以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
以下では、本発明の実施形態を、塗布具の一例として鉛筆を用いて詳細に説明しているが、以下の説明は、上述したようなその他の塗布具においても適用可能である。
図1は、本発明の実施形態による把持具1を、塗布具の一例として鉛筆100に取り付けた状態の図である。図2は、図1の把持具1の分解組立図であり、図3は、図1の把持具1の縦断面図である。本明細書中では、把持具1を鉛筆100に対して取り付けた場合の把持具1の軸線方向において、鉛筆芯102の突出する側を「前」側と規定し、これと反対側を「後」側と規定する。
把持具1は、鉛筆100に対して着脱可能に構成されている。把持具1は、使用者が把持するための筒状の把持部10と、鉛筆100の軸部材101を保持可能な筒状の回転カム部材11と、回転カム部材11の前方に配置される円環状の前カム部材12と、回転カム部材11の後方に配置される円環状の後カム部材13と、コイルスプリング14とを有している。特に断りのない限り、「軸線」又は「中心軸線」とは、塗布具が取り付けられた場合の軸部材の中心軸線を意味し、把持具1又は回転カム部材11の軸線又は中心軸線と基本的には一致する。
把持部10内には、回転カム部材11が移動可能に配置されている。把持部10内の前端には、前カム部材12が把持部10に対して固定され、把持部10内の後端には、後カム部材13が把持部10に対して固定されている。コイルスプリング14は、回転カム部材11と後カム部材13との間に配置されている。コイルスプリング14には、回転カム部材11の後部及び後カム部材13の前部が挿入されている。コイルスプリング14に代えて、任意の弾性部材を用いてもよい。
回転カム部材11の前端面には、周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた前カム面11aが円環状に形成され、回転カム部材11の後端面には、周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた後カム面11bが円環状に形成されている。回転カム部材11の軸線方向における中央部分の外周面には、環状のフランジ部11cが形成されている。回転カム部材11の外周面には、U字型の貫通溝が形成され、それによって後部が支持された片持ち梁状の係止部11dを画成している。係止部11dは、回転カム部材11の内側に僅かばかり突出している。係止部11dは、後述する係止機構を構成する。回転カム部材11の軸線方向における中央部分の内面には、一般的な鉛筆の六角形よりも僅かばかり大きい六角形の横断面形状である保持面11e(図3)が形成されている。
前カム部材12の後端面には、周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた前固定カム面12aが円環状に形成されている。前カム部材12の前固定カム面12aは、後述するように、回転カム部材11の前カム面11aと協働する。前カム部材12の前端面は、把持部10内に固定された状態で、把持部10の前端面と整列している。
後カム部材13の前端面には、周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた後固定カム面13aが円環状に形成されている。後カム部材13の後固定カム面13aは、後述するように、回転カム部材11の後カム面11bと協働する。後カム部材13の後部は僅かばかり大径に形成され、それによって前方に面した段部13bが形成されている。後カム部材13の後端面は、把持部10内に固定された状態で、把持部10の後端面と整列している。
コイルスプリング14の前端部は、回転カム部材11のフランジ部11cの後端面に当接し、コイルスプリング14の後端部は、後カム部材13の段部13bに当接している。後カム部材13は把持部10に対して固定されていることから、回転カム部材11は、コイルスプリング14の付勢力によって前方へ付勢されている。
