以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、第1実施形態における半導体装置100の上面を示す図である。本例において、第2方向としてのx方向と第1方向としてのy方向とは、互いに直交する方向である。z方向は、x‐y平面に垂直な方向である。x方向、y方向およびz方向は、いわゆる右手系を成す。なお、本例において、「上」および「上方」とは+z方向を意味し、「下」および「下方」とは-z方向を意味する。
本例の半導体装置100は、半導体基板10と、表面電極としてのソース電極54と、第1ワイヤとしてのソース電流用ワイヤ60と、第2ワイヤとしてのセンス電流用ワイヤ62と、ゲート電極パッド56と、ゲートランナ57と、ガードリング58とを少なくとも含む。本例の半導体装置100は、スイッチング素子としてのMOSFETを有する。
ソース電極54は、半導体基板10の上方に設けられる。ソース電極54は、Al(アルミニウム)またはAlを含む合金の金属膜であってよく、Ti(チタン)などのバリアメタル層上にAlまたはAlを含む合金の金属膜を積層させた積層膜であってもよい。
本例のソース電極54は、ソース電流用ワイヤ60が接続する第1領域50‐1と、センス電流用ワイヤ62が接続する第2領域50‐2とを有する。本例において、第1領域50‐1と第2領域50‐2との境界を点線により示す。ただし、本例において、第1領域50‐1と第2領域50‐2とは、y方向において物理的につながっており、材料または構造に差異が無い。それゆえ、当該境界はあくまで説明の便宜上の境界である。本例において、ソース電極54の第1領域50-1の厚みとソース電極54の第2領域50-2の厚みは同じである。
本例の第2領域50‐2は、ソース電極54のうち+x方向の端部かつ+y方向の端部に設けられる。本例の第2領域50‐2は、x方向およびy方向において所定の長さを有する帯状の領域である。一例において、Alを主成分とするワイヤの場合は第2領域50‐2のx方向幅は60[μm]であり、y方向の幅は120[μm]である。また、Al以外の金属、例えばCu(銅)やAu(金)を主成分とするワイヤの場合は、x方向の幅は60[μm]であり、y方向の幅は60[μm]以上である。
本例の第1領域50‐1は、第2領域50‐2よりも面積が大きい。第1領域50‐1の面積と第2領域50‐2の面積との比は、通常、主電流とセンス電流の比であるセンス比によって決まる。センス比によって決まる面積比が100:1から100000:1である場合、従来技術ではセンス部にソース電極と分離するためのパッド構造が必要になるため実際の面積比は50:1から1000:1になっていたのに対し、本発明ではセンス部にソース電極と分離するためのパッド構造が不要になるため実際の面積比が80:1から10000:1の範囲であってよい。本例においては、第1領域50‐1の面積と第2領域50‐2の面積との比は、約150:1である。
本例において、第1領域50‐1上には4つのソース電流用ワイヤ60が設けられ、第2領域50‐2上には1つのセンス電流用ワイヤ62が設けられる。第1領域50‐1と第2領域50‐2とは半田63を介してソース電流用ワイヤ60およびセンス電流用ワイヤ62にそれぞれ電気的に接続する。ソース電流用ワイヤ60の直径は、センス電流用ワイヤ62の直径よりも大きくてよい。ソース電流用ワイヤ60の直径は100[μm]以上であってよく、センス電流用ワイヤ62の直径は100[μm]未満であってよい。本例において、ソース電流用ワイヤ60の直径は300[μm]であり、センス電流用ワイヤ62の直径は50[μm]である。
ソース電流用ワイヤ60およびセンス電流用ワイヤ62は、互いに同じ材料であっても異なる材料であってもよい。当該材料は、Al、Au、Ag(銀)およびCuを主成分とするワイヤの1つまたはこれらの2以上の組み合わせであってよい。本例においては、ソース電流用ワイヤ60とセンス電流用ワイヤ62とはともにAlが主成分である。直径が大きいほどワイヤの抵抗は下がるので、本例においてソース電流用ワイヤ60の単位長さ当たりの抵抗は、センス電流用ワイヤ62の単位長さ当たりの抵抗よりも低い。
