JP7048337B2 - 透明電極シート及び透明電極シートの製造方法 - Google Patents

透明電極シート及び透明電極シートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁性の透明基材と、透明基材の表面に形成された金属配線とを備える透明電極シート及び透明電極シートの製造方法に関し、より詳しくは、可撓性の有機ELディスプレイや有機太陽電池といったフレキシブルデバイスに利用されるものに関する。
この種の透明電極シートは例えば特許文献1で知られている。このものでは、透明基材の表面に所定の金属膜をスパッタリング法等により成膜した後、金属膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングして金属配線を形成している。このような透明電極シートをフレキシブルデバイスに利用する場合、金属配線がパターニング形成された透明基材の表面には、発光機能や発電機能のような所定の機能を発現させる有機膜が例えば真空蒸着法や塗布法により成膜されることになる。
ここで、上記従来例の如く、金属配線をパターニング形成すると、金属配線の表層部の断面は、その縁部が角張った略矩形状となる。このため、上記方法で透明基材の表面に有機膜を成膜すると、縁部に対応する有機膜の部分の厚みが薄くなり易く、透明基材の表面全面にわたって略均等な膜厚で欠陥なく有機膜を成膜できないという問題がある。この場合、有機膜の膜厚が不均一になっていると、発光機能や発電機能といった機能を効果的に発現できない虞がある。
特開2015-156270号公報
本発明は、以上の点に鑑み、例えば透明基材の表面に有機膜が成膜されるような場合でも、この有機膜がその表面全面に亘って略均等な膜厚で欠陥なく成膜されるという機能を阻害しない透明電極シート及び透明電極シートの製造方法を提供することをその課題とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、絶縁性の透明基材と、透明基材の表面に形成された金属配線とを備える透明電極シートにおいて、前記金属配線の表層部の断面を離心率が0.8322~0.9992の範囲の半楕円状としたことを特徴とする。ここで、本発明において、「表層部」といった場合、透明基材の表面から金属配線に向かう方向を上として、金属配線の幅が最大となる、透明基材表面からの高さ位置を基準とし、この基準位置より上方に位置する金属配線の部分を指す。
本発明によれば、金属配線の表層部から角張った縁部をなくして、離心率が0.8322~0.9992の範囲の半楕円状の断面形状としたことで、例えば真空蒸着法や塗布法によって透明電極シートの表面にその金属配線を覆うように有機膜を成膜するような場合でも、有機膜の膜厚が局所的に薄くなるといった不具合は発生せず、透明基材の表面全面にわたって略均等な膜厚で欠陥なく有機膜を成膜できる。なお、本発明において離心率が0.8322より小さいと、前記有機膜に欠陥が生じるという不具合があり、0.9992より大きくなると、配線の厚みが薄くなりすぎて所望の抵抗値を実現する断面積が得られないという不具合がある。
また、本発明の透明電極シートを適用してフレキシブルデバイスを製作した場合、このようなフレキシブルデバイスは、使用時、曲げられたりすることが想定されるが、金属配線の表層部を楕円状の断面形状としておけば、応力集中によって有機膜が部分的に破損するといった不具合も生じない。
本発明において、前記透明基材の表面からの前記金属配線の最大厚みが0.1μm~1μmの範囲であることが好ましい。0.1μm未満では、金属配線に断線が生じるという不具合がある一方で、1μmを超えると、有機膜を略均一な厚みで形成できないという不具合がある。
本発明において、前記金属配線は、銀ナノ粒子を焼結してなる焼結体であることが好ましい。
ところで、透明電極シートをフレキシブルデバイスに適用するには、金属配線の視認性が低く、高い透過率と低い抵抗値とを併せ持つことが要求されるが、このような透明電極シートを簡単に製造することは困難である。
