以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、半導体デバイス10のスイッチング特性を評価する評価回路100の構成例を示す。評価対象の半導体デバイス10は、直列に接続された第1デバイス12および第2デバイス14を含む例を示す。図1は、第1デバイス12がダイオードであり、第2デバイス14がIGBTと逆並列接続されたダイオードとの組み合わせである例を示す。図1に示す評価回路100を用いて、第2デバイス14のターンオン動作およびターンオフ動作等を実行することにより、半導体デバイス10のスイッチング損失およびサージ電圧等を評価することができる。評価回路100は、電源110と、第1容量部120と、第2容量部130と、負荷リアクトル140と、信号供給部150と、を備える。
電源110は、直流電圧VDCを出力する直流電源である。電源110は、半導体デバイス10の両端に接続される。電源110は、例えば、第1デバイス12の一端(カソード端子)と第2デバイス14の他端(エミッタ端子)に接続され、第1デバイス12および第2デバイス14に直流電圧を供給する。この場合、第1デバイス12の他端(アノード端子)が第2デバイス14の一端(コレクタ端子)に接続される。
第1容量部120は、半導体デバイス10と並列に接続され、電源110から出力される直流電圧VDCを平滑化する。第1容量部120は、例えば、容量CDCのコンデンサである。第1容量部120は、一例として、電解コンデンサである。第2容量部130は、半導体デバイス10と並列に接続され、サージ電圧を抑制する。第2容量部130は、例えば、容量CSのコンデンサである。第1容量部120および第2容量部130は、異なる容量のコンデンサであることが望ましく、例えば、容量CDCは、容量CSよりも大きい容量である。
負荷リアクトル140は、第1デバイス12の両端に接続される。負荷リアクトル140は、一例として、インダクタンスLを有する。
信号供給部150は、半導体デバイス10に予め定められたスイッチング信号を供給する。信号供給部150は、例えば、パルス発生装置および増幅回路等を有し、第2デバイス14のゲート端子にパルス状のスイッチング信号VSを供給する。第2デバイス14は、当該スイッチング信号VSがゲート端子に供給されることにより、コレクタ端子およびエミッタ端子間の電気的な接続状態(オン状態)および切断状態(オフ状態)を切り換える。
以上の評価回路100は、スイッチング信号を第2デバイス14に供給して、半導体デバイス10をスイッチング動作させることができる。したがって、例えば、スイッチング動作中のコレクタ端子に流れるコレクタ電流icを外部の測定装置等で測定することで、第2デバイス14のスイッチング特性を取得することができる。
また、スイッチング動作中において、第1デバイス12に流れる順方向電流ifを外部の測定装置等で測定することで、第1デバイス12のスイッチング特性を評価することができる。なお、第2デバイス14のコレクタおよびエミッタの端子間電圧をVce2とし、第1デバイス12の両端電圧をVrとする。評価回路100を用いたスイッチング特性の測定について次に説明する。
図2は、評価回路100を用いて半導体デバイス10のスイッチング特性を測定した結果の一例を示す。図2は、横軸を時間、縦軸を電圧値または電流値とする。図2は、評価回路100がスイッチング信号VSにより、第2デバイス14のオン状態およびオフ状態を切り換えて、第2デバイス14にターンオン動作およびターンオフ動作させた例を示す。
スイッチング信号V
Sは、時刻t
1においてハイ電圧となり、第2デバイス14をオン状態にする。第2デバイス14のコレクタ端子およびエミッタ端子の間が導通になることにより、電源110から負荷リアクトル140を介して第2デバイス14へと電流が流れる。第2デバイス14へと流れる電流は、コレクタ電流i
cとして観測され、時刻t
1から略一定の変化率di/dtで上昇する。ここで、変化率di/dtは、次式で示される。
また、スイッチング信号VSは、時刻t2においてロー電圧となり、第2デバイス14をオフ状態にする。ここで、評価回路100は、予め定められたコレクタ電流icが流れた時点で、第2デバイス14をオフ状態に切り換えるように、時刻t1から時刻t2までの時間を設定してよい。これにより、評価回路100は、予め定められたコレクタ電流icの条件における、第2デバイス14のターンオフ動作を実行することができる。即ち、予め定められたコレクタ電流icの条件で第2デバイス14をターンオフ動作させた場合の、過渡応答を測定することができる。
なお、コレクタおよびエミッタの端子間電圧Vce2は、第2デバイス14がオフ状態の時刻t1までの時間において、直流電圧VDCと略同一の電圧となる。そして、時刻t1から時刻t2までの時間において、第2デバイス14がオン状態となるので、端子間電圧Vce2は略0Vとなる。また、第1デバイス12は、時刻t2までの時間は電流を流さないので、順方向電流ifは略0Aとなる。また、第1デバイス12の両端電圧Vrは、時刻t1までは略0Vであり、時刻t1から時刻t2までの時間において、直流電圧VDCと略同一の電圧となる。
時刻t2において、第2デバイス14がオフ状態になると、負荷リアクトル140は、流れていた電流を継続させて流すように働くので、当該負荷リアクトル140から第1デバイス12の経路に電流が環流する。したがって、第1デバイス12の順方向電流ifは、時刻t2において立ち上がり、時間と共に電流値が徐々に減少する。なお、第1デバイス12の時刻t2における順方向電流ifの立ち上がりを、順回復動作とする。そして、第1デバイス12に順方向電流ifが流れているうちに、第2デバイス14をオン状態とすることで、当該第1デバイス12の逆回復動作と、第2デバイス14のターンオン動作を実行することができる。
