実施の形態を詳細に説明する前に、実施の形態が実装されうる例示的な環境を示すことが有益である。
図1は、リソグラフィ装置LAを模式的に示す。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成される照明光学システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構築され、パターニングデバイスを特定のパラメータにしたがって正確に位置決めするよう構成される第1位置決め装置PMに接続されるパターニングデバイスサポートまたはサポート構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートされたウェハ)Wを保持するよう構築され、基板を特定のパラメータにしたがって正確に位置決めするよう構成される第2位置決め装置PWに接続される基板テーブル(例えばウェハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば一以上のダイを備える)ターゲット部分Cに投影するよう構成される投影光学システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSと、を含む。
照明光学システムは、放射を方向付け、整形し、または制御するための屈折型、反射型、磁気型、静電型、電磁気型、または他の種類の光学素子、またはこれらの任意の組み合わせといった様々な種類の光学素子を含んでもよい。
パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計および他の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されるか否かなどに応じた態様でパターニングデバイスを保持する。パターニングデバイスサポートは、機械式、真空式、静電式または他の固定技術を用いてパターニングデバイスを保持できる。パターニングデバイスサポートは、例えば必要に応じて固定また可動であってもよいフレームまたはテーブルであってもよい。パターニングデバイスサポートは、例えば投影システムに対して、パターニングデバイスが所望の位置にあることを確実にしてもよい。本書での「レチクル」または「マスク」の用語の任意の使用は、より一般的な用語「パターニングデバイス」と同義であると見なされてもよい。
本書で用いられる「パターニングデバイス」の用語は、基板のターゲット部分にパターンを形成するように、その断面にパターンを有する放射ビームを付与するために使用できる任意の装置を指すものと広く解釈されるべきである。放射ビームに付与されるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに必ずしも対応しないことに留意すべきである。一般的に、放射ビームに付与されるパターンは、集積回路のようなターゲット部分で作成されるデバイスの特定の機能層に対応するであろう。
パターニングデバイスは、透過型または反射型であってもよい。パターニングデバイスの例として、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィにおいて周知であり、バイナリ型、レベンソン型位相シフト、ハーフトーン型位相シフトなどのマスク形式を含むとともに、様々なハイブリッド型のマスク形式を含む。プログラマブルミラーアレイの一例は、小さなミラーのマトリクス配置を採用し、それぞれのミラーは、入射する放射ビームを互いに異なる方向に反射させるように個別に傾けることができる。傾けたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを与える。
ここで描かれるように、装置は透過型である(例えば透過型マスクを用いる)。代替的に、装置は反射型であってもよい(例えば、上述したような種類のプログラマブルミラーアレイを用いるか、または、反射型マスクを用いる)。
リソグラフィ装置は、投影システムと基板の間の空間を埋めるように、基板の少なくとも一部が比較的高い屈折率を有する液体、例えば水で覆われる形式であってもよい。液浸液は、リソグラフィ装置内の他の空間、例えばマスクと投影システムの間に適用されてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を高める技術として周知である。本書で用いる「液浸」の用語は、基板のような構造が液体に水没しなければならないことを意味するのではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が位置することを意味するにすぎない。
図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOからの放射ビームを受け取る。放射源とリソグラフィ装置は、例えば放射源がエキシマレーザである場合、分離された物体であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成しているとみなされず、放射ビームは、例えば適切な方向付けミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDの助けを借りて、放射源SOからイルミネータILに向けて通っていく。別のケースでは、例えば放射源が水銀ランプである場合、放射源がリソグラフィ装置の一体的な部分であってもよい。放射源SOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに、放射システムと呼ばれてもよい。
イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するためのアジャスタADを含んでもよい。一般的に、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-アウタおよびσ-インナと呼ばれる)を調整できる。追加的にイルミネータILは、インテグレータINやコンデンサCOといった様々な他の構成要素を含んでもよい。イルミネータは、放射ビームがその断面において所望の均一性および強度分布を有するように放射ビームを調整するために使用されてもよい。
放射ビームBは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射し、パターニングデバイスによってパターン化される。パターニングデバイス(例えばマスク)MAを通過した後、放射ビームBは、基板Wのターゲット部分Cにビームを合焦させる投影光学システムPSを通過し、これによりターゲット部分Cにパターンの像を投影する。第2位置決め装置PWおよび位置センサIF(例えば、干渉計装置、リニアエンコーダ、2次元エンコーダまたは容量性センサ)の助けを借りて、例えば放射ビームBの経路内に異なるターゲット部分Cが位置決めされるように基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1位置決め装置PMおよび別の位置センサ(図1には明示されていない)は、例えばマスクライブラリからの機械検索後またはスキャン中に、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えばマスク)MAを正確に位置決めするために用いることができる。
パターニングデバイス(例えば、マスク)MAおよび基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1,M2および基板アライメントマークP1,P2を用いてアライメントされてもよい。図示される基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、これらはターゲット部分の間のスペースに配置されてもよい(これらは、スクライブラインアライメントマークとして知られる)。同様に、パターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に二以上のダイが設けられる状況では、パターニングデバイスアライメントマークは、ダイとダイの間に配置されてもよい。小さなアライメントマークは、デバイスフィーチャに囲まれるようにしてダイの内側に含められてもよい。この場合、マーカは可能な限り小さいことが望ましく、隣接するフィーチャとは異なる結像条件またはプロセス条件を必要としないことが望ましい。アライメントマーカを検出するアライメントシステムは、以下にさらに説明される。
この例におけるリソグラフィ装置LAは、いわゆるデュアルステージ型であり、二つの基板テーブルWTa,WTbと、二つのステーション(露光ステーションおよび測定ステーション)を有し、これらのステーション間で基板テーブルを交換できる。一方の基板テーブル上の一方の基板が露光ステーションで露光されている間、他方の基板が測定ステーションで他方の基板テーブル上に装填されることができ、様々な準備工程を実行できる。準備工程は、レベルセンサLSを用いて基板の表面制御をマッピングし、アライメントセンサASを用いて基板上のアライメントマーカの位置を測定することを含んでもよい。これは、装置のスループットの大幅な向上を可能にする。
図示される装置は、例えばステップモードまたはスキャンモードを含む様々なモードで使用できる。リソグラフィ装置の構造および動作は、当業者に周知であり、本発明の実施の形態の理解のためにさらに説明される必要はない。
図2に示すように、リソグラフィ装置LAは、リソグラフィセルLCまたはリソセルまたはクラスタと呼ばれるリソグラフィシステムの一部を形成する。リソグラフィセルLCは、基板上での露光前後のプロセスを実行する装置を含んでもよい。従来、これらの装置は、レジスト層を堆積するためのスピンコータSC、露光されたレジストを現像するための現像装置DE、チルプレートCHおよびベークプレートBKを含む。基板ハンドラまたはロボットROは、入出力ポートI/O1,I/O2から基板をピックアップし、異なるプロセス装置間でそれらを移動させ、その後、リソグラフィ装置のローディングベイLBに運ぶ。これらの装置は、しばしば集合的にトラックと称され、トラック制御ユニットTCUの制御下にある。TCU自体は、上位制御システムSCSによって制御され、SCSは、リソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置を制御する。このようにして、スループットおよび処理効率を最大化するように異なる装置が動作できる。
少なくとも一つのパターニング工程(例えば、光学リソグラフィ工程)を含むパターニングプロセス(例えば、デバイス製造プロセス)を設計、監視、制御等するために、パターニングされた基板を検査し、パターニングされた基板の一以上のパラメータを測定することができる。この一以上のパラメータは、例えば、パターニングされた基板内または基板上に形成された連続する層と層の間のオーバレイを含んでもよいし、パターニングされた基板内または基板上に形成されたフィーチャなどのクリティカルディメンジョン(CD)(例えば、臨界線幅)を含んでもよいし、光学リソグラフィ工程のフォーカスまたはフォーカス誤差を含んでもよいし、光学リソグラフィ工程のドーズまたはドーズ誤差を含んでもよし、光学リソグラフィ工程の光学収差などを含んでもよい。この測定は、製品基板自体のターゲット上で実行されてもよいし、および/または、基板上に設けられる専用の計測ターゲット上で実行されてもよい。パターニングプロセスで形成される構造を測定するための様々な技術が存在し、走査型電子顕微鏡、画像ベースの測定または検査ツール、および/または様々な専用ツールの使用を含む。専用の計測および/または検査ツールの比較的高速で非侵襲な形態は、放射のビームを基板の表面上のターゲットに向け、散乱(回折/反射)されたビームの特性を測定するものである。基板によって散乱される前後のビームの一以上の特性を比較することで、基板の一以上の特性を決定できる。これは、回折ベースの計測または検査と呼ばれてもよい。
図3は、例示的な検査装置(例えば、散乱計)を示す。これは、基板W上に放射を投射する広帯域(白色光)放射投影器2を備える。方向変換(リダイレクト)された放射は、例えば左下のグラフに示されるような鏡面反射された放射のスペクトル10(波長の関数としての強度)を測定する分光計検出器4に向けて通過する。このデータから、検出されたスペクトルをもたらす構造またはプロファイルは、例えば、厳密結合波解析および非線形回帰によって、または図3の右下に示されるようなシミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較によってプロセッサPUにより再構築されてもよい。一般的に、再構築のためには構造の概略形状が分かっており、構造の作製に用いたプロセスの知見からいくつかの変数が仮定されており、測定データから決定されるべき構造のわずかな変数のみが残る。このような検査装置は、法線入射検査装置または斜入射検査装置として構成されてもよい。
使用可能な別の検査装置が図4に示される。この装置では、放射源2によって射出される放射がレンズシステム120を用いてコリメートされ、干渉フィルタ130および偏光子170を透過し、部分反射面160によって反射され、好ましくは少なくとも0.9または少なくとも0.95の高い開口数(NA)を有する対物レンズ150を用いて基板W上のスポットSに合焦される。液浸検査装置(水のような比較的高い屈折率の流体を用いる)は、1を超える開口数を有してもよい。
