以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線コンピュータ断層撮影装置及び寝台装置を説明する。
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の構成を示す図である。図1に示すように、X線コンピュータ断層撮影装置1は、架台10とコンソール100とを有する。例えば、架台10はCT検査室に設置され、コンソール100はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台10とコンソール100とは互いに通信可能に接続されている。架台10は、X線CT撮影のための撮影機構を搭載する。コンソール100は、架台10を制御するコンピュータである。
図1に示すように、架台10は、略円筒形状の回転フレーム11を有する。回転フレーム11は、回転部とも呼ばれている。図1に示すように、回転フレーム11には、開口41を挟んで対向するように配置されたX線管13とX線検出器15とが取付けられている。回転フレーム11は、アルミ等の金属により円環形状に形成された金属枠である。架台10は、アルミ等の金属により形成されたメインフレームを有する。メインフレームは、固定部とも呼ばれている。回転フレーム11は、当該メインフレームにより回転可能に支持されている。
X線管13は、X線を発生する。X線管13は、熱電子を発生する陰極と陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極とを保持する真空管を含む。X線管13は高圧ケーブルを介してX線高電圧装置17に接続されている。陰極と陽極との間には、X線高電圧装置17により管電圧が印加される。管電圧の印加により陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔する。陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔することにより管電流が流れる。
X線高電圧装置17は、変圧式X線高電圧装置、定電圧型X線高電圧装置、コンデンサ式X線高電圧装置、インバータ式X線高電圧装置等の如何なる形式にも適用可能である。X線高電圧装置17は、例えば、回転フレーム11に取付けられている。X線高電圧装置17は、架台制御回路33による制御に従い管電圧や管電流等のX線パラメータを調節する。
図1に示すように、回転フレーム11は、架台駆動装置21からの動力を受けて、回転軸Z回りに一定の角速度で回転する。また、回転フレーム11は、架台駆動装置21からの動力を受けて、回転軸Zに水平に直交するチルト軸回りにチルトする。架台駆動装置21は、例えば、架台10に収容されている。また、架台駆動装置21は、架台制御回路33からの駆動信号を受けて、回転フレーム11を回転又はチルトするための動力を発生する。架台駆動装置21としては、ダイレクトドライブモータやサーボモータ等の任意のモータ又はアクチュエータが用いられる。
回転フレーム11の開口にはFOVが設定される。回転フレーム11の開口内には寝台23に支持された天板が挿入される。天板には被検体Pが載置される。寝台23は、天板を移動自在に支持する。寝台23には寝台駆動装置25が収容されている。寝台駆動装置25は、架台制御回路33からの駆動信号を受けて天板を前後、昇降及び左右に移動させるための動力を発生する。寝台23は、被検体の撮影部位がFOV内に含まれるように天板を位置決めする。
X線検出器15は、X線管13から発生されたX線を検出する。具体的には、X線検出器15は、X線管の焦点を中心とする2次元湾曲面上に配列された複数の検出素子を有している。各検出素子は、シンチレータと光センサとを有する。シンチレータは、X線を光子に変換する物質により形成される。シンチレータは、入射X線を、当該入射X線量に応じた光子量の光に変換する。光センサは、シンチレータから発生した光を増幅して電気信号に変換する回路素子である。光センサとしては、例えば、光電子増倍管やフォトダイオード等が用いられる。なお、2次元湾曲面状に配列された複数のシンチレータのX線入射側の面には、散乱X線を吸収するために格子状に形成されたX線遮蔽物質を含むグリッドが設けられても良い。検出素子は、上記の通りX線を光子に変換してから検出する間接変換型でも良いし、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型であっても良い。
X線検出器15にはデータ収集回路19が接続されている。データ収集回路19は、X線検出器15により検出されたX線の線量に応じた電気信号をX線検出器15から読み出し、読み出した電気信号を可変の増幅率で増幅し、ビュー期間に亘り電気信号を積分することにより当該ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する生データを収集する。データ収集回路19は、例えば、生データを生成可能な回路素子を搭載したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現される。
図1に示すように、架台制御回路33は、コンソール100の処理回路101からの撮影条件に従いX線CT撮影を実行するために、X線高電圧装置17、データ収集回路19、架台駆動装置21及び寝台駆動装置25を同期的に制御する。本実施形態に係る架台制御回路33はヘリカルスキャンを行う。架台制御回路33は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置(プロセッサ)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリ)とを有する。また、架台制御回路33は、ASICやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されても良い。
図1に示すように、コンソール100は、処理回路101、表示装置103、入力装置105及び記憶回路107を有する。処理回路101、表示装置103、入力装置105及び記憶回路107間のデータ通信は、バス(bus)を介して行われる。
