JP7063727B2 - 抗腫瘍剤、がんの治療及び/又は予防のための医薬組成物 - Google Patents
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Description
次に、本実施の形態において使用される樹脂複合体について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態において好ましく使用可能な樹脂複合体の断面模式図である。樹脂複合体100は、樹脂粒子10と白金ナノ粒子20とを備え、樹脂粒子10に複数の白金ナノ粒子20が固定化された構造を有する。
樹脂粒子10は、白金化合物イオンを吸着することが可能な置換基を構造に有するポリマー粒子であることが好ましい。特に、含窒素ポリマー粒子であることが好ましい。含窒素ポリマー中の窒素原子は、白金ナノ粒子20の前駆体であるアニオン性イオンを化学吸着しやすいため好ましい。本実施の形態では、含窒素ポリマー中に吸着した白金化合物イオンを還元し、白金ナノ粒子20を形成する為、生成した白金ナノ粒子20の一部は、内包白金ナノ粒子30または一部露出白金ナノ粒子40となる。
白金ナノ粒子20は、白金又は白金合金のナノ粒子である。ここで白金合金とは、例えば白金と白金以外の金属種からなるものである。白金合金における白金の含有量は、白金による腫瘍抑制作用の発現が見られる量であればよく、例えば白金を10重量%以上含有することが好ましく、50重量%以上含有することがより好ましい。ここで、白金以外の金属種としては、例えば金、銀、パラジウムなどが好ましく、これらの2種以上を含有する合金であってもよい。
樹脂複合体100の粒子径D1の平均値(平均粒子径)は、樹脂複合体100による細胞致死活性の発現がネクローシスという形で認められることから、細胞膜に直接的に作用することが可能な粒子径として、例えば100~700nmであることが好ましい。また、樹脂複合体100の平均粒子径が100nm未満では、例えば、白金ナノ粒子20の担持量が少なくなる傾向がある為、腫瘍抑制作用が弱くなる傾向にある。樹脂複合体100の平均粒子径は、より好ましくは、100nm以上650nm未満である。ここで、樹脂複合体100の粒子径D1は、樹脂粒子10の粒子径D2に、一部露出白金ナノ粒子40又は表面吸着白金ナノ粒子50の突出部位の長さを加えた値を意味し、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法、または遠心沈降法により測定することができる。
樹脂複合体100の製造方法は、特に限定されない。例えば、乳化重合法により製造した樹脂粒子10の分散液に、白金化合物イオンを含有する溶液を加えて、白金化合物イオンを樹脂粒子10に吸着させる(以下、「白金イオン吸着樹脂粒子」という。)。さらに、前記白金イオン吸着樹脂粒子を還元剤溶液中に加えることで、白金化合物イオンを還元して白金ナノ粒子20を生成させ、樹脂複合体100を得ることができる。
さらに還元剤溶液の温度により、白金化合物イオンの還元速度を調整することで、生成する白金ナノ粒子20の粒径をコントロールすることが出来る。
樹脂複合体100をがんの治療及び/又は予防のために用いる場合、樹脂複合体100と、薬学的に許容される担体若しくは媒体と、を含有する医薬組成物として使用することができる。薬学的に許容される担体若しくは媒体としては、使用される投薬量および濃度で患者に毒性を示さないものであれば、特に制限なく公知のものを使用可能である。担体もしくは媒体の好ましい例として、水、生理食塩水、アルコール、リン酸塩、有機酸塩などの緩衝液、低分子量ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、各種のアミノ酸、グルコース、スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、マンノース、デキストリンなどの糖や炭水化物、EDTAなどのキレート剤、ナトリウム、カリウムなどの塩形成イオン、金属錯体等を挙げることができる。