そこで、本発明では、前記金属配線が格子状に形成されるものである場合、前記透明基材の表面で金属配線が夫々のびる方向をX軸方向及びY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向で互いに隣接する夫々2本の配線で区画される透明基材の部分を単位面積部、単位面積部にて透明基材の配線のない部分を単位開口、単位開口を区画する金属配線の配線幅をW、単位開口の幅をGとし、これら配線幅Wと幅Gとで決定される単位開口の面積率を基に、単位面積部における配線の充填分画fを次式(1)で定義し、
f=W/(G+W)・・・(1)
前記充填分画fと当該透明電極シートの透過率Tとの関係が次式(2)で表されるようにすれば、フレキシブルデバイスに適用するときに要求される金属配線の低い視認性、高い透過率及び低抵抗値を併せ持つ透明電極シートを得ることができる。ここで、式(2)のTは、波長550nmにおける透過率であり、式(2)から算出されるTの値と、実測されるTの値との違いは±0.01以内である。
T=0.98-1.7f・・・(2)
本発明において、前記金属配線の比抵抗が2~30μΩ・cmである場合、前記充填分画fを0.0002~0.048の範囲にすれば、シート抵抗が100Ω/□以下であり、かつ、波長550nmにおける透過率が90%以上である透明電極シートを得ることができる。また、前記充填分画fを0.0004~0.048の範囲にすれば、シート抵抗が50Ω/□以下であり、かつ、波長550nmにおける透過率が90%以上である透明電極シートを得ることができる。また、前記充填分画fを0.002~0.048の範囲にすれば、シート抵抗が10Ω/□以下であり、かつ、波長550nmにおける透過率が90%以上である透明電極シートを得ることができる。また、前記充填分画fを0.002~0.018の範囲にすれば、シート抵抗が10Ω/□以下であり、かつ、波長550nmにおける透過率が95%以上である透明電極シートを得ることができる。
また、上記透明電極シートの製造方法は、前記金属配線が銀ナノ粒子を焼結してなる焼結体である場合、前記銀ナノ粒子を溶媒に分散させたものを印刷用のインクとし、このインクを前記透明基材の表面に印刷する工程と、印刷したインクを焼成して前記銀ナノ粒子を焼結させて金属配線とする工程とを含むことを特徴とする。印刷条件や焼成温度を適宜設定することで、上記金属配線を形成できることが確認された。尚、インクに含有される銀ナノ粒子としては、その平均粒子径が1nm~100nmの範囲内であるものを用いることができ、また、インクに含有される溶媒としては、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソデカン、イソドデカン、トルエン、キシレン、テトラリン、デカヒドロナフタレン、ドデシルベンゼン及びメシチレンから選ばれる少なくとも1種を単独でまたは組み合わせて用いることができ、特にドデシルベンゼンを好適に用いることができる。
(a)は、本発明の実施形態の透明電極シートを示す模式的平面図であり、(b)は、図1(a)のIb-Ib線に沿う模式的断面図。 透明電極シートの製造装置を示す模式図。 配線の充填分画fを定義する方法を説明する図。 (a)は、配線の充填分画fと透過率Tとの関係を示すグラフであり、(b)は、配線の充填分画fとシート抵抗Rgとの関係を示すグラフ。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の透明電極シートについて、可撓性の有機ELディスプレイや有機太陽電池といったフレキシブルデバイスに利用される場合を例に説明する。
図1は、本実施形態の透明電極シートStを示す。透明電極シートStは、絶縁性を有する透明基材Ftと、透明基材Ftの表面に格子状にパターニング形成された金属配線Lx,Lyとを備える。この金属配線Lx,Ly自体は可視光を透過しないものの、配線間に露出する透明基材Ftを可視光が透過することで、透明電極シートSt全体としての所望の可視光透過率が得られるようにしている。以下においては、透明基材Ftの表面から金属配線Lx,Lyに向かう方向を上として説明する。
