JP7071728B2 - 脳表を局所的に損傷させる方法 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 発行者名 Society for Neuroscience 刊行物名 Neuroscience2017予稿集 発表番号 393.07/15 掲載年月日 平成29年8月31日 掲載アドレスhttp://www.abstractsonline.com/pp8/#!/4376/presentation/16261 発行者名 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 掲載年月日 平成29年9月26日 掲載アドレス http://www.dh.aist.go.jp/jp/general/shi/2017.php 集会名 第3回産総研・人間情報研究部門シンポジウム(SHI2017) 開催日 平成29年9月26日
本発明は、脳表を局所的に損傷させる方法に関する。
脳機能を解明する目的で、種々の方法により局所的に脳損傷を有するモデル動物の作製が試みられてきた。
可視光を用いた局所的脳損傷モデル動物の作製方法として、「光傷害モデル」が公知である(非特許文献1)。光傷害法では高出力(90W)のハロゲンランプを2.5分間(光量3.75W程度)薄削した頭蓋骨の上から照射し、局所的な損傷を作ることができる。この手法においては照射時の温度上昇(最大15℃)から、熱による損傷であると考えられている。
光によらない損傷モデル動物作製法としては、イボテン酸などの薬物や神経毒を直接標的部位に注入する方法、標的部位に電流を流す方法、水流やハンマー等で直接物理的打撃を与える方法(非特許文献2、3)などが知られている。
生体組織中の細胞を死滅させる技術として、紫外線を用いる技術が報告されている。例えば、特許文献1には、TiO2が腫瘍組織に蓄積することを利用し、予めTiO2を取り込ませた生体組織に紫外線を照射してTiO2の励起により活性酸素を生じさせ、腫瘍細胞を破壊する方法が開示されている。また、特許文献2には、紫外線を用いて健常細胞を生かしつつ、微生物を死滅させる方法が開示されている。しかしながら、これらの文献は、紫外線照射のみで、脳組織、特に脳表を局所的に損傷する手法については言及していない。
特開平7-275380号公報 特開2017-47219号公報
Suzuki, T., Sakata, H., Kato, C., Connor, J. A., & Morita, M. (2012). Astrocyte activation and wound healing in intact‐skull mouse after focal brain injury. European Journal of Neuroscience, 36(12), 3653-3664. Winn, P., Tarbuck, A., & Dunnett, S. B. (1984). Ibotenic acid lesions of the lateral hypothalamus: comparison with the electrolytic lesion syndrome. Neuroscience, 12(1), 225-240. Kohler, C., & Schwarcz, R. (1983). Comparison of ibotenate and kainate neurotoxicity in rat brain: a histological study. Neuroscience, 8(4), 819-835.
上述するように、脳損傷モデルを作製するために従来用いられてきた方法は、薬物を投与する方法、微小電極によって電流を流す方法、水流やハンマー等で直接物理的打撃を与える方法などがあった。これらの方法では、薬物投与のためのシリンジや、電極などの刺入、あるいは脳への物理的打撃により、硬膜に穴が開き、硬膜へのダメージがある。硬膜の破壊は感染などのリスクになる。
さらに、ネクローシスによる細胞死を損傷の主な手段として用いるこれらの方法は、破壊領域の一時的な過活動により、照射部位の神経細胞が投射している別の領域も同時に破壊してしまうリスクがあることが知られていた(興奮毒性; excitotoxicity)。したがって、損傷部位において神経細胞が死滅する際、他の脳領域に影響を与えにくい損傷作成方法が望まれていた。
一方、光による損傷モデルも存在はしたが、顕微鏡付属のハロゲン光源を用いて、大きなエネルギーを加えるような方法であり、タンパク質変性(いわゆる火傷)を誘発するものであった。この方法は、エネルギー効率が悪いのみならず、脳の温度が上がってしまうことが報告されており、標的部位にのみ限局して効率よくエネルギーを与えることができなかった。
