JP7059593B2 - 軟磁性材料、コア及びインダクタ - Google Patents

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Description

本発明は、軟磁性材料、コア及びインダクタに関する。
近年、電子機器の高密度実装化と高速処理化に伴い、インダクタにおいても小型化及び高出力化が求められているが、この小型化によって、インダクタのコア(磁性材料から成るコア)の体積が減少してしまうため、インダクタンスの低下と直流重畳特性(直流電流負荷時のインダクタンス)の悪化を招きやすくなっている。
したがって、小型化した場合でも、インダクタンスの低下と直流重畳特性の悪化を招かないコア、すなわち、高透磁率、且つ直流重畳特性にも優れた軟磁性材料が求められている。
従来の軟磁性材料に関する発明としては、例えば、特許文献1に記載の軟磁性材料、コア及びインダクタが知られている。該軟磁性材料はそれぞれ絶縁被覆されている、20μm以上50μm以下の粒径を有する第1の軟磁性金属粉末と、1μm以上10μm以下の粒径を有する第2の軟磁性金属粉末と、樹脂とを含む軟磁性材料である。そして、前記第1の軟磁性金属粉末の質量%と前記第2の軟磁性金属粉末の質量%との比は、A:Bであり、A+B=100、15≦A≦35及び65≦B≦85である。
特開2014-204108号公報
特許文献1の技術では粗粉である20μm以上50μm以下の粒径を有する第1の軟磁性金属粉末より、微粉である1μm以上10μm以下の粒径を有する第2の軟磁性金属粉末の比率が大きい構成であるため、十分に軟磁性材料の充填率を上げることができない。特許文献1と同様の構成でコアを作製したところ、透磁率が小さく、近年の小型化要求に応えることができるほどの高い透磁率と良好な直流重畳特性を得るには不十分であった。
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、高い透磁率を有し、直流重畳特性にも優れた軟磁性材料、コア及びインダクタを提供することを目的とするものである。
本発明の軟磁性材料は、軟磁性金属粉末と樹脂とを含み、前記軟磁性金属粉末は、粒子群αと粒子群βで構成され、粒子群αのピーク強度をIA、粒子群βのピーク強度をIB、粒子群αと粒子群βの間に存在する極小の強度をICとしたときに、強度比IC/IAが0.10以下、強度比IA/IBが1.2以上、3.0以下となることを特徴とする。ただし、前記軟磁性金属粉末の粒度分布において、粒子群αは最大のピーク強度を持つ粒子群であり、粒子群βは粒子群αの次に大きいピーク強度を持つ粒子群であり、粒子群αのピーク粒径PAは粒子群βのピーク粒径PBよりも大きいこととする。
すなわち、粒子群αと粒子群βの中間粒径の粒子が少ない。このため、粒子群αの大粒径粒子同士の間にできる空隙に、効率よく粒子群βの小粒径粒子を充填させることができる。また、粒子群αと粒子群βを合わせた軟磁性粒子の充填率を高くすることができる。この結果として、高い透磁率と良好な直流重畳特性を得ることができたと推察される。ただし、作用はこれに限定されない。
前記粒子群αのピーク粒径PAが60μm以下であることが好ましい。この範囲とすることで、直流重畳特性が向上し、樹脂部や空隙部の分布状態が偏析しにくい組織状態となり、試料中の組織が均一になると推察される。ただし、作用はこれに限定されない。
前記粒子群αを構成する軟磁性金属粉末は、Fe又はFeを含有する金属であり、絶縁材料で被覆されていることが好ましい。飽和磁化の高いFeまたはFeを含有する金属を用いることで、透磁率が高く、直流重畳特性が良好になる傾向が見られる。また、絶縁材料を被覆することで、直流重畳特性が良好となる傾向が見られる。なお、ここでいう被覆とは、粒子の一部または全部を覆うことを意味する。
本発明の一形態に係るコアは、前記軟磁性材料により作製されていることを特徴とする。
本発明の一形態に係るインダクタは、前記コアを備えていることを特徴とする。
本発明によれば、高い透磁率を有し、直流重畳特性にも優れた軟磁性材料、コア及びインダクタを提供することができる。
実施例8の軟磁性材料の粒度分布(頻度分布)を示す図 比較例1の軟磁性材料の粒度分布(頻度分布)を示す図 比較例3の軟磁性材料の粒度分布(頻度分布)を示す図 薄膜インダクタの内部構造を説明するための概念図である。 薄膜インダクタの外観を説明するための概念図である。
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
