以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明の第1実施形態に係る製造方法によって得られる棒状化粧料製品1が示されている。棒状化粧料製品1は、棒状化粧料容器2と、中皿10の収容空間内に下端域が収容されている棒状化粧料3とを備えている。図1には、棒状化粧料製品1が棒状化粧料容器2と棒状化粧料3とから構成されている状態が示されているが、棒状化粧料製品1は、これらの構成要素に加えて、図1に二点鎖線で示すキャップ4を備えていてもよい。
棒状化粧料製品1の構成要素の一つである棒状化粧料容器2は、中皿10を備えている。中皿10は筒状の部材である。中皿10においては、中皿の環状の周壁部11と底部12とで、上方に向けて開口した空間Sが画成されている。この空間Sは、棒状化粧料3の下端域3aの収容が可能な収容空間となっている。空間Sと棒状化粧料3の下端域3aとは概ね相補形状になっている。
中皿10の底部12には、該中皿10の昇降機構20が連設されている。昇降機構20は、昇降基部21を有している。昇降基部21は筒状の形状をしており、その外周面に、周方向に沿って延びる複数の環状段差部を有している。複数の環状段差部は昇降基部21の上下方向に沿って距離を隔てて形成されている。複数の環状段差部のうち、最も下側に位置する第1段差部21aは、昇降機構20が、後述する本体部40内に収容されたときに、図1に示すとおり、該本体部40の内周壁に突設された係合用突起部42と係合するようになっている。第1段差部21aよりも上下方向の上方の位置には第2段差部21bが形成されている。第2段差部21bは、図1に示すとおり、後述する外筒30内に昇降機構20が収容された状態において、該外筒30の下端域に形成された係合用環状突起部31と係合するようになっている。第2段差部21bよりも上下方向の上方の位置には第3段差部21cが形成されている。第3段差部21cには、図2に示すとおり、Oリング24が取り付けられている。Oリング24は、外筒30内に昇降機構20が収容された状態において、該外筒30と昇降機構20との間にがたつき等が生じないようにするために用いられる。
図1に示すとおり、昇降基部21はこれを横断面視したときに、その中央域が空間21sになっている。この空間21sは昇降基部21の上下方向に沿って延びており、上部において開口している。この空間21sを画成する内周壁には雌ネジ21dが設けられている。空間21s内には、第1昇降部22が挿入される。第1昇降部22は略円筒形をした部材であり、その外面に雄ネジ22aが設けられている。この雄ネジ22aは、上述した昇降基部21の雌ネジ21dと螺合するようになっている。したがって第1昇降部22を昇降基部21の空間21s内に挿入するときには、第1昇降部22をその軸周りに回転させて、雄ネジ22aと雌ネジ21dとの螺合を進行させる。螺合の進行によって第1昇降部22は降下する。第1昇降部22の回転方向を反転させることで、第1昇降部22は上昇する。第1昇降部22の降下は、該第1昇降部22の上端に設けられているフランジ部22cが、昇降基部21の上端近傍の段差部に当接することで制限されるようになっている。
図1に示すとおり、略円筒形をしている第1昇降部22には、その内部に形成された空間を画成する内周壁に、雌ネジ22bが設けられている。第1昇降部22の内部の空間内には、第2昇降部23が挿入される。第2昇降部23は略円柱形をした部材であり、その外面に雄ネジ23aが設けられている。この雄ネジ23aは、上述した第1昇降部22の雌ネジ22bと螺合するようになっている。第2昇降部23を第1昇降部22の空間内に挿入するときには、第2昇降部23をその軸周りに回転させて、雄ネジ23aと雌ネジ22bとの螺合を進行させる。螺合の進行によって第2昇降部23は降下する。第2昇降部23の回転方向を反転させることで第2昇降部23は上昇する。
第2昇降部23は、横断面視したときの中央域に、上下方向に沿って延びる排気孔5を有している。排気孔5は、第2昇降部23及び第2昇降部23の上部に連設されている中皿10の底部12を上下方向に貫通している。