処理回路101は、ハードウェア資源として、CPUあるいはMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路101は、各種プログラムの実行により前処理機能111、再構成機能113、画像処理機能115、撮影計画機能117及びシステム制御機能119を実現する。なお、前処理機能111、再構成機能113、画像処理機能115、撮影計画機能117及びシステム制御機能119は、一の基板の処理回路101により実装されても良いし、複数の基板の処理回路101により分散して実装されても良い。
前処理機能111において処理回路101は、架台10から伝送された生データに対数変換等の前処理を施す。前処理後の生データは、投影データとも呼ばれる。
再構成機能113において処理回路101は、前処理後の生データに基づいて被検体Pに関するCT値の空間分布を表現するCT画像を発生する。画像再構成アルゴリズムとしては、FBP(filtered back projection)法や逐次近似再構成法等の既存の画像再構成アルゴリズムが用いられれば良い。
画像処理機能115において処理回路101は、再構成機能113により再構成されたCT画像に種々の画像処理を施す。例えば、処理回路101は、当該CT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示画像を生成する。
撮影計画機能117において処理回路101は、自動的又はユーザによる入力装置105を介した指示に従い撮影計画を立案する。
システム制御機能119において処理回路101は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の統括的に制御する。具体的には、処理回路101は、記憶回路107に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線コンピュータ断層撮影装置1の各部を制御する。
表示装置103は、撮影計画の画面やCT画像等の種々のデータを表示する。表示装置103としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
入力装置105は、ユーザからの各種指令を入力する。具体的には、入力装置105は、入力機器と入力インタフェース回路とを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、トラックボール、ジョイスティック、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース回路は、入力機器からの出力信号をバスを介して処理回路101に供給する。
記憶回路107は、種々の情報を記憶するHDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶回路107は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
図2は、本実施形態に係る架台10の外観を示す斜視図である。図2に示すように、架台10は、略円筒形の開口41が形成された架台本体43を有する。架台10の前方には寝台23が設置されている。寝台23は、天板51と上部フレーム61と支持台55とを装備する2段スライド型の寝台である。図2に示すように、天板51の長軸A1が開口41の中心軸ARに平行するように寝台23が配置される。
天板51は、柔軟性を有する板状構造体である。上部フレーム61は、天板51を天板51の長軸A1に沿ってスライド可能に支持する。支持台55は、上部フレーム61を長軸A1に平行な軸に沿ってスライド可能な且つ長軸A1に鉛直に直交する鉛直軸A2に沿って昇降可能に支持している。ここで長軸A1に平行する軸をZ軸に規定し、鉛直軸A2に平行する軸をY軸に規定する。Z軸とY軸とに直交する軸をX軸に規定する。XYZ座標系は直交座標系をなす。また、以下、天板51の長軸A1に平行する方向を長軸方向又はZ方向、鉛直軸A2に平行する方向を鉛直方向又はY方向と呼ぶことにする。また、寝台23が架台10に接近する方向を+Z方向、寝台23が架台10から離れる方向を-Z方向、寝台23が上昇する方向を+Y方向、寝台23が下降する方向を-Y方向とする。
図3は、本実施形態に係る寝台23の側面を模式的に示す図である。なお、図3において寝台23の筐体は省略している。図3に示すように、天板51は、上部フレーム61により、天板51の長軸方向に平行するZ方向に関してスライド可能に支持されている。上部フレーム61は、天板51をスライド可能であれば如何なる構造を有しても良い。例えば、上部フレーム61は、天板51のZ方向に関するスライドを案内する枠状のフレーム(図示せず)を有している。上部フレーム61には、天板51をZ方向にスライドするための動力を発生する天板駆動制御装置62が設けられている。天板駆動制御装置62は、サーボモータ等の既存のモータにより実現される。天板駆動制御装置62は、架台制御回路33の制御により作動する。
図3に示すように、支持台55は、床面に設置される。支持台55は、上部フレーム61をY方向に昇降且つZ方向に前後する。具体的には、支持台55は、下部フレーム63、Xリンク65及び基台67を有する。下部フレーム63は、上部フレーム61を、上部フレーム61の長軸方向に平行するZ方向に関してスライド可能に支持する。下部フレーム63は、上部フレーム61をスライド可能であれば如何なる構造を有しても良い。例えば、下部フレーム63は、上部フレーム61のZ方向に関するスライドを案内する枠状のフレームを有している。下部フレーム63には、上部フレーム61をZ方向に関してスライドするための動力を発生するフレーム駆動制御装置64が設けられている。フレーム駆動制御装置64は、サーボモータ等の既存のモータにより実現される。フレーム駆動制御装置64は、架台制御回路33の制御により作動する。