ここで、評価回路100は、予め定められた順方向電流ifが流れた時点で、第2デバイス14をオン状態に切り換えるように、時刻t2から時刻t3までの時間を設定してよい。これにより、評価回路100は、予め定められた順方向電流ifの条件における、第1デバイス12の逆回復動作および第2デバイス14のターンオン動作を実行することができる。即ち、予め定められた順方向電流ifの条件で第2デバイス14をターンオン動作させた場合の、第2デバイス14および第1デバイス12の過渡応答を測定することができる。
このように、スイッチング信号VSは、時刻t3において再びハイ電圧となり、第2デバイス14をオン状態にする。第2デバイス14の端子間電圧Vce2は、第2デバイス14がオフ状態の時刻t2から時刻t3までの時間において、直流電圧VDCと略同一の電圧となり、時刻t3から再び略0Vとなる。また、第1デバイス12の両端電圧Vrは、時刻t2から時刻t3までの時間において、略0Vとなり、時刻t3から再び直流電圧VDCと略同一の電圧となる。
なお、第1デバイス12の順回復動作および第2デバイス14のターンオフ動作は、同一のスイッチング信号VSで、少なくとも一部が同一の時間領域で観測できる。同様に、第1デバイス12の逆回復動作および第2デバイス14のターンオン動作も、同一のスイッチング信号VSで、少なくとも一部が同一の時間領域で観測できる。
例えば、信号供給部150が、第2デバイス14をターンオン動作させるスイッチング信号VSを第2デバイス14のゲート端子に供給した場合を考える。この場合において、第2デバイス14のコレクタ・エミッタの端子間電圧Vce2の過渡応答を検出すると、第2デバイス14のターンオン特性を観測することができる。また、第1デバイス12に流れる電流ifを検出すると、第1デバイス12の順回復特性を観測することができる。
同様に、信号供給部150が、第2デバイス14をターンオフ動作させるスイッチング信号VSを第2デバイス14のゲート端子に供給した場合を考える。この場合において、第2デバイス14のコレクタ・エミッタの端子間電圧Vce2を検出すると、第2デバイス14のターンオフ特性を観測することができる。また、第1デバイス12に流れる電流ifを検出すると、第1デバイス12の逆回復特性を観測することができる。
このように、評価回路100を用いて半導体デバイス10のスイッチング特性を測定し、例えば、予め定められた基準を満たす良品と評価された半導体デバイス10が、市場等に出荷される。しかしながら、スイッチング特性が良好な半導体デバイス10を用いて電力変換装置等を製造しても、当該電力変換装置が発生する電磁ノイズがEMC規格で定められた基準値を超えてしまうことがある。この場合、電力変換装置が完成した後に、EMCフィルタ設計、半導体デバイス10を含む部品の再選定、基板アートワーク、および構造検討等を再度実施しなければならず、膨大な手間とコストが発生してしまう。
また、半導体デバイス10のスイッチング特性を評価すると共に、半導体デバイス10の放射ノイズを簡易的に評価することも知られている。この場合、評価結果を比較することで、半導体デバイス10の放射ノイズの相対変化は予測することができるが、放射電界強度を精度よく予測することは困難であった。
そこで、本実施形態に係る評価装置200は、半導体デバイス10のスイッチング特性を評価すると共に、放射アンテナの放射効率を考慮して、当該半導体デバイス10の放射電界強度を評価する。これにより、当該半導体デバイス10を搭載した電力変換装置等が発生する放射電界強度を、当該電力変換装置が完成する前に精度よく推定することができ、製造過程における手間とコストを低減させる。このような評価装置200について、次に説明する。
図3は、本実施形態における評価装置200の構成例を、評価対象の半導体デバイス10と共に示す。評価装置200は、一部が図1に示す評価回路100と同様の構成である。したがって、評価装置200を用いることで、図1および図2で説明した半導体デバイス10のスイッチング特性を評価することができる。評価装置200は、電源110と、第1容量部120と、第2容量部130と、負荷リアクトル140と、信号供給部150と、検出部220と、評価指標出力部230と、記憶部240と、表示部500と、を備える。
図3に示す電源110、第1容量部120、第2容量部130、負荷リアクトル140、および信号供給部150は、図1で説明した電源110、第1容量部120、第2容量部130、負荷リアクトル140、および信号供給部150の動作と略同一なので、同一の符号を付している。したがって、ここではこれらの説明を省略する。
なお、図3において、評価対象の半導体デバイス10は、直列に接続された第1デバイス12および第2デバイス14を含む例を示す。ここで、第1デバイス12および第2デバイス14は、例としてMOSFETまたはIGBT等の半導体スイッチである。図3は、第1デバイス12および第2デバイス14がIGBTで、それぞれにダイオードが逆並列に接続されている例を示す。即ち、負荷リアクトル140は、第1デバイス12の一端および他端の間に接続され、第1デバイス12の一端はコレクタ端子であり、他端はエミッタ端子である。
検出部220は、半導体デバイス10の電圧変化を検出する。検出部220は、例えば、スイッチング動作に応じて変化する半導体デバイス10の電圧変動を検出する。検出部220は、例えば、第1デバイス12および第2デバイス14の間の電圧変化を観測する。検出部220は、例えば、電圧プローブを有し、当該電圧プローブを第1デバイス12および第2デバイス14の間に、電気的に接続する。
これに代えて、検出部220は、第1デバイス12の一端および他端の間の、コレクタ・エミッタの端子間電圧Vce1、第2デバイス14の一端および他端の間の、コレクタ・エミッタの端子間電圧Vce2のいずれか一方の端子間電圧を検出してもよい。このように、検出部220は、第1デバイス12および第2デバイス14の主端子間に生じる電圧変化を測定してよい。検出部220は、例えば、電圧プローブを有し、当該電圧プローブを第1デバイス12または第2デバイス14の一端および他端に、電気的に接続する。
