JP7072319B2 - 水中油型エマルジョン、水中油型エマルジョンの製造方法、および、被膜の形成方法。 - Google Patents
水中油型エマルジョン、水中油型エマルジョンの製造方法、および、被膜の形成方法。 Download PDFInfo
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Description
炭化水素の水素原子を一部フッ素原子で置き換えたものである、フルオロカーボンは、上記の性質のうち、安定性、耐熱性、耐水性、耐油性、撥水性が通常のオルガノポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、よりもさらに優れていることが知られている。また、フルオロカーボンは、撥油性など、通常のオルガノポリシロキサンには全く見られない特徴的な性質があることが知られている。ところが、フルオロカーボンはこのような優れた性質がありながら、その固すぎる性質や、ち密すぎる性質などから材料としての使い道は限られていた。
そこで、オルガノポリシロキサンの骨格にフルオロカーボンの構造を導入することにより、オルガノポリシロキサンの基本特性を維持したまま、あるいは大きく損ねないまま、フルオロカーボンの特性を発揮することができる。
逆に、フルオロカーボンとしての固すぎる、ち密すぎる等の特性をオルガノポリシロキサンの導入により相対的に超えるという捉え方もできる。
以降、フルオロカーボンを骨格上に導入したオルガノポリシロキサンを、フッ素含有オルガノポリシロキサンと称する。
フッ素含有オルガノポリシロキサンは、フルオロカーボンの含有量を増やすほど、上記の特性が通常のオルガノポリシロキサンよりも優れている程度は上回る。しかし、含有量を増やし過ぎると、通常のオルガノポリシロキサンが有している柔軟性や、繊維処理の場合等では風合いが犠牲になってくる。したがって、フッ素の導入量には通常、上限がある。目的の特性を引き出すこととのバランスを取ってフッ素の含有量を決める必要があった。
しかし、被膜状で用途展開することは現状では極めて難しい。その理由は、フッ素含有オルガノポリシロキサンの著しい撥水性、撥油性のため、水溶液または水分散液にできず、また、フッ素含有オルガノポリシロキサン中のフルオロカーボンの含有率が一定以上の場合は、有機溶剤への溶解性も十分でないため、有機溶剤溶液または懸濁液にできないため、コーティング等による被膜形成ができない、または、被膜形成性が十分でないためである。そのため、これまでは著しくフッ素含有オルガノポリシロキサンの用途が限られていた。あるいは、用途の開発が進んでいなかった。
さらに、環境上、健康上の理由から、水系で製品を供給することが好ましいこと、さらに、水系塗料や化粧料のような水系の処方にフッ素含有オルガノポリシロキサンを配合するには、水中油型エマルジョン形態としての必要性がある。
塗布という形式で適用するためには、水中油型エマルジョンの状態で保管する必要性があるので、水中油型エマルジョンとしての初期および経時での安定性は極めて重要である。
しかし、それらの変性部位を構造中に有することで水系処方に添加できるようになるものの、元来フッ素含有シリコーンが有している耐水性、耐油性をかえって発現できないという問題があった。
これらは、有機系界面活性剤を用いないでエマルジョンを形成することにより、環境に有害である有機系界面活性剤による弊害をなくしたり、機能剤としてのシリカを、粒子としてでなく水系で提供することが可能である点において、水中油型エマルジョンとして、医薬、食料品、消泡剤等多種の用途展開が期待されている。
しかしながら、従来のピッカリングエマルジョンには、以下のような技術的問題点が存する。
しかしながら、以下の理由から、界面活性剤機能を発揮する観点から、親水性と疎水性のバランス、すなわち、親水性/疎水性に注目するに過ぎず、ピッカリング水中油型エマルジョンまたはシリカの水分散体の安定性の観点から、親水性/疎水性に着目するわけではない。
第1に、従来の界面活性剤は、金型への吹き付け時のエマルジョンの破壊が起こりにくいためにオイル成分の金型への付着が不十分であると指摘されており、水中油型エマルジョンを金型離型剤として用いる場合の特殊性から、水中油型エマルジョンの破壊が必要とされる旨が記載されており、これは、ピッカリング水中油型エマルジョンまたはシリカの水分散体の安定性確保とは、逆行するものである。
第2に、水中油型エマルジョンの製造方法として、親水性と疎水性のバランスがコントロールされず界面活性剤機能を有しないシリカ粒子を用いる場合には、シリカとともに界面活性剤を添加してもよいし、親水性と疎水性のバランスがコントロールされたシリカ粒子を用いる場合には、シリカのみを添加するのでもよいし、シリカの水分散体を生成後に油分を添加してもよいし、シリカ、水と同時に油分を添加してもよいと記載されている。
そのため、従来は、フッ素含有オルガノポリシロキサンのエマルジョンができるための考え方は全く存在せず、そのための検討すら行われてこなかった。
より詳細には、無機粒子群の下位の凝集体同士が非化学的結合により高位の凝集体を形成して水中に分散している水分散体にあって、凝集体レベルでの交換(リアレンジメント)あるいは移動(配向)により、親水リッチ凝集体、疎水リッチ凝集体、およびその中間の凝集体(自己ミセル的凝集体)が生成され、自己ミセル的凝集体が、水分散体、およびこのような水分散体をベースに油分を添加する水中油型ピッカリングエマルジョンの安定性にとって、重要である点を発見している。
しかしながら、超撥水性または超撥油性を有するフッ素含有オルガノポリシロキサンを油分とする水中油型ピッカリングエマルジョンが形成可能であるのか、形成される条件については、何らの検討をしていなかった。
これは、超撥水性または超撥油性を有するフッ素含有オルガノポリシロキサンを油分とする水中油型ピッカリングエマルジョンが形成可能であるとは予想されないことが、当時の当業者の技術常識だったことを示すものである。
