以下、本開示の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1~図13に基づいて本実施形態に係る添加装置、および、添加装置を含む浄化システムを説明する。
<浄化システム>
図1に示すように浄化システム200はエンジン300の排気管310に設けられる。浄化システム200はエンジン300の燃焼駆動によって発生した排ガスを浄化する機能を果たす。エンジン300が内燃機関に相当する。
浄化システム200は添加装置100とSCR触媒400を有する。エンジン300からその下流に向かって、添加装置100とSCR触媒400が順に並んで排気管310に設けられている。
添加装置100は尿素水溶液を排気管310の中空に噴射する。これにより尿素水溶液が排気管310内の排ガスに添加される。尿素水溶液は排気管310内で加水分解される。これにより還元剤としてのアンモニアが生成される。このアンモニアがSCR触媒400に添加される。SCR触媒400は添加されたアンモニアを貯蔵する。SCR触媒400は貯蔵したアンモニアと排ガス中のNOxとを反応させる。これによりNOxが水や窒素に分解される。NOxが有害物質に相当する。尿素が浄化物に相当する。尿素水溶液が浄化水溶液に相当する。
浄化システム200は添加装置100とSCR触媒400の他にセンサ500を有する。センサ500は、第1NOxセンサ501、第2NOxセンサ502、第1排気温度センサ503、および、第2排気温度センサ504を備えている。エンジン300からその下流に向かって、第1NOxセンサ501、第1排気温度センサ503、添加装置100、第2排気温度センサ504、SCR触媒400、および、第2NOxセンサ502が順に並んで排気管310に設けられている。
以上に示した並び順のために各センサは以下に示す物理量を検出する。すなわち第1NOxセンサ501はエンジン300から排出された排ガスに含まれるNOxを検出する。第1排気温度センサ503はエンジン300から排出された排ガスの温度を検出する。第2排気温度センサ504はSCR触媒400に流入する排ガスの温度を検出する。第2NOxセンサ502はSCR触媒400によって浄化された排ガスに含まれるNOxを検出する。
<添加装置>
次に、添加装置100を説明する。図1に示すように添加装置100は添加弁10を有する。添加弁10は装着装置600によって排気管310に装着されている。添加弁10の先端は排気管310内の空間を通る排ガスに晒されている。排ガスによって添加弁10が高温になる虞がある。これを抑制するために装着装置600には冷却水を流動させるための冷却水路が形成されている。
図1に示すように添加装置100は、添加弁10の他に、タンク60、ポンプ70、DCU80、および、配管90を有する。添加弁10とポンプ70は配管90を介して連結されている。ポンプ70はタンク60に連結されている。タンク60に尿素水溶液が貯留されている。以上に示した連結構成により、尿素水溶液は、ポンプ70と配管90を介して添加弁10とタンク60との間で流動可能になっている。
ポンプ70は正転方向と逆転方向に回転可能になっている。ポンプ70が正転方向に回転(正回転)すると、タンク60から添加弁10へ向かう正圧が配管90に発生する。これによりタンク60内の尿素水溶液が配管90を介して添加弁10に圧送される。
ポンプ70が逆転方向に回転(逆回転)すると、添加弁10からタンク60へ向かう負圧が配管90に発生する。これにより添加弁10内の尿素水溶液が配管90を介してタンク60に吸い戻される。またこの際、添加弁10内の気体が配管90に排出される。ポンプ70は圧力発生部に相当する。
DCU80は添加弁10とポンプ70それぞれと電気的に接続されている。DCU80は添加弁10の開閉とポンプ70の回転を制御する。DCUはdosing control unitの略である。DCU80が開閉制御部に相当する。
DCU80は、以下に示すように、エンジン300の駆動状態、および、尿素の固着判定に応じて、ポンプ70の回転と添加弁10の開閉を制御する。
エンジン300が燃焼駆動している場合、DCU80はポンプ70を正回転させる。それとともにDCU80は添加弁10を開閉制御する。こうすることでDCU80はタンク60に貯留された尿素水溶液を添加弁10に圧送する。それとともにDCU80は添加弁10から排気管310に尿素水溶液を噴射する。またDCU80は添加弁10から排気管310に噴射される尿素水溶液量を制御する。
エンジン300の燃焼駆動が停止した場合、DCU80はポンプ70を逆回転させる。それとともにDCU80は添加弁10を開弁制御する。こうすることでDCU80は添加弁10内の尿素水溶液を気体とともにタンク60に吸い戻す。この吸い戻し処理が吸い出し処理に相当する。
また、添加弁10内の尿素水溶液のタンク60への吸い戻しの後、後述する尿素の固着判定において、尿素が添加弁10に固着したと判定した場合、DCU80はポンプ70を正回転と逆回転とに交互に制御する。それとともにDCU80は添加弁10を閉弁制御する。こうすることでDCU80は添加弁10内の気体の吸い出しと添加弁10内への尿素水溶液の充填を行う。なお上記の閉弁制御は、単に添加弁10への通電の停止によって実施される。