排気孔5は、排気孔5が閉鎖部材50により閉鎖されていない状態(以下、排気孔の非閉鎖状態ともいう)においては、棒状化粧料3の下端域3aが収容される収容空間Sの内外を連通し、棒状化粧料3の下端域3aを中皿10の収容空間Sに挿入する際に、収容空間S内の空気を収容空間S外に排出する空気抜き用の孔として機能する。図1及び図4(e)に示すとおり、排気孔5が閉鎖部材50により閉鎖されている状態(以下、排気孔の閉鎖状態ともいう)においては、排気孔5を介した空気の流通が遮断され、収容空間S外の空気が収容空間S内に流入することが阻止される。排気孔5の横断面形状は、本実施形態においては円形であるが、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形や楕円形等の他の形状であっても良い。閉鎖部材50の詳細については後述する。
棒状化粧料容器2は外筒30を備えている。図1及び図2に示すとおり、外筒30は円筒形をした部材であり、その内部に、上述した中皿10及び昇降機構20を収容可能になっている。外筒30の下端は、該外筒30の軸線と直交する平面上に位置している。外筒30の上端は、斜円柱の底面の周形状をしている。外筒30の下端域には、該外筒30の周方向に沿って延びる係合用環状突起部31が形成されている。係合用環状突起部31は、外筒30の内部の空間へ向けて突出している。係合用環状突起部31は、上述したとおり、昇降機構20の昇降基部21における第2段差部21bと係合するようになっている。
棒状化粧料容器2は本体部40を備えている。本体部40は、略円筒状に形成された第1本体部44と、有底筒状であり、且つ底部孔43を有する第2本体部45とを備えている。第1本体部44と第2本体部45との間には段差が形成されている。本体部40は、その内部に空間41を有している。この空間41は本体部40の上下方向に沿って延びており、上部において開口し、下部において底部孔43を通じてと本体部40の外部と連通している。本体部40の空間41内には、外筒30及び昇降機構20、並びに棒状化粧料3の下端域3aが収容される。本体部40の空間41を画成する内周壁には、その下端域に係合用突起部42が突設されている。この係合用突起部42は、上述したとおり、昇降機構20の昇降基部21における第1段差部21aと係合するようになっている。
本体部40は、本実施形態においては略円筒状であるが、外筒30及び昇降機構20、並びに棒状化粧料3の下端域3aが収容される構造を有していれば特に限定されない。例えば、横断面が楕円形などであっても良く、あるいは横断面が三角形、四角形、五角形及び六角形等の多角形等の他の形状であっても良い。
本体部40の下端の中心域には、後述する閉鎖部材50を外部から本体部40内へ挿入するための底部孔43が設けられている。底部孔43は、昇降基部21の空間21s内外及び排気孔5内外と連通するように設けられている。閉鎖部材50を本体部40外から本体部40内へ挿入可能とする観点から、底部孔43の直径は、閉鎖部材50の最大外径の100%以上200%以下であることが好ましく、100%以上150%以下であることがより好ましい。
閉鎖部材50は、排気孔5の少なくとも開口端を閉鎖するものである。その結果、排気孔5を介した空気の流通を遮断し、棒状化粧料3の挿入状態を固定することができる。閉鎖部材50は、排気孔5を介した空気の流通を遮断が可能であれば、その形状に特に制限はなく、例えば排気孔5内へ挿入可能な栓体であってもよく、排気孔5の開口端を覆うように係合可能な蓋体であってもよい。
以下に、閉鎖部材50として排気孔5内へ挿入可能な栓体を用いた場合の実施形態を図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態では、閉鎖部材50を栓体50として説明する。
図3(a)には栓体50の平面図が示されており、図3(b)には栓体50の正面図が示されている。栓体50は、収容空間Sの内外を連通する前述した排気孔5内に挿入されても排気孔5及び底部孔43を介した空気の流通が維持される第1挿入部51と、排気孔5に挿入されると排気孔5を介した空気の流通を遮断する第2挿入部52と、台座部53とを、高さ方向に沿ってこの順で備えている。これらの構造を有する栓体50を第1挿入部51側から底部孔43を介して排気孔5に挿入することによって、排気孔5を閉鎖することができる。