リソグラフィ装置LAと同様、測定動作中に基板Wを保持するための一以上の基板テーブルが設けられてもよい。これらの基板テーブルは、図1の基板テーブルWTと同様または同一の形態であってもよい。検査装置がリソグラフィ装置に一体化される例では、これらが同じ基板テーブルであってもよい。粗動位置決め装置および微細位置決め装置は、測定光学システムに対して基板を正確に位置決めするように構成される第2位置決め装置PWに設けられてもよい。様々なセンサおよびアクチュエータは、例えば、関心のあるターゲットの位置を取得し、それを対物レンズ150の下の位置にもたらすために設けられてもよい。典型的に、基板Wにわたって互いに異なる位置にあるターゲットに対して多くの測定がなされる。基板サポートは、異なるターゲットを取得するためにX方向およびY方向に移動させることができ、光学システムのフォーカスに対するターゲットの所望の位置を取得するためにZ方向に移動させることができる。例えば、実際には光学系が実質的に(典型的にはX方向およびY方向に、しかしおそらくZ方向にも)静止したまま基板のみが移動する場合であっても、基板に対して異なる位置に対物レンズがもたらされるように動作を考えて説明すると都合がよい。基板および光学系の相対位置が正しければ、実世界においてそれらのどちらか一方が動いているか、または両方が動いているか、または、光学系の一部が(例えばZ方向および/または傾斜方向に)が動いて光学系の残りの部分が静止するとともに、基板が(例えば、X方向およびY方向に、しかし選択的にZ方向および/または傾斜方向にも)動くという組み合わせであっても、原理的には問題ない。
基板Wによって方向変換された放射は、次にスペクトルを検出するために、部分反射面160を通過して検出器180に入る。検出器180は、逆投影焦点面110(つまり、レンズシステム150の焦点距離)に配置されてもよいし、または、面110が補助光学系(不図示)を用いて検出器180に再結像されてもよい。検出器は、基板ターゲット30の2次元角度散乱スペクトルを測定できるような2次元検出器であってもよい。検出器180は、例えばCCDまたはCMOSセンサのアレイであってもよく、例えばフレームあたり40ミリ秒の積分時間を用いてもよい。
参照ビームは、例えば入射する放射の強度を測定するために用いられてもよい。これを実行するために、放射ビームが部分反射面160に入射するとき、その一部が部分反射面160を透過し、参照ビームとして参照ミラー140に向かってもよい。参照ビームは、その後、同じ検出器180の異なる部分、または、代替的に異なる検出器(不図示)に投影される。
一以上の干渉フィルタ130は、例えば405-790nmの範囲、またはそれよりも低い、例えば200-300nmの範囲内の関心のある波長を選択するために利用可能である。干渉フィルタは、互いに異なるフィルタのセットを備えるのではなく、変調可能であってもよい。干渉フィルタの代わりにグレーティングを用いることができる。ターゲットに入射する放射の角度範囲を制御するために、照明経路に開口絞りまたは空間光変調器(不図示)が設けられてもよい。
検出器180は、方向変換された放射の強度を単一波長(または狭い波長範囲)で測定してもよいし、複数の波長で強度を別々に測定してもよいし、波長範囲にわたって積分してもよい。さらに、検出器は、TM(横磁場)偏光放射とTE(横電場)偏光放射の強度、および/または、TM偏光放射とTE偏光放射の位相差を別々に測定してもよい。
基板W上のターゲット30は、現像後にバーが固いレジストラインで形成されるように印刷される1次元グレーティングであってもよい。ターゲット30は、現像後にグレーティングが固いレジストのピラーまたはビアで形成されるように印刷される2次元グレーティングであってもよい。バー、ピラーまたはビアは、基板内または基板上に(例えば、基板上の一以上の層に)彫り込まれてもよい。(例えば、バー、ピラーまたはビアの)パターンは、パターニングプロセスにおけるプロセスの変化(例えば、リソグラフィ投影装置(特に投影システムPS)における光学収差、フォーカス、ドーズの変化など)に対して感度を有し、印刷されたグレーティングのばらつきとして顕在化する。したがって、印刷されたグレーティングの測定データは、グレーティングを再構築するために用いられる。ラインの幅および/または形状といった1次元グレーティングの一以上のパラメータ、または、ピラーまたはビアの幅または長さまたは形状といった2次元グレーティングの一以上のパラメータは、印刷工程および/または他の検査プロセスの知見に基づいて、プロセッサPUによって実行される再構築プロセスに入力されてもよい。
再構築によるパラメータの測定に加えて、回折ベースの計測または検査は、製品内および/またはレジストパターン内のフィーチャの非対称性の測定に用いることができる。非対称性測定の特定の用途は、例えばオーバレイ測定であるが、他の用途も知られている。この場合、ターゲット30は、典型的に一式の周期的フィーチャを備え、別の一式の上に重畳している。例えば非対称性は、ターゲット30からの回折スペクトルの対向する部分を比較することによって測定できる(例えば、周期的構造の回折スペクトルの-1次と+1次を比較する)。図3または図4の構成を用いる非対称性測定の概念は、例えば、米国特許出願公開US2006-066855に記載され、その全体が参照により本細書に組み込まれる。簡単に言及すると、ターゲットの回折スペクトルにおける回折次数の位置がターゲットの周期性によってのみ決定される一方で、回折スペクトルの非対称性は、ターゲットを構成する個々のフィーチャの非対称性を示す。図4の装置において、検出器180が画像センサであってもよく、回折次数におけるこのような非対称性は、検出器180によって記録される瞳像の非対称性として直接的に現れる。この非対称性は、ユニットPU内のデジタル画像処理によって測定でき、オーバレイの既知の値に対して較正されることができる。
図5は、典型的なターゲット30の平面図であり、図4の装置における照明スポットSの範囲を示す。周囲の構造物から干渉を受けない回折スペクトルを得るため、ターゲット30は、ある実施の形態において、照明スポットSの幅(例えば直径)よりも大きい周期構造(例えばグレーティング)である。スポットSの幅は、ターゲットの幅および長さより小さくてもよい。言い換えれば、ターゲットは、照明によって「アンダーフィル」となっており、回折信号は、ターゲット自体の外側にある製品フィーチャ等からの信号から本質的に自由である。照明配置2,120,130,170は、対物レンズ150の後方焦点面にわたって均一な強度の照明を提供するように構成されてもよい。代替的に、例えば、照明経路にアパチャを含むことによって、照明は、軸上方向または軸外方向に制限されてもよい。
図6は、メトロロジ(計測)を用いて得られる測定データに基づいて、ターゲットパターン30’の関心のある一以上の変数の値を決定する例示的なプロセスを模式的に示す。検出器180によって検出される放射は、ターゲット30’について測定される放射分布108を提供する。
所与のターゲット30’について、放射分布208は、例えばマクスウェル数値解析装置210を用いてパラメータ化されたモデル206から計算/シミュレーションできる。パラメータ化されたモデル206は、ターゲットを構成し、ターゲットに関連する様々な材料のサンプル層を示す。パラメータ化されたモデル206は、検討しているターゲット部分のフィーチャおよび層の一以上の変数を含んでもよく、これらの変数は、変更されてもよいし、導出されてもよい。図6に示すように、これらの変数の一以上はさらに、一以上の層の厚さ、一以上のフィーチャの幅w(例えばCD)、一以上のフィーチャの高さh、および/または、一以上のフィーチャの側壁角度αを含んでもよい。図示していないが、これらの変数の一以上は、一以上の層の屈折率(例えば、実数または複素数の屈折率、屈折率テンソルなど)、一以上の層の消光係数、一以上の層の吸収率、現像時のレジストロス、一以上のフィーチャのフッティング(footing)、および/または、一以上のフィーチャのラインエッジ粗さを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。これらの変数の初期値は、測定されるターゲットに対して予想される値であってもよい。その後、測定した放射分布108は、212にて計算した放射分布208と比較され、それら二つの差が決定される。差がある場合、測定した放射分布108と計算した放射分布208の間に十分な一致があるまで、パラメータ化されたモデル206の一以上の変数が変更され、新たに計算される放射分布208が算出され、測定した放射分布108と比較されうる。十分な一致があった時点で、パラメータ化されたモデル206の変数の値は、実際のターゲット30’の地形との良好な一致または最良の一致をもたらす。ある実施の形態において、測定した放射分布108と計算した放射分布208の差が許容閾値内にある場合に十分な一致がある。
実施の形態での使用に適した別の検査装置は、図7Aに示される。ターゲットTおよびターゲットを照明するために用いる測定放射の回折光線が図7Bに詳細に示されている。図示される検査装置は、暗視野計測装置として知られる形式のものである。この検査装置は、独立式(スタンドアローン)の装置であってもよいし、リソグラフィ装置LAの例えば測定ステーション、または、リソグラフィセルLCのいずれかに組み込まれてもよい。光軸は、装置を通していくつかの分岐を有し、破線Oにより表される。この装置において、光源11(例えばキセノンランプ)により射出される光は、レンズ12,14および対物レンズ16を備える光学システムによって光学素子15を介して基板W上に向けられる。これらのレンズは、4F構成の二重配列で構成されてもよい。基板像を検出器上に提供すると同時に、空間周波数フィルタ用の中間瞳面にアクセス可能であれば、異なるレンズ構成を用いることができる。したがって、基板に入射する放射の角度範囲は、基板平面の空間スペクトルを表す平面(ここで(共役)瞳面と称する)における空間強度分布を制限することにより選択できる。具体的には、これは、対物レンズ瞳面の逆投影像である平面内であるレンズ12と14の間に適切な形態のアパチャプレート13を挿入することで実現できる。図示される例において、アパチャプレート13は、符号13Nおよび13Sの互いに異なる形を有し、互いに異なる照明モードを選択可能である。本実施例における照明システムは、軸外照明モードを形成する。第1照明モードにおいて、アパチャプレート13Nは、単に説明の便宜のため「北」に指定される方向からの軸外放射を提供する。第2照明モードにおいて、アパチャプレート「13S」は、同様の照明であるが、「南」の符号が付いた反対方向からの照明を提供するために用いられる。他の照明モードは、異なるアパチャを用いることにより実現可能である。望ましい照明モードの外側の不必要な放射は、望ましい測定信号と干渉しうるため、瞳面の残りは暗闇であることが望ましい。
図7Bに示すように、ターゲットTは、対物レンズ16の光軸Oに垂直となるように基板Wに配置される。基板Wは、サポート(不図示)により支持されてもよい。測定放射の光線Iは、軸Oから外れた角度からターゲットTに入射し、0次光線(実線0)および二つの1次光線(一点鎖線+1および二点鎖線-1)を生じさせる。オーバーフィルの小さなターゲットを用いるとき、これらの光線は、計測ターゲットTおよび他のフィーチャを含む基板の領域をカバーする多くの平行光線の一つにすぎないことに留意すべきである。プレート13にあるアパチャは有限の幅を有するため(有用な光量を受け入れるために必要)、入射光線Iは実際にはある角度範囲を占め、回折された光線0および+1/-1はいくらか外に広がるであろう。小さなターゲットの点像分布関数に従えば、+1次および-1次のそれぞれは、ある角度範囲にわたってさらに広がり、図示するような単一の理想的な光線とはならないであろう。なお、ターゲットの周期構造ピッチおよび照明角度は、対物レンズに入射する1次光線が中心光軸の近くにアライメントされるように設計および調整されることができる。図7Aおよび7Bに示される光線は、純粋に図面においてそれらをより簡単に区別可能とするために、いくらか軸から外れて示される。
基板W上のターゲットTにより回折された少なくとも0次および+1次は、対物レンズ16により集められ、光学素子15を通って戻るように方向付けられる。図7Aに戻ると、北(N)および南(S)の符号がついた直径方向に反対の開口を指定することで、第1および第2照明モードの双方が図示される。測定放射の入射光線Iが光軸の北側から入射するとき、つまり、アパチャプレート13Nを用いて第1照明モードが適用されるとき、+1(N)の符号が付いた+1次回折光線が対物レンズ16に入射する。逆に、アパチャプレート13Sを用いて第2照明モードが適用されるとき、-1次回折光線(-1(S)の符号)がレンズ16に入射する光線となる。