<添加弁>
次に、添加弁10を図2に基づいて詳説する。以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、および、z方向と示す。x方向とy方向とによって規定される平面をx-y平面と示す。
添加弁10は、ボディ20、弁体30、バネ40、および、電磁部50を有する。ボディ20は尿素水溶液の流通する尿素水流路21を内部に構成している。この尿素水流路21に弁体30とバネ40が設けられている。バネ40は弁体30に付勢力を付与する。この付勢力により添加弁10が閉弁される。
電磁部50はボディ20に設けられる。電磁部50は磁気回路を形成する。これにより弁体30がバネ40の付勢力に抗して動かされる。添加弁10が開弁される。以下、添加弁10の構成要素を個別に詳説する。
<ボディ>
ボディ20は、ノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24を有する。ノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24はz方向に順に並んでいる。ノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24それぞれはz方向に開口する筒形状を成している。ノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24それぞれの開口を通る中心軸はz方向に沿っている。これら3つの中心軸のx-y平面の位置が一致している。図2では、これら3つの中心軸を、ボディ20の中心軸CAとして一点鎖線で示している。
ノズルボディ22と導入部24は非磁性部材23を介して機械的に連結されている。ノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24によって、z方向に開口する筒が構成されている。この筒の有する2つの開口のうちの一方がノズルボディ22の先端で構成されている。2つの開口のうちの他方が導入部24の先端で構成されている。
この2つの開口のうちの他方を構成する導入部24の先端に配管90が連結される。配管90から尿素水流路21への尿素水溶液の圧送が可能となっている。逆に、尿素水流路21から配管90への尿素水溶液と気体の吸い戻しが可能となっている。
ノズルボディ22は磁性材料からなる。ノズルボディ22は母材を切削加工などによって形状を整えることで製造される。ノズルボディ22の中空に弁体30、後述の可動コア56の一部、および、バネ40の一部が設けられている。
非磁性部材23は、その名の示す通り、非磁性材料から成る。非磁性部材23は、電磁部50によって形成される磁気回路の、可動コア56への通過が妨げられることを抑制する機能を果たす。非磁性材料としては、例えばセラミックを採用することができる。
上記したように非磁性部材23はノズルボディ22と導入部24を機械的に連結する機能も果たす。非磁性部材23の中空には、可動コア56、バネ40、および、後述の固定コア55それぞれの一部が設けられている。
導入部24は磁性材料から成る。導入部24は母材を切削加工などによって形状を整えることで製造される。
導入部24の中空に固定コア55の一部が設けられている。固定コア55は筒形状を成している。固定コア55の外側面は導入部24の内周面と接触している。固定コア55は導入部24に固定されている。
また固定コア55の中空に圧入部材26の一部が設けられている。圧入部材26は筒形状を成す。圧入部材26は配管90の連結される導入部24の先端の開口部からその内部へと挿入される。そして圧入部材26は固定コア55の中空に圧入される。これにより圧入部材26の外側面と固定コア55の内側面との間に圧入部材26の復元力が発生する。この復元力によって、圧入部材26は固定コア55に固定される。またそれとともに圧入部材26は固定コア55を介して導入部24に固定される。
導入部24の先端の開口部側の中空にフィルタ24aが設けられている。フィルタ24aは金属から成り、網目構造を有している。配管90を介して導入部24の構成する尿素水流路21に流入した尿素水溶液はフィルタ24aを通過する。これにより尿素水溶液に含まれるゴミがフィルタ24aによって除去される。フィルタ24aによってゴミの除去された尿素水溶液が圧入部材26と固定コア55の中空へと流れる。
導入部24の先端の外側面には、Oリング24bとストッパ24cが設けられている。またこの外側面には、ストッパ24cを設けるための環状の溝部24dが形成されている。図2に示すように、z方向においてノズルボディ22から導入部24に向かう方向に、Oリング24bとストッパ24cが順に並んでいる。これにより、Oリング24bが導入部24から外れることがストッパ24cによって抑制されている。