また、水系で製品を提供できないことから、環境上、安全上の問題もあった。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、撥水性、撥油性の高いフッ素系シリコーンを油相とする場合でも安定な水中油型エマルジョン、その製造方法の提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、撥水性、撥油性の高いフッ素系シリコーンを油相とする安定な水中油型エマルジョンを利用することにより、基材の保護、改質、基材表面への機能性付与による用途に応じて所望の塗膜厚を得ることが可能な被膜の形成方法を提供することにある。
すなわち、油分の量とフュームドシリカの量との質量割合に係わらず、フュームドシリカと水相との水分散体を生成する際、十分なせん断をかけ、生成された水分散体に対して油滴を後添加することにより、撥水性、撥油性の高いフッ素含有オルガノポリシロキサンを油相とする場合でも、生成された水分散体に吸い込まれるように安定的なエマルジョンが形成されるとの従来の技術常識を覆す発見に基づくものである。
すなわち、本発明のエマルジョンは、フュームドシリカ粒子群の下位の凝集体同士が非化学的結合により高位の凝集体を形成するフュームドシリカ粒子群であって、各々における表面親水基のモル数の前記フュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数/各々における表面疎水基のモル数の前記フュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数である合計モル数比率が、所定数値範囲である、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群により形成される、親水リッチな下位の凝集体の高密度部分が水相と接し、疎水リッチな下位の凝集体の高密度部分が他の疎水リッチな下位の凝集体と接し、内部に空間を形成する自己ミセル的凝集体内部に油分が吸い込まれた形態の複合粒子群を含み、前記油分は、平均組成が一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンであり、 R1 aR2 bSiO(4-a-b)/2 (1)[式(1)中、R1は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、置換もしくは非置換の炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6~30の芳香族基、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基または水素原子であり、R2は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、もしくは炭素数6~30の芳香族基で、少なくとも1つの炭素上の水素原子がフッ素原子で置換されている炭化水素基であり、bは0ではない正の数、a+bは0.3以上かつ2.5未満である] 前記複合粒子群それぞれは、自己ミセル的凝集体が油滴の表面を被覆している、ことを特徴とする水中油型エマルジョンである。
準備した2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群を水に添加して、所定せん断速度でせん断することにより、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群間における1次凝集レベルでの交換および/または2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子における1次凝集レベルでの配向を促進することにより、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群による、親水リッチな下位の凝集体の高密度部分が水相と接し、内部に空間を形成する自己ミセル的凝集体を含む水分散体を生成する段階と、
生成した水分散体中に、油分を添加して、自己ミセル的凝集体内部に油分を吸い込ませることにより、エマルジョンを形成する段階とを、有し、
前記油分は、平均組成が一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンであり、
R1 aR2 bSiO(4-a-b)/2 (1)
[式(1)中、R1は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、置換もしくは非置換の炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6~30の芳香族基、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基または水素原子であり、R2は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、もしくは炭素数6~30の芳香族基で、少なくとも1つの炭素上の水素原子がフッ素原子で置換されている炭化水素基であり、bは0ではない正の数、a+bは0.3以上かつ2.5未満である]それにより、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群により形成される自己ミセル的凝集体内部に油分が含有した形態の複合粒子群を含むことを特徴とする水中油型エマルジョンの製造方法であり、前術の製造方法により製造した水中油型エマルジョンを利用して、基材の保護、基材の改質および基材の表面への機能付与のいずれかに応じて設定した所定膜厚の被膜を基材の表面に形成する段階を有する、ことを特徴とする被膜の形成方法である。
ただし、油分の量とシリカの量との割合と、フッ素含有オルガノポリシロキサンにおける置換基の割合とにおいて、レジン、ゴムを対象とする塗膜用途の場合、エマルジョンの安定性を確保した上で、所望膜厚設定可能とするのには、油分の量とシリカの量との割合と、フッ素含有オルガノポリシロキサンにおける置換基の割合との組み合わせにおける一つ一つの条件において、エマルジョン中の油分の濃度や油分の分子量その他を選定することにより所望の膜厚を設計する必要がある。
