<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る農作物関連値導出装置1の構成例を示すブロック図である。農作物関連値導出装置1は、稲作に関して、追肥(追肥についての詳細は後述)時に施す肥料の量(以下「追肥時施肥量」という)を導出し、追肥時施肥量を示す情報をユーザに提供する装置である。追肥時施肥量は、特許請求の範囲の「農作物関連値」に相当する。特に本実施形態に係る農作物関連値導出装置1は、複数の圃場(領域)を対象として、複数の圃場のそれぞれについて追肥時施肥量を導出する。ユーザは、追肥にあたって農作物関連値導出装置1により提供された追肥時施肥量を示す情報を参考にして、実際に施す肥料の量を適切に決定することができる。なお、本実施形態で「施肥量」という場合、特に説明がない限り、単位面積あたりの肥料の量を指す。
以下の説明では、対象とする稲および稲作について、稲の品種や、稲作が行われる環境(地域(寒冷地域や、温暖地域、乾燥地域等)、標高、圃場の規模)、稲作の方法、肥料の種類、その他の稲の生育に影響を与える外部的な要素は共通しているものとする。従って、農作物関連値導出装置1により導出された追肥時施肥量は、特定の環境で特定の方法により栽培される特定の品種の稲について、特定の種類の肥料を施す場合に適切な施肥量ということである。
本実施形態において、「追肥」とは以下を意味する。すなわち一般に、ある1つの期において、稲は、田植えによって苗代から圃場に移植された後、分げつ期→幼穂形成期→出穂期→開花・受粉期→穂揃期→登熟期→成熟期という段階を経て成長する。幼穂形成期前後から出穂期前後に至るまでの期間(以下「追肥対象期間」という)では、通常、穂に着生する籾の個数の増大や、籾に詰まるデンプンの量の増大等を目的として、所定のタイミングで穂肥と呼ばれる肥料の追加が行われる。そして本実施形態では、「追肥」とは、追肥対象期間における所定のタイミングで行われる肥料の追加を意味する。
図1で示すように、農作物関連値導出装置1には、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等の表示装置2と、マウスやキーボード等の入力装置3とが接続されている。また図1で示すように、農作物関連値導出装置1は、機能構成として、第1実際値取得部10、補正部11および農作物関連値導出部12を備えている。上記各機能ブロック10~12は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~12は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。また、農作物関連値導出装置1は、記憶手段として記憶部13を備えている。記憶部13に記憶されるデータについては後述する。
本実施形態では、農作物関連値導出装置1は、ユーザから入力装置3に対して追肥時施肥量を示す情報の提供の指示(以下「情報提供指示」という)があったことをトリガとして、圃場毎の追肥時施肥量を導出し、当該情報を提供する。以下、ユーザから入力装置3に対して情報提供指示があったときの農作物関連値導出装置1の動作について詳述する。以下の説明では、説明の便宜のため、農作物関連値導出装置1は、10個の圃場を対象として追肥時施肥量を導出するものとする。また追肥時施肥量を導出する対象の10個の圃場を「対象圃場」という。なお追肥時施肥量の導出に関する処理を開始するトリガは本実施形態で例示するものに限られず、例えば、予め定められた日時が到来したことをトリガとしてもよい。
第1実際値取得部10は、入力装置3に対して情報提供指示があったことを検出すると、以下の処理を実行する。すなわち、まず第1実際値取得部10は、記憶部13に記憶された上空データを取得する。上空データとは、追肥を行うタイミングの前の所定のタイミング(以下「測定タイミング」という)で、ドローンに搭載されたマルチスペクトルセンサにより、10個の圃場の稲の群落が上空(遠隔)から一括して撮影されることによって生成された画像データである。測定タイミングは、追肥時施肥量の導出に利用する上空データを得るための撮影を行うタイミングとして予め定められたタイミングであり、例えば、追肥を行うタイミングの直前や、出穂の3週間前、出穂の4週間前等とされる。なお、本実施形態では、上空データの生成に際し、対象となる全ての圃場が一括して撮影されたこととしているが、圃場の群が上空から複数回にわたって撮影され、その複数回の撮影結果に基づいて上空データが生成されてもよい。この場合に、上空データは、単一のデータである必要はなく、複数のデータの集合であってもよい。
ただし本実施形態では、ドローンに搭載されたマルチスペクトルセンサによる撮影は、撮影タイミング(特定の時期)において特定のスペックのマルチスペクトルセンサを利用して、特定の時間帯で特定の位置(高度を含む3次元的な位置)から行われる。例えば、ドローンが無線操縦機による遠隔操縦によって飛行するものである場合、ドローンの3次元的な位置を示す情報が常時、操縦者に対して提供され、操縦者は、提供された情報に基づいて、ドローンの3次元的な位置を把握しつつ、ドローンを特定の位置に至らせ、その後、マルチスペクトルセンサによる撮影を実行させる。また、ドローンが自律飛行可能な場合は、特定の位置が目標飛行位置として設定され、ドローンがこの目標飛行位置に至った後、撮影が実行される。
第1実際値取得部10は、取得した上空データを分析し、周知の方法で対象圃場毎のNDVIの指標値の実際の値(実際値)を導出し、取得する。なお、上空データにおける個々の対象圃場の領域を示す情報等の、上空データに基づいて対象圃場毎のNDVIに係る実際値を導出するために必要な情報は事前に登録されている。以下、上空データに基づいて第1実際値取得部10により取得された対象圃場毎のNDVIに係る実際値を特に「上空NDVI値」という。NDVI(指標としてのNDVI)は、特許請求の範囲の「第1指標」に相当し、特に「ドローンを用いた上空からのセンシングにより得られるNDVI」に相当する。また上空NDVI値は、特許請求の範囲の「第1実際値」に相当し、
ここで本実施形態では、上空NDVI値の導出にあたって使用される上空データは、ドローンに搭載されたマルチスペクトルセンサの撮影結果に基づいて生成されるものである。このように、上空データの生成にあたってドローンを使用することにより、簡易な手段で複数の圃場にわたる広い領域を撮影することが可能であり、作業にかかる時間を短くし、また作業にかかる労力を低減することができる。なお、観測(センシング)に用いる装置は、マルチスペクトルセンサに限られず、一例として、赤外線サーモグラフィであってもよい。また、指標(第1指標)は、NDVIに限られない。また、観測は、必ずしもドローンを用いて行われる必要はなく、ドローン以外の飛行物に搭載された装置や、塔の上部に設置された装置、専用の設置台に設置された装置等を用いて行われたりしてもよい。また、上空NDVI値(またはこれに相当する第1実際値)の導出に、衛星写真を用いるようにしてもよい。