透明基材Ftとしては、可撓性を有するシート状のものが好ましく、例えば、プラスチックシートを用いることができる。プラスチックシートの材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー及びポリイミドから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。金属配線Lx,Lyの金属材料は、Ag、Au、Cu、Ni、Pd、In、Sn、Rh、Ru、Pt、In及びSnから選択された少なくとも1種の金属又はこれらの金属の少なくとも2種からなる合金を用いることができる。尚、金属配線Lx,Lyは、必ずしも格子状に形成されていなくてもよい。
透明電極シートStをフレキシブルデバイスに利用する場合、図1(b)に示すように、金属配線Lx,Lyが形成された透明基材Ftの表面全面に亘って、発光機能や発電機能のような所定の機能を発現させるための有機膜Foが形成されることとなる。
本実施形態では、金属配線Lx,Lyの表層部Puの断面を離心率が0.8322~0.9992の範囲の半楕円状とした。このような表層部Puを持つ金属配線Lx,Lyは、後述する印刷、焼成により形成することが好ましい。表層部Puといった場合、金属配線Lx,Lyの幅が最大となる、透明基材Ft表面からの高さ位置(図1(b)中、一点鎖線で示す)を基準とし、この基準位置より上方に位置する金属配線の部分を指す。尚、離心率eは、下式(I)により定義することができる。式中、Wは、金属配線Lx,Lyの幅であり、d’は、透明基材Ft表面からの金属配線Lx,Lyの最大厚みdから一点鎖線で示す基準位置から透明基材Ft表面までの距離d’’を減じた厚みである。ここで、上記d’’の数値が大きいと、離心率eを上記範囲内としても、有機膜Foに欠陥が生じる虞がある。このため、上記d’’は、d/4よりも小さく設定することが好ましい。
Figure 0007048337000001
次に、図2を参照して、上記透明電極シートStを製造する透明電極シートの製造装置(以下「製造装置MM」という)について説明する。製造装置MMは、透明基材Ftを走行させる走行手段1を備える。走行手段1は、ロール状に巻回されたシート状の透明基材Ftを繰り出す繰出ローラ11と、金属配線Lx,Lyが形成された透明基材Ft(透明電極シートSt)をロール状に巻き取る巻取ローラ12と、これら繰出ローラ11と巻取ローラ12との間で透明基材Ftを案内する複数のガイドローラ13a~13eとを備える。繰出ローラ11,巻取ローラ12は、図示省略するモータの回転軸が接続されており、回転自在に構成されている。シート状の透明基材Ftの走行経路上には、透明基材Ftの表面に格子状にインクを印刷する印刷機2が配置されている。
印刷機2としては、例えば、グラビア印刷機を用いることができる。グラビア印刷機2を用いる場合、供給手段21aからインクタンク21に印刷用のインクIkを供給し、版胴22を回転させてその外周面に後述の金属配線Lx,Lyに対応させて形成された凹部22aにインクIkを充填し、余分なインクをブレード23で削ぎ落とし、版胴22からブランケットローラ24にインクIkを転写する。圧胴25で保持される透明基材Ftの部分が対向するブランケットローラ24に押し付けられると、透明基材FtにインクIkが印刷される。グラビア印刷機2の構成は公知であるため、これ以上の詳細な説明を省略する。グラビア印刷機2の下流には、焼成ユニット3が配置されている。
焼成ユニット3は、透明基材Ftに印刷されたインクを所定温度に加熱する加熱手段31を有する。加熱手段31としては、ホットプレート、ランプ等を用いることができる。焼成ユニット3の下流側には、測定ユニット4が配置されている。測定ユニット4は、走行手段1のガイドローラを兼用する2本の導電性ローラ13d,13eと、電源41とを備える表面抵抗計であり、電源41から導電性ローラ13d,13eの間に所定の電圧を印加し、焼成後の透明電極シートStのシート抵抗Rgを測定、監視できるようになっている。測定ユニット4で測定されたシート抵抗Rgに応じて、インクIkの粘度調整や加熱手段31の焼成温度調整を行うように構成してもよい。
上記製造装置MMは、公知のマイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた制御手段(図示省略)を備え、制御手段により、印刷機2、焼成ユニット3及び測定ユニット4の稼働等を統括管理するほか、インクIkの濃度調整や、加熱手段31の焼成温度の調整を行うことができるようになっている。以下、上記製造装置MMを用いて実施される透明電極シートStの製造方法について説明する。