脳表を局所的に損傷破壊する手法であって、より簡便で効率的な手法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、硬膜を取り除くことなく、硬膜上から紫外線を照射することによっても、脳表を局所的に損傷させることができることを見出した。ここで本発明者らは、脳表の損傷を所望する部位において、紫外線照射と死滅細胞の割合との関係を検証するために脳表に対して異なる露光量の紫外線を照射した。その結果驚くことに、脳表に対する紫外線の露光量は、損傷部位における死滅細胞の割合の変化よりもむしろ、損傷部位の大きさに相関することを見出した。本発明は当該知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明は、一態様において、
〔1〕脳表を局所的に損傷させる方法であって、
前記脳表に対して硬膜上より紫外線を照射する工程であって、
前記脳表における損傷部位が所望の大きさとなるように前記紫外線の露光量を調整して照射する工程を含む、損傷方法に関する。
また、本発明の損傷方法は、一実施の形態において、
〔2〕上記〔1〕に記載の損傷方法であって、
前記紫外線照射工程が、光ファイバーを介して紫外線を前記脳表に照射する工程であって、かつ、前記光ファイバーが硬膜と接した状態で紫外線を照射する工程であることを特徴とする。 また、本発明の損傷方法は、一実施の形態において、
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の損傷方法であって、
予め脳表に対して異なる照度、異なる照射時間、または、異なる露光量の紫外線を照射して各条件の紫外線を照射した脳表面の損傷部位の大きさを測定し、紫外線照射と脳表面の損傷部位の大きさとの関係を示す標準曲線を作成する工程をさらに含み、
当該標準曲線に基づいて、前記脳表の損傷部位が所望の大きさとなるように紫外線を調整して照射することを特徴とする。
また、本発明の損傷方法は、一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の損傷方法であって、
前記脳表が、大脳皮質、小脳、脊髄、または、嗅球であることを特徴とする。
また、本発明の損傷方法は、一実施の形態において、
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法であって、
前記紫外線の波長が310~380nmの範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の損傷方法は、一実施の形態において、
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法であって、
前記紫外線の照度が0.1~10.0mWの範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の損傷方法は、一実施の形態において、
〔7〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法であって、
紫外線の露光量が0.5~4.0mWhの範囲であることを特徴とする。
また、本発明の損傷方法は、一実施の形態において、
〔8〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法であって、
アポトーシスにより脳表の損傷を促すことを特徴とする。
また、本発明は、別の態様において、
〔9〕脳表に局所的な損傷を有するモデル動物の作製方法であって、
(a)前記モデル動物の頭蓋骨を一部取り除き、硬膜を露出させる工程と、
(b)前記露出した硬膜上より紫外線を照射して脳表に損傷を生じさせる工程であって、前記脳表における損傷部位が所望の大きさとなるように前記紫外線の露光量を調整して照射する工程と
を含む、モデル動物の作製方法に関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔10〕脳神経疾患を治療する方法であって、
(i)脳神経疾患を有する対象の頭蓋骨を一部取り除き、硬膜を露出させる工程と、
(ii)前記露出した硬膜上より紫外線を照射して脳表に損傷を生じさせる工程であって、前記脳表における損傷部位が所望の大きさとなるように前記紫外線の露光量を調整して照射する工程と
を含む、脳神経疾患の治療方法に関する。
本発明の損傷方法によれば、硬膜を取り除くことなく、簡便かつ効率的に脳表を局所的に損傷させることができる。特に、紫外線の露光量を調整することで、損傷部位の大きさを所望の範囲に調整することができる。