上述の通りドローンを利用して圃場を撮影し、その撮影結果に基づいて上空NDVI値を導出する場合、作業にかかる時間の短縮、労力の低減を図ることができる。その一方で、撮影タイミングにおいて同じ圃場を、同じスペックのマルチスペクトルセンサにより、同じ時間帯で同じ位置(上述したように高度を含む3次元的な位置)から撮影し、その撮影結果に基づいて対象圃場毎の上空NDVI値を導出したとしても、撮影が行われたときの日射量(観測が行われたときの状況)によって、導出される上空NDVI値の値が変化する。これは、上空NDVI値は、基本的には太陽を光源とする反射光の観測により値が求められるため、撮影時の日射量が少ないときには値が小さくなり、逆に日射量が多いときには値が大きくなるからである。つまり日射量は、対象となる領域(圃場)、観測機器(マルチスペクトルセンサ)のスペック、観測の時期(測定タイミング)および時間帯、および、観測の位置が同じ場合に、観測される第1指標(NDVI)の指標値に変化を与える自然環境の要素である。
なお本実施形態では第1実際値取得部10が上空NDVI値を導出し取得する構成であった。この点に関し、外部の装置により事前に対象圃場毎の上空NDVI値が導出され、第1実際値取得部10がそれを取得する構成としてもよい。ただし、この場合においても、上空NDVI値の生成のための対象圃場の撮影は、特定のスペックの撮影装置により、特定の時間帯に特定の位置から行われる。
さて第1実際値取得部10は、対象圃場のそれぞれの上空NDVI値を取得した後、取得した上空NDVI値を各圃場の識別情報と対応付けて補正部11に出力する。なお、10個の対象圃場のそれぞれには識別情報が事前に付与されており、個々の対象圃場は識別情報によって管理される。
補正部11は、10個の対象圃場のそれぞれについて、識別情報と共に上空NDVI値を入力すると、以下の処理を実行する。すなわち補正部11は、記憶部13にアクセスし、記憶部13に記憶された撮影時日射量情報を取得する。撮影時日射量情報は、上空NDVI値の導出の元となった上空データについての撮影が行われたときの全天日射量(以下、単に「日射量」という)を示す情報である。撮影が行われたときの日射量は、例えば、ドローンに設けられた日射センサにより計測される。ただし、日射量の計測方法は、どのような方法でもよい。日射量は、撮影が行われたときの天候の外、撮影が行われたときの時期、撮影が行われたときの時間帯等によっても変化し得る。
次いで、補正部11は、撮影時日射量情報が示す日射量(以下「撮影時日射量」という)の日射量レベル(特許請求の範囲の「日光の状況」に相当)を判定する。本実施形態では、日射量レベルとして、低レベル、中レベルおよび高レベル(ただし、低レベル<中レベル<高レベル)の3つのレベルが設定されており、低レベルと中レベルとの境の閾値、および、中レベルと高レベルとの境の閾値とが事前に定められている。一例として、「日射量≦2.0MJ/m2/h」のときは低レベル、「2.0MJ/m2/h≦日射量<3.0MJ/m2/h」のときは中レベル、「3.0MJ/m2/h≦日射量」のときは高レベルと定められている場合において、撮影日射量が「1.5MJ/m2/h」の場合、補正部11は、撮影時日射量の日射量レベルを低レベルと判定する。なお、本実施形態では、「中レベル」が特許請求の範囲の「所定日射量レベル」に相当する。
日射量レベルの判定後、補正部11は、日射量レベルによって異なる処理を実行する。以下、補正部11の処理を日射量レベル毎に説明する。以下では、日射量が低レベル、中レベルおよび高レベルのときの撮影結果に基づいて導出された上空NDVI値をそれぞれ、「低レベル時NDVI値」、「中レベル時NDVI値」および「高レベル時NDVI値」という。また各日射量レベルは、特許請求の範囲の「なり得る日光の状況」に相当する。
<低レベルの場合>
撮影時日射量の日射量レベルが低レベルの場合、補正部11は、対象圃場のそれぞれについて、低レベル時NDVI値変換式(特許請求の範囲の「第2計算式」に相当)を用いて、低レベル時NDVI値から補正NDVI値(特許請求の範囲の「補正値」に相当)を導出する。詳述すると、低レベル時NDVI値変換式は、低レベル時NDVI値を、日射量が中レベルのときに撮影が行われていたとしたときに導出される値(厳密には、導出される値にできるだけ近づけた値)に変換する式である。
従って、あるタイミングのある対象圃場について、仮に日射量の日射量レベルが低レベルであった場合に導出されるNDVIがα値であり、仮に日射量レベルが中レベルであった場合に導出されるNDVIがβ値であったとする。この場合において、α値を低レベル時NDVI値変換式に入力すると、当該計算式からβ値或いはβ値に近い値が出力される。低レベル時NDVI値変換式により変換された値(つまり、低レベル時変換式の出力)が「補正NDVI値」である。なお、本実施形態(後述する第2実施形態も同様)において、計算式は、単純な数式だけでなく、プログラム上で定義された関数(モデル)や、プログラムから呼び出し可能な関数(モデル)を概念的に表している。
低レベル時NDVI値変換式は、以下の方法で事前に導出される。すなわち、随時行われる研究、実験により、「生育の状態が同じ(或いは近似する)圃場に対して、日射量が異なる状況で撮影が行われて導出された上空NDVI値の群」というデータが相当数、蓄積される。生育の状態が同じ圃場は、例えば、生育の状態を示す草丈、茎数、葉色等が実地で観測され、観測結果に基づいて判定される。また例えば、生育の状態が同じ圃場は、日射量に影響を受けない(或いは影響が限定的な)指標値が共通する圃場とされる。日射量に影響を受けない(或いは影響が限定的な)指標値は、例えば、光源を有する携帯型NDVI測定機により測定されたNDVIの指標値である。そして、対象となる圃場の生育の状態が共通し、かつ、NDVIの指標値の導出に影響を与える環境のうち、日射量のみが変動し得るという状況における「日射量が低レベルのときに行われた撮影に基づくNDVIの指標値」と、「日射量が中レベルのときに行われた撮影に基づくNDVIの指標値」との相関関係が分析される。そして、分析された相関関係に基づいて、日射量レベルが低レベルであったときの撮影結果に基づいて導出されるNDVIの指標値を、中レベルで撮影が行われた場合の値(=補正NDVI値)に変換する低レベル時NDVI値変換式が導出される。
図2は、横軸が低レベル時NDVI値であり、縦軸が補正NDVI値である二次元空間に、低レベル時NDVI値変換式を示す線分(低レベル時NDVI値と補正NDVI値との対応関係を示す点の集合よりなる線分)を描画した図である。図2の例では、低レベル時NDVI値変換式は「補正NDVI値=低レベル時NDVI値+0.1」であり、例えば、低レベル時NDVI値が「0.4」の場合、補正NDVI値として「0.5」が導出される。なお、図2で示す低レベル時NDVI値変換式は、単純化した一例であり、二次以上の関数、その他の形式の関数として表される式であってもよく、また、関数ではなく、低レベル時NDVI値がとり得る値毎に、補正NDVI値を対応付けた表によって、低レベル時NDVI値と補正NDVI値との対応関係を定義付けたものであってもよい。
撮影時日射量の日射量レベルが低レベルの場合、補正部11は、対象圃場のそれぞれについて、上述した低レベル時NDVI値変換式に上空NDVI値(低レベル時NDVI値)を入力することによって、補正NDVI値を導出する。
<中レベルの場合>
撮影時日射量の日射量レベルが中レベルの場合、補正部11は、対象圃場のそれぞれについて、上空NDVI値(中レベル時NDVI値)をそのまま、補正NDVI値とする。なお、値の補正がなされないものについて「補正NDVI値」とするのは説明の便宜上のことである。
<高レベルの場合>