図3に示すように、支持台55は、床面に設置される。支持台55は、下部フレーム63をY方向に関して上昇又は下降しつつ架台10に対して接近又は離間することが可能な支持構造を有している。例えば、支持台55は、Xリンク65と基台67とを有する。Xリンク65は、下部フレーム63と基台67とに接続されている。基台67には、Xリンク65により下部フレーム63をY方向に関して昇降するための動力を発生する昇降駆動制御装置66が設けられている。昇降駆動制御装置66は、サーボモータ等の既存のモータにより実現される。昇降駆動制御装置66は、架台制御回路33の制御により作動する。
図3に示すように、Xリンク65は、X形状に枢支された一対の可動リンク651と固定リンク652とを有する。可動リンク651と固定リンク652とは、枢支軸を中心に回転可能に設けられている。可動リンク651と固定リンク652との各々は、例えば、略同一長さを有する一対の板状形状を有する金属板により形成される。固定リンク652の一端は基台67に固定される。固定リンク652の他端は下部フレーム63に固定される。可動リンク651の一端は、基台67にZ方向に関してスライド可能に支持される。可動リンク651の他端は、下部フレーム63にZ方向に関してスライド可能に支持される。昇降駆動制御装置66により可動リンク651と固定リンク652とのZ方向に関する間隔が狭められることにより、下部フレーム63が上昇しつつ架台10に接近する。昇降駆動制御装置66により可動リンク651と固定リンク652とのZ方向に関する間隔が広がることにより下部フレーム63が下降しつつ架台10から離間する。
図4は、本実施形態に係る架台制御回路33と寝台駆動装置25との一構成例を示す図である。図4に示すように、寝台駆動装置25は、天板駆動制御装置62、フレーム駆動制御装置64及び昇降駆動制御装置66を有する。架台制御回路33は、天板51を所望の位置に移動させるために天板駆動制御装置62、フレーム駆動制御装置64及び昇降駆動制御装置66を制御する。
天板駆動制御装置62は、例えば、上部フレーム61に設けられている。天板駆動制御装置62は架台制御回路33からの動作指示信号を受けて天板51をスライドする。具体的には、天板駆動制御装置62は、天板制御回路621、天板駆動装置623及び天板検出器625を有する。天板制御回路621は、架台制御回路33からの動作指示信号を受けて天板駆動装置623に、当該動作指示信号に対応する電力を供給するサーボアンプである。天板駆動装置623は、天板制御回路621からの電力を受けて駆動し、接続先の上部フレーム61を作動して天板51をスライドする。具体的には、天板駆動装置623は、駆動軸の回転により動力を発生するモータである。天板検出器625は、天板駆動装置623の駆動軸に設けられた、ロータリーエンコーダ等の位置検出器である。
フレーム駆動制御装置64は、例えば、下部フレーム63に設けられている。フレーム駆動制御装置64は架台制御回路33からの動作指示信号を受けて上部フレーム61をスライドする。具体的には、フレーム駆動制御装置64は、フレーム制御回路641、フレーム駆動装置643及びフレーム検出器645を有する。フレーム制御回路641は、架台制御回路33からの動作指示信号を受けてフレーム駆動装置643に、当該動作指示信号に対応する電力を供給するサーボアンプである。フレーム駆動装置643は、フレーム制御回路641からの電力を受けて駆動し、接続先の下部フレーム63を作動して上部フレーム61をスライドする。具体的には、フレーム駆動装置643は、駆動軸の回転により動力を発生するモータである。フレーム検出器645は、フレーム駆動装置643の駆動軸に設けられた、ロータリーエンコーダ等の位置検出器である。
昇降駆動制御装置66は、例えば、支持台55に設けられている。昇降駆動制御装置66は架台制御回路33からの動作指示信号を受けてXリンク65を作動して天板51、上部フレーム61及び下部フレーム63を昇降(上下動)する。具体的には、昇降駆動制御装置66は、昇降制御回路661、昇降駆動装置663及び昇降検出器665を有する。昇降制御回路661は、架台制御回路33からの動作指示信号を受けて昇降駆動装置663に、当該動作指示信号に対応する電力を供給するサーボアンプである。昇降駆動装置663は、昇降制御回路661からの電力を受けて駆動し、接続先のXリンク65を作動して天板51、上部フレーム61及び下部フレーム63を昇降する。昇降検出器665は、昇降駆動装置663の駆動軸に設けられた、ロータリーエンコーダ等の位置検出器である。
以下、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の詳細について説明する。
図5は、ヘリカルスキャンの撮影範囲R1と天板51の速度との関係を示す図である。図5に示すように、撮影範囲R1は、Z方向に関して被検体Pの任意の範囲に設定される。ヘリカルスキャンにおいて架台制御回路33は、架台10により撮影範囲R1をX線でスキャンしている間に天板51を設定速度でスライドする。撮影範囲R1のZ方向に関する両端のうち進行方向奥側端部を撮影開始端Rs、進行方向手前側端部を撮影終了端Reと呼ぶ。また、本実施形態に係るヘリカルスキャンとしては、天板51を撮影範囲R1において標準速度でスライドさせる標準速度モードと、標準速度に比して高速でスライドさせる高速モードとがある。標準速度は、例えば、200mm/s程度に設定され、高速は、例えば、400mm/s程度に設定される。
撮影範囲R1において天板51を設定速度でスライドするため、撮影範囲R1の進行方向手前側において天板51を加速させる必要がある。また、撮影範囲R1のスキャンが終了した後は、天板を停止するために、撮影範囲R1の進行方向奥側において天板を減速する必要がある。なお、図5において進行方向は被検体Pの頭部から脚部への方向に規定されているが、脚部から頭部への方向に規定されても良い。本実施形態においては天板51を定速でスライドする範囲、すなわち、撮影範囲R1を定速範囲と呼び、加速又は減速させる範囲R2を加減速範囲とも呼ぶ。