実施形態の軟磁性材料は、軟磁性金属粉末と樹脂を含み、前記軟磁性粉末は、粒子群αと粒子群βで構成され、粒子群αのピーク強度をIA、粒子群βのピーク強度をIB、αとβの間に存在する極小の強度をICとしたときに、強度比IC/IAが0.10以下、強度比IA/IBが1.2以上、3.0以下となることを特徴とするものである。ただし、前記軟磁性金属粉末の粒度分布において、粒子群αは最大のピーク強度を持つ粒子群であり、粒子群βは粒子群αの次に大きいピーク強度を持つ粒子群であり、粒子群αのピーク粒径PAは粒子群βのピーク粒径PBよりも大きいこととする。さらに、粒子群αと粒子群βの間に存在する極小の強度ICをもつ点をCとし、その粒径をPCとする。
ピークA、B、及び点Cは、例えば、レーザー回折・散乱法での測定によって求めた体積基準の粒度分布から判定することができ、そのピークと点からピーク粒径PA、PB、ピーク強度IA、IC、及び点Cの粒径PC、強度ICを算出することができる。
図1~3は代表的な本発明の実施形態を示した粒度分布の例である。図1は強度比IC/IAが0.10以下、強度比IA/IBが1.2以上、3.0以下であり、粒子群αの大粒径粒子同士の間にできる空隙に、効率よく粒子群βの小粒径粒子を充填させることで、粒子群αと粒子群βを合わせた軟磁性粒子の充填率を高くすることができる。図2のように強度比IC/IAが0.10より大きくなると、粒子群αと粒子群βの中間サイズの粒子が増えるので、高い充填率を得ることができない。また、強度比IA/IBが3.0より大きいと、粒子群βの小粒径粒子が不足して空隙ができ易く、また、強度比IA/IBが1.2よりも小さいと、粒子群βの小粒径粒子が過剰となり、これらの粒子が充填率の低下を招くと推測される。
強度比IC/IAは、小数点第3位を四捨五入した値とする。強度比IC/IAは0.01以上0.08以下がより好ましく、0.01以上0.06以下がさらに好ましい。強度比IC/IAが小さいと高い充填率が得られる傾向が見られるが0.003以下になると充填率の低下が見られる。
強度比IA/IBは1.2以上2.5以下が好ましく、1.3以上2.4以下がより好ましく、1.5以上2.0以下がさらに好ましい。このような構成とすることで充填率が高く、特流重畳特性の悪化を抑えられる傾向が見られる。
粒子群αのピーク粒径PAは60μm以下であることが好ましく、ピーク粒径PAが大きくなると直流重畳特性が悪化する傾向が見られ、ピーク粒径PAが小さくなると透磁率が小さくなる傾向が見られる。透磁率と直流重畳特性の観点から、粒子群αのピーク粒径PAは10~60μmがより好ましく、15~60μmがさらに好ましく、20~55μmがよりさらに好ましい。粒子群αに用いる粉末のピーク粒径は、分級により粗粒と微粉を取り除いて粒度分布を調整することができる。
粒子群αの粒子は、水アトマイズ法やガスアトマイズ法などのアトマイズ法により作製された粒子を使用することができる。一般にガスアトマイズ法を用いる方が、円形度の高い粒子が得られやすいが、水アトマイズ法を用いる場合であっても、噴霧条件などを適度に調整することによって円形度の高い粒子を得ることができる。
粒子群αを構成する軟磁性金属粉末は、Fe又はFeを含有する金属(合金を含む)が好ましく、表面は絶縁材料で被覆されていることが好ましい。Feを含有する金属としては、Fe-B-Si-Cr系、Fe-Si-Cr系、Fe-Ni-Si-Co系、およびFe-Si-B-Nb-Cu系のアモルファス合金が挙げられる。また、絶縁被覆材料としては、リン酸塩ガラス、MgO、CaO及びZnOから選んだ1種又は2種以上含む化合物、並びに、ホウ酸を含む水溶液又は水分散液と混合ホウ素化合物、チタンアルコキシド類から形成された酸化チタン、ケイ素酸化物等、任意の被膜材料を選ぶことができる。
また、粒子群αを構成する軟磁性金属粉末は、複数の金属の粒子を混ぜて使用しても良い。例えば、Feからなる粒子とFe-B-Si-Cr系アモルファス合金からなる粒子の表面をホウ素化合物により絶縁被覆したものを混合して用いることができる。
粒子群βのピーク粒径PBは、軟磁性金属粒子の充填率向上の観点から、0.5μm~5μmであることが好ましく、0.7μm~4μmがより好ましく、0.7μm~2μmがさらにより好ましい。粒子群βに用いる粉末のピーク粒径は、分級により粗粒と微粉を取り除いて粒度分布を調整することにより所望のピーク粒径とすることができる。
粒子群βの粒子は、粒子群αと同様に水アトマイズ法やガスアトマイズ法などのアトマイズ法により作製された粒子、また、カルボニル法により作製した数μmの粒子、噴霧熱分解法より作製したサブミクロンの粒子などを用いることができる。
粒子群βを構成する軟磁性金属粉末は、Fe又はFeを含有する金属(合金を含む)を用いることができ、粒子群αと異なった組成でも良い。Feを含有する金属としては、例えばFe-Ni系合金が挙げられる。粒子群βも、前述の粒子群αと同様に表面は絶縁材料により被覆されている粒子を用いることができる。絶縁被覆材料としては、前述の材料等、任意の被膜材料を選ぶことができる。
