JP7067686B1 - 表面分析方法、表面分析システム、および表面分析プログラム - Google Patents

表面分析方法、表面分析システム、および表面分析プログラム Download PDF

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Abstract

一実施形態に係る表面分析方法は、走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップと、観測点群のそれぞれについて、試料表面を形成する有機材料の物性量をフォースカーブに基づいて算出するステップと、観測点群のそれぞれの物性量を示す分析データを出力するステップとを含む。フォースカーブを取得するステップは、X方向(探針が試料台に対して往復運動する方向)に沿って延びるY列上の複数の観測点のそれぞれにおいてフォースカーブを取得するステップを含む。物性量を算出するステップは、該複数の観測点のそれぞれでのフォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成するステップと、フォースカーブ行列を用いて該複数の観測点のそれぞれにおける物性量を算出するステップとを含む。

Description

本開示の一側面は表面分析方法、表面分析システム、および表面分析プログラムに関する。
従来から、有機材料を含む試料の表面を分析するための手法が知られている。例えば、特許文献1には、高分子複合材料中の構造体のサイズを基に決定した厚みを持つ試料を用いて測定することを特徴とする力学物性測定方法が記載されている。この文献には、原子間力顕微鏡(AFM)によって試料の表面の硬さ、摩擦力等の力学的特性を測定できることも記載されている。また、特許文献2には、走査型プローブ顕微鏡を用いて弾性率を測定する方法が記載されている。この方法は、測定対象物の表面の複数の観測点におけるフォースカーブ測定データを取得するステップと、そのフォースカーブ測定データから実測荷重変位曲線を観測点ごとに算出するステップと、その実測荷重変位曲線から理論式を用いて観測点ごとの弾性率を算出するステップとを含む。
特開2018-178016号公報 特開2018-173310号公報
試料の表面に形成された有機材料をより効率的に分析する手法が望まれている。
本開示の一側面に係る表面分析方法は、走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップであって、走査型プローブ顕微鏡が、水平面に沿ったX方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、該水平面に沿い且つ該X方向に直交するY方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かすことで、試料表面上の観測点群のそれぞれで測定を実行する、該ステップと、観測点群のそれぞれについて、試料表面を形成する有機材料の物性量をフォースカーブに基づいて算出するステップと、観測点群のそれぞれの物性量を示す分析データを出力するステップとを含む。フォースカーブを取得するステップは、X方向に沿って延びる少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいてフォースカーブを取得するステップを含む。物性量を算出するステップは、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれでのフォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成するステップと、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、フォースカーブ行列を用いて複数の観測点のそれぞれにおける物性量を算出するステップとを含む。
本開示の一側面に係る表面分析システムは少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップであって、走査型プローブ顕微鏡が、水平面に沿ったX方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、該水平面に沿い且つ該X方向に直交するY方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かすことで、試料表面上の観測点群のそれぞれで測定を実行する、該ステップと、観測点群のそれぞれについて、試料表面を形成する有機材料の物性量をフォースカーブに基づいて算出するステップと、観測点群のそれぞれの物性量を示す分析データを出力するステップとを含む処理を実行する。フォースカーブを取得するステップでは、少なくとも一つのプロセッサは、X方向に沿って延びる少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいてフォースカーブを取得する。物性量を算出するステップでは、少なくとも一つのプロセッサは、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれでのフォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成し、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、フォースカーブ行列を用いて複数の観測点のそれぞれにおける物性量を算出する。
本開示の一側面に係る表面分析プログラムは、走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップであって、走査型プローブ顕微鏡が、水平面に沿ったX方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、該水平面に沿い且つ該X方向に直交するY方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かすことで、試料表面上の観測点群のそれぞれで測定を実行する、該ステップと、観測点群のそれぞれについて、試料表面を形成する有機材料の物性量をフォースカーブに基づいて算出するステップと、観測点群のそれぞれの物性量を示す分析データを出力するステップとをコンピュータに実行させる。フォースカーブを取得するステップは、X方向に沿って延びる少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいてフォースカーブを取得するステップを含む。物性量を算出するステップは、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれでのフォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成するステップと、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、フォースカーブ行列を用いて複数の観測点のそれぞれにおける物性量を算出するステップとを含む。
このような側面においては、X方向に沿って一列に並ぶ複数の観測点に対応する複数のフォースカーブが行列によって表現される。この行列を用いることで、その複数の観測点での有機材料の物性量を一度に算出することが可能になる。その結果、試料の表面に形成された有機材料をより効率的に分析することが可能になる。
本開示の一側面によれば、試料の表面に形成された有機材料をより効率的に分析することができる。