なお、本実施形態に係るヘリカルスキャンは、天板51を撮影範囲R1の一端から他端へ一方方向に移動させるタイプ(以下、片道ヘリカルスキャンと呼ぶ)と、天板51を撮影範囲R1の両端の間を往復移動させるタイプ(往復ヘリカルスキャンと呼ぶ)とがある。本実施形態に係るヘリカルスキャンは、両タイプに適用である。しかしながら、以下の説明においてヘリカルスキャンとは、説明の簡単のため、特に言及しない限り、片道ヘリカルスキャンであるものとする。
上記の通り、天板51と天板51を支持する上部フレーム61とがZ方向に関して独立にスライドする。しかしながら、上部フレーム61は、被検体Pの位置決め時において駆動する部分であり、ヘリカルスキャン中に動作しないのが通常である。従って、高速モードのヘリカルスキャンにおいて以下の問題点が考えられる。
図6は、上部フレーム61固定下における標準速度モード及び高速モード各々における天板51の速度と移動距離との関係を示す図である。図6のグラフの縦軸は天板51の速度[mm/s]に規定され、横軸はZ方向に関する天板51の移動距離[mm]に規定される。移動距離の原点は、標準モードにおける天板51の移動開始位置に規定される。
図6の曲線C1に示すように、標準速度モードにおいて天板51は、標準速度で標準的な広さの撮影範囲をスライドする。標準速度モードにおいては加減速範囲において天板51を標準速度まで加速すれば良いので、加減速範囲において天板51の速度を急激に上昇させる必要はない。天板51の移動開始から移動停止までの距離(ストローク)は標準的な距離である。図6の曲線C2に示すように、高速モードにおいて撮影範囲が標準的な広さである場合、標準速度モードに比して、加減速範囲において天板51の速度を急激に上昇させる必要がある。天板51の速度を急激に上昇すると被検体Pの負担が増してしまう。図6の曲線C3に示すように、高速モードにおいて加減速範囲における速度変化を標準モードに合わせた場合、撮影範囲を狭める必要がある。また、図6の曲線C4に示すように、高速モードにおいて加減速範囲における速度変化を標準モードに合わせ且つ撮影範囲を標準的な広さにする場合、天板51のスライド開始からスライド停止までの距離(ストローク)を長くせざるを得ない。このため、寝台23のZ方向の長さを長くする必要がある。
本実施形態に係る架台制御回路33は、天板51を設定速度まで加速させるための動作(以下、開始補助動作と呼ぶ)と天板51を停止させるための動作(以下、停止補助動作)とを実行するために天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを同期的に制御する。開始補助動作の際、架台制御回路33は、スキャン条件に基づいて決定される移動開始位置に上部フレーム61を位置させた後、スキャンにおける被検体Pの移動開始の際、天板51の移動に先立ち、上部フレーム61を進行方向に沿って加速させるようにフレーム駆動制御装置64を制御し、フレーム駆動制御装置64による上部フレーム61の加速制御の開始から所定時間経過後に、天板51を進行方向に沿って設定速度まで加速させるように天板駆動制御装置62を制御する。より詳細には、架台制御回路33は、天板51と上部フレーム61とを初期位置から進行方向反対側の移動開始位置まで後退させた後、天板51の移動に先立ち上部フレーム61を進行方向に沿って加速させ、上部フレーム61の減速時に天板51を設定速度まで加速させる。この開始補助動作により、被検体Pの負担を軽減しつつ限られたスペースで天板51を設定速度まで加速させることができる。
停止補助動作の際、架台制御回路33は、天板51の減速時に上部フレーム61を進行方向に沿って加速させるようにフレーム駆動制御装置64を制御し、フレーム駆動制御装置64による上部フレーム61の加速制御の開始から所定時間経過後に、天板51を停止させるように天板駆動制御装置62を制御する。より詳細には、架台制御回路33は、天板51を進行方向に沿って減速させ、天板51の減速時に上部フレーム61を進行方向に向けて加速させ、上部フレーム61を減速させつつ天板51を停止させ、その後、上部フレーム61を停止する。この停止補助動作により、被検体Pの負担を軽減しつつ限られたスペースで天板51を停止させることができる。
以下、この開始補助動作と停止補助動作とを行う寝台動作モードを体感速度緩和モードと呼び、開始補助動作と停止補助動作とを行わない寝台動作モードを標準動作モードと呼ぶことにする。
次に、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の詳細について説明する。本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の動作は、撮影計画段階とヘリカルスキャン段階とに分けられる。撮影計画段階においては寝台動作モードの設定が行われ、ヘリカルスキャン段階においては寝台動作モードに応じたヘリカルスキャンが行われる。
図7は、本実施形態に係る処理回路101による撮影計画機能117の処理の流れを示す図である。撮影計画機能117において処理回路101は、スキャン条件に基づいて寝台操作モードを体感速度緩和モード又は標準動作モードに設定する。当該スキャン条件としては、ヘリカルスキャンの撮影範囲と天板51の設定速度とが含まれる。以下、詳細に撮影計画機能117について説明する。
図7に示すように、まず処理回路101は、ヘリカルスキャンの撮影範囲を設定する(ステップSA1)。ステップSA1において処理回路101は、入力装置105を介したユーザの指示に従い撮影範囲を設定する。例えば、ステップSA1の前段において架台制御回路33は、X線高電圧装置17、データ収集回路19、架台駆動装置21及び寝台駆動装置25を制御して、被検体Pを対象とする位置決めスキャンを実行する。位置決めスキャンは、例えば、X線管13の回転角度固定の下、天板51をZ方向にスライドさせながら被検体Pの所定範囲をスキャンする手法である。処理回路101は、位置決めスキャンにより収集された生データに基づいて被検体Pに関する位置決め画像を生成する。表示装置103は、位置決め画像を表示する。
