本発明は、緑内障又は前緑内障の高眼圧を体験している被験体に関して高い眼内圧(IOP)を低減するために哺乳動物被験体の眼への無線エネルギ投与を可能にする。このIOPの低減は、(1)眼の前眼部内への房水の流入を低減する(いわゆる「流体流入低下」)、及び/又は(2)眼の前眼部からの房水の流出を増加させる(いわゆる「流体流出増加」)に十分な治療有効量の時変電磁場の送出に基づいている。本明細書に使用する場合に眼の「前眼部」は、ガラス体液の前にある構造体、すなわち、角膜、虹彩、毛様体、及び水晶体を含む眼の前部三分の一である。眼の前眼部内には、前眼房及び後眼房という2つの流体充満空間が存在する。前眼部の前眼房は、角膜の後面(すなわち、角膜上皮)と虹彩との間に存在する。前眼部の後眼房は、虹彩と毛様体小体との間を延びる。房水は、前眼房及び後眼房の空間に充満し、取りわけ周囲の構造体に養分を供給する。IOPを低減するためのエネルギの無線投与は、下記で説明するように複数の形態を取ることができる。
図1は、本明細書に開示する原理及び技術に従って哺乳動物被験体の眼102に時変電磁場を送出するための無線緑内障治療システム100のブロック図である。この送出を行うために、無線緑内障治療システム100は、眼102に時変電磁場を直接的に又はこれに代えて刺激コイル140を通してのいずれかで送出するように位置決めされてそのように構成されたWPTコイル130から時変電磁場を発生させるための適切な制御及び駆動回路(例えば、信号発生器、電力増幅器、マイクロコントローラユニット、コンピュータ)を有する無線電力伝達(WPT)システム110を含む。WPTシステム110とWPTコイル130は、有線接続(例えば、ケーブル)、並びに無線通信技術によるものを含むあらゆる数の適切な方式で通信的にリンクすることができる。
下記で説明するように、WPTコイル130は、日常生活の通常の活動中に無線緑内障治療の投与を可能にするためのデバイス(例えば、眼鏡上のWPTコイル130)、臨床環境において無線緑内障治療の投与を可能にするためのデバイス(例えば、眼科医及び/又は検眼医によって使用される検眼フレーム上のWPTコイル130)、及び被験体が寝ている間に無線緑内障治療の投与を可能にするためのデバイス(例えば、安眠マスク、枕などの一部としてのWPTコイル130)を含むがこれらに限定されないあらゆる数の適切な方式で眼102の近くに位置決めすることができる。各場合に、WPTコイル130は、眼102の前眼部内への房水の流入を低減すること、及び/又は前眼部からの房水の流出を増大することのそれぞれによって眼102内のIOPを低減するための治療有効量の時変電磁場を送出する。
別の実施形態では、無線緑内障治療システム100は、眼102上又は内に配置された刺激コイル140を含むことができる。刺激コイル140は、WPTコイル130が発生させた電磁場を受信し、このエネルギを眼102内に直接送信するように構成される。眼102上又は内の刺激コイル140の物理的な場所は、WPTシステム110及びWPTコイル130によって単独で達成されるものよりも短い期間で又は高い程度までIOP低減を眼102内にもたらすことができる高めのレベルのエネルギ送信を提供する。下記で説明するように、刺激コイル140は、コンタクトレンズ上又は内を含む(しかし、必ずしもこれらに限定されない)あらゆる数の適切な方式で配置かつ構成され、及び/又は眼102内のあらゆる適切な区域(例えば、水晶体(IOL)、結膜下領域など)内に手術で埋め込むことができる。
更に別の実施形態では、無線緑内障治療システム100は、眼102内の眼内圧(IOP)をモニタすることができる無線IOPセンサ150を含むことができる。下記で説明するように、無線IOPセンサ150は、眼102内に埋込可能にされ、モニタ中のIOPの値に基づいて閉ループ方式で治療の送出を調整又は修正することができる。WPTシステム110(WPTコイル130を含み、更に任意的に刺激コイル140を含む)の閉ループ制御は、眼102内で測定されたIOPに基づいて無線緑内障治療の送出を修正するように実行可能なコンピュータ上のソフトウエア及び/又はスマート電話上の「アプリ」の使用を含むがこれらに限定されないあらゆる適切な方式で達成することができる。
更に別の実施形態では、視力矯正の目的で、入射光線を眼102の網膜上にフォーカスさせるためにフレネルレンズ160を使用することができる(緑内障治療システム100とは別々に又はその一部として使用される)。フレネルレンズ160は、視力矯正を達成するために、すなわち、フレネルレンズ160を通過する光を眼102の網膜上にフォーカスさせることによってそれを行うための所与の屈折力を確立するために一連の金属トレースを用いて構成することができる。フレネルレンズ160の金属トレースは、時変電磁場を受信し、かつ特にフレネルレンズ160が刺激コイル140に電気結合される場合に緑内障治療の目的でこのエネルギを眼に送出する機能を有することができる。フレネルレンズ160は、視力矯正に加えて緑内障治療を施すためにWPTシステム110(WPTコイル130を含む)と併用することができる。
図2は、無線緑内障治療システム(例えば、図1に示すシステム100)の基本的手順200を示している。段階202は、哺乳動物被験体の眼での眼組織(例えば、図1に示す眼102)に電力を時変電磁場の形態で無線で送信する段階を伴う。無線電力伝達の方式に基づいて、電力の無線送信(段階202)は、眼の前眼部内への房水流入の減少(段階204)及び/又は眼の前眼部からの房水流出の増加(段階206)をもたらすことになる。より具体的には、刺激コイル(例えば、図1の刺激コイル140)を使用するか又は使用しないWPTコイル(例えば、図1のWPTコイル130)を通じたエネルギの無線送信は、眼の前眼部内への房水の減少(段階204)と眼(例えば、眼102)の前眼房からの房水流出の増加との両方を提供することができ、それによって眼の前眼部内の高いIOPを低減する。
図3は、哺乳動物被験体、特にこの図ではヒトの眼300の関連解剖学的構造を示す図である。眼300内において、毛様体302は、毛様筋とも呼ばれ、別々の機能を有する2つの異なる向きの筋肉(輪走及び縦走)を有する平滑筋組織を含む。毛様体302の輪走筋は、像が網膜の裏面上で鮮明になるように眼300のフォーカスを変化させる眼300内の水晶体304の形状を制御する。毛様体302の縦走筋組織は、線維柱帯網の構成を制御する。房水は、毛様体302によって分泌される。
房水は、虹彩308と水晶体304の間の眼300の前眼部の後眼房306内に分泌される。房水は水晶体304を洗い、次いで、瞳孔310を通って移動して前眼部の前眼房312内に入る。最終的に、房水のかなりの部分が2つの主要経路、すなわち、シュレム管と、毛様体及び脈絡膜の少なくとも一部を通るぶどう膜強膜経路を通って眼300を離れる。房水の生成、流動、及び排出は、眼300の前部に養分を与え、代謝物及び正常視力を除去するのに重要である。
緑内障を有する患者では、房水が眼300内に累積する。この累積は、線維柱帯網内の房水の排出の阻害又は緩慢化に起因する場合がある。眼300内に過剰な流体が累積すると、眼内圧が増大する。この圧力が増大すると、視神経が損傷を受ける。未治療のままに放置されると、圧力は、視神経に非常に大きい損傷を及ぼし、最終的に盲目が引き起こされる場合がある。
図4は、様々な構成要素と得られる生体効果とを含む閉ループ無線緑内障治療システム400の例のブロック図である。無線緑内障治療システム400は、患者の眼422内に埋め込まれた無線圧力センサ420(下記で説明する)によって供給されたフィードバックに基づいて緑内障治療をモニタ及び調節するための閉ループアルゴリズム418を実施するための様々な構成要素及び回路を有するコントローラシステム404(破線)を含む。
より具体的には、例えば、刺激器出力419は、あらゆる数の入力パラメータ及び/又はマイクロコントローラ414が従う命令(例えば、アナログフロントエンド410を通じた無線IOPセンサ420からの入力)に依存して所与の時変電磁場を眼422内に送信することになる(例えば、WPTコイル130及び任意的に刺激コイル140を通じて)。閉ループ方式で作動することにより、無線緑内障治療システム400は、眼422の前眼部内への房水流入の望ましい減少及び/又は前眼部からの房水流出の望ましい増加を達成するような影響を様々な生理学的経路424に動的に与えることができる。
一実施形態では、無線緑内障治療システム400は、患者及び/又は医師がモバイルデバイス430(例えば、Apple,Inc,によるiPhone(登録商標)、Samsung,Inc,によるGalaxy、Apple,Inc.によるiWatchなど)を通じて無線緑内障治療システム400のある一定の(又は全ての)構成要素の機能を無線制御することができるソフトウエアを用いてプログラミング及び/又は制御することができる。例えば、コントローラシステム404は、WPTコイル130を被験体402の眼422の近く(例えば、眼鏡、検眼フレーム、安眠マスク、枕)に位置決めするための様々なデバイス上又は内に配置することができるように考えられている。この場合に、モバイルデバイス430を用いて、コントローラシステム404の作動をモバイルデバイス430とコントローラシステム404の間のBluetooth(登録商標)接続などを通して無線制御することができる。
コントローラシステム404は、制御デバイス406がデータを基地局(ベースステーション)(モバイルデバイス430とは別々の)に無線出力し、かつ無線給電及び/又は無線充電を受けることを可能にする無線データ及び無線電力を供給することができる構成要素(412)を含むことができる。この出力データは、検出された条件及び送出された治療の記録、現在検出されている条件(例えば、高いIOP)、及び/又は他のデータのような様々な異なる患者データを含むことができる。コントローラシステム404は無線受電することができ(例えば、RF信号を通して)、これに加えて、無線信号を通して充電することができ、かつ無線信号が利用不能である時にコントローラシステム404に給電することができるローカル電源(例えば、バッテリ)を含むことができる。
コントローラシステム404は、無線IOPセンサ420によって送信された無線信号を受信するアナログフロントエンド2010を含む。アナログフロントエンド410は、マイクロコントローラ414の信号処理システムに受信信号を提供する。信号処理は、オンボード又はオフボードを用いて実施することができ、眼422の近くに置かれた1又は2以上のWPTコイル又は眼422上又は内に配置された1又は2以上の刺激コイルでの生体電気刺激を修正又は変更されるか否かを決定することができる閉ループアルゴリズム418を使用する段階を伴うことができる。
閉ループアルゴリズム418は、様々な適切な技術のうちのいずれかを用いて患者402の特定の生理機能及び治療に対する患者の特定の反応を学習することができ、これらの情報を用いて、いつ、どのようにして、どのような条件下で患者402に対して治療を提供するかを決定することができる。例えば、臨床設定において医師又は他の訓練を受けた技師が閉ループアルゴリズム418を患者に対して初期較正することができ、この較正は、様々な刺激を与えて患者402の生理学的反応を記録する段階を伴う。初期較正された後に、閉ループアルゴリズム418は、無線IOPセンサ420が発生させたデータ、患者402に施された治療、及び治療に対する患者の反応を解析することによって長期間にわたって学習及び適応し続けることができる。閉ループアルゴリズム418は、患者データを繰り返しモニタし、高いIOP条件が低減されるまで及び/又は閾値レベルよりも小さくなるまでイオンポンプ及び/又は眼筋(例えば、眼排液に影響を及ぼす眼筋)に刺激を適時印加することができる。閉ループアルゴリズム418は、明確な患者の指示なく自動的に実施することができる。
図5は、様々な構成要素を含む開ループ無線緑内障治療システム500の例を示している。無線緑内障治療システム500は、基地局502とコンピュータ504とパルス発生器506とを含む。基地局502とコンピュータ504は、協働して、コンピュータ504によって実行されるソフトウエア内に示す制御プログラミングを実施するための制御信号をパルス発生器506に無線で送信する。基地局502は、パルス発生器506のマイクロコントローラ510と無線通信することができるあらゆる適切な無線通信の技術又はシステム(例えば、Raspberry Pi508)を通してパルス発生器506に無線接続することができる。更に、基地局502は、送受信機522及び関連のアンテナ、並びにコンピュータ504に設けられた別の送受信機及びアンテナ524を用いてコンピュータ504に無線接続することができる。基地局502とコンピュータ504の間、並びに基地局502とパルス発生器506の間の無線通信を用いて示すが、これらの無線通信経路のうちのいずれか又は全ては、物理的通信リンク(例えば、コンピュータケーブル)によって置換することができることは認められるであろう。
パルス発生器506は、マイクロコントローラ510と通信している(又はその一部を形成する)送受信機526を通して基地局502からの無線制御通信を受信する。マイクロコントローラ510は、回路(例えば、電圧調整512、可変電圧調整514)と協働して1又は2以上の駆動(WPT)コイル518に結合されたHブリッジドライブ516を時変磁場を送信するように駆動する。この電磁場は、眼に隣接して位置決めされた駆動(WPT)コイル518により、更に任意的に眼上又は内に置かれた1又は2以上の2次コイル520によって眼に投与することができる。下記で詳細に解説するように、無線電磁エネルギ(例えば、誘導、遠距離場RF、光など)結合の原理を通して、2次コイル520は、駆動(WPT)コイル518から時変電磁エネルギを受信し、このエネルギを眼上又は内に配置された1又は2以上の刺激電極522を通して眼の眼構造体内に送信するように適応させることができる。WPTのみ(すなわち、駆動/WPTコイル518単体)又はWPTと2次(刺激)コイル520との組合せのいかなる場合にも、無線緑内障治療システム500は、眼の前眼部内への房水流入及びそこからの房水流出のそれぞれの望ましい低減を達成するための治療有効量を投与することができる。
図6は、基地局602とコンピュータ604とパルス発生器606とを有する図5に示すタイプの無線緑内障治療システム600の構成要素間の通信経路の例を描く図を示している。無線緑内障治療システム600内の通信は左側で始まり、ユーザは、命令などをユーザインタフェース608(例えば、キーボード、GUIなど)を通して入力することのようなコンピュータ604との対話を行う。コンピュータ604は、コンピュータ指令ハンドラ612に出力信号を送り、更にコンピュータパケット構成器614から入力信号を受信する非同期データハンドラ610を通して基地局602と通信的にリンクされる。
システムの使用中の双方向通信は、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)データ利用可能割り込みモジュール616に結合されることになる本明細書に説明する無線IOPセンサのような埋込可能デバイスの柔軟性及び考えられる用途を有意に拡大する。データを送信する機能は、埋込可能デバイスからのオンボードデータストレージの負担を潜在的に軽減するが、埋込可能デバイスがその現在ステータス及び設定を実時間で通信することも可能にし、それによって長期間にわたって埋め込み性能での高い信頼性が与えられる。更に、データを受信する機能は、埋め込み前、中、及び後に埋込可能デバイスを構成し、較正し、かつそれに命令を与えることを可能にし、様々な状況への埋込可能デバイスの適応力を改善する。データを受信し、それと共に送信することができる埋込可能デバイス(無線IOPセンサなど)は、外部ユーザ又はシステムが、埋込可能デバイスによって得られた記録データに基づいて埋込可能デバイスに反応的に命令を送ることを可能にし、閉ループシステムを実質的に生成するという追加の利点を有する。
カスタム設計の外部基地局602との協働的なハンドシェイクプロトコルを強制することにより、図6に示すように双方向通信を実行することができ、それによっていずれの外部ユーザとの全ての通信も容易になる。パルス発生器606が、そのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)データ利用可能割り込み616から特定の個数のサンプル、例えば、40個のデータサンプルを取得した後に、パルス発生器606のマイクロコントローラは、オンボード無線機を用いて基地局602へのデータパケット送信を開始する。データパケットは、例えば、従来のパケット化技術を用いて記録データを含むように構成され、その後に、データパケット構成器618から送信信号を通して通信することができる。
複数のパケットを連続して送信した後、例えば、100番目のデータパケットの後に、パルス発生器606は基地局602とのハンドシェイクを開始する。ハンドシェイクは、それぞれのハンドシェイクユニット(620、622)間を用いて実施することができる。指定データパケット又は他に通信の終端と見なされるデータパケット(例えば、100番目のデータパケット)を送信した後に、パルス発生器606は、その無線機を受信モードに設定し、一般的に、10ミリ秒を超えない時間にわたって基地局602からのデータパケットに関して傾聴する。それにより、パルス発生器606に単一データパケットを送る機会が基地局602に与えられる。データパケットは、データ取得設定、刺激設定、及び通信設定を格納するパルス発生器606のマイクロコントローラ内のファームウエアレジスタを設定するのに使用される45バイト長のペイロードを含むことができる。
一部の場合に、ハンドシェイク駆動式通信スキームは、パルス発生器606が、最も短い無線機起動時間で外部情報源からデータを受信する機能を維持しながら取得データを迅速に送信することを可能にする。例えば、5kHzの全データ取得サンプリング周波数を所与とすると、パルス発生器606の無線機は、毎秒125個のデータパケットを送信し、800ミリ秒毎に1回ハンドシェイクを開始することになる。上述した無線機作動時間を所与とすると、無線機がこの時間のうちの少なくとも86.7%にわたって停止条件にありながら双方向通信を提供する。
