JP7044294B2 - 音響外傷難聴モデル動物の作製用の音響暴露装置 - Google Patents

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  • Measurement Of The Respiration, Hearing Ability, Form, And Blood Characteristics Of Living Organisms (AREA)

Description

本発明は、音響外傷難聴モデル動物の作製用の音響暴露装置に関する。
聴覚とは、いわゆる五感の1つであり、一定範囲の音波を外耳、中耳及び内耳を通して電気信号へと変換し、聴神経を介して聴覚皮質で認識する機能をいう。聴覚により、音による情報を知覚することができるために、コミュニケーションを取る上では欠かせない感覚の1つである。
聴覚が低下した状態を難聴といい、難聴の程度によっては、日常生活に深刻な影響を及ぼす。近年、工場などの騒音や、ポータブルミュージックプレーヤーの普及などにより、難聴患者は増加傾向にある。また、日本においては、超高齢化社会に突入しつつあり、加齢によって発症した難聴の患者は増加の一途をたどっている。こうした社会情景の下、難聴を治療、予防できる方法の開発は急務である。
難聴の原因を研究したり、新たな治療法を開発したりするために、難聴モデル動物が開発されている。難聴モデル動物としては、現在、マウスを筆頭に、ラット、モルモット、ネコ、イヌ、ウサギといった動物で研究が行われている(例えば、特許文献1及び非特許文献1)。
特開2011-37738号公報
佐藤 重規、他、「強大音響負荷によるモルモットCAP・DPOAEの経時的変化」、Audiology Japan、39(5)、pp.553-554、1996年9月
従来の研究において用いられている難聴モデル動物とヒトとでは、内耳の形態やその発生機序に異なる部分が多く、また、他の個体とコミュニケーションを取るための表現系も大きく異なっている。そのため、従来の難聴モデル動物から得られた知見をそのままヒトへ臨床応用することには問題があった。
また、従来の難聴モデル動物、特に音響外傷難聴モデル動物を作製する方法では、音圧負荷量が不十分な場合があり、得られる動物の聴力レベルにばらつきが生じていた。これらが、治療法開発のための機能実験において妨げとなっていた。
このような状況の下、本発明の課題は、ヒトへの臨床応用にも適用可能な研究を行うことが可能である、新たな難聴モデル動物を作製するための音響暴露装置を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて研究開発を行ってきた。その結果、驚くべきことに、非ヒト霊長類動物に、ある一定の条件にて音響暴露することにより、音響外傷難聴モデル動物を再現性良く作製できることを見出した。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 1kHz~32kHzの周波数を有する、100dB~150dBの音圧レベルの音響を発生させる音響発生装置を具備することを特徴とする、音響外傷難聴モデル動物の作製用の音響暴露装置。
[2] 前記周波数が、1kHz~32kHzのいずれかの周波数を中心とするオクターブバンドである、[1]に記載の音響暴露装置。
[3] 前記周波数が、4kHz~16kHzのいずれかの周波数を中心とするオクターブバンドである、[1]又は[2]に記載の音響暴露装置。
[4] 前記音圧レベルが、125dB~150dBである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の音響暴露装置。
[5] 前記音響発生装置が少なくとも2つの外部出力装置を有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載の音響暴露装置。