コイルスプリング14の前端部及び後端部のうちの一方又は両方は、固定されていない。コイルスプリング14の前端部及び後端部の両方が固定されてしまうと、後述する回転カム部材11の回転運動によって、コイルスプリング14が捻れてしまい、その捻れによる復元力によって回転カム部材11の回転運動が阻害されてしまう。コイルスプリング14の前端部及び後端部のうちの一方又は両方を固定しないことによって、固定のされていないコイルスプリング14の端部において滑りを生じさせ、回転カム部材11の回転運動がコイルスプリング14に伝達されるのを防止している。
鉛筆100に対して把持具1を取り付ける場合には、把持具1の後部から鉛筆100を挿入する。把持具1に挿入された鉛筆100は、六角形の横断面形状である保持面11eによって、回転カム部材11に対する回転が阻止される。また、鉛筆100は、回転カム部材11の係止部11dによって保持される。
ところで、鉛筆100は、シャープペンシルとは異なり、常に同じ位置を把持するものではない。鉛筆100は、削ることによって短くなることから、それに合わせて把持する位置、すなわち把持具1の取り付け位置をより後方へ移動させる必要がある。そのため、把持具1の回転カム部材11は、鉛筆100の後方への移動を、係止することによって阻止し、鉛筆100の前方への移動を、係止解除することによって可能にする係止機構を有している。
具体的には、鉛筆100による筆記時には、筆記圧によって鉛筆100が把持具1に対して後方へ移動しようとする。鉛筆100の後方への移動は、回転カム部材11の係止部11dの先端が鉛筆100の軸部材101に食い込むことによって、すなわち係止部11dが径方向内方へより撓むことによって阻止され、把持具1は係止の状態となる。他方、係止部11dは、把持具1に対する鉛筆100の前方への移動時には径方向外方へ撓み、鉛筆100の移動を阻止することはなく、把持具1は係止解除の状態となる。
回転カム部材11は、鉛筆100と共に、軸線回りに回転可能且つ軸線に沿って前後動可能となるように把持部10内に配置されている。ここで、回転カム部材11の前カム面11a及び後カム面11bと、前カム部材12の前固定カム面12aと、後カム部材13の後固定カム面13aとは、鉛筆100を軸線回りに回転させる回転駆動機構を構成する。回転駆動機構による回転駆動機能について、図4及び図5を参照しながら説明する。
図4は、図1の把持具1の回転カム部材11の回転駆動機能を、順を追って説明する模式図であり、図5は、図4に続く回転カム部材11の回転駆動機能を説明する模式図である。図4及び図5において、下方が前側であり、上方が後側である。また、図4及び図5において、回転カム部材11の後端部の○印は、回転カム部材11の回転移動量を理解しやすいように便宜上描かれた目印である。
把持部10内において、回転カム部材11の前カム面11aは、前カム部材12の前固定カム面12aと対峙し、回転カム部材11の後カム面11bは、後カム部材13後固定カム面13aと対峙している。回転カム部材11に形成された前カム面11a及び後カム面11bの各カム面と、前カム部材12に形成された前固定カム面12a及び後カム部材13に形成された後固定カム面13aの各カム面とは、ピッチが互いに略同一となるように形成されている。
鉛筆100を用いて筆記しているとき以外、すなわち、鉛筆100を保持する回転カム部材11に対して筆記圧が加わっていないとき、回転カム部材11は、コイルスプリング14の付勢力によって前方に付勢されている。したがって、回転カム部材11の前カム面11aは、前カム部材12の前固定カム面12aに当接して噛み合い状態になされる。鉛筆100を用いて筆記しているとき、すなわち、鉛筆100を保持する回転カム部材11に対して筆記圧が加わっているとき、回転カム部材11は、コイルスプリング14の付勢力に抗して後退する。したがって、回転カム部材11の後カム面11bは、後カム部材13の後固定カム面13aに当接して噛み合い状態になされる。
図4(A)は、回転カム部材11に対して筆記圧が加わっていないときの状態における回転カム部材11、前カム部材12及び後カム部材13の関係を示している。この状態においては、回転カム部材11に形成された前カム面11aは、コイルスプリング14の付勢力によって、前カム部材12の前固定カム面12aに対して当接している。このとき、回転カム部材11の後カム面11bと後カム部材13の後固定カム面13aとは、軸線方向において対応するカムの位相がずれた関係、例えば一歯の半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