図8は、ステップSA1において表示される位置決め画像IPの一例を示す図である。図8に示すように、位置決め画像IPは、所定範囲に亘る被検体Pの投影画像である。ユーザは、入力装置を操作して位置決め画像に撮影範囲R1を指定する。処理回路101は、指定された範囲に撮影範囲R1を設定する。本実施形態に係る撮影範囲R1は、如何なる範囲に設定されても良い。なお、位置決め画像IPとしては、撮影範囲R1を設定可能であれば、AP(Anterior-Posterior)方向に限定されず、LR(Left-Right)方向や任
意の撮影方向に関する画像であっても良い。
ステップSA1が行われると処理回路101は、ヘリカルスキャンにおける天板51の設定速度が標準速度であるか高速であるかを判定する(ステップSA2)。設定速度は、ステップSA2の時点において設定されても良いし、ステップSA2の前段において予め設定されても良い。設定速度は、ユーザによる入力装置105を介した指示に従い任意に選択されれば良い。なお、設定速度は、標準速度と高速の2種類に限定されない。例えば、3種類以上の速度が用意され、これら速度から何れかの速度が設定されても良いし、任意の値の速度が設定されても良い。この場合、閾値より速い速度が高速であると判定され、閾値より遅い速度が標準速度であると判定される。
天板51の設定速度が高速であると判定された場合(ステップSA2:YES)、処理回路101は、初期位置から撮影開始位置まで移動するために必要な天板51の推定加速度を算出する(ステップSA3)。
図9は、天板51の初期位置Ptiと撮影開始位置Ptstartとの位置関係を示す図である。図9に示すように、初期位置Ptiは、例えば、ステップSA3の時点での天板位置に規定される。撮影開始位置Ptstartは、撮影開始端Rsがスキャン面SPに交わるときの天板位置に規定される。天板位置は、Z方向に関する天板51の基準点の位置を指す。天板51の基準点は、如何なる部分に規定されても良い。例えば、天板51の進行方向奥側端部に基準点が規定される。スキャン面SPは、X線管13の焦点とX線検出器15の中心列とを結ぶ面に規定される。なお、撮影開始位置Ptstartは、これに限定されず、撮影開始端Rsがスキャン面SPから所定距離だけオフセットした位置にあるときの天板位置に規定されても良い。典型的には、位置決めスキャンの終了後、天板51は、標準モードの移動開始位置(デフォルトの移動開始位置)まで移動される。この場合、初期位置PTiは、標準モードの移動開始位置に一致することとなる。なお、位置決めスキャンの終了後、必ずしも天板51が標準モードの移動開始位置まで移動される必要はなく、初期位置PTiは、任意の位置にあっても良い。
ステップSA3において処理回路101は、具体的には、まず、Z方向に関する撮影範囲R1の位置と初期位置Ptiにおける天板位置(デフォルトの移動開始位置)とに基づいて、初期位置Ptiにおける撮影開始端Rsからスキャン面SPまでの距離D1を計測する。そして処理回路101は、距離D1と天板51の設定速度とに基づいて、距離D1だけ天板51がスライドする間に天板速度がゼロから設定速度に到達するために必要な加速度(推定加速度)を算出する。加速度は、一定でも良いし、移動開始時と設定速度到達時との近傍において緩やかに変化し、その間においては急激に変化しても良い。
ステップSA3が行われると処理回路101は、ステップSA3において算出された推定加速度が許容加速度より大きいか否かを判定する(ステップSA4)。許容加速度は、被検体Pが許容できる加速度に設定される。許容加速度は、ユーザにより入力装置105を介して任意の値に設定されれば良い。推定加速度が許容加速度よりも大きいときは、被検体Pの負担が比較的大きく推定加速度での加速に耐えられない事を意味し、小さい時は、被検体Pの負担が比較的小さく推定加速度での加速に耐え得る事を意味する。
従って、ステップSA4において推定加速度が許容加速度より大きいと判定された場合(ステップSA4:YES)、処理回路101は、寝台動作モードを、被検体Pの体感速度を緩和して負担を軽減するための体感速度緩和モードに設定する(ステップSA5)。すなわち、処理回路101は、推定加速度と許容加速度との比較に基づいて、寝台動作モードを体感速度緩和モードに設定するか標準動作モードに設定するかを判定する。
ステップSA4において推定加速度が許容加速度より小さいと判定された場合(ステップSA4:NO)又は設定天板速度が標準速度であると判定された場合(ステップSA2:標準)、処理回路101は、寝台動作モードを標準速度モードに設定する(ステップSA6)。
ステップSA5又はステップSA6が行われると処理回路101による撮影計画機能117が終了する。
撮影計画機能117による撮影計画が行われると、当該撮影計画に基づくヘリカルスキャンが行われる。例えば、ヘリカルスキャンの準備が整い、ユーザが入力装置105を操作して確定ボタンを押下するとヘリカルスキャンが開始される。以下、体感速度緩和モードでのヘリカルスキャンにおけるX線コンピュータ断層撮影装置1の動作例について説明する。
図10は、標準速度モードと高速モードとの各々に関する、天板51と上部フレーム61との個別の速度と移動距離との関係を示す図である。図11は、標準速度モードと高速モードとの各々に関する、天板51と上部フレーム61との合計の速度と移動距離との関係を示す図である。図10及び図11の縦軸は速度[mm/s]に規定され、横軸は移動距離[mm]に規定される。横軸の原点は、天板51の移動開始位置に規定される。なお、標準速度モードにおいて上部フレーム61は下部フレーム63に対して固定されており天板51のみが動作する。高速モードにおいては上部フレーム61と天板51とが個別に動作する。
図10の曲線C1は、図6のC1と同様、標準速度モードにおける天板51単独の速度と移動距離との関係を示す。図10の曲線C5は、高速モードにおける天板51単独の速度と移動距離との関係を示す。図10の曲線C6は、高速モードにおける上部フレーム61単独の速度と移動距離との関係を示す。図11の曲線C7は、高速モードにおける天板51の見かけの速度と移動距離との関係を示す。天板51の見かけの速度は、天板51の上部フレーム61に対する相対速度と上部フレーム61の下部フレーム63に対する相対速度との合計速度を示す。換言すれば、天板51の見かけの速度は、被検体Pが体感する相対的な速度である。