本発明の医薬組成物は、手術によって外科的に投与してもよいし、あるいは、製剤の形態で非経口的または経口的に投与してもよい。非経口的に投与する場合の剤型としては、例えば、注射剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、ローション剤等を挙げることができる。経口的に投与する場合の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、トローチ剤、及びゼリー剤等を挙げることができる。医薬組成物の好ましい剤型としては、非経口投与製剤が好ましく、より好ましくは注射剤である。また、樹脂複合体100に、標的となる腫瘍細胞に特異的な抗体を結合させておくことによって、経口的な投与や、血管からの投与なども可能である。
磁製るつぼに濃度調整前の樹脂複合体の分散液1gを入れ、70℃、3時間乾燥を行った。乾燥前後の重量を測定し、下記式により固形分濃度を算出した。
金属担持量(重量%)=[熱処理後の重量(g)/熱処理前の重量(g)]×100
ディスク遠心式粒度分布測定装置(CPS Disc Centrifuge DC24000 UHR、CPS instruments, Inc.社製)を用いて測定した。測定は、樹脂粒子又は樹脂複合体を水に分散させた状態で行った。
樹脂複合体分散液をカーボン支持膜付き金属性メッシュへ滴下して作成した基板を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM;日立ハイテクノロジーズ社製、SU-9000)により観測した画像から、任意の100個の金属ナノ粒子の面積平均径を測定した。
<樹脂粒子(ラテックスビーズ)の合成>
メチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド(1g)及び50重量%のポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート水溶液(10g)を300gの純水に溶解した後、2-ビニルピリジン(48g)及びジビニルベンゼン(2g)を加え、窒素気流下において150rpm、30℃で50分、次いで60℃で30分間撹拌した。撹拌後、18.0gの純水に溶解した2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.5g)を滴下し、150rpm、60℃で5時間撹拌した後、40℃まで空冷しながら撹拌することで、平均粒子径430nmのラテックスビーズを得た。遠心分離(13500xg、40分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、純水に再度分散させることで不純物を除去した。その後、濃度調整を行い10重量%のラテックスビーズ分散液を得た。
<白金ナノ粒子-樹脂複合体(Ptナノコンポジットビーズ)の作製>
純水130gに合成例1で得たラテックスビーズ(50g)を加えた後、400mMの塩化白金酸水溶液(55g)を加え、30℃で3時間撹拌した。その後、遠心分離(1700xg、30分)によりラテックスビーズを沈殿させ、上澄みを除去することで余分な塩化白金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、5.0重量%白金イオン吸着樹脂粒子分散液を調製した。
<金ナノ粒子-樹脂複合体(Auナノコンポジットビーズ)の作製>
純水130gに合成例1で得たラテックスビーズ(50g)を加えた後、400mMの塩化金酸水溶液(82g)を、30℃で3時間撹拌した。その後、遠心分離(1700xg、30分)によりラテックスビーズを沈殿させ、上澄みを除去することで余分な塩化金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、5.0重量%金イオン吸着樹脂粒子分散液を調製した。
細胞培養液として、Eagle's minimal essential medium(WAKO社製)に、ウシ胎児血清(10重量%)、ペニシリン(100unit/リットル)及びストレプトマイシン(100mg/リットル)を添加したものを使用し、口腔扁平上皮癌細胞株HSC-3 M3細胞(JCRB細胞バンク 細胞番号JCRB1354)を1×107cells/mlの濃度にて、細胞フラスコにて37℃、5%CO2条件下で24時間培養した。
細胞上清をアスピレート後、合成例2で得たPtナノコンポジットビーズ(450R)(細胞培養液に対する濃度:0.5mg/ml)を添加して、37℃、5%CO2条件下で48時間培養した。
背部腫瘍の計測は2日毎に行い、腫瘍体積を[(長径)×(短径)2]/2の計算式で求めた。観察開始日(0日)からの腫瘍体積の増加率を図2に示した。