本発明により、ヒトへの臨床応用にも適用可能な研究を行うことが可能である、新たな難聴モデル動物を、再現性よく提供することを可能とする。
図1は、一実施態様における、音響外傷難聴モデル動物を作製する音響暴露装置を示す概要図である。 図2は、一実施態様における、音響暴露の実施前後のコモンマーモセットのABR閾値の変化を示す図である。(A)音響暴露前、(B)音響暴露後。 図3は、一実施態様における、音響暴露の実施前後のコモンマーモセットのDPOAEレベルの変化を示す図である。(A)音響暴露前(4kHz)、(B)音響暴露後(4kHz)、(C)音響暴露前(16kHz)、(D)音響暴露後(16kHz)。DPOAEは蝸牛外有毛細胞の音波増幅能を反映する他覚的聴力検査であり、外有毛細胞の機能低下にてDPOAEレベル(音圧)も低下する。また刺激音圧の低下に伴って、非線形回帰的にDPOAEレベルも低下することが知られている。縦軸がコモンマーモセットDPOAEレベルの音圧、横軸は刺激音圧を表す。DPOAEレベルの音圧が高いほど、外有毛細胞機能が良好であることを表す。Noise Floorは測定器そのものが発するノイズ、周囲環境から加わるノイズ、測定個体そのものから発せられるあらゆるノイズの総和を示す。 図4は、一実施態様における、音響暴露の実施前後のコモンマーモセットの蝸牛の頂回転部分の有毛細胞の様子を示す。(A):音響暴露後、又は(B):コントロールにおける蝸牛の頂回転部分の有毛細胞を示す顕微鏡写真を示す。 (C):(A)及び(B)の有毛細胞数をカウントしたグラフを示す。IHC:内有毛細胞、OHC1~3:外有毛細胞1~3(数字は列番号を示す)。 図5は、一実施態様における、音響暴露の実施前後のコモンマーモセットの蝸牛の中回転部分の有毛細胞の様子を示す。(A):音響暴露後、又は(B):コントロールにおける蝸牛の中回転部分の有毛細胞を示す顕微鏡写真を示す。 (C):(A)及び(B)の有毛細胞数をカウントしたグラフを示す。IHC:内有毛細胞、OHC1~3:外有毛細胞1~3(数字は列番号を示す)。 図6は、一実施態様における、音響暴露の実施前後のコモンマーモセットの蝸牛の基底回転部分の有毛細胞の様子を示す。(A):音響暴露後、又は(B):コントロールにおける蝸牛の基底回転部分の有毛細胞を示す顕微鏡写真を示す。 (C):(A)及び(B)の有毛細胞数をカウントしたグラフを示す。IHC:内有毛細胞、OHC1~3:外有毛細胞1~3(数字は列番号を示す)。
本明細書で使用される用語は、本発明の具体的な実施形態を説明することを目的としており、本発明を限定することを意図していない。特段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解されるものと同一のものを意味する。
以下、本発明の実施形態について、必要に応じて図面を参照にしながら説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明の構成は、実施形態の具体的構成に限定されない。
<音響外傷難聴モデル動物>
本明細書において、「音響外傷難聴モデル動物」とは、音響負荷によって聴覚に障害が生じた動物であって、音響負荷が課されていない同一種の動物と比較して聴覚が低下した動物をいう。
難聴とは、大きく分けて、伝音性難聴と感音性難聴とに分類される。伝音性難聴とは、外耳・中耳・蝸牛窓・前庭窓のいずれか、又はその全てに何らかの障害を有することで、伝送特性が変化するために起こる聴覚障害をいう。感音性難聴とは、外耳や頭蓋骨から入力された音のエネルギーが、内耳リンパ液の振動に変換されてはいるが、内耳又は内耳から聴覚中枢に至る部位に何らかの障害を有すると考えられる聴覚障害をいう。感音性難聴を引き起こす原因の1つが音響外傷である。本明細書において、音響外傷難聴とは、強力な音波によって、内耳の蝸牛(例えば、蝸牛の有毛細胞)に障害を受けて生じた難聴をいう。