ソース電流用ワイヤ60は、センス電流用ワイヤ62と同じ長さを有してよく、センス電流用ワイヤ62よりも短い長さを有してもよい。本例においては、ソース電流用ワイヤ60は、センス電流用ワイヤ62と同じ長さを有する。なお、ソース電流用ワイヤ60の長さをセンス電流用ワイヤ62の長さよりも短くすることにより、1つのソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗を、1つのセンス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗よりも低くすることができる。
本例においては、各ワイヤの直径、材料および長さのいずれか一つ以上を調節することにより、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗が、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗よりも高くする。例えば、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗を、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗よりも2桁以上高くする。本例においては、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗を5[Ω]とし、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗を50[mΩ]とする。
なお、本例において、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗とは、ソース電流用ワイヤ60および第1領域50‐1における抵抗を意味する。なお、複数のソース電流用ワイヤ60が存在する本例においては、ソース電流用ワイヤ60流れる電流の経路の抵抗とは、複数のソース電流用ワイヤ60の合成抵抗および第2領域50‐2を意味する。また、本例において、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗とは、センス電流用ワイヤ62における抵抗を意味する。なお、ソース電流用ワイヤ60およびセンス電流用ワイヤ62が接続するリードフレーム等の抵抗は含まないものとする。
なお、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗を所定の抵抗値に設定するべく、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路にワイヤとは別途に抵抗体を付加してもよい。例えば、ソース電流用ワイヤ60の直径とセンス電流用ワイヤ62の直径とを同じとして、センス電流用ワイヤ62とは別途に抵抗体を付加する。これにより、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗を、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗よりも高くすることができる。この場合、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗とは、センス電流用ワイヤ62および別途に設けた抵抗体の合成抵抗を意味する。
MOSFET中を+z方向に流れてきた電流は、ソース電極54のx‐y平面内においてより低抵抗の領域へ流れる可能性がある。本例においてはセンス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗がソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗よりも高いので、第1領域50‐1から第2領域50‐2には電流が流れ込みにくい。これにより、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流(主電流)に比べて、センス電流用ワイヤ62に流れる電流(センス電流)を小さくすることができる。
なお、MOSFET中を+z方向に流れてきた電流のうち第2領域50‐2に到達した電流は、その全てが第1領域50‐1に流れるわけではない。例えば、第2領域50‐2に到達した電流は、ソース電極54のシート抵抗により第1領域50‐1への移動を制限される。それゆえ、第2領域50‐2を経由してセンス電流用ワイヤ62に流れるセンス電流は確保される。具体的には、主電流とセンス電流との比は、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗とセンス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗との比と見なすことができる。