ビームスプリッタ17は、回折されたビームを二つの測定分岐に分割する。第1測定分岐において、光学システム18は、0次および1次の回折ビームを用いて、第1センサ19(例えばCCDまたはCMOSセンサ)上にターゲットの回折スペクトル(瞳面画像)を形成する。各回折次数は、センサ上の異なる点に当たるため、画像処理によって各次数を比較および対比できる。センサ19により撮像される瞳面画像は、検査装置の焦点合わせおよび/または1次ビームの強度測定値の規格化のために用いることができる。瞳面画像は、再構築などの多くの測定目的に用いることもできる。
第2測定分岐において、光学システム20,22は、センサ23(例えばCCDまたはCMOSセンサ)上にターゲットTの画像を形成する。第2測定分岐において、開口絞り21が瞳面の共役となる平面内に設けられる。開口絞り21は、0次回折ビームを遮断し、センサ23上に形成されるターゲットの画像が-1または+1次回折ビームのみから形成されるようにする。センサ19および23により撮像される画像は、画像を処理するプロセッサPUに出力される。プロセッサPUの機能は、実行される測定の具体的な種類に依存するであろう。なお、「画像」の用語は、本書で広い意味で用いられる。仮に-1および+1次のみが存在する場合、グレーティングラインそれ自体の画像は形成されないであろう。
図7A、7Cおよび7Dに示されるアパチャプレート13および視野絞り21の具体的な形は例示にすぎない。ある実施の形態において、ターゲットの軸上照明が用いられ、実質的に一つの1次回折放射のみをセンサに通過させるために軸外開口を有する開口絞りが用いられる。さらに別の実施の形態において、1次ビームの代わりにまたは加えて、2次、3次およびさらに高次のビーム(図7A、7B、7Cまたは7Dに示されない)を測定に用いることができる。
これらの互いに異なる種類の測定に適合可能な測定照明を生成するために、アパチャプレート13は、所望のパターンをその位置にもたらすように回転する円盤の周に形成される多数の開口パターンを備えてもよい。なお、アパチャプレート13Nまたは13Sは、一方向(セットアップに依存してXまたはY)に配向された周期構造を測定するためだけに使用できる。直交する周期構造を測定するためには、ターゲットの90度または270度の回転が実行されるかもしれない。異なるアパチャプレートは、図7Cおよび7Dに示される。これらの使用およびこの装置の多数のその他の変形例および用途は、上述の特許出願公開公報に記載される。
図8は、既知の実施にしたがって基板上に形成される(複合)ターゲットを示す。この例におけるターゲットは、検査装置の計測放射照明ビームにより形成される測定スポット31内に全てが存在するように近接して一緒に配置される四つの周期構造(例えばグレーティング)32から35を備える。したがって、四つの周期構造の全ては同時に照明され、センサ19および23上に同時に結像する。オーバレイの測定に専用となる例では、周期構造32から35は、例えば基板W上に形成される半導体デバイスの互いに異なる層にパターニングされる周期構造の上に重ね合わせることでそれら自体が形成される複合周期構造である。グレーティング32から35は、複合周期構造の互いに異なる部分が形成される層と層の間のオーバレイの測定を助けるため、互いに異なるようにバイアスされたオーバレイオフセットを有してもよい。以下、図8を参照して、オーバレイバイアスの意味を説明する。周期構造32から35は、図示すように、入射する放射をX方向およびY方向に回折するためにそれらの向きが異なってもよい。一例において、周期構造32および34は、それぞれ+d,-dのバイアスオフセットを有するX方向の周期構造である。周期構造33および35は、それぞれバイアスオフセット+d,-dを有するY方向の周期構造である。これらの周期構造の別々の画像は、センサ23によって撮像される画像内で識別できる。これは、ターゲットの一例に過ぎない。ターゲットは、四つより多いまたは少ない周期構造を備えてもよく、または、単一の周期構造のみを備えてもよい。
図9は、図7の装置内の図8のターゲットを使用し、図7Dのアパチャプレート13NWまたは13SEを使用したときに、センサ23上に形成され、センサ23により検出されうる画像例を示す。瞳面画像センサ19は、互いに異なる個々の周期構造32から35を分解できないが、画像センサ23はそれができる。暗い矩形は、センサ上の画像フィールドを表し、その内側において基板上の照明スポット31が対応する円形領域41に結像する。この内側の矩形領域42-45が小さなターゲット周期構造32から35の像を表す。ターゲットが製品領域内に位置する場合、この画像フィールドの周縁において製品フィーチャも見えるかもしれない。画像プロセッサおよび制御システムPUは、これらの画像をパターン認識を用いて処理し、周期構造32から35の個々の像42から45を特定する。この方法において、これらの像は、センサフレーム内の特定の位置に非常に精密にアライメントされなくてもよいため、測定装置全体としてのスループットを大幅に改善する。
いったん周期構造の個々の像が特定されると、例えば特定された領域内で選択された画素の強度値を平均化または合計することにより、それら個々の画像の強度を測定できる。これらの画像の強度および/または他の特性は、互いに比較できる。これらの結果は、リソグラフィプロセスの異なるパラメータを測定するために組み合わせることができる。オーバレイ性能は、このようなパラメータの重要な一例である。
図10は、例えばPCT特許出願公開第WO2011/012624(参照によりその全体が本書に組み込まれる)に記載される方法を用いて、要素周期構造32から35を含む二つの層の間のオーバレイ誤差(つまり、望ましくない、意図しないオーバレイのミスアライメント)をどのように測定するかを説明する。この測定は、ターゲット周期構造の標準回折次数画像と補完回折次数画像の強度を比較し、強度非対称性の尺度を得ることで明らかになるターゲット非対称性の特定を通じてなされる。ある実施の形態において、標準回折次数は+1次放射であり、補完回折次数は-1次放射である。本書では、標準回折次数を+1次放射とし、補完放射次数を-1次放射とすることに焦点をあてて議論するが、他の対応する高次、例えば+2次と-2次の強度を比較することもできる。
ステップS1にて、基板、例えば半導体ウェハは、図2のリソグラフィセルのようなリソグラフィ装置を通じて1回以上処理され、周期構造32-35を含むターゲットが生成される。ステップS2にて、図7の検査装置を用いて、周期構造32から35の画像が1次回折ビームの一方(つまり+1次)のみを用いて取得される。ステップS3にて、照明モードを変更する、または、撮像モードを変更する、または、検査装置の視野内で基板Wを180°回転させるのいずれかによって、他方の一次回折ビーム(-1次)を用いて周期構造の第2画像を取得できる。その結果、-1次回折放射が第2画像内に撮像される。
なお、各画像において1次回折放射の半分のみを含むことにより、ここで称する「画像」は従来の暗視野顕微鏡画像とは異なる。ターゲット周期構造の個々のターゲットフィーチャは分解されないであろう。各ターゲット周期構造は、単に特定の強度レベルの領域によって表されるであろう。ステップS4において、各要素ターゲット周期構造の画像内で注目領域(ROI)が特定され、ここから強度レベルが測定されるであろう。
個々のターゲット周期構造のそれぞれについてROIを特定し、その強度を測定すると、ターゲットの非対称性、つまりオーバレイ誤差を決定できる。これは、ステップS5にて、各ターゲット周期構造32-35の標準回折次数および補完回折次数について得られた強度値を比較し、それらの強度非対称性、例えばそれらの強度の任意の差異を特定することで(例えばプロセッサPUにより)なされる。「差異」の用語は、引き算だけを指すことを意図しない。差異は、比率形式で計算されてもよい。ステップS6にて、多数のターゲット周期構造について測定された強度非対称性は、これらターゲット周期構造に課された任意の既知のオーバレイバイアスの知見とともに、ターゲットTの近傍におけるパターニングプロセスの一以上の性能パラメータを計算するために用いられる。
図11A-11Dは、異なるバイアスオフセットを有するターゲット周期構造(オーバレイ周期構造)の断面を模式的に示す。これらは、図7-9に見られるような基板W上のターゲットTとして用いることができる。X方向に周期性を有する周期構造は、例示のためだけに示される。異なるバイアスおよび異なる向きを有するこれら周期構造の異なる組み合わせは、別々に(分離して)、またはターゲットの一部として設けることができる。
図11Aから始めると、符号L1およびL2が付された少なくとも二つの層内に形成されるターゲット600が示される。下側層または下部層L1において、例えばグレーティングである第1周期構造(下側または下部周期構造)は、基板606上のフィーチャ602およびスペース604によって形成される。層L2において、例えばグレーティングである第2周期構造は、フィーチャ608およびスペース610によって形成される。(断面は、フィーチャ602,608(例えば、ライン)が紙面に入るように延びるように描かれている)。周期構造パターンは、両方の層においてピッチPで繰り返される。フィーチャ602および608は、ライン、ドット、ブロックおよびビアホールの形を取ってもよい。図11Aに示される状況では、ミスアライメントに起因するオーバレイの寄与は存在せず、例えばオーバレイ誤差が存在せず、課されたバイアスも存在しないため、第2構造の各フィーチャ608は、第1構造のフィーチャ602の真上に重なっている。
図11Bにて、第1の既知のバイアス+dが課された同じターゲットが示されており、第1構造のフィーチャ608は、第2構造のフィーチャに対して、距離dだけ右にシフトしている。バイアス距離dは、実際には数ナノメートル、例えば10nm-20nmであってもよく、一方、ピッチPは、例えば300-1000nmの範囲内であり、例えば500nmまたは600nmである。図11Cにて、第2の既知のバイアス-dが課された別のフィーチャは、フィーチャ608が左にシフトするように描かれている。dの値は、各構造について同じである必要はない。図11Aから11Cに示されるこの種類のバイアスされた周期構造は、上述の先行特許出願公開に記載されている。
図11Eは、図11Aから11Cに描かれるような上側層および下側層内の周期構造を備えるサブターゲット612,614,616および618を有する例示的なターゲット600を上から模式的に描いている。下側層は、図11Eに示されていない。ある実施の形態において、サブターゲット612,614,616および618は、二つの直交する方向(例えばXおよびY)のオーバレイを測定するよう設計され、それを容易にするために(図11Bおよび11Cに関して上述したように)バイアスdが課されている。図11Eの実施の形態は、4個のサブターゲットを示すが、異なる個数が存在することもでき、それらの全ては、一方向のオーバレイを測定するために、または、三方向以上のオーバレイを測定するために使用できる。
ある実施の形態において、サブターゲット612および614は、X方向のオーバレイを一緒に測定するように設計される。ある実施の形態において、サブターゲット612が+dのバイアスを有する一方、サブターゲット614は-dのバイアスを有する。ある実施の形態において、サブターゲット616および618は、Y方向のオーバレイを一緒に測定するように設計される。ある実施の形態において、サブターゲット616が+dのバイアスを有する一方、サブターゲット618は-dのバイアスを有する。
図11Fは、図11Eに描かれるような、ステップS2のターゲット600から検出される標準(例えば+1)次数放射の回折信号の例を示す。図11Gは、図11Eに描かれるような、ステップS3のターゲット600から検出される補完(例えば-1)次数放射の回折信号の例を示す。周期構造の各方向(XおよびY)について、図11Fおよび図11Gに「+」(+dバイアス用)および「-」(-dバイアス用)で示される反対方向の意図的なバイアスを有する二つの周期構造が存在する。したがって、X+はサブターゲット612から検出される回折信号を表し、X-はサブターゲット614から検出される回折信号を表し、Y+はサブターゲット618から検出される回折信号を表し、Y-はサブターゲット616から検出される回折信号を表す。このように、四つの回折強度信号は、各周期構造の周期方向ごとに検出される。
図11Hは、(図11Aから11Cに示されるような)二層周期構造を有する(サブターゲット612,614,616または618などの)ターゲットからの放射の回折を記述するための単純なモデルを模式的に描いている。上側層および下側層からの回折放射の複素振幅が示される。下側層からの回折放射は、オーバレイによる位相の寄与を含む。
図12において、曲線702は、ゼロオフセットを有し、ターゲットを形成する個々の周期構造内(特に第1構造の個々の周期構造内)に構造的非対称性を有しない「理想的」なターゲットについて、オーバレイOVと強度非対称性A(例えば+1次と-1次の回折次数強度の差)の関係性を示す。したがって、この理想的なターゲットのターゲット非対称性は、既知の課されたバイアスとオーバレイ誤差OVEから生じる第1構造と第2構造のミスアライメントによるオーバレイの寄与のみを備える。このグラフおよび図13のグラフは、本開示の背後にある原理のみを説明し、各グラフにおいて、強度非対称性AおよびオーバレイOVの単位は任意である。実際の寸法の例は、さらに以下に与えられるであろう。