評価指標出力部230は、検出部220の検出結果に基づき、半導体デバイス10の放射電界強度の評価指標を出力する。評価指標出力部230は、検出部220が検出した電圧変化の周波数成分を算出してよい。評価指標出力部230は、例えば、オシロスコープ等の時間ドメインの測定器を有し、時間ドメインの測定結果をフーリエ変換して、周波数ドメインのデータに変換する。これに代えて、評価指標出力部230は、スペクトラムアナライザ等の周波数ドメインの測定を実行する測定器を有し、周波数ドメインの測定結果を出力してもよい。
評価指標出力部230は、一の周波数に対する電圧変化の周波数成分と、当該一の周波数との積に基づく値を、放射電界強度の評価指標として出力する。言い換えると、放射電界強度の評価指標は、少なくとも1つの周波数のそれぞれについて、電圧変化における当該周波数の成分と当該周波数との積に基づく周波数成分を含む。また、放射電界強度の評価指標は、少なくとも1つの周波数のそれぞれについて、電圧変化における当該周波数の成分と、当該周波数の2乗との積に基づく周波数成分を含んでもよい。放射電界強度の評価指標については、後述する。評価指標出力部230は、算出した評価指標を記憶部240および表示部500に供給する。
記憶部240は、評価指標出力部230が出力する評価指標を記憶する。記憶部240は、例えば、当該評価装置200が評価した評価対象の半導体デバイス10と対応付けて、評価指標を記憶する。記憶部240は、一例として、当該評価装置200が評価して出力した過去の評価指標を記憶して、評価指標のデータベースとして機能してよい。なお、記憶部240は、当該評価装置200の内部および外部のいずれかに設けてよい。また、記憶部240は、ネットワーク等を介して評価装置200の本体と接続されるデータベースとすることもできる。
表示部500は、評価指標出力部230が出力する評価指標を表示する。表示部500は、例えば、評価指標を周波数軸上で表示する。表示部500は、評価指標と比較する比較指標を更に表示してもよい。
以上の本実施形態に係る評価装置200は、図1および図2で説明した半導体デバイス10のスイッチング動作を実行して、当該半導体デバイス10の放射電界強度を評価する。評価装置200は、例えば、半導体デバイス10のターンオン動作、ターンオフ動作、逆回復動作、および順回復動作等のうち少なくとも1つを実行させる。そして、検出部220は、スイッチング動作中の半導体デバイス10の主端子間に生じる電圧変化を測定する。評価指標出力部230は、検出部220が検出した電圧変化の周波数成分を算出する。
図4は、本実施形態に係る評価指標出力部230が算出した電圧変化の周波数成分の一例を示す。図4は、横軸が周波数を示し、縦軸がデシベル単位にした電圧を示す。図4は、半導体デバイス10を条件Aで駆動した場合の電圧変化を、1MHzから100MHzの周波数帯域の周波数成分に変換した例を示す。ここで、条件Aは、ターンオン動作、ターンオフ動作、逆回復動作、および順回復動作等のうちのいずれか1つでよい。
半導体デバイス10から発生する電磁ノイズを定性的に判断する目的であれば、このような周波数特性を用いてもよいが、より精度よく把握することは困難になることがあった。例えば、電圧変化の周波数成分は複数のピークを有するので、電磁ノイズが最大となる周波数を把握したい場合、複数のピーク値のいずれが最大となるかを精度よく把握することは困難である。
図4の例において、電圧変化の周波数成分は、略35MHzおよび略90MHzにピークを有する傾向を把握できる。しかしながら、半導体デバイス10を用いた装置等を実際に組み立てた場合、略35MHzおよび略90MHzのピークのどちらが最大強度となるかを予測することは困難であった。即ち、単に周波数特性を算出するだけでは、放射電界強度が最大となる周波数を精度よく予測することは困難であり、ピークが発生する周波数の位置が把握できても、低減すべきピークであるか否かを判断することは困難となることがあった。
また、図4の例は、条件Aといった1つの条件に対する半導体デバイス10の周波数特性を示すが、複数の条件に対する複数の周波数特性を評価指標出力部230が算出する場合、低減すべきピークを判断することがより困難となってしまう。そこで、本実施形態に係る評価指標出力部230は、放射アンテナの放射効率を考慮した放射電界強度の評価指標を放射エネルギーとして出力する。
例えば、半導体デバイス10を搭載するパワーエレクトロニクス機器等は、組み立てられると、開発者および設計者等の意図とは無関係に放射アンテナが形成される。電磁ノイズは、このような放射アンテナを介して放射されることになるので、当該放射アンテナの放射効率を考慮した放射電界強度Eを算出することにより、電磁ノイズの評価制度を向上させることができる。放射アンテナから放射される電磁ノイズである、放射電界強度を導出する理論式は、Maxwellの方程式から算出できる。なお、EMC規格による電磁ノイズの規制の対象は、遠方界の領域における評価となることから、次式のように算出することができる。
(数2)式は、ダイポールアンテナ放射の理論演算式である。(数2)式において、lはダイポールの線路帳[m]、μ0は真空の透磁率[H/m]、fは周波数[Hz]、rは測定距離[m]、Iは微小ダイポールを流れる電流[A]、xはアンテナ上の位置、βは波数[m-1]、ε0は真空の誘電率[F/m]、2πf/v=2πf(μ0・ε0)1/2、vは光速[m/s]である。また、(数3)式は、ループアンテナ放射の理論演算式である。(数3)式において、μ0は真空の透磁率[H/m]、fは周波数[Hz]、Sはループ面積[m2]、Iはループ経路を流れる電流[A]、vは光速[m/s]、rは測定距離[m]である。
(数2)式および(数3)式は、いずれも電流Iによって放射電界強度Eを算出できることを示し、電圧には直接依存していないことがわかる。ここで、アンテナ放射を決定する電流Iを、アンテナ電流とする。以上より、放射電界強度の評価指標である放射エネルギーは、経路のインピーダンスに応じてノイズ源となる電圧からアンテナ電流Iへと変換され、当該アンテナ電流Iから(数2)式または(数3)式に基づき、算出できることがわかる。