無線通信スキームでの別の課題は、データのロバスト性を高めることである。パルス発生器606によって記録されたあらゆるデータを適正に解析するためには、データがいつ破損又は消失したかを識別する機能が望ましい場合がある。データは、無線送信がRFエネルギを吸収することができる妨害物によって遮断される場合、同じ周波数で通信している隣接のデバイスが干渉を発生させる場合、及びパルス発生器606と基地局602の間の距離がパルス発生器606の送信範囲よりも大きい場合を含む様々な条件下で無線送信中に破損又は消失する場合がある。更に、データは、パルス発生器606がデータの取得又は送信中に突然電力を失う場合のシナリオにおいて消失する場合がある。
図7は、無線電力伝達システムの刺激器出力態様から測定した電流制御2相出力を表示する例示的グラフ700である。この例では、刺激器出力は、刺激器出力の間で10kΩの負荷を用いてベンチトップ上で測定したものである。グラフ700は、出力信号をx軸に沿う時間(ms)とy軸に沿う電流(μA)の間の相対関係として表示している。パルス幅、電流振幅、及び負荷サイクルは、基地局からWPTコイル又は他の適切な無線受電デバイスへの逆遠隔測定によって実時間で選択可能なパラメータとすることができる。この場合に、様々な振幅設定に対する電流出力を示すために1msのパルス幅及び50%負荷サイクルを用いている。
図8~図11は、本明細書に示す原理に従って無線緑内障治療の投与を可能にするためにWPTコイル(例えば、図1に示すコイル130)を眼の近くに位置決めするいくつかの方式を示している。これらの方式は、日常生活の通常活動中に無線緑内障を投与するためのWPTコイル付き眼鏡(例えば、図8)と、診療環境において眼科医及び/又は検眼医によって使用される検眼フレーム上のWPTコイル(例えば、図9)と、被験体が寝ている間に無線緑内障治療の投与を可能にするためのデバイス(例えば、安眠マスク、枕などの一部としてのWPT130)とを含むが必ずしもこれらに限定されない。各場合に、WPTコイルは、眼の前眼部内への房水の流入を低減すること、及び/又は前眼部からの房水の流出を増大することのそれぞれによって眼内のIOPを低減するための治療有効量の時変電磁場を眼に送出する。
下記で「WPTのみ」の使用又は刺激コイルとの併用のいずれで開示するかに関わらず、本明細書に図示して説明する実施形態は、多くの追加特徴との組合せでもたらすことができることは認められるであろう。例えば、IOPをモニタし、閉ループ方式で治療の送出を調整又は修正するために無線IOPセンサ(本明細書に説明する)を設けることができる。視力矯正の目的で入射光線を眼の網膜上にフォーカスさせるために眼鏡レンズ上でフレネルレンズを使用することができる。フレネルレンズ(下記で詳細に説明する)は、それ自体が時変電磁場を受信することを可能にする一連の金属トレースを用いて構成することができる(視力矯正を達成するために)。フレネルレンズは、視力矯正に加えて緑内障治療を施すためにWPTシステム(WPTコイルを含む)に対して使用することができる。
図8Aは、例示的無線緑内障治療システム800が、時変電磁場を発生させてこれらの磁場を無線電力伝達(WPT)コイル830に送信するための無線電力伝達(WPT)システム810を含むことを示している。各WPTコイル830は、眼鏡850のフレーム上に配置され、無線電磁場を哺乳動物被験体の眼802に送出するように構成される。コイル830は、眼802の上方の固定距離にある眼鏡850のフレーム上に配置され、眼鏡の覗き穴のほぼ中心を通過する軸と同軸に位置合わせする。この同軸配置は、哺乳動物被験体の眼802内の眼構造体への電磁場露出の効率及び整合性を高めるように機能する。WPTコイル830は、眼鏡の覗き穴と一致する覗き穴を含み、それによって眼鏡の着用者が、本発明の開示の技術に従って無線緑内障治療を受信しながら依然として見ることができる。
この実施形態では、眼鏡850には、その1つの柄の上に形成されたハウジング842内に配置されたパルス発生器840(例えば、図5に関して図示して説明するタイプの)が装備される。WPTシステム810は、図5に関して図示して説明するタイプの基地局506と類似の回路及び構成要素を含むことができる。これに代えて、そのような基地局の回路及び構成要素は、あらゆる適切なBluetooth通信技術(例えば、Raspberry Pi)によってパルス発生器840と通信する機能を含むモバイルデバイス(例えば、Apple,Inc,によるiPhone、Samsung,Inc,によるGalaxyなど)のための「アプリ」の一部を形成することができる。
図8B~図8Dは、眼鏡850がオンボードパルス発生器840を含まず、WPTコイル830(図8D及び図8E)を眼鏡850に着脱可能に取り付けることができることを示している。それにより、ユーザ及び/又は医療従事者が、既存のWPTコイル830をより適切なサイズ又は巻回数(高めの磁場ではより大きくより高く、低めの磁場ではより小さくより低い)を有するものに簡単に変更することによって電磁場の範囲を拡大又は縮小することが可能になる。同じくそれにより、眼鏡850の重量が減少する(パルス発生器、バッテリなどを取り除くことで)。
図9A~図9Eは、今回は図8の眼鏡850ではなく検眼フレーム930の使用を含む哺乳動物被験体の眼の近くにWPTコイルを配置するための代替実施形態を示している。この変更以外の殆どの点で、無線緑内障治療システム900は図8の無線緑内障治療システム800と同様であり、従って、完全な説明を繰り返す必要はない。図示の図9Aの無線緑内障治療システム900は、時変電磁場を発生させてこれらの磁場を1又は2以上のWPTコイル920に送信するための無線電力伝達(WPT)システム910(ブロック図に示す)を含む。1又は2以上のWPTコイル920は検眼フレーム930上に配置され、眼902から望ましい距離離れた場所で眼902に時変電磁場を送出するように構成される。一実施形態では、WPTシステム910及びWPTコイル920は、時変電磁場を眼902にIOPの減少をもたらすほど十分なレベル及び方式で送信することができる。それにより、流体流出の増加に基づいて、時に流体流入の減少にも基づいてIOPが低下する。
WPTコイル920をWPTシステム910に有線接続することができるように、検眼フレーム930上に装着されたか又は他にそれによって担持されたWPTコイル920に刺激ドライブコネクタ932を結合することができる。刺激ドライブ934への直接に接続は、眼902内へのより高いレベルのエネルギ送信をもたらすことができ、それによってWPTシステム910及びWPTコイル920だけによって達成されるものよりも短い期間で有意なIOP低減を達成することができる。一部の実施形態では、刺激コイル(図示せず)を検眼フレーム930の1又は2以上の構成要素内に、刺激コイルが眼902の近くに位置決めされるように配置して構成することができる。
図9Bは、検眼フレーム930が単一WPTコイル920を担持している場所を示す無線緑内障治療システム900の拡大画像を示している。単一WPTコイル920は、眼科医院及び/又は検眼医院のような臨床環境において患者に無線緑内障治療を提供するときに、両眼ではなく単眼に無線緑内障治療を投与する(例えば、治療を目標を定めた方式で単距離を置いて評価するか又は送出するために)のに有利とすることができる。
一部の実施形態では、無線緑内障治療システム910は、視界を遮らず着用可能であり、快適で別々のものである。システム910の作動は、時変磁場の存在下で導体上に誘導される電流の現象に基づいて発生する。フレーム930に取り付けられたコイル920は、巻きエナメルコーティング銅線からなる。コイル920は、(単なる例として)15~25グラムの範囲の重量、0.5Ωから1.5Ωの範囲の抵抗、及び150μHから450μHの範囲のインダクタンスを含むあらゆる数の適切な特性を有するように構成することができる。コイル1120は、1又は2以上のバッテリと、マイクロコントローラと、フレームの受動回路上の特殊調整電流を励起するためのパルス振動磁場の発生のための回路とが装備された外部回路基板に接続される。
検眼フレームは、市販の検眼フレーム、例えば、Vktech,Inc.によって提供されている「Optometry Optician Fully Adjustable Frame」を含むことができる。フレームには、無線電力を供給するための取り付けコイル920を装備することができる(図9Aに示す写真画像内に示すように)。
検眼フレーム930は、様々なフレームの望ましい仕様及び寸法を含むことができる。ある一定の実施形態では、(1)PD調節範囲(例えば、約48mmから80mmの範囲にわたる両眼のPD、最小で約24mmから約40mmの範囲にわたる左又は右のPD)、(2)約1mmの目盛値、(3)分割ディスク軸目盛、(4)120°~0°~135°の左分割ディスク、(5)45°~180°~60°の右分割ディスク、(6)軸目盛がレンズフレーム軸に沿って反時計周りに増加し、目盛距離が約5°であること、(7)約32.5mmのレンズフレームの内径、(8)左又は右のレンズフレーム内に同時に挿入すうことができるレンズの個数を4個とすることができること、(9)レンズフレーム内で光学軸の周りに回転するレンズの度数を360°とすることができること、(10)レンズの光学軸とレンズフレームの幾何学軸の間の非平行性を2.5°よりも小さいか又はそれに等しいとすることができること、(11)レンズの光学中心とレンズフレームの幾何学中心の間の非同心性を0.5mmよりも小さいか又はそれに等しいとすることができること、(12)レンズフレームの幾何学中心の位置に対するレンズの変位を0.3mmよりも小さいか又はそれに等しいとすることができること、(13)鼻当て調節範囲が、約0mmから約14mmまでの長さと約0°から30°までの角度とを含むことができること、(14)左又は右のレンズフレームの柄の長さ調節の範囲が約98mmから約135mmの範囲にわたることができること、(15)左レンズフレームの柄と右レンズフレームの柄の間の最大間隔を約200mmとすることができること、(16)材料を軽量な金属又はプラスチックとすることができること、(16)あらゆる望ましい色又は混合色を使用することができること(例えば、黒色及び銀色)、及び(17)サイズを15.50cm*6.00cm*3.50cmとすることができることという非限定的なフレーム仕様及び寸法のうちの1又は2以上を適用することができる。
図9C及び図9Dは、無線緑内障治療システム900に対して使用することができる例示的検眼フレーム930(コイル920なし)の異なる図を示している。図9Eは、例示的検眼フレーム930を2つの二重コイルアセンブリ940及び2つの単一コイルアセンブリ942と共に示している。一部の実施形態では、検眼フレーム930は、1つの二重コイルアセンブリ940又は1つ又は2つの単一コイルアセンブリ942を使用することができる。
図10A~図10Bは、少なくとも2つの電気コイル対を含むことができ、第1の電気コイル対が、第1の位相を有する刺激信号に基づく無線エネルギを患者の眼内に送出するのに使用され、第2の電気コイル対が、第1の電気コイル対の場合に使用された刺激信号が有する第1の位相と反対の第2の位相を有する刺激信号に基づく無線エネルギを患者の眼内に送出するのに使用される検眼フレーム930との併用のためのコイルアセンブリ950を示す図である。
第1のコイル対は、第2のコイル対から約90度で配置することができる。この構成では、12時間時計の状況の範囲で、第1のコイル(第1のコイル対の)は、12時位置に配置されることになり、第3のコイル(第2のコイル対からの)は、3時位置に配置されることになり、第2のコイル(第1のコイル対の)は、6時位置に配置されることになり、第4のコイル(第2のコイル対の)は、9時位置に配置されることになる。
第1のコイル対は、患者の眼を覆う第1の場所に配置することができる第1の電気コイルと、第1の電気コイルが有する第1の場所と反対の(180度)患者の眼を覆う第2の場所に配置することができる第2の電気コイルとを含む。第2のコイル対は、患者の眼を覆う第3の場所に配置することができる第3の電気コイルと、第3の電気コイルが有する第3の場所と反対の(180度)患者の眼を覆う第4の場所に配置することができる第4の電気コイルとを含む。
第1の場所、第2の場所、第3の場所、及び第4の場所は、それぞれの電気コイルを虹彩の一部を完全に覆うように配置する、虹彩の一部と瞳孔の一部とを覆う重ね合わせ方式で配置する、及び/又は瞳孔の一部を完全に覆うように配置することができる。これらの場所は、患者を治療又は他に診療している眼科医及び/又は検眼医(又は他の医療専門家)の最適場所に関する専門家的決定に依存して予め定めて(すなわち、事前確立場所でいかなる調節性も持たないように製造し)、処方するか又は他に患者にあてがうことができる。別の態様では、検眼フレームは、第1及び第2の電気コイル対の場所を調節可能にすることができ、それによって眼科医及び/又は検眼医(又は他の医療専門家)が、自分の決定に従って患者の眼を覆う検眼フレームの第1及び第2の電気コイル対の場所を調節することが可能になるように製造することができる。
図10Bは、コイルアセンブリから延びる延長部上に配置されたコイル1~4を有する例示的コイルアセンブリ960(検眼フレームに装着されるように構成された)を示している。延長部は、コイル1~4を眼に近い場所に配置するように構成される。検眼フレームの電気コイルと眼の面の間の距離は、(a)検眼フレームのコイルが、患者の眼上に位置決めされた(例えば、受動回路を有するコンタクトレンズを通して)又は患者の眼内に位置決めされた(受動回路の手術による埋め込みにより)受動的なコイル及び電極と併用されることになるか、又は(b)検眼フレームのコイルが、緑内障の治療に向けて患者の眼内に無線エネルギを送出するために単体に使用されることになる(すなわち、受動回路を有するコンタクトレンズの使用及び/又は患者の眼内への受動回路の埋め込みなく)かに依存して異なる場合がある。より具体的には、検眼フレームのコイルは、シナリオ(a)の下で患者の眼から距離を置いて位置決めし、シナリオ(b)の下で患者の眼に近づけて配置することができる。一例として、シナリオ(a)の下では、第1及び第2の電気コイル対をフレームの周囲(例えば、眼鏡の穴を形成する)内に又はその近くに位置決めすることができ、一方、シナリオ(b)の下では、第1及び第2の電気コイル対を検眼フレームが着用された時に検眼フレームから患者の眼に向けて延びる1又は2以上の延長部の使用等によって眼の面の近くに位置決めすることができる。
検眼フレームの電気コイルは、各対を通して眼に投与される刺激信号が互いに異相であるような対(例えば、第1のコイルと第2のコイルとを含む第1の対及び第3のコイルと第4のコイルとを含む第2の対)として設けられる。そうすることで、第1のコイル対を通して投与される刺激信号と第2のコイル対を通して投与される刺激信号とが同じか又は実効的に同じである時に、眼に投与されることになるエネルギの量が実質的に均衡のとれたものになる。必要に応じて、第1の刺激信号(すなわち、第1のコイル対を通して投与される)の信号特性と第2の刺激信号(すなわち、第2のコイル対を通して投与される)の信号特性とを眼に対する刺激の影響を変調するように異なる場合がある(例えば、IOPを変調する刺激の不均衡を拡大又は縮小させる)。
図11は、本発明の開示の技術を実施するために安眠マスクに関する無線電力伝達(WPT)コイルの使用を含む例示的無線緑内障治療システム1100を示している。安眠マスクは、軟質の織物カバー1120と、カバー内に含有された眼鏡1150と、安眠マスクをユーザの眼の上に固定するために眼鏡1150に結合された弾性バンド1122とを含むことができる。無線緑内障治療システム1100は、WPTコイル1130が、安眠マスク1120(眼鏡又は検眼フレームの一部と対比して)内に配置されるように寸法決めされる点を除く全ての点で図8~図10に関して開示して説明した従来のバージョンと同様である。WPTコイル1130を織物カバー1120内に位置決めすることにより、患者は、眼を閉じること又は光を遮断することを望む夜間又は休息期間中にWPTコイル1130を自分の眼の近くに位置決めすることができる。更に、それにより、眼鏡を着用することが患者に対して望ましくないか又は不快適である夜間のような期間中に患者が無線緑内障治療を受け続けることが可能になる。盲目又は緑内障の発現を食い止めるために時間をかけて投与する必要がある無線緑内障治療の量に基づいて、ユーザが無線緑内障治療を夜間に達成することを可能にすることは、無線緑内障治療の採用を拡大する簡単な手法とすることができる。
図12は、本発明の開示の技術を実施するために枕1220に関する無線電力伝達(WPT)コイルの使用を含む例示的無線緑内障治療システム1200を示している。枕1220は、軟質カバー1222と、その中に位置決めされたクッション1224と、クッション1224内に又はその近くに含有されたWPTコイル1250とを含むことができる。無線緑内障治療システム1200は、WPTコイル1130が、枕1220(眼鏡又は検眼フレームの一部と対比して)内に配置されるように寸法決めされる点を除く全ての点で図8~図10に関して開示して説明した従来のバージョンと同様である。WPTコイル1230を枕1220内に位置決めすることにより、患者は、眼鏡を着用することが患者に対して望ましくないか又は不快である夜間のような期間中に無線緑内障治療を受けるように枕1220上に頭を配置することができる。盲目又は緑内障の発現を食い止めるために時間をかけて投与する必要がある無線緑内障治療の量に基づいて、ユーザが無線緑内障治療を夜間に達成することを可能にすることは、無線緑内障治療の採用を拡大する簡単な手法とすることができる。
図8~図12のWPTコイルを眼の近くに位置決めする方式に関して開示及び解説した特徴のいずれも、図面内に示すもの、例えば、図8の眼鏡850及び図9の検眼フレーム920に関する特徴の間で組み合わせることができる。
刺激コイル及びフレネルレンズ