図12の「理想的」な状況において、曲線702は、強度非対称性Aがオーバレイに対して非線形な周期的関係性(例えば、正弦波の関係性)を有することを示す。正弦波状の変動の周期Pは、周期構造の周期またはピッチPに対応し、適切なスケールにもちろん変換されている。この例における正弦波形状は純粋であるが、実際の状況では高調波を含むことができる。
上述のように、(既知の課されたオーバレイバイアスを有する)バイアスされた周期構造は、単独での測定に依拠するというよりは、オーバレイを測定するために用いることができる。このバイアスは、その作製に用いたパターニング装置(例えばレチクル)に定義された既知の値を有し、測定した強度非対称性に対応するオーバレイの基板上の基準目盛(キャリブレーション)として機能する。図面において、計算が図形的に示されている。ステップS1-S5において、強度非対称性測定値A+dおよびA-dは、(例えば、図11Bおよび図11Cに示すように)バイアス+dおよび-dのそれぞれが課された周期構造について取得される。これらの測定値を正弦曲線に適合させると、図示するような点704および706が与えられる。バイアスが既知であれば、真のオーバレイ誤差OVEを計算できる。正弦曲線のピッチPは、ターゲットの設計から既知である。曲線702の縦のスケールは、最初は分からない未知の係数であり、第1高調波比例定数Kと呼ぶことができる。このように、オーバレイ感度Kは、オーバレイに対する強度非対称性測定値の感度の尺度である。ある実施の形態において、それは、オーバレイに対する測定強度の比例関係である。したがって、それは、オーバレイのプロセス依存性を検出するのに役立つ。
方程式において、オーバレイ誤差OV
Eと強度非対称性Aの関係性は、以下のように仮定される。
ここで、オーバレイ誤差OV
Eは、ターゲットピッチPが2πラジアンの角度に対応するようなスケールで表現される。互いに異なる既知のバイアス(例えば+dと-d)を有する周期構造の二つの測定値を用いて、オーバレイ誤差OV
Eは、以下を用いて計算できる。
図11Hに戻ると、オーバレイOV(オーバレイ誤差OV
Eとも称される)は、以下のように評価することもできる。特に、図11Hに表されるモデルに基づけば、+1次および-1次の回折放射の強度は、以下のように計算できる。
ここで、
は、オーバレイおよびバイアスに起因する位相差であり、
は、上側層で回折された放射と下側層で回折された放射との間の残りの位相差であり、上側周期構造と下側周期構造の間の層の厚さTに比例し、入射する放射の波長に反比例する。
便宜的に、周期構造の一方向(例えばX)の四つの強度を以下のように指定できる。
-PBN(正のバイアスの周期構造からの+1次回折次数)
-PBC(正のバイアスの周期構造からの-1次回折次数)
-NBN(負のバイアスの周期構造からの+1次回折次数)
-NBC(負のバイアスの周期構造からの-1次回折次数)
したがって、ΔI
PBをPBN-PBCと指定でき、ΔI
NBをNBN-NBCと指定できる。次に、+1次放射および-1次放射からの回折波の振幅および位相(オーバレイ位相を除く)が等しく、正のバイアスおよび負のバイアスの周期構造からの回折波の振幅および位相(オーバレイ位相を除く)も等しく、かつ、計測装置の光学系自体が対称であると仮定した場合、+1次放射と-1次放射の強度の差は、ΔI=Ksin(Φ
OV)と導出される。ここで、Kは、オーバレイ比率であり、K=4ABsin(β)に等しい。したがって、オーバレイは、以下のように計算できる。
ところで、図11Dは、構造的非対称性の現象を模式的に示し、この状況では第1構造における構造的非対称性(下側または下部構造非対称性)の現象を模式的に示す。図11Aから11Cの周期構造におけるフィーチャは、完璧な正方形の側面として示されているが、実際のフィーチャは側面に多少の傾斜およびある程度の粗さを有するであろう。それでも、それらは少なくとも対称なプロファイルであることが意図される。図11Dの第1構造におけるフィーチャ602および/またはスペース604は、もはや対称な形状を有しておらず、むしろ一以上の処理工程によって歪んでいる。例えば、各スペースの底面が傾斜している(底壁傾斜)。例えば、フィーチャおよびスペースの側壁角度は非対称になっている。その結果、ターゲットの全体としてのターゲット非対称性は、構造的非対称性とは独立したオーバレイの寄与(つまり、第1構造および第2構造のミスアライメントに起因するオーバレイの寄与、それ自体はオーバレイ誤差および任意の既知の課されたバイアスからなる)と、ターゲットのこの構造的非対称性に起因する構造的な寄与とを備えるであろう。
二つのバイアスされた周期構造のみを用いて図10の方法によりオーバレイが測定される場合、プロセスによって生じた構造的非対称性は、ミスアライメントに起因するオーバレイの寄与から区別することができず、その結果、オーバレイ測定(特に望ましくないオーバレイ誤差の測定)は信頼できなくなる。ターゲットの第1構造(下部周期構造)における構造的非対称性は、構造的非対称性の一般的な形態である。これは、例えば、第1構造が初めに形成された後に実行される化学機械研磨(CMP)などの基板処理工程に由来するかもしれない。
図13は、構造的非対称性、例えば図11Dに示される下部周期構造非対称性を導入する第1の効果を示す。「理想的な」正弦曲線702はもはや適用されない。しかしながら、少なくともおおよそ、下部周期構造非対称性または他の構造的非対称性は、強度シフト項K
0および位相シフト項φを強度非対称性に追加する効果を有する。その結果得られる曲線は図の712として示され、符号K
0は強度シフト項を示し、符号φは位相オフセット項を示す。強度シフト項K
0および位相シフト項φは、ターゲットと、測定放射の波長および/または偏光といった測定放射の選択された特性との組み合わせに依存し、プロセスの変動に対して感度を有する。方程式において、ステップS6の計算に用いる関係性は、以下になる。
構造的非対称性がある場合、式(2)で記述されるオーバレイモデルは、強度シフト項K0および位相シフト項φの影響を受けるオーバレイ誤差の値を与えるため、不正確になるであろう。構造的非対称性は、オーバレイ誤差をマッピングする際、一以上の異なる測定パラメータ(例えば、測定ビームの波長、測定ビームの偏光など)を用いた同一ターゲットの測定値に差異をもたらすであろう。なぜなら、強度シフトおよび位相シフトは、例えば波長および/または偏光に依存するからである。
修正されたステップS6のオーバレイ計算は、特定の仮定に依拠する。まず、強度非対称性は、周期構造ピッチに対応する周期Pを有するオーバレイの正弦関数として振る舞うことが仮定される。この仮定は、現在のオーバレイの範囲において有効である。高調波の数は小さくなるように設計可能である。なぜなら、小さなピッチ波長比率では、周期構造から伝播する少数の回折次数のみ許容されるためである。しかしながら、実際には、ミスアライメントに起因する強度非対称性へのオーバレイの寄与は、必ずしも真の正弦波にならないかもしれず、必ずしもOV=0について完全な対称にはならないかもしれない。
そこで、構造的非対称性の効果は、以下のように一般的に定式化できる。
ここで、ΔI
-(A-と同義でもある)およびΔI
+(A+と同義でもある)は、それぞれ、負にバイアスされた周期構造および正にバイアスされた周期構造について測定される強度非対称性を表し、ΔI
BGは、構造的非対称性の強度非対称性への寄与である。また、オーバレイ誤差ΔOVは、ΔI
BG/Kの関数とみなすことができる。
ところで、ターゲットの構造的非対称性に加えてまたは代えて、ターゲットの隣接する周期構造間または隣接するターゲット間のスタック差異が、オーバレイ測定などの測定の精度に悪影響を与える要因となりうることがさらに発見されている。スタック差異は、隣接する周期構造またはターゲット間の物理的構成における意図(設計)されていない差異として理解されてもよい。スタック差異は、隣接する周期的構造またはターゲット間の測定放射の光学特性(例えば強度、偏光など)に差異を生じさせるが、これは、オーバレイ誤差以外に起因し、意図的なバイアス以外に起因し、かつ、隣接する周期的構造またはターゲットに共通する構造的非対称性以外に起因する。スタック差異は、隣接する周期構造またはターゲット間の厚さの差(例えば、一つの周期構造またはターゲットが、実質的に等しいレベルに設計される別の周期構造またはターゲットよりも高くまたは低くなるような一以上の層の厚さの差)、隣接する周期構造またはターゲット間の屈折率の差(例えば、実質的に等しい複合屈折率を有するように設計されるにも拘わらず、ある周期構造またはターゲットのための一以上の層の複合屈折率が、別の周期的構造またはターゲットのための一以上の層の複合屈折率とは異なるような一以上の層の屈折率の差)、隣接する周期構造またはターゲット間の材料の差(例えば、実質的に同じ材料を有するように設計される、ある周期構造またはターゲットと、別の周期構造またはターゲットとの間に材料の差が存在するような、一以上の層の材料の種類または材料の均一性などの差)、隣接する周期構造またはターゲットの構造の周期構造の周期の差(例えば、実質的に同じ周期構造の周期を有するように設計される、ある周期構造またはターゲットと、別の周期構造またはターゲットとの間の周期構造の周期の差)、隣接する周期構造またはターゲットの構造の深さの差(例えば、実質的に同じ深さを有するように設計される、ある周期構造またはターゲットと、別の周期構造またはターゲットとの間の構造の深さのエッチングに起因する差)、隣接する周期構造またはターゲットのフィーチャの幅(CD)の差(例えば、実質的に同じフィーチャの幅を有するように設計される、ある周期構造またはターゲットと、別の周期構造またはターゲットとの間のフィーチャの幅の差)などを含むが、これらに限られるものではない。いくつかの例では、スタック差異は、パターニングプロセスにおける、CMP、層堆積、エッチングなどの処理工程によって導入される。ある実施の形態において、周期構造またはターゲットは、互いに200μm以内、互いに150μm以内、互いに100μm以内、互いに75μm以内、互いに50μm以内、互いに40μm以内、互いに30μm以内、互いに20μm以内、または、互いに10μm以内であれば隣接している。
スタック差異の効果(これは、グレーティング間のグレーティング不均衡と称することもできる)は、以下のように一般的に定式化できる。
ここで、ΔKは、スタック差異に起因するオーバレイ感度の差を表す。また、オーバレイ誤差ΔOVは、(ΔK/K)dに比例することができる。
したがって、スタック差異を特徴付けるために、一以上のスタック差異パラメータを定義できる。上述したように、スタック差異パラメータは、隣接する周期構造またはターゲットの意図(設計)されていない異なる物理的構成の尺度である。ある実施の形態において、スタック差異パラメータは、隣接する周期構造またはターゲットの断面を評価することで決定できる。
ある実施の形態において、スタック差異パラメータは、上側周期構造が付与される前に下側の隣接する周期構造を評価することにより、複合周期構造の下側の隣接する周期構造について決定できる。ある実施の形態において、スタック差異パラメータは、隣接する周期構造またはターゲットの光学測定に基づいてまたは隣接する周期構造またはターゲットの断面に基づいて、隣接する周期構造またはターゲットを再構築することで導出できる。つまり、スタック差異パラメータに到達するように、物理的な寸法、特性、材料特性などが再構成され、隣接する周期構造またはターゲット間の差異が決定される。
ある実施の形態のスタック差異パラメータは、周期構造強度不均衡(GI)であり、これは以下のように定義できる。
ここで、
は、+dバイアスを有する第1周期構造により回折された+1次回折次数強度信号である
と、+dバイアスを有する第1周期構造により回折された-1次回折次数強度信号である
との平均値である。同様に、
は、-dバイアスを有する第2周期構造により回折された+1次回折次数強度信号である
と、-dバイアスを有する第2周期構造により回折された-1次回折次数強度信号である
との平均値である。ある実施の形態において、周期構造強度不均衡(GI)は、
などのような派生バージョンにできる。
さらに、ターゲットの測定精度および/または感度は、ターゲット自体の一以上の属性および/またはターゲットに与えられる測定放射の一以上の属性、例えば放射の波長、放射の偏光および/または放射の強度分布(つまり角度または空間的強度分布)に関して変化してもよい。ある実施の形態において、放射の波長範囲は、ある範囲から選択される(例えば約400nmから900nmの範囲から選択される)一以上の波長に限定される。さらに、放射ビームの異なる偏光(例えばTE偏光放射およびTM偏光放射)の選択が提供されてもよく、例えば複数の異なるアパチャ用いて様々な照明形状が提供されてもよい。
したがって、このような選択および測定を可能にするため、測定システムを用いる測定の一以上のパラメータを特定する計測レシピを用いることができる。ある実施の形態において、「計測レシピ」の用語は、測定自体の一以上のパラメータ、測定されるターゲットのパターンの一以上のパラメータ、またはその両方を含む。