また、粒子群βを構成する軟磁性金属粉末は、前述の粒子群αと同様に複数の金属の粒子を混ぜて使用しても良い。
本実施形態の軟磁性材料は樹脂により軟磁性粒子間の絶縁性は保たれているが、軟磁性粒子自体の粒子表面に絶縁処理を施した紛末を使うことにより、更に高い絶縁性と良好な直流重畳特性を得ることができ、インダクタとして使用した場合にも更に好ましい絶縁性と耐圧性及び直流重畳特性を得ることができる。
また、本実施形態の軟磁性材料は、粒子群αの粒子を65~83wt%、粒子群βの粒子を15~30wt%、樹脂を1.5~5wt%であることが好ましい。この構成とすることで、粒子群αの粒子と粒子群βの粒子の間を樹脂で埋めることができ、空隙を少なくすることができる。
樹脂は、例えば、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂等の各種有機高分子樹脂が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で使用することができ、また、2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、必要に応じて、公知の硬化剤や架橋剤、潤滑剤等を配合してもよい。また、液状の樹脂や、有機溶剤に溶解した樹脂を使用しても良いが、液状のエポキシ樹脂が好ましい。
他方、本実施形態の軟磁性材料は、印刷塗布等が可能なペーストとして使用することが好ましく、必要に応じて溶剤や分散剤等によりペーストの粘度調整をすることも可能である。
本実施形態のコアは、前述軟磁性材料を含有するペーストを任意の形状の型に充填し、熱硬化することで作製することができる。溶剤などの揮発成分を含有する場合は、半硬化状に乾燥させ、加圧した後、さらに熱硬化させ、作製することができる。なお、コアの作製において軟磁性金属粉末の粒度に変化は生じないため、コアの状態であっても、粒子群αおよび粒子群βは、前述の軟磁性材料における粒度分布を維持している。
本実施形態のコアは薄膜インダクタ、積層インダクタ、巻線インダクタ等、種々のタイプのインダクタに使用することができる。その一例として、薄膜インダクタについての構成を示す。図4は薄膜インダクタ10の素子本体5における内部構造の概念図であり、図5は薄膜インダクタ10の外観の概念図である。図4の符号1は、樹脂、セラミック、フェライト等から任意に選ぶことができる材料を用いた基板であり、その上下面に、銀または銅で形成されたスパイラル状の内部導体2が形成され、上下面の導体は基板1に形成されたスルーホールにより接続されている。更に符号3は磁性層であり、本実施形態のコアである。図5の符号4は、符号2の内部電極と接続された外部電極となっており、銀の下地電極の表面にニッケル、更にその上に錫めっきが施されている。
次にインダクタの一例として薄膜インダクタの製造方法について説明する。
樹脂基板の上下面にスパッタリング法、またはフォトリソグラフィー法によりスパイラル状の内部電極を形成する。更に本実施形態のペースト状の軟磁性材料を前記基板面に印刷して磁性層を形成し、150~200℃の温度で加熱硬化させて、スパイラル状の内部電極が複数形成された母基板を得る。この母基板には複数個の内部電極パターンが形成されており、スライサーによる切断工程を経て個々のチップに分割し、内部電極と外部電極が接続しやすいようにバレル研磨等をおこなう。こうして得られたチップを内部電極が露出した面を上にして固定し、スパッタ等の薄膜工程により外部電極を形成する。更に、外部電極表面にニッケルめっき、錫めっきを施す工程を経て薄膜インダクタを作製することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
粒子群αの粉末として水アトマイズ法により作製された球状のFe-2.4mass%B-6.4mass%Si-2.1mass%Cr系アモルファス合金からなる、表面はリン酸塩ガラスで絶縁被覆されたピーク粒径が10.1μmである粉末、粒子群βの粉末として噴霧熱分解法により作製された鉄粉でピーク粒径が0.5μmである粉末、を準備した。粒子群βの粉末と粒子群αの粉末とを1:3の重量比で配合し、表1のピーク粒径となる実施例1の軟磁性金属粉末を得た。次に液状のエポキシ樹脂を2.5wt%を添加し、有機溶剤を加えて粘度調整を行いながら十分に混練して、実施例1のペースト状の軟磁性材料を得た。更に、ペースト状の軟磁性材料をトロイダル形状の溝が開いた金型に充填し、半硬化状に乾燥させて加圧した後、金型から取り出し、恒温槽内で更に熱硬化させ、外径15mm、内径9mm、厚さ0.7mmのトロイダル形状の実施例1のコアを得た。