したがって、従来の様にソース電極54から分離された電流検出専用のセンスパッド電極を設けなくても、センス電流を得ることができる。本例においては、センスパッド電極として機能し得る第2領域50‐2をMOSFETのセル単位の複数倍の面積とする必要が無い。それゆえ、従来の様にソース電極54から分離されたセンスパッド電極を設ける場合と比較して、第2領域50‐2を小さくすることができる。特に本例においては、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗とセンス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗との比により、主電流とセンス電流との比を安定させることができる。これにより、センス電流を利用して主電流の大きさを検知することができる。
加えて、本例においては、主電流を得ることに寄与せずにセンス電流を得ることのみに寄与するMOSFETの領域(無効領域)を、従来の様にソース電極54から分離されたセンスパッド電極を設ける場合と比較して、小さくすることができる。無効面積が増加した場合、主電流(つまり、出力特性)が低下する。それゆえ、無効面積が増加した場合にはチップサイズを大きくする必要がある。チップサイズを大きくした場合、1つのウェハあたりに形成できる半導体チップの数が減るので、1つの半導体チップ当たりの製造コストが上昇する問題がある。これに対して本例においては、従来の様にソース電極54から分離されたセンスパッド電極を設ける場合よりも無効面積を減少させることができるので、製造コストを低下させることができる。
また、従来の様にソース電極54から分離されたセンスパッド電極を設ける例においては、p+型の不純物領域を用いた分離構造またはエッジ終端構造によりセンスパッド電極下におけるMOSFETをx‐y平面において囲むことが一般的である。MOSFETがスーパージャンクション構造を有する場合には、センスパッド電極下近傍に設けられた分離構造またはエッジ終端構造により、p型およびn型不純物のチャージバランスが崩れる可能性がある。これにより、耐圧低下等の特性変動が生じる恐れがある。これに対して、本例においては、第2領域50‐2のみを囲むのではなく、第1領域50‐1および第2領域50‐2の全体を囲むように分離構造およびエッジ終端構造の1以上が設けられるので、耐圧低下等の特性変動が生じないという利点を有する。
経路の抵抗の差異により主電流に対してセンス電流を絞る本例は、MOSFETのオン抵抗が比較的低い場合に効果的に機能する。例えば、MOSFETのオン抵抗が数[mΩ]である場合に有効である。本例においては、MOSFETのオン抵抗は3[mΩ]とした。しかしながら、MOSFETのオン抵抗が数[Ω]である場合には、経路の抵抗比を調整しても主電流とセンス電流との比を調整することが困難となる。
本例は、MOSFETに限らずIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に適用してもよいのは勿論である。IGBTにおいては伝導率変調によってドリフト層が低抵抗状態になる。そして、所定のオン電圧[V]以上において、コレクタ電極‐エミッタ電極間に電流が流れる。IGBTのオン電圧が1.5[V]程度である場合には、本例の様に経路の抵抗比を調整することにより主電流とセンス電流との比を調整することができる。
本例では、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗と、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗との比により、主電流とセンス電流との比を予め定められた比に定めることができる。当該予め定められた比は、1,00:1~100,000:1の範囲であってよい。主電流と比べて相対的に小さなセンス電流を測定して、当該予め定められた比を乗じることにより、主電流を算出することができる。
本例のソース電極54は、y方向の端部に切欠き部を有する。本例の切欠き部は、x方向において第1領域50‐1と第2領域50‐2との間に位置する。本例の切欠き部には、ゲート電極パッド56が設けられる。ゲート電極パッド56上には、ゲート用ワイヤが設けられてよい。ゲート電極パッド56には、ゲート用ワイヤを介して半導体装置100の外部からゲート電位が入力されてよい。