一般に、音響外傷は、落雷、爆発、重量物の落下、機械の作動音、金管楽器のような強い音を出す楽器、電気的にアンプで増幅した楽器の音や歌声、大音量での音楽再生など、強いエネルギーを持った音が原因で生じる。音響外傷難聴には、聴力が回復するものと回復しないものがあるが、本発明は、特に治療等を行わない限り、一定期間、聴力が回復しない音響外傷難聴モデル動物を提供する。
従来の音響外傷難聴モデル動物は、音圧提示用のスピーカーを設置した箱内に、覚醒した対象動物を一定時間入れることにより作製されていた(フリーフィールド下での音響暴露)。この手法では、一度装置を用意すれば簡便にモデル動物の作製が行える反面、対象動物自身が音響から耳を防護する行動を取ることがあり、その結果、音圧負荷量が不十分な耳がしばしば生じることがあった。このことが、音響外傷難聴モデルのベースラインにおける内的誤差の要因となり、治療法開発に向けた機能実験においてしばしば妨げとなっていた。また、聴力測定において左右の聴力の差が大きい場合は、陰影聴取による測定誤差の原因となり、正確な聴力測定を妨げていた。
本発明は、上記のような課題を解決し、再現性良く、任意の聴力レベルまで低下させた音響外傷難聴モデル動物を提供可能となる。
本明細書において、音響外傷難聴モデル動物とは、ヒトを除く哺乳綱に属する動物全般を含むものであり、例えば、マウスやラットなどを含む齧歯目、ウサギなどを含む重歯目、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ、ブタなどを含む鯨偶蹄目、イヌやネコなどを含む食肉目、サルを含む霊長目(ただし、ヒトは除く。以下、霊長目を「霊長類」というが、同一の意味として用いられる。)の動物である。本発明により提供される音響外傷難聴モデル動物としては、好ましくは、ヒトを除く霊長類動物(以下、「非ヒト霊長類動物」という。)である。
霊長類動物は、ヒトを含む、いわゆるサルの仲間が含まれる。そのため、霊長類動物と、ヒトとは共通点が多いために、本発明の音響外傷難聴モデル動物として好ましい。霊長類は、曲鼻猿類と直鼻猿類に分類され、後者はさらに、広鼻猿類(新世界ザル)及び狭鼻猿類に分類される。狭鼻猿類は、オナガザル類及びコロブス類を含む旧世界ザルの群と、類人猿及びヒトとの群に分類される。広鼻猿類(新世界ザル)にはマーモセット類とオマキザル類が含まれる。本発明の音響外傷難聴モデル動物は、ヒトを除く霊長類に属する動物のいずれでもよいが、好ましくは新世界ザルであり、より好ましくはマーモセット類、最も好ましくはコモンマーモセットである。
コモンマーモセット(Callithrix jacchus)は、体長は200mm未満、体重は300g未満の小型のサルである。コモンマーモセットの妊娠期間は約5ヶ月であり、通常は二卵性双生児(多いときは3匹)を出産する。出産後、約10日で交尾が可能となり、年2回の出産も可能である。また、出生後は1年半程度で成獣となる。繁殖力に優れ、ゲノム解析も完了している霊長目の動物であることから、実験動物として用いられている。また、ES細胞やiPS細胞も樹立されており、さらにはトランスジェニックコモンマーモセットの作製にも成功している。
コモンマーモセットの聴覚を司る器官は、解剖学的にもヒトと類似する点が多い。特に内耳へのアプローチも容易であることから、外科的な処置を容易に行うことができる霊長目の動物である。また、ヒトと類似する中枢聴覚伝導路を有することが明らかとなっており、現在のところ、音楽を知覚するニューロンを有することが証明されている唯一の動物でもある。
コモンマーモセットは、他の個体とコミュニケーションをとるために、多数の特徴的な音声を組み合わせて発語することが知られている。コモンマーモセットの発語の種類としては、例えば、ホイッスルのような音声の「フィー(phee)」、ビブラート様の低音の音声である「トリル(trill)」、又はそれらの組み合わせである「トリルフィー(trillphee)」、「トゥイッター(twitter)」などがある。本発明の音響外傷難聴モデル動物がコモンマーモセットである場合、正常聴力のコモンマーモセットと比較して発語も減少する。これは、難聴を抱えるヒト患者においても観察される現象であるため、難聴が引き起こすコミュニケーションへの影響についても観察できるモデル動物といえる。