なお、経路インピーダンスおよび放射アンテナは、半導体デバイス10を搭載するパワーエレクトロニクス機器に形成される回路毎に異なる。しかしながら、半導体デバイス10のノイズ源電圧の大小を評価する場合、経路インピーダンスおよび放射アンテナを略一定の値として近似してもよい。例えば、経路インピーダンスを1とすれば、ノイズ源電圧およびアンテナ電流は、略同一の値として取り扱うことができる。
また、アンテナ形状に関するパラメータ(面積Sおよび長さl)と、測定距離rとを、略一定の値とすると、(数2)式の右辺はアンテナ電流Iおよび周波数fの積に比例すること、(数3)式の右辺はアンテナ電流Iと周波数fの2乗との積に比例することがわかる。したがって、(数2)式のダイポールアンテナ放射の場合、放射エネルギーは、ノイズ源電圧および周波数fの積とすることができる。また、(数3)式のループアンテナ放射の場合、放射エネルギーは、ノイズ源電圧と周波数fの2乗との積とすることができる。
このように、本実施形態に係る評価指標出力部230は、半導体デバイス10を搭載する機器または装置等にダイポールアンテナ放射が支配的となる放射アンテナが形成される場合、(数2)式に基づく評価指標を放射エネルギーとして算出して出力する。即ち、評価指標出力部230は、少なくとも1つの周波数のそれぞれについて、電圧変化における当該周波数の成分と当該周波数との積に基づく周波数成分を含む放射エネルギーを、放射電界強度の評価指標を出力する。
図5は、本実施形態に係る評価指標出力部230が出力する放射エネルギーの第1例を示す。図5は、横軸が周波数を示し、縦軸がデシベル単位にした放射エネルギーを示す。図5は、評価指標出力部230が図4に示す電圧変化の周波数成分から放射エネルギーを算出した結果の一例を示す。即ち、図5は、図4に示す電圧変化の周波数成分をV(f)とすると、評価指標出力部230がC1・f・V(f)を算出した結果を示す。ここで、C1は、予め定められた係数であり、図5の場合、一例として、C1=1としている。
半導体デバイス10が搭載されたパワーエレクトロニクス機器等は、入出力ケーブル等にダイポールアンテナが形成され、ダイポール放射が支配的となる傾向にある。この場合、評価指標出力部230は、(数2)式に基づく評価指標を出力することにより、当該ダイポールアンテナから放射される放射電界強度の傾向を把握することができる。図5の例からは、例えば、30MHzを超える帯域において、略35MHzに発生するピークが最大の放射電界強度になることがわかる。また、略35MHzに発生するピークは、略90MHzに発生するピークよりも8dB程度大きくなることも確認できる。
このように、本実施形態の評価装置200は、放射アンテナの放射効率まで考慮しているので、より正確に放射電界強度を評価することができ、放射電界強度が最大となる周波数を精度よく予測できる。したがって、評価装置200は、半導体デバイス10をパワーエレクトロニクス機器等に搭載する前であっても、放射電界強度の傾向を把握することができる。例えば、図5の例の場合、電磁ノイズの規格を満足すべく、略35MHzに発生するピークを低減させるという方針を定めることができ、効率的に半導体デバイス10および当該半導体デバイス10を搭載する機器等を開発および/または製造することができる。
図6は、本実施形態に係る評価指標出力部230が出力する放射エネルギーの第2例を示す。図6は、図5と同様に、横軸が周波数を示し、縦軸がデシベル単位にした放射エネルギーを示す。図6は、評価指標出力部230が異なる3つの条件で半導体デバイス10を駆動した場合に対応する、放射エネルギーを算出した結果の一例を示す。即ち、図6は、条件A、条件B、および条件Cで取得された電圧変化の周波数成分をVA(f)、VB(f)、およびVC(f)とすると、評価指標出力部230がC1・f・VA(f)、C1・f・VB(f)、およびC1・f・VC(f)をそれぞれ算出した結果を示す。
図6の放射エネルギーの傾向より、30MHzを超える帯域において、条件Cが最も大きな放射電界強度を略30MHzで発生させることがわかる。また、条件Aは、略35MHzにおいて放射電界強度が最大となるが、条件Cの最大値と比較して、略4dB小さくなることがわかる。また、条件Bは、略60MHzを超える帯域において放射電界強度のピークを発生するものの、30MHzを超える帯域において、他の条件よりも放射電界強度が小さく、最も規制を満足しやすい条件であることがわかる。
以上のように、本実施形態に係る評価装置200は、異なる条件において発生する放射エネルギーをそれぞれ算出して比較することで、半導体デバイス10を搭載する機器等からの電磁ノイズの発生条件、周波数、および出力値の相対的な差等をより正確に判断できる。なお、評価装置200が比較する条件は、半導体デバイス10の駆動条件に限定されることはない。評価装置200は、異なる半導体デバイス10から取得した電圧変化から評価指標をそれぞれ算出して比較してよい。また、評価装置200は、実際に半導体デバイス10を搭載した機器から計測された放射電界強度と比較してもよい。
以上の説明において、半導体デバイス10を搭載する機器または装置等にダイポールアンテナ放射が支配的となる放射アンテナが形成される場合について説明した。これに代えて、半導体デバイス10を搭載する機器または装置等にループアンテナ放射が支配的となる放射アンテナが形成される例について次に説明する。この場合、評価指標出力部230は、(数3)式に基づく評価指標を算出して出力する。即ち、評価指標出力部230は、少なくとも1つの周波数のそれぞれについて、電圧変化における当該周波数の成分と当該周波数の2乗との積に基づく周波数成分を含む放射エネルギーを出力する。