本例のゲートランナ57は、第1領域50‐1、第2領域50‐2およびゲート電極パッド56を囲む。本例のゲートランナ57は、ゲート電極パッド56と後述のゲート電極34とに電気的に接続する。本例のゲートランナ57は、ゲート電極パッド56に供給されたゲート電位を、半導体基板10に設けられたMOSFETのゲート電極34に供給する。ゲート電極34およびゲートランナ57の材料は、ポリシリコン(poly‐Si)であってよい。
半導体装置に導通させる大電流量は近年増加する傾向にある。これに伴い、半導体装置の動作効率を向上させること、および、半導体装置が破壊されることを防ぐことを実現するために、主電流を検知することが求められている。本例では、センス電流を利用して主電流の大きさを検知して、ゲート電極パッド56に印加する電圧を低下させる。これにより、主電流を遮断または抑制する。
本例のガードリング58は、ゲートランナ57を囲む。ガードリング58は、それぞれ相似形状であるリング形状の複数の不純物領域を有してよい。ガードリング58は、半導体基板10とは反対の極性の不純物を有してよい。本例のガードリング58は、n-型の半導体基板10に対してp型の不純物を有する。ガードリング58は、空乏層を半導体基板10の端部にまで広げる機能を有する。つまり、ガードリング58はエッジ終端構造として機能する。これにより、ガードリング58が無い場合と比較して半導体装置100の耐圧を向上させることができる。耐圧向上にはガードリング58以外にもフィールドプレートも有効なことは自明であり、フィールドプレートを使用してもよい。フィールドプレートを使用する場合は、ゲートランナ57をフィールドプレートとして使うことも可能である。
図2は、図1におけるA‐A'断面を示す図である。図2においては、半導体装置100におけるMOSFET90の具体的な構成を示す。本例の半導体基板10は、n+型層22から第2層間絶縁膜38までを含むものとする。本例の半導体基板10は、+z方向におもて面14を有し、-z方向に裏面12を有する。本例においては、主にコンタクト領域44および第2層間絶縁膜38が、おもて面14を構成する。おもて面14上にはソース電極54が位置し、裏面12下にはドレイン電極52が位置する。
本例において、nまたはpは、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nまたはpの右肩に記載した+または-について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、-はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。なお、本例においてはベース領域42をp型とするが、他の例においてはベース領域42をn型としてもよい。他の構成の不純物極性は、当業者であれば適宜定めることができる。また、本例において、Eは10のべき乗を意味し、例えば1E+16は1×1016を意味する。
半導体層および半導体領域がSiCである本例においては、n型不純物はN(窒素)およびP(リン)のうち一種類以上の元素であってよく、p型不純物はAlおよびB(ボロン)のうち一種類以上の元素であってよい。これに対して、半導体層および半導体領域がGaNである他の例においては、n型不純物はSi(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、S(硫黄)およびO(酸素)のうち一種類以上の元素であってよい。また、p型不純物は、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Be(ベリリウム)およびZn(亜鉛)のうち1種類以上の元素であってよい。
MOSFET90は、n+型層22、n型層24、カラム層26、トレンチ部30、ベース領域42、コンタクト領域44、ソース領域46、第1層間絶縁膜36、第2層間絶縁膜38、ドレイン電極52およびソース電極54を有する。なお、図2においては、図面の見易さを考慮して全ての構成に符号を付していないが、部分的に付された符号により当業者にとっては全体の構成が明らかである。