<難聴レベルの評価方法>
音響外傷難聴モデル動物の難聴の程度を評価する方法については、公知の方法を用いることができ、例えば、聴性脳幹反応(Auditory Brain-stem Response:ABR)や、耳音響放射(Otoacoustic emission:OAE)を調べることにより評価することができる。
ABRとは、聴覚神経系を興奮させることによって生じる脳幹部の電位である。音響外傷難聴モデル動物に所定の音刺激を与え、その時に生じるABR(脳波)を解析することによって、対象の聴力を決定することができる。ABRを測定することにより、主に聴神経から脳までの聴覚伝導路(後迷路)の異常を検出することができる。
OAEは、内耳にある有毛細胞由来の音を外耳道で検出されるものをいう。OAEには、自発耳音響放射(spontaneous Otoacoustic emission:SOAE)、誘発耳音響放射(evoked Otoacoustic emission:EOAE)、及び歪成分耳音響放射(distortion productOtoacoustic emission:DPOAE)がある。SOAEとは、自発的に蝸牛内で発生する純音に近い狭帯域信号を、信号のスペクトル分析によって検出する検査のことである。EOAEとは、外部からの音響刺激(クリック音、トーンバースト音等)によって誘発される音響放射を、音響信号として記録する検査である。DPOAEとは、周波数の異なる2つの純音を同時に外耳道に与えると、与えた2つの純音とは別の歪産物としての音を検出する検査であり、周波数特性が高い。そのため、周波数を特定した聴力測定を行う場合は、DPOAEが用いられることが多い。本発明により得られる音響外傷難聴モデル動物の難聴レベルは、上記のいずれかの方法又はその組み合わせを用いて評価することができる。
<音響外傷難聴モデル動物の作製方法>
本発明により、ヒトへの臨床応用にも適用可能な研究を実施可能な音響外傷難聴モデル動物を、再現性よく提供可能となる。音響外傷難聴モデル動物の作製方法は、以下の工程を含んでいる。
非ヒト霊長類動物に、1kHz~32kHzの周波数を有する、100dB~150dBの音圧レベルの音響を、10分~360分間暴露させることを特徴とする、音響外傷難聴モデル動物の作製方法。
本発明において用いられる非ヒト霊長類動物は、ヒトを除く霊長目に属する動物である。非ヒト霊長類動物を用いることにより、生物学的及び解剖学的にもヒトと類似した音響外傷難聴モデル動物が提供可能となる。また、従来の難聴モデル動物のような難聴レベルがばらつくことなく、再現性よく音響外傷モデル動物を作製することができる。
本発明で用いられる音響は、1kHz~32kHzの範囲の周波数を有する音響である。本発明で用いられる音響は、好ましくは、1kHz~32kHzのいずれかの周波数を中心とするオクターブバンド、さらに好ましくは、4kHz~16kHzのいずれかの周波数を中心とするオクターブバンド、例えば、8kHzの周波数を中心とするオクターブバンドを有する音響である。これにより、治療を実施しない場合には正常状態まで回復することが困難なダメージを、内耳に効率的に生じさせることができる。本明細書において、「nオクターブバンド」とは、ある周波数(fM)を中心として上限と下限の周波数の比率がnオクターブになる周波数の幅(帯域幅)のことをいい、周波数(fm)を中心とするnオクターブバンドの上限と下限周波数(fH及びfL)は以下のようになる。
Figure 0007044294000001
Figure 0007044294000002
したがって、8kHzの周波数を中心とするオクターブバンド(1オクターブバンド)を有する音響であれば、約5.65kHz~約11.31kHzの周波数の幅を有する音響であることを意味する。