図3(a)及び(b)に示すとおり、第1挿入部51は、挿入方向に細長い略円柱状に形成されている。第1挿入部51は、第1挿入部51を排気孔5内に挿入した場合でも排気孔5及び底部孔43を介した空気の流通が維持されるようにする観点から、第1挿入部51は、第2昇降部23の内周壁の内径よりも小さい外径を有していることが好ましい。
第2挿入部52には、第2昇降部23の内周壁に当接して排気孔5を閉鎖可能な複数の環状リブ52aが設けられている。栓体50に複数の環状リブ52aが設けられていることにより、排気孔5の密閉性を向上させることができる。環状リブ52aはそれぞれ同じ外径で形成されていてもよく、環状リブ52aの外径が台座部53に向かって段階的に大きくなるように形成されていてもよい。環状リブ52aの外径は、第2昇降部23の内周壁に当接して、排気孔5の内部で固定される観点から、第2昇降部23の内周壁の内径の100%以上110%以下であることが好ましく、100%超110%以下であることがより好ましい。
棒状化粧料製品1は、以上の構成を有する棒状化粧料容器2を用い、これに棒状化粧料3を固定することによって製造することができる。本製造方法を図4(a)ないし図4(f)を参照しながら説明する。
まず図4(a)に示すとおり、底部孔43を有する本体部40内に、中皿10を含む昇降機構(図示せず)、及び外筒30を組み付ける。組み付けに際しては、第1昇降部22及び第2昇降部23を回転させて、中皿10を繰り出した状態とし、外筒30を組み付けた後で中皿10を繰り下げる。次に、その中皿10を繰り下げた状態にした昇降機構及び外筒30に、底部孔43を有する本体部40を更に組み付け、中皿10を繰り出した状態にする。
次に、繰り出した状態の中皿10の収容空間Sに、図4(a)及び図4(b)に示すとおり、棒状化粧料3の下端域3aを挿入して収容させる。この状態では、排気孔5が閉鎖されていないので、排気孔5を介した空気の流通が維持されている。そのため、棒状化粧料3の下端域3aを収容空間Sに挿入した場合であっても、その挿入の際には、挿入の進行に伴い収容空間S内の空気が排気孔5及び底部孔43を介して収容空間S外に排出される。これらの構造は、棒状化粧料3の下端域3aの外周面を中皿10の内周面に接触させながら収容空間Sに挿入する場合に有利である。
棒状化粧料3が中皿10の収容空間S内に収容されたら、外筒30を把持した状態で本体部40を軸周りに回転させる。これによって図4(c)に示すとおり、繰り出し状態になっている中皿10が次第に繰り下げられる。この状態では排気孔5が閉鎖されていないので、排気孔5を介した空気の流通が維持されている。
続いて、棒状化粧料3が中皿10の収容空間S内に収容された状態で且つ中皿10を最も繰り下げた状態で、図4(d)及び4(e)に示すとおり、本体部40の底部孔43から排気孔5に向けて栓体50を挿入し、排気孔5を閉鎖する。底部孔43から栓体50を挿入する方法は特に限定されない。例えば、棒状化粧料容器2を一方の手で把持し、他方の手で栓体50を人手やピンセットなどの器具を用いて押し込むことによって、栓体50を排気孔5に挿入することができる。また、例えば図4(d)に示すとおり、栓体50がその一部だけ挿入された状態の棒状化粧料容器2を一方の手で把持し、本体部40の底部から突出している栓体50の台座部53を平板等に押しつけることによって、栓体50を排気孔5に挿入することもできる。
図4(e)に示すとおり、栓体50が第2挿入部52まで排気孔5に挿入された状態においては、排気孔5を介した空気の流通が遮断される。排気孔5を介した空気の流通が遮断されると、排気孔5を介して収容空間S外の空気が収容空間S内に流入することが阻止されるとともに、排気孔5を介して収容空間S内の空気が収容空間S外に流出することも阻止される。
排気孔5に栓体50を挿入して排気孔5を閉鎖することによって、棒状化粧料容器2に上下方向の振動等が作用して棒状化粧料3が中皿10の底部12から離れそうになったとしても、棒状化粧料3と中皿10の収容空間Sとの間に負圧の空間が形成されるため棒状化粧料3が中皿10から抜けにくくなる。これによって、棒状化粧料3の下端域3aが中皿10の収容空間S内に安定的に保持され、棒状化粧料3の中皿10からの抜けが効果的に防止される。このようにして、目的とする棒状化粧料製品1が得られる。