本例の第1領域50‐1および第2領域50‐2においては、MOSFET90を構成する単位構造がy方向に繰り返し設けられる。また、単位構造はx方向に予め定められた長さだけ延在して設けられる。これにより、y方向に繰り返し設けられる複数の単位構造が、MOSFET90における1つのセルを構成する。MOSFET90は複数のセルを有する。本例の第1領域50‐1および第2領域50‐2において、MOSFET90の単位構造は同じである。それゆえ、第1領域50‐1および第2領域50‐2にける電流の出力特性は同じである。
ドレイン電極52上には、n+型層22が位置する。n+型層22はSiCを有する半導体基板10の種結晶基板であってよい。n+型層22上には、エピタキシャル成長したn型層24が位置する。n型層24上には、カラム層26が位置する。本例のカラム層26は、y方向においてn型カラム27およびp型カラム28の繰り返し構造を有する。n型カラム27上にはトレンチ部30が位置してよく、p型カラム28上にはベース領域42が位置してよい。
トレンチ部30は、ゲート電極34およびゲート絶縁膜32を有する。本例のゲート絶縁膜32は、側部がベース領域42に接し、底部がn型カラム27に接する。ゲート電極34は、ゲート絶縁膜32に接する。
本例において、p型のベース領域42上には、p+型のコンタクト領域44およびn+型のソース領域46が位置する。ソース領域46は、ゲート絶縁膜32に接する。一対のソース領域46は、y方向においてコンタクト領域44を挟む。
トレンチ部30の頂部およびソース領域46の一部を覆うように、第1層間絶縁膜36が設けられる。第1層間絶縁膜36上にはこれよりも厚い第2層間絶縁膜38が位置する。第1層間絶縁膜36および第2層間絶縁膜38は、SiO2(二酸化ケイ素)であってよい。第1層間絶縁膜36および第2層間絶縁膜38上にはソース電極54が位置する。ソース電極54は、第1層間絶縁膜36および第2層間絶縁膜38における開口を通じて、コンタクト領域44およびソース領域46に電気的に接続する。
ゲート電極34に所定の電位が印加されると、ベース領域42に電荷反転領域が形成される。電荷反転領域は、電子が移動するチャネル領域として機能する。ソース電極54とドレイン電極52との間に所定の電位差がある場合に、ゲート電極34に所定の電位が印加されると、ドレイン電極52からn+型層22、n型層24、n型カラム27、チャネル領域およびソース領域46を経てソース電極54に電流が流れる。
上述の様に、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗はソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗よりも高いので、第1領域50‐1に到来する電流はソース電流用ワイヤ60へと流れる。これに対して、第2領域50‐2に到来する電流は、センス電流用ワイヤ62へと流れる。なお、図2においては、矢印にて電流の大きさおよび向きを表現する。矢印のサイズが大きいほど電流量が多いことを表現する。
図3は、第2実施形態におけるソース電極54を示す図である。本例においては、ソース電極54の第2領域50‐2の厚みが、ソース電極54の第1領域50‐1の厚みよりも薄い。これにより、本例においては、シート抵抗により経路の抵抗の比を主に調整する。なお、第1領域50‐1および第2領域50‐2は、同じ材料を有するものとする。また、厚みとは、ソース電極54のz方向長さであるとする。
本例においては、第2領域50‐2におけるソース電極54のシート抵抗r2が、第1領域50‐1におけるソース電極54のシート抵抗r1よりも高い。これにより、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗を、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗よりも高くすることができる。
本例において、ソース電極54において部分的に厚みを変えるべく、第1領域50‐1においては金属の成膜を2回行い、第2領域50‐2においては金属の成膜を1回行ってよい。なお、1回の成膜において積層される金属の厚みは略等しいとしてよい。これに代えて、ソース電極54において部分的に厚みを変えるべく、第1領域50‐1および第2領域50‐2に金属の成膜を行った後、第2領域50‐2のみをエッチングバックしてもよい。