先ず、走行手段1を構成する複数のローラ13a~13eに透明基材Ftを巻き掛けた後、繰出ローラ11を回転させて透明基材Ftを繰り出すと共に巻取ローラ12を回転させて透明基材Ftを巻き取ることで透明基材Ftを走行させる。これと共に、印刷ユニット2の供給手段21aからインクタンク(インク貯留部)21に予め調製された印刷用インクIkを供給し、版胴22を回転させてその外周面に後述する金属配線Lx,Lyに対応させて形成された凹部22aにインクIkを充填し、余分なインクIkをブレード23で削ぎ落とし、版胴22からブランケットローラ24にインクIkを転写する。圧胴25で保持される透明基材Ftの部分が対向するブランケットローラ24に押し付けられると、ブランケットローラ24から透明基材FtにインクIkが印刷される。印刷されるインクの厚みは、焼成後の透明基材Ftの表面からの金属配線Lx,Lyの最大厚みdが0.1μm~1μmの範囲になるように設定される。
ここで、印刷用のインクIkとしては、分散剤で表面が覆われたAgナノ粒子と、このAgナノ粒子を分散させるための溶媒たる低極性溶媒とを含むAgインクが好適に用いられる。Agインクの市販の製品の商品名としては、例えば、AgナノメタルインクAg1T(株式会社アルバック製)を挙げることができる。Agナノ粒子としては、その平均粒子径が1nm~100nmの範囲内であるものを用いることができる。平均粒子径が1nm未満になると、比表面積が増大してAgナノ粒子表面を被覆する分散剤の量が増大するため、焼成時に分散剤の脱離が不十分になり、金属配線の抵抗値が高くなる場合がある。一方、平均粒子径が100nmを超えると、Agインク中のAgナノ粒子の分散性が低下するという場合がある。分散剤としては、炭素数6~18の脂肪酸及び炭素数6~12の脂肪族アミンの少なくとも一方を用いることができる。分散剤の炭素数が6未満では、Agインク中でのAgナノ粒子の分散性が低下する場合がある一方で、炭素数が12を超えると、焼成時にAgナノ粒子表面からの脂肪酸や脂肪族アミンの脱離が不十分となり、金属配線の抵抗値が高くなる場合がある。これらの脂肪酸や脂肪族アミンは公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
グラビア印刷機2により透明基材Ft表面に印刷されたインクは、焼成ユニット3の加熱手段31を用いて所定温度に加熱、焼成される。これにより、Agナノ粒子から分散剤が脱離し、Agナノ粒子同士が焼結して金属配線Lx,Lyとすることができる。焼成温度は、120~250℃の範囲で設定することができる。透明基材Ftの表面に金属配線Lx,Lyが形成された透明電極シートStは、巻取ローラ12で巻き取られる。
本実施形態によれば、金属配線Lx,Lyの表層部Puから角張った縁部をなくして、離心率が0.8322~0.9992の範囲の半楕円状の断面形状としたことで、例えば真空蒸着法によって透明電極シートStの表面にその金属配線Lx,Lyを覆うように有機膜Foを成膜するような場合でも、有機膜Foの膜厚が局所的に薄くなるといった不具合は発生せず、透明基材Ftの表面全面にわたって略均等な膜厚で欠陥なく有機膜Foを成膜できる。なお、本発明において離心率が0.8322より小さいと、前記有機膜に欠陥が生じるという不具合がある。この場合、金属ナノ粒子と溶媒とを含む金属ナノインクを印刷用のインクとし、このインクを透明基材の表面に印刷し、印刷したインクを焼成して金属ナノ粒子を焼結させる際、印刷条件や焼成温度を適宜設定することで、上記金属配線を形成できる。この効果を確認するために、以下の実験を行った。即ち、印刷用のインクIkとして前述のAgナノメタルインク(株式会社アルバック製)を用いて、配線幅Wを2.02μm,4.25μm,5.08μm,7.33μm,9.03μm,10.13μmと変化させると共に、厚みdを0.21μm,0.42μm,0.56μm,0.69μm,0.89μm,1.01μmと変化させて金属配線Lx,Lyを夫々形成し、金属配線Lx,Lyが形成された透明基材表面に、ポリチオフェン系の高分子溶液をアプリケータにより塗布し、100℃で1分間の硬化処理を行うことで有機膜たる導電性ポリマー膜(荒川化学工業製、商品名「アラコートAS601D」)を0.3~0.4μmの膜厚で形成した。