図1は、本発明の損傷方法の一実施の形態を示す写真図および照射部位を拡大した断面模式図である。 図2は、本発明の損傷方法の一実施の形態を示す模式図である。頭蓋骨の十字縫合(Bregma)から約2.5mm後方の冠状断面を示す。 図3は、ラットの大脳皮質に対して硬膜上より紫外線またはハロゲン光を一定時間照射した際の照射部位を示す画像である。ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色像を示す。 図4は、ラットの大脳皮質に対して硬膜上より紫外線を一定時間照射した際の照射部位を染色した画像を示す。左上段はチオニンを用いたニッスル染色像を示し、左下段は神経細胞を可視化するために抗NeuN抗体による免疫染色(損傷部分を除いて濃い黒で染まっているもの)サンプルに、ヘマトキシリン(損傷内部にも薄く染まっているもの)で核染色を施したものを示す。右図は抗GFAP抗体による免疫染色(グリア細胞の一種であるアストロサイトを可視化、損傷周辺に濃い黒で染まっているもの)サンプルに、ヘマトキシリン(損傷内部にも薄く染まっているもの)で核染色を施したものを示す。 図5は、ラットの大脳皮質に対して硬膜上より紫外線(2.0mWh)を照射した際の損傷部位について連続切片を作成し、そのうちの一切片における損傷面積の計測例を示す画像である。黒い線で囲まれているNeuN陽性細胞がない部分を損傷中心部(I)、白い線で囲まれている領域のうち、黒い線の囲いの外の領域であってNeuN陽性細胞が疎である部分を損傷周辺部(II)とした。 図6は、図5の計測例により計測した各切片における損傷中心部の損傷面積(濃いグレー)、ならびに、損傷中心部および損傷周辺部(薄いグレー)の損傷面積をグラフ化したものである。横軸は連続切片の番号を示し、縦軸は損傷面積(mm2)を示す。 図7は、各切片の計測値から損傷体積を算出し、算出した損傷体積と露光量との関係についてグラフ化したものである。図7(a)のグラフは損傷中心部および損傷周辺部の損傷体積の平均値をそれぞれ示し、図7(b)のグラフは損傷中心部および損傷周辺部の損傷体積の合計値の平均値を示す。横軸の1.0mWh、2.0mWh、4.0mWhは露光量を示し、縦軸は損傷体積(mm3)を示す。 図8は、各切片の計測値から算出された損傷体積と露光量の関係を、フィッティングしたものである。図8(a)(b)の横軸の1.0mWh、2.0mWh、4.0mWhは露光量を示し、図8(a)の縦軸は損傷体積(mm3)を図8(b)の縦軸は損傷体積(mm3)の3乗根を示す。フィッティングには3次関数(図8a)および1次関数(図8b)を用いた。 図9は、ラットの大脳皮質に対して硬膜上より紫外線(2.0mWh)を照射した際の損傷部位について、TUNEL法によりアポトーシスを起こした細胞を検出した結果を示す画像である。白抜き矢印はTUNEL法により染色された細胞を示し、黒矢印および枠内はマクロファージによるアポトーシスを起こした細胞の貪食を示す。
本発明の損傷方法の対象となる脳表とは、硬膜で覆われた脳組織の表面領域をいい、脳表に含まれる具体的な組織としては、例えば、大脳皮質、小脳、脊髄、嗅球などを挙げることができる。大脳皮質とは、大脳の表面に位置する層構造を有する領域をいう。
「局所的に損傷させる」とは、当該領域が本来有していた構造または機能の一部または全部を破壊することで、それが脳内の局所的な領域においてのみ生じることを言う。
本明細書において、硬膜とは、脳表を覆う膜状の構造物をいう。
頭蓋骨の一部を取り除いて硬膜を露出させる方法は、公知の方法により行うことができる。
本発明の方法によれば、硬膜を取り除くことなく、脳表に所望の損傷を形成させることができる。したがって、本発明の一実施の形態は、硬膜を取り除く工程を含まない、または、本発明の一実施の形態は、硬膜を除去する工程を含む脳表を局所的に損傷させる方法ではない。このように、硬膜を残した状態で脳表に所望の損傷を与えることができると、硬膜の破壊によって誘発される感染などのリスクを排除することができるため好ましい。
本発明の方法に用いられる紫外線は、硬膜上から脳表の細胞を損傷できる限りにおいて制限されず、UV-A(310~380nm)、UV-B(280~310nm)、および、UV-C(200~280nm)の波長を有する紫外線を用いることができる。
一実施の形態において、紫外線の波長は、UV-A(310~380nm)の範囲内とすることが好ましく、365nmの波長とすることがより好ましい。