図4(B)は、鉛筆100による筆記のために、回転カム部材11に対して筆記圧が加わった初期の状態を示している。この状態においては、回転カム部材11は、コイルスプリング14を収縮させながら後退する。それによって、回転カム部材11は、把持部10に対して取り付けられた後カム部材13に当接する。
次いで、図4(C)は、回転カム部材11に対してさらに筆記圧が加わり、回転カム部材11が、後カム部材13の後固定カム面13aに対して当接しながら後退し、回転した状態を示している。この状態においては、回転カム部材11の後カム面11bは、後カム部材13の後固定カム面13aに噛み合っている。すなわち、回転カム部材11は、後カム部材13の後固定カム面13aから回転駆動を受け、後カム面11b、すなわち後固定カム面13aのずれた位相の分だけ、例えば一歯の半位相(半ピッチ)だけ回転する。このとき、図4(C)に示す状態においては、回転カム部材11の前カム面11aと前カム部材12の前固定カム面12aとは、軸線方向において対応するカムの位相がずれた関係、例えば一歯の半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
次いで、図5(D)は、鉛筆100による筆記が終わり、回転カム部材11に対する筆記圧が解除された初期の状態を示している。この状態においては、回転カム部材11は、コイルスプリング14の付勢力によって前進する。それによって、回転カム部材11は、把持部10に対して取り付けられた前カム部材12に当接する。
次いで、図5(E)は、回転カム部材11がコイルスプリング14の付勢力によって、回転カム部材11が、前カム部材12の前固定カム面12aに当接しながら前進し、回転した状態を示している。この状態においては、回転カム部材11の前カム面11aは、前カム部材12の前固定カム面12aに噛み合っている。すなわち、回転カム部材11は、前カム部材12の前固定カム面12aから回転駆動を受け、前カム面11a、すなわち前固定カム面12aのずれた位相の分だけ、例えば一歯の半位相(半ピッチ)だけ再び回転する。その結果、回転カム部材11は、図4(A)と同様の状態に復帰する。
回転カム部材11に描いた○印で示すように、筆記圧を受けた回転カム部材11は、軸線方向における1回の往復運動、すなわち1回の前後動に伴って回転駆動を受け、前カム面11a及び後カム面11bのずれた位相の分だけ、例えば一歯(1ピッチ)だけ回転する。これを繰り返すことによって、鉛筆100を保持する回転カム部材11は把持部10に対して順次回転する。そのため、把持具1を用いれば、書き進むにしたがって鉛筆100の鉛筆芯102が偏って摩耗するのを防止することができ、描線の太さや描線の濃さが大きく変化することを防止することができる。
さらに、把持具1を用いれば筆記芯の偏った摩耗を防止することから、偏って摩耗した鉛筆で筆記する場合に比べて、鉛筆芯の全体の摩耗量を低減させることができ、また、鉛筆を削る頻度及び割合を低減させることができ、鉛筆をより長持ちさせることが可能となる。鉛筆はシャープペンシルに比べて芯径が太いことから、特にその傾向が顕著である。また、芯径が太い鉛筆が摩耗すると、それだけ筆記面における筆記圧の応力が分散してしまい、特に、大人と比べて筆記圧が弱い子供は、しっかりとした描線を描くことができない。把持具1を用いれば、子供でもしっかりとした描線を描くことができ、特に色鉛筆を用いた塗り絵も綺麗に行うことができる。
なお、上述した実施形態では、鉛筆100の係止機構として、係止部11dを用いたが、その他の構成によって、鉛筆100の係止及び係止解除を行うようにしてもよい。図6乃至図8を参照しながら、別の係止機構について説明する。