実施形態に係る表面分析システムを構成するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。 実施形態に係る表面分析システムの機能構成の一例を示す図である。 原子間力顕微鏡の測定部の一例を示す模式図である。 試料表面上の観測点群の一例を示す図である。 実施形態に係る表面分析システムの動作の一例を示すフローチャートである。 電圧-稼働量曲線のゼロ点調整の一例を示す図である。 電圧-稼働量曲線のゼロ点調整の別の例を示す図である。 有機材料の破断長を算出する処理の一例を示すフローチャートである。 フォースカーブおよび対応する微分曲線の一例を示す図である。 フォースカーブおよび対応する微分曲線の一例を示す図である。 複数のY列における物性量の分布を表す分析画像の一例を示す図である。 一つのY列における物性量の分布を表す分析画像の一例を示す図である。 一つのY列における物性量の分布を表す分析画像の別の例を示す図である。 複数種類の分析画像を一度に表示する例を示す図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[表面分析システムの構成]
実施形態に係る表面分析システム10は、有機材料を含み得る試料の表面(本開示ではこれを「試料表面」ともいう)を分析するコンピュータシステムである。有機材料とは、有機化合物により構成される材料のことをいう。試料とは、表面を分析する対象となる物質のことをいう。一例では、「有機材料を含む試料」は、有機材料によって表面が形成された物質であり、例えば、フィラ等の粉体の表面に有機材料の層が形成された物質である。粉体とは、多数の微小な固体粒子の集合体のことをいう。試料表面の分析とは、試料表面の何らかの特性を明らかにする処理のことをいう。
表面分析システム10は、走査型プローブ顕微鏡から得られるデータを用いて分析を実行する。走査型プローブ顕微鏡とは、物質の表面をカンチレバーの探針でなぞるように動かして該表面の物性(例えば、形状、性質、状態等)を観察する顕微鏡のことをいう。走査型プローブ顕微鏡の例として原子間力顕微鏡(AFM)が挙げられるが、表面分析システム10と共に用いられる走査型プローブ顕微鏡の種類はその例に限定されない。本実施形態ではAFM30を走査型プローブ顕微鏡の一例として示す。AFM30はコンタクトモード、ダイナミックモード、フォースモード等の様々な測定方法に対応し得る。フォースモードでは、弾性率、最大破断力(凝着力)、表面位置などの様々な物性量を得ることができる。
表面分析システム10は1台以上のコンピュータで構成される。複数台のコンピュータを用いる場合には、これらのコンピュータがインターネット、イントラネット等の通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つの表面分析システム10が構築される。表面分析システム10はクライアントーサーバシステムにおけるサーバとして実現されてもよいし、スタンドアロンのコンピュータ上で実現されてもよい。
図1は、表面分析システム10を構成するコンピュータ100の一般的なハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ100は、オペレーティングシステム、アプリケーション・プログラム等を実行するプロセッサ(例えばCPU)101と、ROMおよびRAMで構成される主記憶部102と、ハードディスク、フラッシュメモリ等で構成される補助記憶部103と、ネットワークカードまたは無線通信モジュールで構成される通信制御部104と、キーボード、マウス等の入力装置105と、モニタ等の出力装置106とを備える。
表面分析システム10の各機能要素は、プロセッサ101または主記憶部102の上に予め定められたプログラムを読み込ませてプロセッサ101にそのプログラムを実行させることで実現される。プロセッサ101はそのプログラムに従って、通信制御部104、入力装置105、または出力装置106を動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出しおよび書き込みを行う。処理に必要なデータまたはデータベースは主記憶部102または補助記憶部103内に格納される。
図2は表面分析システム10の機能構成の一例を示す図である。一例では、表面分析システム10は機能要素として取得部11、算出部12、行列生成部13、および出力部14を備える。取得部11は、AFM30により得られた測定データ(本開示ではこれを「入力データ」ともいう)を取得する機能要素である。算出部12はその入力データを用いて試料表面または有機材料の物性量を算出する機能要素である。本開示において、物性量とは、試料表面または有機材料の物性を示す数値をいう。行列生成部13はその計算において用いられる各種の行列を生成する機能要素である。行列生成部13は算出部12の一部として機能する。出力部14は算出された物性量を示す分析データを出力する機能要素である。
表面分析システム10の構築方法は限定されない。表面分析システム10が複数のコンピュータで構成される場合には、どのプロセッサがどの機能要素を実行するかが任意に決定されてよい。表面分析システム10は、AFM30に組み込まれてもよいし、AFM30とは独立したコンピュータシステムでもよい。図1では、あくまでも説明の便宜のために、表面分析システム10がAFM30とは異なるブロックで表現されていることに留意されたい。
本実施形態では、表面分析システム10は、AFM30によるフォースモードでの測定において得られたデータを処理して試料表面を分析する。AFM30は試料表面上の観測点群のそれぞれにおいてフォースモードによる測定を実行して測定データを取得する。表面分析システム10は個々の観測点から得られた測定データを入力データとして受け付ける。表面分析システム10による処理を詳細に説明する前に、その処理の前提となるAFM30および観測点について説明する。
図3はAFM30の測定部の一例を示す模式図である。この図は、カンチレバー31の端部に設けられた探針32と、ステージ(試料台)33上に置かれた試料40と、その試料40を3次元方向に高精度に移動させるための圧電素子(ピエゾ素子)34とを示す。本開示では、探針32の先端と試料表面41との間の距離Dを探針-表面間距離という。
観測点とはフォースモードによる測定が実行される位置をいい、より具体的には、探針32が接触する位置である。観測点群は、ステージ33の表面に沿ったXY平面(水平面)上に設定され、したがって、それぞれの観測点の位置はX座標およびY座標によって定義される。図4は試料表面41上の観測点群50の一例を示す図である。この例では、観測点群50は64個の観測点の集合であり、X方向に沿った個々の列には16個の観測点が並び、Y方向に沿った個々の列には4個の観測点が並ぶ。図4の拡大部分では個々の観測点の一部を区別して示す。X方向およびY方向は水平面に沿った方向であり、Y方向はX方向に直交する。Z方向はXY平面に直交する方向(鉛直方向)である。
フォースモードでは、AFM30は最初の観測点501でステージ33をZ方向に沿って動かして、観測点501での測定を実行する。続いて、AFM30はステージ33をX方向に沿って動かして、X方向において観測点501の隣にある観測点502に探針32を合わせる。そして、AFM30はステージ33をZ方向に沿って動かして、観測点502での測定を実行する。続いて、AFM30はステージ33をX方向に沿って動かして、X方向において観測点502の隣にある観測点503において同様に測定を実行する。その後、AFM30は同様の制御によって観測点504~516のそれぞれについてこの順に測定を実行する。続いて、AFM30はステージ33をX方向およびY方向に沿って動かして、Y方向において観測点501の隣にある観測点517に探針32を合わせる。そして、AFM30はステージ33をZ方向に沿って動かして、観測点517での測定を実行する。その後、AFM30はステージ33をX方向に沿って変化させ、X方向において観測点517の隣にある観測点518に探針32を合わせる。そして、AFM30はステージ33をZ方向に沿って動かして、観測点502での測定を実行する。その後、AFM30は同様の手順で、観測点519~観測点564における測定をこの順に実行する。