対象(音響外傷モデル動物)に、一定の周波数の幅の音響を負荷することにより、蝸牛の広範囲の有毛細胞(頂回転(1kH未満)~中回転(約1kHz)~基底回転(約16kHz))、特に、蝸牛の中回転~基底回転の有毛細胞にダメージを与えることができる。
本発明で用いられる音響は、100dB~150dBの音圧レベルの音響であり、好ましくは、125dB~150dBの音圧レベルの音響である。この音圧レベルの音響の負荷を与えることにより、従来の難聴モデル動物のような難聴レベルがばらつくことなく、再現性よく音響外傷モデル動物を作製することができる。
一実施態様において、本発明は、図1に示す音響暴露装置1により実施することができる。音響暴露装置1は、1kHz~32kHzの周波数の音を発生させる音響発生装置10と、音響発生装置10によって発生させた音を100dB~150dBの音圧レベルまで増幅させる音響増幅装置11と、音響増幅装置11により増幅された音を出力するための外部出力装置12とを含んでいる。外部出力装置12は、公知のスピーカーであってもよく、耳全体を覆うようにして装着するヘッドホンタイプであってもよく、外耳孔に挿入して装着するイヤホンタイプであってもよい。本発明において発生させる音響は、100dB~150dBの音圧レベルの音響であり、そのエネルギーが強大なため、大量の熱が発生してしまう。そのため、外部出力装置12は、音響外傷難聴モデル動物Sに接触させることなく音響暴露を可能とするスピーカータイプであることが好ましい。音響増幅装置11と、外部出力装置12は一体となったものであってもよい。
図1には図示されないが、音響暴露装置1は、音響外傷難聴モデル動物Sとともに防音箱内に設置される。
一実施態様において、音響暴露装置1は、2つの外部出力装置12を有し、外部出力装置12の各々は、針金状のアーム13によってラック20から吊り下げて使用される。外部出力装置12は、1つ使用されてもよく、好ましくは2つ以上使用される。外部出力装置12が2つ以上用いられる場合、図1に示す通り、音響を音響外傷難聴モデル動物Sの外耳の外側から、両方の耳に等しく暴露させる位置に配置することが好ましい。それによって、左右の耳に等しく聴力低下をさせることができる。音響外傷難聴モデル動物Sの外耳道入口部の位置は、種差や個体差が大きいので、アーム13の長さ及びラック20への取り付け位置を調整することにより、細やかに外部出力装置12の位置調整が可能となる。これにより、外部出力装置12から、両耳に等しく音圧を加えることが可能となり、再現性よく、音響外傷難聴モデル動物を作製することが可能となる。外部出力装置12をラック20から吊り下げるのではなく、スタンド等を用いて自立可能にしてもよい。それによって、音響外傷難聴モデル動物Sの大きさ及び姿勢に応じて、外部出力装置12を自由に配置することができる。
音響暴露は、音響外傷難聴モデル動物Sに、全身麻酔を実施し、図1に示されるように人工呼吸器31の気管内チューブ30の挿管管理下にて実施されることが好ましい。全身麻酔を実施することにより、音響外傷難聴モデル動物Sの苦痛を和らげると同時に、安全に固定することができ、外部出力装置12から出力される音響を確実に耳に暴露することができる。全身麻酔は、公知の方法に従って実施することができる。なお、全身麻酔ではなく、音響外傷難聴モデル動物Sを物理的に拘束することによって、固定するようにしてもよい。
音響外傷難聴モデル動物Sに全身麻酔を実施した後の呼吸を管理するために、人工呼吸器31が用いられる。さらに、音響暴露中の音響外傷難聴モデル動物Sの全身状態をモニターするために、例えば、パルオキシメーター41によって、動脈血の酸素飽和度及び心拍数をモニターすることが好ましい。また、さらに音響外傷難聴モデル動物Sの全身状態をモニターするために、直腸音検出装置、呼気中二酸化炭素濃度検出装置、呼気中麻酔濃度測定装置などをさらに備えてもよい。
