可変に配置されている。即ち、対となる上側ニップロール66と下側ニップロール67とは、上下方向における相対的な距離を変化させることができるようになっており、これによりクリアランスを変化させることが可能になっている。
ベアリングケース61は、ニップロール65の幅方向における両端側に配置されており、ニップロール65を回転可能に支持している。具体的には、ベアリングケース61は、ニップロール65を、回転軸を中心として回転可能に支持するベアリング(図示省略)を内設しており、これにより、ニップロール65の両端側に配置されるベアリングケース61は、ニップロール65を回転可能に支持している。また、ベアリングケース61は、各ニップロール65に対してそれぞれ設けられているため、上側ニップロール66を支持する上側ベアリングケース62と、下側ニップロール67を支持する下側ベアリングケース63とを有している。
油圧シリンダ70は、伸縮するシリンダロッド71を有すると共に、シリンダロッド71が上下方向に伸縮する向きで配置されている。また、油圧シリンダ70は、上側ベアリングケース62に対応して設けられており、各油圧シリンダ70のシリンダロッド71は、上側ベアリングケース62に連結されている。これにより、油圧シリンダ70は、シリンダロッド71を伸縮させることにより、上側ベアリングケース62を上下方向に移動させることが可能になっており、上側ベアリングケース62を上下方向に移動させることを介して、上側ニップロール66を上下方向に移動させることが可能になっている。
測長センサ75は、上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との上下方向における距離を検知することが可能になっている。例えば、測長センサ75は、伸縮するロッドを有すると共に、ロッドの伸縮量を検知することにより長さを測ることができるようになっている。このように構成される測長センサ75は、上側ベアリングケース62における下側ベアリングケース63に対向する位置に、ロッドが下側ベアリングケース63に接触する状態で取り付けている。これにより、上側ベアリングケース62が上下方向に移動して上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離が変化した場合は、距離の変化に応じて測長センサ75のロッドが伸縮するため、測長センサ75は、このロッドの伸縮量を検知することにより、上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離を検知することができる。
ここで、上側ベアリングケース62は上側ニップロール66を支持しており、下側ベアリングケース63は下側ニップロール67を支持しているため、上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離は、上側ニップロール66と下側ニップロール67との距離に連動している。このため、測長センサ75は、上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離を検知することを介して、上側ニップロール66と下側ニップロール67との距離を検知することが可能になっており、即ち、測長センサ75は、上側ニップロール66と下側ニップロール67とのクリアランスを検知することが可能になっている。
また、ライナ80は、対となるニップロール65のうち一方のニップロール65側に配置されており、ライナ当接部88は、対となるニップロール65のうち他方のニップロール65側に配置されている。具体的には、ライナ80は、下側ニップロール67側に配置されており、ライナ当接部88は、上側ニップロール66側に配置されている。詳しくは、ライナ80は、下側ベアリングケース63における上側ベアリングケース62に対向する側に配置されており、ライナ支持部85に支持されている。ライナ80は、ライナ支持部85の上面に配置されており、ライナ支持部85の下面は、下側ベアリングケース63の上面に接触している。即ち、ライナ80は、下側ベアリングケース63に直接取り付けられておらず、下側ベアリングケース63に接触するライナ支持部85に支持されている。
これに対し、ライナ当接部88は、上側ベアリングケース62における下側ベアリングケース63に対向する側の面、即ち、上側ベアリングケース62の下面に取り付けられている。ライナ80は、このように上側ベアリングケース62に取り付けられるライナ当接部88に当接可能になっている。上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63とは、上下方向における距離を変化させることが可能になっているが、ライナ80は、下側ベアリングケース63の上面に接触するライナ支持部85に支持されているため、ライナ80がライナ当接部88に当接した際には、上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63とは、それ以上距離を小さくすることができなくなる。つまり、ライナ80は、ライナ当接部88に当接することにより、上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離が小さくなる方向の上側ベアリングケース62の移動を規制することが可能になっており、これを介して、上側ニップロール66と下側ニップロール67とのクリアランスが小さくなる方向のニップロール65の移動を規制することが可能になっている。