図7は、本実施形態に係る評価指標出力部230が出力する放射エネルギーの第3例を示す。図7は、横軸が周波数を示し、縦軸がデシベル単位にした放射エネルギーを示す。図7は、評価指標出力部230が図4に示す電圧変化の周波数成分と(数3)式とに基づき、放射エネルギーを算出した結果の一例を示す。即ち、図7は、図4に示す電圧変化の周波数成分をV(f)とすると、評価指標出力部230がC2・f2・V(f)を算出した結果を示す。ここで、C2は、予め定められた係数であり、図7の場合、一例として、C2=1としている。
また、図7は、評価指標出力部230が異なる3つの条件で半導体デバイス10を駆動した場合に対応する、放射エネルギーを算出した結果の一例を示す。即ち、図7は、条件A、条件B、および条件Cで取得された電圧変化の周波数成分をVA(f)、VB(f)、およびVC(f)とすると、評価指標出力部230がC2・f2・VA(f)、C2・f2・VB(f)、およびC2・f2・VC(f)をそれぞれ算出した結果を示す。
図7は、図6と比較すると、各条件における放射エネルギーのピークの値等が変化していることがわかる。したがって、EMC規格等の規制を満足するように、低減すべき周波数および放射電界強度の値は、ダイポールアンテナ放射が支配的な機器と、ループアンテナ放射が支配的な機器とでは異なることがある。そこで、評価装置200は、機器の特性に応じた放射エネルギーの評価指標を算出して出力してよい。なお、評価装置200は、使用者およびオペレータ等であるユーザから、ダイポールアンテナ放射およびループアンテナ放射のいずれが支配的であるかの入力を受け取ってよい。また、評価装置200は、ダイポールアンテナ放射に基づく評価指標、およびループアンテナ放射に基づく評価指標の2つの評価指標を出力してもよい。
以上の本実施形態に係る評価装置200は、評価指標出力部230が出力する評価指標を表示部500が表示する例を説明した。これに加えて、表示部500は、放射エネルギーと予め定められた比較指標とを、周波数軸上で表示してよい。比較指標は、評価装置200が過去に算出した評価指標であってよく、これに代えて、放射電界強度の規制値等であってもよい。
図8は、本実施形態に係る表示部500が表示する放射エネルギーおよび比較指標の第1例を示す。図8は、図5等と同様に、横軸が周波数を示し、縦軸がデシベル単位にした放射エネルギーを示す。図8は、条件Dにおいて評価指標出力部230が出力する評価指標と、放射電界強度の規制値を示す比較指標とを、表示部500が周波数軸上で表示した例を示す。
図8に示す放射電界強度の規制値は、30MHzから230MHzの帯域の規制値と比較して、230MHzを超える規制値の方が10dB程度大きい例を示す。したがって、放射エネルギーが略300MHzにおいて増加する傾向にあっても、当該放射電界強度の規制値を満たすことがわかる。このように、表示部500が比較指標と共に放射エネルギーを表示することにより、ユーザは、電磁ノイズの評価を簡便に実行することができる。
図9は、本実施形態に係る表示部500が表示する放射エネルギーおよび比較指標の第2例を示す。図9は、図8と同様に、横軸が周波数を示し、縦軸がデシベル単位にした放射エネルギーを示す。図9は、条件Dにおける評価指標出力部230が出力する評価指標と、放射電界強度の規制値を示す比較指標とを、表示部500が略同一のスケールで表示した例を示す。また、図9は、表示部500が230MHzを超える帯域の評価指標および比較指標を、それぞれ略10dB低減させるようにシフトした例を示す。
図8に示す放射電界強度の規制値は、30MHzから230MHzの帯域の規制値と比較して、230MHzを超える規制値の方が10dB程度大きいので、表示部500によるシフト処理により、比較指標は見かけ上、略一定の値となる。即ち、図9において、比較指標が略一定の値となることがわかる。また、図9において、放射電界強度の評価指標が、230MHzを超える帯域において、-10dBシフトしていることもわかる。このように、表示部500が比較指標に応じて放射電界強度の評価指標をシフトさせることにより、ユーザは、比較指標および評価指標の比較を容易に実行することができる。特に、比較指標を略一定の値となるようにシフトすることで、ユーザは、規制値を満たすか否かを容易に判断できる。
以上の本実施形態に係る評価装置200は、放射アンテナの放射効率を考慮して、放射電界強度の評価指標を出力する例を説明した。これに加えて、評価装置200は、評価指標を導出する式の係数を定めて、放射電界強度の絶対値を評価してもよい。評価装置200は、例えば、半導体デバイス10を実際に搭載した装置の放射電界強度の測定値等に基づき、係数C1、C2等を定めてよい。また、評価装置200は、経路インピーダンスの値等を、測定値等に応じて定めてもよい。これにより、評価装置200は、放射電界強度の絶対値の傾向を評価することができる。
また、評価装置200は、過去に出力した評価指標と比較することにより、放射電界強度の傾向を評価してもよい。評価装置200は、異なる半導体デバイスのそれぞれから出力した評価指標を比較してよい。このような評価装置200について、次に説明する。
図10は、本実施形態における評価装置200の第1変形例を、評価対象の半導体デバイス10と共に示す。本変形例の評価装置200において、図3に示された本実施形態に係る評価装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。本変形例の評価装置200は、比較部250と、評価部260とを更に備える。
比較部250は、評価指標出力部230が出力した評価指標と、記憶部240に記憶された半導体デバイス10とは異なる基準デバイスに対する過去の評価指標と、を比較する。ここで、半導体デバイス10が、基準デバイスを改良したデバイスである場合、比較部250は、改良前の基準デバイスの評価指標と、改良後の半導体デバイス10の評価指標とを比較する。