この文脈において、測定されるターゲットのパターン(「ターゲット」または「ターゲット構造」とも称する)は、光学的に測定されたパターンであってもよく、例えば測定された回折のパターンであってもよい。測定されたターゲットパターンは、測定目的に特化して設計または選択されたパターンであってもよい。ターゲットの複数のコピーが基板上の多くの場所に配置されてもよい。
ある実施の形態において、計測レシピが測定自体の一以上のパラメータを備える場合、その測定自体の一以上のパラメータは、測定を行うために用いる測定ビームおよび/または測定装置に関連する一以上のパラメータを含むことができる。例えば、計測レシピで用いられる測定が回折ベース光学測定である場合、測定自体の一以上のパラメータは、測定放射の波長、および/または、測定放射の偏光、および/または、測定放射の強度分布、および/または、測定放射の基板に対する照明角度(例えば入射角、方位角など)、および/または、回折された測定放射の基板上のパターンに対する相対的な向き、および/または、測定点またはターゲットのインスタンスの数、および/または、基板上で測定されたターゲットのインスタンスの位置を含むことができる。測定自体の一以上のパラメータは、測定に用いる計測装置の一以上のパラメータを含んでもよく、検出器の感度、開口数などを含むことができる。
ある実施の形態において、計測レシピが測定されるパターンの一以上のパラメータを備える場合、測定されるパターンの一以上のパラメータは、一以上の幾何学的特性(パターンの少なくとも一部の形状、および/または、パターンの少なくとも一部の向き、および/または、パターンの少なくとも一部のピッチ(例えば、周期構造のピッチには、下側周期構造の層の上の層にある上側周期構造のピッチおよび/または下側周期構造のピッチが含まれる)、および/または、パターンの少なくとも一部のサイズ(例えばCD)(例えば、上側周期構造および/または下側周期構造のフィーチャのCDを含む、周期構造のフィーチャのCD)、および/または、パターンのフィーチャの小区分(例えば、周期構造のフィーチャのサブ構造への分割)、および/または、周期構造または周期構造のフィーチャの長さなど)を含んでもよいし、および/または、パターンの少なくとも一部における材料特性(例えば、屈折率、消光係数、材料の種類など)、および/または、パターンに識別(例えば、あるパターンを別のパターンから区別すること)などを含んでもよい。
計測レシピは、測定の一以上のパラメータがどこにあり、測定される一以上のパターンの一以上のパラメータがどこにある、といった形式で表現されてもよい。理解されるであろうように、nおよびmは1であることができる。さらに、計測レシピは、測定の一以上のパラメータと、測定される一以上のパターンの一以上のパラメータとの双方を有しなくてもよく、測定の一以上のパラメータのみを有することができ、または、測定される一以上のパターンの一以上のパラメータのみを有することができる。
ターゲットは、二つの計測レシピAおよびBを用いて測定がなされてもよく、例えば、ターゲットの測定がなされる段階が互いに異なってもよいし(例えば、Aは潜像構造を有するときのターゲットを測定し、Bは潜像構造を有しないときのターゲットを測定する)、および/または、それらの測定のパラメータが互いに異なってもよい。計測レシピAおよびBは、測定されるターゲットが少なくとも互いに異なることができる(例えば、Aは第1ターゲットを測定し、Bは第2の異なるターゲットを測定する)。計測レシピAおよびBは、それらの測定およびターゲット測定のパラメータが互いに異なってもよい。計測レシピAおよびBは、同一の測定技術に基づかなくてもよい。例えば、レシピAは、回折ベース測定に基づいてもよく、レシピBは、走査型電子顕微鏡(SEM)または原子間力顕微鏡(AFM)測定に基づいてもよい。
ここで、上述したように、オーバレイを決定するいくつかの技術は、測定される強度非対称性が周期構造の層と層の間の実際のオーバレイシフトのみに比例することを前提としている。しかしながら、これは、測定される非対称性がターゲットの周期構造の製造時に生じる様々なフィーチャ非対称性、例えば構造的非対称性やスタック差異などによっても影響される場合、必ずしもそうではない。これらのフィーチャ非対称性効果は、1次非対称性ベースのオーバレイ測定を不安定にさせ、測定の偏りを生じさせ、その結果、不正確なオーバレイ測定となる可能性がある。
構造的非対称性やスタック差異などといったフィーチャ非対称性効果の考慮を目的とするオーバレイ分析の技術は、PCT特許出願公開第WO2015/018625および米国特許出願公開第US2016/0161864に記載されるA+対A-分析を用いる自己参照技術を含み、これらの全体は参照により本書に組み込まれる。
ある実施の形態に組み込まれるA+対A-分析は、正にバイアスされた周期構造(例えば周期構造612)からの放射の非対称性A+(例えば、正の1次放射と負の1次放射の差)を、負にバイアスされた周期構造(例えば周期構造614)からの放射の非対称性A-(例えば、正の1次放射と負の1次放射の差)の関数として決定することにより、回折ベースのオーバレイ測定を分析することを備える。ある実施の形態において、A+およびA-は、多数の異なる測定瞳画素について、および/または、多数の異なる波長と偏光の組み合わせについて(つまり、多数の異なる計測レシピについて)決定される。このデータから、データを通る適合曲線(例えば、直線)または適合関数(例えば、曲線を表す関数、特に直線を表す関数)が得られる。ある実施の形態において、適合(フィッティング)は、回帰により得られる。ある実施の形態において、フィッティングは線形回帰により得られる。ある実施の形態では、曲線または関数から(例えば、直線の傾きまたは直線に関連する関数の傾きから)オーバレイの尺度を決定できる。本書の説明では、曲線(例えば、直線)に焦点を当てるが、理解されるであろうように、追加的または代替的に関数(例えば直線などの曲線を表す関数)をデータを通るように適合させることができる。本書の説明はまた、A+対A-のプロットに焦点を当てるが、理解されるであろうように、A+対A-のプロットは、データを通る適合曲線または適合関数の決定に必ずしも必要ではない。
図14は、フィーチャ非対称性効果を有さず、放射に存在する非対称性がバイアスおよびオーバレイに起因する非対称性のみであるようなオーバレイ周期構造のA-(A-dのマーク)に対するA+(A+dのマーク)のプロットの例であり、フィッティングの例を示す。この場合、A+とA-の関係は、曲線上、具体的には直線上にあり、原点を通るように適合する(フィーチャ非対称性効果がないと仮定しているため)。全ての計測レシピに対応するA+対A-のデータ点がこの直線上にある。この直線の傾き(フィッティング)は、実際のオーバレイに関連する。図14は、データの性質に依存して生じる6本の直線例を示す。符号OV=0の点線は、オーバレイがゼロであることを示す直線であり、-1の傾きを有する。この直線は、オーバレイがゼロの場合に生じるであろう。符号OV∞の点線は、+1の傾きを持つ直線であり、オーバレイが無限大に近づくことを示す。したがって、データにオーバレイ誤差がある場合、例えば-1未満の傾きを有し、オーバレイがゼロより小さいことを示す直線である符号OV<0の実線となるか、または、-1より大きな傾きを有し、オーバレイがゼロより大きいことを示す直線である符号OV>0の実線となるであろう。追加的に、+dに等しいオーバレイ(dは周期構造のバイアス)は、y軸に沿ってプロットされ、-dに等しいオーバレイは、x軸に沿ってプロットされることが分かるであろう。
図15は、上述した技術に係るA-に対するA+のプロットであり、オーバレイターゲットがフィーチャ非対称性効果を有する。上述の技術によれば、オーバレイターゲットがフィーチャ非対称性効果を有しない場合、データ点930は、原点を通る直線に適合するであろう。しかしながら、この実施の形態におけるデータ点は、最良適合法(例えば、最小自乗)によれば、必ずしも原点を通らない直線910に適合する。このようにして、直線910の傾斜からオーバレイを計算することもできる。しかしながら、直線910は、フィーチャ非対称性を有しない同じ測定構造について見られるような直線920と平行であることが分かる。直線910の軸切片、つまり、直線920(直線910と同じ傾きを有するが、原点を通ってプロットされる直線)からの直線910のオフセットは、フィーチャ非対称性効果の影響を量的に示す。
また、A+対A-データを通る曲線または関数の例えば回帰によるフィッティングは、それがフィーチャ非対称性効果に起因する寄与を有しないため、データセットを通るが必ずしも原点を通らないようにフィッティングされる直線の傾きを決定することで、オーバレイのより正確な値を得ることができる。選択的に、フィーチャ非対称性効果は、原点からの適合直線のオフセット(例えば切片項)を用いて決定することもできる。
図16A-Cは、A-に対するA+のプロットであり、様々なシナリオのフィーチャ非対称性効果(それがない場合も含む)についてデータがどのようにシフトするかを示す。図16Aは、フィーチャ非対称性効果を有しない(例えば、構造的非対称性およびスタック差異を有しない)オーバレイターゲットについてのA-に対するA+のプロットである。直線1600は、特定のオーバレイを有するオーバレイターゲットについてのデータを表し、直線1610は、異なるオーバレイを有するオーバレイターゲットについてのデータを表す。上述のように、直線の傾きは、オーバレイの大きさに対応する。したがって、矢印は、データ(例えば直線)がオーバレイの大きさに応じてどのように回転するかを示す。
図16Bは、A-に対するA+のプロットであり、例えばオーバレイターゲットの構造的非対称性によってデータがどのように影響を受けるかを示す。直線1620は、フィーチャ非対称性効果を有しない(かつ、あるオーバレイを有する)オーバレイターゲットのデータを表す。上述のように、直線1620は、フィーチャ非対称性効果が存在しないために原点を通る。ところで、直線1630は、構造的非対称性(例えば、下部グレーティングの構造的非対称性)を有するが、同じオーバレイを有するオーバレイターゲットのデータを表す。構造的非対称性は、データ(例えば直線)を同じ傾斜を保持しながら変位させる。したがって、矢印は、データ(例えば直線1630)が構造的非対称性の大きさに応じてどのように変位するかを示す。
図16Cは、A-に対するA+のプロットであり、例えばオーバレイターゲットのスタック差異によってデータがどのように影響を受けるかを示す。直線1640は、フィーチャ非対称性効果を有しない(かつ、あるオーバレイを有する)オーバレイターゲットのデータを表す。上述のように、直線1640は、フィーチャ非対称性効果がないために原点を通る。ところで、直線1650は、スタック差異を有するが、同じオーバレイを有するオーバレイターゲットのデータを表す。スタック差異は、データ(例えば直線)を異なる量で変位させる。したがって、矢印は、データ(例えば直線1650)がスタック差異の大きさに応じてどのように変位するかを示す。意義深いことに、直線の傾きに影響があることが分かる。
図17Aは、フィーチャ非対称性効果を有しないオーバレイターゲットについて、異なる偏光と波長の組み合わせの(シミュレーションされた)データのA-に対するA+のプロットである。既に議論したのように、全てのデータが同一直線上に適合していることが分かる。図17Bは、図17Aと同様のプロットを示すが、フィーチャ非対称性効果、具体的には0.5nmの床面傾斜(フロアチルト)が存在する。図17Aおよび17Bの双方において、丸でマークされたデータはTE放射を表し、十字でマークされたデータはTM放射を表す。この図からは分からないが、直線に沿う位置は(与えられる偏光の)波長によって主に決定され、より短い波長(紫)は直線の上端(A+=6から8)で見つかり、より長い波長(赤)は直線の下端で見つかる傾向にある。
図17Bから、線形関係からの波長および偏光に依存する逸脱が原点付近の領域1000において見られる。オーバレイ感度は、0.5nmの床面傾斜であるこの例において、TE偏光について最小となる。さらに、最大となるK値(測定放射におけるオーバレイと非対称性の比例係数)、つまりオーバレイに対して最大の感度を有するデータも容易に特定することができ、これは原点から最も遠い箇所で依然として線形関係を示すデータ1010である。この例におけるデータ1010は、短い波長(紫)の領域における放射についてのデータである。その結果、このようなプロットは、周期構造の測定に用いる際、オーバレイに対して最も感度が高く、フィーチャ非対称性効果に最も依存しにくいデータ1010を与える適切な計測レシピの選択を可能にする。
実際の計測レシピの最適化では、基板上(例えばエッジ)で生じうる全てのフィーチャ非対称性の効果が考慮されるように、基板全体にわたる多数の測定が異なる波長および偏光について実行されるべきである。いったん適切なまたは望ましいレシピが選択されれば、この単一のレシピ(例えば、波長と偏光と照明角度の組み合わせ)を用いて測定を実行できる。