このように設けられるライナ80は、ライナ支持部85からの高さが異なるものが複数設けられている。本実施形態では、ライナ80は、高さが異なる第1ライナ81と第2ライナ82と第3ライナ83とを有しており、第1ライナ81よりも第2ライナ82の方が高さが高く、第2ライナ82よりも第3ライナ83の方が高さが高くなっている。これらの複数のライナ80は、幅方向に並んでライナ支持部85に配置されている。
サーボモータ86は、このように高さが異なる複数のライナ80のうち、ライナ当接部88に当接するライナ80を切り替えることが可能になっている。具体的には、サーボモータ86は、ライナ支持部85を幅方向に移動させることが可能になっている。サーボモータ86は、ライナ支持部85を幅方向に移動させることにより、ライナ支持部85に配置されている複数のライナ80のうちのいずれかのライナ80の幅方向における位置を、ライナ当接部88の幅方向における位置に合わせることができる。つまり、サーボモータ86は、ライナ支持部85を幅方向に移動させることにより、幅方向における位置を、ライナ当接部88の幅方向における位置に合わせるライナ80を切り替えることが可能になっている。これにより、サーボモータ86は、ライナ当接部88に当接するライナ80を切り替えることが可能になっている。
ライナ当接部88に当接するライナ80を切り替え可能な複数のライナ80は、互いに高さが異なるため、高さが低いライナ80よりも、高さが高いライナ80の方が、ライナ当接部88に当接する際の上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離が大きくなっている。つまり、ライナ80は、ライナ当接部88に当接する際の上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離が異なる複数が備えられている。換言すると、ライナ80は、ライナ当接部88に当接する際の上側ニップロール66と下側ニップロール67とのクリアランスが異なる複数が備えられている。
サーボモータ86は、ライナ支持部85を幅方向に移動させて、ライナ当接部88に当接するライナ80を複数のライナ80の中から切り替えることにより、ライナ80がライナ当接部88に当接する際における上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離を切り替えることが可能になっている。つまり、サーボモータ86は、ライナ80がライナ当接部88に当接することによって、上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離が小さくなる方向への上側ベアリングケース62の移動が規制される距離を切り替えることが可能になっている。これにより、サーボモータ86は、ニップロール65同士のクリアランスが小さくなる方向へのニップロール65の移動が規制されるクリアランスを切り替えることが可能になっている。
ロードセル78は、下側ベアリングケース63に配置されており、油圧シリンダ70によって上側ベアリングケース62が下側ベアリングケース63に近付く方向に移動し、ライナ80とライナ当接部88とが当接した状態で上側ベアリングケース62が下側ベアリングケース63に作用する力を検知することが可能になっている。つまり、ライナ80とライナ当接部88とが当接した状態で、上側ベアリングケース62を下側ベアリングケース63に近付ける方向の力が油圧シリンダ70から上側ベアリングケース62に作用した場合、この力は、ライナ当接部88からライナ80に伝えられ、ライナ80を支持するライナ支持部85から下側ベアリングケース63に伝えられることにより、下側ベアリングケース63に伝達される。ロードセル78は、このように上側ベアリングケース62側から下側ベアリングケース63に伝達された力を検知することが可能になっている。上側ベアリングケース62を下側ベアリングケース63に近付ける方向の力は、ニップロール65同士のクリアランスを小さくする方向の力であるため、ロードセル78は、下側ベアリングケース63に伝達された力を検知することにより、ニップロール65同士のクリアランスを小さくする方向の力を検知することが可能になっている。
ロールニップ機構60は、さらに、油圧ユニット90と、減圧弁91と、PLC(Programmable Logic Controller)92とを有している。油圧ユニット90は、油圧を発生させる油圧ポンプ(図示省略)を有しており、油圧シリンダ70を作動させるための油圧を発生させるユニットになっている。減圧弁91は、油圧ユニット90から油圧シリンダ70に供給する油圧を調整する調整弁になっている。PLC92は、ロールニップ機構60における制御装置になっており、測長センサ75やロードセル78の検出結果に基づいて減圧弁91を制御することにより、油圧シリンダ70を制御することが可能になっている。