上述したWPTのシステム及び技術は、本明細書に開示する様々な刺激コイル実施形態のうちのいずれかと併用し、任意的に本明細書に開示する様々なフレネルレンズ実施形態との組合せで使用することができる。様々なフレネルレンズ実施形態は、本発明の開示の技術に従って無線緑内障治療を投与するために単体又は様々な刺激コイル実施形態のうちのいずれかとの組合せで使用することができる。本明細書に示す様々な刺激コイル実施形態及びフレネルレンズ実施形態は、他又は以前の実施形態での同じか又は類似の構成要素、特徴、及び機能を参照する場合に図面及び本明細書を通じて異なる参照番号を使用することができる。付番でのこれらの相違点にも関わらず、本発明の範囲で多くの特徴、機能、及び発明的態様の理解及び認識を容易にするために様々な実施形態の開示内容を同じか又は類似の実施形態の開示内容の中に組み込んでいる場合がある。
図13は、本発明の開示の技術を実施するために刺激コイル1305が装備されたコンタクトレンズ1300を有するように構成された哺乳動物被験体の眼1350の前面図である。図13には、眼構造体の境界線を破線に示しており、コンタクトレンズ構造体を実線に示している。刺激コイル1305は、一般的に、第1の円形電極1310と、その外側に置かれた第2の円形電極1315とを有するように示しており、これら2つの電極1310、1315は、角膜輪部(すなわち、虹彩1360と強膜1365との接合部1355に近い領域)を横切って配置される。第1の電極1310及び第2の電極1315は、1又は2以上のターンを有するコイル構造体1305の一部を形成し、全体のコイル構造体は、WPTコイル(図13にはWPTコイルを示していない)からの時変電磁場を受信し、この電磁場を眼組織への刺激信号として第1の電極1310及び第2の電極1315を通して送信するように設計される。下記で説明するように、角膜輪部1355の両側に沿った第1の電極1310及び第2の電極1315の配置は、刺激信号が、前眼房からの房水流出を増加させるためにある一定の眼構造体(例えば、毛様体、シュレム管など)を活性化し、更に、眼の前眼部内への房水流入の減少をもたらすほど十分なターゲット眼構造体内のイオンポンプを活性化することを可能にする。図7の電流制御2相刺激信号は、それが位相を切り換えた時に第1の電極1310と第2の電極1315の間に流れる電流を逆流させる。それにより、眼内への均衡のとれたエネルギ流入が有利に提示され、一方、電流が単一方向に長期間にわたって連続して流れた場合に電気分解に起因して発生する可能性がある、電極を構成する金属トレースの早期劣化が防止される。第1の電極1310及び第2の電極1315は、図15~図16に示す円形実施形態及び図17~図19に示す蛇行実施形態を含む(しかし、これらに限定されない)様々な適切な形態を取ることができる。
図14は、本発明の開示の技術を実施するために第1の電極1410と第2の電極1415とを含む刺激コイルが装備されたコンタクトレンズ(明瞭化の目的でレンズを示していない)を有するように構成された哺乳動物の眼の関連解剖学的構造を示す図である。第1の電極1410は、強膜1465との境界の近くで虹彩1460の上に配置され、第2の電極1415は、虹彩1460との境界の近くで強膜1465の上に配置される。これらの配置は、第1の電極1410及び第2の電極1415を角膜輪部1455の両側で毛様体1470及びシュレム管1475に対して物理的近位に配置するという効果を有する。第1の電極1410及び第2の電極1415をこのようにして配置することにより、第1及び第2の電極1410、1415を含む刺激コイルは、本発明の開示の技術に従って眼1450内の高いIOPを低減するために房水流入の望ましい低減及び/又は房水流出の望ましい増加を達成するための刺激信号(時変電磁場)を眼構造体(毛様体1470及びシュレム管1475を含むが必ずしもこれらに限定されない)に送出するように有利に位置決めされる。
図13及び図14に示す刺激コイル1305、1405は、図15~図16に示す円形刺激コイル及び図17~図19に示す蛇行刺激コイルを含むがこれらに限定されないあらゆる数の適切な形態を取ることができる。
図15を参照して、円形刺激コイル1505は、絶縁要素1508内にほぼ円形の方式で配置された2つの巻回に形成された単一金属トレース1506(破線)を含む。絶縁要素1508は、外側電極1510と内側電極1512とを定める2つの領域を除く金属トレース1506の全ての態様を覆う肉薄絶縁コーティングである。金属トレース1506は、金を含むがこれに限定されないあらゆる数の適切な導電材料を含むことができる。絶縁要素1508は、パリレンCのような市販のいずれかの誘電材料障壁を含むがこれに限定されないあらゆる数の適切な絶縁材料を含むことができる。金属トレース1506と絶縁部材1508とを含む円形刺激コイル1505の製作を図20及び図21に関して下記で詳細に説明する。外側電極1510と内側電極1512は、使用時に上述した治療効果を達成するためにこれらの電極が角膜輪部の両側に配置されるように円形刺激コイル1505の反対側に配置され、互いに半径方向に離間している(すなわち、外側電極1510の半径は内側電極1512の半径よりも大きい)。刺激コイル1505は、コンタクトレンズ1520の一部を形成することができ(図15の挿入図)、又は眼(例えば、哺乳動物被験体の眼の結膜不領域)内に埋め込むことができる。
図16は、第1の巻回1606a、第2の巻回1606b、第3の巻回1606c、及び第4の巻回1606dと表示した4つのターンを含むという主な相違点を有する図15の金属トレース1506と類似の構造体のものである金属トレース1606の分解組立図である。第1の巻回1606aは最も内側のものであり、第4の巻回1606dは最も外側のものである。金属トレース1606の各巻回は、隣接巻回の間を延びる一連の絶縁リンク1620によって半径方向に互いに結合される。最初に製造された時には、絶縁リンク1620は、1620pと表示している「パズルピース」の形状及び外見を有する。使用中及び/又は金属トレース1606を有するコンタクトレンズを製造する過程中に、延伸によって絶縁リンク1620が1620sと表示している「S」字の形状及び外見を取ることになる。金属トレース1606の巻回の半径方向結合は、得られる刺激コイル(例えば、図15に記載の刺激コイル1505)が、コンタクトレンズ(例えば、図15のコンタクトレンズ)内に配置された時に延伸して眼の曲率に適合するのを容易にするという特徴がある。
図15の刺激コイル1505は、このコイル(図13及び図14に示す電流フローを供給する)の反対側に配置された単一外側電極1510と単一内側電極1512とを有するように示されているが、円形刺激コイル1505は、他の配置で設けることができることは認められるであろう。例えば、刺激コイル1505は、外側電極1510と内側電極1512が、刺激コイル1505の同じ側及び場所に沿って互いに半径方向の離間関係にあるように配置されるように設けることができる。このようにして、得られる電流フローは、眼の解剖学的構造の当該領域(例えば、全体の角膜輪部のうちの一点又は一領域)に密に集中することになる。同様に、円形刺激コイル1505に、複数の外側電極1510と複数の内側電極1512とを設け、刺激コイル1505の周囲周りの複数の場所に位置決めされ、半径方向に離間した内側電極と外側電極との複数の対を形成することも考えられる。このようにして、眼の解剖学的構造に沿って集中電流フローの複数の領域及び場所(例えば、角膜輪部に沿う複数の点)が存在することになる。
図17を参照して、刺激コイルは、単一金属トレース1706が、ほぼ蛇行する方式(図15に記載の円形状の刺激コイル1505と比較して)で配置された複数の巻回に形成された蛇行刺激コイル1705(明瞭化の目的でいかなる絶縁層もなく示す)の形態を取る。絶縁要素(図15の絶縁要素1508など)内には示していないが、それぞれ外側電極1710と内側電極1712とを定める最も外側の巻回1706a及び最も内側の巻回1706bを除く金属トレース1706の全ての態様を覆う絶縁要素が設けられることは認められるであろう。外側電極1710及び内側電極1712は、あらゆる望ましい長さとすることができる。単なる例として、外側電極1710は、金属トレース1706の最も外側の巻回に沿うピークP1とP1との間を延び、それに対して内側電極1712は、金属トレース1706の最も内側の巻回に沿う谷V1とV2との間を延びる。金属トレース1706及び絶縁層(図示せず)は、図20~図21に示し、下記で説明する製作方法に従って製造することができる。外側電極1710と内側電極1712は、使用時に上述した治療効果を達成するためにこれらの電極が角膜輪部の両側に配置されるように蛇行刺激コイル1705の反対側に配置されるように設計され、互いに半径方向に離間している(すなわち、外側電極1710の半径は内側電極1712の半径よりも大きい)。蛇行構造体は、刺激コイル1705が、図16に関して上述した絶縁リンク1620と同じ方式で隣接巻回の間の延伸を可能にする絶縁リンク1720によって拡張されて眼の曲率に適合することを有利に可能にする。
図19に示す代替構成を含むがこれに限定されないあらゆる数の蛇行刺激コイルを実施することができる。図18は、1つの代替構成の蛇行刺激コイル1805(図17の刺激コイル1705と同じ方式で明瞭化の目的で絶縁層なく示す)を示している。蛇行コイル1805は、外側トレース1806aと、内側トレース1806bと、複数の中間トレース1806cと、複数の外側リンクトレース1806dと、複数の内側リンクトレース1806eとを含む金属トレース構造体1806を含む。外側トレース1806aは、ピークP1とP2の間に定められた(単なる例として)外側電極1810を含む。内側トレース1806bは、谷V1とV2の間に定められた(単なる例として)内側電極1812を含む。図17と図18とを組み合わせて参照すると、中間トレース1806cは、図17の刺激コイル1705のための外側トレース1706aと内側トレース1706bの間にあり、同じタイプのリンク1720(図16のリンク1620と類似の構造体とすることができる)によって互いに結合された中間ターンと類似の構造体のものである。外側リンクトレース1806dは、中間トレース1806cと外側トレース1806aとの間を延びる。内側リンクトレース1806eは、内側トレース1806bと中間トレース1806cとの間を延びる。外側リンクトレース1806dは、外側トレース1806a(及び外側電極1810)を中間トレース1806cから距離を置いて位置決めし、それに対して内側リンクトレース1806eは、内側トレース1806bを中間トレース1806cから距離を置いて位置決めする。外側リンクトレース1806dと内側リンクトレース1806eとは、一緒に刺激コイル1805に対してより広い全体フットプリント(図17の刺激コイル1705に対する)を与える。この設計は、哺乳動物被験体がラビットである場合にラビットの角膜がヒトのものよりも大きいことに基づいて拡大した角膜を受け入れるように特定的に寸法決めされる。
図19は、別の代替構成の蛇行刺激コイル1905(図17の刺激コイル1705と同じ方式で明瞭化の目的で絶縁層なく示す)を示している。蛇行コイル1905は、外側トレース1906aと、内側トレース1906bと、複数の中間トレース1906cと、複数の接続リンク1920(図16の接続リンク1620及び図17の接続リンク1720に類似)とを含む金属トレース構造体1906を含む。外側トレース1906aは、それに沿う点P1とP2の間に定められた(単なる例として)外側電極1910を含む。内側トレース1906bは、それに沿う点P3とP4の間に定められた(単なる例として)内側電極1912を含む。図17の蛇行刺激コイル1705からの主な相違点は、金属トレース構造体1906の形状及び構造体にある。特に、金属トレース構造体1906は、内側トレース1906bがほぼ円形の形状を有するように構成される。外側トレース1906aは、一連の湾曲接続リンク1917を通して接続した一連の肉厚ブロック要素1915と一連の肉薄ブロック要素1916とを含むように構成される。中間トレース1906cは、湾曲接続要素1917によって接続した一連の肉薄ブロック要素1916を含むように構成される。全体のトレース構造体1906内の各領域は、接続リンク1920を通して(図16のリンク1620及び図17のリンク1720と同じ方式)互いに結合される。図17及び図18の蛇行設計と同様に、この構造体は、蛇行刺激コイル1905が半径方向に迅速に膨張して眼の曲率に適合することを有利に可能にする。
図20及び図21は、図15及び図16の丸形刺激コイル、並びに図17~図19の蛇行刺激コイルを製造するための例示的製作方法を示している。
段階1:受動コイル製作
この例示的製作方法では、受動コイルの製作は、Siウェーハ上への基板として誘電材料障壁(例えば、パリレンC)の堆積及びフォトレジスト材料(犠牲層として)の堆積によって始まる(図20a)。金属導電層(例えば、1000nmの例示的厚みを有する金)がパリレン基板上にスパッタリングされる(図20b)。金層は、正のフォトレジストでパターン化され、金エッチング剤を用いてエッチングされて電極トレースが生じる(図20c)。全ウェーハの上に第2のパリレンC層が堆積される(図20d)。第2のパリレン層は、別のフォトレジストでパターン化され、O2プラズマによってエッチングされて電気接触のための窓が開けられる(図20e及び図20f)。その後に、窓開口部を生成するための第2のパリレン層上のフォトレジスト層は、エッチング後に完全に除去される(図20f)。第3のフォトレジスト層が同じく堆積及びパターン化されるが、第1のエッチングマスクよりも若干大きい。第3のエッチング段階は、2つのパリレン層を貫通してエッチングし、デバイスの外形を露出させる(図20g)。最後に、ウェーハをACETONE中に浸漬することによって下層構造体が剥離し、それによって開口部接触パッドを有するパリレン密封コイルが製作完了する(図20h)。
上述した製作段階は、図15~図16の大型円形刺激コイル、図17~図19の蛇行刺激コイル、図24~図26に関して下記で説明する小型円形刺激コイル(接続又は非接続に関わらず)、及び図30から図33に関して下記で説明するフレネルレンズ配置を含むがこれらに限定されない本発明の開示に示すコイル設計のうちのいずれかを製造するために使用することができる。基板(例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズなど)への付加を必要とするあらゆるコイルに関して、これらのコイルには、下記の段階2で説明するように金属トレースを基板材料に接着することを可能にするための接着性コーティングを装備しなければならない。
段階2:選択的接着性コーティング
基板(例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズ)に接着されるか又はその中に位置決めする必要があるあらゆるコイルに関して、図20の製作方法によって製造されるこれらのコイルは、基板とコイルの間の接続を確立するために接着性コーティングを追加しなければならない。単なる例として、接着性コーティングは、100nmの例示的厚みを有するチタン(Ti)とすることができる。接着性コーティングを追加するための例示的製作方法を図21に示している。コンタクトレンズは、市販のいずれかのレンズから入手するか又はポリヒドロキシエチルメタクリレート(ポリHEMA)ヒドロゲルを用いたモールド成形技術によって製作することができる。ポリHEMAは、良好な生体適合性、高い空気/水浸透性、及びヒト組織と類似の柔軟性を有する。従って、ポリHEMAは、コンタクトレンズに対して適正な材料である。
受動刺激コイルの電極はパリレンで覆われるので、パリレンとポリHEMA(コンタクトレンズ)とを結合するのに有効な接着材料を堆積させる段階が利用される。接着材料の特定のコーティング、すなわち、100nmの例示的厚みを有するチタン(Ti)が設けられる。この更に別の例示的製作方法では、製作されたパリレン密封受動コイル(段階1からの)が裏返しにされてSiウェーハ上に取り付けられる(図21a、図21b)。次いで、特定の区域上への接着材料の堆積をもたらすためのマスクとしてフォトレジストがコイル面上に被覆されてパターン化される(図21c)。次いで、接着材料が、ウェーハ全域の上に蒸着/噴霧被覆される(図21d)。フォトレジスト剥離剤中に浸潤することにより、受動コイルを接着材料と共にシリコンウェーハ及びフォトレジスト材料から剥離させることができる(図21e)。
製作の各段階に対する全ての任意的材料を表1に列記した。
段階3:圧縮可能/延伸可能電極パターン設計
ユークリッド幾何学の法則により、球面は折り畳み不能である。平面パターンから球面パターンへの面積不整合は不可避である。2次元(2D)の平坦なプラットフォーム上に製作された電極トレースには、3次元(3D)球面凹コンタクトレンズ上への転位過程中に皺又は亀裂のいずれかがもたらされることになる。皺になった電極は、着用するのに患者に対して不快感をもたらすことになり、亀裂した電極は、電気信号を切断してデバイスを無効にすることになる。この問題を解決するために、Siウェーハ(2Dプラットフォーム)上で共面圧縮可能電極配線が設計されて製作される。図18~図19は、図18の刺激コイル1805及び図19の刺激コイル1905内の下層金属トレース構造体の製造中に蛇行配線パターンを含む2つの設計を示している。図18の刺激コイル1805の金属トレース構造体1906は、外側トレース1806aと内側トレース1806bの両方(従って、外側電極1810及び内側電極1812)に対する蛇行配線パターンを含む。図19の刺激コイル1905の金属トレース構造体1906は、外側トレース1906a(従って、外側電極1910)に対する蛇行配線パターンと、内側トレース1906bに対する円形配線パターン(弧又は半径範囲として形成された内側電極1912をもたらす)とを含む。