紫外線の露光量は、所望の損傷を形成できるように調整すればよく、以下に制限されないが、例えばラットでは0.5~4.0mWhの範囲内とすることが好ましい。4.0mWh程度の露光量を用いることで、例えば脳表に存在する大脳皮質最下層まで損傷を与えることができる。また、露光量0.5mWh程度未満では、損傷部位が小さく神経細胞の脱落を確認することが困難となるため、好ましくない。上記はラットを例にして説明したが、対象とする脳の構造や脳表組織、その厚さなどにより、当業者であれば適宜紫外線の露光量を調整することができる。
脳表における損傷部位の大きさは紫外線の露光量に相関するため、紫外線の照度や照射時間は、所望の露光量を満たすように設定すればよい。例えば、ラットの脳表を損傷の対象とする場合、紫外線の照度は、所望の損傷を形成できる照度であればよく、以下に制限されないが、例えば0.1~10.0mWの範囲内とすることができる。上記はラットを例にして説明したが、対象とする脳の構造や脳表組織、その厚さなどにより、当業者であれば適宜紫外線の照度を調整することができる。
紫外線の照射時間は、所望する損傷部位の大きさとなるように、露光量との関係で適宜設定することができる。以下に限定されないが、例えば、15分~4時間照射することができる。
紫外線照射装置は、紫外線の照度または照射時間の調整により露光量を調整可能であり、かつ、紫外線を硬膜上の所望する部位に照射可能な光ファイバーを備えていればよく、公知の装置を用いることができる。
紫外線を照射するために用いる光ファイバーは特に制限されない。コアの材質は石英ガラスを用いることが好ましい。光ファイバーのコア径も制限されず、所望する損傷部位の大きさに適したものを用いることができる。紫外線照射の際、光ファイバーの先端部は、被覆を有しない、コアとクラッドとからなる状態とする。また、光ファイバーは、硬膜に接して使用することが必要である。
上述のように、当業者であれば、脳表における損傷部位を所望の大きさとするために、本明細書の開示および技術常識に基づいて紫外線の照射条件を適宜調整することができる。一方、予め標準曲線を作成することにより、脳表における損傷部位を所望の大きさとするための照射条件を設定してもよい。
すなわち、本発明は、一実施の形態において、予め脳表に対して異なる照度、異なる照射時間、または、異なる露光量の紫外線を照射して各条件の紫外線を照射した脳表面の損傷部位の大きさを測定し、紫外線照射と脳表面の損傷部位の大きさとの関係を示す標準曲線を作成する工程をさらに含む。これにより、作製された標準曲線に基づいて、脳表の損傷部位が所望の大きさとなるように紫外線を調整して照射することができる。
また、脳表における損傷部位の大きさを確認するめには、例えば、下記実施例に示すように、損傷後の脳の切片を作製し、免疫組織化学染色により神経細胞を可視化することで損傷部位の大きさを計測することができる。神経細胞の染色は公知の方法により行うことができ、例えば、抗NeuN抗体を用いた染色を行うことができる。また、損傷部位の大きさの計測には公知の解析ソフトを使用することができる。
なお、紫外線照射による脳表損傷部位においてNeuN陽性細胞を観察すると、NeuN陽性細胞がない部分(損傷中心部)と、NeuN陽性細胞のほとんどが消失しており、NeuN陽性細胞が疎に存在する部分(損傷周辺部)とが観察できる。ここで、本明細書において「損傷部位」というとき、損傷中心部と損傷周辺部とを合わせた領域とすることもできるし、損傷中心部とすることもできる。損傷部位を、損傷中心部と損傷周辺部とを合わせた領域とする場合、および、損傷中心部とする場合のいずれの場合であっても露光量と損傷部位の大きさは相関する。
標準曲線は、紫外線の露光量と損傷部位との大きさに関するグラフとして描くことができる。また、標準曲線は、紫外線の照度を一定としたときの紫外線の照射時間と損傷部位との大きさの相関を示したグラフとしてもよいし、紫外線の照射時間を一定としたときの紫外線の照度と損傷部位との大きさの相関を示したグラフとして描くこともできる。標準曲線の作成方法は公知であり、例えば、異なる照度もしくは照射時間の紫外線、または、異なる紫外線露光量を同一の脳表に由来するサンプルに照射して、それぞれの損傷部位の大きさを測定することで描くことができる。
なお、本発明に係る方法の一実施の形態においては、酸化チタンまたは酸化タングステン等の光触媒が蓄積した生体組織に対して照射する工程を含まない。すなわち、本発明の損傷方法は、一実施の形態において、
脳表を局所的に損傷させる方法であって、
前記脳表に対して硬膜上より紫外線を照射する工程であって、
前記脳表における損傷部位が所望の大きさとなるように前記紫外線の露光量を調整して照射する工程を含む、損傷方法(ただし、前記損傷方法は、光触媒が蓄積した生体組織に対して紫外線を照射する工程を含むものではない)である。
また、本発明は別の態様において、脳表に局所的な損傷を有するモデル動物の作製方法を提供する。