<複合組成物105の構成>
複合材料シート製造装置1によって連続的に製造する複合材料シート100(図3参照)は、熱可塑性樹脂と強化短繊維とを含む。複合材料シート100に用いられる強化短繊維としては、例えば、炭素繊維やガラス繊維、ポリイミド繊維、高分子繊維、セルロース繊維等が挙げられるが、複合材料シート100に適用可能な強化短繊維であれば、特に限定はしない。適用する繊維は、1種単独であっても、2種以上の組合せであってもよい。本実施形態では、複合材料シート100の強化短繊維として、炭素繊維の短繊維が使用される。
また、本実施形態に係る複合材料シート製造装置1によって製造する複合材料シート100に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロンが挙げられ、複合材料シート100に適用可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定しないが、熱可塑性樹脂はエンジニアリングプラスチックが好ましい。
<複合材料シート製造装置1の作用>
本実施形態に係る複合材料シート製造装置1は、以上のような構成を含み、以下、その作用について説明する。図3は、実施形態に係る複合材料シート製造装置1で複合組成物105の加熱、搬送を行う場合の説明図である。複合材料シート製造装置1は、熱可塑性樹脂と強化短繊維とを含む複合材料シート100の製造時における一つの工程に用いられる。複合材料シート100を製造する際の材料として用いられる複合組成物105は、熱可塑性樹脂と強化短繊維とを含んでおり、ランダムに配合した短長の強化繊維である強化短繊維と、粉体状、繊維状、またはシート状の熱可塑性樹脂とを堆積してマット状に形成した、いわゆるランダムマットになっている。複合組成物105は、ランダムマットの状態で、従動ロール15側から複合材料シート製造装置1に供給される。
複合組成物105が供給された複合材料シート製造装置1は、複合組成物105を搬送しながら加熱し、複合組成物105に含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることにより、熱可塑性樹脂を強化短繊維同士の間に入り込ませて、強化短繊維と熱可塑性樹脂とを一体化させる。
具体的には、複合材料シート製造装置1によって複合組成物105を搬送する際には、上側無端ベルト21の搬送経路25と下側無端ベルト22の搬送経路25とが同じ速度で同じ方向に移動するように、上側駆動モータ41と下側駆動モータ42とを駆動させる。これにより、上側駆動ロール11と下側駆動ロール12とが回転駆動し、上側駆動ロール11と下側駆動ロール12との回転駆動に伴い、上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とが走行する。上側無端ベルト21と下側無端ベルト22との走行方向は、それぞれの搬送経路25が、従動ロール15側から駆動ロール10側に向かい、戻り経路26が駆動ロール10側から従動ロール15側に向かう方向になっている。
このように上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とが走行する複合材料シート製造装置1に対して、複合組成物105を供給する際には、上側従動ロール16や下側従動ロール17側から、上側無端ベルト21の搬送経路25と下側無端ベルト22の搬送経路25との間に供給する。即ち、複合組成物105は、互いに対向する上側無端ベルト21の接触面25aと下側無端ベルト22の接触面25aとの間に入れる。これにより、上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とは、それぞれの接触面25aが複合組成物105に接触する。
複合材料シート製造装置1は、上側駆動ロール11と下側駆動ロール12とが回転駆動することにより、上側無端ベルト21と下側無端ベルト22のそれぞれの搬送経路25が、上側従動ロール16及び下側従動ロール17側から、上側駆動ロール11及び下側駆動ロール12側に向かう方向に上側無端ベルト21と下側無端ベルト22とが走行する。このため、上側無端ベルト21と下側無端ベルト22のそれぞれの接触面25aに接触した複合組成物105は、搬送経路25に沿って、上側従動ロール16及び下側従動ロール17側から、上側駆動ロール11及び下側駆動ロール12側に移動する。即ち、一対の無端ベルト20は、駆動ロール10の回転駆動によって駆動ロール10と従動ロール15との間で走行し、複合組成物105の厚さ方向における両側から接触面25aが複合組成物105に接触しながら循環することにより、複合組成物105を従動ロール15側から駆動ロール10側に向けて搬送する。