また、フュームドシリカ粒子は、多孔質構造を有しているので、表面積が大きくなり、より会合や吸着の機能が大きくなるため、水分散体を、より安定、均一に生成できるからである。また、各種油分への会合、吸着の機能が大きくなるため、ピッカリングエマルジョンへ移行する際にも有利である。
なお、本発明の説明においては、1、2次凝集体のことを適宜、1、2次凝集レベルでのシリカ粒子群と称することがある。
フュームドシリカ粒子は、粉末状では2次凝集体が多くの場合の最も大きな凝集レベルである。しかし、水分散体の状況では2次凝集体がさらに凝集することができる。その凝集を分離させる力は、2次凝集体を分離させる力よりも弱い力で分離できる。
ただし、上記の1次凝集体、2次凝集体という凝集レベルは必ずしも明確に形成されているとは限らず、例えば、1次凝集体と2次凝集体との中途段階のような凝集レベルもある程度連続して分布し混在する場合がある。そのような、分布の幅をも含んで、1次凝集体、2次凝集体と称することにする。
因みに、フュームドシリカ粒子は、特に2次凝集レベルにおいて、ネットワーク構造を取ることも知られており、このことがピッカリングエマルジョン用の無機粒子として使いやすい場合がある。
シリル化前のシラノール基に対するシリル化後に残留するフュームドシリカ表面のシラノールの率は20~80%の範囲内が好ましい。シラノールの残留率が20%未満または80%を超えると、油相/水相界面での界面活性剤に相当する機能を発揮できない。シリル化、あるいはシラノールの残留率は、元素分析による炭素含有量の測定、またはフュームドシリカ表面の反応性シラノール基の残量の測定により決定できる。調製のために用いるシリカ粒子は、表面全体がシリル化された粒子または、表面全体がシリル化されていない粒子を含んでいても構わない。ただし、全体としてのシリル化の率が上記の範囲内にあり、かつ必要な乳化の機能を発現出来れば使用することができる。
フュームドシリカ粒子における残存シラノール基の比率は、原料段階で上記値に合わせこみ準備する必要もない。全体のモル比として親水性フュームドシリカおよび疎水性フュームドシリカを計量し、エマルジョン作製段階で均質化を試みるような方法も可能である。
粒子径が小さ過ぎるものは工業的に入手しにくく、粒子径が大き過ぎるとフュームドシリカ粒子単体として沈降しやすくなる。
フュームドシリカ粒子の表面の親水基/疎水基のモル比が親水基リッチである場合は、シリカ粒子表面と水が親和するため、シリカ粒子は水に溶解しやすく、2次凝集体14はそれ以上凝集せず単独で水中に安定して溶解している場合が多い。水分散体の粘度は低く、チクソトロピー性は低い。こうした凝集体を親水リッチ凝集体と称することにする。
フュームドシリカ粒子の表面の親水基/疎水基のモル比が疎水基リッチである場合は、シリカ粒子表面と水は親和しにくいため、シリカ粒子と水の接触面積をなるべく小さくする方向にシリカ粒子同士が配置しようとするため、シリカ粒子は凝集しやすくなる。水中で2次凝集体14同士が多数寄り集まる凝集体を形成する。従って、水分散体の粘度が高くなり、チクソトロピー性が大きくなる。この状態においては、水分散体の安定性は良好ではない。シリカ粒子の沈降等が経時により起こりやすくなる。こうした凝集体を疎水リッチ凝集体と称することにする。この状態は、既に疎水性のフュームドシリカとして既に、増粘剤やチクソトロピー性付与剤としての用途が存在している。ただし、使用者がシリカ粒子を水に分散させ直ちに目的の材料へ投入しなくてはならないという制約がある。
フュームドシリカ粒子の表面の親水基/疎水基のモル比が、親水リッチ凝集体と疎水リッチ凝集体との間の領域にある場合は、2次凝集体14において比較的親水度の高い1次凝集体10の密度が高い部分を水相と接し、比較的疎水度の高い1次凝集体12の密度が高い部分を他の2次粒子と接する凝集体を形成することができる。通常の界面活性剤の自己ミセルと類似の凝集形態なので、自己ミセル的凝集体と称することにする。この状態では、2次凝集体14の凝集個数は小さい数に限られ、凝集体のサイズも自ずと均質になるため、安定かつ均一な水分散体となる。自己ミセル的凝集体の外側、すなわち水相と接する部分には親水性基の濃度が高いので、親水リッチ凝集体に準じた十分に高い安定性を得ることができる。疎水リッチ凝集体よりはかなり安定である。自己ミセル的凝集体の内部には空間16があり、親油的な環境であるため、油分を外部から取り込みやすくなっている。自己ミセル的凝集体の粘度とチクソトロピー性は親水リッチ凝集体と疎水リッチ凝集体の中間的な性質である。界面活性剤の自己ミセルは、乳化しようとする油分との関係で、界面活性剤が余剰となった場合に形成されるが、フュームドシリカ粒子においては、油分の存在によらず、また濃度による影響も受けにくく、形成することができる。
本発明者らは、2次凝集レベルのシリカの水分散状態においても同様に、飽和濃度を超えれば、このような親水部を外側、疎水部を内側にした会合構造である自己ミセル的凝集体が形成されることに注目するものである。ただし、飽和濃度は界面活性剤の場合よりはかなり低い。
リアレンジメントを起こさせるには、7500s-1以上のせん断速度をかけるのが好適である。せん断速度が7500s-1未満だと十分なリアレンジメントが起こらない。リアレンジメンとを起こすためのせん断速度の上限値はないが、100000s-1を超えると装置上の不具合が生じやすくなつとともに、水分散体が加熱されることにより水分が蒸発したり、油分がある場合は分解が起こるなどの問題が生じる可能性があるので、好ましくない。
リアレンジメントを十分に起こさせることは、2次凝集体間の1次凝集体の交換を促進することになるので、水分散体の系全体のフュームドシリカ粒子の2次凝集体の中の親水リッチな1次凝集体と疎水リッチな1次凝集体との割合が、より均一なものになっていく。
また、リアレンジメントが起こるのに十分なせん断速度をシリカ粒子の凝集体に対しかけた場合、同一の2次凝集体の中で、1次凝集体の移動が起こり、配置が変わる可能性もある。そして、自己ミセル的凝集体が形成される場合においては、図1に示されているように、疎水的な1次凝集体は、2粒子の凝集方向に向かって配向を起こす可能性がある。