仮に単一の計測レシピがフィーチャ非対称性効果の安定性(ロバスト性)を十分に提供していなければ、上述のA+対A-分析を用いて、二つまたは三つの計測レシピの組み合わせを特定することが可能である。これは、別々の計測レシピのそれぞれがデータ項目の群(雲)を生み出し、二つから三つの計測レシピを通る直線がゼロではない軸切片を示し、このような直線の傾きがフィーチャ非対称性効果に対して比較的安定(ロバスト)なオーバレイデータを生み出すような場合であってもよい。このために、二つまたは三つの計測レシピが実際のオーバレイ測定のために用いられる。
したがって、ある実施の形態において、A+対A-分析は、正のバイアス(A+)を持つ周期構造および負のバイアス(A-)を持つ周期構造を有するターゲットの計測レシピを評価するために使用できる。したがって、性能パラメータのようなオーバレイについて、A+およびA-は各計測レシピについて決定され、A+の決定値は、A-の決定値に対して評価され、このようなデータを通るフィッティングが生み出される。フィッティングに関連する値は、ターゲットのインスタンスについての実際のオーバレイのより正確な値に対応する。したがって、規定の既知のオーバレイを用いる較正ルーチンでは、規定の既知のオーバレイに適合または近似する傾き値を生み出す計測レシピが大量測定用の計測レシピの強力な候補となる。
図18を参照すると、特定の計測レシピでは測定結果に有意なばらつきが存在しうる。例えば、二つの例示的な測定結果1800,1805は、特定の単一の計測レシピ(例えば特定の測定放射波長)についての図18のA-に対するA+のプロットで示される。この場合、各測定結果は、同じオーバレイに関連付けられるが、特定のターゲットの異なるインスタンスのものである。実線1810,1820の傾きによって示すように、フィーチャ非対称性効果がない(つまり直線が原点を通る)と仮定される場合、各測定結果1800,1805は、非常に異なるオーバレイを生み出すであろう。実際、測定結果18000に対応するターゲットのインスタンスは、顕著なフィーチャ非対称性効果(例えば、構造的非対称性)を有する一方で、測定結果1805に対応するターゲットのインスタンスはそうではない。したがって、顕著なフィーチャ非対称性効果(例えば、構造的非対称性、スタック差異など)が存在する場合、単一の計測レシピ(例えば、単一の波長)は、決定されるオーバレイ、具体的には測定結果1800から決定されるオーバレイに誤差を与えうることが分かる。
しかしながら、複数の異なる計測レシピ(例えば二つの異なる計測レシピ)から取得される測定値を用いると、フィーチャ非対称性効果に対してより安定(ロバスト)であるため、オーバレイをより正確に決定できる。図18を再度参照すると、二つのさらなる例示的な測定結果1830,1835は、結果1800,1805についての第1計測レシピとは異なる特定の第2計測レシピ(例えば特定の測定放射波長)についての図18のA-に対するA+のプロットで示される。測定結果1800,1805と同様、この場合、測定結果1830,1835のそれぞれは、同じオーバレイに関連するが、特定のターゲットの異なるインスタンスのものである。測定結果1830は、測定結果1800と同じインスタンスのターゲットのものであり、測定結果1835は、測定1805と同じインスタンスのターゲットのものである。上述のように、実際には、測定結果1800,1830に対応するターゲットのインスタンスは、顕著なフィーチャ非対称性効果(例えば、構造的非対称性)を有する一方、測定結果1805,1835に対応するターゲットのインスタンスはそうではない。
しかしながら、ここで、破線1840,1850の傾きで示すように、測定結果1800,1805,1830,1835の組み合わせは、フィーチャ非対称性効果とは無関係の実質的に同じオーバレイを生み出すであろう。したがって、原点からの直線1850の距離1860によって示される有意なフィーチャ非対称性効果(例えば、構造的非対称性、スタック差異など)を有する場合でさえ、二以上の計測レシピ(例えば複数の波長)は、フィーチャ非対称性効果に対してかなり安定的に決定されるオーバレイを生み出すことができる。
したがって、ある実施の形態では,ターゲットのインスタンスの測定に用いる二以上の異なる計測レシピが選択され、その結果の組み合わせから、ターゲットのインスタンスについて起こりうるフィーチャ非対称性効果に対して安定なオーバレイが決定される。つまり、ある実施の形態において、フィーチャ非対称性効果、または偽の強度非対称性(スタック差異、構造的非対称性など)となる他の原因と比較されるオーバレイ結果を提供するために使用可能な適切な計測レシピの組み合わせを選択するための技術が提供される。
二以上の異なる計測レシピ(例えば二つの異なる波長)を選択することで、任意のフィーチャ非対称性効果に対するオーバレイなどのパターニングプロセスパラメータの決定がより安定(ロバスト)となる。しかしながら、いくつかの場合、二以上の異なる計測レシピを用いることは、単一の計測レシピを用いる場合に比べてノイズがより大きくなる。
図19は、測定放射波長(x軸に沿う)とオーバレイ感度K(y軸に沿う)の関係性を示すグラフである。オーバレイの測定において、強度非対称性は、オーバレイ感度とオーバレイの積に等しい。強度非対称性は、ターゲットから反射される+1および-1回折次数の強度の差である。オーバレイ感度は、オーバレイに対する強度非対称性測定の感度の尺度である。
図19に例示すように、オーバレイ感度は、使用する測定放射波長に応じて変動することができる。オーバレイ測定の精度を向上させるためには、オーバレイ感度の大きさが大きいことが望ましい。オーバレイ感度の大きさが大きい場合、オーバレイをより正確に測定できる。図18に示される種類の非対称性グラフでは、オーバレイの決定に用いる二つの測定結果が互いに離れていることが望ましい。二つの測定結果が互いに離れている場合、オーバレイをより正確に測定できる。
図18に示され例では、オーバレイ感度の大きさが比較的大きいため、測定結果1800,1805,1830,1835は原点から比較的に離れている。仮にこれらの測定のでオーバレイ感度が低い場合、測定結果は、図18の非対称性グラフの原点のより近くになるであろう。
一方で、図18に示される例において、測定結果1800は、別の測定結果1830とは原点の逆側にある。同様に、測定結果1805は、別の測定結果1835とは原点の逆側にある。これは好ましい。なぜなら、二つの測定結果(例えば測定結果1800と1830、または、測定結果1805と1835)が図18の非対称性グラフにおいて互いに遠くにあることが望ましいためである。これは、オーバレイのより正確な測定につながる。これを実現するための一つの方法は、二つの測定結果の測定放射波長を、それらが逆符号のオーバレイ感度値を有し、かつ、大きい大きさを有するように選択することである。例えば、測定結果1800の測定放射波長は、オーバレイ感度が大きくて正となるように選択されてもよい。一方、測定結果1830の測定放射波長は、オーバレイ感度が大きくて負となるように選択されてもよい。
しかしながら、このような望ましい測定放射波長をいつも選択できるとは限らない。例えば、測定放射波長とオーバレイ感度の関係性が図19に示されるような場合、これは不可能であろう。図19の例に示すように、オーバレイ感度は、可能な測定放射波長の全範囲において常に負である。類似するオーバレイ感度の値を有する二つの測定放射波長が選択された場合、二つの測定結果は、図18の非対称性グラフにおいて互いに近接するかもしれない。これは、測定結果における不正確さが測定されたオーバレイにより大きな影響を与えるため、オーバレイ測定の精度を低下させる可能性がある。
一つの選択肢は、大きな負のオーバレイ感度を与える測定放射波長と、ゼロに近いオーバレイ感度を与える第2の測定放射波長を選択することである。これは、一方の測定結果が図18の非対称性グラフの原点から遠いために望ましい結果となりうる。しかしながら、小さなオーバレイ感度を与える測定放射波長からの測定結果は、図18の非対称性グラフの原点の近くになるであろう。双方の測定結果は、それらに関連する不正確さ(つまりノイズ)をいくらか有する。
測定結果の一方が原点に非常に近い場合(例えばオーバレイ感度が非常に小さいため)、二つ異なる測定放射波長に基づくオーバレイ測定は、単一の測定放射波長に基づくオーバレイ測定よりも低精度となる可能性がある。これは、単一の測定放射波長が使用される場合、オーバレイ測定は、単一の測定結果(これは原点から離れているかもしれない)と原点自体とから導出されるためである。原点はノイズから自由であるため、オーバレイ測定の不正確さに好ましくない影響を与えることはない。代替的に、二つの異なる測定放射波長が用いられ、測定結果の一方が原点に非常に近い場合、原点に近い測定結果は、原点を用いる状況(つまり、単一の測定放射波長のみが使用される場合)に比べて、ノイズを実質的に増加させる。
したがって、場合によっては、単一の測定放射波長を使用することで、二つの異なる測定放射波長を使用する場合に比べてより再現性の高いオーバレイ測定を得ることができる。特に図19に示される例において、オーバレイ感度は、取りうる測定放射波長の全範囲において負である。これは、図18に示されるグラフの種類において、原点から異なる方向に原点から遠く離れる二つの測定結果をもたらす適切な測定放射波長を選択することを不可能にする。二つの異なる測定放射波長の使用が単一の測定放射波長よりも好ましいか否かは、ターゲットにおけるフィーチャ非対称性の量、および、オーバレイ感度と取りうる測定放射波長の関係性に依存する。
上記原理をオーバレイ感度を参照しながら説明してきたが、これらの原理は、スタック感度や回折効率といった他の測定品質パラメータにも同様に適用可能である。スタック感度は、ターゲット(例えば、グレーティング)の層と層の間の回折に起因してオーバレイが変化する場合に、信号の強度がどの程度変化するかの尺度として理解できる。つまり、オーバレイの文脈において、オーバレイターゲットの上側周期構造と下側周期構造の間のコントラストを検出し、したがって上側周期構造と下側周期構造の間の回折効率のバランスを表す。回折効率は、ターゲットによって回折される測定の平均強度に正比例する。
図20は、測定放射波長とスタック感度の関係を示すグラフである。オーバレイ感度に関しては、スタック感度の値が大きく逆符号となるように測定放射波長を選択することが望ましい。ただし、図20に示すように、場合によっては、測定放射波長の全範囲でスタック感度が同じ符号(図20の例では正)となるかもしれない。その結果、スタック感度の値が大きく逆符号となるように、二つの測定放射波長を選択することが不可能となるかもしれない。
ある実施の形態において、本発明は、パターニングプロセスパラメータを決定する方法を提供する。以下の説明において、パターニングプロセスパラメータであるオーバレイを参照しながら本発明が説明される。しかしながら、本発明は、構造のCDといった他のパターニングプロセスパラメータの決定に用いることができる。
上述したように、本発明者らは、場合によっては、二つの異なる測定放射波長を使用することが単一の測定放射波長を使用するよりも好ましいことを発見した。これは、二つの異なる測定放射波長を使用することで、ターゲットの望ましくないフィーチャ非対称性に対するオーバレイ測定の安定性(ロバスト性)を向上できるためである。しかしながら、他の状況では、オーバレイ測定に影響するノイズがより小さいため、単一の測定放射波長を使用する方が二つの異なる測定放射波長を使用する場合よりも好ましい。
ある実施の形態において、単一波長および複数波長の双方がオーバレイを決定するために用いられる。本発明は、単一波長および複数波長の測定の双方の利点を実現することが期待される。具体的には、本発明のある実施の形態は、ターゲットのフィーチャ非対称性に対して測定の安定性(ロバスト性)を改善することが期待される。一方、本発明のある実施の形態は、測定におけるノイズの低減を実現することが期待される。ある実施の形態において、単一波長および複数波長の測定は、改善されたハイブリッド測定を提供するように混合させることができる。
ある実施の形態において、ターゲットは、二つの異なる中心波長を備える放射で照明される。別の言い方をすれば、二つの異なる測定放射波長は、ターゲットを照明し、生データを得るために用いられる。もちろん、特定の測定放射波長を選択して使用する場合、照明する放射は、実際には、特定の中心波長のピークを有する波長のスペクトルを備えてもよい。この記載において、特定の測定放射波長を用いる場合、我々は「ターゲットが中心波長を備える放射で照明される」と称する。
二つの異なる中心波長を備える放射を用いてターゲットを照明することで得られる生データに基づいて、オーバレイの複合測定を提供するように計算が実行される。
ある実施の形態において、この方法は、ターゲットについて、中心波長を備える放射でターゲットを照明することにより得られるデータから中間パラメータの第1の値を計算することを備える。この記載において、本発明は、オーバレイが中間パラメータであるとして説明される。しかしながら、強度レベルや非対称性レベルといった他の中間パラメータを用いることができる。
中間パラメータがオーバレイである場合、オーバレイの第1の値は、(単一の)中心波長を備える放射を用いてターゲットを照明することにより得られるデータから計算される。言い換えれば、オーバレイは、単一の測定放射波長の使用に基づいて計算される。