本発明において、前記音響は、音響外傷難聴モデル動物Sに10分~360分間暴露される。前記音響を暴露する時間は、前記音圧レベルの大きさに応じて、適宜変更してもよいが、好ましくは30分~300分間、より好ましくは60分~240分間、さらに好ましくは120分~240分間である。
<音響外傷難聴モデル動物の作製方法により得られる音響外傷難聴モデル動物>
本発明により、音響外傷難聴モデル動物が提供される。提供された音響外傷難聴モデル動物は、特に治療等を行わない限り、一定期間聴力が回復せず、難聴状態を維持するものであって、左右の難聴レベルにほとんど差が無い音響外傷難聴モデル動物である。そのため、従来の音響外傷難聴モデル動物で課題となっていた、左右の難聴レベルの差異に起因する陰影聴取による測定誤差が少なく、正確な聴力測定を可能とする。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。なお、本実施例において、非ヒト霊長類動物を用いた実験プロトコールは、東京慈恵会医科大学及び慶應義塾大学の動物実験に関する倫理委員会によって承認されたものであり、「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」(文部科学省)に沿って実施した。
1.音響外傷難聴モデル動物の作製
聴力正常のコモンマーモセット(2~9歳、日本クレア)を用いた。イソフルラン3~5%と、三種混合筋注麻酔(メデトメジン 40μg/kg、ミダゾラム 0.4mg/kg、ブトルファノール 0.40mg/kg)で導入し、人工呼吸器で挿管管理した個体を、防音箱内に入れて音響暴露装置下に置いた。音響暴露にはPDBT35/パイルドライバー社製スピーカーを使用し、音響条件1)単一スピーカーによる8kHz中心124dBオクターブバンド、音響条件2)2つのスピーカーによる8kHz中心130dBオクターブバンドの二つの音響条件で、3時間暴露した。音響暴露中のコモンマーモセットの心拍数、経皮的血中酸素飽和度、直腸音、呼気中二酸化炭素濃度・イソフルラン濃度をモニターした。音響曝露には以下の装置を用いた。
<音響暴露装置>
・スピーカー:パイルドライバー社製 PDBT35
・ラック(高さ12cm×横20cm×奥行15cm)
・直径3mmの針金(スピーカーをラックに固定、位置調整用)
・バンドノイズ発生装置:RION オージオメーター AA-67N
・パワーアンプ:XLS 1502(AMCRON(登録商標))
2.難聴レベルの評価方法
音響外傷の機能評価として、以下の機器と手順により、音響暴露前後のABR(図2)及びDPOAE(図3)を検出した。
<ABR>
・ABR測定・音響発生装置(TDT(登録商標)MF1,RP2.1,PA5,RA16)
・スピーカー(TDT(登録商標)ED1)鼓膜より1cmに設置
・音刺激:クリック音:0.1msec pulses
トーンバースト音:1.0msec duration
・解析ソフト:BioSigRPにて得られた波形を解析した。
<DPOAE>
・測定プローブ:ER-10C(Etymotic Research)
・測定音響信号のデジタル化:RP2.1(TDT(登録商標))
・Microphone Amplifier(バイオリサーチ社に委託し作成)
・波形取得解析用PC:Dell Optilex 3020
・波形解析ソフト:LabViewにて国際医療福祉大学原田竜彦先生により作成。
3.組織学的解析
組織学的に評価するために、音響暴露後のコモンマーモセットからコルチ器を採取して、抗myo7a抗体を用いて免疫染色を行い、蝸牛有毛細胞数を定量した(図4~図6)。以下に手順を具体的に示す。
(1)検体採取・・・コモンマーモセットを安楽死後、3時間以内に蝸牛を含む内耳骨包採取した。
(2)組織固定・・・正円窓、卵円窓より4%パラホルムアルデヒド溶液を注入し、50mlコニカルチューブ内で4%パラホルムアルデヒド溶液内で4℃にて2日間留置した。