以上のとおりの製造方法によれば、棒状化粧料3を中皿10に挿入した後、所望のタイミングで閉鎖部材50(栓体50)を挿入することができるので、先に述べた特許文献2に記載の技術と異なり、棒状化粧料製品の具体的に構造に応じて、排気孔5の閉鎖時期の自由度が増すという利点がある。
本実施形態においては、本体部40に設けられている底部孔43は、栓体50を挿入した後でも開孔した状態となっている。閉鎖部材50の本体部40外への脱落防止や昇降機構20内部への異物混入防止の観点から、底部孔43を閉鎖しておくことが好ましい。底部孔43を閉鎖する方法としては、シール等の粘着性部材を張り付けて封止する方法や、パテ等の時間経過とともに硬化する材料で閉鎖する方法が挙げられる。
図4(d)に示すとおり、閉鎖部材50により排気孔5が一旦閉鎖された後においては、図4(f)に示すとおり、棒状化粧料3の下端域3aが収容された中皿10を再び繰り出しても、閉鎖部材50による排気孔5の閉鎖状態が維持される。これにより、使用者が中皿10を繰り出して棒状化粧料3を使用する場合や、消費者等が中皿10を繰り出した状態で、運搬又は保管している場合に、棒状化粧料3の中皿10からの抜けが効果的に防止される。
閉鎖部材50として栓体50を用いた場合に、その栓体50の挿入方向における長さに特に制限はないが、棒状化粧料製品1の中皿10を最も繰り下げた状態において、排気孔5へ挿入された栓体50の台座部53が本体部40の外側底部から突出しない長さを有していることが好ましい。例えば、中皿10を最も繰り下げた状態における、中皿10の底部12と本体部40の底部との間の長さを栓体50の長さとすることができる。
環状リブ52aは、棒状化粧料製品1を組み立てる際において、栓体50の挿入方向の目印や、環状リブ52aが滑り止めの役割を有する持ち手としても機能することができる。特に棒状化粧料3を中皿10に挿入した後、栓体50を排気孔5内に挿入し空気の流通を遮断する際に、栓体50の挿入方向を間違えることなく挿入することができる。このように、環状リブ52aは、栓体50を排気孔5に挿入する製造工程を含む棒状化粧料製品の製造工程全体における作業性を向上させることができる。
次に、本発明の第2ないし第4実施形態を、図5ないし図11を参照しながら説明する。これらの実施形態については、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、特に説明しない点については第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、図5ないし図11において、図1ないし図4と同じ部材には同じ符号を付してある。
図5ないし図7に示す第2実施形態に係る製造方法は、閉鎖部材の形状及び排気孔を閉鎖する方法が第1実施形態と異なる。図5に示すとおり、本実施形態での製造の対象となる棒状化粧料製品1Aは、棒状化粧料容器2Aと、棒状化粧料3とを備えている。棒状化粧料容器2Aは、中皿10と、該中皿10の昇降機構20と、外筒30と、本体部40と、栓体である閉鎖部材50Aを有している。第1実施形態における閉鎖部材50と異なり、第2実施形態における閉鎖部材50Aは、閉鎖部材50Aの挿入方向先端が棒状化粧料3の下端域3aに食い込むように挿入されている。第2実施形態における以下の説明では、閉鎖部材50Aを栓体50Aとして説明する。
図6(a)には栓体50Aの平面図が示されており、図6(b)には栓体50Aの正面図が示されている。栓体50Aは、排気孔5内に挿入されても排気孔5及び底部孔43を介した空気の流通が維持される第1挿入部51Aと、排気孔5に挿入されると排気孔5を介した空気の流通が遮断される第2挿入部52と、台座部53とを備えている。これらの構造を有する栓体50Aを第1挿入部51A側から底部孔43を介して排気孔5に挿入することによって、第1実施形態の栓体50と同様に、排気孔5を閉鎖することができる。
図6(a)及び(b)に示すとおり、第1挿入部51Aには螺条が設けられている。第1挿入部51Aの挿入方向先端は円錐状の尖部51aを有する。第2挿入部52は、第2昇降部23の内周壁に当接して排気孔5を閉鎖可能な複数の環状リブ52aが設けられている。
図6(a)及び(b)に示す栓体50Aを用いた棒状化粧料製品1Aの製造方法では、先に説明した図4(a)ないし図4(c)と同一の工程を行った後、図7(a)及び(b)の順に示す工程で棒状化粧料製品1Aの製造を行う。