撮影時日射量の日射量レベルが高レベルの場合、補正部11は、対象圃場のそれぞれについて、高レベル時NDVI値変換式(特許請求の範囲の「第2計算式」に相当)を用いて、上空NDVI値に基づいて補正NDVI値を導出する。高レベル時NDVI値変換式は、高レベル時NDVI値を、日射量が中レベルのときに撮影が行われていたとした場合に導出される値(或いは導出される値に近い値)に変換する式である。高レベル時NDVI値変換式は、低レベル時NDVI値変換式と同様の方法で事前に導出される。
以上のように、補正部11は、撮影時日射量の日射量レベルに応じた方法で対象圃場毎の補正NDVI値を導出する。補正部11は、導出した補正NDVI値を各圃場の識別情報と対応付けて農作物関連値導出部12に出力する。
農作物関連値導出部12は、補正部11から、対象圃場毎に、補正NDVI値と識別情報との組み合わせを入力する。次いで、農作物関連値導出部12は、対象圃場のそれぞれについて、施肥量導出計算式(特許請求の範囲の「第1計算式」に相当)に補正NDVI値を入力し、出力値として得られる施肥量を最終的な追肥時施肥量として導出する。
施肥量導出計算式は、NDVIの指標値を入力し、追肥時施肥量を出力する計算式である。施肥量導出計算式に一のNDVIの指標値を入力したときに出力される施肥量は、追肥時のNDVIの指標値が入力された値であった場合に、所定のカテゴリについての農作物(農作物の収穫物も含む)の状態を目標状態とするために必要かつ適切な追肥時施肥量である。特に本実施形態に係る施肥量導出計算式は、日射量レベルが中レベルのときに行われた撮影結果に基づいて導出されるNDVIの指標値を入力し(所定の状況で観測が行われた場合の第1指標の指標値を入力し)、追肥時施肥量を出力する計算式である。
所定のカテゴリについての農作物の状態は例えば、農作物の外観的あるいは食味的な品質や、収穫物の収量、籾数、追肥後の生育過程の指標等である。追肥後の生育過程の指標は、例えば、追肥した後の穂揃期の葉緑素計値(SPAD値)である。なお、穂揃期の葉緑素計値(SPAD値)が一定値以上の場合は、品質が良いということができる。
例えば施肥量導出計算式の出力は、収穫物の収量(単位当たりの収量)を○○kgとするために必要かつ適切な追肥時施肥量である。この場合、収穫物の収量が「所定のカテゴリについての農作物の状態」に相当し、収量が○○kgであるという状態が「目標状態」に相当する。そしてこの場合、施肥量導出計算式の出力値分の肥料を追肥時に施すことによって、収穫物の収量が○○kgとなることが期待される。
また例えば、施肥量導出計算式の出力は、収穫物全体に対する低外観品質の収穫物の割合(以下「低品質割合」という)を○○%とするために必要かつ適切な追肥時施肥量である。なお、低外観品質の収穫物は、例えば、白未熟粒(腹白粒や、背白粒、基部未熟粒、心白粒、乳白粒等)や、その他の未熟粒、被害粒、死米、着色粒等とである。この場合、低品質割合が「所定のカテゴリについての農作物の状態」に相当し、低品質割合が○○%であるという状態が「目標状態」に相当する。そしてこの場合、施肥量導出計算式の出力値分の肥料を追肥時に施すことによって、低品質割合が○○%となることが期待される。なお、低品質割合に代えて、収穫物の「整粒」の割合としてもよいことは勿論である。
図3は、測定タイミングにおけるNDVIの指標値を縦軸とし、追肥時の施肥量を横軸とする2次元空間に描画された1次式によって、上述した低品質割合(所定のカテゴリについての農作物の状態)を5%(目標状態)とするときの、測定タイミングにおけるNDVIの指標値と追肥時の施肥量との関係を単純化して示している。図3で示すように、低品質割合を5%とするときの追肥時の施肥量と、測定タイミングにおけるNDVIの指標値との間には、NDVIの指標値が大きくなるほど施肥量が小さくなる関係がある。このように所定のカテゴリについての農作物の状態を目標状態とするときの、測定タイミングにおけるNDVIの指標値と追肥時の施肥量とには強い相関関係がある。
本実施形態では、施肥量導出計算式は、蓄積された過去の実際の追肥時の施肥量および測定タイミングにおけるNDVIの指標値の組み合わせと、所定のカテゴリについての農作物の状態との関係について、農作物の状態を目的変数とし、追肥時の施肥量および測定タイミングにおけるNDVIの指標値を説明変数とする重回帰分析を行って求められた重回帰式に基づいて求められる。ただし、本実施形態に係る施肥量導出計算式は、日射量レベルが中レベルのときに行われた撮影結果に基づいて導出されるNDVIの指標値が入力されることを前提とする計算式とされ、このようなNDVIの指標値が入力されたときに、適切な施肥量を出力するよう調整される。
詳述すると、事前に、実験や既存の圃場に対する観察により、追肥時の施肥量および測定タイミングのNDVIの指標値の組み合わせと、所定のカテゴリについての農作物の状態との関係を示すデータ、つまり、追肥時の施肥量が○○であり、測定タイミングのNDVIの指標値が○○であった場合に、所定のカテゴリについての農作物の状態は○○であったというデータが蓄積される。このときの追肥時のNDVIの指標値は、上述した低レベル時NDVI値変換式や高レベル時NDVI値変換式を利用して、撮影時の日射量レベルが中レベルであったとした場合のNDVIの指標値に適切に変換される。所定のカテゴリについての農作物の状態は、様々な観点から定義可能である。
そして蓄積されたデータについて、所定のカテゴリについての農作物の状態を目的変数とし、追肥時の施肥量および測定タイミングのNDVIの指標値を説明変数とする重回帰分析が行われ、農作物の状態を目標状態とするための追肥時の施肥量と測定タイミングのNDVIの指標値との関係が定義された重回帰式が生成される。例えば農作物の状態が上述した低品質割合である場合には、低品質割合を目標状態(一例として5%)とするための、追肥時の施肥量と測定タイミングのNDVIの指標値との関係が定義された重回帰式が生成される。そして重回帰式に基づいて、NDVIの指標値を入力とし、重回帰式により表されるNDVIの指標値と施肥量との関係から決定される施肥量を出力とする施肥量導出計算式が生成される。このようにして生成される施肥量導出計算式の出力は、測定タイミングのNDVIの指標値が入力された値である場合に農作物の状態を目標状態とするために必要かつ適切な追肥時の施肥量に相当する。なお重回帰式を、稲の生育時期毎、例えば出穂前30日、25日、20日、15日、10日、5日といったように作成するようにしてもよい。この場合において、生育診断する時期が出穂前何日なのかを判定するには、作付け地点、品種、移植日、苗の葉齢及び苗姿、気温や、日長時間等から推定したり、幼穂の長さから推定したりすることができる。
なお本実施形態の施肥量導出計算式の内容は、あくまで単純化した一例である。施肥量導出計算式は、測定タイミングのNDVIの指標値を入力の1つとし、農作物の状態を目標状態とするために必要かつ適切な追肥時の施肥量を出力する計算式であれば、どのようなものであってもよい。一例として測定タイミングのNDVI以外に、農作物の状態に影響を与える要素の要素値を入力とし、当該要素を加味して追肥時の施肥量を出力する式であってもよい。当該要素は、一例として、特定の期間の気温(到来していない期間(例えば登熟期)については予想気温)や、特定の期間における雨量等である。また、施肥量導出計算式は重回帰分析により生成されるものである必要はなく、施肥量導出計算式の生成には様々な機械学習(一例としてニューラルネットワークを用いた機械学習)を応用可能である。