図6は、回転カム部材11に対して鉛筆100を係止する別の係止機構を説明する横断面図である。図6(A)は、係止解除した状態の鉛筆100及び把持具である。六角形の保持面11eと鉛筆100の外面とは、僅かばかりのクリアランスを有している。図6(B)は、係止した状態の鉛筆100及び把持具である。鉛筆100の軸部材101は、通常、木製であることから比較的弾性がある。そのため、鉛筆100の軸線方向における把持具の位置を決定した後、鉛筆100又は把持具を相対的に軸線回りに回転させることによって、軸部材101の六角形の角が回転カム部材11の保持面11eの平坦部に配置されるように弾性変形させる。このとき、弾性変形した軸部材101の角と、回転カム部材11の保持面11eの平坦部との間に作用する摩擦力及び押圧力によって、鉛筆100を回転カム部材11に対して係止させることが可能となる。また、この状態から、鉛筆100又は把持具を相対的に軸線回りにさらに回転させることによって、再び係止を解除することができる(図6(A))。
鉛筆100を弾性変形させることによって、鉛筆100を回転カム部材11に対して係止させることができることから、上述した係止部11dを省略することができ、より簡便な係止機構を実現することができる。
図7は、本発明の別の実施形態による把持具の回転カム部材21の縦断面図であり、図8は、図7の把持具の回転カム部材21の縦断面図である。また、図8(A)は、把持具の係止状態を示し、図8(B)は、把持具の係止解除状態を示している。本実施形態による把持具は、シャープペンシルにおいて筆記芯を把持する、いわゆるボールチャックと類似した機構の係止機構を有し、鉛筆100に対する係止及び係止解除を行っている。
回転カム部材21の保持面21eの一部には、軸線方向に亘って細長い矩形状で且つ軸線回りに対称的に配置された一対の保持プレート26が、それぞれ一体的に取り付けられている。保持プレート26の軸線方向の中央部分には、略矩形の貫通孔26aが形成されている。保持プレート26の両端には、径方向外方に折り曲げられた嵌合部26bが形成され、保持面21eの端部の段差に嵌合している。
図8に示されるように、保持プレート26の貫通孔26aに相当する回転カム部材21の保持面21eには、窪んだ係止穴21fが形成されている。係止穴21fの底面は、前側が深く、後方に向かって浅くなる斜面上に形成されている。ボール25は、係止穴21f及び貫通孔26aの中に配置される。ボール25は、保持プレート26の貫通孔26aによって、外れないように保持されている。すなわち、貫通孔26aは、ボール25の径よりも小さく形成されている。ボール25の一部は、貫通孔26aを介して径方向内方へ突出可能である。回転カム部材21に対して鉛筆100が移動すると、ボール25は、摩擦力によって鉛筆100の外周面に沿って転がりながら、鉛筆100と共に前後に移動する。なお、回転カム部材21のその他の構成は、上述した実施形態の回転カム部材11の構成と同一であるため、説明は省略する。
図8(A)を参照すると、鉛筆100に対して筆記圧が加わったことによって、回転カム部材21に対して鉛筆100が後方へ移動している。鉛筆100が後方へ移動すると、ボール25は、係止穴21fの斜面に沿ってより浅い方へ移動し、貫通孔26aを介して径方向内方へ突出する。その結果、ボール25は、鉛筆100の軸部材101に食い込んで回転カム部材21によって保持されて、鉛筆100に対して把持具が係止する。
他方、図8(A)の状態から、例えば鉛筆100を引っ張ることによって把持具、ひいては回転カム部材21に対して鉛筆100を前方へ移動させると、ボール25は、係止穴21fの斜面に沿ってより深い部分へ移動する。その結果、ボール25は、径方向外方へ移動し、鉛筆100に対する把持具の係止が解除される(図8(B))。
ところで、鉛筆は、削ることによって全長が短くなり、それによって把持し難くなる。短くなった全長を補完して把持し易くするため、鉛筆の後端部に取り付ける補助軸が公知である。本発明の実施形態による把持具を補助軸に適用した場合について、図9及び図10を参照しながら、以下説明する。
図9は、本発明のさらに別の実施形態による把持具2の縦断面図であり、図10は、図9の把持具2の分解組立図である。図10において、後述する把持部30と尾栓38とは省略されている。本実施形態の把持具2は、シャープペンシルにおいて筆記芯を把持するチャックと類似した機構の係止機構を有し、鉛筆100に対する係止及び係止解除を行っている。