体感速度緩和モードを用いた高速モードのヘリカルスキャンにおいては、開始補助動作、スキャン動作、停止補助動作が順番に行われる。まず、開始補助動作とスキャン動作とについて説明する。
図12は、開始補助動作とスキャン動作との天板51と上部フレーム61との動作を模式的に示す図である。図12に示すように、開始補助動作の開始時において天板51は初期位置Ptiに位置している。まず架台制御回路33は、天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを制御して、天板51と上部フレーム61とを所定の移動開始位置Ptlまで後退させる(ステップSB1)。移動開始位置Ptlは、標準モードの移動開始位置(デフォルトの移動開始位置)よりも、ヘリカルスキャン時の天板51の進行方向に対して反対側(進行方向手前側)に位置している。移動開始位置Ptlは、典型的には、進行方向手前側の移動限界位置に設定される。なお、図12において、天板51と上部フレーム61との移動限界位置PtlがZ方向に関して同一位置であるとしているが、異なる位置にあっても良い。
次に、架台制御回路33は、天板51の加速に先立ち、天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを制御して、天板51を上部フレーム61に対して停止させつつ上部フレーム61を進行方向に沿って加速させる(ステップSB2)。上部フレーム61の最高速度は、図10及び図11に示すように、天板51の設定高速度及び設定標準速度に比して低速である。例えば、設定高速度が400mm/sであり設定標準速度が200mm/sである場合、上部フレーム61の最高速度は100mm/s程度に設定されると良い。
フレーム駆動制御装置64による上部フレーム61の加速制御の開始から所定時間経過後に、天板51を進行方向に沿って設定速度まで加速させるように天板駆動制御装置62を制御する(ステップS3)。当該所定時間は、例えば、上部フレーム61の加速の開始から、加速の終了後の減速の期間内の何れかの時点までの時間に設定される。
具体的には、上部フレーム61の速度が上記最高速度に到達したことを契機として架台制御回路33は、天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを制御して、上部フレーム61を減速させつつ、上部フレーム61の減速時において天板51を上部フレーム61に対して進行方向に沿って加速させる。上部フレーム61の移動時において同方向に天板51を加速させることにより、天板51のスライドに由来する被検体Pの体感速度を軽減させることができる。図10及び図11に示すように、架台制御回路33は、天板51を加速させると共に上部フレーム61を減速させ停止させる。上部フレーム61は、当該上部フレーム61が開口41に含まれない位置に停止される。典型的には、架台10の-Z方向における架台10近傍に停止される。これにより、上部フレーム61がスキャンされる事に伴うアーチファクトの発生を防止することができる。
架台制御回路33は、天板位置が撮影開始位置Ptstartに到達するまで、換言すれば、撮影開始端Rsがスキャン面SPに到達するまでに天板51の見かけ速度を設定高速度まで加速させる。この際、天板51の見かけの速度が設定高速度に滑らかに到達するように、上部フレーム61を減速しつつ天板51を加速させる。
以上により、架台制御回路33による開始補助動作が終了する。このように、開始補助動作によれば、初期位置Ptiから天板51と上部フレーム61とを移動開始位置Ptlまで後退させた後、まず上部フレーム61を加速させ、上部フレーム61の減速時に天板51を加速させる。これにより、天板51が設定高速度まで到達するまでの天板51の上部フレーム61に対する移動距離を増加させることができ、上部フレーム61を固定した場合に比して天板51の加速度を低減することができる。よって、加速による被検体Pへの負担を軽減することができる。
なお、上記の説明において天板51と上部フレーム61とは、開始補助動作において、まず、初期位置Ptiから移動限界位置Ptlに後退されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、架台制御回路33は、開始補助動作において、まず、初期位置Ptiから、移動限界位置Ptlよりもスキャン面SPよりの移動開始位置に後退されても良い。初期位置Ptiから移動開始位置までの後退距離、換言すれば、移動開始位置は、撮影計画機能117において処理回路101により算出される。
例えば、処理回路101は、撮影開始位置Ptstartと設定速度とに基づいて移動開始位置を決定する。より詳細には、処理回路101は、初期位置Ptiから撮影開始位置Ptstartまでの距離と許容加速度とに基づいて後退距離を算出する。具体的には、天板51を移動開始位置から撮影開始位置Ptstartにスライドする際の加速度が許容加速度に一致するような後退距離が算出される。そして初期位置Ptiから後退距離だけ離れた位置が移動開始位置に設定される。
当該実施例によれば、天板51と上部フレーム61とを移動限界位置まで後退させる場合に比して後退距離を短縮できるので、加速に伴う被検体Pの負担を軽減しつつ、ヘリカルスキャンのスループットを向上させることができる。
なお、上記の開始補助動作においては、初期位置PTiは、移動開始位置に位置していない場合を想定した。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、X線コンピュータ断層撮影装置1の立ち上げ時や次患者への切り替え時において天板51は、架台制御回路33の制御のもと移動限界位置等の移動開始位置に位置される。この場合、ステップSB1における後退動作は不要である。