ある実施の形態において、この方法は、ターゲットについて、二つの異なる中心波長を備える放射でターゲットを照明することにより得られるデータから中間パラメータの第2の値を計算することを備える。中間パラメータがオーバレイである文脈において、この方法は、二つの異なる測定放射波長の使用に基づいて第2のオーバレイの値を計算することを備える。したがって、第1の値は、単一波長でのオーバレイ測定値であり、第2の値は、複数波長でのオーバレイ測定値である。
ある実施の形態において、この方法は、中間パラメータの第1および第2の値に基づいて、パターニングプロセスパラメータ(例えばオーバレイ)の複合測定値を計算することを備える。複合測定値は、単一波長測定値および複数波長測定値の双方の利点を有してもよい。
ある実施の形態において、複合測定値は、ターゲットの上側層および/または下側層にある周期構造内のフィーチャの構造的非対称性の尺度に依存する関数にしたがって決定される。上述のように、複数波長測定値の具体的な優位性は、ターゲット内のフィーチャの構造的非対称性に対する安定性が増えることである。フィーチャ非対称性の尺度に依存する関数にしたがって複合測定値を決定することにより、オーバレイ測定の再現性および精度の利益をバランスさせることができる。複数波長測定値は、フィーチャ非対称性がより大きい場合により大きな影響を有することができ、その結果、これがより重要な場合に複合測定値の安定性を向上させる。一方、フィーチャの構造的非対称性が低い場合、複合測定値のノイズを低減させるために、複合測定値が単一波長測定値により多く基づくことが望ましいかもしれない。
ある実施の形態において、関数は、構造的非対称性が大きくなると、複合測定値に対する第2の値(つまり、複数波長測定値)の影響が大きくなるように構造的非対称性の尺度に依存する。
ターゲット内のフィーチャの不必要な構造的非対称性がどの程度あるかを決定することは難しいかもしれない。構造的非対称性を決定するための複数の異なる方法がある。本発明は、それらのいずれかを用いることができる。
構造的非対称性の尺度を得るための一つの方法は、複数波長オーバレイ測定値と単一波長オーバレイ測定値の差を決定することである。したがって、単一波長測定から複数波長測定への移行を決定するために用いる非対称性パラメータは、単一波長動作を用いて測定されたオーバレイと複数波長動作を用いて測定されたオーバレイの差とすることができる。
フィーチャ非対称性の尺度として複数波長と単一波長のオーバレイ測定値の差を使用する利点は、追加の測定時間を必要としないことである。したがって、ある実施の形態において、中間パラメータがオーバレイである場合、構造的非対称性の尺度は、第1オーバレイの値と第2オーバレイの値の差に比例する。
非対称性パラメータを決定するその他の方法が存在する。例えば、上述のように、フィーチャ非対称性効果は、図18の原点からの直線1850の距離1860によって示すことができる。
ある代替的な実施の形態において、構造的非対称性の尺度は、ターゲットの上側層または下側層の周期構造に対応する構造的非対称性ターゲット(つまり専用ターゲット)から測定される。このような専用ターゲットが基板全体にわたって複数配置されてもよい。各専用ターゲットは、オーバレイの測定に用いるターゲットの下側層にある周期構造のみに対応するグレーティングを備えてもよい。専用ターゲットは、下部グレーティングのみを備え、上部グレーティングを備えない。その結果、専用ターゲットから強度不均衡が測定される場合、その不均衡は、不必要なフィーチャ非対称性に関連する。したがって、フィーチャ非対称性は、専用ターゲットを用いてこのように測定できる。
別の代替的な実施の形態において、構造的非対称性の尺度は、ターゲットの上側層が形成される前にターゲットの下側層から測定される。ターゲットの製造時、下側層の周期構造が最初に形成される。その後、上側層の周期構造が形成される。上側層の周期構造が形成される前に強度不均衡を測定することにより、下側層のフィーチャ非対称性を測定できる。
ある実施の形態において、第1の値の計算に用いる中心波長は、第2の値の計算に用いる二つの異なる中心波長の一方である。本発明のある実施の形態は、複合測定値の生成に必要な測定時間を最小化することが期待される。必ずしも、三つの異なる測定放射波長を用いる必要はない。単一波長は、使用する二つの異なる波長の一方であることができる。
ある代替的な実施の形態において、第1の値の計算に用いる中心波長は、第2の値の計算に用いる二つの異なる中心波長とは異なる。したがって、三つの異なる波長を用いることが可能となる。これは、二つの異なる波長の選択とは異なるパラメータが最適化されるように、単一波長を選択することが可能となるかもしれない。
ある実施の形態において、この方法は、基板にわたる複数のターゲットについて実行される。ある実施の形態において、複合測定値は、基板の中心からより離れたターゲットについて、複合測定値に対する第2の値(つまり、複数波長測定から得られる値)の影響がより大きくなるような関数にしたがって決定される。
一般的に、基板の中心では、フィーチャ非対称性の影響は低いかもしれない。したがって、基板の中心では、単一波長測定値が複合測定値に影響を及ぼすことがより望ましいかもしれない。これは、(使用する測定放射波長に対するオーバレイ感度に依存する)複数波長測定値に比べて、単一波長測定値の再現性を高めることができるからである。一方、基板のエッジでは、複数波長を用いることがより好ましいかもしれない。これは、基板のエッジでは、フィーチャ非対称性の影響がより大きくなりうるからである。
ある実施の形態において、複合測定値の決定に用いる関数は、連続関数である。これは、単一波長測定値と複数波長測定値の連続的な混合を提供できる。この関数は、フィーチャ非対称性の存在の量に依存する。
第1および第2の値に基づいて複合測定値を決定するための一つの方法は、以下のように設定される。
上記方程式において、OV
combinedは、オーバレイの複合測定値である。OV
1は、オーバレイの第1の値である(つまり、単一波長測定による)。OV
2は、オーバレイの第2の値である(つまり複数測定波長による)。混合係数(図22のM)は、
である。混合係数Mは、構造的非対称性の尺度xに依存する。
「数20」
パラメータxは、構造的非対称性の尺度である。ある実施の形態において、パラメータxは、以下の式を用いて計算されてもよい。
上記式において、強さ(strength )パラメータは、非対称性の影響をどの程度強く重み付けるかを調整するために用いる。強さパラメータは、複合測定値を決定するための望ましい関数が与えられるように較正できる。
複合測定値を決定するその他の方法も可能である。例えば、tanh(双曲線正接)関数を用いることができる。tanh関数は、第1の値を単独で用いる場合と第2の値を単独で用いる場合との間の滑らかな遷移を与えるために用いることができる。
OVcombinedの上記式において、第1および第2の値は、第1および第2オーバレイの値を直接組み合わせることにより、混合される(つまり組み合わされる)。これは、中間パラメータがオーバレイであるためである。しかしながら、代替的に、混合を異なるレベルで実行することもできる。例えば、オーバレイ値を直接混合するのではなく、強度または非対称性のレベルで混合することが可能である。したがって、中間パラメータを適宜変更できる。
図21は、基板上の位置と、第1オーバレイ値および第2オーバレイ値の差との関係を示す模式図である。基板は略円形である。基板上のx方向およびy方向の位置は、図21のパラメータrxおよびryで示される。図21に示すように、基板の中心では、第1オーバレイ値と第2オーバレイ値の間には小さな差(フィーチャ非対称性が低いことを示す)が存在する。しかしながら、基板のエッジでは、第1オーバレイ値と第2オーバレイ値の間にはより大きな大きさの差が存在する。これは、基板のエッジではより大きなフィーチャ非対称性が存在することを示す。
図22は、基板上の位置と混合係数Mの関係性を示す模式図である。混合係数は、図22の右側の目盛りにおける文字Mにより示される。図22に示すように、混合係数Mは、基板の中心で低い。これは、基板の中心において、複合測定値が第1の値に近くなることを意味する。これは、フィーチャ非対称性が低い基板の中心において単一波長測定が支配的になることが望ましいため、適切である。一方、基板のエッジでの混合係数はより高い。これは、フィーチャ非対称性が高い箇所では複数波長測定が支配的になることを意味する。その結果、再現性と精度の好ましいバランスを実現できる。
本発明は、リソグラフィプロセスの実行後にパターニングプロセスパラメータを決定する計測装置として具現化できる。この計測装置は、上記方法を実行するよう動作可能である。
本発明は、ターゲット上に放射のビームを提供し、ターゲットにより回折された放射を保護するよう構成される検査装置を備えるシステムとして具現化できる。このシステムは、本発明の方法を実行するためのソフトウェアを備える。
ある実施の形態において、ターゲットは、第1のバイアスされたターゲット構造と、第2の異なってバイアスされたターゲット構造を有し、パターニングプロセスを用いて生成される。ある実施の形態において、ターゲットは、計測ターゲットである。
ある実施の形態において、構造的非対称性の尺度は、A1+、A2+、A1-およびA2-から計算される。A1+は、第1のバイアスされたターゲット構造が二つの異なる波長のうちの第1波長の放射で照明される際に第1のバイアスされたターゲット構造から反射される正の1次放射の強度を、第1のバイアスされたターゲット構造が第1波長の放射で照明される際に第1のバイアスされたターゲット構造から反射される負の1次放射の強度から差し引いたものである。A2+は、第1のバイアスされたターゲット構造が二つの異なる波長のうちの第2波長の放射で照明される際に第1のバイアスされたターゲット構造から反射される正の1次放射の強度を、第1のバイアスされたターゲット構造が第2波長の放射で照明される際に第1のバイアスされたターゲット構造から反射される負の1次放射の強度から差し引いたものである。A1-は、第2のバイアスされたターゲット構造が第1波長の放射で照明される際に第2のバイアスされたターゲット構造から反射される正の1次放射の強度を、第2のバイアスされたターゲット構造が第1波長の放射で照明される際に第2のバイアスされたターゲット構造から反射される負の1次放射の強度から差し引いたものである。A2-は、第2のバイアスされたターゲット構造が第2波長の放射で照明される際に第2のバイアスされたターゲット構造から反射される正の1次放射の強度を、第2のバイアスされたターゲット構造が第2波長の放射で照明される際に第2のバイアスされたターゲット構造から反射される負の1次放射の強度から差し引いたものである。
ある実施の形態において、第2の値が計算される際、A1+とA2+の積は0以上であり、および/または、A1-とA2-の積は0以上である。ここで、A1+は、第1のバイアスされたターゲット構造が二つの異なる波長のうちの第1波長の放射で照明される際に第1のバイアスされたターゲット構造から反射される正の1次放射の強度を、第1のバイアスされたターゲット構造が第1波長の放射で照明される際に第1のバイアスされたターゲット構造から反射される負の1次放射の強度から差し引いたものである。A2+は、第1のバイアスされたターゲット構造が二つの異なる波長のうちの第2波長の放射で照明される際に第1のバイアスされたターゲット構造から反射される正の1次放射の強度を、第1のバイアスされたターゲット構造が第2波長の放射で照明される際に第1のバイアスされたターゲット構造から反射される負の1次放射の強度から差し引いたものである。A1-は、第2のバイアスされたターゲット構造が第1波長の放射で照明される際に第2のバイアスされたターゲット構造から反射される正の1次放射の強度を、第2のバイアスされたターゲット構造が第1波長の放射で照明される際に第2のバイアスされたターゲット構造から反射される負の1次放射の強度から差し引いたものである。A2-は、第2のバイアスされたターゲット構造が第2波長の放射で照明される際に第2のバイアスされたターゲット構造から反射される正の1次放射の強度を、第2のバイアスされたターゲット構造が第2波長の放射で照明される際に第2のバイアスされたターゲット構造から反射される負の1次放射の強度から差し引いたものである。
本発明のある代替的な実施の形態は、図23を参照しながら説明される。ある実施の形態において、方法は、基板Wのある層にわたる複数のターゲットのそれぞれについてパターニングプロセスパラメータ(例えばオーバレイ)の測定値を計算することを備える。
代替的な実施の形態において、少なくとも一つのターゲットについて、(単一の)中心波長を備える照明でターゲットを照明することにより得られるデータから測定値が計算される。言い換えれば、オーバレイは、単一の測定放射波長の使用に基づいて計算される。少なくとも一つの残りのターゲットについて、二つの異なる中心波長を備える放射でターゲットを照明することにより得られるデータから測定値が計算される。言い換えれば、オーバレイは、複数波長オーバレイ測定の使用に基づいて計算される。