刺激コイル1805及び1905の蛇行特徴は、それぞれの刺激コイルがコンタクトレンズの一部としてのものであるか又は眼の内部(例えば、結膜下領域内)に埋め込まれる時に眼の曲率に適合するように膨張及び収縮する高い機能を含む(しかし、これに限定されない)いくつかの利点をもたらす。蛇行特徴は、半径方向のトレース要素又はトレース領域(例えば、外側トレース1706a、1806a、1906a、内側トレース1706b、1806b、1906b、及び1706c、1806c、1906cのようないずれかの中間トレース)の間の半径方向接続リンク(図16の1620、図17の1720、図19の1920)の特徴を含む。これらの半径方向接続リンクは、刺激コイルの金属トレース構造体全体をまとめ合わせるだけではなく、更にそれぞれの半径方向トレース要素又は半径方向トレース領域の間の距離を延長又は短縮することによって延伸可能/圧縮可能な機能を有利に与える蛇行接続「ブリッジ」である。半径方向接続リンクは、絶縁材料(例えば、パリレンC)及び/又は導電材料(例えば、金)を含むがこれらに限定されないあらゆる適切な材料から構成することができる。いかなる場合にも、半径方向接続リンクは、関係する刺激コイル1805、1905の膨張可能/圧縮可能特性を増強し、これは、図22~図23に関して以下に図示して説明する球面コンタクトレンズ上にコイルを転位させる際に役立つ。2次元(2D)から3次元(3D)への蛇行刺激コイル1705、1805、1905のこの変形過程を下記で説明する。2D平面構造体を有する基板が3D球面構造体になる時には、コンタクトレンズの全面積及び外縁の辺長が低減されることになる。膨張性/圧縮性は、金属トレース構造体を下に重なる金属トレースのいずれかの皺及び/又は亀裂の発生を減少又は最小にするように凹面の形状を最適化するのに役立つものにする。
段階4:2D平面コイルから3D球面レンズへの変換
湾曲基板(例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズ、フレネルレンズ)上に配置する必要がある本発明の開示でのあらゆるコイルに対して、2Dの平坦なコイルを3D球面/湾曲レンズ上に転位させるために2つの手法を使用することができる。
戦略I
図22は、図17~図19に関して示して上述したものから選択した(単なる例として)蛇行刺激コイルを用いて示す第1の2Dから3Dへの戦略を示している。図22は、製作の主な段階を示している。PHEMAポリマーの延伸性及び圧縮性に起因して、3D球面凹PHEMAレンズを丸形平坦形状又は「太鼓皮」形状に形成された担体基板上に圧着することができる。レンズを保持するように特別に設計されたジグリングが、レンズを平坦な担体上に均一に絞着する。ジグリングによって与えられる半径方向張力が、球面レンズを外向きに膨張させる。レンズが丸形平坦形状に完全に変形され、レンズと担体基板の間の剪断力(摩擦)がレンズを現在の平坦形状に継続的に保持することになり、元の球面形状に戻らなくなると、ジグリングは取り外されることになる。この種の「太鼓皮」形状では、PHEMAレンズの全ての点は二軸張力下にある。レンズの全面積及び円周は、この過程中に増加することになる。膨張の程度及び根底を構成する力学的機構が、この張力の全体的な大きさを決定する。
接着剤(段階2からの)で事前被覆されたパリレン密封受動コイル(段階1からの)は、この引張平面「太鼓皮」形状レンズ上に直接移される。10mWの光強度の350nmUV光を用いた90秒のUV硬化過程が続き、コイルは、強力な特殊化学架橋結合効果によって弾性体の軟質面に取り付けられて剛的に取り付けられる。その後に、デバイス全体を脱イオン水中に沈めることにより、圧着条件の平面レンズが、初期のものであるが若干大きい曲率半径を有する球面形状に弛緩して戻ることになる。この剥離過程中に、蛇行接続線に作用する圧縮歪み力が、コイルの能動構成要素(開放窓区域)を近づけ、これは、コイルの円周が短くなることを意味する。幅狭薄い接続蛇行電極トレースは、弧形状を取るような共面変形によってこれらの歪みを受け入れることになる。この過程は、コイルの能動構成要素(開放窓区域)のうちのいかなるものにおいても実質的な歪みをもたらすことなく平面から球面への幾何学的変形をもたらすことを可能にする。コイルの変形は、事前に延伸されたレンズが元の形状に弛緩して戻る過程中に出現する。
戦略II
球面レンズに対して力を印加する代わりに、第2の「2Dから3D」戦略は、水の表面張力によって延伸可能コイルに対して半径方向力を均一に印加する。図23に示すように、PHEMAコンタクトレンズは裏返され、球面基板(ヒトの眼をシミュレートする14mmボールベアリング)上に取り付けられる。シャドーマスクによって選択的に被覆された後に、コイルは、水の面上に慎重に落とされる。その上にコンタクトレンズを有するボールベアリング基板全体が水中に沈められ、浮遊するコイルの真下に置かれる。ボールベアリング基板を水から持ち上げることにより、コイルとレンズとが互いに組み合わされる。水の表面張力は、電極トレースを半径方向に引っ張り(図22に記載の矢印)、2つの電極トレースの間の間隙が拡大し、それによって平面コイルを球面レンズ上に適応させる。持ち上げ過程中により確実な中心合わせ効果を求めるためには、コイルとレンズの間の位置合わせが必要になる。
戦略Iと同様に、蛇行接続ブリッジは、電極トレースの間の距離を長くして弧形状を取ることによって歪み力を受け入れる。球面形状を有するレンズ上で延伸したコイルは、次いで、接着剤を硬化させるためにUV光の下に露出される。10分間水中に沈めた後に、コイル埋め込みレンズ全体をボールベアリングから剥離させることができる。最後にレンズは、その凹側にコイルが取り付けられた条件で元の条件に裏返される。コイルの変形は、ボールベアリングを水から持ち上げる過程中に水の表面張力に起因して出現する。
図24及び図25は、本発明の開示の技術を実施するために結膜下領域内に埋め込まれた刺激コイル構造体2400を有するように構成された哺乳動物被験体の眼の前面図及び側面図それぞれを示している。結膜下刺激コイル構造体2400は、互いに物理的には結合されるが電気的には結合されない複数の小型円形刺激コイル2402を含む。下記で説明するように、各小型円形刺激コイル2402は、図24~図25の小型円形刺激コイル2400の方が実質的に小さいことを除いて図15~図16に関して図示して説明した大型円形刺激コイル1505と同じ基本構造体のものである。この接続配置(小型円形刺激コイル2402が物理的に接続された)は、全体の刺激コイル構造体2400を哺乳動物被験体の眼の結膜下領域内に手術で埋め込むことを可能にする。図15の大型円形刺激コイル1505の場合と同様に、各小型円形刺激コイル2400は、外側電極2410と内側電極2412を含む。
外側電極2410及び内側電極2412は、角膜輪部(虹彩と強膜との接合部に近い領域)の両側に配置される。外側電極2410及び内側電極2412は、1又は2以上の巻回を有するコイル構造体の一部を形成し、コイル構造体2400全体は、WPTコイル(上述したもの)から時変電磁場を受信し、この電磁場を刺激信号として各小型円形刺激コイル2402の外側電極2410及び内側電極2412を通して眼組織に送信するように設計される。各小型円形刺激コイル2402の外側電極2410及び内側電極2412が、角膜輪部の両側に沿って配置されるように結膜下刺激コイル構造体2400を配置することは、これらの電極を毛様体及びシュレム管に対して物理的近位に配置するという効果を有する。内側電極2412及び外側電極2410をこのようにして配置することにより、各刺激コイル2402は、本発明の開示の技術に従って眼内の高いIOPを低減するために房水流入の望ましい低減及び/又は房水流出の望ましい増加を達成するための刺激信号(時変電磁場)を眼構造体(毛様体及びシュレム管を含むが必ずしもこれらに限定されない)に送出するように有利に位置決めされる。図7の電流制御2相刺激信号は、それが位相を切り換えた時に各小型円形刺激コイル2402の外側電極2410と内側電極2412の間に流れる電流を逆流させる。それにより、眼内への均衡のとれたエネルギ流入が有利に提示され、一方、電流が単一方向に長期間にわたって連続して流れた場合に電気分解に起因して発生することになる電極を構成する金属トレースの早期劣化が防止される。
図24及び図25に一般的に提示する刺激コイル構造体2400は、図26に示すように、刺激コイル構造体2400と各小型円形刺激コイル2402とを設けることを含むがこれに限定されないあらゆる数の適切な形態を取ることができる。上述のように、各小型円形刺激コイル2402は、図15~図16の大型円形刺激コイル1505と類似の方式からなり、主な相違点は直径の相違点である。別の相違点は、単一構造体を形成するように接続構造体2430を通して小型円形刺激コイル2402が物理的に接続(「接続」とも言う)され、個々の小型円形刺激コイル2402が、接続構造体2430の周りにほぼ円形の周囲を形成する点である。接続構造体2430は、小型円形刺激コイル2402の各々への接続に向けてスポーク2434が延び出る中心リング2432を含む。下記で説明するように、複数の小型円形刺激コイルを結合することは、それにより、各小型円形刺激コイル2402の内側電極2412及び外側電極2410が角膜輪部の両側に配置されて本発明の開示の技術の緑内障治療をもたらすことを確実にするための配置(例えば、結膜下埋め込み)の整合性が与えられる点で有利である。
各小型円形刺激コイル2402は、手術による適正な配置(埋め込まれる場合)又は適正な向き(コンタクトレンズ内に位置決めされる場合)を確実にするために外側電極2410の場所を識別するのを助けるための矢印A(好ましくは、刺激コイル2402を形成する根本的な金属トレースと同じ材料から構成される)を更に含む。図16には、各小型円形刺激コイル2402の外側電極2410及び内側電極2412が、各電極2410、2410の全般的に共通する場所にある矢印を有するように示されている。図21に関して説明した製作工程中に絶縁層の領域を除去することによって外側トレース及び内側トレースがそれぞれ露出される程度に依存して電極2410と2412との長さ比が変化することが可能であることは認められるであろう。外側電極を識別することで、消去法過程により、ユーザ(外科医又は患者)が、内側電極2412が外側電極2410から180度の場所に位置することが既知である(少なくともこの基この実施形態では)ことを前提として内側電極2412の場所を推定することができることになる。小型円形刺激コイル2402を形成する金属トレースは、図16に関して上記に図示して説明した一連の接続リンク1620を用いて半径方向に互いに結合される。
図27及び図28は、本発明の開示の技術を実施するために水晶体(IOL)内に埋め込まれた刺激コイル対2700を有するように構成された哺乳動物被験体の眼の前面図及び側面図を示している。刺激コイル2700の対は、各々が図26に関して上述した単一小型円形刺激コイルを含む前刺激コイル2700aと後刺激コイル2700pとを含む。前刺激コイル2700aと後刺激コイル2700pとは互いに物理的に接続されなくてもよいが、前刺激コイル2700aの矢印Aが1つの方向に向き(例えば、その上で左に向く)、後刺激コイル2700pの矢印Aが反対方向に向く(例えば、下部で右に向く)ような並置配置で向けられる。この位置では、前刺激コイル2700aの外側電極2710は後刺激コイル2700pの内側電極2712に近いが、そこから半径方向に離間するように配置され、それに対して前刺激コイル2700aの内側電極2712は、後刺激コイル2700pの外側電極2710に近いが、そこから半径方向に離間するように配置される。このようにして、高いIOPの望ましい低減を達成するために当該の眼組織の周囲(例えば、角膜輪部)に沿って2つの電流フロー領域を提供する。図7の刺激パルスに基づく電流の2相性を例証するために、電流フローをいかなる端部にも矢印を有する円弧形の破線で表示している。
前刺激コイル2700a及び後刺激コイル2700pは、哺乳動物被験体の自己水晶体(IOL)内に手術によって埋め込む又は人工IOLの一部を編成することができる。手術によって自然IOL内に埋め込まれるように構成される場合に、前刺激コイル2700a及び後刺激コイル2700pをコイル構造体の態様に関して形状記憶特性を有するように(ニチノール形状記憶材料の使用等により)製造することができる。人工IOLとして構成される場合に、前刺激コイル2700a及び後刺激コイル2700pを水晶体として使用に適する基板内に位置決めすることができる。この例では、前刺激コイル2700a及び後刺激コイル2700pは、図20~図21に関して上述した接着性コーティングを含むことができ、湾曲又は球面である場合に、図22~図23に関して上述した2Dから3D技術を使用することができる。
これらの電極対(第1は、前刺激コイル2700aの外側電極2710と後刺激コイル2700pの内側電極2712とによって形成され、第2は前刺激コイル2700aの内側電極2712と後刺激コイル2700pの外側電極2710とによって形成される)は、角膜輪部(虹彩と強膜との接合部に近い領域)の両側に配置される。この配置されにより、得られる各電極対からの刺激信号が、ある一定の眼構造体(例えば、毛様体、シュレム管など)を活性化して前眼房からの房水流出を増加させ、更に、眼の前眼部内への房水流入の減少をもたらすほど十分に眼構造体内のイオンポンプを活性化することが可能になる。図7の電流制御2相刺激信号は、それが位相を切り換えた時に各小型円形刺激コイル2700a、2700pの外側電極2710と内側電極2712の間に流れる電流を逆流させる。それにより、眼内への均衡のとれたエネルギ流入が有利に提示され、一方、電流が単一方向に長期間にわたって連続して流れた場合に電気分解に起因して発生することになる、電極を構成する金属トレースの早期劣化が防止される。
図28は、本発明の開示の技術を実施するためにIOL刺激コイル対、すなわち、前刺激コイル2700aと後刺激コイル2700pとを有するように構成された哺乳動物の眼の関連解剖学的構造を示す図である。前刺激コイル2700a及び後刺激コイル2700pの各々に関して、内側電極2712は、強膜との境界の近くで虹彩の上に配置され、外側電極2710は、虹彩との境界の近くで強膜の上に配置される。これらの配置は、各小型円形刺激コイル270a、2700pの内側電極2712及び外側電極2710を角膜輪部の両側で毛様体及びシュレム管に対して物理的近位に配置するという効果を有する。内側電極2712及び外側電極2710をこのようにして配置することにより、並列に離間した前刺激コイル2700aと後刺激コイル2700pとによって形成された各電極対2700は、本発明の開示の技術に従って眼内の高いIOPを低減するために房水流入の望ましい低減及び/又は房水流出の望ましい増加を達成するための刺激信号(時変電磁場)を眼構造体(毛様体及びシュレム管を含むが必ずしもこれらに限定されない)に送出するように有利に位置決めされる。前刺激コイル2700a及び後刺激コイル2700pは、使用中に各刺激コイルの最も内側に位置する態様が、瞳孔を塞いで又は他に覆って視界を妨げることなく緑内障に対する望ましい治療効果を達成するのに十分深く瞳孔内に延びるように構成及び寸法決めされる。
図27及び図28に一般的に提示する前刺激コイル2700a及び後刺激コイル2700pは、図26に示すように各小型円形刺激コイルを設けることを含むがこれに限定されないあらゆる数の適切な形態を取ることができる。上述のように、図26の各小型円形刺激コイル2402は、図15~図16の大型丸形刺激コイルと類似の方式からなり、主な相違点は直径の相違点である。別の相違点は、手術による適正な配置(刺激コイル2700a、2700pの対の一部として埋め込まれる場合)又は適正な向き(人工IOL内に配置される場合)を確実にするために外側電極2710の場所を識別するのを助けるための矢印A(好ましくは、根本的な金属トレースと同じ材料から構成される)の包含である。外側電極を識別することで、消去法過程により、ユーザ(外科医又は患者)は、内側電極2712が外側電極2710から180度の場所に位置することが既知である(少なくともこの基本的実施形態では)ことを前提として内側電極2712の場所を推定することができることになる。小型円形刺激コイル2700a、2700pを形成する金属トレースは、図16に関して上記に図示して説明した一連の接続リンク1620を用いて半径方向に互いに結合される。
図29及び図30は、本発明の開示の技術による視力矯正を実施するためにフレネルレンズ2900を有するように構成された哺乳動物被験体の眼の前面図及び側面図をそれぞれ示している。下記で説明するように、フレネルレンズ2900は、本発明の開示の範囲から逸脱することなく単体又は本明細書に開示する緑内障治療技術との組合せで使用することができる。フレネルレンズ2900は、視力矯正を達成するために入射光線を網膜上にフォーカスさせるように構成される。一般的に、視力矯正には眼鏡及びコンタクトレンズという2つの方法がある。眼鏡は、視力を矯正するための最も一般的な従来の方法であるが、嵩高なサイズ、重い重量、及び持ち運びの不便さ(特にスポーツでは)に起因して、人々は眼鏡の代わりにコンタクトレンズを使用することを好む。眼鏡と比較して、コンタクトレンズは、持ち運びのし易さ、軽量であること、及び使用するのが非常に便利であることのような多くの利点を明らかにしているが、コンタクトレンズ着用者には眼球乾燥症候群が発生する可能性があり、現時点では限られた治療オプションしか存在しない。
フレネルレンズ2900は、本明細書に開示するようにコンタクトレンズの一部及び/又は人工水晶体(IOL)の一部としてあらゆる数の適切な区域(例えば、眼の外部及び/又は眼の内部)への手術による埋め込みを含むが必ずしもこれらに限定されないあらゆる数の適切な方式に使用することができる。埋込可能眼内フレネルレンズ2900の直径は、様々な患者に対するサイズ要件を満たすために2mmから4mm前後の範囲にあるとすることができる。一態様では、フレネルレンズ2900は、図30に示すように瞳孔の中心区域のみの上に寸法決めされる。比較として、標準のコンタクトレンズは、14~16mmの平均直径を有する。サイズの有意な低減(2~mm対14~16mm)に起因して、提案するフレネルレンズ2900は、眼の小さい区域しか覆わず、従って、眼球乾燥症候群を排除しないにしても最小にすることになる。更に、フレネルレンズ2900は超肉薄(厚みが1μm~2μm前後の範囲にわたる)のものであり、それによってより多くの水及び酸素が眼に容易に浸透することが可能になる。
フレネルレンズ2900は、眼のあらゆる適切な構造又は場所内又は上に埋め込むことができる。一態様では、フレネルレンズ2900は、周囲角膜上に埋め込むことができ、従って、実際の眼に対する損傷を引き起こさない。フレネルレンズ2900を製作するための主基板として完全生体適合性の可撓性材料が使用される。任意的な材料を図32に関して下記で説明する製作の節にある表に列記した。フレネルレンズ2900は、使用中の眼への水及び酸素の透過を容易にするための複数の微小な孔又は穴(単なる例として1μm径)の追加を含むがこれに限定されないあらゆる数の追加の特徴を含むことができる。