図12に示すように、天板位置が撮影開始位置Ptstartに到達すると架台制御回路33は、寝台駆動装置25を制御して天板51を設定高速度で定速移動させつつ、X線高電圧装置17、データ収集回路19及び架台駆動装置21を同期的に制御して被検体Pを撮影範囲R1に亘りスキャンする(ステップSB4)。そして架台制御回路33は、天板位置が撮影終了位置Ptend、換言すれば、撮影終了端Reがスキャン面SPに到達すると、X線高電圧装置17、データ収集回路19及び架台駆動装置21を同期的に制御してスキャンを終了する(ステップSB5)。
天板位置が撮影終了位置Ptendに到達した事を契機として架台制御回路33は、停止補助動作を開始する。
図13は、停止補助動作の天板51と上部フレーム61との動作を模式的に示す図である。図13に示すように、スキャン終了時において天板位置は撮影終了位置Ptendに位置し、上部フレーム61は撮影終了位置Pfeに位置する。スキャン時において上部フレーム61は移動しないので、撮影終了位置Pfeは、開始補助動作における上部フレーム61の停止位置と同じである。すなわち、撮影終了位置Pfeは、開口41の前方である。図10、図11及び図13に示すように、架台制御回路33は、天板位置が停止位置Pstopに到達するまでに天板51の見かけ移動速度が緩やかにゼロになるように、上部フレーム61を天板51の進行方向と同方向に加減速させる。
具体的には、まず、架台制御回路33は、天板位置が撮影終了位置Ptendに到達することを契機として、天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを制御し、天板51を進行方向に沿って減速させつつ上部フレーム61を同方向に加速させる(ステップSC1)。この際、上部フレーム61が開口41内に浸入することになるが、これは許容される。スキャンが終了しているため、上部フレーム61に対するスキャンに伴うアーチファクトを気にする必要がないためである。
その後、架台制御回路33は、フレーム駆動制御装置64による上部フレーム61の加速制御の開始から所定時間経過後に、天板51を停止させるように天板駆動制御装置62を制御する(ステップSC2)。当該所定時間は、例えば、上部フレーム61の加速の開始から、加速の終了後の減速の期間内の何れかの時点までの時間に設定される。
具体的には、架台制御回路33は、上部フレーム61が所定速度に到達したことを契機として天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを制御して、上部フレーム61を減速させると共に、上部フレーム61の減速中に天板51を上部フレーム61に対して停止させる。ステップSC2の時点においては天板51を支持する上部フレーム61がスライドしているので、天板51の見かけの位置は移動している。架台制御回路33は、フレーム駆動制御装置64を制御して、天板位置が停止位置Pstopで停止するように、上部フレーム61を緩やかに停止させる。これにより天板51の見かけの位置も停止する。
以上により、架台制御回路33による停止補助動作が終了する。このように、停止補助動作によれば、天板位置が撮影終了位置Ptendに到達した後、天板51を進行方向に沿って減速させつつ上部フレーム61を同方向に沿って加速させ、上部フレーム61の減速時に天板51を上部フレーム61に対して停止させ、その後、上部フレーム61を停止させる。これにより、天板51が見かけの位置に停止するまでの天板51の上部フレーム61に対する移動距離を増加させることができるので、天板51の減速度(-Z方向に関する加速度)を、上部フレーム61を固定した場合に比して低減することができる。よって、減速による被検体Pへの負担を軽減することができる。
以上により、体感速度緩和モードでのヘリカルスキャンにおけるX線コンピュータ断層撮影装置1の動作例についての説明を終了する。
なお、本実施形態に係るヘリカルスキャンは片道ヘリカルスキャンのみに限定されず、往復ヘリカルスキャンにも適用可能である。この場合、例えば、架台制御回路33は、往路スキャンにおいては、天板位置を撮影範囲の進行方向(例えば、+Z方向)手前側端部に加速させる際に開始補助動作を行う。また、架台制御回路33は、天板位置を撮影範囲の進行方向奥側端部まで通過させた後、折り返し点にて天板51を停止させる際に停止補助動作を行う。また、架台制御回路33は、復路スキャンにおいても同様に、天板位置を撮影範囲の進行方向(例えば、-Z方向)手前側端部に加速させる際に開始補助動作を行い、天板位置を撮影範囲の進行方向奥側端部まで通過させた後、折り返し点にて天板51を停止させる際に停止補助動作を行う。
これにより往復ヘリカルスキャンにおいても加減速に伴う被検体Pの負担を軽減することができる。
本実施形態に係る体感速度緩和モードは寝台23の緊急停止時にも適用可能である。以下、緊急停止時における天板51と上部フレーム61との動作について説明する。なお、緊急停止とは、寝台23や架台10、X線コンピュータ断層撮影装置1等の機械的要因により緊急的に寝台23の動作を停止させることを指す。機械的要因とは、例えば、停電等を指す。緊急停止の場合、天板51は任意の位置に停止させても良いことが多い。
図14は、本実施形態に係る緊急停止動作の天板51と上部フレーム61との動作を模式的に示す図である。図14に示すように、天板51を移動させている際、緊急停止指示が架台制御回路33に入力されるとする(ステップSD1)。緊急停止指示は、寝台23に設けられた入力パネルから入力されても良いし、コンソール100の入力装置105から入力されても良いし、コンソール100にネットワークを介して接続されたサービスセンタから入力されても良い。緊急停止指示が入力されると架台制御回路33は、停止補助動作を実行する。すなわち、架台制御回路33は、天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを制御して、天板51を上部フレーム61に対して進行方向に沿って減速させつつ上部フレーム61を同方向に沿って加速し(ステップSD2)、上部フレーム61を減速させつつ天板51を上部フレーム61に対して停止させた後、上部フレーム61を停止させる(ステップSD3)。これにより、天板の緊急停止による被検体Pへの衝撃を緩和させることができる。