この代替的な実施の形態は、以前に知られているものとは異なる。以前では、基板の層全体を通じて単一波長オーバレイ測定または複数波長オーバレイ測定のいずれかが使用されていた。対照的に、本発明の実施の形態によれば、単一波長オーバレイ測定が少なくとも一つのターゲットについて使用され、複数波長オーバレイ測定が基板Wの同じ層内の少なくとも一つのターゲットについて使用される。
本発明のある実施の形態は、オーバレイ(または異なるパターニングプロセスパラメータ)の測定の質の向上を実現することが期待される。いくつかのターゲットについて単一波長オーバレイを測定し、残りのターゲットについて複数波長オーバレイ測定を使用することで、各ターゲットについて最適な種類の測定を選択して測定の質を向上させることができる。
ある実施の形態において、ターゲットは、単一波長オーバレイ測定を用いるべきか、または、複数波長オーバレイ測定を用いるべきかに応じてグループ分けされてもよい。ターゲットは、オーバレイ測定に使用すべき波長の実際値をいずれにするかに応じてさらに分類されることができる。
例えば、ある実施の形態において、基板層の複数の領域のそれぞれについて、領域内のターゲットのオーバレイ測定値を計算するために用いるデータの種類が選択される。少なくとも一つの領域について選択されるデータの種類は、(単一の)中心波長を備える放射でターゲットを照明することにより得られるデータ(つまり、単一波長オーバレイ測定用)である。少なくとも一つの他の領域について選択されるデータの種類は、二つの異なる中心波長を備える放射でターゲットを照明することにより得られるデータ(つまり、複数波長オーバレイ測定用)である。
図23は、異なる領域51,52,53に分割される基板の層を模式的に示す。異なる種類のオーバレイ測定を異なる領域に用いることができる。各領域は、オーバレイが測定されるべき少なくとも一つのターゲットを備える。
例えば、ある実施の形態において、中心領域51では、第1波長の放射を用いて単一波長オーバレイ測定が実行される。中間領域52について、単一波長オーバレイ測定が用いられてもよい。この中心波長は、中心領域51のターゲットについてのオーバレイ測定で用いる第1波長と同じであってもよいし、異なっていてもよい。周縁領域53では、複数波長オーバレイ測定が用いられてもよい。複数波長オーバレイ測定は、二つの異なる中心波長を用いて実行されてもよい。二つの異なる中心波長は、中心領域51および中間領域52のターゲットについてのオーバレイ測定に用いる波長とは異なってもよい。代替的に、周縁領域53で用いる二つの中心波長の一方は、中心領域51および中間領域52の一方または双方で用いる中心波長と同じであってもよい。
ある実施の形態において、領域51,52,53は、基板の中心から互いに異なる距離に対応する。単なる例示として、基板Wの半径が150mmであれば、中心領域51は70mmの半径を有してもよく、中間領域52は120mmの半径を有してもよく、周縁領域53は150mmの半径(つまり、基板Wの半径と同じ)を有してもよい。もちろん、これらの値は、例示にすぎず、他の値も選択できる。また、領域の数は、特に限定されず、二つであってもよいし、四つ以上であってもよい。
ある実施の形態において、露光されるべき基板Wの各層は、図23に示されるような領域に分割される。ある実施の形態において、これらの領域は、異なる層について同様に定義される。例えば、各層は、第1半径を有する中心領域51と、第2半径を有する中間領域52と、第3半径を有する周縁領域53とを有してもよい。代替的に、これらの領域の半径は、基板Wの互いに異なる層について互いに異なっていてもよい。互いに異なる層は、互いに異なる数の領域を有してもよい。
互いに異なる層について、オーバレイ測定に用いるデータの種類および波長が互いに異なってもよい。例えば、第1層について第1領域51が第1中心波長を用いる単一波長オーバレイ測定に対応し、第2層の中心領域51が異なる中心波長を用いる単一波長オーバレイ測定に対応してもよい。ある実施の形態において、第1層の中間領域52が第1中心波長を用いる単一波長オーバレイ測定に対応し、第2層の中間領域52が第2および第3中心波長(これらは第1中心波長と異なってもよい)を用いる複数波長オーバレイ測定に対応してもよい。ある実施の形態において、第1層の周縁領域53が第1および第2中心波長を用いる複数波長オーバレイ測定に対応し、第2層の周縁領域53が第3および第4中心波長(これらは第1および第2中心波長と異なってもよい)を用いる複数波長オーバレイ測定に対応する。
図23に示すように、ある実施の形態において、データの種類(例えば単一波長オーバレイ測定または複数波長オーバレイ測定のいずれを用いるか)は、領域内の少なくとも一つのターゲットと基板Wの中心と間の距離に基づいて選択される。しかしながら、基板Wを互いに異なる領域に分割するための基準として、異なる性能指標を用いることができる。例えば、ある実施の形態において、これらの領域が構造的非対称性の尺度に基づいて定義される。例えば、上述したように、基板Wの周縁領域53にはより大きな量の構造的非対称性が存在しうる。したがって、周縁領域53は、より大きな量の構造的非対称性(例えば、所定の閾値よりも大きな構造的非対称性)を有するターゲットに対応してもよい。中心領域51は、ターゲットがより小さな構造的非対称性(例えば所定の閾値未満の構造的非対称性)を有する領域に対応してもよい。中間領域52は、ターゲットが中間的な量の構造的非対称性を有する領域に対応してもよい。
構造的非対称性は、上述したような様々な方法で測定できる。例えば、構造的非対称性は、同じターゲットの単一波長オーバレイ測定値と複数波長オーバレイ測定値の差を計算することにより決定されてもよい。
ある実施の形態において、ターゲットは、スタック感度やオーバレイ感度といった代替的なパラメータに基づいて分類される。
ある実施の形態において、中心波長(複数波長オーバレイ測定値の場合には複数の中心波長)は、測定のための少なくとも一つの品質パラメータを最適化するように選択される。品質パラメータは、例えば、スタック感度、オーバレイ感度または回折効率であってもよい。
上述の実施の形態は、組み合わされてもよい。例えば、単一波長測定値および二波長測定値の双方を用いる複合測定値は、基板Wの一以上の領域のために用いられてもよい。例えば、ある実施の形態において、単一波長測定が中心領域51のために用いられ、複数波長オーバレイ測定が周縁領域53のために用いられ、複合測定値が中間領域52のために用いられる。
ある実施の形態において、ターゲットは、図23に示されるような空間的な領域にグループ化されなくてもよい。代替的に、ターゲットは、構造的非対称性、または、スタック感度やオーバレイ感度といった他のパラメータのみに基づいてグループ化されてもよい。したがって、あるグループのターゲット(これらは同じオーバレイ測定レシピを用いる)は、基板Wの互いに異なる部分にわたって分布してもよい。代替的に、オーバレイ測定レシピは、各ターゲットについて個別に選択されてもよい。
本発明によれば、基板Wの領域ごとに適切な測定波長を選択することが可能である。適切な波長は、例えば、ある領域において単一波長、別の領域において二波長であり、さらに別の領域では異なる二波長などとなることができる。これは、以前に比べてより適切な態様で基板Wが測定されることを可能にする。本発明のある実施の形態は、より正確なオーバレイ測定を実現することが期待される。
より適切な波長を用いる結果、リソグラフィプロセスをより素早く実行することが可能となる。以前では、基板の周縁部のみ二波長測定が必要(例えば構造的非対称性が理由)である場合であっても、基板Wを二つの波長を用いて測定することが不可欠であった。本発明によれば、基板Wの周縁領域53のみを二波長を用いて選択的に測定することが可能である。基板Wの残り(例えば中心領域51および/または中間領域52)は、単一波長を用いて測定できる。本発明のある実施の形態は、基板Wのオーバレイ測定時間を低減することが期待される。本発明のある実施の形態は、スループットを向上させることが期待される。
本発明に係るさらなる実施の形態は、以下の番号が付された項にさらに記載される。
(項16)項15のシステムであって、パターニングデバイスを保持し、放射ビームを変調するよう構成されるサポート構造と、変調された放射ビームを放射感受性基板上に投影するよう構成される投影光学システムとを備えるリソグラフィ装置をさらに備えることを特徴とするシステム。
本発明に係るさらなる実施の形態は、以下の番号が付された項にさらに記載される。
(項I)パターニングプロセスパラメータを決定する方法であって、
基板の層にわたる複数のターゲットのそれぞれについて、前記パターニングプロセスパラメータの測定値を計算することを備え、
前記ターゲットの少なくとも一つについて、中心波長を備える放射で前記ターゲットを照明することにより得られるデータから前記測定値が計算され、前記ターゲットの別の少なくとも一つについて、二つの異なる中心波長を備える放射で前記ターゲットを照明することにより得られるデータから前記測定値が計算されることを特徴とする方法。
(項II)前記層の複数の領域のそれぞれについて、前記領域内のターゲットについて前記測定値を計算するために用いるデータの種類を選択することを備え、
前記領域の少なくとも一つについて前記選択された種類のデータは、中心波長を備える放射で前記ターゲットを照明することにより得られるデータであり、前記領域の別の少なくとも一つについて前記選択された種類のデータは、二つの異なる中心波長を備える放射で前記ターゲットを照明することにより得られるデータであることを特徴とする項Iに記載の方法。
(項III)前記データの種類は、前記領域内の少なくとも一つのターゲットと前記基板の中心との間の距離、前記領域内の少なくとも一つのターゲットの上側層および/または下側層の周期構造内のフィーチャの構造的非対称性の尺度、前記領域内の少なくとも一つのターゲットのスタック感度、および、前記領域内の少なくとも一つのターゲットのオーバレイ感度の少なくとも一つに基づいて選択されることを特徴とする項IIに記載の方法。
(項IV)中心波長を備える放射でターゲットを照明することにより得られるデータから前記測定値が計算される場合に、前記測定値の少なくとも一つの品質パラメータが最適化されるように前記中心波長を選択することをさらに備えることを特徴とする項IからIIIのいずれかに記載の方法。
(項V)二つの異なる中心波長を備える放射でターゲットを照明することにより得られるデータから前記測定値が計算される場合に、前記測定値の少なくとも一つの品質パラメータが最適化されるように前記中心波長を選択することをさらに備えることを特徴とする項IからIIIのいずれかに記載の方法。
上記では、光学リソグラフィの文脈における実施の形態の使用への具体的な参照がなされたかもしれないが、本発明の実施の形態は、他の用途、例えばインプリントリソグラフィで使用されてもよく、文脈が許す場合には、光学リソグラフィに限定されないことが理解されるであろう。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスにおけるトポグラフィ(地形)が基板上に作成されるパターンを定義する。パターニングデバイスの地形は、基板に供給されたレジストの層に押し込まれてもよく、その後、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組み合わせを適用することでレジストが硬化されてもよい。パターニングデバイスは、レジストが硬化した後、パターンを残してレジストから外に移動する。
本書で用いる「放射」および「ビーム」の用語は、紫外(UV)放射(例えば、365,355,248,193,157または126nmの波長またはその近傍の波長を有する)および極端紫外(EUV)放射(例えば5-20nmの範囲の波長を有する)を含むとともに、イオンビームや電子ビームといった粒子ビームを含む、全てのタイプの電磁放射を包含する。ある実施の形態において、測定放射は、400nmから950nmの範囲から選択される。
「レンズ」の用語は、文脈が許せば、屈折型、反射型、磁気型、電磁気型および静電型の光学素子を含む様々な種類の光学素子の任意の一つまたは組み合わせを指してもよい。
特定の実施の形態の上記説明は、他の人が当業者の範囲内の知識を適用することにより過度な実験をすることなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、このような特定の実施の形態の様々な用途に容易に改変および/または適合可能となるよう本発明の実施の形態の一般的な性質を明らかにする。したがって、そのような適合および改変は、本書に示される教示およびガイダンスに基づけば、開示された実施の形態と均等の意味および範囲内であることが意図される。本書の用語または表現は、本明細書の用語または表現が教示およびガイダンスに照らして当業者に解釈されるようにして例示による説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではないことが理解されよう。
本発明の幅および範囲は、上述の例示的な実施の形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の請求項およびその均等物にしたがってのみ定義されるべきである。