評価部260は、比較部250の比較結果に応じて、半導体デバイス10の放射エネルギーの相対的な強度変化を評価する。評価部260は、評価結果を表示部500に供給する。評価部260は、さらに外部のデータベース等に評価結果を供給してもよい。また、評価部260は、評価結果をデータシート等の予め定められた形式の出力としてもよい。
以上の本変形例に係る評価装置200は、図1および図2で説明した半導体デバイス10のスイッチング動作を実行して、当該半導体デバイス10の放射ノイズを評価する。評価装置200による半導体デバイス10の評価動作について、次に説明する。
図11は、第1変形例に係る評価装置200の動作フローを示す。評価装置200は、図11に示すS410からS460の動作を実行して、評価対象の半導体デバイス10の放射エネルギーを評価する。
まず、検出部220の電圧プローブが電気的に接続された半導体デバイス10に、スイッチング動作を実行させる(S410)。例えば、信号供給部150は、図2に示すスイッチング信号VSを第2デバイス14のゲート端子に供給して、第1デバイス12の順回復動作と逆回復動作、および第2デバイス14のターンオン動作とターンオフ動作といったスイッチング動作を実行させる。
そして、半導体デバイス10のスイッチング動作中に、当該半導体デバイス10の主端子間に生じる電圧変化を検出部220が測定する(S420)。検出部220は、第1デバイス12および第2デバイス14のコレクタ端子とエミッタ端子間の電圧変化、または、第1デバイス12もしくは第2デバイス14のいずれか一方の電圧変化を検出する。
次に,電圧変化の周波数成分を算出する(S430)。評価指標出力部230は、例えば、検出部220が検出した半導体デバイス10の電圧変化、即ち電圧波形を周波数変換して、周波数成分を算出する。また、評価指標出力部230は、スペクトラムアナライザ等の周波数ドメインの計測装置を有し、電圧変化の周波数成分を観測してもよい。
次に、電圧変化の周波数成分に基づき、半導体デバイス10の放射エネルギーを出力する(S440)。評価指標出力部230は、例えば、算出した電圧変化の周波数成分V(f)に、周波数fを乗じた結果を、評価指標として出力する。また、評価指標出力部230は、算出した電圧変化の周波数成分V(f)に、周波数fの2乗を乗じた結果を、評価指標として出力してもよい。
ここで、評価指標は、一例として、30MHzから1GHzといった、予め定められた周波数帯域における算出結果である。評価指標出力部230は、記憶部240に評価指標を出力して記憶させる。また、評価指標出力部230は、比較部250に当該評価指標を供給する。また、評価指標出力部230は、当該評価指標を半導体デバイス10のデータシートの一部として出力してもよい。なお、図3で説明した評価装置は、S410からS440まで当該動作フローを実行してから、表示部500に評価指標を供給して、評価指標を表示させてよい。
次に、半導体デバイス10に対して出力した評価指標と、半導体デバイス10とは異なる基準デバイスに対して過去に出力した評価指標と、を比較する(S450)。例えば、比較部250は、記憶部240から過去の評価指標を読み出し、評価指標出力部230が出力した評価指標と、過去の評価指標とを比較する。比較部250は、一例として、予め定められた周波数帯域における評価指標の差分スペクトルを算出する。
次に、比較結果に応じて、半導体デバイス10の放射エネルギーの相対的な強度変化を評価する(S460)。評価部260は、例えば、差分スペクトルを相対的な強度変化としてよい。また、評価部260は、差分スペクトルにおける予め定められた周波数に対応する値を、相対的な強度変化としてよい。また、評価部260は、差分スペクトルにおいて、予め定められた複数の周波数に対応する値の平均値を、相対的な強度変化としてよい。
評価部260は、相対的な強度変化を、放射エネルギーの評価結果として出力する。評価部260は、半導体デバイス10のスイッチング動作の種類毎に、評価結果を出力してよい。一例として、基準デバイスが過去に装置等に搭載したデバイスの場合、相対的な強度変化は、半導体デバイス10を当該装置等に搭載することによって変化する相対的な放射電界強度の指標となる。また、基準デバイスが半導体デバイス10と略同一のデバイスの場合、相対的な強度変化は、デバイスの製造ばらつきまたは継時変化、デバイスが実装される構造の相違等の指標となる。
表示部500は、相対的な強度変化を周波数軸上に表示してよい。これに代えて、表示部500は、評価指標出力部230が出力した評価指標と、過去の評価指標とを表示してもよい。この場合、表示部500は、予め定められた比較指標を更に表示してもよい。また、表示部500は、相対的な強度変化の表示と評価指標の表示とを切り換えて表示してもよい。また、表示部500は、相対的な強度変化の表示と評価指標の表示とを重ねて表示してもよい。
本変形例の評価装置200は、以上の動作フローにより、半導体デバイス10の放射エネルギーを評価して出力することができる。なお、以上の評価装置200は、過去の評価指標との差分である、相対的な強度変化を評価結果として出力する例を説明したが、これに限定されることはない。評価装置200は、半導体デバイス10が搭載された機器から放射される放射電界強度の測定結果と、図11のフローによって算出される相対的な強度変化とに基づき、当該機器の測定条件とは異なる条件における放射電界強度を予測してもよい。
例えば、S420における測定する段階は、基準条件および基準条件とは異なる第1条件において、それぞれ電圧変化を測定する。そして、S430における電圧変化の周波数成分を算出する段階は、基準条件および第1条件における電圧変化を、周波数特性にそれぞれ変換する。そして、S440における評価指標を出力する段階は、基準条件および第1条件において、放射エネルギーをそれぞれ出力する。そして、S450における評価指標を比較する段階において、基準条件および第1条件の放射エネルギーの差分を算出する。なお、評価指標の差分は、基準条件および第1条件の評価指標に基づく係数として算出されてよい。