より具体的には、フュームドシリカ粒子群の各々における表面親水基のモル数のフュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数/フュームドシリカ粒子群の各々における表面疎水基のモル数のフュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数である合計モル数比率が、所定の下限以下であれば、疎水リッチ凝集体が主に生成する。そして、合計モル比率が所定の上限以上であれば、親水リッチ凝集体が主に生成する。そして、合計モル比率が所定の下限以上かつ上限以下、すなわち所定数値範囲であれば、自己ミセル的凝集体が主に生成する。合計モル比率の下限値は概ね20/80であり、上限値は概ね80/20である。
以上のシリカ粒子は、乾燥状態での比表面積が、2~350m2/gの微粉末であることが好ましく、特に、50~300m2/gであることが好ましい。
原料としては上記の種類のフュームドシリカ粒子を利用できるが、原料段階で、フュームドシリカ粒子群の各々における表面親水基のモル数のフュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数/フュームドシリカ粒子群の各々における表面疎水基のモル数のフュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数である合計モル数比率を、20/80以上および/または80/20以下に設定することが必要である。
水分散体において自己ミセル型凝集体が安定であることが、基本的にピッカリングエマルジョンにも当てはまる。自己ミセル的凝集体により油滴が被覆されることにより、安定かつ均一で、再現性のよいピッカリングエマルジョンが生成する。フュームドシリカの2次凝集体は通常の存在形態では、その大きさが約10μm程度と言われている。しかし、本発明による水中油型エマルジョンでは、球形のシリカ粒子の塊状物が被覆しており、1つの塊状物は0.1μmから数μm程度の大きさであることが多い。従って、2次凝集体と言っても、ごく一部には1次凝集体を含み、1次から2次への中途の段階の凝集体を含んでいる可能性がある。あるいは、2次凝集体が、一般的に存在するよりも密に形成されていることが考えられる。
R1 aR2 bSiO(4-a-b)/2 (1)
[式(1)中、R1は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、置換もしくは非置換の炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6~30の芳香族基、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基または水素原子であり、R2は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、もしくは炭素数6~30の芳香族基で、少なくとも1つの炭素上の水素原子がフッ素原子で置換されている炭化水素基であり、bは0ではない正の数、a+bは0.3以上かつ2.5未満である]
a、bはシロキサン結合の次数と関係する数値であり、a+bが2.0であれば前記オルガノポリシロキサンは直鎖のシロキサンを示す。本発明では、a+bが0.3以上かつ2.5未満なので、前記オルガノポリシロキサンはオイル、ゴム、レジン、硬化性組成物等のいずれの形態のものでもよい。
特に好ましい有機基はメチル基、フェニル基である。
また、硬化反応を起させるような置換基、例えば、ビニル基、アリル基等の不飽和炭化水素基、珪素原子に結合した水素等が含まれていてもよい。
a+bは0.8以上かつ2.2未満であることが好ましい。0.8未満だと4官能性のレジンの割合が高まり、固形なためエマルジョンの製造が難しく、2.2以上だとシラン成分が多くなり、揮発性が高くなり各種用途に応用しにくいためである。
有機基R1有機基R2の比率、すなわちa/bは限定されないが、5/95以上かつ95/5未満であることが好ましい。5/95未満だと、通常のオルガノポリシロキサンとしての特性、例えば柔軟性、の発揮が十分でなく、95/5以上だと、フッ素を含有する有機基の含有率が少ないので、フッ素由来の特性を十分に引き出せないためである。
また、単一の成分でも、2種以上の成分の混合でも、いずれでもよい。
このような成分の構造は、上記の条件内にさえあれば、どのようなものでもよいが、入手の容易性や経済性、化学的安定性の観点からは、ジメチルポリシロキサンが好ましい。例えば、液状の直鎖状または環状のジメチルポリシロキサンが例示される。
油滴と接している2次凝集体は、一部が油滴に埋め込まれている。埋め込みの程度は、油分の極性の程度とフュームドシリカ2次凝集体の表面の親水基と疎水基のモル比により異なる。油滴と2次凝集体との極性が近い場合、例えば、シリコーンが油滴である場合、2次粒子の表面の極性がシリコーンに近い場合は、親和性が大きいため、埋め込みの程度が大きくなる。逆に、極性の差が大きい場合は埋め込みの程度が小さい。
ピッカリングエマルジョンが安定に存在するためには、無機粒子と油滴と水の3者により決定される接触角を最適な値として取ることが重要だと言われている。本発明の水中油型エマルジョンにおいては、フュームドシリカ粒子の2次凝集体が油滴へ埋め込まれる程度は上記の機構により主に決まるが、エマルジョンが完成する過程において、適当なせん断力により、2次凝集体内の1次凝集体が移動し、油滴の方向に向け疎水度の高い1次粒子が配向することにより、2次粒子内で極性の傾斜を生じる可能性がある。エマルジョンが最も安定に存在するために、上述の傾斜の程度を自ら調整することにより埋め込みの程度を決めることにより、最適な接触角を得ている可能性がある。
また、2次凝集体は、エマルジョンが形成された後も、適当なせん断力の下、移動が可能である。油滴の表面を移動して均一な間隔になったり、積層の状態を均一化も可能である。さらには、一部は他の複合粒子間でも行き来が可能である。
表面に有するシリカ粒子の被覆層の量としては、油滴の表面の単位面積当たりのフュームドシリカ粒子の重量としてパラメータ化することができる。