このように、複合組成物105を搬送する上側無端ベルト21及び下側無端ベルト22の搬送経路25の一部は、加熱装置30の炉31に覆われている。加熱装置30は、加熱ロール32等の加熱手段により、複合組成物105を加熱し、複合組成物105に含まれる熱可塑性樹脂を溶融することが可能になっている。このため、搬送経路25に沿って搬送される複合組成物105は、加熱装置30を通る際に、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合は融点以上の温度に、非結晶性樹脂の場合は軟化点以上の温度またはガラス転移点以上の温度になるように加熱される。これにより、複合組成物105に含まれる熱可塑性樹脂は溶融して、流動性を有することになる。
ここで、加熱装置30が有する加熱ロール32は、ロールニップ機構60のニップロール65としても設けられている。対となるニップロール65は、複合組成物105の厚さ方向における両側から複合組成物105に接触する一対の無端ベルト20を介して複合組成物105に圧力を付与することが可能になっている。つまり、対となるニップロール65は、上側無端ベルト21及び下側無端ベルト22を介して複合組成物105を上下方向に挟み込むことにより、複合組成物105に圧力を付与することが可能になっている。ニップロール65による複合組成物105への圧力の付与は、油圧シリンダ70を作動させることにより行う。
詳しくは、油圧シリンダ70は、ニップロール65によって複合組成物105に圧力を付与する際には、シリンダロッド71を下側に伸ばす。これにより、上側ベアリングケース62は下側に移動し、上側ベアリングケース62に支持される上側ニップロール66も下側に移動する。上側ニップロール66が下側に移動した場合、上側ニップロール66と下側ニップロール67とのクリアランスが小さくなるため、上側無端ベルト21及び下側無端ベルト22を介して挟み込む複合組成物105への圧力が大きくなる。油圧シリンダ70は、このように上側ベアリングケース62に対して下側への力を作用させることにより、ニップロール65から無端ベルト20を介して複合組成物105に対して作用させる力をニップロール65に対して付与する。
加熱装置30の炉31に覆われた部分で搬送される複合組成物105は、このように対となるニップロール65から付与される力であるニップ力によって、溶融した熱可塑性樹脂が強化短繊維同士の間に入り込むことにより、熱可塑性樹脂と強化短繊維とが一体化した状態になる。加熱装置30は、加熱ロール32を複数有しており、即ち、対となるニップロール65を複数有しているため、加熱装置30の炉31に覆われた部分で搬送される複合組成物105は、ニップロール65からのニップ力によって、溶融した熱可塑性樹脂が強化短繊維同士の間に入り込みながら搬送される。
溶融した熱可塑性樹脂が強化短繊維同士の間に入り込み、熱可塑性樹脂と強化短繊維とが一体化した状態の複合組成物105は、上側無端ベルト21及び下側無端ベルト22による搬送が継続されることにより、加熱装置30から冷却装置35に向けて搬送される。冷却装置35は、冷却手段である冷却ロール37により、上側無端ベルト21や下側無端ベルト22を介して複合組成物105の冷却を行うことが可能になっている。このため、搬送経路25に沿って搬送される複合組成物105は、冷却装置35を通る際に冷却され、熱可塑性樹脂が固化する。複合組成物105は、加熱装置30で加熱されることによって、熱可塑性樹脂と強化短繊維とが一体化した状態になっているため、冷却装置35で冷却されて熱可塑性樹脂が固化した際には、熱可塑性樹脂中に強化短繊維がランダムに配合された複合材料シート100、言い換えれば、ランダムに配合された強化短繊維の間に熱可塑性樹脂が入り込んだ複合材料シート100になる。
複合組成物105が冷却装置35によって冷却されることにより得られた複合材料シート100は、上側無端ベルト21及び下側無端ベルト22による搬送が継続されることにより、駆動ロール10側に向けて移動し、駆動ロール10が位置する部分から、複合材料シート製造装置1の下流側の工程に向けて搬送される。複合材料シート製造装置1は、このように複合材料シート製造装置1に供給される複合組成物105の強化短繊維と熱可塑性樹脂とを一体化させて複合材料シート100にした後、複合材料シート製造装置1の下流側の工程に当該複合材料シート100を送り出す。
<ロールニップ機構60の作用>
複合材料シート製造装置1で複合組成物105を搬送しながら複合材料シート100を製造する際には、ロールニップ機構60は、ニップロール65が予め設定された一定の大きさのニップ力を複合組成物105に対して付与する。即ち、PLC92は、ニップロール65から複合組成物105に対して作用させる力であるニップ力が一定になるように、油圧シリンダ70を制御する。ニップ力は、油圧シリンダ70で発生する下向きの力が上側ニップロール66に伝えられることにより作用するが、上側ニップロール66は、油圧シリンダ70に連結されて上下方向に移動可能な上側ベアリングケース62に支持されている。このため、複合組成物105に対して一定の大きさのニップ力を付与する上側ニップロール66と下側ニップロール67とのクリアランスは、上側ニップロール66が上下方向に移動することにより可変になっている。