機構
フレネルレンズ2900を通った光線は収束し、屈折に起因して特定の点上にフォーカスされる。このフォーカスは、交替する不透明ゾーン(黒塗り)と透明ゾーン(白色)とを使用する図31aに示すものを含むがこれに限定されないあらゆる数の適切な方式で達成することができる。レンズの焦点距離fは、ゾーン番号n(n=1,2,...)、ゾーン半径rn、及び光の波長λに関連する。焦点距離は、f=r(n)^2/nλという式によって表すことができる。ヒト被験体の状況に限ると(単なる例として)、光入射方向のヒトの眼の平均直径は22mmに固定される。フレネルレンズ2900のパターンは、光線の波長によって判断されることになる。一般的に、可視光の波長は380nmから700nmまで変化する。様々な波長の光は、複数のフォーカスをもたらすことになる。全ての色を原色である青色(475nm)、緑色(510nm)、及び赤色(700nm)によって生成することができることに着目して、この色収差問題を解決するための2つの戦略を案出した。
図31bに示すように、戦略1(いわゆる「3セグメント」手法)は、緑色セグメント2902、青色セグメント2904、及び赤色セグメント2906と表示している各色に対する特定のパターンでディスク区域全域を三分割する。各1次光の三分の一(1/3)(各セグメント2902、2904、2906を通した)は、22mmの焦点距離で網膜上にフォーカスされることになる。各色に対する像鮮明度及び解像度が改善されることになる。戦略I(「3セグメント手法」)と同様に、戦略2(いわゆる「3同心リング」手法)は、三原色を用いた全てのフレネルレンズパターンを同じ中心を有するが異なる場所又はゾーンの場所で互いに組み合わせる。均一な光分布を達成するために、これらの様々な場所又はゾーンは、活性的な青色光、緑色光、及び赤色光が、青色光セクション2922、緑色光セクション2924、及び赤色光セクション2926として表される11%、38%、及び51%の有効面積を有するような埋込可能フレネルレンズを設ける段階(であるがこれに限定されない)のような各原色に関する特性を変化させる段階を伴う。
製作工程
フレネルレンズ2900は、図32に示す製作方法を含むがこれに限定されないあらゆる適切な方式で製作することができる。一態様では、フレネルレンズ2900は、パリレンをポリマー基板として用い、金を遮光材料として用いて製作することができるが、フレネルレンズ2900を製作するのに複数の任意的な材料を利用可能にすることができることは認められるであろう。フレネルレンズ2900の製作は、Siウェーハ上へのパリレンC(基板として)及びフォトレジスト(犠牲層として)の堆積によって始まる(図32a)。パリレン基板上に2つの超肉薄金属層Ti(5nm)/金(50nm)がスパッタリングされる(図32b)。金層及びTi層は、正のフォトレジストを用いてパターン化され、金エッチング剤及びフッ化水素酸それぞれによってエッチングされて不透明トレースが生成される(図32c、図32d)。この時点で、全ウェーハの上に第2のパリレンC層を堆積させることができる(図32e)。次いで、別のフォトレジスト層を堆積させ、アスタリスク又は他の形状でパターン化し、最終基板パターンを生成することができる。第3のエッチング段階は、2つのパリレン層を通してエッチングし、デバイスの外形を露出させることになる(図32f)。最後に、ウェーハをACETONE中に浸漬することによってデバイスを剥離させることができ、それによってポリマー系バイナリフレネルレンズ2900ができ上がる(図32g)。
製作工程に使用される材料は、パリレン、金、フォトレジストなどを含むがこれらに限定されない。下記の表内の全ての任意的材料は、完全な生体適合性、可撓性、酸素及び空気の浸透性の目的に対して有効性を示している。
眼適合のための基板パターン
フレネルレンズ2900は、平坦な2D構造体に基づいて製作されるので、2次元(2D)面から湾曲した3次元(3D)球面に設計を転位させる過程中に面積不整合が発生する可能性が存在する。この可能性は、小さいサイズ(2mm~4mmの例示的直径)に起因して全面的に排除されることはないにしても最小にされ、それにより、本発明の開示のフレネルレンズ2900の最適な湾曲適合サイズが有利に可能になる。フレネルレンズ2900には、いずれかの不整合問題を更に低減又は軽減するためにあらゆる数の追加の特徴を与えることができる。そのような特徴は、図33a~図33cに示すように、フレネルレンズ2900に基板保持層に対するアスタリスクパターンを設けることを含むが必ずしもこれに限定されない。アスタリスクパターンの形状は、2Dから3Dに変換する工程中の歪み張力を低減し、従って、眼とのより的確な適合をもたらす。製作されたポリマー系バイナリフレネルレンズ2900を図33dに示す(コンタクトレンズ収納器内に)。
フレネルレンズ2900は、あらゆる適切な緑内障治療のシステム又は技術とは別々に(専ら視力矯正に向けて)又はこれらのシステム又は技術との組合せで使用することができる。これらのシステム又は技術は、本明細書に示すもの、例えば、図13~図19に関して説明したもののような大径刺激コイル(結膜下領域内に埋め込まれたもの又はコンタクトレンズの一部としてのもののいずれであるかに関わらず)、図24~図28に関して説明したもののような小径刺激コイル(コンタクトレンズの一部、結膜下領域内に埋め込まれたもの(図24~図26を参照されたい)、又は水晶体内(自然IOL内又は人工IOLの一部内、図27~図28を参照されたい)に埋め込まれたもののいずれであるかに関わらず)を含むが必ずしもこれらに限定されない。緑内障治療システム及び本発明の開示の技術を使用するか又は使用しないフレネルレンズ2900を血糖レベルを感知するための又はいずれかの他の望ましい眼の機能又は治療を実施するための眼内インプラントを含むがこれらに限定されない様々な眼内インプラントのうちのいずれかと併用することができることも認められるであろう。
図34及び図35は、本発明の開示の技術を実施するために刺激コイル3450が装備されたフレネルレンズ3400及びコンタクトレンズ3440を有するように構成された哺乳動物被験体の眼の前面図及び側面図をそれぞれ示している。刺激コイル3450は、図13~図23に関して本明細書に説明した大径刺激コイルを含むがこれに限定されないあらゆる適切な刺激コイルとすることができ、下に重なるコンタクトレンズ3440は、あらゆる適切な構造、形状、及びサイズとすることができる。フレネルレンズ3400は、コンタクトレンズ3440の一部とするか又はコンタクトレンズ3440とは別々に(例えば、角膜上、結膜下領域内、IOL内など)埋め込むことができる。
フレネルレンズ3400は、大型刺激コイル3450の外周上の電極3452と協働する外周に沿って配置された電極3402を含む。フレネルレンズ3400の電極3402と刺激コイル3450の電極3452は、フレネルレンズ3400の電極3402が瞳孔に近いが半径方向にその外側に位置し、それに対して大型刺激コイル3450の電極3452が虹彩に近いが半径方向にその外側に位置するように半径方向に互いに離間している。このようにして、フレネルレンズ3400の電極3402と大型刺激コイル3450の間の電流フローは、前眼房からの房水流出を増加させるためにある一定の眼構造体(例えば、毛様体、シュレム管など)を活性化し、更に、眼の前眼部内への房水流入の減少をもたらすほど十分なターゲット眼構造体内のイオンポンプを活性化することになる。図7の電流制御2相刺激信号は、それが位相を切り換えた時にフレネルレンズ3402の電極3402と大型刺激コイル3450の電極3452の間に流れる電流を逆流させる。それにより、眼内への均衡のとれたエネルギ流入が有利に提示され、一方、電流が単一方向に長期間にわたって連続して流れた場合に電気分解に起因して発生することになる電極を構成する金属トレースの早期劣化が防止される。
図36は、本発明の開示の技術に従って視力矯正のためのフレネルレンズ3600を有し、緑内障治療のための蛇行刺激コイル3660を有するように構成された哺乳動物被験体の眼の前面図を示している。刺激コイル3660は、単なる例として図17~図19に関して図示して説明したタイプのものであるが、図15に関して図示して説明した大型丸形刺激コイル1505のようないずれかの他の大径刺激コイルを含むことができる。刺激コイル3660の構成及び作動は、蛇行刺激コイル1605、1705、及び1805と同様であり、一部の事例では同一である場合があり、従って、本節で全ての詳細を繰り返さなくてもよいように、これらに関する説明は、これにより本発明の開示の本節に組み込まれる。フレネルレンズ3600は、蛇行刺激コイル3660と同じ構造体の一部であるか又は別々の構造体を構成することができる。同じ構造体の一部の場合に、フレネルレンズ3600と蛇行刺激コイル3660との組合せ(互いに電気接続されるわけではないが)がコンタクトレンズの一部を構成するか又はこの組合せを眼の結膜下領域内に単一構造体として埋め込むことができる。別々の構造体の場合に、フレネルレンズ3600を適切な基板(例えば、人工水晶体(IOL)、コンタクトレンズなど)上又は内に形成するか又は蛇行刺激コイル3660とは別々に埋め込むことができ(例えば、自然IOL、結膜下領域内など)、同時に蛇行刺激コイル3660を適切な基板(例えば、コンタクトレンズなど)上又は内に形成するか又はフレネルレンズ3600とは別々に埋め込むことができる(例えば、結膜下領域内など)。この実施形態では、フレネルレンズ3600は、専ら視力矯正に向けて使用され、本発明の開示の技術による緑内障治療には関与しない。
一実施形態では、蛇行刺激コイル3600は、ほぼ蛇行方式で配置された複数の巻回に形成され、蛇行外側電極3610と蛇行内側電極3612とを有する単一金属トレースを含む。外側電極3610及び内側電極3612は、それぞれ蛇行刺激コイル3600の最も外側の巻回及び最も内側の巻回である。蛇行外側電極3610は、複数の外側のピークOPと外側の谷OVとを含む。蛇行外側電極3610の外側のピークOPは、角膜輪部の近くであるがそこから半径方向に外向きの場所に配置され、それに対して外側の谷OVは、角膜輪部に近いか又はその若干外側の場所に配置される。蛇行内側電極3612は、複数の内側のピークIPと内側の谷IVを含む。蛇行内側電極3612の内側のピークIPは、角膜輪部の近くであるが半径方向に内向きの場所に配置され、それに対して内側の谷IVは、角膜輪部に近いか又はその若干外側の場所に配置される。
代替実施形態では、刺激コイル3600は、絶縁層(図21に関して上述)がトレースに沿って露出区域を生成して刺激コイル300上のあらゆる数の異なる場所に外側電極3610と内側電極3612とを定めるように構成することができる。例えば、下に重なる金属トレースには、外側電極3610の全長、内側電極3612の全長に沿った領域、外側電極3610の長さに沿った単独の場所(例えば、外側のピークOP及び/又は外側の谷OVに沿った単独点)、内側電極3612の長さに沿った単独の場所(例えば、内側のピークIP及び/又は内側の谷IVに沿った単独点)、内側電極3612の長さに沿った(例えば、内側のピークIP及び/又は内側の谷IVの一部又は全てでの)複数点及び/又は内側電極3612の長さに沿った(例えば、内側のピークIP及び/又は内側の谷IVの一部又は全てでの)複数点、及び/又は外側電極3610の長さに沿った(例えば、外側のピークOP及び/又は外側の谷OVの一部又は全てでの)複数点を含むがこれらに限定されない刺激コイル3600の外周及び内周に沿うそれぞれの外側領域及び内側領域に沿って外側電極3610及び内側電極3612を単独電極又は集合電極として定めるための露出領域を装備することができる。
この方式から構成されると、刺激コイル3600の内側電極3612及び外側電極3610に沿ったこれらの導電性の区間及び/又は点は、使用時に角膜輪部の両側に配置され、この配置は、これらの導電性の区間及び/又は点を毛様体及びシュレム管に対して物理的近位に配置するという効果を有する。そうすることで、刺激コイル3600は、本発明の開示の技術に従って眼内の高いIOPを低減するために房水流入の望ましい低減及び/又は房水流出の望ましい増加を達成するための刺激信号(時変電磁場)を眼構造体(毛様体及びシュレム管を含むが必ずしもこれらに限定されない)に送出するように有利に位置決めされる。図7の電流制御2相刺激信号は、それが位相を切り換えた時に刺激コイル3600の外側電極3610に沿った電気区間及び/又は電気点と内側電極3612に沿った電気区間及び/又は電気点の間に流れる電流を逆流させる。それにより、眼内への均衡のとれたエネルギ流入が有利に提示され、一方、電流が単一方向に長期間にわたって連続して流れた場合に電気分解に起因して発生することになる電極を含む金属トレースの早期劣化が防止される。
図37は、本発明の開示の技術を実施するためにフレネルレンズ3700と大径刺激コイル3760とを有するように構成された哺乳動物被験体の眼の前面図を示している。この実施形態では、フレネルレンズ3700は、本発明の技術に従って視力矯正を支援するのに加えて緑内障治療に積極的に関与する。フレネルレンズ3700と刺激コイル3760は、ワイヤ3765を通して互いに電気接続される。物理的及び電気的な接続に基づいて、フレネルレンズ3700と刺激コイル3760は、基板の一部として含める(例えば、コンタクトレンズ上又は内など)又はいかなる基板とも別々に設ける(例えば、結膜下埋め込みなど)ことができる単一構造体として形成される。
刺激コイル3760は、単なる例として図15~図16に関して図示して説明したタイプのものであるが、図17~図19に関して図示して説明した(更に上記で図36に関して組合せで説明した)蛇行刺激コイルのようないずれかの他の大径刺激コイルを含むことができる。上述のように、円形刺激コイル3660は、本明細書に説明する治療効果を達成するのに使用時に角膜輪部の両側に配置される2又は3以上の電極を含むことができる。例えば、図17~図19に示すように、刺激コイル3760には、単一外側電極3710と、刺激コイル3760の反対側に配置された単一内側電極3712とを設けることができる(それによって図13及び図14に示すものと類似の電流フローが供給される)。円形刺激コイル3760は、外側電極3710と内側電極3712が刺激コイル3760の同じ側及び場所に沿って互いに半径方向の離間関係にあるように配置されるようなものを含む他の配置で設けることができる。このようにして、得られる電流フローは、眼の解剖学的構造の当該領域(例えば、全体の角膜輪部のうちの一点又は一領域)に密に集中することになる。同様に、円形刺激コイル3760には、複数の外側電極3710と複数の内側電極3712とを設け、刺激コイル3760の周囲周りの複数の場所に位置決めされて半径方向に離間した内側電極と外側電極との複数の対を形成することも考えられている。このようにして、眼の解剖学的構造に沿って集中電流フローの複数の領域及び場所(例えば、角膜輪部に沿う複数の点)が存在することになる。
この方式から構成されると、刺激コイル3760の内側電極3712及び外側電極3710に沿ったこれらの導電性の区間及び/又は点は、使用時に角膜輪部の両側に配置され、この配置は、これらの導電性の区間及び/又は点を毛様体及びシュレム管に対して物理的近位に配置するという効果を有する。そうすることで、刺激コイル3760は、本発明の開示の技術に従って眼内の高いIOPを低減するために房水流入の望ましい低減及び/又は房水流出の望ましい増加を達成するための刺激信号(時変電磁場)を眼構造体(毛様体及びシュレム管を含むが必ずしもこれらに限定されない)に送出するように有利に位置決めされる。図7の電流制御2相刺激信号は、それが位相を切り換えた時に刺激コイル3760の外側電極3710に沿った電気区間及び/又は電気点と内側電極3712に沿った電気区間及び/又は電気点の間に流れる電流を逆流させる。それにより、眼内への均衡のとれたエネルギ流入が有利に提示され、一方、電流が単一方向に長期間にわたって連続して流れた場合に電気分解に起因して発生することになる電極を含む金属トレースの早期劣化が防止される。
図38~図39は、本発明の開示の技術を実施するために水晶体(IOL)内に埋め込まれたフレネルレンズ3800と結膜下領域内に埋め込まれた刺激コイル構造体3860とを有するように構成された哺乳動物被験体の前面図及び側面図をそれぞれ示している。フレネルレンズ3800は、図29~図33(本節で完全な解説を繰り返さなくてもよいように、これらの図の内容はこれにより本節に組み込まれる)に関して上述したフレネルレンズ2900を含むがこれに限定されないあらゆる適切なフレネルレンズとすることができる。刺激コイル構造体3860は、図24~図26(本節で完全な解説を繰り返さなくてもよいように、これらの図の内容はこれにより本節に組み込まれる)に関して本明細書に説明した刺激コイル構造体を含むがこれに限定されないあらゆる適切な刺激コイルとすることができる。使用時に、フレネルレンズ3800は、本発明の開示の技術に従って専ら視力矯正に向けて使用され、それに対して刺激コイル3860は、本発明の開示の技術に従って専ら緑内障治療に向けて使用される。刺激コイル3860は、外側電極3862と内側電極3864を含み、これらの電極は、使用時に角膜輪部の周りに位置決めされて本発明の開示の無線緑内障治療技術を達成する。
水晶体(IOL)内に埋め込まれるように示されているが、フレネルレンズ3800は、眼の他の領域内(例えば、角膜面上、瞳孔上に配置される場合に限っては結膜下領域内)に埋め込むことができることは認められるであろう。図39では別々に示されているが(従って、別々に埋め込まれている)、フレネルレンズ3800は、刺激コイル構造体の一部として形成することができ、それによってこの組合せ構造体を眼に使用するための基板(例えば、コンタクトレンズ)上又は内に位置決めするか又は単一構造体として埋め込む(例えば、眼の結膜下領域内に)ことができることは認められるであろう。提案するこれらの実施形態の各々において、フレネルレンズ3800と刺激コイル3860の組合せは、本発明の開示を通して描かれて説明するフレネルレンズ3800の視力矯正機能と刺激コイル3860の緑内障治療機能とを有利に組み合わせるものである。