さらに、有機膜の上に、蒸着法により断面加工・観察用の保護膜となる白金層を約0.3μmの厚みで形成したものを試料とした。このようにして得た試料を収束イオンビーム(FIB)により断面加工し、その試料の断面を走査透過型電子顕微鏡により観察した結果を、金属配線の離心率と共に表1に示す。観察結果は、透明基材の表面全面に亘って略均等な膜厚で欠陥なく有機膜を成膜できたものを「○」とし、膜厚が略均等でなかったり欠陥が生じたものを「×」とした。これによれば、離心率を0.8322~0.9992の範囲にすることで、基材表面全面に亘って略均等な膜厚で欠陥なく有機膜を成膜できることが判った。また、離心率は、0.8322~0.9989の範囲がより好ましく、0.9458~0.9934の範囲が特に好ましいことが、観察結果から判った。表1に示していないが、離心率が0.9992を超えると(例えば0.9995)、金属配線が薄くなりすぎて所望の抵抗値を実現する断面積が得られなくなるという不具合がある。この不具合は、上述のように、d’’がd/4よりも小さい場合に顕著に現れる。
Figure 0007048337000002
ところで、透明電極シートStをフレキシブルデバイスに適用するには、上記金属配線Lx,Lyの視認性が低く、高い透過率と低い抵抗値とを併せ持つことが更に要求されるが、このような透明電極シートStを簡単に製造することは困難である。そこで、本実施形態では、以下に説明するように配線の充填分画fを定義し、充填分画fが所定の範囲内の値になるように金属配線Lx,Lyの配線幅Wと単位開口の幅Gとを決定するようにした。即ち、図3も参照して、透明基材Ft表面で金属配線Lx,Lyが夫々のびる方向をX軸方向及びY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向で互いに隣接する夫々2本の配線(X軸方向で互いに隣接する2本の配線Lx,LxとY軸方向で互いに隣接する2本の配線Ly,Ly)で区画される透明基材Ftの部分を単位面積部A、透明基材Ftの配線Lx,Lyのない部分を単位開口Ou、単位開口Ouを区画する配線の線幅をW、単位開口の幅をGとすると、単位開口の面積率Sは、これら線幅Wと幅Gとを用いて下式(A)のように表すことができ、この面積率Sは、単位面積部Aにおける配線の充填分画fを用いて下式(B)のように表すことができる。
S=G/(G+W)・・・(A)
S=(1-f)・・・(B)
上式(A)及び(B)を基に、配線の充填分画fは下式(1)のように定義することができる。
f=W/(G+W)・・・(1)
また、透明電極シートStの可視光の透過率Tは、配線Lx,Lyの充填分画fを用いて下式(2)で表すことができる。但し、透過率Tは、透明基材Ftの寄与を無視した値である。
T=(1-f)・・・(2)
配線の配線の充填分画fが1よりも十分に小さい場合、上式(2)は、下式(3)で近似される。
T=1-2f・・・(3)
ここで、上式(3)を検証するために、以下の実験を行った。即ち、印刷用のインクIkとして前述のAgナノメタルインク(株式会社アルバック製)を用いて、金属配線Lx,Lyの配線幅Wを5μm、配線の厚みを0.6μmとし、単位開口Ouの幅Gが100,150,200,300,500,1000μm(このとき、充填分画fは、0.048,0.032,0.024,0.016,0.010,0.005)となるように金属配線Lx,Lyを形成し、それぞれの透明電極シートStの透過率Tを測定し、透過率Tの測定値をプロットしたものを図4(a)に示す。これら充填分画fと透過率Tの測定値との間には相関関係があり、この相関関係から1次の近似直線を求めたところ、下式(4)が得られた。下式(4)は、上式(3)と概略一致はするものの、完全には一致していない。この不一致は、光の散乱による拡散透過光の影響によるものと考えられる。つまり、配線の断面形状が、上記の条件を満たす半楕円形状とした場合に、理論式とは異なり、最終的に得られる透明電極の透過率が、下式(4)に示される関係となることが見出された。ここで、式(4)のTは、波長550nmにおける透過率であり、式(4)から算出されるTの値と、実測されるTの値との違いは±0.01以内である。
T=0.98-1.7f・・・(4)