(3)脱灰・・・内耳は骨組織で覆われているため、脱灰を要する。固定後のサンプルをEDTA(0.5mM)溶液に入れ替え、室温で3週間脱灰した。
(4)組織採取・・・脱灰した骨包を取り外し、蝸牛のコルチ器を採取した。
(5)免疫染色・・・蝸牛有毛細胞マーカーであるMyo7aを、マウス産生抗Myo7a抗体(Developmental Studies Hybridoma Bank、Antibody ID:AB_2282417)と、ドンキー産生抗マウスIgG抗体(ライフテクノロジーズ社、カタログ番号:A21202)を用いて免疫染色を行った。
(6)組織観察・・・免疫染色後はコンフォーカル顕微鏡(ZEISS LSM880)にて観察し画像撮影を行った。
(7)画像解析・・・画像解析ソフトImageJを用いて、細胞数をカウントした。
4.行動解析
また、行動解析として録画・録音による発語数・種類を以下の機器を用いて記録した。
・録画機器:ハンディカム(登録商標) HDR-CX390(ソニー社、日本)
・録音機器:マイクロフォンAT9913(オーディオテクニカ社)を用いて録音録画を同時に実施した。
5.結果
音響条件1)を負荷した2体のコモンマーモセットでは、1体でABR閾値の大きな変動を認め、恒久的閾値上昇が認められたが、1体は一過性閾値上昇に留まっていた。他方、音響条件2)では、安定したABRでの恒久的閾値上昇と、DPOAEレベル低下・閾値上昇が得られ(図2及び3)、蝸牛有毛細胞の減少(図4~6)、発語数の変化・低下も確認された(表1)。
Figure 0007044294000003
コモンマーモセットは、側頭骨解剖、聴覚生理検査所見や遺伝子発現パターンでヒトと酷似している。今回得られた音響外傷モデルは暴露後6週間まで難聴の残存を認め、恒久的閾値上昇モデルと考えられた。コモンマーモセットは飼育環境下でコロニーを形成し、言語コミュニケーションを活発に行う。音響暴露により言語数・種類の減少を認めたことは、本モデルが難聴に伴う社会活動の制限を再現している可能性があり、fMRIやNIRSなどの霊長類脳科学との融合による新たな研究が今後期待できる。
安定したコモンマーモセット音響外傷恒久的閾値上昇モデルを樹立した。橋渡し研究における非臨床POC取得のためのツールとして応用が期待される。
1 音響暴露装置
10 音響発生装置
11 音響増幅装置
12 外部出力装置
13 アーム
20 ラック
30 気管内チューブ
31 人工呼吸器
40 プローブ
41 パルオキシメーター
S 音響外傷難聴モデル動物

Claims (5)

  1. 1kHz~32kHzの周波数を有する、100dB~150dBの音圧レベルの音響を発生させる音響発生装置を具備し、
    前記音響発生装置が2つの外部出力装置を有し、
    前記2つの外部出力装置が、音響外傷難聴モデル動物の外耳道入口部の位置に配置されることを特徴とする、音響外傷難聴モデル動物の作製用の音響暴露装置。
  2. 前記2つの外部出力装置が吊り下げられるラック、又は、前記2つの外部出力装置を自立させるスタンドをさらに具備する、請求項1に記載の音響暴露装置。
  3. 前記周波数が、1kHz~32kHzのいずれかの周波数を中心とするオクターブバンドである、請求項1又は2に記載の音響暴露装置。
  4. 前記周波数が、4kHz~16kHzのいずれかの周波数を中心とするオクターブバンドである、請求項1~3のいずれか1項に記載の音響暴露装置。
  5. 前記音圧レベルが、125dB~150dBである、請求項1~のいずれか1項に記載の音響暴露装置。
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Hearing Research,Elsevier,2017年07月08日,vol.353,pp.213-223

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