本発明のモデル動物の作製方法は、(a)前記モデル動物の頭蓋骨を一部取り除き、硬膜を露出させる工程と、(b)前記露出した硬膜上より紫外線を照射して脳表に損傷を生じさせる工程であって、前記脳表における損傷部位が所望の大きさとなるように前記紫外線の露光量を調整して照射する工程とを含む。
本明細書において、モデル動物は哺乳類等の脊椎動物である限り特に制限されず、例えば、マウス、ラット、サル、ブタなどを挙げることができる。
また、本発明は別の態様において、脳神経疾患を治療する方法を提供する。
本発明の脳神経疾患を治療する方法は、(i)脳神経疾患を有する
対象の頭蓋骨を一部取り除き、硬膜を露出させる工程と、(ii)前記露出した硬膜上より紫外線を照射して脳表に損傷を生じさせる工程であって、前記脳表における損傷部位が所望の大きさとなるように前記紫外線の露光量を調整して照射する工程とを含む。
ここで、本明細書において脳神経疾患とは、紫外線照射による神経細胞または脳表の一部を死滅させることにより治療可能な疾患であり、例えば、脳腫瘍、てんかんを挙げることができる。
また、脳神経疾患を有する対象はヒトに限られず、マウス、ラット、サル、ブタなどの脊椎動物を含む。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
ラットの脳組織に対して硬膜上から紫外線を照射し、その効果について検証した。
(方法)
被験体として、Wistar系成体オスラットをもちいた。麻酔下で頭皮を切開して頭蓋骨を剥離し、露出した硬膜上から紫外線(UV群;波長365nmの単色光、2.0mWh(1mW×2h))またはハロゲン光源からの可視光(ハロゲン群;ハロゲン光源のスペクトルを持つ光、2.0mWh(1mW×2h))を照射した(図1)。紫外線照射には光ファイバーを接続した紫外線LED光源(doric社製、LEDFLP-1CH_500;コア径400um、NA(開口度)0.37、シリカ製(型番:MFP_400/430/1100-0.37_1m_FCM-CM3))を用い、可視光の照射には同様に光ファイバーを接続したハロゲン光源(Thorlab社製、SLS201L/M)を用いた。照射時には脳定位固定装置(ナリシゲ社製、SR-6R)およびマニュピュレーター(ナリシゲ社製、SM-15R)を用いてファイバーの先端を硬膜に触れさせた状態で固定した(図2)。5日後、被験体を灌流固定して脳を摘出した。脳サンプルは、パラフィン包埋した後クライオスタットを用いて4μm厚の薄切切片を作製した。ヘマトキシリン・エオジン染色後、ニッスル染色を用いて損傷部位の組織を可視化した。また、UV群については免疫組織化学染色で、神経細胞のマーカーであるNeuN陽性細胞、グリア細胞の一種、アストロサイトのマーカーであるGFAP陽性細胞を可視化した。
(結果)
図3にヘマトキシリン・エオジン(HE)染色像を示す。、さらに、UV群については図4にクレシルバイオレットによるニッスル染色像(左上)、NeuN免疫組織化学染色像(左下;神経細胞(NeuN陽性細胞)を黒く標識し、ヘマトキシリン染色により細胞核を薄いグレーに可視化)GFAP免疫組織化学染色像(右アストロサイト(GFAP陽性細胞)を黒く標識し、NeuN染色像と同様に細胞核を薄いグレーで可視化)の結果を示す。紫外線を照射した直下の大脳皮質には、直径500μm程度の損傷部位が観察され(図3、図4)、損傷部位にはNeuN陽性細胞が観察されなかった(図4左下、右側)。また、損傷部位の周辺には活性型のアストロサイトが多く観察された(図4右側)。一方、ハロゲン照射部位には、組織学的な変性は観察されなかった(図3)。
したがって、同じ露光量でも、可視光では損傷ができず、UVにより損傷ができることが示唆される。
<実施例2>
次に、紫外線の露光量を変化させたときの影響について検証した。
(方法)
被験体として、Wistar系成体オスラットをもちいた。実施例1と同様、硬膜上から紫外線を照射したが、照射光量はそれぞれ1.0mWh, 2.0mWh, 4.0mWh(各1mW×1h, 2h, 4h; 各群 n=5)であった。
5日後、被験体を灌流固定して脳を摘出した。脳サンプルは、ゼラチン包埋した後ミクロトームを用いて30μm厚の連続薄切切片を作製して2シリーズに分け、それぞれチオニンによるニッスル染色とNeuN免疫組織化学染色を施した。プレパラート作製後、解析ソフトImageJを用いて、各切片における損傷部位(NeuN陽性細胞のない部位)の面積を計測し、体積を計算した。体積はΣ(各切片の面積)×60μmとし、欠損した切片(染色の過程での損傷などで計測できなかったもの)は、形態から前後と推定した切片の損傷面積の平均値を用いて計算した。
(結果)