ここで、本変形例の評価装置200は、半導体デバイス10が搭載された機器から放射される放射電界強度の測定結果を取得する。評価装置200は、予め、機器からの放射電界強度の測定結果を取得してもよく、これに代えて、評価指標を算出してから機器からの放射電界強度の測定結果を取得してもよい。評価装置200は、基準条件において測定された放射電界強度の基準評価結果を取得する。
次に、評価装置200は、取得した基準評価結果に評価指標に基づく係数を適用して、第1条件における放射電界強度の評価結果を予測する。評価部260は、基準評価結果に評価指標に基づく係数を加算することにより、第1条件における機器から放射される放射電界強度を予測してよい。ここで、一例として、基準評価結果は、過去に基準デバイスを搭載した機器からの測定結果でよい。即ち、基準条件は、基準デバイスをスイッチング動作させた条件でよい。
そして、第1条件は、基準デバイスとは異なるデバイスをスイッチング動作させた条件でよい。例えば、第1条件は、基準デバイスから改良されたデバイスをスイッチング動作させた条件でよい。これにより、本変形例の評価装置200は、改良されたデバイスを機器に搭載する前に、改良されたデバイスを搭載した機器から測定される放射電界強度を予測することができる。
以上の本実施形態に係る評価装置200は、半導体デバイス10のターンオン動作、ターンオフ動作、逆回復動作、および順回復動作を実行して、得られたスイッチング電圧波形の周波数特性に基づき、放射エネルギーを評価することを説明した。なお、ターンオン動作、ターンオフ動作、逆回復動作、および順回復動作に対応して得られるスイッチング電圧波形の周波数特性を、それぞれ、ターンオン特性、ターンオフ特性、逆回復特性、および順回復特性とする。
ここで、評価装置200によるスイッチング電圧波形の周波数特性は、スイッチング動作に応じて電圧が異なる結果が得られる。特に、放射ノイズの規制対象となる30MHz以上の周波数において、逆回復特性は、他と比較してより大きい電圧となることがある。そこで、評価装置200は、少なくとも半導体デバイス10の逆回復動作を含むスイッチング動作を実行して、評価指標を出力することが望ましい。
また、4つの特性のうち、少なくとも2つの特性がわかれば、他の特性について類推できる場合がある。したがって、評価装置200は、半導体デバイスのターンオン動作、ターンオフ動作、逆回復動作、および順回復動作のうち、少なくとも2つの動作を含むスイッチング動作を実行して、評価指標を出力することが望ましい。なお、この場合、少なくとも2つの動作のうちの1つの動作が、逆回復動作であることがより望ましい。
また、4つの特性のうち、ターンオン特性が、他と比較して逆回復特性の次に大きい電圧となることがある。そこで、評価装置200は、少なくとも半導体デバイス10の逆回復動作およびターンオン動作を含むスイッチング動作を実行して、評価指標を出力することがより望ましい。以上のように、信号供給部150は、半導体デバイス10のターンオン動作、ターンオフ動作、逆回復動作、および順回復動作のうち、1または少なくとも2つの動作を実行させるスイッチング信号を供給してよい。これらにより、評価装置200は、評価時間を短縮することができ、また、評価の手間等を省くことができる。
以上の本実施形態に係る評価装置200は、直列に接続された第1デバイス12および第2デバイス14の間の電圧変化を観測する例を説明した。これに加えて、または、これに代えて、評価装置200は、第1デバイス12および第2デバイス14の電圧変化を観測してもよい。即ち、検出部220は、第1デバイス12の一端と、第2デバイス14の他端とに、電気的に接続され、第1デバイス12および第2デバイス14の両端電圧の電圧変化を検出する。
このような、第1デバイス12および第2デバイス14の両端電圧は、電源110が供給する直流電圧VDCに、スイッチング動作に応じた高周波変動成分ΔVDCが重畳された波形となる。評価装置200は、当該高周波変動成分ΔVDCを観測して、半導体デバイス10の放射エネルギーを評価してもよい。
なお、半導体デバイス10をターンオン動作させて高周波変動成分ΔVDCを観測した場合、第1デバイス12の逆回復特性および第2デバイス14のターンオン特性が重畳された電圧変化が観測される。即ち、この場合、高周波変動成分ΔVDCは、第1デバイス12の逆回復特性および第2デバイス14のターンオン特性のうち、より電圧が大きい方の特性と相関があることになる。
同様に、半導体デバイス10をターンオフ動作させて高周波変動成分ΔVDCを観測した場合、第1デバイス12の順回復特性および第2デバイス14のターンオフ特性が重畳された電圧変化が観測される。即ち、この場合、高周波変動成分ΔVDCは、第1デバイス12の順回復特性および第2デバイス14のターンオフ特性のうち、より電圧が大きい方の特性と相関があることになる。
したがって、評価装置200は、例えば、半導体デバイス10をターンオン動作およびターンオフ動作させて高周波変動成分ΔVDCを1回ずつ観測することで、4つのスイッチング特性のうち、より電圧が大きい2つのスイッチング特性を観測することができる。また、当該高周波変動成分ΔVDCの測定は、DC成分を除く周波数特性の観測なので、ACカップリングによる計測または、検出部220および評価指標出力部230の間にハイパスフィルタを挿入することで、容易にΔVDCの成分を抽出できる。したがって、評価装置200は、S/Nおよびダイナミックレンジを大きくして、高周波変動成分ΔVDCを測定できる。
以上の本実施形態に係る評価装置200は、スイッチング動作中の半導体デバイス10の電圧変化を観測することを説明した。ここで、半導体デバイス10の浮遊容量に流れる電流が放射ノイズ源となることがある。例えば、半導体デバイス10に冷却フィンが取り付けられた場合、当該冷却フィンの一部の導電性部材と、半導体デバイス10との間に浮遊容量が形成され、この浮遊容量を流れる電流が放射ノイズを発生させる。