本例において、第1実施形態のソース電流用ワイヤ60およびセンス電流用ワイヤ62の例を適用してもよい。本例においては、各ワイヤの直径、材料および長さに加えて、第1領域50‐1および第2領域50‐2のシート抵抗のいずれか一つ以上を調節することにより、センス電流用ワイヤ62に流れる電流の経路の抵抗を、ソース電流用ワイヤ60に流れる電流の経路の抵抗よりも高くすることができる。これにより、センス電流用ワイヤ62に流れる電流を制限して、センス電流の検知精度を向上することができる。
第2実施形態の第1変形例として、第1領域50‐1が、第2領域50‐2とは異なる材料を有してもよい。一例において、第1領域50‐1においては、Tiとその上に積層されたAlまたはAlを含む合金とによりソース電極54が構成されてよい。これに対して、第2領域50‐2においては、Tiのみよりソース電極54が構成されてよい。TiはAlまたはAlを含む合金に比べて抵抗率が約1桁大きい。材料の相違に加えて、第2領域50‐2の厚みを調節することによりシート抵抗を調節してもよい。第2領域50‐2のソース電極は、Ti/TiNなどの複数の層を積層してもよい。
図4は、電流制御機構を説明する図である。図4の例においては、第2実施形態のMOSFET90を用いて説明する。当該MOSFET90において、第1領域50‐1はシート抵抗r1を有し、第2領域50‐2はシート抵抗r2を有し、ソース電流用ワイヤ60は合成抵抗R1を有し、センス電流用ワイヤ62は抵抗R2を有するとする。なお、本例において、R1はR2以下とし、r1はr2よりも小さいとする。
本例においては、ドレイン電極52と第1領域50‐1および第2領域50‐2との間に順バイアスVが印加されている。ソース電流用ワイヤ60の先には負荷が電気的に接続する。また、センス電流用ワイヤ62の先には、電流検出部94が電気的に接続する。
電流検出部94は、センス電流用ワイヤ62から電流検出部94に流れる電流を測定する。電流検出部94は、測定した電流値を制御部98に通知する。制御部98は、電流値の通知を受けて、MOSFET90のゲート電極34に印加するゲート電位(VG)を制御する。
具体的には、制御部98は、電流検出部94が測定した電流値が所定値よりも高い場合には、ゲート電位を下げることにより主電流を減少させてよい。これに対して、制御部98は、電流検出部94が測定した電流値が所定値よりも低い場合には、ゲート電位を上げることにより主電流を増加させてよい。これにより、制御部98は、MOSFET90の主電流を制御することができる。
例えば、制御部98は、ゲート電位を制御することにより、MOSFET90に流れる電流が定格電流を超えないように半導体装置100を制御することができる。これにより、半導体装置100が破壊されることを防ぐことができる。なお、本例の電流制御機構が第1実施形態に適用されてよいのは勿論である。
図5は、第3実施形態における半導体装置300の上面を示す図である。本例のソース電極54は、接続領域50‐3を含む。接続領域50‐3は、第1領域50‐1と第2領域50‐2との間に位置する。接続領域50‐3は、第1領域50‐1と第2領域50‐2とをy方向において接続する。本例において、接続領域50‐3のy方向長さは、10[μm]である。接続領域50‐3におけるx方向の長さは、第2領域50‐2のx方向の長さよりも小さい。
接続領域50‐3の抵抗は、半導体装置100におけるMOSFET90のオン抵抗の10倍以上であってよい。本例において、MOSFET90のオン抵抗は、第1実施例と同じ3[mΩ]である。それゆえ、本例の接続領域50‐3の抵抗は、30[mΩ]以上である。本例の接続領域50‐3は、x‐z断面におけるシート抵抗が30[mΩ]である。これにより、第1領域50‐1から第2領域50‐2に電流が流れ込むことを抑制することができる。
本例のゲート電極パッド56は、x方向と平行な方向において、第2領域50‐2および接続領域50‐3とは異なる位置に設けられる。本例のゲート電極パッド56は、接続領域50‐3および第2領域50‐2の形状に応じて、+x方向に突出した領域を有する。第3実施形態は、接続領域50‐3を有する点において第1および第2実施形態と異なる。他の点は、第1または第2実施形態と同じであってよい。