次に、マウスを頸椎脱臼によって安楽死させて、腫瘍を摘出した。摘出した腫瘍組織で切片を作製し、ヘマトキシリンエオジン(HE)染色を行い、顕微鏡下で観察した。HE染色は、核が青紫色、細胞質や間質がピンク色に染色され、組織構造や細胞の形態観察に用いられる。HE染色の結果を図4Aに、摘出した組織の全体像を図4Bに示した。
Ptナノコンポジットビーズ(450R)(細胞培養液に対する濃度:0.5mg/ml)の代わりに、細胞培養液のみを添加して、37℃、5%CO2条件下で48時間培養した他は、実施例1と同様の方法で、in vivoにおける抗腫瘍増殖効果の検証を実施した。観察開始日(0日)からの腫瘍体積の増加率を図2に示した。
また、細胞培養液のみを用いた比較例1について、実施例1と同様の方法で、病理組織学的な検証を実施した。HE染色の結果を図3Aに、摘出した組織の全体像を図3Bに示した。
Ptナノコンポジットビーズ(450R)(細胞培養液に対する濃度:0.5mg/ml)の代わりに、合成例3で得たAuナノコンポジットビーズ(細胞培養液に対する濃度:0.5mg/ml)を添加して、37℃、5%CO2条件下で48時間培養した他は、実施例1と同様の方法で、in vivoにおける抗腫瘍増殖効果の検証を実施した。観察開始日(0日)からの腫瘍体積の増加率を図2に示した。
Ptナノコンポジットビーズ(450R)(細胞培養液に対する濃度:0.5mg/ml)の代わりに、合成例1で得たラテックスビーズ(細胞培養液に対する濃度:0.5mg/ml)を添加して、37℃、5%CO2条件下で48時間培養した他は、実施例1と同様の方法で、in vivoにおける抗腫瘍増殖効果の検証を実施した。観察開始日(0日)からの腫瘍体積の増加率を図2に示した。
Ptナノコンポジットビーズ(450R)(細胞培養液に対する濃度:0.5 mg/ml)の代わりに、Ptナノコロイド(ナノ白金分散液;ルネッサンス・エナジー・リサーチ社製、細胞培養液に対する濃度:0.2mg/ml)を添加して、37℃、5%CO2条件下で48時間培養した他は、実施例1と同様の方法で、in vivoにおける抗腫瘍増殖効果の検証を実施した。観察開始日(0日)からの腫瘍体積の増加率を図2に示した。
一方、Ptナノコンポジットビーズ処理群(実施例1)では、腫瘍体積の増加はほとんど確認されず、他の4群(比較例1~4)と比較して、著明な腫瘍増殖抑制効果が認められた。また、投与後のマウスの背部の観察から、Ptナノコンポジットビーズは投与部位に留まっており、局在貯留性を有していることが確認された。
一方、本発明のPtナノコンポジットビーズを添加したHSC-3 M3細胞にて腫瘍形成を行った群(実施例1)では、図4A,図4Bに示したように、Ptナノコンポジットビーズ投与によって皮下に色素の沈着が認められるが、腫瘍の形成は見られなかつた。また、組織像において、腫瘍細胞の浸潤は認められなかった。
Claims (3)
- 樹脂粒子に複数の白金ナノ粒子が固定化された構造を有する樹脂複合体を有効成分として含有し、
前記樹脂粒子が、白金化合物イオンを吸着することが可能な置換基を構造に有するポリマー粒子であり、
前記白金ナノ粒子の担持量が、前記樹脂複合体全体に対して5~70重量%の範囲内であり、
前記白金ナノ粒子の平均粒子径が80nm以下であり、
前記樹脂複合体の平均粒子径が100~700nmの範囲内である抗腫瘍剤。 - 治療対象とする腫瘍が、固形がんである請求項1に記載の抗腫瘍剤。
- 樹脂粒子に複数の白金ナノ粒子が固定化された構造を有する樹脂複合体と、
薬学的に許容される担体若しくは媒体と、
を含有し、
前記樹脂粒子が、白金化合物イオンを吸着することが可能な置換基を構造に有するポリマー粒子であり、
前記白金ナノ粒子の担持量が、前記樹脂複合体全体に対して5~70重量%の範囲内であり、
前記白金ナノ粒子の平均粒子径が80nm以下であり、
前記樹脂複合体の平均粒子径が100~700nmの範囲内であるがんの治療及び/又は予防のための医薬組成物。
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INTEGR MED RES,2017年,Vol.6,p.141-148 |
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