AFM30などの走査型プローブ顕微鏡は、フォースモードでは、X方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、Y方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かす。走査型プローブ顕微鏡はXY平面における探針と試料台との位置関係をこのように制御しつつ、試料表面上の観測点群のそれぞれで測定を実行する。個々の測定点では、走査型プローブ顕微鏡はZ方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら測定を実行する。したがって、探針と試料台との位置関係は、まずはZ方向に沿って変化し、次にX方向に沿って変化し、最後にY方向に沿って変化するといえる。すなわち、Z方向に沿った移動がいちばん高い優先度を有し、X方向に沿った移動が2番目に高い優先度を有し、Y方向に沿った移動がいちばん低い優先度を有するといえる。言い換えると、Z方向がいちばん速いスキャン方向であり、X方向が次に速いスキャン方向であり、Y方向が最も遅いスキャン方向である。本開示ではこのような動作を反映して、Z方向を走査型プローブ顕微鏡(例えばAFM30)のファストスキャン(fast scan)方向ともいい、X方向を走査型プローブ顕微鏡のミドルスキャン(middle scan)方向ともいい、Y方向を走査型プローブ顕微鏡のスロースキャン(slow scan)方向ともいう。一般には、X,Y方向に限定して、X方向をファストスキャン方向といい、Y方向をスロースキャン方向ということもある。典型的には、このようなスキャン方向を考慮して、X方向に沿った1列を構成する測定点の個数が、Y方向に沿った1列を構成する測定点の個数よりも多くなるように、観測点群が設定される。これは、X方向に沿った一列の情報量が、Y方向に沿った一列の情報量よりも多くなることを意味する。
本開示では、便宜のために、X方向に沿って一列に並ぶ複数の観測点の集合を「Y列」という。したがって、Y列はX方向に沿って延びる。また、Y列を構成する観測点を「Y列上の観測点」という。図4の例では、観測点501~516から成るY列と、観測点517~532から成るY列と、観測点533~548から成るY列と、観測点549~564から成るY列とが存在する。
一例では、試料は、担体によって保持されていない粉体(すなわち、単体の粉体)であり、試料表面はその粉体の表面であってもよい。この場合には、その粉体は試料台上で物理的に固定され、該粉体の周囲が所与の水溶液で満たされた上で、測定が行われる。試料表面の測定で用いられる水溶液の例として、塩化ナトリウム(NaCl)水溶液、硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液、および塩化カリウム(KCl)水溶液が挙げられるが、これらに限定されない。水溶液のイオン強度は0.01(mol/L)以上であることが好ましい。例えば、モル濃度が10mM(mmol/L)のNaCl水溶液のイオン強度は0.01(mol/L)である。
[表面分析システムの動作]
図5を参照しながら、表面分析システム10の動作を説明するとともに本実施形態に係る表面分析方法について説明する。図5は表面分析システム10の動作の一例を処理フローS1として示すフローチャートである。処理フローS1の契機は限定されない。例えば、処理フローS1は表面分析システム10のユーザの操作に応答して実行されてもよい。あるいは、処理フローS1は、AFMまたは他の装置での処理に応答して、ユーザ操作を介することなく自動的に実行されてもよい。
ステップS11では、取得部11が観測点群についての入力データを取得する。入力データは、試料表面を測定したAFM30によって生成され、試料表面を分析するために用いられるデータである。入力データの取得方法は限定されない。例えば、取得部11はAFM30から入力データを直接に取得してもよいし、AFM30から所定の記憶部(例えば、メモリ、データベース等)に格納されたデータを該記憶部から入力データとして読み出してもよい。あるいは、取得部11は他のコンピュータから入力データを受信してもよい。
入力データはそれぞれの観測点について、該観測点の位置と該観測点での測定結果との対応関係を示す。その対応関係が分かる限り、入力データは一つのデータファイルに記述されてもよいし、複数のデータファイルに分かれて記述されてもよい(例えば、それぞれのデータファイルが一つの観測点についてのデータのみを示してもよい)。一例では、各観測点での測定結果は、探針が試料表面に近づく際に検出される電圧(アプローチ電圧)の経時変化と、試料表面に接触した探針が該試料表面から離れていくときに検出される電圧(リリース電圧)の経時変化と、圧電素子の稼働量の経時変化とを含む。以下では「圧電素子の稼働量」を単に「稼働量」ともいう。アプローチ電圧の経時変化に基づいて、探針が試料表面に近づくときに測定される力の推移を示すフォースカーブをアプローチカーブとして求めることができる。また、リリース電圧の経時変化に基づいて、試料表面に接触した探針が該試料表面から離れていくときに測定される力を示すフォースカーブをリリースカーブとして求めることができる。各観測点での測定結果は最大破断力、表面位置などの他のデータを含んでもよい。最大破断力は、試料表面から離れようとする探針に掛かる力の最大値であり、凝着力ともいう。表面位置は、Z方向における、所与の基準面から試料表面までの距離によって示され得る。
ステップS12では、行列生成部13がX方向に沿って延びる個々のY列についてZX行列を生成する。ZX行列とは、Z方向(ファストスキャン方向)に沿って得られる値とX方向(ミドルスキャン方向)に沿って得られる値との組合せを表現する行列をいう。ZX行列は、ZX平面における物性量の分布(言い換えると、対応する一つのY列上での物性量の分布)を示す行列であるともいえる。一例では、行列生成部13はそれぞれのY列について、アプローチ電圧を示すZX行列Aと、リリース電圧を示すZX行列Bと、圧電素子の稼働量を示すZX行列Cとを生成する。ZX行列A,Bはいずれも、一つのY列上の複数の観測点のそれぞれにおける電圧の経時変化を示す電圧行列の一例である。ZX行列Cは、一つのY列上の複数の観測点のそれぞれにおける稼働量の経時変化を示す稼働量行列の一例である。二つのZX行列AおよびCによって、アプローチ電圧に関する電圧-稼働量曲線(F-Z曲線)を表すことができる。また、二つのZX行列BおよびCによって、リリース電圧に関する電圧-稼働量曲線(F-Z曲線)を表すことができる。電圧-稼働量曲線(F-Z曲線)とは、走査型プローブ顕微鏡(例えばAFM30)の圧電素子の稼働量Z(単位はnm(ナノメートル))と、該走査型プローブ顕微鏡の検出器によって検出される電圧F(単位はV(ボルト))との関係を示す曲線である。ZX行列A、B、およびCの生成は、電圧-稼働量曲線の取得を意味する。
一つの観測点において、N個のアプローチ電圧と、N個のリリース電圧と、N個の稼働量とが得られたとする。また、Y列上にM個の観測点が存在すると仮定する。この場合、行列生成部13はそれぞれのY列について、M個の観測点のそれぞれにおけるアプローチ電圧を示すN×M行列(ZX行列A)と、M個の観測点のそれぞれにおけるリリース電圧を示すN×M行列(ZX行列B)と、M個の観測点のそれぞれにおける稼働量を示すN×M行列(ZX行列C)とを生成する。個々のアプローチ電圧をfvとし、個々のリリース電圧をfvとし、個々の稼働量をzとすると、一つのY列についてのZX行列A,B,Cはそれぞれ以下のように表される。
Figure 0007067686000001
Figure 0007067686000002
Figure 0007067686000003
ZX行列AおよびCの対応し合う行列成分の組合せによって、一つのY列における複数の観測点についてアプローチ電圧と圧電素子の稼働量との関係が分かる。ZX行列BおよびCの対応し合う行列成分の組合せによって、一つのY列における複数の観測点についてリリース電圧と圧電素子の稼働量との関係が分かる。
16個のY列が存在し、それぞれのY列が64個の観測点によって構成され、それぞれの観測点におけるアプローチ電圧、リリース電圧、および稼働量のそれぞれが1024個の数値で表されるとする。この場合、行列生成部13は、アプローチ電圧、リリース電圧、および稼働量のそれぞれについて、16個の1024行×64列のZX行列を生成する。