図6は、第3実施形態の第1変形例における図5の領域VIの拡大図を示す図である。なお、図面の見易さを考慮して、ソース電流用ワイヤ60およびセンス電流用ワイヤ62は省略する。図6においては、ソース電極54およびゲート電極パッド56を点線により示す。また、ソース電極54およびゲート電極パッド56よりも下方に位置する、p+型のコンタクト領域44およびn+型のソース領域46を実線により示す。なお、図6においては、ソース電極54下のp+型の領域はコンタクト領域44であるが、それ以外のp型の領域は分離領域として機能してよい。また、ゲート電極パッド56とその下におけるp型の領域とは絶縁膜により電気的に分離される。
本例の半導体基板10は、接続領域50‐3の下方にダイオード領域40を有する。図6において、ダイオード領域40に斜線を付して示す。ダイオード領域40は、電子にとって低抵抗の領域であるソース領域46を含まない領域である。ダイオード領域40は、p+型のコンタクト領域44およびp型のベース領域42とn型カラム27とによるpnダイオードを有する。
本例のダイオード領域40にはソース領域46が設けられていないので、ゲート電極34にゲート閾値電圧以上の電位が供給されても、ダイオード領域40においてはソース‐ドレイン間電流が流れない。つまり、MOSFET90中を+z方向に流れる電流にとって、ダイオード領域40は、第1領域50‐1および第2領域50‐2下におけるMOSFET90よりも高抵抗となる。
本例の半導体装置300は、トレンチ部30の±x方向の端部において、ゲート電極パッド56またはゲートランナ57に接続するコンタクト部59を有する。ゲート電極パッド56からコンタクト部59を経て、ゲート電極34にゲート電位が供給される。本例は、接続領域50‐3およびダイオード領域40を有する点において第3実施形態と異なる。他の点は、第3実施形態と同じであってよい。
図7Aは、第3実施形態の第2変形例における図6のB‐B'断面を示す図である。図7Bは、第3実施形態の第3変形例における図6のB‐B'断面を示す図である。図7Aに示すように、ソース電極54の接続領域50‐3の厚みは、第1領域50‐1の厚みよりも薄く、かつ、第2領域50‐2の厚みよりも薄い。また、図7Bに示すように、ソース電極54の接続領域50‐3の厚みは、第1領域50‐1の厚みと第2領域50‐2の厚みよりも薄く、かつ、第1領域50‐1の厚みと第2領域50‐2の厚みは同じである。これにより、接続領域50‐3におけるシート抵抗r3を、第2領域50‐2におけるシート抵抗r2よりも高くすることができる。よって、第1領域50‐1から接続領域50‐3を経て第2領域50‐2に電流が流れ込むことをさらに効果的に防ぐことができる。
なお、他の例においては、ソース電極54の接続領域50‐3および第2領域50‐2の厚みは同じとし、かつ、両者とも第1領域50‐1よりも薄くしてもよい。また、上述の実施形態と同様に、各ワイヤの直径、材料および長さ、ならびに、第1領域50‐1、第2領域50‐2、および接続領域50‐3のシート抵抗のいずれか一つ以上を調節してもよい。係る点において、本例は第3実施形態と異なる。他の点は、第3実施形態と同じであってよい。
なお、第1領域50‐1、第2領域50‐2、および接続領域50‐3のソース電極54の厚みを変更せずに主電流とセンス電流の比が調節できる場合は、第1実施形態と同様に第1領域50‐1、第2領域50‐2および接続領域50‐3のソース電極54の厚みは同じとしてもよい。
図8は、第4実施形態における半導体装置400の上面を示す図である。本例の半導体装置400は、温度センス素子80および温度センス素子80用の温度センス電極パッド55をさらに備える。本例の温度センス素子80は、半導体装置400の温度を測定する機能を有する。本例の温度センス素子80は、半導体装置400において最も温度が高くなるx‐y平面の略中央に位置する。また、温度センス電極パッド55は、x方向と平行な方向において、接続領域50‐3および第2領域50‐2に対して、ゲート電極パッド56とは反対側に位置する。
温度センス素子80は、pnダイオードであってよい。pnダイオードには所定の順方向電流を流してよい。半導体装置400の温度に応じて、温度センス素子80に流れる所定の順方向電流または電圧の値は変化する。図4の例と同様に、温度センス素子80に流れる所定の順方向電流または電圧を制御部98に入力してよい。制御部98は、所定の順方向電流または電圧の変化から、半導体装置400の温度を決定してよい。
半導体装置400の温度変化に伴い、MOSFET90の主電流およびセンス電流の大きさは変化し得る。MOSFET90のおいては、温度が上昇するに伴い同じゲート電位であっても主電流は小さくなる傾向にある。例えば、半導体装置400の温度が125[℃]の場合、半導体装置400の温度が25[℃]の場合よりも主電流が小さくなる。