なお、上記「Fe-2.4mass%B-6.4mass%Si-2.1mass%Cr」とは、全体を100mass%としたとき、Bが2.4mass%、Siが6.4mass%、Crが2.1mass%であり、残部がFeであることを表す。以下の実施例についても同様である。
(実施例2)
粒子群αの粉末としてピーク粒径が18.5μmである粉末、粒子群βの粉末としてカルボニル法により作製されたカルボニル鉄粉でピーク粒径が0.9μmである粉末、を用いること以外は実施例1と同様の条件で実施例2の軟磁性粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例3)
粒子群αの粉末としてピーク粒径が24.0μmである粉末、粒子群βの粉末としてカルボニル法により作製されたカルボニル鉄粉でピーク粒径が1.3μmである粉末、を用いること以外は実施例1と同様の条件で実施例3の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例4、5)
粒子群βの粉末と粒子群αの粉末とを1:4の重量比で配合すること以外は実施例3と同様の条件で実施例4の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。また、粒子群βの粉末と粒子群αの粉末とを1:2.3の重量比で配合すること以外は実施例3と同様の条件で実施例5の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例6~8、14~16)
粒子群αの粉末としてピーク粒径がそれぞれ34.0、44.0、52.3、57.1.62.2、80.7μmである粉末を用いること以外は実施例3と同様の条件で実施例6、7、8、14、15、16の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例9、10、12、13、及び比較例4、5)
粒子群βの粉末と粒子群αの粉末とをそれぞれ1:4、1:4.5、1:2.3、1:2、1:5、1:1.5の重量比で配合すること以外は実施例8と同様の条件で実施例9、10、12、13、及び比較例4、5の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例11)
粒子群βの粉末としてピーク粒径が3.3μmである粉末、を用いる以外は実施例9と同様の条件で実施例11の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(比較例1)
粒子群αの粉末としてピーク粒径が18.5μmである粉末を用いること以外は実施例3と同様の条件で比較例1の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(比較例2)
軟磁性金属粉末としてカルボニル法により作製されたカルボニル鉄粉でピーク粒径が1.3μmである粉末のみ用いること以外は実施例1と同様の条件で比較例2の軟磁性材料、及びコアを得た。
(比較例3)
軟磁性金属粉末として水アトマイズ法により作製された球状のFe-B-Si-Cr系アモルファス合金からなる、表面はリン酸塩ガラスで絶縁被覆されたピーク粒径が52.3μmである粉末のみを用いること以外は実施例1と同様の条件で比較例3の軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例17)
以下に示す以外は、実施例1と同様の条件で実施例17の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。すなわち、実施例17では、粒子群αの粉末として水アトマイズ法により作製された球状のFe-2.5mass%B-6.4mass%Si-2.1mass%Cr系アモルファス合金からなる、ピーク粒径が52.3μmである粉末、粒子群βの粉末としてカルボニル法により作製されたカルボニル鉄粉でピーク粒径が1.3μmである粉末を準備し、粒子群βの粉末と粒子群αの粉末とを1:4の重量比で配合した。
(実施例18)
粒子群αの粉末として水アトマイズ法により作製された球状のFe-2.5mass%B-6.4mass%Si-2.1mass%Cr系アモルファス合金からなる、表面はシリカで絶縁被覆されたピーク粒径が26.0μmである粉末を用いる以外は、実施例17と同様の条件で実施例18の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例19)