一方で、複合組成物105は、場所によって僅かに厚さが異なっている場合がある。上側ニップロール66は、油圧シリンダ70によって、複合組成物105に対して力を付与する方向、即ち、下向きの力が、予め設定された一定の大きさで付与されているが、対となるニップロール65同士の間に、複合組成物105における厚さが厚い部分が入り込んだ場合は、上側ニップロール66は、上側に移動する。つまり、上側無端ベルト21を介して上側ニップロール66を押し上げようとする力である反力が、複合組成物105から上側ニップロール66に作用し、この反力が、一定の大きさになるように制御される油圧シリンダ70による下向きに力よりも大きい場合は、上側ニップロール66は、上側ベアリングケース62と共に上側に移動する。即ち、複合組成物105から上側ニップロール66に作用する反力によって、油圧シリンダ70のシリンダロッド71が押し縮められる。これにより、対となるニップロール65同士の間隔が大きくなり、複合組成物105における厚さが厚い部分は、ニップロール65から一定の大きさのニップ力を付与されながらニップロール65同士の間を通過することができる。
反対に、対となるニップロール65同士の間に、複合組成物105における厚さが薄い部分が入り込んだ場合は、上側ニップロール66は下側に移動する。つまり、対となるニップロール65同士の間に、複合組成物105における厚さが薄い部分が入り込むことにより、複合組成物105から上側ニップロール66に作用する反力が小さい場合は、上側ニップロール66は、一定の大きさになるように制御される油圧シリンダ70による下向きに力によって、上側ベアリングケース62と共に下側に移動する。これにより、対となるニップロール65同士の間隔が、複合組成物105の厚さに合わせて小さくなり、複合組成物105における厚さが薄い部分は、ニップロール65から一定の大きさのニップ力を付与されながらニップロール65同士の間を通過することができる。
上側ニップロール66は、このように上下方向に移動可能になっており、即ち、対となるニップロール65同士のクリアランスは変化することが可能になっているが、最小のクリアランスは、ライナ80とライナ当接部88とによって定められている。つまり、上側ニップロール66が上側ベアリングケース62と共に下側に移動し、上側ベアリングケース62に取り付けられるライナ当接部88がライナ80に当接した場合、上側ベアリングケース62は、それ以上、下側に移動することができなくなる。この状態が、対となるニップロール65同士の最小のクリアランスになっている。対となるニップロール65同士のクリアランスは、最小のクリアランスが定められているため、複合組成物105における厚さが薄い部分がニップロール65同士の間に入り込み、クリアランスが小さくなる場合でも、最小のクリアランスより小さくはならない。
このように定められる最小のクリアランスは、ライナ当接部88に当接するライナ80を切り替えることにより変更可能になっている。つまり、複数のライナ80は、互いに高さが異なるため、ライナ当接部88とライナ80とが当接する上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離は、ライナ80によって異なっている。このため、対となるニップロール65同士の最小のクリアランスも、ライナ80によって異なっている。
例えば、第2ライナ82は、第1ライナ81よりも高さが高いため、幅方向における第2ライナ82の位置がライナ当接部88と同じ位置になった際に、第2ライナ82とライナ当接部88とが当接する上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離は、幅方向における第1ライナ81の位置がライナ当接部88と同じ位置になった際に、第1ライナ81とライナ当接部88とが当接する上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離よりも大きくなっている。このため、ライナ当接部88の幅方向における位置と同じ位置に、第2ライナ82が位置する場合は、第1ライナ81が位置する場合よりも、対となるニップロール65同士の最小のクリアランスが大きくなっている。対となるニップロール65同士の最小のクリアランスは、このように、ライナ当接部88の幅方向における位置と同じ位置に位置するライナ80を切り替えることにより、変更することが可能になっている。
このように変更可能な、対となるニップロール65同士の最小のクリアランスの設定は、複合材料シート製造装置1の運転を開始する前に、オペレータが複合材料シート製造装置1に対して各種入力操作を行う入力操作部(図示省略)に対して入力操作を行うことにより切り替える。複合材料シート製造装置1の運転の開始前に、入力操作部に対して最小のクリアランスの設定についての入力操作を行うと、入力操作に基づいてサーボモータ86が作動し、ライナ支持部85が幅方向に移動する。ライナ支持部85が幅方向に移動する際には、油圧シリンダ70のシリンダロッド71が縮み、上側ベアリングケース62が上側に移動してライナ当接部88とライナ80とが離間した状態で移動する。これにより、ライナ当接部88の幅方向における位置と同じ位置に位置するライナ80が切り替えられ、対となるニップロール65同士の最小のクリアランスが設定される。