図40~図41は、本発明の開示の技術を実施するために水晶体(IOL)内に埋め込まれたフレネルレンズ4000と1対の眼内刺激コイル4060(すなわち、前刺激コイル4060a及び後刺激コイル4060b)とを有するように構成された哺乳動物被験体の眼の前面図及び側面図をそれぞれ示している。フレネルレンズ4000は、図29~図33(本節で完全な解説を繰り返さなくてもよいように、これらの図の内容はこれにより本節に組み込まれる)に関して上述したフレネルレンズ2900を含むがこれに限定されないあらゆる適切なフレネルレンズとすることができる。刺激コイル構造体4060は、図27~図28(本節で完全な解説を繰り返さなくてもよいように、これらの図の内容はこれにより本節に組み込まれる)に関して本明細書に説明した刺激コイル構造体を含むがこれに限定されないあらゆる適切な刺激コイルとすることができる。使用時に、フレネルレンズ4000は、本発明の開示の技術に従って専ら視力矯正に向けて使用され、それに対して刺激コイル4060a、4060pは、本発明の開示の技術に従って専ら緑内障治療に向けて使用される。
図41に示すように、フレネルレンズ4000及び刺激コイル対(すなわち、前刺激コイル4060a及び後刺激コイル4060p)は、哺乳動物被験体の眼内の水晶体(IOL)内に埋め込まれる。フレネルレンズ4000は、前刺激コイル4060a及び後刺激コイル4060pのうちの一方又は両方とは別々の構造体として又は同じ構造体の一部として構成することができる。いかなる場合にも、フレネルレンズ4000は、前刺激コイル4060aの円形の穴内に配置される(例えば、前刺激コイル4060a及び後刺激コイル4060pと同じである図26の小型円形刺激コイル2402によって定められた開口部を参照されたい)。フレネルレンズ4000は、網膜上への入射光のフォーカスを容易にするために瞳孔の大部分を費やすように寸法決めされる。前刺激コイル4060a及び後刺激コイル4060pは、使用中に各刺激コイルの最も内側に位置する態様が瞳孔を塞いで又は他に覆って視界を妨げることなく緑内障に対する望ましい治療効果を達成するのに十分深く瞳孔内に延びるように構成及び寸法決めされる。フレネルレンズ4000は、ほぼ平面及び/又は曲面を含むがこれらに限定されないあらゆる適切な形状及び構成とすることができる。
前刺激コイル4060aと後刺激コイル4060pは、互いに物理的に接続されなくてもよいが、前刺激コイル4060aの矢印Aが1つの方向に向き(例えば、その上で左に向く)、後刺激コイル2700pの矢印Aが反対方向に向く(例えば、下部で右に向く)ような並置配置で向けられる。この位置では、前後の刺激コイル4060a、4060pの外側電極は、それぞれの内側電極に近いがそこから半径方向に離間するように配置され、それに対して前後の刺激コイル4060a、4060pの内側電極は、それぞれの外側電極に近いがそこから半径方向に離間するように配置される。このようにして、高いIOPの望ましい低減を達成するために当該の眼組織の周囲(例えば、角膜輪部)に沿って2つの電流フロー領域を提供する。
両方が水晶体(IOL)内に埋め込まれる場合を示すが、フレネルレンズ400(刺激コイル4060a、4060pとは別々の構造体の場合)は、眼の他の領域内(例えば、角膜面上、瞳孔の上に配置される場合に限っては結膜下領域内)に埋め込むことができることは認められるであろう。フレネルレンズ4000と刺激コイル4060a、4060pは、自然IOL内に直接埋め込むことができる(人工IOLインプラントを形成するために下に重なる基板に付加される又はされずに)組合せ構造体として形成することができることも認められるであろう。最後に、フレネルレンズ4000及び刺激コイル4060a、4060p(単一構造体又は組合せ構造体のいずれであるかに関わらず)を基板に付加して自然IOL又はその代替物内への埋め込みのための人工IOLを形成することができる。
様々な刺激コイル(フレネルレンズを含む)は、従来技術に優る有意な進歩を示し、本明細書に開示するシステム及び技術に従って緑内障治療及び視力矯正に大改革を起こす機能と潜在力を有する。これらのシステム及び技術は、望ましい治療効果(すなわち、高いレベルよりも下で、好ましくは標準IOPレベルの範囲へのIOPの低減)を達成するために眼に接するか又は近い(例えば、コンタクトレンズを通して)場所、及び/又は眼の内部(例えば、結膜下、IOL)、並びにターゲット眼構造体又はそれに近い場所を含む広範な身体場所内で刺激コイルを使用する機能を含むがこれに限定されない多くの利点を提示するものである。様々なコイルをターゲット眼構造体の近くに埋め込む機能は、コイルが受動的であり、従って、小さい物理的プロファイルで製造することができるという事実に関連している。
無線圧力感知
図42A~図42Bは、(A)IOPモニタシステムと(B)読み出しASICとアンテナと給電コイルとを含む読み出し全体システムインプラントとを含む無線緑内障治療システムの一部としての哺乳動物被験体内の眼内の眼内圧(IOP)を測定するための無線圧力感知システムの図である。
図42Bは、圧力センサと読み出しICと給電コイルとアンテナとを含むマイクロシステムインプラントの概念図である。IOPを測定するための圧力センサの使用は、ヒト及び動物(例えば、齧歯動物)を含むあらゆる哺乳動物に対して使用することができる。
不断の圧力感知モニタの設計はいくつかの設計課題を提示し、サイズの制約条件及び電力消費量が最も重要なものである。図42A-Bに示すように、小さい埋め込み場所に起因して、エネルギ採取のための受信コイルの直径及び厚みは、それぞれ好ましくは2.6mm及び100μmよりも大きくあるべきではない。この面積制限は、WPTのエネルギ効率を制限し、従って、チップの瞬時電力消費量を制限する。インプラントに対するサイズ制約条件も、圧力センサと読取ICとの組合せ寸法を750μm×750μm×300μmに制限する。表1は、圧力感知マイクロシステムに関するサイズ仕様を示している。
ヒトでの圧力感知用途では、最先端の市販の容量性圧力センサ(E1.3N、microFAB Bremen)が多くの場合に使用されるが、その大きいサイズに起因して動物の研究では使用することができない。圧電抵抗圧力センサの製造技術での邁進は、マイクロスケールのセンサ(700μm×100μm×50μm)をもたらし、従って、このセンサをこの用途に対する理想的な候補にしている。その小さいサイズ以外にも、圧電抵抗圧力センサは、容量性センサよりも良好な線形性を提供する。
本発明の開示は、圧電抵抗差動圧力センサと、完全無線CMOS読取ASICと、データ送信のためのループアンテナと、受信機給電コイルとを含むサブ立方ミリメートル(サブmm3)サイズの連続圧力モニタマイクロシステムを与える。読取ASICは高集積のものであり、圧力印加に関連付けられた差動抵抗変化を感知し、抵抗/デジタル(R-D)変換を提供する。チップは、生の感知データを無線で送信するための2.45GHzISM帯域能動送信機(TX)を更に含む。システムはバッテリを持たず、それによってインプラントの寿命を延ばし、700MHzで空洞共振器を励振させることによって無線受電する。
システムに対する主要な目標は、所与のサイズ制限内でいかなる外部構成要素も用いずに高集積システムオンチップ(SoC)を設計することによって必要な全ての機能をインプラントに与えることである。オンチップ1次較正、データ処理、能動送信、及び信号調整のような特徴を有することにより、常駐的な隣接の外部デバイスがこれらのタスクを実施する必要が取り除かれ、これは、自由に動き回る動物に対して実験が行われるシナリオでは不可欠である。数十センチメートル距離を置いて保たれるスマート電話のような簡易的な基地局は、実時間で圧力を復調して表示するのに必要な全てである。
図43は、本発明の開示の技術を実施するための無線IOP感知システムオンチップ(SoC)のブロック図である。図示の無線IOP感知SoCは、エネルギ採取(EH)及びパワーマネージメント、抵抗/周波数コンバータ(R-F)フロントエンド回路、最終的に抵抗/デジタル(R-D)変換を提供するデジタルコア、及び2.45GHzISM帯域TXである4つの主要ブロックを含む。同じくこの図には、R
S1の抵抗を上げ、R
S2の抵抗を同じ量ΔRSだけ下げる(R
S2>R
S1に対して)ことによって印加圧力Pを感知する2つの抵抗要素R
S1及びR
S2からなる3端子差動圧電抵抗圧力センサが示されている。差動抵抗R
DIFFの変化は次式によって与えられる。
式中の2ΔRSは、印加圧力Pに関連付けられた差動感知抵抗変化である。両方の要素の抵抗は、温度に伴って増大し、従って、差動測定では温度変動が相殺される。R-Fフロントエンド回路は、変化2ΔRSを測定し、従って、印加圧力を測定する。
齧歯動物のためのWPTでは、共振空洞を励振させるために700MHzのRFエネルギが利用される。高い周波数値の使用は、インプラントが、非常に小さい2ターン受信コイル(100μm厚及び2.6mm径)とオンチップ適応的整合ネットワークとを用いてエネルギを採取することを可能にする。SoCのEHセクションは、図41で見ることができるように整合ネットワークに対して2つのコンデンサーを利用する。コイルの不整合及び他のファクタに起因する電力伝達効率(PTE)の降下は、整合ネットワーク内のコンデンサーバンクを自動的に調整することによって様々な作動条件の下でPTEを最大にする効率追跡ループによって対処される。更に、サブ1Vバンドギャップ基準(BGR)回路は、R-Fフロントエンド回路に対して擬似差動基準電圧と同相電圧とを与えるように設計される。更に、BGRは、チップ全体に対するバイアス電流を発生させる。較正目的で、センサ抵抗に近い値を有する2つのオンチップn+拡散ベース抵抗(RB1及びRB2)を実施した。
バイナリカウンタベースのデジタルコア論理部が、周波数/デジタル変換を提供し、無線送信に関してデータをパケット化する。最終的にデータパケットが、オン-オフキー(OOK)変調ISM帯域TXによって2.45GHzにおいて送信される。TXは、2.45GHzISM帯域で搬送波周波数を発生させるLC共振回路を利用する電圧制御式電力発振器(VCPO)から構成される。TXに関してオフチップループアンテナ(2.4mm径)が使用され、このアンテナは、LC共振器のための高Q誘導要素Lとしても機能し、それによってTXとアンテナとの間で整合ネットワークを排除することで電力消費量と全体サイズの両方が最小にされる。能動TXの使用は、後方散乱ベースの受動送信機に関連付けられた「自己ジャミング」問題も排除する。
図44は、エネルギ採取(EH)及びパワーマネージメントサブシステムのブロック図である。本研究では、WPTは、高いPTEと、インプラントに大きい電力量を送出する機能とに起因して空洞共振ベースの近距離場法を利用する。空洞は、700MHzのRF発振源によって励振される。オンチップ4段整流器は、受信コイル上に誘起された電圧を増倍することによってAC-DC変換を提供する。整流器を実施するのに、<200mVの順電圧降下を有する高効率低漏損ショットキーダイオードが使用される。整流器の出力での未整流電圧VRECTが、パワーマネージメント回路の残余に対する供給電圧として機能する。デバイスが埋め込まれるとコイルの向きは固定条件に留まるが、VRECTを追跡してオンチップ整合ネットワーク内のコンデンサーバンクを調整する超低電力エネルギ効率ループが使用される。
図45は、SoCチップに対する擬似差動基準電圧及びバイアス電流を発生させるためのバンドギャップ基準の概略図である。この図は、R-F回路に対する擬似差動電圧とチップ全体に対する基準電圧及び100nAバイアス電流とを発生させるサブ1V及びサブ1μWのBGRを示している。BGRは、100mVから700mVまでに100mV刻みで合計7つの正確な基準電圧を発生させる。3つの基準電圧(VR7=700mV、VR6=600mV、及びVR5=500mV)を用い、更にVR6を同相電圧として使用することによって100mVの擬似差動電圧を確実にする。R-F回路(セクション4.5)によって正確な100mVの電圧の差値(すなわち、(VR7-VR6)及び(VR6-VR5))が与えられる。BGRに関する出力基準電圧は次式によって与えられる。
式中のNは、出力抵抗器ラダー回路での1から7であり、V
R,Convは、1.25Vの従来のバンドギャップ電圧である。上式に示すように、処理変化の存在下での正確な100mV刻みの複数の基準電圧の発生は、BGR回路内の抵抗器の間に複数の整合度を必要とする。このタスクをもたらすために、最初にR6を「共通モード」抵抗器として扱うことによって抵抗器R5、R6、及びR7を互いに整合させる。次いで、(R5+R6+R7)の組合せを抵抗器R1、R2、R3及びR4と整合させる。最後に、BGR内の全ての抵抗器RX、RZ及び(RO=R1+...+R7)を互いに整合させる。整合は、共通重心と対称レイアウトの技術を利用することによって達成される。BGR回路内の全ての抵抗器を実施するのに密であるが良好に整合されたポリ抵抗器を用いた。電源投入時リセット(POR)回路が、始動時にPMOS電流ソース(M1~M4)のゲートをプルダウンする。その結果、PMOS電流ソースは、始動中に有限量の電流をBGRコア内に注入してBGRに対する安定した作動点を確実にする。
図46は、4つの電圧調節器及びそれらの供給ドメインのうちの1つの概略図である。整流器の不安定な出力電圧VRECTを調整することによってクリーンな供給電圧を供給するために、線形電圧レギュレータが実施される。様々な回路ブロックの供給ドメインを切り離すために、4つの別々の線形電圧レギュレータが使用される。図46は、回路ブロックの電圧レギュレータ及び供給電圧ドメインの概略図を示している。外部コンデンサーは利用可能ではないので、レギュレータは57度の最小位相余裕で内部補償される。可変負荷条件にわたって良好な供給電圧変化除去比(PSRR)を有する安定性を確実にするために、NMOS通過トランジスタが利用される。レギュレータ内の基準電圧分割器が、弱い閾値領域内で作動する2つの等しいPMOSトランジスタから構成される。これらのトランジスタは、非常に高いオンチップ抵抗(各々~22MΩ)を与え、従って、無視することができる量のゼロ入力電流しか消費しない。
図47は、埋め込み式R-Fコンバータの概念図である。差動抵抗/周波数(R-F)変換は、最初に抵抗/電流(R-I)変換、次いで、電流/周波数(I-F)変換という2つの段階を用いて実施される。本研究では、比較目的で2つの別々のR-F変換を実施した。図37は、R-I回路がセンサ抵抗の差動変化を感知し、出力電流IOUTを供給するR-F変換器に関する概念図を示している。次いで、電流IOUTは、電流制御発振器(CCO)からなるI-F変換器に供給される。CCOは、その周波数を電流IOUTを感知し、それによってI-F変換、従って、R-F変換を提供することによって変更する。
図48は、従来のR-Iコンバータの概略図である。R-I変換器には、線形性及び低電力作動という2つの主要な課題がある。図48は、従来の線形R-I変換器の概略図を示している。オペアンプ、NMOSトランジスタ、及び感知抵抗要素からなる負のフィードバックループが、BGRからの定基準電圧に等しくなるように感知抵抗器の両端の電圧降下を強制する。このようにして発生させた電流は非常に線形であり、感知抵抗に反比例する(IR=VREF/RS)。次いで、この電流は、電流ミラー(M2-M3)を通してその後のCCOにコピーされる。回路の電力消費量は、RS及びVREFの絶対値に依存する。RSの絶対ベース値は固定されるので、電力消費量を最小にするためにBGRによって低いVREF値を発生させることができる。しかし、最小VREF値は、回路のダイナミックレンジによって制限される。従って、R-I変換器の電力消費量は、主として感知抵抗器の絶対値と必要感度とによって制限される。
図49は、第1の差動R-I(R-I1)コンバータの概略図である。図45に示すR-I変換器の原理は、差動測定に拡張することができる。図39は、第1の差動R-I変換器(R-I1)の概略図を示している。電流I
RS1(=V
REF/R
S1)及びI
RS2(=V
REF/R
S2)との差は次式によって与えられる。
式中のR
S1及びR
S2は、大気圧でのセンサ抵抗器のベース値であり、事前に既知である。ΔRSを印加圧力Pに関連付けられたセンサ抵抗の変化とすると、式4.3を式4.1に従って再整理することができる。
項(R
S2-R
S1)は、圧力が印加されていない時のセンサ抵抗のベース値である。印加圧力に関連付けられた抵抗変化ΔR
Sは、感知抵抗器の絶対ベース値と比較して小さい(ΔR
S≪R
S1,2)。更に、感知抵抗の絶対値は互いに近く、同じ桁のものである。例えば、本研究に用いたVolcano圧力センサの近似値は、大気圧でR
S2≒3.6KΩ及びR
S1≒3.3KΩを有する。差動抵抗の最大変化ΔR
Sは、IOP範囲(0~60mmHg)にわたって12Ωである。従って、この式は、次式のように書くことができる。
ここで、差電流IDは、定電流ID,Constと、印加圧力による感知抵抗変化を有する電流変化ΔIDSという2つの部分を有する。これら2つの部分は、IDS,Const=VREF[(RS2-RS1)/RS2RS1]及びΔIDS=VREF[2ΔRS/RS2RS1]として与えられる。
R-I1変換器内の演算相互コンダクタンス増幅器(OTA)の両方が、100dBの高い開ループ利得を有する等しいものであった。非常に低い電力、ノイズ、及びオフセットに関して二段ミラー補償OTAを設計した。2つの電流分岐の間のオフセット効果を更に低減するためにOTAの両方を互いに整合させた。圧力範囲にわたる最小電力消費量と最大ダイナミックレンジの間の妥協点として100mVの基準電圧VREFが選択された。ΔIDにおいて70nAのフルスケールダイナミックレンジが得られる。
図50は、第2の差動R-I(R-I2)コンバータの概略図である。R-I1変換器は、差動抵抗を感知するために2つの電流分岐を使用するので、そのような構造体に関連付けられた高電力消費量は不可避である。差動電流を測定する際の1つの感知電流分岐のみの使用によって50%の節電をもたらすことができる。タスクをもたらすために、本研究では第2のR-I2変換器を提案する。第2のR-I2変換器の概要を図50に示している。