行列生成部13はアプローチ電圧、リリース電圧、および稼働量のそれぞれについてのZX行列に、Y列を特定するための識別子(例えば列番号)を関連付ける。この処理によって、表面分析システム10は個々のZX行列がどのY列に対応するかを特定することができる。
ステップS13では、行列生成部13が検出電圧を示す個々のZX行列(電圧行列)、すなわち個々のZX行列AおよびBについてゼロ点調整を実行する。
行列生成部13は、アプローチ電圧を示すZX行列Aの特定の1列を基準行として設定する。そして、行列生成部13は、すべての行から基準行を減ずる。したがって、基準行の行列成分はすべて0になる。この減算がゼロ点調整である。行列生成部13はZ方向において最も高い位置に対応する行を基準行として設定してもよい。一例として、1行目が基準行である場合には、行列生成部13はZX行列Aに対してゼロ点調整を実行して、ZX行列Aを下記のZX行列A´に変換する。
Figure 0007067686000004
同様に、行列生成部13はリリース電圧を示すZX行列Bの特定の1列を基準行として設定し、すべての行から基準行を減ずる。一例として1行目が基準行である場合には、行列生成部13はZX行列Bに対してゼロ点調整を実行して、ZX行列Bを下記のZX行列B´に変換する。
Figure 0007067686000005
行列生成部13はすべてのZX行列AおよびBについてこのような減算を実行する。このゼロ点調整(変換)によって、Z方向において最も高い位置に対応する電圧(すなわち、稼働量の最大値に対応する電圧)が、Y列上の複数の観測点において0に統一される。この結果、一つのY列における個々の観測点の電圧-稼働量曲線を共通の基準によって評価することが可能になる。
図6および図7はいずれも、電圧-稼働量曲線のゼロ点調整の一例を示す図である。図6はアプローチ電圧に関する電圧-稼働量曲線を示し、図7はリリース電圧に関する電圧-稼働量曲線を示す。これら2図のいずれも、一つのY列上の複数の観測点に対応する複数の電圧-稼働量曲線を示す。双方の図において、上のグラフはゼロ点調整を行う前の電圧-稼働量曲線を示し、下のグラフはゼロ点調整を行った後の電圧-稼働量曲線を示す。それぞれのグラフの横軸は圧電素子の稼働量であり、縦軸はオリジナルの検出電圧またはゼロ点調整後の検出電圧である。ゼロ点調整によって一つのY列における複数の電圧-稼働量曲線の比較が容易になることは、図6および図7からも明らかである。
図5に戻って、ステップS14では、算出部12が個々のZX行列に基づいて電圧-稼働量曲線(F-Z曲線)をフォースカーブ(F-D曲線)に変換する。フォースカーブとは、探針-表面間距離D(単位はnm(ナノメートル))と、AFM30の探針(カンチレバー)に作用する力F(単位はnN(ナノニュートン))との関係を示す曲線(F-D曲線)である。カンチレバーのたわみ量を、ばねたわみ量x(単位はnm)というとすると、算出部12はD=Z-xの式に従って、圧電素子の稼働量Zを探針-表面間距離Dに変換する。ばねたわみ量xは、x=(検出器の電圧F)/(光てこ感度)という式により得られる。光てこ感度の単位はnm/Vである。力Fはカンチレバーのばね定数kとばねたわみ量xとの積により得られ、従ってF=kxである。
算出部12は個々の観測点について電圧-稼働量曲線をフォースカーブに変換する。この変換によって、AFM30(走査型プローブ顕微鏡)による試料表面の測定に対応するフォースカーブが得られる。或る一つの観測点(X,Y)におけるアプローチ時の電圧-稼働量曲線は、Y列のZX行列A´の第i列に位置する行列成分の集合と、Y列のZX行列Cの第i列に位置する行列成分の集合とによって示される。算出部12はこれらのデータを用いて上記の計算を実行することで、その観測点(X,Y)におけるアプローチ時のフォースカーブ(すなわちアプローチカーブ)を算出する。観測点(X,Y)におけるリリース時の電圧-稼働量曲線は、Y列のZX行列B´の第i列に位置する行列成分の集合と、Y列のZX行列Cの第i列に位置する行列成分の集合とによって示される。算出部12はこれらのデータを用いて上記の計算を実行することで、その観測点(X,Y)におけるリリース時のフォースカーブ(すなわちリリースカーブ)を算出する。
算出部12はそれぞれのY列の各観測点についてアプローチ時のフォースカーブを算出する。行列生成部13はそれぞれのY列について、その計算結果に基づいて、アプローチにおける力を示すZX行列Dと、アプローチにおける探針-表面間距離を示すZX行列Eとを生成する。また、算出部12はそれぞれのY列の各観測点についてリリース時のフォースカーブを算出する。行列生成部13はそれぞれのY列について、その計算結果に基づいて、リリースにおける力を示すZX行列Fと、リリースにおける探針-表面間距離を示すZX行列Gとを生成する。
ZX行列DおよびFは、Y列上の複数の観測点のそれぞれにおける、探針に作用する力の経時変化を示す力行列の一例である。ZX行列EおよびGは、Y列上の複数の観測点のそれぞれにおける探針-表面間距離の経時変化を示す距離行列の一例である。ZX行列DおよびEの組合せは、各観測点でのアプローチ時のフォースカーブを示すフォースカーブ行列の一例である。ZX行列FおよびGの組合せは、各観測点でのリリース時のフォースカーブを示すフォースカーブ行列の一例である。
アプローチ時の個々の力をfnとし、リリース時の個々の電圧をfnとする。また、アプローチ時の個々の探針-表面間距離をdとし、リリース時の個々の探針-表面間距離をdとする。この場合、一つのY列についてのZX行列D,E,F,Gはそれぞれ以下のように表される。
Figure 0007067686000006
Figure 0007067686000007
Figure 0007067686000008
Figure 0007067686000009
行列生成部13は個々のZX行列D,E,F,Gに、Y列を特定するための識別子(例えば列番号)を関連付ける。この処理によって、表面分析システム10は個々のZX行列がどのY列に対応するかを特定することができる。
ステップS15では、行列生成部13が探針-表面間距離を示す個々のZX行列(距離行列)、すなわち個々のZX行列EおよびGについてゼロ点調整を実行する。
行列生成部13はZX行列Eのそれぞれの列について(すなわち、それぞれのX位置について)、該列における最小値を基準値として設定する。そして、行列生成部13は、その列のすべての行列成分から基準値を減ずる。したがって、基準値の行列成分は0になる。この減算がゼロ点調整である。第m列での最小値をdamin_mとすると、行列生成部13はZX行列Eに対してゼロ点調整を実行して、ZX行列Eを下記のZX行列E´に変換する。
Figure 0007067686000010
同様に、行列生成部13はZX行列Gのそれぞれの列について、該列における最小値を基準値として設定し、その列のすべての行列成分から基準値を減ずる。第m列での最小値をdrmin_mとすると、行列生成部13はZX行列Gに対してゼロ点調整を実行して、ZX行列Gを下記のZX行列G´に変換する。
Figure 0007067686000011
ZX行列EおよびGのいずれについても、最小値(基準値)が位置する行は個々の列(個々のX位置)において異なり得る。したがって、ZX行列AおよびBに対するゼロ点調整とは異なり、ZX行列EおよびGでは或る1行のすべての行列成分が0になるとは限らない。
行列生成部13はすべてのZX行列EおよびGについてこのような減算を実行する。このゼロ点調整(変換)によって、探針-表面間距離の最小値が、Y列上の複数の観測点において0に統一される。この結果、一つのY列における個々の観測点のフォースカーブ(力、および探針-表面間距離)を共通の基準によって評価することができる。
ステップS16では、算出部12がフォースカーブに関するZX行列の少なくとも一部(すなわち、ZX行列D,E´,F,G´の少なくとも一部)に基づいて物性量を算出する。算出される物性量の種類は限定されず、これに対応して、用いられるZX行列も限定されない。