本発明においては、このシリカ被覆層の量は、複合粒子の粒径から計算される表面積に対するシリカ粒子の処理量で制御できる。この量は好ましくは2.0×10-9~3.2×10-6kg/m2の範囲内である。2.0×10-9kg/m2未満だと複合粒子の水中または被膜形成後のブロッキングが起きてしまい、3.2×10-6kg/m2を超えるとシリカ過剰などの理由で、特定の用途では好ましくない現象、例えば保護膜の脆化、ほか、エマルジョン中ないしは被膜形成後に余剰のシリカによる汚染等が起きてしまう。
本発明による水中油型エマルジョン中に存在する複合粒子群の粒径のばらつきは小さい。油滴の表面をフュームドシリカ粒子の自己ミセル型凝集体が覆うためである。水分散体の自己ミセル的凝集体は均一であるため、油滴への作用が均一化するため、粒径のばらつきが少なくなる。
油滴の表面をフュームドシリカ粒子の自己ミセル的凝集体を被覆させるためには、順番として、まず、フュームドシリカ粒子の自己ミセル的凝集体を形成し、しかる後に油分を投入する方法を採る必要がある。油分を最初に投入すると、フュームドシリカ粒子の自己ミセル的凝集体が形成されないので、目的のピッカリングエマルジョンである水中油型エマルジョンができないからである。
従って、製造方法としては、第1段階として、フュームドシリカ粒子群の各々における表面親水基のモル数のフュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数/フュームドシリカ粒子群の各々における表面疎水基のモル数のフュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数である合計モル数比率を、所定数値範囲となるように、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群を準備する。合計モル比率を所定値範囲とするためには、水分散体の自己ミセル的凝集体の生成方法と同じく、原料のフュームドシリカでモル比を合わせる。
次に第2段階として、準備した2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群を水に添加して、所定せん断速度でせん断することにより、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群間における1次凝集レベルでの交換および/または2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子における1次凝集レベルでの配向を促進することにより、合計モル数比率の平均値と、フュームドシリカ粒子群を構成する2次粒子の各々における表面親水基のモル数/表面疎水基のモル数であるモル比率との差が所定値以下となるように2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群による自己ミセル的凝集体を含む水分散体を生成する。リアレンジメントを起こさせるには、7500s-1以上のせん断速度をかけるのが好適である。
次に第3段階として、生成した水分散体中に、油分を添加して、エマルジョンを形成する。この際、攪拌装置において、適度なせん断速度を加え、自己ミセル的凝集体が油滴の表面を均一に覆い複合粒子としての構造体を均一に形成するために、適宜せん断をかける時間を要する。せん断速度は、リアレンジメントが起こる7500s-1以上は必要なく、通常、数千s-1程度で十分である。
この点、親油的環境である自己ミセル的凝集体内部にはフッ素含有オルガノポリシロキサン(油分)が取り込まれないという従来の考え方では説明できない機構が働いていると考えられる。フッ素含有オルガノポリシロキサン(油分)が自己ミセル的凝集体内部へ吸着される物理的な吸着などの作用により、撥水性および撥油性を有するフッ素含有オルガノポリシロキサンであっても自己ミセル的凝集体内部へ吸い込まれることを推定している。
2次凝集体間のばらつきを小さくするためには、せん断をかけてリアレンジメントを起こさせなくても、原料のフュームドシリカ粒子として、特定の疎水化率にて親水基を疎水化した粒子を用いても達成される。ただし、その方法は製造コストが多くかかる。そのような特殊なシリカ粒子を用いなくても、市販で安価な親水性のフュームドシリカ粒子と疎水性のフュームドシリカ粒子を原料として用い、所定の合計モル比率になるように質量比を調整するのみで、簡便な方法で製造できるからである。
2次凝集体の疎水化度(親水化度)のばらつきが低減し、かつ、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子における1次凝集レベルでの配向が進んだ場合は、相乗効果が発揮し、より安定で均一な複合粒子を作製することができる。
また、フッ素含有オルガノポリシロキサン中における、フルオロカーボンの導入率、すなわち、前述の式(2)における比率a/b、は非常に広い範囲で安定なエマルジョンの生成が可能という驚くべき結果も得られた。各種用途のうち、例えば基材表面に撥水性を与えるような用途では、極表面のみにフルオロカーボンの構造が集合すれば十分であるが、被膜全体を堅牢で高耐熱の性質とするにはフルオロカーボンの導入量を高める必要がある。本発明により、こうした異なる種々の用途に対しても安定な被膜を形成しうるエマルジョンを作製することができる。
さらに、より好ましい作製方法としては、粉末固体をポリオルガノシロキサン等で流動化させたものを、フュームドシリカ粒子の水分散液に添加し、機械せん断をかけることにより本エマルジョンを得ることが挙げられる。この場合、オルガノポリシロキサン等により溶解した粉末固体を、フュームドシリカ粒子とフュームドシリカ粒子の水との分散液に投入可能である限り、フュームドシリカ粒子と水との分散行程と、粉末固体のオルガノポリシロキサン等による流動化工程とは、どちらが先でもよい。
界面活性剤量としては、エマルジョン100質量部中、0.1質量部以下が好ましくはより好ましくは0.06質量部以下である。1質量部を超えると、環境に悪影響を与えるほか、フュームドシリカ粒子の凝集力が低下し、製品の保存安定性および希釈時の取り扱い性を損なう。
本発明によるエマルジョンをそのままコートしてもよいし、水で希釈してもよく、あるいは、別の薬剤や組成物に混ぜてからコートしてもよい。