粒子群αの粉末として水アトマイズ法により作製された球状のFe-6.5mass%Si-2.5mass%Cr系アモルファス合金からなる、表面はリン酸塩ガラスで絶縁被覆されたピーク粒径が48.0μmである粉末を用いる以外は、実施例17と同様の条件で実施例19の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例20)
粒子群αの粉末として水アトマイズ法により作製された球状のFe-44mass%Ni-2.1mass%Si-4.5mass%Co系アモルファス合金からなる、表面はリン酸塩ガラスで絶縁被覆されたピーク粒径が26.0μmである粉末を用いる以外は、実施例17と同様の条件で実施例20の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例21)
以下に示す以外は、実施例17と同様の条件で実施例21の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。すなわち、実施例21では、粒子群αの粉末として水アトマイズ法により作製された球状のFe-13.0mass%Si-9.0mass%B-3.0mass%Nb-1.0mass%Cu系アモルファス合金からなる、表面はリン酸塩ガラスで絶縁被覆されたピーク粒径が24.0μmである粉末を準備し、粒子群βの粉末と粒子群αの粉末とを1:3.5の重量比で配合した。
(実施例22)
以下に示す以外は、実施例17と同様の条件で実施例22の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。すなわち、実施例22では、粒子群αの粉末として水アトマイズ法により作製された球状のFe-2.5mass%B-6.4mass%Si-2.1mass%Cr系アモルファス合金からなる、表面はリン酸塩ガラスで絶縁被覆されたピーク粒径が52.3μmである粉末、粒子群βの粉末としてカルボニル法により作製されたカルボニル鉄粉からなる、表面はシリカで絶縁被覆されたピーク粒径が1.4μmである粉末を準備し、粒子群βの粉末と粒子群αの粉末とを1:3の重量比で配合した。
(実施例23)
粒子群βの粉末として噴霧熱分解法により作製された球状のFe-50mass%Ni系合金からなる、表面はシリカで絶縁被覆されたピーク粒径が0.8μmである粉末を用いる以外は、実施例22と同様の条件で実施例23の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
(実施例24)
粒子群αの粉末として水アトマイズ法により作製された球状のFeからなる、ピーク粒径が44.0μmである粉末を用いる以外は、実施例17と同様の条件で実施例24の軟磁性金属粉末、軟磁性材料、及びコアを得た。
粒度分布測定方法、軟磁性金粉末の充填率、及びトロイダル形状のコアの透磁率と直流重畳特性の測定条件は以下の通りである。
(粒度分布測定)
水と粉末、分散剤を入れ、ホモジナイザー(日本精機社製)で分散し、湿式レーザー回折粒子径分布測定機(日機装社製Microtrac MT3300EXII)により求めた体積基準の粒度分布よりピークA、ピークB、及び極小Cを判定し、ピーク粒径PA、PBとピーク強度(頻度)IA、IB、及び極小Cの粒径PC、強度(頻度)ICを算出した。
なお、得られた軟磁性材料およびコアに含まれる軟磁性金属粉末について同様に粒度分布測定を行ったところ、軟磁性材料およびコアに用いる前の軟磁性金属粉末と同様の粒度分布が得られた。
(軟磁性金属粉末の充填率)
トロイダル形状のコアを用いてアルキメデス法により密度を測定し、各種材料の比重から求めた。
(透磁率の測定条件)
トロイダル形状のコアのサイズ:外径:15mm×内径:9mm×厚み:0.7mm
測定器:E4991A(Agilent社製) RFインピーダンス/マテリアル・アナライザ
測定周波数:3MHz
(直流重畳特性の測定条件)
トロイダル形状のコアのサイズ:外径:15mm×内径:9mm×厚み:0.7mm
巻線数:30回
測定器:4284A(Agilent社製)プレシジョンLCRメータ
高周波信号の周波数:100kHz
直流重畳特性は、直流バイアス電流を0Aから10Aとした時のインダクタンス値の低下率により評価した。
表1に粒度分布測定より算出した粒子群α、βのピーク粒径PA、PB、ピーク強度IA、IB、極小の強度IC、強度比IC/IA、IA/IB、トロイダル形状のコアより測定した軟磁性粉末の充填率、透磁率、及びインダクタンス低下率の結果を示す。
Figure 0007059593000001
表1の実施例1~24は、何れの試料も粒子群αと粒子群βの間で、強度比IC/IAが0.10以下、強度比IA/IBが1.2以上、3.0以下の条件を満たしており、透磁率は30を超えた高い値を示した。