物性量の算出の一例として、図8を参照しながら、有機材料の破断長を算出する処理を説明する。図8はその処理の一例を処理フローS160として示すフローチャートである。処理フローS160はステップS16の少なくとも一部である。本開示において、破断長とは、引力によって走査型プローブ顕微鏡(例えばAFM30)の探針に付着していた有機材料が該探針から離れたときの、試料表面から探針までの距離のことをいう。破断長は、試料表面または有機材料の物性量の一例である。Y列または観測点群における破断長の分布を求めることで、試料表面上の有機材料の存在または種類を判別することが可能である。
ステップS161では、算出部12が、リリースカーブを示す個々のZX行列について、リリースカーブ(フォースカーブ)を微分することで微分曲線を算出する。具体的には、算出部12はそれぞれのZX行列で示される各観測点について、フォースカーブ(力F)を探針-表面間距離Dによって一階微分(すなわち、dF/dD)することで微分曲線を算出する。
図9および図10はいずれも、一つの観測点におけるリリースカーブおよび対応する微分曲線の一例を示す図である。双方の図において、上のグラフはリリースカーブ(フォースカーブ)を示し、縦軸は力Fを、横軸は探針-表面間距離Dをそれぞれ示す。下のグラフは微分曲線を示し、縦軸はdF/dDを、横軸は探針-表面間距離Dをそれぞれ示す。
算出部12はそれぞれ観測点についてリリースカーブ(フォースカーブ)を微分する。或る一つの観測点(X,Y)におけるリリースカーブは、Y列のZX行列Fの第i列に位置する行列成分の集合と、Y列のZX行列G´の第i列に位置する行列成分の集合とによって示される。算出部12はこれらのデータを用いて上記の一階微分を実行することで、その観測点(X,Y)における微分曲線を計算する。算出部12はそれぞれのY列の各観測点について微分曲線を算出する。
ステップS162では、行列生成部13がそれぞれのY列について、算出された微分値dF/dDを示すZX行列H(微分値行列)を生成する。個々の微分値dF/dDをdif_fnとすると、一つのY列についてのZX行列Hは以下のように表される。
Figure 0007067686000012
或る一つの観測点(X,Y)におけるリリースカーブの微分曲線は、Y列のZX行列Hの第i列に位置する行列成分の集合と、Y列のZX行列G´の第i列に位置する行列成分の集合とによって示される。
行列生成部13は個々のZX行列Hに、Y列を特定するための識別子(例えば列番号)を関連付ける。この処理によって、表面分析システム10は個々のZX行列HがどのY列に対応するかを特定することができる。
ステップS163では、算出部12が、微分曲線に適用するピーク閾値を決定する。本開示において、ピークとは、微分値が他の部分よりも突出した針状の部分における最大値をいい、探針(カンチレバー)に掛かる力が瞬間的に大きく変動した箇所に対応する。ピーク閾値とは、微分曲線におけるピークを識別するために設定される値である。ピーク閾値は、一つの試料上に設定された観測点群の間で共通する値である。ピーク閾値の設定方法は限定されない。一例では、算出部12は微分曲線の信号対雑音比(S/N)に基づいてピーク閾値を設定してもよく、例えば、ピーク閾値を5dB(デシベル)に設定してもよい。算出部12は、微分曲線のうち、探針に有機材料が付いていない区間におけるノイズの統計値(例えば平均二乗誤差)を、S/Nの基となるノイズレベルとして算出してもよい。
ステップS164では、算出部12が個々のX位置(すなわち個々の観測点)について、ZX行列G´およびHで示される微分曲線とピーク閾値とに基づいて有機材料の破断長を算出する。
算出部12は、試料表面から、最遠のピークまでの距離を、有機材料の破断長として算出する。「最遠のピーク」とは、試料表面から最も離れたピークのことをいう。算出部12は、微分曲線においてピーク閾値よりも値が高い1以上の針状部分のそれぞれをピークとして識別する。有機材料が探針から離れる現象である破断が一つの観測点において複数回発生する場合があり、これに対応して、探針に掛かる力がそれぞれの破断において瞬間的に大きく変動し得る。したがって、一つの観測点において複数のピークが存在し得る。そのため、算出部12は、それぞれの観測点について、試料表面から最も離れたピークを最遠のピークとして識別する。算出部12は試料表面からその最遠のピークまでの距離を有機材料の破断長として算出する。図9および図10における距離Lは破断長を示す。試料表面から最遠のピークまでの距離を破断長として求めることで、その破断長以上の長さを持つ有機材料の存在を知ることができる。
図9および図10に示すような微分曲線のグラフでは、試料表面はD=0として表される。ZX行列G´では、試料表面は、観測点に対応する列において行列成分が0である位置に対応する。算出部12は個々のピークの位置をZX行列G´およびHを参照することで特定する。具体的には、算出部12はZX行列Hの或る列について、ピーク閾値よりも大きい行列成分の位置(i,j)を特定し、ZX行列G´の位置(i,j)の行列成分をピークとして特定する。算出部12は一または複数のピークを特定し得る。算出部12は特定されたピークのうちの最大値を最遠のピークとして取得する。ZX行列G´では、行列成分が0である位置が試料表面を示すので、算出部12は取得した最大値をそのまま破断長として認定すればよい。
算出部12は或る一つのY列について、そのY列に対応するZX行列G´およびHを参照して、そのY列上の複数の観測点のそれぞれでの破断長を算出する。算出部12はすべてのY列について同様の処理を実行することで観測点群での破断長の分布を得る。
図5に戻って、ステップS17では、出力部14が、観測点群についての算出結果(例えば、各観測点での破断長を含む結果)を分析データとして出力する。分析データの出力方法は限定されない。例えば、出力部14は分析データを、モニタ上に出力してもよいし、データベースなどの任意の記憶部に格納してもよいし、他のコンピュータまたは装置に送信してもよいし、印刷してもよい。分析データのデータ構造および表現形式も限定されない。例えば、分析データは数値、テキスト、グラフ、コンピュータグラフィックス、あるいはこれらの手法の任意の組合せによって表現されてもよい。
以下に分析データの様々な出力例を示す。図11は複数のY列における物性量の分布を表す分析画像の一例を示す図である。例えば、出力部14は複数のY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点に対応する物性量の分布を示す中間画像を生成する。そして、出力部14は生成された複数の中間画像を一方向に沿って連結することで一つの分析画像を生成し、この分析画像を含む分析データを出力する。図11の例では、出力部14は4個のY列について中間画像151~154を生成し、この中間画像151~154を横方向に沿って連結することで分析画像150を生成する。一つのY列は64個の観測点で構成される。したがって、分析画像150は256(=64×4)個の観測点によって網羅される範囲での物性量の分布を示す。分析画像150では、横軸がX位置であり、縦軸が高さであるグラフ上に、探針に作用した力の分布がグレースケールで表現されている。その高さは、圧電素子の稼働量からばねたわみ量を減じた値であり、ゼロ点調整されていない探針-表面間距離である。分析画像150において、高さの範囲が0~約100nmである白い部分は斥力を示し、これは試料の形状に対応する。白い部分と黒い部分との境界が試料表面に相当する。黒い部分と灰色部分との境界が、有機材料が探針から完全に離れる時点に対応する。したがって、縦軸方向におけるその二つの境界の間の距離(言い換えると、縦軸方向における黒い部分の長さ)が破断長に対応する。