本実施形態に係る体感速度緩和モードは寝台23の即時停止時にも適用可能である。以下、即時停止時における天板51と上部フレーム61との動作について説明する。なお、即時停止とは、例えば、被検体P等の人的要因等により即時に寝台23の動作を停止させることを指す。人的要因とは、例えば、スライド時の天板51への被検体Pやユーザの接触等を指す。即時停止の場合、天板51は即時停止指示が入力された時点の位置に停止させることが望ましい。
図15は、本実施形態に係る即時停止動作の天板51と上部フレーム61との動作を模式的に示す図である。図15に示すように、天板51を移動させている際、即時停止指示が架台制御回路33に入力されるとする(ステップSE1)。即時停止指示は、寝台23に設けられた入力パネルから入力されても良いし、コンソール100の入力装置105から入力されても良いし、コンソール100にネットワークを介して接続されたサービスセンタから入力されても良い。また、天板51や上部フレーム61等の寝台構造物への機械的接触が検知されたことを契機として架台制御回路33が即時停止指示を生成しても良い。即時停止指示が入力又は生成されると架台制御回路33は、即時停止補助動作を実行する。すなわち、架台制御回路33は、天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを制御して、天板51を上部フレーム61に対して進行方向に沿って減速させつつ、上部フレーム61を天板51の進行方向とは反対方向に沿って加速する(ステップSE2)。その後、架台制御回路33は、天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを制御して、上部フレーム61と天板51とを略同時に停止させる(ステップSE3)。この際、架台制御回路33は、即時停止指示の入力時点から天板51停止まで天板の見かけの位置が変化しないように、天板51と上部フレーム61との移動速度を調節する。これにより、天板51の即時停止による被検体Pへの衝撃を緩和させつつ天板51の見かけの移動距離を削減することができる。
なお、上記の寝台23の構造は、一例であって、本実施形態はこれに限定されない。例えば、本実施形態に係る寝台23は、天板51と上部フレーム61等の天板支持構造物とがZ方向に関して独立に移動可能でれば如何なる構造を有しても良い。例えば、上部フレーム61と支持台55との代わりに、天板51をスライド可能に支持しつつZ方向に関して独立に移動可能な自走式の支持台が設けられても良い。
また、本実施形態に係る寝台23の支持台55は、昇降に伴い上部フレーム61及び下部フレーム63を架台10に対して接近又は離間するXリンク65を装備するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態に係る支持台55は、上部フレーム61及び下部フレーム63を昇降できるのであれば、如何なる昇降機構を装備しても良い。例えば、上部フレーム61及び下部フレーム63に対する架台10の距離を固定しつつ昇降するXリンクを装備しても良いし、Xリンク以外の他の昇降機構を装備しても良い。
また、上記の説明においては、体感速度緩和モードにおいて開始補助動作と停止補助動作との両方が行われるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、開始補助動作と停止補助動作との何れか一方のみが行われても良い。
上記の構成により、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、架台10、上部フレーム61、天板駆動制御装置62、フレーム駆動制御装置64及び架台制御回路33を有する。架台10は、X線管13とX線検出器15とを有する。上部フレーム61は、被検体が載置される天板51を天板51の長手方向であるZ方向に移動可能に支持する。天板駆動制御装置62は、天板51をZ方向に移動する。フレーム駆動制御装置64は、上部フレーム61をZ方向に移動する。架台制御回路33は、天板51を設定速度まで加速させるための開始補助動作と天板51を停止するための停止補助動作との少なくとも一方を実行するために天板駆動制御装置62とフレーム駆動制御装置64とを制御する。架台制御回路33は、開始補助動作の際、スキャン条件に基づいて決定される移動開始位置に上部フレーム61を位置させた後、スキャンにおける被検体Pの移動開始の際、天板51の移動に先立ち、上部フレーム61を進行方向に沿って加速させるようにフレーム駆動制御装置64を制御し、フレーム駆動制御装置64による上部フレーム61の加速制御の開始から所定時間経過後に、天板51を進行方向に沿って設定速度まで加速させるように天板駆動制御装置62を制御する。停止補助動作の際、架台制御回路33は、天板51の減速時に上部フレーム61を進行方向に沿って加速させるようにフレーム駆動制御装置64を制御し、フレーム駆動制御装置64による上部フレーム61の加速制御の開始から所定時間経過後に、天板51を停止させるように天板駆動制御装置62を制御する。
開始補助動作によれば、天板51が設定高速度まで到達するまでの天板51の上部フレーム61に対する移動距離を増加させることができ、上部フレーム61を固定した場合に比して天板51の加速度を低減することができる。よって、加速による被検体Pへの負担を軽減することができる。停止補助動作によれば、天板51が見かけの位置が停止するまでの天板51の上部フレーム61に対する移動距離を増加させることができるので、天板51の減速度(-Z方向に関する加速度)を、上部フレーム61を固定した場合に比して低減することができる。よって、減速による被検体Pへの負担を軽減することができる。天板51の長さは、撮影範囲の距離だけでなく加減速範囲の距離を考慮して決定されると良い。体感速度緩和モードの搭載により、加減速範囲の距離を削減することが可能になり、典型的には、天板の長さを短くし、ひいては寝台23を小型化することが可能になる。
以上、上記少なくとも一の実施形態によれば、天板の加減速による患者の負担を軽減することが可能になる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。