さて10個の対象圃場のそれぞれについて最終的な追肥時施肥量を導出した後、農作物関連値導出部12は、表示装置2を制御して、10個の対象圃場のそれぞれについて識別情報と対応付けて、導出した追肥時施肥量を示す情報を表示装置2の表示領域に表示する。ユーザは、表示装置2を参照することにより、10個の対象圃場のそれぞれについて農作物関連値導出装置1が導出した追肥時施肥量を認識でき、追肥の際に実際に供給する施肥量を決定するときの参考とすることができる。
以上の通り、本実施形態に係る農作物関連値導出装置1は、対象圃場の上空NDVI値(第1実際値)を取得すると共に、上空NDVI値を、対象圃場に対するドローンに搭載されたセンサからの撮影(遠隔からの観測)が行われたときの日射量(状況、日光の状況)に基づいて、日射量レベルが中レベル(所定の状況、所定の日光の状況)で撮影が行われた場合の値となるように補正して補正NDVI値(補正値)を導出する。そして、日射量レベルが中レベルのときに撮影が行われた場合(所定の状況で観測が行われた場合)のNDVIの指標値を入力とし追肥時の施肥量(農作物関連値)を出力とする施肥量導出計算式(第1計算式)に補正NDVI値を入力することによって、対象圃場への追肥時の施肥量を導出する。
この構成によれば、追肥時の施肥量を導出するにあたって、圃場に対する遠隔からの観測により得られた上空NDVI値がそのまま施肥量導出計算式に入力されるのではなく、日射量レベルが中レベルのときに撮影が行われた場合の値となるように補正された上で入力される。このため、撮影が行われたときの日射量に応じて実際値の値が変化するという中で、日射量レベルが中レベルという統一された状況で観測が行われた場合の値となるように上空NDVI値を補正し、補正によって生成された補正NDVI値を施肥量導出計算式に入力することができ、これにより撮影時の日射量に応じた上空NDVI値の変化に起因する精度の低下を抑制した状態で施肥量を導出することができる。
次に本実施形態に係る農作物関連値導出装置1の動作(特に、情報提供指示があった場合の動作)について図4のフローチャートを用いて説明する。以下の説明では、農作物関連値導出装置1は、複数個の圃場を対象として追肥時施肥量を決定するものとする。
図4で示すように、第1実際値取得部10は、入力装置3に対して情報提供指示があったことを検出すると、上空データに基づいて、対象圃場のそれぞれの上空NDVI値を取得する(ステップSA1)。対象圃場のそれぞれの上空NDVI値は、第1実際値取得部10から補正部11に対して出力される。補正部11は、記憶部13に記憶された撮影時日射量情報を取得し、当該情報に基づいて撮影時日射量の日射量レベルを判定する(ステップSA2)。
次いで、補正部11は、日射量レベルに応じた方法で対象圃場毎の補正NDVI値を導出する(ステップSA3)。ステップSA3において、補正部11は、日射量レベルが低レベルの場合には低レベル時NDVI値変換式を用いて補正NDVI値を導出し、日射量レベルが高レベルの場合には高レベル時NDVI値変換式を用いて補正NDVI値を導出し、日射量レベルが中レベルの場合には上空NDVI値をそのまま補正NDVI値とする。対象圃場のそれぞれの補正NDVI値は、補正部11から農作物関連値導出部12に対して出力される。農作物関連値導出部12は、対象圃場のそれぞれについて、補正NDVI値に基づいて、施肥量導出計算式を用いて、追肥時施肥量を導出する(ステップSA4)。農作物関連値導出部12は、ステップSA4で導出した追肥時施肥量を示す情報を表示する(ステップSA5)。
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態では、日射量レベルを、低、中、高の3つのレベルに分ける構成としたが、これは説明の簡単のためであり、日射量レベルを2つに分ける構成としてもよく、4つ以上のレベルに分ける構成としてもよい。この場合、何れか1つのレベル(「基準レベル」とする)を「所定日射量レベル」に相当させ、他の日射量レベルに対応する上空NDVI値を、基準レベルに対応する補正NDVI値に変換する必要がある。また、施肥量導出計算式は、基準レベルに対応するNDVIの指標値を入力したときに、適切な追肥時施肥量を導出する計算式とされる。
また日射量をレベル分けせずに、補正部11が、上空NDVI値を、所定日射量(レベルのように幅を持った概念ではなく、ピンポイントの値)で撮影が行われた場合の値となるように補正する構成としてもよい。この場合、例えば、撮影時日射量および上空NDVI値を入力とし、補正NDVI値を出力とする計算式(特許請求の範囲の「第2計算式」に相当)が研究やシミュレーションにより事前に導出され、補正部11は、この計算式を用いて上空NDVI値から補正NDVI値を導出する。また、この場合、施肥量導出計算式は、所定日射量で行われた撮影結果に基づくNDVIの指標値を入力とし、施肥量を出力とする計算式とされ、農作物関連値導出部12は、このような施肥量導出計算式を用いて、補正NDVI値から追肥時施肥量を導出する。
また、上記第1実施形態では、「領域に対する遠隔からの観測が行われたときの状況」は、日射量であり、日射量が、特許請求の範囲の「対象となる領域、観測機器のスペック、観測の時期および時間帯、および、観測の位置が同じ場合に、観測される第1指標の指標値に変化を与える自然環境の要素の状況」、「日光の状況」に相当した。しかしながら、自然環境の要素の状況は、日射量に限らず、例えば、気温や湿度、天候の状態が第1指標値に変化を与える場合に、これらを自然環境の要素の状況に含めてもよい。また、自然環境の要素の状況は1つに限らず、複数の組み合わせ(例えば、日射量と温度との組み合わせ)であってもよい。
特に「日光の状況」については、上記第1実施形態の日射量(全天日射量)のほか、全天日射量、散乱光量或いはその割合、直達光量或いはその割合、または、太陽高度の何れか1つまたは2つ以上の組み合わせであってもよい。
また「領域に対する遠隔からの観測が行われたときの状況」は、領域(第1実施形態では圃場)に対する遠隔からの観測が行われたときの時間的な状況であってもよい。この場合、補正部11は、第1実際値取得部10により取得された上空NDVI値(第1実際値)を、圃場(領域)に対する遠隔からの観測が行われたときの時間的な状況に基づいて、時間的な状況が所定の時間的な状況で観測が行われた場合の値となるように補正して補正値を導出する。農作物関連値導出部12は、所定の時間的な状況で観測が行われた場合のNDVI(第1指標)の指標値を入力とし追肥時の施肥量(農作物関連値)を出力とする第1計算式に補正部11により導出された補正値を入力することによって、追肥時の施肥量(農作物関連値)を導出する。また、なり得る時間的な状況ごとに、各時間的な状況で観測が行われた場合のNDVIの指標値(第1指標の指標値)を、所定の時間的な状況で観測が行われた場合のNDVIの指標値(第1指標の指標値)に変換する第2計算式が事前に導出され、補正部11は、第2計算式を用いて補正値を導出する。
時間的な状況は例えば、観測が行われた時期、または、観測が行われた時間帯である。例えば時間的な状況が「観測が行われた時期」である場合、マルチスペクトルセンサによる撮影が行われる時期が固定されていない状況下において(その他の状況は原則的に一致し或いは近似した状態とされる)、補正部11は、事前に用意された第2計算式を用いて第1実際値取得部10により取得された上空NDVI値を、予め定められた特定の時期で撮影されたとした場合の値となるように補正して補正値を導出する。また例えば時間的な状況が「観測が行われた時間帯」である場合、マルチスペクトルセンサによる撮影が行われる時間帯が固定されていない状況下において(その他の状況は原則的に一致し或いは近似した状態とされる)、補正部11は、事前に用意された第2計算式を用いて第1実際値取得部10により取得された上空NDVI値を、予め定められた特定の時間帯で撮影されたとした場合の値となるように補正して補正値を導出する。