R-I2変換器内には3つの負のフィードバックループが導入される。上述のようにBGRが100mVの擬似差動基準電圧VREFを発生させる(VREF=VR7-VR6=VR6-VR5)。第1及び第2のフィードバックループ(図47に1及び2として示す)は、ノード「X」及び「Y」においてそれぞれVR7=700mV及びVR5=500mVの基準電圧を設定し、高いループ利得(>95dB)を有するように設計される。第3のフィードバックループは、ノード「N」においてVR6=600mVの基準電圧を設定する。その結果、センサ内の各抵抗器の両端で100mVの電圧降下が発生する。差電流ΔIDは、トランジスタM3及びM4を通って流れ、電流ミラーM4~M5を通してコピーされる。第3のフィードバックループは、第1のループと第2のループの両方を負荷と捉えて、これらの2つのフィードバックと比較して低めのループ利得(>70dB)を有する。正確な始動及び安定性を確実にするために、第1及び第2のフィードバックループは、第3のフィードバックループよりも短い整定時間を有するように設計される。オフセット電圧効果を低減するために、OTAの全てが単一ブロック内で互いに整合される。較正モードでは、オンチップベース抵抗器(RB1,2)はアナログマルチプレクサを通してフィードバックループに切り換えられ、センサ抵抗要素は接地に切り換えられる。
図51は、I-F変換を提供するリング発振器の概略図である。I-F変換器は、図41に示すように広同調範囲リング発振器から構成される。電流欠乏インバータ及び伝達ゲートがリング発振器の単段を構成する。R-I変換器が発生させたバイアス電圧(VBP及びVBN)は、伝達ゲート(RT)の抵抗を調整することによってリング発振器の発振周波数を制御する。広同調範囲N段リング発振器に関する発振周波数f
oscは、次式によって与えられる。
上式中のgmは単段インバータの全有効相互コンダクタンスであり、Nは合計段数であり、CPは、PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタの全ゲートキャパシタンス及び配線キャパシタンスから構成される単段インバータのゲートでの全寄生キャパシタンスである。
g
mR
T≫1では、前式を次式として再整理することができる。
Vds/I
Tの平均値は、伝達ゲートの有効抵抗R
Tを与え、式中のV
ds及びI
Tは、それぞれ伝達ゲートの両端の電圧降下及び電流である。V
dsat<V
DD/2では、ステップ入力がV
DD/2からV
DDまで増大する時にI
Tは一定に留まり、R
Tを次式として近似することができる。
式を組み合わせることにより、I-F変換器の発振周波数f
oscは次式によって与えられる。
伝達ゲートを通る電流ITは、R-I変換器が発生させたバイアス電圧VBP及びVBNによって制御されるので、foscは差電流ID(IT=ID)の線形関数である。この関数を非常に線形にするために、従来の広同調リング発振器内のインバータは、電流IDで電流欠乏条件にされる。それによってインバータのクローバ電流が最小にされ、従って、コンデンサーなしの電圧レギュレータの出力での電圧降下が低減され、クリーンなサプライが発振器に供給される。インバータに関して、そのクローバ電流を更に低減する高VTHトランジスタを用いた。
温度効果は、センサ特性に起因する差動電流内で相殺されるが、発振周波数の絶対ベース値を変化させる場合がある。同様に、調整された出力でのサプライ変動が発振周波数を変化させる場合があり、従って、測定精度を変化させる場合がある。IOPモニタシステムに対する温度変動も同様に考慮することができる。
温度変動を有する物理的環境内に埋め込まれる場合に、感知抵抗器の絶対ベース値に近い値を有し、更に同じ初期抵抗差を有し、n+拡散抵抗器を用いて実施される2つのオンチップベース抵抗器(R
B1及びR
B2)を使用することによって影響に対抗するか又はそれを軽減することができる。n+拡散抵抗器は、当該温度範囲で感知抵抗器に非常に近い正の温度係数を有する。両方の抵抗器の値が互いに近いので、これらの抵抗器を共通重心方式で配置することによってほぼ完全な整合を提供する。ベース抵抗感知モードの差電流は、温度及びサプライ変動にのみ依存し、圧力感知モードにおいて変化を較正するのに利用される。両方のセンサ抵抗器の抵抗が、温度変動に伴って同じ量だけ変化するので、差電流は、ΔR
Sを次式内でゼロに等しいように設定することによって与えられる。
同様に、ベース感知モードの差電流は次式によって与えられる。
式4.12を式4.13によって割り算することによって次式が得られる。
上式中の抵抗は絶対ベース値であり、これらの値は事前に既知である。センサとベース抵抗は、R-F変換に関して同じ発振器を共有するので、式4.11によって示唆されているように周波数の比fosc,S/fosc,BはVDDに依存しない。従って、オンチップ差動ベース抵抗感知モードに対して別々の時間スロットを有することによって温度及び供給電圧変化に関する初期較正を容易にもたらすことができる。本研究の差動感知及びオンチップベース抵抗較正の方法は、追加の温度、電圧、及び電流の感知モードを有することなく正確な圧力測定を可能にする。
センサ及びベース抵抗器の周波数の値は、一定の基準周波数fREFで作動するカウンタベースのデジタルコア論理部によって計算される。かなり低い基準周波数(fREF=1.5KHz)を発生させるために、I-F変換に使用されるものと同様であるがより多くの段を有する発振器が使用される。基準発振器に関して温度非依存定バイアス電流が利用される。デジタルコアに対するかなり低いクロック速度(fREF)は、動的電力消費量を最小にし、TXに関するOOKデータレートを低減する。
図52は、デジタルコアであり、(a)がブロック図、(b)がF-Dコンバータ、(c)が符号器(ENC)のブロック図、(d)がENCの状態図である。図42(a)は、周波数/デジタル(F-D)変換を提供し、得られるデータをバースト送信に関して符号化するデジタルコアのブロック図を示している。図49(b)のF-D変換器は、2つのカウンタCNTSEN及びCNTREFから構成される。タイマーから開始信号を受け入れると、両方のカウンタがリセットされ、加算計数し始める。CNTREFが350サイクルに達すると、両方のカウンタを停止する変換終了(EoC)パルスで変換が完了し、CNTSENの値(データ)が読み出され、それによって1.5KHzの基準クロック(CLKREF)周波数で(1ビット)/(5Hz)の最小周波数分解能が確実にされる。最大入力クロック(CLKIN)周波数で両方のカウンタでのオーバーフローを回避するために、CNTREF及びCNTSENは、それぞれ10ビット及び18ビットに対して設計される。
図52(c)及び(d)は、それぞれ符号器(ENC)のブロック図及び状態図を示している。最初にスリープ条件において、符号器PKTOの出力は、TXを停止する論理部「0」に固定される。EoCパルスを受け入れると、符号器はF-D変換器からのデータをラッチし、図49(d)に示すように入力信号DIFRS及びSELRSに基づいて次の条件に進行する。基準ベース抵抗器(RB)及び感知抵抗器(RS)から発生したデジタル出力がそれぞれ記録されるSAMP RB及びSAMP RS条件では、F-D変換器からのデータは、サンプリング並列/直列レジスタ(P 2SR SAMP)内に18ビット精度で直接格納される。RS差のみが格納されるDIFF RS条件にある間に、SAMP RS条件において格納された値を保持するために、P 2SR SAMPが書込無効にされる。その間に、RS差は、前回記録されたRSを有するデータを低減することによって計算され、差動並列/直列レジスタ(P 2SR DIFF)に格納される。10kHzのCLKINダイナミックレンジを考えて、P 2SR DIFFの精度は12ビットに設定される。反転ビット発生器(FB Gen)が、並列データDatPのビット毎の合計によって3つ全ての条件での論理部「1」の個数を計数する。合計値が、18ビットデジタルデータに対して9に設定され、12ビット差に対して6に設定された閾値よりも大きい場合に、DatPの各ビットが反転され、反転ビットレジスタ(FB)は論理部「1」に更新される。次のサイクルでは、符号器は、P 2SR SAMPに格納されたデータがサンプルパケット(PKSAMP)内でシリアル出力されるSRL PKSAMP条件又はP 2SR DIFFに格納されたRS差が差動パケット(PKSAMP)内でシリアル出力されるSRL PKSAMP条件のいずれかに入る。同時に、DatSから3ビット巡回冗長検査(CRC)コードも導出される。符号器は、データパケットの形成後にスリープ条件に戻り、次のEoCパルスに関して待機する。
図53は、デジタルコア及びパケット構造のタイミング図である。特に、図53は、サンプルパケット(PKSAMP)と差動パケット(PKDIFF)の両方に関するデジタルコア及び構造体のタイミング図を示している。PKSAMPは、特定のパケットの開始を示す4ビットヘッダ(HB)と、反転ビット(FB)と、18ビットデータと、3ビットCRCコードと、パケット送信の終了を示す4ビットテール(TB)とで構成される。PKDIFFの構造体は、18ビットではなく12ビットのRS差データを有することを除いてPKSAMPと同様である。RB及びRSからのデータを送信するPKSAMPのヘッダは、それぞれ「1001」及び「1010」に設定され、PKDIFFのヘッダは「1100」に設定される。デジタルコアのタイマーはパケットカウンタを用いて実施され、パケットカウンタは、EoCパルスを受け入れると1だけ増分され、カウンタ値が(NPKC-1)に等しい時にリセットされ、この場合に、NPKCは、サイクル毎のパケット数であり、10に等しいように設定される。図50に示すように、F-Dに対する開始パルスは、EoCとデジタルコアリセット(RSTDC)パルスの両方の後に2つのCLKREFサイクルを始動し、変換が開始する前にF-D変換器のCLKINが安定化することを可能にする。パケットカウンタがリセットされると、SELRS信号とDIFRS信号の両方が無効にされ、パケットカウンタの値が0及び1それぞれよりも大きい時にアクティブハイになる。その結果、NPKCパケット出力(PKTO)の中で第1及び第2のものは、RB及びRSから変換されたデジタルデータを記録するPKSAMPであり、残りの8つのパケットは、各々が352CLKREFサイクルによって分離されたRS差を記録するPKDIFFである。受信機において、RS差を第2のPKSAMPから得られたデータと加え合わせることによってRSの正確な値を18ビット精度で回復することができる。従って、緩慢に変化するIOP信号及び膀胱圧信号からのデータに差動符号化及びビット反転の方式を適用することにより、データパケット内のビット「1」の個数、従って、OOK TXのスイッチオンレートをサンプリングレート及びデータ精度を低減することなく最小にすることができ、データ送信期間中にTXによって占められる全ワット損が防止される。
図54は、電圧制御式電力発振器(VCPO)とオフチップループアンテナとを含む2.45GHzISM帯域送信機の概略図である。限られた量の採取無線エネルギを用いた実時間圧力モニタは、送信機に関する非常に低い瞬時と平均の両方の電力消費量を必要とする。本研究では、OOK変調の2.45GHzISM帯域送信機をデータパケットの無線送信に対して設計された。図54は、LC電圧制御式電力発振器(VCPO)を含む送信機の概要を示している。TXの設計は、[150]、[151]に公開されている最近の研究から着想を得たものである。しかし、これらの研究、特に[151]では、TXは、漏損電流の最小化及び供給電圧制御が2つの主要な設計基準である非常に低いデータレート(~1bps)の用途に関して積極的に最適化されたものである。本研究では、TXの設計は、主として瞬時と平均の両方の電力消費量の低減に狙いを定めたものであった。搬送波周波数に対しては、ワット損とアンテナ効率と組織損失との間の相殺として2.45GHzISM帯域を選択した。2.4mmの直径を有し、ノードX及びYにおいてVCPOに直接に接続するオフチップループアンテナをプリント回路基板(PCB)上に製造する。ループアンテナの外周は、2.45GHzでの送信波長よりもかなり小さいので、このアンテナは電気的に小さいアンテナと考えられる。電気的に小さいループの等価集中回路モデルは、図55に見ることができるように誘導子(LA)と小さい抵抗器(RA)との直列の組合せとして表すことができる。従って、オフチップの電気的に小さいループをVCPOのLCタンク回路のための誘導要素として実質的に利用することができる。ループアンテナの自己共振周波数は、一般的に、LCタンクの共振周波数よりもかなり高く、並列コンデンサーCSRFを追加することによってモデル化することができる。
アンテナの設計は、埋込可能環境内で所与のサイズ制約条件(表4.1)に対して放射効率を最大化し、組織損失を最小にするように最適化される。アンテナの放射効率がその物理的サイズ又は搬送波周波数と共に増大する(搬送波波長がアンテナの物理的寸法に近づくことに起因して)ことは公知の事実である。しかし、組織の伝導率も周波数と共に増大し、高い組織損失が生じる。インプラントに関して利用可能な空間を効率的に利用するために、ループアンテナに対して2.4mmの直径を選択した。2.45GHzの搬送波周波数は、放射効率と組織損失の間の良好な均衡をもたらす。アンテナは、全波3D電磁シミュレーションソフトウエアであるANSYS High Frequency Structural Simulator(HFSS)を用いて設計されて最適化された。HFSSシミュレーションによるアンテナパラメータを表4.2に列記する。
(表4.2)
ループアンテナに関するHFSSシミュレーション及び計算の結果
図56(a)及び図53(b)は、それぞれFR-4 PCB及びパリレン基板上で設計されたループアンテナに関する放射パターンシミュレーションを示している。
図54は、VCPOの概略図を示している。発振器のコアは、NMOS(M1-M2)とPMOS(M3-M4)との交差接続トランジスタ対と、LCタンク回路と、テール電流ソースNMOSトランジスタM5とで構成される。PMOSとNMOSの両方の交差結合対を有することにより、VCPOの有効相互コンダクタンスが増大し、それによって発振を確実にするためにVCPOに対して必要な始動電流が低減される。更に、この構成は、VCPOを付勢するためのループアンテナの中心タッピングの必要性を排除し、それによってIOPモニタシステムでは不可欠な最終デバイスパッケージ化が容易になる。トランジスタM1~M4のサイズは、VCPOに対して受容可能な始動条件[152]を保証しながら位相ノイズを最小にするように慎重に設計される。オフチップループアンテナによって実施されるLCタンク回路に対して高Q誘導要素を使用することにより、始動中の追加の節電を提供する。
デジタルコアからのデータパケットは、テール電流ソーストランジスタM5を動的に切り換えることによってTXを直接OOK変調する。トランジスタM5のサイズは、VCPOが80μW(-11dBm)の瞬時電力をループアンテナに送出するように選択される。TXは、1.2Vの調整された供給電圧で作動される。TXをHFSSシミュレーションから抽出したアンテナのレイアウト寄生及びsパラメータを用いてシミュレートした。オンチップ同調コンデンサーがない場合に、VCPOの最大周波数は、ノードX及びYでの寄生キャパシタンス(主としてボンディングパッド及びデバイスキャパシタンスに起因する)によって制限される。Cadence R Spectre R RFでの抽出シミュレーションは、同調コンデンサーなしで3.4GHzのVCPO発振周波数をもたらす。従って、2.45GHzISM帯域(2.4GHz~2.5GHz)の搬送波周波数を達成するために、金属-絶縁物-金属(MIM)コンデンサーをLCタンク回路内に導入した。
このTX設計は非常に電力効率が高いので、無線身体エリアネットワーク(WBAN)のような様々な他の短距離生体医療通信用途に対して有利とすることができる。従って、このTXの設計は、別々の独立型構造体としても最適化される。図57に示すように、2.3GHzから2.7GHzまでの同調範囲を与えるために5ビット容量性MIM DACが実施される。この同調範囲は、WBAN(IEEE 802.15.6)に割り当てられた2360MHz~2400MHz周波数帯域も網羅することになる[153]。[151]において実施されているデジタルスイッチとは異なり、本研究は、図47に示すNMOSスイッチに対して明確なオフ条件の負のゲートツー供給電圧Vgsを供給する抵抗器ベースのスイッチ付勢機構[154]を利用する。データパケットによってDAC同調コンデンサーを動的に切り換えることによって可変帯域幅を使用する周波数シフトキーイング(FSK)変調も可能である。送出される出力電力を再構成するために、バイナリ重み付きサイズを有する7つのテール電流ソースM5<6:0>が使用される。
圧力感知読取ASICは、標準の0.18μmCMOS処理において実施及び製造される。チップは、ボンディングパッドを含むシリコン面積のうちの750μm×750μmを占有する。チップのマイクロ写真を図48に例示している。フルシステムSoCは、サイズ制限に起因して限られた個数の試験のためのボンディングパッドのみを有するので、個々の回路ブロックを特徴付けるために別々の試験構造体ダイを製造した。最初に、個々の回路ブロックのDC試験を実施した。測定を実施するために、圧力センサ抵抗器を圧力チャンバに配置する。チャンバ内の圧力を0mmHgから60mmHgまで変化し、R-I1とR-I2の両方の回路ブロックに関して差電流IDの変化を測定する(図59)。IDのダイナミックレンジを測定した結果は、0~60mmHgの圧力範囲にわたって105nAであり、この測定結果はシミュレーション値に非常に近い。図50(a)は、R-I2変換器に関するセンサ抵抗器端子の両端の擬似差動基準電圧を示している。図に見ることができるように両方の感知要素の両端の電圧降下は正確であり、測定結果は100mVであった。同様に、R-I1変換器内の感知要素の両端の電圧降下の測定結果は正確に100mVであった(図60(b))。
4つ全ての電圧レギュレータの出力電圧を測定した結果は、複数のダイにわたって設計値の±3%以内である。チップの測定バイアス電流は97nAであり、これは100nAの設計値に非常に近い。