損傷範囲の例を図5に示した(図5,6は2.0mWh群の例)。黒い線で囲まれているNeuN陽性細胞がない部分を損傷中心部(I, 以下のグラフでは図6内側または図7A下側の濃いグレー)、白い線で囲まれているNeuN陽性細胞が疎である部分を損傷周辺部(II, グラフでは図6外側または図7A上側の薄いグレー)として、別々に計算を行った。図6に1匹分の損傷面積(mm2)を並べた例を示した。冠状断面からも観察されたように、損傷の中心部ほど損傷面積が広かった。図7には、露光量ごとの平均損傷体積を示した。紫外線の露光量が多くなるほど、大きな体積の損傷が観察された。また、紫外線の照度が1mWである本試験において、紫外線照射時間と平均損傷体積との関係について標準曲線を作図することができた(図8)。
<実施例3>
本実施例では、紫外線照射による脳組織損傷のメカニズムについて検証した。
(方法)
被験体として、Wistar系成体オスラットをもちいた。実施例1と同様、硬膜上から紫外線を照射し(2mWh)、照射終了から25.5時間後に被験体を灌流固定して脳を摘出した。脳サンプルは、ゼラチン包埋した後クライオスタットを用いて10μm厚の薄切切片を作製し、TUNEL法によりアポトーシスを起こした細胞を検出した。
(結果)
照射25.5時間後の損傷内部におけるTUNEL陽性細胞の存在(図8)から、損傷後の細胞の脱落が、すくなくとも部分的にはアポトーシスによって起こることが示唆された。
このように、紫外線照射による損傷方法は、損傷部位においてアポトーシスを引き起こすと考えられる。このとき、ネクローシスによる損傷部位周辺への炎症等を抑えることができると考えられるため、所望の局所にのみ損傷を生じさせることができる。さらに、損傷部位におけるネクローシスを抑えることで、損傷部位の神経細胞が投射している別の領域に対する興奮毒性などの影響も抑えることができると考えられる。

Claims (7)

  1. 非ヒト動物において、脳表を局所的に損傷させる方法であって、
    前記脳表に対して硬膜上より紫外線を照射する工程であって、
    前記脳表における損傷部位が所望の大きさとなるように前記紫外線の露光量を調整して照射する工程を含み、
    前記紫外線の照射が、光ファイバーを介して紫外線を前記脳表に照射するものであり、かつ、前記光ファイバーが硬膜と接した状態で紫外線を照射するものであり、および
    前記紫外線の露光量の調整が、予め脳表に対して異なる照度、異なる照射時間、または、異なる露光量の紫外線を照射して各条件の紫外線を照射した脳表面の損傷部位の大きさを測定し、紫外線照射と脳表面の損傷部位の大きさとの関係を示す標準曲線を作成し、かつ、当該標準曲線に基づいて、前記脳表の損傷部位が所望の大きさとなるように紫外線を調整するものである、損傷方法。
  2. 請求項1に記載の損傷方法であって、
    前記脳表が、大脳皮質、小脳、脊髄、または、嗅球である、損傷方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法であって、
    前記紫外線の波長が310~380nmの範囲内である、損傷方法。
  4. 請求項1~のいずれか一項に記載の方法であって、
    前記紫外線の照度が0.1~10.0mWの範囲内である、損傷方法。
  5. 請求項1~のいずれか一項に記載の方法であって、
    紫外線の露光量が0.5~4.0mWhの範囲内である、損傷方法。
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載の方法であって、
    アポトーシスにより脳表の損傷を促す、損傷方法。
  7. 脳表に局所的な損傷を有する非ヒトモデル動物の作製方法であって、
    (a)前記モデル動物の頭蓋骨を一部取り除き、硬膜を露出させる工程と、
    (b)前記露出した硬膜上より紫外線を照射して脳表に損傷を生じさせる工程であって、前記脳表における損傷部位が所望の大きさとなるように前記紫外線の露光量を調整して照射する工程と
    を含み、
    前記紫外線の照射が、光ファイバーを介して紫外線を前記脳表に照射するものであり、かつ、前記光ファイバーが硬膜と接した状態で紫外線を照射するものであり、および
    前記紫外線の露光量の調整が、予め脳表に対して異なる照度、異なる照射時間、または、異なる露光量の紫外線を照射して各条件の紫外線を照射した脳表面の損傷部位の大きさを測定し、紫外線照射と脳表面の損傷部位の大きさとの関係を示す標準曲線を作成し、かつ、当該標準曲線に基づいて、前記脳表の損傷部位が所望の大きさとなるように紫外線を調整するものである、非ヒトモデル動物の作製方法。
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