また、上記のように単位開口Ouの幅Gを変化させて金属配線Lx,Lyを夫々形成し、透明電極シートFtのシート抵抗Rg(Ω/□)を夫々測定した。
ここで、透明電極シートFtのシート抵抗Rgは、下式(5)のように表される。
Rf=ηρ/d=R・f・・・(5)
上式(5)中、Rfは、充填分画fが1のとき、即ち、透明基材Ftの全面がAgで覆われた場合)のシート抵抗であり、ηは、補正因子であり、ρは、バルクのAgの比抵抗(1.6μΩ・cm)であり、dは、配線の厚みである。本実施形態のようにインクIkを塗布して配線Lx,Lyを形成する場合、得られる配線Lx,Lyの比抵抗は、バルクのAgの比抵抗よりも高くなるため、補正因子ηが用いられている。
上記測定したシート抵抗Rgと充填分画f=1を上式(5)に代入してシート抵抗Rfを夫々算出し、その平均値Rfを算出した結果、下式(6)のようにRf=0.142Ω/□となった。
Rf=ηρ/d=0.142(Ω/□)・・・(6)
配線の厚みd=0.6μmを上式(6)に代入すると、下式(7)が得られる。
ηρ=8.5μΩ・cm・・・(7)
上式(5)及び上式(6)より、下式(8)が得られる。
Rg=0.142/f・・・(8)
上式(8)で表される曲線と、シート抵抗Rgの測定値とを図4(b)に示す。これより、充填分画fとシート抵抗Rgとの間には、式(4)及び式(8)に示す相関関係があることが判った。
このように、本発明者らは、鋭意研究を重ね、上式(1)のように定義した配線の充填分画fと、波長550nmにおける透過率T及び抵抗値Rgとの間に式(4)及び式(8)に示す相関関係があることを知見するのに至った。この知見に基づけば、所望の透過率Tと抵抗値Rgを実現する充填分画fの範囲を設定することができる。例えば、90%以上の透過率Tと100Ω/□以下の抵抗値Rgを実現する充填分画fの範囲は、0.001以上0.048以下であり、90%以上の透過率Tと50Ω/□以下の抵抗値Rgを実現する充填分画fの範囲は、0.003以上0.048以下であり、90%以上の透過率Tと10Ω/□以下の抵抗値Rgを実現する充填分画fの範囲は、0.014以上0.048以下であり、95%以上の透過率Tと10Ω/□以下の抵抗値Rgを実現する充填分画fの範囲は、0.014以上0.018以下である。
ところで、上述の如くAgインクを格子状に印刷したものを焼成することで得られる金属配線Lx,Lyの比抵抗ηρは、その焼成温度にもよるが、一般には2~30μΩ・cmの範囲で変動する。また、上述の如く金属配線Lx,Lyの厚みは、0.1~1μmの範囲であることが好ましい。
そこで、比抵抗ηρが2μΩ・cm,10μΩ・cm,20μΩ・cm,30μΩ・cm、配線の厚みdが0.1μm,0.3μm,0.6μm,1.0μmの場合に得られる金属配線Lx,Lyを有する透明電極シートのシート抵抗Rgが100Ω/□以下となる充填分画fの下限値を上式(5)により求めた結果を表2に示す。
Figure 0007048337000003
表2に示すように、シート抵抗Rgが100Ω/□以下となる充填分画fの下限値は0.0002である。一方、波長550nmにおける透過率Tが90%以上となるのは、前述の通り、式(4)により、配線充填分画fが0.0048以下の場合である。従って、シート抵抗Rgが100Ω/□以下、かつ、透過率Tが90%以上となる充填分画fの範囲は、0.0002以上0.048以下である。
また、比抵抗ηρが2μΩ・cm,10μΩ・cm,20μΩ・cm,30μΩ・cm、配線の厚みdが0.1μm,0.3μm,0.6μm,1.0μmの場合に得られる金属配線Lx,Lyを有する透明電極シートのシート抵抗Rgが50Ω/□以下となる充填分画fの下限値を上式(5)により求めた結果を表3に示す。
Figure 0007048337000004
表3に示すように、シート抵抗Rgが50Ω/□以下となる充填分画fの下限値は0.0004である。一方、波長550nmにおける透過率Tが90%以上となるのは、前述の通り、式(4)により、充填分画fが0.0048以下の場合である。従って、シート抵抗Rgが50Ω/□以下、かつ、透過率Tが90%以上となる充填分画fの範囲は、0.0004以上0.048以下である。