また「領域に対する遠隔からの観測が行われたときの状況」は、領域(第1実施形態では圃場)に対する遠隔からの観測が行われたときの場所的な状況であってもよい。この場合、補正部11は、第1実際値取得部10により取得された上空NDVI値(第1実際値)を、圃場(領域)に対する遠隔からの観測が行われたときの場所的な状況に基づいて、場所的な状況が所定の場所的な状況で観測が行われた場合の値となるように補正して補正値を導出する。農作物関連値導出部12は、所定の場所的な状況で観測が行われた場合のNDVI(第1指標)の指標値を入力とし追肥時の施肥量(農作物関連値)を出力とする第1計算式に補正部11により導出された補正値を入力することによって、追肥時の施肥量(農作物関連値)を導出する。また、なり得る場所的な状況ごとに、各場所的な状況で観測が行われた場合のNDVIの指標値(第1指標の指標値)を、所定の場所的な状況で観測が行われた場合のNDVIの指標値(第1指標の指標値)に変換する第2計算式が事前に導出され、補正部11は、第2計算式を用いて補正値を導出する。
場所的な状況は例えば、観測が行われた場所の緯度である。例えば場所的な状況が「観測が行われた場所の緯度」である場合、マルチスペクトルセンサによる撮影が行われる場所の緯度が固定されていない状況下において(その他の状況は原則的に一致し或いは近似した状態とされる)、補正部11は、事前に用意された第2計算式を用いて第1実際値取得部10により取得された上空NDVI値を、予め定められた特定の緯度で撮影されたとした場合の値となるように補正して補正値を導出する。
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係る農作物関連値導出装置1Aの機能構成例を示すブロック図である。図5で示すように、本実施形態に係る農作物関連値導出装置1Aは、機能構成として、第1実際値取得部10Aと第2実際値取得部20と補正部11Aと農作物関連値導出部12Aとを備えている。また、農作物関連値導出装置1Aは、記憶手段として、記憶部13Aを備えている。以下、農作物関連値導出装置1Aは、第1実施形態に係る農作物関連値導出装置1と同様、情報提供指示があった場合に、対象となる圃場毎の追肥時施肥量を導出し、追肥時施肥量を示す情報を提供する。以下、追肥時施肥量を決定する対象となる圃場が10個であるものとして、情報提供指示があった後の農作物関連値導出装置1Aの動作について説明する
第1実際値取得部10Aは、入力装置3に対して情報提供指示があったことを検出すると、上空データを取得する。上述の通り、上空データは、追肥を行うタイミングに近いタイミングで、ドローンに搭載されたマルチスペクトルセンサにより、10個の圃場の稲の群落が上空から一括して撮影されることによって生成された画像データである(ただし、第1実施形態で説明した通り、上空データは、必ずしも「一括して行われた撮影」に基づいて生成される必要はなく、複数回の撮影に基づいて生成されてもよい。)。ただし、第1実施形態では、上空データのための撮影は、必ずしもドローンを用いて行われる必要はないとしたが、本実施形態では、当該撮影は、ドローン或いはドローンに準じた装置のように、高度を変更可能な飛行物に搭載されたセンサにより行われている。上空データのための撮影は、10個の圃場を一括して撮影可能な程度に十分に高い高度から行われることになる。本実施形態では、上空データのための撮影は、高度「100メートル」において行われたものとする。上空データのための撮影が行われたときのドローンの高度は、特許請求の範囲の「第1高度」に相当する。上空データを取得した後、第1実際値取得部10Aは、上空データに基づいて、第1実施形態に係る第1実際値取得部10と同様の方法で、対象圃場毎の上空NDVI値を導出し、取得する。
上空NDVI値の導出にあたって使用される上空データは、ドローンに搭載されたマルチスペクトルセンサの撮影結果に基づいて生成されるものである。上述の通り、ドローンを使用し、複数の圃場を一括して撮影することによって上空データを生成することにより、作業にかかる時間を短くすることができ、作業にかかる労力を低減することができる。しかしながら、複数の圃場を一括して撮影できる程度にドローンの高度を高くすることに起因して、導出される上空NDVI値の精度が、高度が低い状態での撮影結果に基づくNDVIの精度と比較して低下してしまう。同じ自然環境(日射量を含む)の下、同じ圃場を同じスペックのマルチスペクトルセンサによって撮影した場合であっても、撮影が行われたときのドローンの高度が高いほど、上空NDVI値の精度が低下するからである。これは、ドローンの高度が高いほど、観測対象(被写体)たる圃場とマルチスペクトルセンサとの離間距離が大きくなり、当該離間距離が大きくなると、解像度が低下し(=1つの圃場に割り当てられる画素数が低下し)、また、センサが検出する反射光が弱まることに起因する。なお、本実施形態では、上空データの生成にあたり、10個の圃場を高度「100メートル」の位置にて撮影したこととしているが、これはあくまで説明の単純化を考慮した一例である。撮影位置の高度や、1回の撮影により撮影する範囲、その他の撮影の具体的な態様は、状況に応じて適切に定められるべきものである。また、広い領域(一例として100haを超える領域)を対象とする際に、十分に高い高度(第1高度)から、複数回にわたって領域を分割して撮影し、撮影結果に基づく各画像データをオルソ補正により結合しこれを上空NDVI値とするようにしてもよい。
さて、第1実際値取得部10Aは、対象圃場毎の上空NDVI値を導出し、取得した後、取得した上空NDVI値を各圃場の識別情報と対応付けて補正部11Aに出力する。
第2実際値取得部20は、入力装置3に対して情報提供指示があったことを検出すると、記憶部13Aに記憶された3個の対象圃場のそれぞれについての低空データのそれぞれを取得する。ある1つの対象圃場についての低空データとは、ドローンがその対象圃場に十分に近い特定の高度に位置した状態でマルチスペクトルセンサにより実行された撮影により生成された画像データである。低空データに係る高度(特定の高度)は、10個の対象圃場全体を撮影可能な程度に高い必要はなく、撮影対象の1つの対象圃場の一部が撮影できる高さであればよいため、上空データに係る高度よりも十分に低い。本実施形態では、低空データに係る高度は、「30メートル」であるものとする。低空データは、3個の対象圃場のそれぞれが低空で撮影されることによって、3個の対象圃場についてのみ生成され、それ以外の7個の対象圃場についての低空データは生成されない。
ここで、3個の対象圃場は、10個の対象圃場から稲の生育量の相違に着目して選択された3個の対象圃場であり、本実施形態では、生育量が最も多い圃場(以下「最大圃場」という)と、生育量が最も少ない圃場(以下「最小圃場」という)と、生育量が中間程度の圃場(以下「中間圃場」という)との3個の圃場が選択される。中間圃場は例えば、10個の対象圃場を生育量の多さで昇順に並べたときの5番目または6番目に位置する対象圃場とされる。また、中間圃場は例えば、最大圃場の生育量と最小圃場の生育量との中間の生育量に、生育量が最も近い圃場とされる。なお、各対象圃場の生育量は、例えば既存の技術による観測によって把握され、また例えば対象圃場毎に生育量が計画的に調整されている場合には、生育量の計画に基づいて把握される。以下、最大圃場、最小圃場および中間圃場を総称して「補正用圃場」という。