図12は一つのY列における物性量の分布を表す分析画像の一例を示す図である。図12の例(a),(b)はいずれも、そのY列上の複数の観測点に対応する物性量の分布を示し、したがって、中間画像151~154と同様である。白い部分と黒い部分との境界が試料表面に相当し、黒い部分と灰色部分との境界が、有機材料が探針から完全に離れる時点に対応する。縦軸方向における黒い部分の長さが破断長に対応する。例(a)での分析画像161の縦軸は高さ(ゼロ点調整されていない探針-表面間距離)を示す。一方、例(b)での分析画像162の縦軸は探針-表面間距離(ゼロ点調整の結果)を示す。分析画像162では、ゼロ点調整によって試料の形状が除去されて、Y列の全体において試料表面の位置が揃うので、試料表面の位置が横軸方向に沿って平らに表現される。したがって、分析画像162は分析画像161よりも、Y列における物性量(例えば破断長)の分布を分かり易く示す。
図13は一つのY列における物性量の分布を表す分析画像の別の例を示す図である。図13の例(a),(b)はいずれも、そのY列上の複数の観測点に対応する物性量の分布を示し、したがって、中間画像151~154と同様である。例(a)での分析画像163はそれぞれの観測点での微分曲線をグレースケールで表し、その微分曲線における最遠のピークを点201で表す。例(b)での分析画像164はその点201の集合のみを示す。分析画像163,164の双方において、縦軸におけるゼロ位置から点201までの距離が破断長である。図13の例では探針-表面間距離のゼロ点調整が実行されているので、分析画像163,164のいずれでも、試料表面の位置が横軸方向に沿って平らに表現されている。
図14は、複数種類の分析画像を一度に表示する例を示す図である。この例では、出力部14は5種類の分析画像161~165を含む一つの画面160を表示する。分析画像161~164は図12および図13に示すものと同じである。分析画像165は一つのY列における最大破断力(凝着力)の分布を表すグラフであり、横軸はX位置を示し、縦軸は最大破断力(単位はnN)を示す。上述したように、最大破断力はAFM30のフォースモードにおいて得ることができる。
出力部14は任意の物性量を含む分析データを出力してよい。物性量の他の例として、弾性率、勾配、変形量、エネルギ散逸、アプローチ時の仕事量、リリース時の仕事量、およびノイズ情報が挙げられる。
[プログラム]
表面分析システム10を実現するための表面分析プログラムは、コンピュータシステムを取得部11、算出部12、行列生成部13、および出力部14として機能させるためのプログラムコードを含む。表面分析プログラムを作成するためのプログラム言語は限定されず、例えば、そのプログラム言語はPython、Java(登録商標)、またはC++でもよい。表面分析プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の有形の記録媒体に非一時的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、表面分析プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供された表面分析プログラムは例えば補助記憶部103に記憶される。プロセッサ101が補助記憶部103からその表面分析プログラムを読み出してそのプログラムを実行することで、上記の各機能要素が実現する。
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係る表面分析方法は、走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップであって、走査型プローブ顕微鏡が、水平面に沿ったX方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、該水平面に沿い且つ該X方向に直交するY方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かすことで、試料表面上の観測点群のそれぞれで測定を実行する、該ステップと、観測点群のそれぞれについて、試料表面を形成する有機材料の物性量をフォースカーブに基づいて算出するステップと、観測点群のそれぞれの物性量を示す分析データを出力するステップとを含む。フォースカーブを取得するステップは、X方向に沿って延びる少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいてフォースカーブを取得するステップを含む。物性量を算出するステップは、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれでのフォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成するステップと、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、フォースカーブ行列を用いて複数の観測点のそれぞれにおける物性量を算出するステップとを含む。
本開示の一側面に係る表面分析システムは少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップであって、走査型プローブ顕微鏡が、水平面に沿ったX方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、該水平面に沿い且つ該X方向に直交するY方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かすことで、試料表面上の観測点群のそれぞれで測定を実行する、該ステップと、観測点群のそれぞれについて、試料表面を形成する有機材料の物性量をフォースカーブに基づいて算出するステップと、観測点群のそれぞれの物性量を示す分析データを出力するステップとを含む処理を実行する。フォースカーブを取得するステップでは、少なくとも一つのプロセッサは、X方向に沿って延びる少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいてフォースカーブを取得する。物性量を算出するステップでは、少なくとも一つのプロセッサは、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれでのフォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成し、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、フォースカーブ行列を用いて複数の観測点のそれぞれにおける物性量を算出する。
本開示の一側面に係る表面分析プログラムは、走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップであって、走査型プローブ顕微鏡が、水平面に沿ったX方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、該水平面に沿い且つ該X方向に直交するY方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かすことで、試料表面上の観測点群のそれぞれで測定を実行する、該ステップと、観測点群のそれぞれについて、試料表面を形成する有機材料の物性量をフォースカーブに基づいて算出するステップと、観測点群のそれぞれの物性量を示す分析データを出力するステップとをコンピュータに実行させる。フォースカーブを取得するステップは、X方向に沿って延びる少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいてフォースカーブを取得するステップを含む。物性量を算出するステップは、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれでのフォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成するステップと、少なくとも一つのY列のそれぞれについて、フォースカーブ行列を用いて複数の観測点のそれぞれにおける物性量を算出するステップとを含む。