また、比抵抗ηρが2μΩ・cm,10μΩ・cm,20μΩ・cm,30μΩ・cm、配線の厚みdが0.1μm,0.3μm,0.6μm,1.0μmの場合に得られる金属配線Lx,Lyを有する透明電極シートのシート抵抗Rgが10Ω/□以下となる充填分画fの下限値を上式(5)により求めた結果を表4に示す。
Figure 0007048337000005
表4に示すように、シート抵抗Rgが10Ω/□以下となる充填分画fの下限値は0.0020である。一方、波長550nmにおける透過率Tが90%以上となるのは、前述の通り、式(4)により、充填分画fが0.0048以下の場合である。従って、シート抵抗Rgが10Ω/□以下、かつ、透過率Tが90%以上となる充填分画fの範囲は、0.0020以上0.048以下である。
そして、充填分画fが上記何れかの範囲内となるように、金属配線Lx,Lyの配線幅Wと幅Gの値を設定し、その設定値に基づき版胴22の凹部22aを形成すれば、フレキシブルデバイスに適用するときに要求される高い透過率Tと低い抵抗値Rgを持つ透明電極シートStを実現することができる。このとき、配線幅Wを10μm未満、好ましくは、5μm以下に設定すれば、金属配線Lx,Lyの視認性を低くすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、インクに含有される金属ナノ粒子の金属としてAgを用いる場合を例に説明したが、金属は、Agに限定されず、Au、Cu、Ni、Pd、In、Sn、Rh、Ru、Pt、In及びSnから選択された少なくとも1種の金属又はこれらの金属の少なくとも2種からなる合金を選択して用いることができる。
上記実施形態では、印刷機2としてグラビア印刷機を用いる場合を例に説明したが、印刷機2はこれに限定されず、親水部と疎水部を形成した刷版(アルミ板)を備える平版印刷機を用いることができる。平版印刷機としては、刷版の親水部に水を供給すると共に刷版の疎水部にインクタンクから所定濃度のインクIkを供給し、これをブランケットに転写して印刷する公知の構成を有するものを用いることができるため、ここではこれ以上の説明を省略する。
A…単位面積部、f…充填分画、Ft…透明基材、Ik…インク、Lx,Ly…金属配線、Ou…単位開口、Pu…金属配線Lx,Lyの表層部、W…金属配線Lx,Lyの配線幅。

Claims (4)

  1. 絶縁性の透明基材と、透明基材の表面に形成された金属配線とを備える透明電極シートにおいて、
    前記金属配線の表層部の断面を離心率が0.8322~0.9992の範囲の半楕円状とし
    前記金属配線は、銀ナノ粒子を焼結してなる焼結体であり、前記金属配線が格子状に形成され、
    前記透明基材の表面で金属配線が夫々のびる方向をX軸方向及びY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向で互いに隣接する夫々2本の配線で区画される透明基材の部分を単位面積部、単位面積部にて透明基材の配線のない部分を単位開口、単位開口を区画する金属配線の線幅をW、単位開口の幅をGとし、これら線幅Wと幅Gとで決定される単位開口の面積率を基に、単位面積部における配線の充填分画fを次式(1)で定義し、
    f=W/(G+W)・・・(1)
    前記充填分画fと当該透明電極シートの透過率Tとの関係が次式(2)で表されることを特徴とする透明電極シート。
    T=0.98-1.7f・・・(2)
  2. 前記透明基材の表面からの前記金属配線の最大厚みが0.1μm~1μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の透明電極シート。
  3. 請求項1又は2記載の透明電極シートであって、前記金属配線の比抵抗が2~30μΩ・cmであるものにおいて、
    前記充填分画fが0.0002~0.048の範囲であることを特徴とする透明電極シート。
  4. 請求項のいずれか1項記載の透明電極シートの製造方法であって、
    前記銀ナノ粒子を溶媒に分散させたものを印刷用のインクとし、このインクを前記透明基材の表面に印刷する工程と、
    印刷したインクを焼成して前記銀ナノ粒子を焼結させて金属配線とする工程とを含むことを特徴とする透明電極シートの製造方法。
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