また、複合組成物105を搬送する際に、ニップロール65が複合組成物105に対して付与するニップ力は、複合組成物105によって異なっており、ニップ力の設定は、対となるニップロール65同士の最小のクリアランスの設定と同様に、複合材料シート製造装置1の運転を開始する前に入力操作部に対して入力操作を行うことに行う。ニップ力の設定を行う際には、油圧シリンダ70を作動させて実際にニップ力を発生させながら行う。つまり、ニップ力は、油圧シリンダ70が上側ベアリングケース62を下側に押し下げることにより発生するが、油圧シリンダ70が上側ベアリングケース62を下側に押し下げる力は、複合組成物105を搬送しない状態では、ライナ当接部88とライナ80とを介して下側ベアリングケース63に伝えられ、下側ベアリングケース63からロードセル78に伝えられる。ロードセル78は、このように下側ベアリングケース63から伝えられた力を検知し、PLC92に伝達する。即ち、ロードセル78は、ニップロール65から複合組成物105に対して作用させる力であるニップ力を検知するニップ力検知手段として設けられている。
PLC92は、ロードセル78から伝えられた力が、設定されたニップ力より大きい場合は、油圧シリンダ70が上側ベアリングケース62を押し下げる力を小さくし、ロードセル78から伝えられた力が、設定されたニップ力より小さい場合は、油圧シリンダ70が上側ベアリングケース62を押し下げる力を大きくするように、減圧弁91を制御する。これにより、油圧シリンダ70が上側ベアリングケース62に対して作用する力が、設定されたニップ力を発生することのできる力になるよう調整する。ニップ力の設定は、これらのように行い、複合材料シート製造装置1の運転を開始したら、PLC92は、油圧シリンダ70が設定されたニップ力を継続して発生することのできるように、減圧弁91を制御する。
また、複合組成物105は、熱可塑性樹脂が流動性を有しているため、不適切な流動が生じることがあり、例えば、複合組成物105は、複合組成物105の搬送方向におけるニップロール65の上流側の部分に溜まってしまうことがある。複合組成物105がニップロール65の上流側の部分に溜まり始めた場合、複合組成物105が継続して搬送されることにより、ニップロール65の上流側の部分に溜まる複合組成物105はさらに増加し、ニップロール65の上流側の部分に多くの複合組成物105が堆積してしまうことがある。この場合、堆積した複合組成物105は、ニップロール65を押し退けて搬送方向における上流側から下流側に移動しようとするため、複合組成物105から上側ニップロール66に対して、上側ニップロール66を押し上げようとする大きな反力が作用する。これにより、上側ニップロール66は上側に移動し、ニップロール65同士のクリアランスは大きくなる。
ここで、ロールニップ機構60が有する測長センサ75は、上側ベアリングケース62と下側ベアリングケース63との距離を検知することを介して、上側ニップロール66と下側ニップロール67とのクリアランスを検知することが可能になっている。測長センサ75で検知した上側ニップロール66と下側ニップロール67とのクリアランスは、PLC92に伝達され、PLC92は、伝達されたクリアランスが予め設定されている所定の閾値以上であるか否かを判定する。PLC92は、この判定により、測長センサ75で検知したクリアランスが所定の閾値未満である場合は、油圧シリンダ70に対して新たな制御は行わず、複合材料シート製造装置1の運転を継続させる。
これに対し、測長センサ75で検知したクリアランスが所定の閾値以上である場合は、PLC92は、上側ベアリングケース62を上側に移動させ、上側ニップロール66と下側ニップロール67とのクリアランスが大きくなる方向に油圧シリンダ70を作動させる。つまり、油圧シリンダ70に対して、シリンダロッド71を縮めさせることにより上側ベアリングケース62を上側に移動させ、対となるニップロール65同士のクリアランスを大きくする。これにより、PLC92は、対となるニップロール65同士のクリアランスが所定の閾値以上になったら、クリアランスを大きくする方向にニップロール65を油圧シリンダ70によって移動させる。換言すると、上側ニップロール66を上下方向に移動させることが可能な油圧シリンダ70は、測長センサ75で検知した、ニップロール65同士のクリアランスが所定の閾値以上になったら、当該クリアランスを大きくする方向に、ニップロール65を移動させる。
このように、上側ニップロール66を上側に退避させ、対となるニップロール65同士のクリアランスを大きくしたら、加熱装置30の加熱を停止して複合組成物105を搬送することにより、ニップロール65の上流側で溜まっていた複合組成物105を駆動ロール10側に移動させる。流動することよって堆積した複合組成物105は、複合材料シート100の材料として使用できないため、堆積した複合組成物105は、駆動ロール10側に移動させて上側無端ベルト21の搬送経路25と下側無端ベルト22の搬送経路25との間から排出した後、廃棄する。