このような側面においては、X方向に沿って一列に並ぶ複数の観測点に対応する複数のフォースカーブが行列によって表現される。この行列を用いることで、その複数の観測点での有機材料の物性量を一度に算出することが可能になる。その結果、試料の表面に形成された有機材料をより効率的に分析することが可能になる。AFMなどの走査型プローブ顕微鏡では、それぞれの観測点について、フォースカーブに関連する大量のデータが得られる。したがって、観測点群の全体で見るとデータ量が非常に多い。観測点ごとに物性量を計算すると、観測点の個数の分だけ処理が繰り返されるので、計算時間が増大する。一方、その膨大なデータ量を、X,Y,Z方向に対応する3階テンソルで表現すると、計算手順が非常に煩雑になってしまう。この膨大なデータを行列によって表現してその行列を処理することで、有機材料の物性量を効率的に分析することができる。
他の側面に係る表面分析方法では、フォースカーブ行列を生成するステップが、複数の観測点のそれぞれにおける、探針に作用する力の経時変化を示す力行列と、複数の観測点のそれぞれにおける、探針と試料表面との間の距離である探針-表面間距離の経時変化を示す距離行列との組合せをフォースカーブ行列として生成するステップを含んでもよい。フォースカーブを力行列および距離行列によって表現することで、行列の構成を複雑にすることなく物性量を一度に算出することが可能になる。
他の側面に係る表面分析方法では、フォースカーブ行列を生成するステップが、複数の観測点の間で探針-表面間距離の最小値が0に統一されるように距離行列を変換するステップを含んでもよい。この変換によって、複数の観測点において試料表面の位置が0に統一される。これは、試料の形状が探針-表面間距離に及ぼす影響が解消されることを意味する。したがって、この変換(ゼロ点調整)によって、複数の観測点の間で探針-表面間距離をより容易に比較することができる。
他の側面に係る表面分析方法では、少なくとも一つのY列が複数のY列を含んでもよい。分析データを出力するステップは、複数のY列のそれぞれについて、複数の観測点に対応する物性量の分布を示す中間画像を生成し、複数の中間画像を一方向に沿って連結することで一つの分析画像を生成し、分析画像を含む分析データを出力してもよい。この分析画像は、3次元空間における物性量の分布を3次元画像ではなく2次元画像によって表現する。各Y列の物性量が2次元平面上に並んで表示されるので、物性量の分布をわかり易くユーザに提示することができる。
他の側面に係る表面分析方法では、複数の観測点のそれぞれにおける物性量を算出するステップが、フォースカーブ行列によって示される複数のフォースカーブのそれぞれについて、探針と試料表面との間の距離である探針-表面間距離によって該フォースカーブを一階微分することで微分曲線を算出するステップと、複数の観測点のそれぞれについて、該観測点に対応する微分曲線に基づいて、試料表面から、最遠のピークまでの距離を、試料表面を形成する有機材料の破断長として算出するステップとを含んでもよい。フォースカーブを探針-表面間距離によって一階微分することで、瞬間的に力が大きく変動した箇所(ピーク)を示す微分曲線が得られる。そして、この微分曲線に基づいて、表面から、最遠のピークまでの距離が、試料の表面を形成する有機材料の破断長として得られる。有機材料の特性を示す破断長がこの一連の処理により得られるので、試料の表面に形成された有機材料をより詳細に分析することができる。
他の側面に係る表面分析方法では、Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいてフォースカーブを取得するステップが、複数の観測点のそれぞれについて、走査型プローブ顕微鏡の圧電素子の稼働量と走査型プローブ顕微鏡の検出器の電圧との関係を示す電圧-稼働量曲線を取得するステップと、複数の観測点のそれぞれについて、電圧-稼働量曲線をフォースカーブに変換するステップとを含んでもよい。電圧-稼働量曲線をそのまま用いると、走査型プローブ顕微鏡のカンチレバーのたわみ量の分だけ破断長に誤差が生じてしまう(例えば、たわみ量の分だけ破断長が過大に評価されてしまう)。電圧-稼働量曲線をフォースカーブに変換することで、破断長をより正確に算出することができる。
他の側面に係る表面分析方法では、電圧-稼働量曲線をフォースカーブに変換するステップが、探針を有するカンチレバーのばねたわみ量を稼働量から減ずることで、探針と試料表面との間の距離である探針-表面間距離を算出するステップと、カンチレバーのばね定数にばねたわみ量を乗ずることで、探針に作用する力を算出するステップとを含んでもよい。このように探針-表面間距離および力を算出することで、フォースカーブを簡単な計算によって得ることができる。
他の側面に係る表面分析方法では、電圧-稼働量曲線を取得するステップが、複数の観測点のそれぞれにおける電圧の経時変化を示す電圧行列を生成するステップと、稼働量の最大値に対応する電圧が0に統一されるように電圧行列を変換するステップを含んでもよい。この変換(ゼロ点調整)によって複数の観測点の間で電圧の基準が統一され、この結果、個々の観測点の電圧-稼働量曲線を共通の基準によって評価することができる。ひいては、複数の観測点の間でフォースカーブ(または力の分布)をより容易に比較することが可能になる。
他の側面に係る表面分析方法では、試料表面が、担体によって保持されていない粉体の表面であってもよい。この場合には、粉体の表面に形成された有機材料をより効率的に分析することができる。
[変形例]
以上、本開示での実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
上記実施形態では表面分析システム10が電圧-稼働量曲線をフォースカーブに変換するが、この変換処理は必須ではない。例えば、表面分析システムは走査型プローブ顕微鏡または他のコンピュータシステムにより算出されたフォースカーブのデータを取得してもよい。
上記実施形態では表面分析システム10がピーク閾値を用いて最遠のピークを識別するが、最遠のピークを特定するための手法はこれに限定されない。表面分析システムは他の手法を用いて最遠のピークを識別することで、破断長を算出してもよい。
上記実施形態では、表面分析システム10は探針-表面間距離に関する行列と検出電圧に関する行列とに対してゼロ点調整を実行するが、このゼロ点調整は必須の処理ではない。
本開示において、「少なくとも一つのプロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、またはこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念を示す。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念を示す。
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正又は削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
コンピュータシステムまたはコンピュータ内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」および「未満」という二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
10…表面分析システム、11…取得部、12…算出部、13…行列生成部、14…出力部、30…AFM(走査型プローブ顕微鏡)、31…カンチレバー、32…探針、33…ステージ、34…圧電素子、40…試料、41…試料表面、50…観測点群、501~564…観測点。

Claims (11)

  1. 走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップであって、前記走査型プローブ顕微鏡が、水平面に沿ったX方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、該水平面に沿い且つ該X方向に直交するY方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かすことで、前記試料表面上の観測点群のそれぞれで前記測定を実行する、該ステップと、