ボディ20はノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24の他に、微小な噴射孔25aの形成された噴射部25を有する。図3に示すように噴射部25は、ノズルボディ22の先端の開口部に固定される口端部25bと、噴射孔25aの形成された先端部25cと、を有する。
口端部25bは筒形状を成す。口端部25bはノズルボディ22の中空に設けられる。口端部25bの外面がノズルボディ22の内面に溶接接合されている。口端部25bの中空とノズルボディ22の中空とが連通している。
先端部25cはz方向に面する底部と、底部の内底面からz方向に起立した環状の側壁と、を有する。この側壁によって囲まれることで構成される先端部25cの中空に口端部25bの排気管310側の端部が設けられる。先端部25cの内面に口端部25bの外面が溶接接合されている。口端部25bの排気管310側の開口部が先端部25cの底部によって覆われている。
口端部25bの内径は不定である。口端部25bの内面には、z方向まわりの周方向で環状を成す接触面25dが形成されている。環状の接触面25dは、z方向において先端部25cからノズルボディ22側へと向かうにしたがって、徐々に径の広がるテーパ形状を成している。この接触面25dに弁体30の先端が着座したり離座したりする。
先端部25cの底部の中央部は、口端部25bの接触面25dよりもボディ20の中心軸CA側に位置する。そして先端部25cの底部の中央部は、z方向において口端部25bの開口部と対向している。この底部の中央部に、尿素水溶液を噴射するための噴射孔25aが複数形成されている。噴射孔25aは底部の内底面と外底面を貫通している。
<弁体>
弁体30は母材を切削加工などによって形状を整えることで製造される。弁体30はz方向に延びる筒形状を成す。弁体30とボディ20の中心軸はx-y平面で一致している。
弁体30は自身の中空と連通する1つの開口端と、自身の中空と非連通の1つの閉口端と、を有する。弁体30の閉口端は噴射孔25a側に位置する。弁体30の開口端は導入部24側に位置する。閉口端は上記の弁体30の先端に相当する。
弁体30の閉口端の外面にはz方向まわりの周方向で環状の縁部が形成されている。縁部は接触面25dと同一の傾斜角度のテーパ形状となっている。この閉口端の縁部が、バネ40の付勢力によって接触面25dと全面的に環状に接触する。これにより噴射孔25aと尿素水流路21との連通が遮断される。
弁体30の開口端に可動コア56が設けられている。可動コア56は中空を有する。可動コア56の中空と弁体30の中空は連通している。また可動コア56の中空と固定コア55の中空も連通している。したがって、上記したフィルタ24aによってゴミの除去された尿素水溶液は、圧入部材26と固定コア55の中空へ流れるとともに、可動コア56と弁体30の中空へも流れる。
図2および図4に示すように可動コア56と固定コア55はz方向で対向している。より詳しく言えば、可動コア56のx-y平面において環状を成す上端面56aと、固定コア55のx-y平面において環状を成す下端面55aとがz方向で対向している。
後述するように可動コア56は弁体30とともにボディ20の軸方向(z方向)に移動する。可動コア56の軸方向への移動により、可動コア56と固定コア55とはz方向で近づいたり離れたりする。
より詳しく言えば、可動コア56が噴射孔25a側に変位すると、図6に示すように可動コア56と固定コア55とがz方向で離れる。図5に示すように弁体30の閉口端が接触面25dに着座している際、可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとがz方向で最も離れる。このように可動コア56と固定コア55とがz方向で離れている際に、上端面56aと下端面55aとの間に尿素水溶液の流動する空隙通路が構成される。
これとは逆に、可動コア56が導入部24側に変位すると、可動コア56と固定コア55とがz方向で近づく。図3に示すように弁体30の閉口端と接触面25dとが離座する。弁体30の閉口端と接触面25dとがz方向において最も離れている際に、図4に示すように可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとが接触する。この際、上記の空隙通路が無くなる。なお図4および図6ではノズルボディ22、非磁性部材23、および、導入部24それぞれを特に区別せずに、ボディ20として一律して図示している。
弁体30は中空を区画する内面30aとその裏側の外面30bを有する。上記したように弁体30の中空は可動コア56の中空と連通している。そのために弁体30の中空は可動コア56の中空とともに尿素水溶液の流動する流通路を構成している。
弁体30の外面30bは口端部25bとノズルボディ22それぞれの内面とx-y平面で離れて対向している。また可動コア56の外側面はノズルボディ22と非磁性部材23それぞれの内面とx-y平面で離れて対向している。そのために弁体30と口端部25bとの間、および、弁体30とノズルボディ22との間それぞれに空間が構成されている。また可動コア56とノズルボディ22との間、および、可動コア56と非磁性部材23との間それぞれに空間が構成されている。これらの空間も尿素水溶液の流動する流通路を構成している。これらの空間は上記した弁体30の中空や空隙通路と連通している。