なお、このように、測長センサ75で検知したニップロール65同士のクリアランスが、所定の閾値以上になった場合は、オペレータに報知するのが好ましい。例えば、クリアランスが所定の閾値以上になった旨を、オペレータが複合材料シート製造装置1に対して入力操作を行う入力操作部の表示部(図示省略)で表示したり、スピーカ(図示省略)から音声によって報知したりするのが好ましい。
<実施形態の効果>
以上の実施形態に係るロールニップ機構60は、対となるニップロール65同士のクリアランスが可変に配置され、測長センサ75で検知したクリアランスが所定の閾値以上になったら、油圧シリンダ70でクリアランスを大きくする方向にニップロール65を移動させるため、複合組成物105が不適切な状態で搬送され続けることを抑制することができる。
図4は、アイソコリック方式で複合組成物105を加圧しながら搬送する際に、複合組成物105が溜まった状態を示す説明図である。例えば、アイソコリック方式は、上側ニップロール166と下側ニップロール167とのクリアランスCLが一定であるため、上側無端ベルト121と下側無端ベルト122との一対の無端ベルト120によって複合組成物105を搬送する際に、複合組成物105の厚さが厚い部分が流れてきた場合、一部の複合組成物105は、ニップロール165同士の間に入り込めなくなる。この場合、複合組成物105は、搬送方向におけるニップロール165の上流側に溜まってしまう。この状態で、複合組成物105を搬送して複合材料シート100の製造を継続した場合、ニップロール165同士の間を通過した複合組成物105は、厚さや組成が不適切なものになり易いため、複合材料シート100は不良品になり易くなる。
これに対し、本実施形態に係るロールニップ機構60は、測長センサ75で検知したニップロール65同士のクリアランスが所定の閾値以上になったら、クリアランスを大きくする方向にニップロール65を油圧シリンダ70によって移動させるため、複合組成物105が不適切な状態であることを早期に認識することができる。これにより、不適切な状態で複合材料シート100の製造を継続することを抑制することができる。この結果、複合材料シート100の不良品の発生率を低減することができる。
また、ニップロール65から複合組成物105に対して作用させるニップ力を検知するロードセル78を備えており、ニップ力が設定した大きさになるようにロードセル78を用いて管理することができるため、複合組成物105に対して、より確実に適切なニップ力を作用させることができる。この結果、複合組成物105を用いて製造する複合材料シート100の品質を向上させることができる。
また、ロールニップ機構60は、上側ガイドロール56側に配置されるライナ当接部88と、下側ガイドロール57側に配置されるライナ80と、を備え、ライナ80とライナ当接部88とが当接することにより、クリアランスが小さくなる方向のニップロール65の移動が規制されるため、複合組成物105の状態に極力対応しつつ、複合材料シート100の不良品の発生率を低減することができる。
図5は、アイソバリック方式で複合組成物105を加圧しながら搬送する際に、複合組成物105の厚さが変化する場合の説明図である。例えば、アイソバリック方式は、上側ニップロール166と下側ニップロール167とのクリアランスCLが変化するため、ニップロール165で加圧しながら上側無端ベルト121と下側無端ベルト122との一対の無端ベルト120によって複合組成物105を搬送すると、製造された複合材料シート100の厚さが、複合組成物105の厚さに応じて変化してしまう虞がある。つまり、アイソバリック方式は、上側ニップロール166と下側ニップロール167とのクリアランスCLが変化するため、ニップロール165同士の間を通過した複合組成物105において、厚さが厚い部分と薄い部分とで大きな差が生じてしまい、複合材料シート100の不良品の発生率が高くなってしまう虞がある。
これに対し、本実施形態に係るロールニップ機構60は、ライナ80とライナ当接部88とにより、対となるニップロール65同士のクリアランスが小さくなる方向のニップロール65の移動が規制されるため、複合組成物105の厚さに合わせてクリアランスを変化させつつ、ニップロール65同士の間を通過した複合組成物105が薄くなり過ぎることを抑制することができる。この結果、より確実に複合材料シート100の不良品の発生率を低減することができる。
また、ライナ当接部88に当接するライナ80を、高さが異なる複数のライナ80の中から切り替えることにより、ニップロール65の移動が規制されるクリアランスを切り替えることができるため、複合組成物105の組成や目標となる複合材料シート100に合わせて、ニップロール65同士のクリアランスを容易に切り替えることができる。この結果、より容易に所望の複合材料シート100を得ることができる。