把持具2は、使用者が把持するための筒状の把持部30と、回転カム部材31と、回転カム部材31の前方に配置される円環状の前カム部材12と、回転カム部材31の後方に配置される円環状の後カム部材13と、コイルスプリング14とを有している。前カム部材12、後カム部材13及びコイルスプリング14は、上述した実施形態による把持具1と略同一のため、説明は省略する。把持具2は、さらに、全長が短くなった鉛筆100の軸部材101を保持可能な筒状のチャック部材35と、筒状の継手部材36と、回転カム部材31の中に収容されるサブコイルスプリング37と、把持部30の後端部に嵌合する筒状の尾栓38とを有している。
回転カム部材31は、上述した回転カム部材31と同様に、前カム面11aと、後カム面11bと、フランジ部11cとを有している。また、回転カム部材31の前端から所定距離だけ離間した内周面には、前方に向かって傾斜した斜面31fが形成されている。斜面31fの後方は僅かばかり大径に形成され、それによって後方に面した段部31gが形成されている。
チャック部材35は、均等に分割された5つのチャック片35aを有している。5つのチャック片35aの各々は、前端に向かって径方向外方に僅かばかり広がるように形成されている。チャック部材35の前端部は、全体として大径に形成され、それによって後方に向かって傾斜した斜面35bが形成されている。チャック部材35の後端部の外周面には、環状の係合フランジ部35cが形成されている。
継手部材36は、略均一の肉厚を有する筒状の部材であり、前端部がより大径に形成されている。継手部材36の前端部に対してチャック部材35の後端部を挿入することによって、チャック部材35の係合フランジ部35cが継手部材36の内周面と係合し、チャック部材35と継手部材36とが一体的に連結する。連結されたチャック部材35及び継手部材36の内部には、鉛筆100を挿入可能である。
把持具2が組み立てられた状態では、サブコイルスプリング37には、チャック部材35の後部が挿入されている。サブコイルスプリング37の前端部は、回転カム部材31の段部31gに当接し、サブコイルスプリング37の後端部は、継手部材36の前端面に当接している。したがって、継手部材36及び継手部材36に連結されたチャック部材35は、サブコイルスプリング37の付勢力によって後方へ付勢されている。
把持具2は、尾栓38の貫通孔を介して鉛筆100を把持具2の後部から挿入されることによって、鉛筆100に対して取り付けられる。すなわち、鉛筆100の軸部材101は、チャック部材35を介して回転カム部材31によって保持される。
鉛筆100を保持する回転カム部材31に対して筆記圧が加わったことによって、把持部30に対して回転カム部材31が後方へ移動すると、チャック部材35の斜面35bが、把持部30の斜面31fと当接する。その結果、チャック片35aの各々が、把持部30の斜面31fから径方向内方の力を受け、チャック部材35は鉛筆100を強く保持する。それによって、鉛筆100の後方への移動は阻止され、把持具2は係止の状態となる。
他方、把持具2に対する鉛筆100の前方への移動時には、チャック部材35のチャック片35aの各々は、把持部30の斜面31fとの当接から解放されて径方向外方へ復元する。その結果、チャック部材35は鉛筆100の移動を阻止することはなく、把持具2は係止解除の状態となる。
以下、本発明に係る把持具を他の塗布具に取り付けた例について説明する。図11は、把持具1を取り付け可能な塗布具の例を示す縦断面図である。
図11(A)は、把持具3をシャープペンシル110に取り付けた状態の縦断面図である。シャープペンシル110に把持具3を取り付けることによって、鉛筆の場合と同様に、筆記芯の偏った摩耗を防止することができる。