なお、補正用圃場の個数は、補正用圃場を含む対象圃場全体の個数よりも少ないものとされる。本実施形態では、補正用圃場の個数は3個となるため、対象圃場は4個以上とされる。ただし、後に明らかとなる通り、補正用圃場の個数に比べて対象圃場の個数が十分に多い場合に、ユーザは本実施形態に係る農作物関連値導出装置1Aによるメリットを効果的に得ることができる。このため、対象圃場の個数は、補正用圃場の個数よりも十分に多い方が好ましい。
記憶部13Aに記憶された3つの補正用圃場のそれぞれの低空データのそれぞれを取得した後、第2実際値取得部20は、取得した低空データのそれぞれを分析し、周知の方法で補正用圃場毎のNDVI(第1指標)の指標値の実際の値を導出し、取得する。以下、低空データに基づいて導出された補正用圃場のNDVIの指標値の実際の値を「低空NDVI値」という。低空NDVI値は、特許請求の範囲の「第2実際値」に相当する。上述した通り、低空NDVI値を生成する基礎となる低空データのための撮影は、上空データに係る撮影位置の高度(本実施形態では「100メートル」)と比較して十分に低い高度(本実施形態では「30メートル」)で行われたものである。従って、低空データに基づいて導出される低空NDVI値は、上空NDVI値と比較して、センサが検出する圃場の反射光の弱まりや解像度の低下に起因したNDVIの精度の低下が抑制されており、上空NDVI値よりも精度が高いと言える。
第2実際値取得部20は、3つの補正用圃場の低空NDVI値を導出し、取得した後、取得した低空NDVI値を各圃場の識別情報と対応付けて補正部11Aに出力する。
補正部11Aは、第1実際値取得部10Aから10個の対象圃場のそれぞれの上空NDVI値を入力し、第2実際値取得部20から3個の補正用圃場のそれぞれの低空NDVI値を入力すると、補正用計算式生成処理を実行する。以下、補正用計算式生成処理について詳述する。
補正用計算式生成処理において、補正部11Aは、3個の補正用圃場のそれぞれについて、低空NDVI値および上空NDVI値を取得する。次いで、補正部11Aは、横軸に上空NDVI値を取り縦軸に低空NDVI値を取った2次元空間に、3個の補正用圃場のそれぞれについての上空NDVI値と低空NDVI値との組み合わせを示す点をプロットする。次いで、補正部11Aは、プロットした各点の近似曲線を求める。補正部11Aは、近似曲線を表す式を、上空NDVI値を入力値として入力して、低空NDVI値を出力値として出力する計算式へと変換し、これを補正用計算式(特許請求の範囲の「第3計算式」に相当)とする。
例えば、図6で示すように、10個の圃場のそれぞれの識別情報がH01、H02、H03・・・H10であり、そのうち識別番号がH01、H02およびH09の3個の圃場が補正用圃場であったとする。また、識別番号がH01~H10の圃場についての上空NDVI値が図に示す通りであり、識別番号がH01、H02、H09の圃場について低空NDVI値が図に示す通りであったとする。この場合において、横軸に上空NDVI値を取り、縦軸に低空NDVI値を取った2次元空間に、識別番号がH01、H02およびH09の3個の補正用圃場のそれぞれについて、低空NDVI値と上空NDVI値との組み合わせを示す点をプロットし、またその近似曲線を求めると図7で示す通りになる。そして近似曲線に基づいて求められる補正用計算式は、「出力値(低空NDVI値)=入力値(上空NDVI値)+0.10」となる。
以下、高度100メートルからの撮影結果により得られたNDVIの指標値を「高高度指標値」といい、高度30メートルからの撮影結果により得られたNDVIの指標値を「低高度指標値」という。このような方法で生成される補正用計算式に一の高高度指標値を入力することによって得られる出力値は、補正用圃場を対象とした上空NDVI値と低空NDVI値との相関関係に準じて当該一の高高度指標値を仮想的に低高度指標値へと変換したものということができる。そして、上述の通り低高度指標値は、高高度指標値よりも精度が高く、補正用圃場を対象とした上空NDVI値と低空NDVI値との相関関係に準じて補正された出力値は、入力値よりも精度が高いNDVIの指標値ということができる。
ここで、上述したように本実施形態では、補正用圃場として、生育量が最も多い圃場と生育量が最も少ない圃場と生育量が中間程度の圃場との3個の圃場が選択される。これは以下の理由による。すなわち、周知の通り、圃場における生育量は、圃場についてのNDVIの指標値に影響を与え、生育量とNDVIの指標値とは正の相関関係がある。そして、上記の方針で補正用圃場を選択することにより、横軸に上空NDVI値を取り、縦軸に低空NDVI値を取った2次元空間で適度に離間した3つの点をプロットすることが可能となり、各点の位置に基づいて導出される近似曲線の妥当性を高めることができるからである。
以上の処理が補正用計算式生成処理である。補正用計算式生成処理により補正用計算式を生成した後、補正部11Aは、以下の処理を実行する。すなわち、補正部11Aは、補正用圃場については、低空NDVI値をそのまま、補正NDVI値(特許請求の範囲の「補正値」に相当)とする。更に補正部11Aは、補正用圃場ではない7個の圃場(以下「被補正圃場」という)のそれぞれについては、補正用計算式に上空NDVI値を入力し、その出力値を補正NDVI値とする。
例えば、図6を参照し、7個の被補正圃場について、上空NDVI値が図6の通りとし、補正用計算式が「出力値=入力値+0.10」であるとすると、これら7個の被補正圃場については、補正NDVI値は図8に示す通りとなる。識別番号がH03の被補正圃場に着目すると、当該被補正圃場の上空NDVI値は「0.40」であり、これを入力値として補正用計算式に入力することによって出力される出力値は、「0.40+0.10=0.50」となる。
対象圃場(3個の補正用圃場+7個の被補正圃場)のそれぞれについて補正NDVI値を導出した後、補正部11Aは、導出した補正NDVI値を各圃場の識別情報と対応付けて農作物関連値導出部12Aに出力する。
農作物関連値導出部12Aは、補正部11Aから対象圃場のそれぞれについての補正NDVI値を入力すると、対象圃場のそれぞれについて、施肥量導出計算式に補正NDVI値を入力し、出力値として得られる施肥量を最終的な追肥時施肥量として導出する。施肥量導出計算式は、第1実施形態で説明したように、NDVIの指標値を入力し、測定タイミングのNDVIの指標値が入力された値であった場合に、農作物の状態を目標状態とするために必要かつ適切な追肥時施肥量を出力する計算式である。ただし、本実施形態に係る施肥量導出計算式は、ドローンの高度が「30メートル」のときに行われた撮影結果に基づいて導出される低高度指標値が入力されることを前提とする計算式であり、このような低高度指標値が入力されたときに、適切な施肥量を出力するように調整されている。
10個の対象圃場のそれぞれについて最終的な追肥時施肥量を決定した後、農作物関連値導出部12Aは、表示装置2を制御して、10個の対象圃場のそれぞれについて識別情報と対応付けて、導出した追肥時施肥量を示す情報を表示装置2の表示領域に表示する。ユーザは、表示装置2を参照することにより、10個の対象圃場のそれぞれについて農作物関連値導出装置1Aが導出した追肥時施肥量を認識でき、追肥の際に実際に供給する施肥量を決定するときの参考とすることができる。