    前記観測点群のそれぞれについて、前記試料表面を形成する有機材料の物性量を前記フォースカーブに基づいて算出するステップと、
    前記観測点群のそれぞれの前記物性量を示す分析データを出力するステップと、
    を含み、
    前記フォースカーブを取得するステップが、前記X方向に沿って延びる少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいて前記フォースカーブを取得するステップを含み、
    前記物性量を算出するステップが、
    前記少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の前記複数の観測点のそれぞれでの前記フォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成するステップと、
    前記少なくとも一つのY列のそれぞれについて、前記フォースカーブ行列を用いて前記複数の観測点のそれぞれにおける前記物性量を算出するステップとを含む、
    表面分析方法。
  2. 前記フォースカーブ行列を生成するステップが、前記複数の観測点のそれぞれにおける、前記探針に作用する力の経時変化を示す力行列と、前記複数の観測点のそれぞれにおける、前記探針と前記試料表面との間の距離である探針-表面間距離の経時変化を示す距離行列との組合せを前記フォースカーブ行列として生成するステップを含む、
    請求項1に記載の表面分析方法。
  3. 前記フォースカーブ行列を生成するステップが、前記複数の観測点の間で前記探針-表面間距離の最小値が0に統一されるように前記距離行列を変換するステップを含む、
    請求項2に記載の表面分析方法。
  4. 前記少なくとも一つのY列が複数の前記Y列を含み、
    前記分析データを出力するステップが、
    前記複数のY列のそれぞれについて、前記複数の観測点に対応する前記物性量の分布を示す中間画像を生成し、
    複数の前記中間画像を一方向に沿って連結することで一つの分析画像を生成し、
    前記分析画像を含む前記分析データを出力する、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の表面分析方法。
  5. 前記複数の観測点のそれぞれにおける前記物性量を算出するステップが、
    前記フォースカーブ行列によって示される複数の前記フォースカーブのそれぞれについて、前記探針と前記試料表面との間の距離である探針-表面間距離によって該フォースカーブを一階微分することで微分曲線を算出するステップと、
    前記複数の観測点のそれぞれについて、該観測点に対応する前記微分曲線に基づいて、前記試料表面から、最遠のピークまでの距離を、前記試料表面を形成する有機材料の破断長として算出するステップとを含む、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の表面分析方法。
  6. 前記Y列上の前記複数の観測点のそれぞれにおいて前記フォースカーブを取得するステップが、
    前記複数の観測点のそれぞれについて、前記走査型プローブ顕微鏡の圧電素子の稼働量と前記走査型プローブ顕微鏡の検出器の電圧との関係を示す電圧-稼働量曲線を取得するステップと、
    前記複数の観測点のそれぞれについて、前記電圧-稼働量曲線を前記フォースカーブに変換するステップとを含む、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の表面分析方法。
  7. 前記電圧-稼働量曲線を前記フォースカーブに変換するステップが、
    前記探針を有するカンチレバーのばねたわみ量を前記稼働量から減ずることで、前記探針と前記試料表面との間の距離である探針-表面間距離を算出するステップと、
    前記カンチレバーのばね定数に前記ばねたわみ量を乗ずることで、前記探針に作用する力を算出するステップとを含む、
    請求項6に記載の表面分析方法。
  8. 前記電圧-稼働量曲線を取得するステップが、
    前記複数の観測点のそれぞれにおける前記電圧の経時変化を示す電圧行列を生成するステップと、
    前記稼働量の最大値に対応する前記電圧が0に統一されるように前記電圧行列を変換するステップを含む、
    請求項6または7に記載の表面分析方法。
  9. 前記試料表面が、担体によって保持されていない粉体の表面である、
    請求項1~8のいずれか一項に記載の表面分析方法。
  10. 少なくとも一つのプロセッサを備え、
    前記少なくとも一つのプロセッサが、
    走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップであって、前記走査型プローブ顕微鏡が、水平面に沿ったX方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、該水平面に沿い且つ該X方向に直交するY方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かすことで、前記試料表面上の観測点群のそれぞれで前記測定を実行する、該ステップと、
    前記観測点群のそれぞれについて、前記試料表面を形成する有機材料の物性量を前記フォースカーブに基づいて算出するステップと、
    前記観測点群のそれぞれの前記物性量を示す分析データを出力するステップとを含む処理を実行し、
    前記フォースカーブを取得するステップでは、前記少なくとも一つのプロセッサが、前記X方向に沿って延びる少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいて前記フォースカーブを取得し、
    前記物性量を算出するステップでは、前記少なくとも一つのプロセッサが、
    前記少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の前記複数の観測点のそれぞれでの前記フォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成し、
    前記少なくとも一つのY列のそれぞれについて、前記フォースカーブ行列を用いて前記複数の観測点のそれぞれにおける前記物性量を算出する、
    表面分析システム。
  11. 走査型プローブ顕微鏡による試料表面の測定に対応するフォースカーブを取得するステップであって、前記走査型プローブ顕微鏡が、水平面に沿ったX方向に沿って探針を試料台に対して往復運動させながら、該水平面に沿い且つ該X方向に直交するY方向に沿って該探針を該試料台に対して一方向に動かすことで、前記試料表面上の観測点群のそれぞれで前記測定を実行する、該ステップと、
    前記観測点群のそれぞれについて、前記試料表面を形成する有機材料の物性量を前記フォースカーブに基づいて算出するステップと、
    前記観測点群のそれぞれの前記物性量を示す分析データを出力するステップと、
    をコンピュータに実行させ、
    前記フォースカーブを取得するステップが、前記X方向に沿って延びる少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の複数の観測点のそれぞれにおいて前記フォースカーブを取得するステップを含み、
    前記物性量を算出するステップが、
    前記少なくとも一つのY列のそれぞれについて、該Y列上の前記複数の観測点のそれぞれでの前記フォースカーブを示すフォースカーブ行列を生成するステップと、
    前記少なくとも一つのY列のそれぞれについて、前記フォースカーブ行列を用いて前記複数の観測点のそれぞれにおける前記物性量を算出するステップとを含む、
    表面分析プログラム。
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