そこで、制御部98は、半導体装置400の温度に応じてMOSFET90のゲート電極34に印加するゲート電位(VG)を制御してよい。これに代えてまたはこれ共に、制御部98は、半導体装置400の温度に応じて、半導体装置400に電力を供給する順バイアスの大きさを制御してもよい。
制御部98は、半導体装置400の温度が所定値よりも高い場合には、ゲート電位および順バイアスを下げることにより主電流を低減させて半導体装置400の温度を低減させる。これに対して、制御部98は、半導体装置400の温度が所定値よりも低い場合には、ゲート電位および順バイアスを上げることにより主電流を増加させてよい。なお、本例を上述の第1から第3実施形態およびこれらの変形例に適用してよいのは勿論である。
図9は、第5実施形態における半導体装置の断面を示す図である。図9は、特にIGBT92の複数の単位構造の断面を示す。複数の単位構造は、MOSFET90の例と同様に1つのセルを構成してよい。本例の半導体装置は、MOSFET90に代えてIGBT92を有する。これに伴い、MOSFET90の例におけるn+型層22、n型層24、ソース領域46、ドレイン電極52およびソース電極54は、それぞれp型のコレクタ層82、n+型のFS(Field Stop)層84、n+型のエミッタ領域86、コレクタ電極72およびエミッタ電極74とする。
本例を上述の第1から第4実施形態およびこれらの変形例に適用してよいのは勿論である。これに伴い、図6の例におけるダイオード領域40は、ソース領域46ではなくエミッタ領域86を含まない領域であるとしてよい。
図10は、第6実施形態における半導体装置の断面を示す図である。図10は、超接合構造であるn型カラム27およびp型カラム28のカラム層26を備えていないMOSFET91の複数の単位構造の断面を示す。複数の単位構造は、MOSFET90の例と同様に1つのセルを構成してよい。本例の半導体装置は、n+型層22、n型層24、ソース領域46、ドレイン電極52およびソース電極54等で形成される。本例を上述の第1実施形態から第4実施形態およびこれらの変形例に適用してもよいのは勿論である。特に、オン抵抗の低い低耐圧(200V以下)には有効である。また、本例を超接合構造であるn型カラム27およびp型カラム28のカラム層26を備えていないIGBTとして上述の第5実施形態およびこれらの変形例に適用してもよい。この場合、n+型層22をp型のコレクタ層82としてよい。
図11は、第7実施形態における半導体装置の断面図を示す図である。図11は、プレーナゲート構造を備えたMOSFET93の複数の単位構造の断面を示す。複数の単位構造は、MOSFET90の例と同様に1つのセルを構成してよい。本例の半導体装置は、n+型層22、n型層24、カラム層26、ゲート絶縁膜32、ゲート電極34、第2層間絶縁膜38、ベース領域42、ソース領域46、ドレイン電極52およびソース電極54等で形成される。本例を上述の第1実施形態から第4実施形態およびこれらの変形例に適用してもよいのは勿論である。また、本例をIGBTとして上述の第5実施形態およびこれらの変形例に適用してもよい。この場合、n+型層22をp型のコレクタ層82としてよい。
図12は、第8実施形態における半導体装置の断面図を示す図である。図12は、超接合構造であるn型カラム27およびp型カラム28のカラム層26を備えていないプレーナゲート構造を有するMOSFET95の複数の単位構造の断面を示す。本例の半導体装置は、n+型層22、n型層24、ゲート絶縁膜32、ゲート電極34、第2層間絶縁膜38、ベース領域42、ソース領域46、ドレイン電極52およびソース電極54等で形成される。本例を上述の第1実施形態から第4実施形態およびこれらの変形例に適用してもよいのは勿論である。特に、オン抵抗の低い低耐圧(200V以下)には有効である。また、本例を超接合構造であるn型カラム27およびp型カラム28のカラム層26を備えていないIGBTとして上述の第5実施形態およびこれらの変形例に適用してもよい。この場合、n+型層22をp型のコレクタ層82としてよい。
本発明はSiCおよびGaNなどのワイドバンドギャップMOSFETにも有効である。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。