また、対となるニップロール65同士で加圧する複合組成物105は、熱可塑性樹脂と強化短繊維とを含むランダムマットであるため、本実施形態に係るロールニップ機構60は、ランダムマットを過不足なく圧縮することができる。つまり、ランダムマットは、無負荷の状態では厚さが厚く、加圧によって大きく圧縮される特性を有するため、アイソバリック方式のように上側ニップロール166と下側ニップロール167とのクリアランスCLが変化しながら複合組成物105を搬送する場合、複合組成物105は加圧によって大きく圧縮され、厚さが薄くなり過ぎてしまう虞がある。また、アイソコリック方式のように、上側ニップロール166と下側ニップロール167とのクリアランスCLが一定である場合、加圧によって大きく圧縮されるランダムマットの圧縮が不足する虞がある。つまり、アイソコリック方式では、対となるニップロール165同士の間を通る複合組成物105の厚さや複合組成物105からの反力に関わらず、上側ニップロール166と下側ニップロール167とのクリアランスCLが一定になっている。このため、アイソコリック方式では、上側ニップロール166と下側ニップロール167とのクリアランスCLが、ニップロール165同士の間に入り込むランダムマットが有する熱可塑性樹脂と強化短繊維とを、ニップ力によって一体させることができるクリアランスCLよりも大きい状態になってしまうことがある。この場合、ニップロール165同士の間に入り込んだランダムマットに対してニップロール165から付与されるニップ力は、熱可塑性樹脂と強化短繊維とを一体化させることのできるニップ力の大きさに対して不足し、ニップ力によるランダムマットの圧縮が不足するため、熱可塑性樹脂と強化短繊維とが一体化し難くなる虞がある。これらの場合、いずれも複合材料シート100は不良品となってしまう虞がある。これに対し、本実施形態に係るロールニップ機構60は、対となるニップロール65同士のクリアランスが、ライナ80とライナ当接部88とによって定められる最小のクリアランスになるまでランダムマットを加圧するため、ランダムマットを過不足なく圧縮することができる。この結果、より確実に複合材料シート100の不良品の発生率を低減することができる。
また、実施形態に係る複合材料シート製造装置1は、ロールニップ機構60のニップロール65が、複合組成物105を加熱する加熱装置30の加熱ロール32として用いられるため、加熱装置30で加熱する複合組成物105が流動して搬送方向におけるニップロール65の上流側に溜まった場合でも、複合組成物105が溜まったことを早期に認識することができる。つまり、加熱装置30は、複合組成物105を加熱することにより熱可塑性樹脂を溶融し、複合組成物105に流動性を発生させた状態でニップ力を付与することによって熱可塑性樹脂と強化短繊維とを一体化させるため、加熱装置30内で搬送される複合組成物105は、流動性を有する状態になる。このため、対となる加熱ロール32同士の間に、厚さが厚めの複合組成物105が搬送されてきた場合、複合組成物105はその流動性によって流動することにより、加熱ロール32の上流側に容易に溜まってしまう。この場合、加熱ロール32を通過した複合組成物105により製造される複合材料シート100は、組成や厚さが所望の組成や厚さになり難くなる虞があるが、本実施形態に係る複合材料シート製造装置1は、ロールニップ機構60のニップロール65が、加熱ロール32として用いられている。このため、加熱ロール32は、上下方向に移動可能になっており、対となる加熱ロール32同士のクリアランスが所定の閾値以上になったら、上側の加熱ロール32を上側に移動させることができる。これにより、加熱ロール32の上流側に複合組成物105が溜まった場合でも、加熱ロール32が上側に移動することにより、オペレータは、複合組成物105が溜まったことを加熱ロール32の移動に基づいて早期に認識することができる。従って、複合組成物105が複合材料シート100の製造に不適切となっている状態で、複合材料シート100を継続して製造することを抑制することができる。この結果、複合材料シート100の不良品の発生率を低減することができる。
また、加熱装置30が有する複数の加熱ロール32は、全てロールニップ機構60のニップロール65が用いられるため、いずれの加熱ロール32の位置で複合組成物105が溜まった場合でも、複合組成物105が溜まったことを早期に認識することができる。この結果、より確実に複合材料シート100の不良品の発生率を低減することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態に係るロールニップ機構60は、ライナ80として、互いに高さが異なる第1ライナ81と第2ライナ82と第3ライナ83とが用いられているが、ライナ80の数は3つ以外でもよい。つまり、ライナ当接部88に当接するライナ80を切り替えることによって切り替えることのできる、対となるニップロール65同士の最小のクリアランスは、3種類以外でもよい。ライナ80の数、即ち、ニップロール65同士の最小のクリアランスの種類は、複合材料シート製造装置1で製造する可能性のある複合材料シート100の種類に基づいて、適宜設定するのが好ましい。
また、上述した実施形態に係るロールニップ機構60では、測長センサ75は、伸縮するロッドを有する測長センサ75が上側ベアリングケース62に取り付けられ、下側ベアリングケース63に接触するロッドの伸縮量を検知することにより、対となるニップロール65同士のクリアランスを検知しているが、測長センサ75は、これ以外の手法によって、ニップロール65同士のクリアランスを検知してもよい。