このような場合、評価装置200は、浮遊容量によって発生するノイズを加味した観測結果を取得することで、より正確に相対的な放射エネルギーの評価を実行できる。このような評価装置200について、次に説明する。
図12は、本実施形態に係る評価装置200の第2変形例を、評価対象の半導体デバイス10と共に示す。第2変形例の評価装置200において、図10に示された第1変形例に係る評価装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2変形例の評価装置200は、導電性部材320と、第3容量部330と、を更に備える。
導電性部材320は、半導体デバイス10の温度を調節する温度調節部の一部である。例えば、導電性部材320は、ヒータ、冷却装置、および放熱フィンのうちの少なくとも1つの一部である。また、導電性部材320は、半導体デバイス10の環境温度を安定に保つ機能を有する。したがって、導電性部材320は、直接的に半導体デバイス10に固定されることが望ましい。これにより、半導体デバイス10および導電性部材320の間の浮遊容量および接触抵抗を略一定の安定な値に保つことができる。
そして、評価装置200は、半導体デバイス10が配置される基板に固定された導電性部材320の電位を基準電位として、半導体デバイス10との間の電圧変化を測定する。例えば、検出部220の電圧プローブは、一方が導電性部材320に、他方が第1デバイス12および第2デバイス14の間に、それぞれ電気的に接続され、第2デバイス14のコレクタおよびエミッタの端子間電圧Vce2の変化を検出する。また、検出部220の電圧プローブは、一方が導電性部材320に、他方が第1デバイス12のコレクタ端子側の一端に、それぞれ電気的に接続され、第1デバイス12および第2デバイス14の両端電圧の電圧変化を検出してもよい。
以上のように、本変形例の評価装置200は、半導体デバイス10および導電性部材320の間の浮遊容量を安定化させる。また、導電性部材320は、温度の安定化に用いるので、表面積を大きくすることが望ましく、他の経路の浮遊容量よりも大きくすることができる。また、このような浮遊容量は、放射ノイズの原因となるコモンモード電流が流れる経路となる。したがって、評価装置200は、浮遊容量によって発生するノイズと、コモンモード電流とを安定化させて、より再現性の高い評価指標を出力することができる。
また、本変形例の評価装置200は、半導体デバイスにそれぞれ並列に接続される複数の容量部を備え、複数の容量部のうち、少なくとも1つの容量部は、直列に接続された複数の容量素子を有してよい。図12に示す評価装置200は、第3容量部330が第1容量素子332および第2容量素子334を有する例を示す。ここで、第1容量素子332および第2容量素子334の間は、基準電位340に接続される。
第3容量部330は、放射ノイズを低減させるEMCフィルタとして用いられる既知の回路である。評価装置200は、このような回路を設けることにより、半導体デバイス10が実際に搭載される回路構成に近づけ、より精度の高い評価結果を出力することができる。評価装置200は、第3容量部330に加えて、同種および/または異なる種類のEMCフィルタ等を更に設けてもよい。
以上の本実施形態に係る評価装置200は、放射アンテナの放射効率を考慮して、放射エネルギーを出力する例を説明した。そして、表示部500が、予め定められた比較指標と共に、評価指標を表示する例を説明した。これに代えて、評価装置200は、検出部220が検出した電圧変化の周波数成分を評価指標としてよい。そして、表示部500は、放射アンテナの放射効率を考慮した比較指標と共に、当該評価指標を表示してよい。
図13は、本実施形態に係る表示部500が表示する放射エネルギーおよび比較指標の第3例を示す。図13は、横軸が周波数を示し、縦軸がデシベル単位にしたノイズ源電圧を示す。即ち、図13は、表示部500が電圧変化の周波数成分を表示した例を示す。また、図13は、表示部500が比較指標に1/fを乗じた結果を、比較指標として表示した例を示す。即ち、予め定められた比較指標は、少なくとも1つの周波数のそれぞれについて、放射電界強度の規制値の周波数の成分と当該周波数との商に基づく周波数成分を含んでよい。このような表示部500の表示においても、実質的には、放射アンテナの放射効率を考慮した放射エネルギーの評価に相当し、図8に示す電磁ノイズの評価と略同一の結果が得られることがわかる。
以上のように、本実施形態に係る表示部500は、放射エネルギーの評価指標を周波数軸上で表示する例を説明したが、これに限定されることはない。表示部500は、評価指標の最大値、平均値、および最小値等を、表示してもよい。表示部500は、例えば、予め定められた周波数範囲における評価指標の最大値、平均値、および最小値等のうち少なくとも一つの値を、表形式で表示してもよい。これにより、表示部500は、複数の評価指標を比較する場合に、周波数軸上で複数の曲線が交わり合って直ちに優劣が判別できなくなることを防止できる。表示部500は、表形式の表示および周波数軸の表示を切り換えて表示できることが望ましい。また、表示部500は、表形式の表示および周波数軸の表示を重ねて表示してもよい。
また、表示部500は、評価指標および比較指標を比較して出力する場合、評価指標および比較指標の差分が予め定められた閾値を超える周波数領域に対して、他の周波数領域とは異なる形態(色、線種、背景の色、点滅表示)等で当該評価指標を表示してよい。一例として、表示部500は、当該差分が6dBを超える周波数領域が存在する場合、当該周波数領域の評価指標を赤色で表示してよい。また、表示部500は、このような閾値を複数設け、異なる閾値を超えるごとに、異なる形態で当該評価指標を表示してもよい。表示部500は、評価指標同氏を比較する場合においても、同様に表示してよい。これにより、ユーザは、差分の大きい周波数領域を容易に判断することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。