以上の通り、本実施形態に係る農作物関連値導出装置1Aは、対象圃場の上空NDVI値(圃場に対する遠隔からの観測により得られた第1実際値)を取得すると共に、上空NDVI値を、対象圃場に対するドローン(高度を変更可能な飛行物)からの撮影(遠隔からの観測)が行われたときの高度(状況)に基づいて、高度が30メートルという状況(所定の状況)で撮影が行われた場合の値となるように補正して補正NDVI値(補正値)を導出する。そして、農作物関連値導出装置1Aは、高度が30メートルのときに撮影が行われた場合(所定の状況で観測が行われた場合)のNDVIの指標値を入力とし追肥時の施肥量を出力とする施肥量導出計算式に補正NDVI値を入力することによって、対象圃場への追肥時の施肥量を導出する。
この構成によれば、追肥時の施肥量を導出するにあたって、上空NDVI値がそのまま施肥量導出計算式に入力されるのではなく、高度が30メートルのときに撮影が行われた場合の値となるように補正された補正NDVI値が入力される。このため、観測が行われたときのドローンの高度に応じて上空NDVI値の精度の高低が変化するという中で、高い高度(得られるNDVIの精度が低い状況)で行われた撮影に基づいて導出された実際値を、低い高度(得られるNDVIの精度が高い状況)で観測が行われた場合の値となるように補正し、補正によって生成された補正NDVI値を施肥量導出計算式に入力することができ、これにより撮影時の状況に応じた実際値の精度の高低の変化に起因する精度の低下を抑制した状態で施肥量を導出することができる。
ここで、全ての圃場について、低空で撮影を行って低空データを生成し、低空データに基づいて低空NDVI値を導出するようにすれば、撮影時の高度が高いことに起因するNDVIの指標値の精度の低下による悪影響は抑制できる。しかしながら、この場合、全ての圃場のそれぞれ(上記実施形態では、10個としたが、当然、10個よりも多い場合もある)について、低空の所定の位置で撮影を行う必要があり、作業が煩雑化し、作業に要する時間が長期化してしまう。一方で、本実施形態によれば、限定された個数(本実施形態では3個)の圃場についてのみ低空の撮影を行えばよく、作業の煩雑化および作業に要する時間の長期化を抑制しつつ、撮影時の高度が高いことに起因するNDVIの指標値の精度の低下による悪影響を抑制することが可能である。
次に本実施形態に係る農作物関連値導出装置1Aの動作(特に、情報提供指示があった場合の動作)について図9のフローチャートを用いて説明する。以下の説明では、農作物関連値導出装置1Aは、N(ただし、N≧2)個の対象圃場を対象として追肥時施肥量を決定するものとし、N個の対象圃場のうち、M(ただし、M<N)個が補正用圃場であるものとする。
図9で示すように、ステップSB1において、第1実際値取得部10Aは、入力装置3に対して情報提供指示があったことを検出すると、上空データを取得し、N個の対象圃場毎の上空NDVI値を取得する。またステップSB1において、第2実際値取得部20は、入力装置3に対して情報提供指示があったことを検出すると、M個の補正用圃場毎の低空NDVI値を取得する。ステップSB1において第1実際値取得部10Aにより取得された上空NDVI値のそれぞれ、および、第2実際値取得部20により取得された低空NDVI値のそれぞれは、補正部11Aに出力される。
補正部11Aは、第1実際値取得部10AからN個の対象圃場のそれぞれの上空NDVI値を入力し、第2実際値取得部20からM個の補正用圃場のそれぞれの低空NDVI値を入力すると、補正用計算式生成処理を実行し、補正用計算式を生成する(ステップSB2)。次いで、補正部11Aは、補正用計算式を用いて、対象圃場のそれぞれについて、補正NDVI値を導出する(ステップSB3)。ステップSB3で導出された対象圃場毎の補正NDVI値は、農作物関連値導出部12Aに出力される。農作物関連値導出部12Aは、補正部11Aから対象圃場のそれぞれについての補正NDVI値を入力すると、対象圃場のそれぞれについて、施肥量導出計算式に補正NDVI値を入力し、出力値として得られる施肥量を最終的な追肥時施肥量として導出する(ステップSB4)。ついて、農作物関連値導出部12Aは、ステップSB4で導出した追肥時施肥量を示す情報を表示する(ステップSB5)。
<第2実施形態の変形例>
次に、第2実施形態の変形例について説明する。上記第2実施形態では、撮影時のドローンの高度の影響を加味して追肥時の施肥量を導出する構成であったが、当然、ドローンの高度に加え、日射量を加味して施肥量を導出する構成でもよい。この場合、農作物関連値導出装置1Aは、以下の処理を実行する。
すなわち、補正部11Aは、第1実際値取得部10Aにより取得された上空NDVI値に基づいて、第2実施形態で説明した方法で、対象圃場毎の「高度30メートル(所定高度)で撮影が行われた場合のNDVIの指標値」(第2実施形態の補正NDVI値に相当)を導出する。説明の便宜上、ここで導出されたNDVIを中間NDVI値とする。更に、補正部11Aは、撮影が行われたときの日射量レベルに基づいて、所定日射量レベル(第1実施形態の中レベルに相当するレベル)或いは所定日射量で観測が行われた場合の値となるように中間NDVI値を補正して補正NDVI値を導出する。施肥量導出計算式は、高度30メートル(所定高度)において所定日射量レベル或いは所定日射量のときに観測が行われた場合のNDVIの指標値を入力とし追肥時の施肥量を出力とする計算式とされる。そして、農作物関連値導出部12Aは、施肥量導出計算式に補正部11Aにより導出された補正NDVI値を入力することによって、圃場への追肥時の施肥量を導出する。なお、この構成において、自然環境の要素を日射量以外の要素(或いは複数の要素の組み合わせ)としてもよいことは第1実施形態の変形例で述べた通りである。
また、第2実施形態において、対象圃場のうち、補正用圃場を選択するときのルールは、第2実施形態で例示したものに限らない。例えば、生育量以外の要素に基づいて補正用圃場を選択するようにしてもよい。ただし補正用圃場の個数が少ないほど、作業に要する時間が短くなるものの、補正用計算式を生成するときのサンプル数が少なくなるため補正用計算式の精度が低くなり、逆に、補正用圃場の個数が多いほど補正用計算式の精度が高くなる一方、作業に要する時間が長くなる。補正用圃場の個数は、このことを考慮して定められる必要がある。
また、第2実施形態において、上空NDVI値を低空NDVI値によって補正する方法は、上記実施形態で例示した方法に限られない。すなわち、上空NDVI値の値に低空NDVI値を反映させることにより、上空NDVI値の精度が向上する方法であれば、どのような方法であってもよい。一例として、農作物関連値導出部12Aが、補正用圃場の上空NDVI値と低空NDVI値との相関関係を分析することによって、上空NDVI値を低空NDVI値に近づけるための加算値または減算値を固定値として導出し、被補正圃場の上空NDVI値に対して加算値を加算しまたは減算値を減算して補正NDVI値を求めるようにしてもよい。