TXの性能を特徴付けるために周波数及び電流の同調を可能にするTX試験を使用する。2.4mm径を有するループアンテナをFR4プリント回路基板(PCB)上に製造する。寄生の効果を最底限に抑制するために、TXダイをアンテナトレースに直接ワイヤボンディングする。ループアンテナはVCPOのノードX及びYに直接に接続され(図54)、バッファ又はPAは実施されていないことでTX出力の直接的な精査は不可能であった。従って、TXに関する全ての測定は、無線試験構成で行われる。利得8dBiを有するホーンアンテナをTXチップから約20cm距離を置いて位置決めする。ホーンアンテナは、送信データを受信するAgilent E4404Bスペクトル解析器に接続される。この構成を用いてピーク電力の値-52dBmを受信した。受信電力に対して公知のFriis送信計算式を用いてTXのピーク出力電力を計算した結果は-33.76dBmであった。この構成に関するVCPO電力消費量を測定した結果は69.8μW(=-11.56dBm)であり、この測定結果は-22.2dBのループアンテナ利得を与える。
図61は、1Mbps、5Mbps、及び10Mbpsのデータレートでの擬似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)によってOOK変調されたTXの出力スペクトルを示している。このTXは、FSK変調を提供するようには設計されないが、この設計の将来の改訂バージョンは、このチップ内に既に実施されたコース同調アレイと共にFSK変調を可能にするためのサブDAC容量性アレイを容易に受け入れることができる。FSK変調の可能性を明らかにするために、同調DACアレイ内の43fFの最小コンデンサーを1MbpsPRBSデータと交換し、図52に示す広帯域FSKスペクトルがもたらされている。このモードでは送信機は140μWを消費する。VCPOは、搬送波周波数から1MHzのオフセットで-115dBc/Hzの位相ノイズを達成する。
次いで、フルシステムの試験が、感知要素を圧力チャンバに配置することによって実施される。感知要素をチップのR-I変換器に接続する。フルシステムSoCは、低電力の特徴を有することに起因してR-I2変換器を使用する。デジタルコアは、感知要素又はオンチップベース抵抗器のいずれかを選択するSelRS信号をR-I2変換器に送る(SelRS=0は感知要素を選択し、SelRS=1はベース抵抗を選択する)。ベース抵抗に対応するR-F回路の測定出力周波数は360KHzであった。図53は、定圧で測定した周期的SelRS信号、R-F変換器出力、基準発振器クロック、及びデジタルデータパケットを示している。ベース周波数(30ビット)、感知要素周波数(30ビット)、及び差周波数(24ビット)に関して測定したデータパケットを図64に例示している。図に見ることができるように、ヘッダビット(HB)は、3つ全てのタイプのパケットに対して復号目的で異なる。
図65は、当該圧力範囲で測定したセンサ周波数及びベース周波数を示している。センサ周波数は、390.7KHzから379.9KHzの範囲にわたって1.5KHzでの350基準クロックサイクルのデジタルコアカウンタ変換時間で0.024mmHg/LSBの分解能をもたらす。しかし、実際のセンサ分解能は、熱ノイズによって制限される。R-I変換器回路内のオペアンプの熱ノイズは、低電力散逸を有することに起因する読取チップ内で優勢なノイズ源である。R-I変換器のノイズシミュレーションは、圧力読取において0.31(mmHg)rmsのrms誤差を示唆している。平均ベース抵抗器周波数の測定値は、360KHzで一定に留まる。
0~60mmHgの圧力範囲にわたってAgilent 4284A Precision LCRを用いて12Ωの感知抵抗ダイナミックレンジを測定した。二点較正を用いて最大非線形性を測定した結果は87mΩであり、0.44mmHgの読取感度がもたらされている。312Ωのセンサ抵抗(RS1-RS2)に関して測定した感知抵抗線形性を図56に示している。IOPと膀胱圧範囲の両方を受け入れるのにこの感度は十分である。rms誤差は、変換時間を延ばすか又は各圧点で得られた複数のデータサンプルを平均するかのいずれかによって低減することができる。図67は、平均されるデータサンプルの個数が増加した時の測定感度の改善を示している。
次いで、SoCを無線構成で測定した。2.6mm径の2巻回100μm厚受信給電コイルをオンチップ整合ネットワークの前に接続する。センサを圧力チャンバに配置し、システムを700MHzRF発振源によって励振される空洞共振器内に保つ。データをスペクトル解析器によって受信し、市販の既製(COTS)構成要素からなる基地局によって復調する。図68は、受信データパケットの出力パワースペクトルを示している。次いで、復調されたデータパケットをコンピュータへのUARTインタフェースを有するFPGAボードに供給する。受信データパケットをmatlabソフトウエア内で実時間で復号する。図69は、スペクトル解析器によって受信されたデータと、それに対応するデジタルパケットとを示し、正しいパケット受信を明らかにしている。
圧力感知チップの感度は主としてノイズよって制限されるので、無線構成においてノイズを特徴付けるのは重要である。図70は、定圧で無線測定したデータ内のノイズに起因する偏差を示している。各ノイズ測定に関して合計で60データパケットを平均した。図71は、無線測定したノイズに関する得られたヒストグラムを示している。312Ωのセンサ抵抗での公称差に関して標準偏差(1σ)を測定した結果は429.12ppm又は133.9mΩであり、0.67mmHgの圧力感度がもたらされている。図72は、無線測定した圧力を示し、それを基準センサと比較している。2点較正の後に、圧力読取値内の最大測定誤差は、0.63mmHgの標準偏差を用いて0.81mmHgであった。
更に、感知周波数及びベース周波数に対する温度効果を特徴付けて図73に示している。30℃から38℃の温度範囲で2点較正を実施した後に記録した圧力で温度変動に起因する最大誤差を測定した結果は、0.54mmHgであった。3点較正を使用する場合に、温度に起因する圧力測定値内の誤差は、更に0.39mmHgに低減される。
バーストデータ送信に起因して、チップは、採取エネルギから61.4μWを消費する。表4.3は、ASICの測定性能の概要を示している。
以前に公開された圧力モニタシステムとのASICの性能比較を表4.4に与える。
(表4.4)
過去の研究との比較
‡分解能は、完全無線システムに関して測定したものではない。
*所与の圧力範囲及び9ビットの分解能からmmHgに変換したものである。+整流供給電圧からの電力消費量。++チップのバックラッピング処理の後のもの。
最後に、ASIC性能を生体内ラビット実験において評価した。麻酔をかけたラビットから眼内圧を記録した。圧力センサダイを眼内に埋め込み、動物の外部に保たれたASICマイクロシステムに接続された。図74は実験設定を示している。4ml/時間の一定の速度での眼内への食塩水の注入に対するラビットの眼の圧力反応を記録し、図74の下部のグラフに示している。
本明細書に説明する態様を通して、低電力サブmm3のIOP圧モニタマイクロシステムを本発明の開示に提示する。マイクロシステムは、哺乳動物の眼内のIOPを無線で測定及びモニタするために哺乳動物被験体の眼内のあらゆる適切な区域内に埋め込むことができる。マイクロシステムは、2.6mm径の所与の空間内に圧力センサと、給電コイルと、ループアンテナと、低電力無線圧力読み出しASICとを集積する。低電力圧力感知フロントエンド、パワーマネージメント、及び送信機回路の結果として、700MHzRFソースから空洞共振器を通してエネルギを無線で採取しながら、チップの電力消費量は僅か61.4μWである。
図74は、312Ω公称ΔRSに対して0.67mmHgのIOP感度をもたらす429ppm(133.9mΩ)1σ偏差を示すヒストグラムを与える図70の無線ノイズ測定値に対応するヒストグラムを示している。
本明細書に説明する主題の実施形態及び機能的作動は、本明細書に開示する構造体及びその構造体的均等物を含むデジタル電子回路内又はコンピュータソフトウエア、コンピュータファームウエア、又はコンピュータハードウエア内、又はこれらのうちの1又は2以上のものの組合せ内に実施することができる。本明細書に説明する主題の実施形態は、データ処理装置による実行に関してコンピュータ可読媒体上に符号化され、又はこの装置を制御することを目的とするコンピュータプログラム命令の1又は2以上のモジュールを用いて実施することができる。コンピュータ可読媒体は、小売販路を通して販売されているコンピュータシステム内のハードドライブ又は光ディスクのような製造製品とすることができる。コンピュータ可読媒体は別々に入手し、後に有線又は無線のネットワーク上でのコンピュータプログラム命令の1又は2以上のモジュールの配信等によってコンピュータプログラム命令の1又は2以上のモジュールによって符号化することができる。コンピュータ可読媒体は、機械可読ストレージデバイス、機械可読ストレージ基板、メモリデバイス、又はこれらのうちの1又は2以上の組合せとすることができる。
「データ処理装置」という用語は、一例としてプログラム可能プロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサ又はコンピュータを含むデータを処理するための全ての装置、デバイス、及び機械を包含する。装置は、ハードウエアに加えて、当該コンピュータプログラムに対する実行環境を生成するコード、例えば、プロセッサファームウエア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、実行時環境、又はこれらのうちの1又は2以上を構成するコードを含むことができる。更に、装置は、ウェブサービスインフラストラクチャ、分散コンピュータインフラストラクチャ、及びグリッドコンピュータインフラストラクチャのような様々な異なるコンピュータモデルインフラストラクチャを使用することができる。
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウエア、ソフトウエアアプリケーションとしても公知)は、コンパイル実行言語又はインタープリター実行言語、宣言型言語、又は手順型言語を含むいずれかの形態のプログラミング言語で書くことができ、独立型プログラムとしての形態、又はモジュール、構成要素、サブルーチン、又はコンピュータ環境内の使用に適する他のユニットとしての形態を含むいずれかの形態で配備することができる。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステム内の1つのファイルに対応するとは限らない。プログラムは、当該プログラムに専用単一ファイル内で他のプログラム又はデータを保持するファイルの一部分(例えば、マークアップ言語文書に格納された1又は2以上のスクリプト)内、又は複数の連携ファイル(例えば、1又は2以上のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部分を格納する複数のファイル)に格納することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上又は一箇所に設置又は複数の箇所にわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように配備することができる。
本明細書に説明する処理及び論理フローは、入力データに対して作動し、出力を生成することによって機能を実施するように1又は2以上のコンピュータプログラムを実行する1又は2以上のプログラム可能プロセッサによって行うことができる。処理及び論理フローは、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)によって実施することができ、装置は、そのような専用論理回路として実施することができる。
コンピュータプログラムの実行に適するプロセッサは、一例として汎用と専用の両方のマイクロプロセッサ及びいずれかのタイプのデジタルコンピュータのいずれか1又は2以上のプロセッサを含む。一般的に、プロセッサは、読取専用メモリ又はランダムアクセスメモリ又はこれら両方から命令及びデータを受信することになる。コンピュータの必須要素は、命令を実施するためのプロセッサと、命令及びデータを格納するための1又は2以上のメモリデバイスとである。一般的に、コンピュータは、データを格納するための1又は2以上の大容量ストレージデバイス、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は光ディスクを更に含む又はこれらのストレージデバイスからデータを受信するか、又はこれらのストレージデバイスにデータを伝達するか又はこれらの両方を行うためにこれらのストレージデバイスと作動可能に結合されることになる。しかし、コンピュータは、そのようなデバイスを持たない場合がある。更に、コンピュータは、別のデバイス、例えば、少数の例を挙げれば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、モバイルオーディオプレーヤ又はモバイルビデオプレーヤ、ゲームコンソール、全地球測位システム(GPS)受信機、又は携帯ストレージデバイス(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ)内に埋め込むことができる。コンピュータプログラム命令及びデータを格納するのに適するデバイスは、一例として、半導体メモリデバイス、例えば、EPROM(消去可能プログラマブル読取専用メモリ)、EEPROM(電気的に消去可能なプログラマブル読取専用メモリ)、及びフラッシュメモリデバイスと、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスク又は着脱可能ディスクと、光磁気ディスクと、CD-ROMディスク及びDVD-ROMディスクとを含む全ての形態の不揮発性のメモリ、媒体、及びメモリデバイスを含む。プロセッサ及びメモリには専用論理回路を補充することができ、又はプロセッサ及びメモリを専用論理回路内に組み込むことができる。
ユーザとの対話を可能にするために、本明細書に説明する主題の実施形態は、ユーザに情報を表示するための表示デバイス、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、OLED(有機発光ダイオード)、又は他のモニタと、ユーザがコンピュータに入力を与えることを可能にするキーボード及びポインティングデバイス、例えば、マウス又はトラックボールとを有するコンピュータ上に実施することができる。ユーザとの対話を可能にするために他のタイプのデバイスを使用することができ、例えば、ユーザに与えられるフィードバックは、いずれかの形態の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバックとすることができ、ユーザからの入力は、音響入力、発話入力、又は触覚入力を含むいずれかの形態で受け入れることができる。
コンピュータシステムは、クライアントとサーバを含むことができる。クライアントとサーバは、一般的に、互いに遠隔であり、一般的に、通信ネットワーク上で対話する。クライアントとサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され、互いにクライアント-サーバ関係を有するコンピュータプログラムによってもたらされる。本明細書に説明する主題の実施形態は、例えば、データサーバとしてのバックエンド構成要素、例えば、アプリケーションサーバのようなミドルウェア構成要素、ユーザが本明細書に説明する主題の実施と対話することを可能にするグラフィカルユーザインタフェース又はウェブブラウザを有するクライアントコンピュータのようなフロントエンド構成要素、又は1又は2以上のそのようなバックエンド構成要素、ミドルウェア構成要素、又はフロントエンド構成要素のあらゆる組合せを含むコンピュータシステムに実施することができる。システムの構成要素は、デジタルデータ通信、例えば、通信ネットワークのいずれかの形態又は媒体によって相互接続することができる。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)及び広域ネットワーク(「WAN」)、ネットワーク間ネットワーク(例えば、インターネット)、並びにピアツーピアネットワーク(例えば、アドホックピアツーピアネットワーク)を含む。
本明細書は多くの実施の詳細を含むが、これらの詳細は、本発明の範囲又は主張することができるものの限定ではなく、本発明の特定の実施形態に独特の特徴の説明として解釈しなければならない。本明細書において別々の実施形態の状況で説明するある一定の特徴は、単一実施形態において組合せで実施することができる。それとは逆に、単一実施形態の状況で説明する様々な特徴は、複数の実施形態において別々に又はあらゆる適切な部分組合せで実施することができる。更に、上記では特徴をある一定の組合せで機能するものとして説明する場合があり、最初にそのように主張する場合さえもあるが、一部の場合に主張する組合せからの1又は2以上の特徴は、組合せから削除することができ、更に主張する組合せは、部分組合せ又は部分組合せの変形に向けることができる。
同様に、図面には作動を特定の順序で説明したが、これは、望ましい結果を達成するためにそのような作動を図示する特定の順序又は順次的な順序を用いて実施すること又は図示する全ての作動を実施することを必要とすると理解すべきではない。ある一定の状況では、マルチタスク処理及び並列処理を有利とすることができる。更に、上述した実施形態での様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施形態においてそのような分離を必要とするものと理解すべきではなく、説明するプログラム構成要素及びシステムは、一般的に、単一ソフトウエア製品内に互いに組み込む又は複数のソフトウエア製品内にパッケージ化することができることを認めなければならない。
すなわち、本発明の特定の実施形態を説明した。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。これに加えて、特許請求の範囲内に列挙するアクションは、異なる順序を用いて実施することができ、依然として望ましい結果を達成することができる。