図4(a)ないし図4(c)に示す工程を行ったら、棒状化粧料3が中皿10の収容空間S内に収容された状態且つ中皿10を最も繰り下げた状態で、図7(a)に示すとおり、本体部40の底部孔43から排気孔5に向けて栓体50Aを挿入し、排気孔5を閉鎖する。次いで図7(b)に示すとおり、栓体50Aを排気孔5へ挿入し排気孔5を閉鎖しながら、栓体50Aをその軸周りに回転させてその尖部51aを棒状化粧料3の下端域3aに食い込ませて螺合する。
底部孔43から栓体50Aを挿入する方法は、第1実施形態で用いた栓体50の挿入方法と同様に特に限定されないが、第1挿入部51Aに設けられた螺条に沿って回転させながら栓体50Aを挿入することが好ましい。これによって、棒状化粧料3に損傷を与えることなく、棒状化粧料3の下端域3aを収容空間Sに挿入した状態を維持させることができる。
本実施形態によれば、栓体50Aの尖部51aを棒状化粧料3の下端域3aに食い込ませて螺合することによって、栓体50Aの尖部51aと棒状化粧料3の下端域3aとが当接し、棒状化粧料3の収容状態が強く保持されている。このことに起因して、本実施形態によれば、先に述べた第1実施形態において奏される効果に加え、棒状化粧料3の下端域3aが、中皿10の収容空間S内により安定的に保持され、棒状化粧料3の中皿10からの抜けが効果的に防止されるという効果も奏される。このようにして、目的とする棒状化粧料製品1Aが得られる。
図8ないし図10には、本発明の第3実施形態が示されている。本実施形態に係る製造方法では、本体部の形状及び閉鎖部材の挿入工程が第1実施形態と相違する。図8に示すとおり、本製造方法で得られる棒状化粧料製品1Bは、棒状化粧料容器2Bと、棒状化粧料3とを備えている。棒状化粧料容器2Bは、中皿10と、該中皿10の昇降機構20と、外筒30と、本体部40Bと、栓体である閉鎖部材50(栓体50)を有している。図10に示すとおり、第1実施形態における本体部40と異なり、本実施形態における本体部40Bは、その底部に底部孔を有していない。第3実施形態における以下の説明では、第1実施形態での説明と同様に、閉鎖部材50を栓体50として説明する。
図8に示すとおり、本体部40Bは、略円筒状に形成された第1本体部44Bと、有底筒状の第2本体部45Bとを備えている。本体部40Bの空間内には、外筒30及び昇降機構20、並びに棒状化粧料3の下端域3aが収容される。
本製造方法を図9(a)ないし図9(e)並びに図10(a)及び(b)を参照しながら説明する。まず図9(a)に示すとおり、中皿10を含む昇降機構20と外筒30とを組み付ける。組み付けに際しては、第1昇降部22及び第2昇降部23を回転させて、中皿10を繰り出した状態とする。この状態では、中皿10を含む昇降機構20及び外筒30を本体部40Bに組み付けない。
次に、繰り出した状態の中皿10の収容空間Sに、図9(b)に示すとおり、棒状化粧料3の下端域3aを挿入して収容させる。この状態では、排気孔5が閉鎖されていないので、排気孔5を介した空気の流通が維持されている。棒状化粧料3が中皿10の収容空間S内に収容されたら、外筒30を把持した状態で昇降基部21を軸周りに回転させる。これによって図9(c)に示すとおり、繰り出し状態になっている中皿10が次第に繰り下げられる。この状態でも、排気孔5が閉鎖されていないので、排気孔5を介した空気の流通が維持されている。本工程でも、中皿10を含む昇降機構20及び外筒30を本体部40Bに組み付けない。
棒状化粧料3が中皿10の収容空間S内に収容された状態且つ中皿10を最も繰り下げた状態で、図9(d)に示すとおり、排気孔5に向けて栓体50を挿入し、排気孔5を閉鎖する。底部孔43を通じての栓体50の挿入は、第1実施形態と同様に行うことができる。このようにして、図9(e)に示すとおり、栓体50はその全体が排気孔5内に挿入されて、該排気孔5は該栓体50によって完全に閉鎖される。
引き続き図10(a)に示すとおり、図9(e)に示す状態の棒状化粧料3、中皿10及び栓体50を含む昇降機構20、及び外筒30を本体部40Bの上部から本体部40Bの空間41B内に挿入し、昇降機構20の昇降基部21における第1段差部21aと係合用突起部42Bとを係合させる。最後に図10(b)に示すとおり、昇降機構20を降下させる。これによって、目的とする棒状化粧料製品1Bを製造することができる。