この場合、フッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョンは、オイル、ゴム、レジン等、いかなる形態でも用いることができる。硬化性組成物をコートして被膜形成させてから硬化させてもよい。
すなわち、従来の有機溶剤のフッ素含有シリコーン溶液やオイル状のままの塗布によっては得られなかった特性や、新しい用途を得ることが可能になる。
基材としては、ガラス、プラスチック、樹脂、金属、合金、セメント、紙、セラミック系無機材料、コンクリート、モルタル、木材、紙製品、ゴム、電子部品、食品パッケージ剤等の透明又は不透明な基材、あるいは、自動車、列車、航空機、船舶などの外装の塗装面や、床、カーペット等のインテリア関係の基材、あるいは人間の皮膚やバイオ関係の基材などが挙げられる。こうした基材が環境その他の原因により水分、熱、光等により劣化する場合などにおいて、これら基材の上に本発明によるフッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョンの被膜を形成することにより、各種保護コーティング剤や化粧品用途として基材の保護に応用できる。
この場合、被膜が、汚れがつかない、汚れを落としやすい、指紋が付かない、撥水性、撥油性を有すれば、各種防汚コーティング剤として、耐水性、耐油性、防湿性、腐食防止、耐薬品性、防水性を有すれば、各種建材保護材、皮膚を紫外線等から保護するならばメーキャップ剤として応用が可能である。これらはあくまでも例示であり、可能な用途はこれらに限定されない。いずれの用途においても、基材の保護を安定に維持することができる。
基材の保護を目的とする場合は、フッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョンの被膜を一定の膜厚以上で、なるべく基材の表面に対し均一に塗布する必要がある。被膜に欠陥があったり、薄くて保護機能を果たさない部分があったりすると目的の保護効果が得られない場合がある。本発明のフッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョンは、油分の含有量と油分の粘度に関する制約がないので、これらの要素を最適化させて所望の膜厚の設計が可能である。また、基材表面が平坦でない場合は、そのギャップを埋め込む必要もあるので、目的に応じて、コーティング、ディッピング、スキャニングなどの中で最適な塗布方法を選択することが好ましい。
基材は、保護用途における基材の種類と基本的に同様である。この場合、基材のもともと有する撥水性、耐熱性等を向上するような改質剤として用いたり、基材の絶縁性や誘電率をさらに高絶縁性、高誘電率化するような改質剤として各種電子部品向けの応用が可能である。これらはあくまでも例示であり、可能な用途はこれらに限定されない。いずれの用途においても、改質特性を安定に維持することができる。
基材の改質を目的とする場合は、フッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョンの被膜を目的に応じた膜厚の設定をする必要がある。本発明のフッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョンは、油分の含有量と油分の粘度に関する制約がないので、これらの要素を最適化させて所望の膜厚の設計が可能である。また、基材表面が平坦でない場合は、そのギャップを埋め込む必要もあるので、目的に応じて、コーティング、ディッピング、スキャニングなどの中で最適な塗布方法を選択することが好ましい。
基材は、保護用途における基材の種類と基本的に同様である。この場合、基材が元々撥油性を有していない場合に撥油性を付与したり、皮脂となじみにくい、汗となじみにくい、持続性を有すれば、各種メーキャップ剤として、塗膜の耐水性、耐油性、耐熱性を有すれば、塗料として、樹脂をはじく、硬化後も付着しない性質を有すれば、離型剤として応用が可能である。これらはあくまでも例示であり、可能な用途はこれらに限定されない。いずれの用途においても、特性を安定に維持することができる。
基材の表面への機能の付与を目的とする場合は、フッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョンの被膜を目的に応じた膜厚の設定をする必要がある。本発明のフッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョンは、油分の含有量と油分の粘度に関する制約がないので、これらの要素を最適化させて所望の膜厚の設計が可能である。フッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョン単体を基材に塗布する場合は、上述の要素の最適化が中心となるが、塗料や化粧料にフッ素含有オルガノポリシロキサンエマルジョンを混ぜこんでから塗布する場合は、それらの混合液の固形分濃度や粘度と膜厚との関係を把握してから、目的に応じた条件の最適化を行う。また、基材表面が平坦でない場合は、そのギャップを埋め込む必要もあるので、目的に応じて、コーティング、ディッピング、スキャニングなどの中で最適な塗布方法を選択することが好ましい。
本発明の実施例および比較例で用いたシリカは、表1に示すシリカ1~3であり、いずれもフュームドシリカ(乾式シリカ)である。その内容は表1に示す通りである。
実施例及び比較例で得られた水中油型エマルジョン粒子の粒子径は、ベックマン・コールター社製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(商品名「LS-230」)を用いて測定し、平均粒子径を示した。
実施例及び比較例で得られた水中油型エマルジョンの安定性の評価法は、試料を50mlスクリュー管に30g入れ、室温貯蔵1か月後に、沈降分離の有無を確認した。エマルジョンについてはクリーミングの有無も確認した。また、目視で大きな粒状物の存在はないか、辺部に濁りがあるかどうかの確認を行い、均一性を確認した。
評価基準;