表1によれば、比較例1、4、5は粒子群αと粒子群βの間で、強度比IC/IAが0.10以下、強度比IA/IBが1.2以上、2.8以下の条件を満たしておらず、軟磁性金属粉末の充填率は低く、透磁率も30未満であった。特に、比較例2、3のように、粒子群αしか持たない単一粒度分布の試料ではトロイダルコアにした時の軟磁性金属粉末の充填率は70vol%を超えることができず、3MHz時における透磁率も20以下となっていた。
実施例3、6~8、21、22は、強度比IC/IAが0.01以上0.06以下、強度比IA/IBが1.5以上2.0以下であり、充填率は80vol%を超え、透磁率も39を超える高い値を示し、特流重畳特性も良好であり、インダクタンス低下率は33%以下となった。
粒子群αのピークのピーク粒径PAが60μmを超える実施例15、16では、表1に示すように比透磁率は比較的高い値を示すものの、インダクタンスの低下率が40%を超えており、直流重畳特性の悪化が目立ち始める。しかしながら、粒子群αのピークのピーク粒径PAが60μm以下であれば比較的良好な直流重畳特性となった。直流重畳特性の悪化の原因は、試料中の組織の不均一性に因るところが大きいものと推察される。なぜなら、粒子群αのピーク粒径PAが大きくなると、試料内にできる空隙も大きくなる傾向を示しており、樹脂部や空隙部の分布状態が偏析し易い組織状態となっていると推察されるからである。
尚、表1に示した軟磁性材料の代表的な試料について、その試料の粒度分布図を図1~3に示した。
図1は実施例8の粒度分布(頻度分布)を示す図である。粒子群αは比較的ブロードな粒度分布を持っているが、粒子群αのピークのピーク粒径PA(52.3μm)と粒子群βのピークのピーク粒径PB(1.3μm)が離れているので、粒子群αと粒子群βの間に存在する極小の強度Cは小さくなり、この時の軟磁性金属粉末の充填率は82.9vol%と高くなり、透磁率も42.3と高い値を示した。
図2は比較例1の粒度分布(頻度分布)を示す図である。粒子群αはブロードな粒度分布を持っておりピーク粒径PAも18.5μmと小さい。このため、粒子群βのピークはピーク粒径PB1.3μmと比較的小さな軟磁性金属粉末を使用しているが粒子群αと粒子群βは接近しており、粒子群αと粒子群βの間に存在する極小の強度ICは大きくなり強度比、IC/IAは0.10を超えた。この時の軟磁性金属粉末の充填率は76.2vol%と実施例よりも低くなり、透磁率も25.9と低い値であった。
図3は比較例3の粒度分布(頻度分布)を示す図である。粒子群αのみで極小の強度ICを持たず、この時の軟磁性金属粉末の充填率は68.8vol%と実施例よりも低くなり、透磁率も19.5と低い値であった。
本発明の軟磁性材料は、高い透磁率を有し直流重畳特性にも優れているため、インダクタ、各種トランス等の電気・磁気デバイス、及びそれらを備える各種機器、設備、システム等に幅広く利用可能である。
1 基板
2 内部導体
3 磁性層
4 外部電極
5 素子本体
10 薄膜インダクタ

Claims (5)

  1. 軟磁性金属粉末と樹脂とを含む、軟磁性材料であって、
    レーザー回折・散乱法での測定によって求めた体積基準の粒度分布において、
    前記軟磁性金属粉末は、粒子群αと粒子群βで構成され、粒子群αのピーク強度をIA、粒子群βのピーク強度をIB、粒子群αと粒子群βの間に存在する極小の強度をICとしたときに、強度比IC/IAが0.10以下、強度比IA/IBが1.2以上、3.0以下となり、
    前記軟磁性金属粉末の粒度分布において、粒子群αは最大のピーク強度を持つ粒子群であり、
    粒子群βは粒子群αの次に大きいピーク強度を持つ粒子群であり、
    粒子群βのピーク粒径PBは0.5~5μmであり、
    粒子群αのピーク粒径PAは粒子群βのピーク粒径PBよりも大きく、
    粒子群αと粒子群βとは組成が異なることを特徴とする軟磁性材料。
  2. 前記粒子群αのピーク粒径PAが60μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性材料。
  3. 前記粒子群αを構成する軟磁性金属粉末は、Fe又はFeを含有する金属であり、絶縁材料で被覆されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟磁性材料。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の軟磁性材料により作製されていることを特徴とするコア。
  5. 請求項4に記載のコアを備えていることを特徴とするインダクタ。
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