図11(B)は、把持具4をボールペン111に取り付けた状態の縦断面図である。ボールペンは、一般に、先端の筆記部においてボールが受け座によって保持されている。受け座は、ボールペンを使用し続けることによって摩耗する。受け座が偏って摩耗してしまうと、その摩耗部からボールが脱落してしまい、そうなると筆記が不可能になる。したがって、受け座は、全周に亘り均等に摩耗することが望ましい。特に、細い描線を筆記するための小さい径のボールを使用する場合は、ボールがより脱落し易くなる。そこで、把持具4を用いることによって、受け座の摩耗を均等することが可能となり、ボールペンをより長持ちさせることが可能となる。
図11(C)は、把持具5をサインペン112に取り付けた状態の縦断面図である。サインペン112は、筆記部として繊維束芯を有している。繊維束芯は、繊維の束からなることから、一部に偏った使用をすることによって、束がより崩れ易く、またダメージを受け易くなる。そこで、把持具5を用いることによって、繊維束芯を均等に使用することが可能となり、サインペン112をより長持ちさせることが可能となる。
図11(D)は、把持具6を化粧品であるアイライナー113に取り付けた状態の縦断面図である。回転操出式のアイライナー113の塗布芯は、鉛筆芯よりも柔らかく、より偏った摩耗が生じやすい。そこで、把持具6を用いることによって、塗布芯の偏った摩耗を防止することが可能となり、アイライナー113をより長持ちさせることが可能となる。
なお、鉛筆のように、削ることによって全長が短くなる塗布具以外の塗布具については、上述した係止機構は不要である。
以上より、本発明によれば、別体の把持具を既存の塗布具に対して取り付けることによって、回転駆動機能を簡単に付加することができる。したがって、使用者の好みに応じた塗布具について、半永久的に使用可能な回転駆動機能を付加することができる。なお、把持具を塗布具の先端に着脱可能にすることによって、塗布部を保護するキャップとして機能させてもよい。
塗布具の軸部材の外径は、その製品に応じて様々である。そこで、把持具において、塗布具を保持する部材のみを変更可能とすることによって、把持部、前カム部材及び後カム部材等の部材を共通化し、把持具をより汎用的に使用できるようにすることができる。例えば、図1に示された実施形態による把持具1の場合は、前カム部材12及び後カム部材13のカムと協働するように、外径が同一で且つ異なる内径を有する複数の回転カム部材を用意する。より細い軸部材を有する塗布具やより太い軸部材を有する塗布具において、その軸部材の外径に応じて回転カム部材11を交換することによって、いずれの塗布具も把持具1に対して取り付けることが可能となる。
把持部は、使用者が把持可能である限りにおいて任意に構成することができる。例えば、使用者が筆記具を理想的な指の配置で把持することができるような立体形状が施された持ち方矯正具として塗布具の把持部を構成してもよい。持ち方矯正具を使用する場合、通常、その立体形状のため、持ち直すことによって塗布具を回転させることができない。そこで、把持具1を使用することによって、塗布具を持ち直すことなく、塗布芯を回転させ、塗布芯の偏った摩耗を防止することができる。また、塗布具を把持する手指に対する負荷を軽減するよう、把持部の表面に軟質部材を施してもよい。また、把持部の表面には絵、図柄及び文字等を付与することができることから、使用者が、好みに応じて絵等が付与された把持部又は別途設けられた把持部を覆う部材を交換可能に構成してもよい。
本発明は上述した実施形態に限定されず、把持具が、使用者が把持するための把持部と回転カム部材とを具備し、回転カム部材が、塗布具と共に、軸線回りに回転可能且つ軸線に沿って前後動可能となるように把持部内に配置され、塗布具による塗布時の塗布圧による回転カム部材の後退動作に伴い、回転カム部材を回転駆動させる限りにおいて、任意の把持具の構造を採用し得る。
したがって、回転駆動機構における前カム面11a等のカム面は、上述した実施形態のような周方向に連続した鋭角の鋸歯状のカム面に限られず、鈍角のカム面等であってもよい。また、上述した実施形態において、コイルスプリング14を省略し、回転カム部材11及び回転カム部材11によって保持された鉛筆100の自重によって、回転カム部材11が前方へ付勢されるようにしてもよい。それによって部品点数を削減することができ、コストも削減することができる。また、前カム部材12及び後カム部材13の一方は、把持部10と一体的に形成してもよい。