◎:クリーミング、沈降分離全くなし、均一、○:クリーミング、沈降分離がわずかにある、ごくわずかに不均一性あり、△:クリーミング、沈降分離、不均一の傾向あり、×:クリーミング、沈降分離あり、不均一。
ガラス板の上に実施例及び比較例で得られた水中油型エマルジョンを水で2倍に希釈してバーコーターを用いて塗布し、約30μmの厚さの塗膜を形成し、十分に風乾した後、撥水性評価として水との接触角測定を行った。接触角が90度以上であれば撥水性良好とする。
各実施例、比較例においては、表2に示す処方量および作製条件にて水分散体を得た。さらにその水分散体を経由して、同表に示す処方量により水中油型エマルジョンの作製を行った。
水中油型エマルジョンの評価結果を表3に示す。
続いて、第2段階として粘度1000mPa・sのフッ素含有オルガノポリシロキサン50g(ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)からAF98/1000の名称で入手可能)を投入し、1,500rpmで2分間攪拌することで、低粘度白色の水中油型エマルションを得た。その際のせん断速度は約4,600s-1であった。
続いて、粘度1000mPa・sのフッ素含有オルガノポリシロキサン50g(ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)からAF98/1000の名称で入手可能)を投入し、1,500rpmで2分間攪拌することで、低粘度白色の水中油型エマルションを得た。
親水性フュームドシリカ(「シリカ1」)5gを500mLのステンレス鋼ビーカー中に投入した。ここに脱イオン水45gを投入し、Ultraturraxを用いて3,000rpmで2分間で攪拌することにより、シリカ水分散体を得た。
続いて、粘度1000mPa・sのフッ素含有オルガノポリシロキサン50g(ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)からAF98/1000の名称で入手可能)を投入し、1,500rpmで2分間攪拌することで、エマルジョンを得たが、水中油型性は十分ではなかった。
親水性フュームドシリカ(「シリカ1」)5gの代わりに疎水性フュームドシリカ(「シリカ2」)5gを投入したこと以外は、比較例1と全く同様にして、全体白色液を得たが、連続相である水相と分散相である油相とに分離した状態の水中油型性は十分ではなかった。
親水性フュームドシリカ(「シリカ1」)2.5gと疎水性フュームドシリカ(「シリカ2」)2.5gを500mLのステンレス鋼ビーカー中に投入した。ここに脱イオン水45gを投入し、Ultraturraxを用いて500rpmで2分間攪拌することにより、シリカ水分散体を得た。その際のせん断速度は約1,900s-1であった。
続いて、粘度1000mPa・sのフッ素含有オルガノポリシロキサン50g(ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)からAF98/1000の名称で入手可能)を投入し、1,500rpmで2分間攪拌することで、全体白色液を得たが、連続相である水相と分散相である油相とに分離した状態の水中油型性は十分ではなかった。
第1段階として、粘度1000mPa・sのフッ素含有オルガノポリシロキサン50g(ワッカー・ケミー社AF98/1000を500mLのステンレス鋼ビーカー中に投入した。ここに脱イオン水45gを投入し、Ultraturraxを用いて1,900rpmで2分間攪拌することにより、水中油型エマルジョンを得た。その際のせん断速度は約5,700s-1であった。
続いて、第2段階として親水性フュームドシリカ(「シリカ1」)2.5gと疎水性フュームドシリカ(「シリカ2」)2.5gを投入し、3,000rpmで2分間攪拌した。その際のせん断速度は約11,000s-1であった。
全体白色液を得たが、連続相である水相と分散相である油相とに分離した状態の水中油型性は十分ではなかった。
親水性フュームドシリカ(「シリカ1」)2.5gと疎水性フュームドシリカ(「シリカ2」)2.5gと粘度1000mPa・sのフッ素含有オルガノポリシロキサン50g(ワッカー・ケミー社AF98/1000を500mLのステンレス鋼ビーカー中に同時に投入した。ここに脱イオン水45gを投入し、Ultraturraxを用いて3,000rpmで2分間攪拌した。その際のせん断速度は約11,000s-1であった。
全体白色液を得たが、連続相である水相と分散相である油相とに分離した状態の水中油型性は十分ではなかった。
表2、3で示されたように、原料のフュームドシリカの段階でのシリカ粒子群の各々における表面親水基のモル数の粒子群にわたる合計モル数と、粒子群の各々における表面疎水基のモル数の粒子群にわたる合計モル数との比率を26/74~74/26の範囲では、安定な水分散体および水中油型エマルジョンが生成した。しかし、そのモル比が90/10では、水分散体は安定だが、安定な水中油型エマルジョンは生成しなかった。モル比が10/90では、水分散体もエマルジョンも安定ではなかった。
モル比が50/50であっても、せん断速度が低い場合は、水分散体もエマルジョンも安定ではなかった。
せん断速度が十分大きい場合は、いずれも、2次凝集レベルでの表面の疎水化度のばらつきは十分に小さくなったが、せん断速度が十分でない場合は、ばらつきが大きくなった。
水分散体の作製の際にかけたせん断速度よりも大幅に小さいせん断速度で油分であるフッ素含有オルガノポリシロキサンが吸い込まれたため、水分散体の自己ミセル的凝集体がほぼそのままの状態で水中油型エマルジョン(ピッカリングエマルジョン)に移行したと考えられる。
シリカ、水、油の同時混合、水と油の混合後、シリカ混入いずれも、安定したエマルジョンできなかった点を確認した。また、水分散体で主せん断、エマルジョンで補助せん断でもよい点を確認した。それらを根拠に、水分散体中での自己ミセル的凝集体の形成が推察される。
シリカの凝集性に応じて、エマルジョンの安定性確保にとって、全体モル比率、ばらつきは変動することを確認した。
せん断に関し、エマルジョンの安定性にとって、リアレンジメントが必要であるところ、せん断速度が所定以上であれば、せん断時間は問わないが、複合粒子の諸元調整にとって、せん断速度およびせん断時間が関係する点を確認した。