本実施形態によれば、先に述べた第1実施形態と同様に、棒状化粧料製品の具体的な構造に応じて、閉鎖部材50の挿入時期の自由度が増すという利点がある。
本製造方法において、図9(e)に示す形態は、棒状化粧料容器2Bの構成のうち本体部40Bを設けていない形態となっているところ、この形態を交換可能な(いわゆる詰め替え用の)棒状化粧料製品としてもよい。詳細には、図10(b)に示す実施形態において、棒状化粧料3の使用を終了した棒状化粧料製品1Bの外筒30を外筒30内に中皿10と昇降機構20を備えられている状態で、使用者が本体部40Bから分離し、詰め替え用の棒状化粧料製品の外筒30と本体部40Bとを係合することによって、新しい棒状化粧料製品1Bとして使用することができる。図9(e)に示す形態を棒状化粧料製品とする実施形態は、ゴミの低減に起因した環境負荷の低減や、棒状化粧料3を定期的に交換可能な構造とすることで、棒状化粧料3の塗布をより衛生的に行うことができる。
図11(a)及び(b)に示す第4実施形態では、閉鎖部材50Bとして、排気孔5の内径よりも小さい外径を有し、且つ膨張可能なものが用いられている。この閉鎖部材50Bを用いた製造方法は次のとおりである。すなわち図11(a)に示すとおり、排気孔5の内径よりも小さい外径を有する閉鎖部材50Bを排気孔5に挿入する。この時点では、閉鎖部材50Bは排気孔5を完全に閉鎖していない。次いで閉鎖部材50Bに、該閉鎖部材50Bを膨張させる膨張剤を施し、該閉鎖部材50Bを膨張させる。その結果、図11(b)に示すとおり閉鎖部材50Bは排気孔5内を満たし、該排気孔5を完全に閉鎖する。
本実施形態によれば、先に述べた第1実施形態と同様に、棒状化粧料製品の具体的な構造に応じて、閉鎖部材50Bの挿入時期の自由度が増すという効果が奏されることに加えて、閉鎖部材50Bの挿入が容易になるという効果も奏される。
膨張可能な閉鎖部材50Bの材料としては、シリコン、オレフィン系樹脂、エラストマー樹脂等が挙げられる。一方、閉鎖部材50Bを膨張させうる膨張剤としては、エステル油、エーテル油、アルコール油、炭化水素油、シリコーン油、フッ素油等の液体油、溶剤等が挙げられる。
図12(a)及び(b)に示す第5実施形態では、上述の第1ないし第4実施形態と異なり、排気孔5の開口端を閉鎖する閉鎖部材50として、排気孔5の開口端を覆う蓋状の閉鎖部材50Cが用いられている(以下、蓋状の閉鎖部材50Cを、単に蓋体50Cともいう。)。蓋体50Cは、第2昇降部23の外径と略同一の内径を有する有底筒状のものである。蓋体50Cには突起部51cが設けられており、第2昇降部23の下部に設けられた段差部23bと係合可能な構造となっている。第2昇降部23と蓋体50Cとが係合することによって、排気孔5の開口端を閉鎖し、排気孔5を介した空気の流通が遮断されるようになる。
この蓋体50Cを用いた製造方法は次のとおりである。すなわち図12(a)に示すとおり、中皿10を含む昇降機構20及び外筒30を本体部40Bに組み付けていない状態で、第2昇降部23の外径と略同一の内径を有する蓋体50Cを第2昇降部23の下部に係合させる。その結果、図12(b)に示すように該排気孔5の開口端が閉鎖され、排気孔5を介した空気の流通が遮断される。
蓋体50Cを第2昇降部23の下部に係合させる方法は特に限定されない。例えば、棒状化粧料容器2を一方の手で把持し、他方の手で蓋体50Cを人手やピンセットなどの器具を用いて押し込むことによって、蓋体50Cで排気孔5の開口端を閉鎖することができる。
その後、図10(a)及び(b)に示すように、図12(b)に示す状態の棒状化粧料3、中皿10及び蓋体50Cを含む昇降機構20、及び外筒30を本体部40Bの上部から本体部40Bの空間41B内に挿入し、昇降機構20の昇降基部21における第1段差部21aと係合用突起部42Bとを係合させる。最後に図10(b)に示すとおり、昇降機構20を降下させる。これによって、目的とする棒状化粧料製品を製造することができる。
本実施形態によれば、棒状化粧料製品の具体的な構造に応じて、閉鎖部材50による排気孔5の閉鎖時期の自由度が増すという効果が奏されることに加えて、排気孔5の閉鎖が容易になるという効果も奏される。