また、第2実施形態では、農作物関連値導出装置1Aは、3個(M個)の補正用圃場については、3個の補正用圃場についての低空NDVI値をそのまま補正NDVI値として施肥量導出計算式に入力し、出力値として得られる施肥量を最終的な追肥時施肥量として導出した。この点に関し、3個の補正用圃場についても、上空NDVI値から補正用計算式を用いて補正NDVI値を取得し、補正NDVI値を施肥量導出計算式に入力し、当該計算式の出力値を最終的な追肥時施肥量として導出する構成でもよい。
以上、本発明の一実施形態(変形例を含む)を説明したが、上記各実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
例えば上記各実施形態では、圃場毎に、追肥時の施肥量(農作物関連値)を導出した。この点について、圃場毎に農作物関連値を導出する構成以外の構成でもよいことは勿論である。例えば、1つの圃場を複数の領域に区分けし、領域毎に追肥時の施肥量(農作物関連値)を導出する構成でもよい。
また例えば、第1実施形態について以下の構成としてもよい。すなわち補正部11は、第1実際値取得部10により取得された上空NDVI値(第1実際値)を、観測が行われたときの日光の状況、時間的な状況、場所的な状況および飛行物の高度の2つ以上の組み合わせに基づいて、所定の日光の状況、所定の時間的な状況、所定の場所的な状況および所定高度のうち、観測が行われたときの状況についての組み合わせに対応する2つ以上の組み合わせで観測が行われた場合の値となるように補正して補正NDVI値(補正値)を導出する。農作物関連値導出部12は、所定の日光の状況、所定の時間的な状況、所定の場所的な状況および所定高度の2つ以上の組み合わせのときに観測が行われた場合のNDVI(第1指標)の指標値を入力とし追肥時の施肥量(農作物関連値)を出力とする計算式に補正部11により導出された補正値を入力することによって、追肥時の施肥量を導出する。
また第1実施形態では、農作物関連値導出装置1は、農作物関連値として稲(農作物)についての追肥時の施肥量(所定のタイミングにおける施肥量)を導出した。しかしながら、農作物は稲に限られるものではなく、また、農作物関連値は「追肥時の施肥量」に限られるものではない。まず、農作物関連値として追肥時の施肥量を導出する構成の場合、本発明は、栽培に際して追肥が行われる農作物に広く適用可能である。一例として小麦、大麦、大豆その他の穀物や、野菜、果物等に適用可能である。第2実施形態についても同様である。
農作物関連値は、農作物栽培領域で栽培される農作物に関連する値であって、第1指標の指標値(NDVIに限られない。また、複数種類の指標の指標値であってもよい)から導出可能なものであればよい。
例えば、農作物関連値に、所定のタイミングにおいて供給する堆肥、土壌改良資材、植物生育調整剤或いは薬剤(各種の農薬を含む)の量が含まれていてもよい。所定のタイミングにおいて供給する堆肥の量とは、所定のカテゴリについての農作物(農作物の収穫物も含む)の状態を目標状態とするために、所定のタイミングにおいて施すべき堆肥の量のことである。所定のタイミングにおいて供給する土壌改良資材、植物生育調整剤或いは薬剤の量についても同様である。
この場合において例えば、農作物が稲であり、農作物関連値が所定のタイミングにおける堆肥の量である場合、施肥量導出計算式は、予め定められた測定タイミングにおけるNDVIの指標値を入力し、所定のタイミングにおける堆肥の量を出力する式(以下「堆肥量導出計算式」という)とされる。つまり堆肥量導出計算式は、測定タイミングにおけるNDVIの指標値が○○であったら、所定のタイミングにおける適切な堆肥の量は○○である、ということを計算する式である。測定タイミングにおけるNDVIの指標値と所定のタイミングにおける堆肥の量とには相関関係があることが分かっており(土壌改良資材、植物生育調整剤および薬剤の量も同様)、この堆肥量導出計算式は、測定タイミングにおけるNDVIの指標値と、所定のタイミングにおける堆肥の量との相関関係に基づいて事前に導出される。
また例えば農作物関連値を、収穫物の収量(単位面積当たりの予測収量を意味する)とすることができる。この場合、施肥量導出計算式は、出穂前の所定のタイミングにおけるNDVIの指標値を入力し、稲の収量を出力する式(以下「予測収量導出計算式」という)とされる。つまり予測収量導出計算式は、出穂前の所定のタイミングにおけるNDVIの指標値が○○であったら、稲の収量は○○と予測される、ということを計算する式である。発明者らの研究により、(出穂後ではなく)出穂前の所定のタイミングにおけるNDVIの指標値と稲の収量とには特に強い相関関係があることが分かっており、この予測収量導出計算式は、出穂前の所定のタイミングにおけるNDVIの指標値と稲の収量との相関関係に基づいて事前に導出される。
また、農作物関連値を、農作物の現在或いは将来の品質(外観品質のみならず、所定の栄養素の状態(例えばタンパク質の含有率)や、含有水分の状況などの成分的、内部的な品質も含む概念)とすることができる。農作物の現在或いは将来の品質は例えば、農作物が稲である場合において、現在或いは将来の籾水分や、現在或いは将来の玄米水分、現在或いは将来の玄米のタンパク質含有率である。例えば農作物の現在或いは将来の品質は、農作物が稲である場合において、収穫時における低外観品質の収穫物の割合(或いは整粒の割合)である。
また、農作物関連値を、「農作物が所定の状態となると予測される時期」とすることができる。「農作物が所定の状態となると予測される時期」は例えば、農作物が収穫可能な状態となる時期や、農作物が稲である場合において、出穂する時期である。例えば、農作物が稲であり、農作物関連値が「収穫時期」(稲を収穫する適切な時期)である場合、施肥量導出計算式は、測定タイミングのNDVIの指標値を入力し、収穫時期を出力する式とされる。NDVIの指標値と収穫時期とには相関関係があることが分かっており、当該所定の計算式は、NDVIの指標値と収穫時期との相関関係に基づいて事前に生成される。
また、農作物関連値を、「農作物についての被害の状況」とすることができる。「農作物についての被害の状況」は例えば、倒伏の状況(程度)や、枯れ被害の状況(程度)、病害の状況(程度)、害虫による被害の状況(程度)等である。
また、農作物関連値を「農作物に影響を与える環境の状態」とすることができる。「農作物に影響を与える環境の状態」は例えば、圃場における病害虫の発生の程度や、圃場における雑草の発生の程度等である。
また、記憶部13、13Aは、農作物関連値導出装置1とは異なる外部記憶装置が有する構成でもよい。また、農作物関連値導出装置1、1Aを、インターネット上のサーバとして構成し、インターネットを介してクライアントから追肥時施肥量を示す情報の提供の要請があったときに、上述した手法で追肥時施肥量を導出し、クライアントに提供する構成としてもよい。また、農作物関連値導出装置1、1Aは、単体のコンピュータである必要はなく、複数のコンピュータにより構成されていてもよい。例えば、インターネットを介して接続された端末とクラウドサーバとが協働して農作物関連値導出装置1、1Aとして機能し、端末が適宜クラウドサーバと協働して処理を実行する構成でもよい。
また第1実施形態では、ドローンを用いた上空からのセンシングにより得られるNDVIの値が第1指標の指標値であった。この点に関し、第1指標の指標値は、NDVIの値に限らず、NDVI以外の他の指標の指標値であってもよい。また、第1指標の指標値は、衛星からの観測による衛星データに基づいて導出された値、或いは、ドローンを用いた上空からのセンシングにより得られるデータと前記衛星データとを少なくとも利用して導出された値であってもよい。