有機系界面活性剤の使用を省くないし低減できるため、それに伴う環境問題や安定的な製造、安定したエマルジョンの形として存在できること、さらに、有機系の界面活性剤フリーであり水系で供給できることから皮膚に直接塗布する化粧品原料としても、低刺激性という観点からも有用であり、多くの産業で有利に使用される可能性がある。
12 疎水リッチ1次凝集体
14 2次凝集体
16 スペース
Claims (3)
- フュームドシリカ粒子群の下位の凝集体同士が非化学的結合により高位の凝集体を形成するフュームドシリカ粒子群であって、各々における表面親水基のモル数の前記フュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数/各々における表面疎水基のモル数の前記フュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数である合計モル数比率が、20/80以上80/20以下所定数値範囲である、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群により形成される、親水リッチな下位の凝集体の高密度部分が水相と接し、疎水リッチな下位の凝集体の高密度部分が他の疎水リッチな下位の凝集体と接し、内部に空間を形成する自己ミセル的凝集体内部に油分が吸い込まれた形態の複合粒子群を含み、
前記油分は、平均組成が一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンであり、
R1 aR2 bSiO(4-a―b)/2 (1)
[式(1)中、R1は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、置換もしくは非置換の炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6~30の芳香族基、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基または水素原子であり、R2は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、もしくは炭素数6~30の芳香族基で、少なくとも1つの炭素上の水素原子がフッ素原子で置換されている炭化水素基であり、bは0ではない正の数、a+bは0.3以上かつ2.5未満である]
前記複合粒子群それぞれは、自己ミセル的凝集体が油滴の表面を被覆している、ことを特徴とする水中油型エマルジョンであって、
前記水中油型エマルジョン100質量部中における前記油分の含有量は20~80質量部の範囲内である、水中油型エマルジョン。 - 表面のシラノール基を疎水化処理した疎水リッチなシリカ原料と表面のシラノール基が残留した親水リッチなシリカ原料とを所定割合で混合することにより、フュームドシリカ粒子群の各々における表面親水基のモル数の前記フュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数/前記フュームドシリカ粒子群の各々における表面疎水基のモル数の前記フュームドシリカ粒子群にわたる合計モル数である合計モル数比率を、20/80以上80/20以下所定数値範囲となるように、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群を準備する段階と、
準備した2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群を水に添加して、所定せん断速度でせん断することにより、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群間における1次凝集レベルでの交換および/または2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子における1次凝集レベルでの配向を促進することにより、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群による、親水リッチな下位の凝集体の高密度部分が水相と接し、内部に空間を形成する自己ミセル的凝集体を含む水分散体を生成する段階と、
生成した水分散体中に、油分を添加して、自己ミセル的凝集体内部に油分を吸い込ませることにより、エマルジョンを形成する段階とを、有し、
前記油分は、平均組成が一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンであり、
R1 aR2 bSiO(4-a―b)/2 (1)
[式(1)中、R1は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、置換もしくは非置換の炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6~30の芳香族基、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基または水素原子であり、R2は、分子中で同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~25の飽和または不飽和一価炭化水素基、もしくは炭素数6~30の芳香族基で、少なくとも1つの炭素上の水素原子がフッ素原子で置換されている炭化水素基であり、bは0ではない正の数、a+bは0.3以上かつ2.5未満である]
前記エマルジョン100質量部中における前記油分の含有量は20~80質量部の範囲内であり、
それにより、2次凝集レベルのフュームドシリカ粒子群により形成される自己ミセル的凝集体内部に油分が含有した形態の複合粒子群を含むことを特徴とする水中油型エマルジョンの製造方法。 - 請求項2に記載の製造した水中油型エマルジョンを利用して、基材の保護、基材の改質および基材の表面への機能付与のいずれかに応じて設定した所定膜厚の被膜を基材の表面に形成する段階を有する、ことを特徴とする被膜の形成方法。
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