以上の各実施形態において用いられる棒状化粧料3としては、例えば口紅、リップクリーム、リップグロス、スティックアイシャドウ、アイブロー、アイライナー、スティックファンデーションなど棒状の形状を有する化粧料であれば、その種類に特に制限はない。
棒状化粧料3の処方は、この種の化粧料に用いられている処方と同様とすることができる。棒状化粧料3は一般にワックス類、ペースト類及びオイル類を主成分として含んでおり、更に着色顔料、パール顔料等の着色剤、体質顔料等の粉体、ポリマー、増粘剤、ゲル化剤、防腐剤、保湿剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含んでいる。ワックス類としては、植物ワックス、動物ワックス、石油ワックス及び鉱物ワックス等の天然ワックス又は合成ワックスのいずれでもよく、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ヒマワリ種子ロウ、水素添加ホホバ油、ミツロウ、硬化ひまし油、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、エチレンプロピレンオリゴマー、シリコーンワックス等を適宜配合したものを用いることができる。一方オイル類としては、トリグリセライド、ジグリセライド、モノエステル、ジエステル等のエステル油、その他ポリイソブテン、スクワラン等の分岐炭化水素油、シリコーン油、フッ素油、高級アルコール、ポリグリセリンエステル、コレステロールエステル、フィトステロールエステル、揮発性シリコーン等を用いることができる。これらワックス類及びオイル類はそれぞれ一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
第1ないし第3実施形態及び第5実施形態において用いられる閉鎖部材の形成材料としては、該閉鎖部材が挿入又は係合される第2昇降部、又は中皿昇降部よりも軟質材料により形成されることが好ましく、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム(NBR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等のゴムや、ポリエチレン、プロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、AS、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)等の合成樹脂が挙げられる。特に、密閉性及び挿入性の観点から、ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましい。
閉鎖部材が挿入又は係合される第2昇降部、又は中皿昇降部の形成材料としては、閉鎖部材よりも硬質材料により形成されることが好ましく、例えば、ポリアセタール(POM)が好ましい。閉鎖部材の形成材料の硬度は、中皿の形成材料の硬度と同等又はそれ以下であることが、中皿10の基本性能を維持しつつ、閉鎖部材の密閉性を高める観点から好ましい。
閉鎖部材の挿入又は係合の有無、すなわち排気孔5が閉鎖されているか否かを外部から容易に視認する観点から、閉鎖部材は昇降機構と識別可能な色で着色又は被覆されていることが好ましい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、中皿の昇降機構は、中皿の昇降機構として公知の各種の機構を用いることができ、第1昇降部及び第2昇降部のいずれか一方を有しないものであっても良い。
前記の各実施形態は、本発明の効果を奏する範囲で適宜に組み合わせることが可能である。例えば、第3実施形態に係る閉鎖部材50として、図6(a)及び(b)に示す閉鎖部材50A(栓体50A)を使用することもできる。
また第5実施形態では、蓋状の閉鎖部材50Cによって排気孔5を閉鎖した後で、棒状化粧料3、中皿10及び蓋体50Cを含む昇降機構20、及び外筒30と、本体部40Bとを係合したが、本体部40と、棒状化粧料3、昇降機構20及び外筒30とを係合した後で、閉鎖部材50Cを底部孔43を介して外部から挿入して排気孔5の開口端を閉鎖してもよい。