以下においては、弁体30の中空と可動コア56の中空とによって構成される流通路を第1流通路31と示す。上記した、弁体30、口端部25b、ノズルボディ22、可動コア56、および、非磁性部材23によって構成される流通路を第2流通路32と示す。
上記したように弁体30の閉口端が接触面25dに着座して、添加弁10が閉弁状態の場合、図6に示すように可動コア56と固定コア55との間に空隙通路が構成される。この際、第1流通路31と第2流通路32が空隙通路を介して連通される。
これとは逆に、図4に示すように可動コア56と固定コア55とが接触して、添加弁10が開弁状態の場合、上記の空隙通路は無くなる。そのため、第1流通路31と第2流通路32は空隙通路を介して連通しなくなる。第1流通路31と第2流通路32との空隙通路を介した連通が遮断される。
ただし弁体30には、弁体30の中空とノズルボディ22の中空とを連通するための第1連通孔33が形成されている。弁体30には、弁体30の中空と口端部25bの中空とを連通するための第2連通孔34が形成されている。すなわち弁体30には、第1流通路31と第2流通路32を連通するための第1連通孔33と第2連通孔34が形成されている。これら第1連通孔33と第2連通孔34により、第1流通路31と第2流通路32は添加弁10の開弁状態と閉弁状態によらずに連通している。
なお第1連通孔33は弁体30におけるノズルボディ22との対向面に設けられている。第2連通孔34は弁体30における口端部25bとの対向面に設けられている。そのために第2連通孔34は第1連通孔33よりも噴射孔25a側に位置している。本実施形態では2つの第1連通孔33が弁体30に形成されている。4つの第2連通孔34が弁体30に形成されている。
<バネ>
バネ40は可動コア56と弁体30に付勢力を付与する機能を果たす。バネ40は線形状の弾性材料がz方向にらせん状に巻き回されて成るコイルバネである。バネ40はz方向において可動コア56と圧入部材26との間に設けられている。そして上記の圧入部材26の圧入により、バネ40は可動コア56と圧入部材26との間でz方向に圧縮されている。
これによりバネ40は、z方向においてバネ40から離れる方向に付勢力を発生させている。このために弁体30と可動コア56それぞれには、z方向において噴射孔25a側へ向かうバネ40の付勢力が付与されている。この付勢力により弁体30と可動コア56との接触状態が保たれる。また電磁部50によって磁気回路が形成されない場合、付勢力によって弁体30の閉口端の縁部が口端部25bの接触面25dに着座する。添加弁10の閉弁状態が保たれる。
<電磁部>
電磁部50は、ソレノイドコイル51、コネクタ52、樹脂部53、ハウジング54、固定コア55、および、可動コア56を有する。ソレノイドコイル51はコネクタ52とともに樹脂部53によって一体的に連結されている。ソレノイドコイル51は固定コア55と可動コア56の周囲を囲むように、樹脂部53によってボディ20に固定されている。
コネクタ52はDCU80と電気的に接続されている。DCU80は添加弁10を開閉制御するために、デジタルの制御信号によってコネクタ52に流す電流を制御している。この制御信号のHiレベルとLoレベルの一方によってコネクタ52に電流が流れる。
本実施形態では、制御信号がHiレベルの場合にコネクタ52を介してソレノイドコイル51に電流が流れる。これによりソレノイドコイル51から磁界が発生される。制御信号がLoレベルの場合にコネクタ52を介したソレノイドコイル51への通電が停止する。これによりソレノイドコイル51からの磁界の発生が止む。
ハウジング54は筒形状を成している。ハウジング54はソレノイドコイル51と樹脂部53それぞれの周囲を囲むようにボディ20に固定されている。
固定コア55は筒形状を成している。固定コア55は導入部24と非磁性部材23の中空に設けられている。図4および図6に示すように、固定コア55の弁体30側の外径は、非磁性部材23との接触面積を低減するため、非磁性部材23の内径よりも狭くなっている。そのため、固定コア55と非磁性部材23とによって、上記した第2流通路32と連通する隘路55bが構成されている。隘路55bはx-y平面において環状を成している。この隘路55bも尿素水溶液で満たされる。隘路55bは空隙通路を介して第1流通路31と連通している。
可動コア56は筒形状を成している。可動コア56は非磁性部材23とノズルボディ22の中空に設けられている。可動コア56の中空には、x-y平面において環状を成す取り付け部57が構成されている。この取り付け部57によって、可動コア56の中空は噴射孔25a側の中空と導入部24側の中空とに区画されている。この可動コア56の噴射孔25a側の中空に弁体30の開口端が挿入されている。
そして弁体30の開口端の端面が、取り付け部57の環状の下面57aと接触している。またこの可動コア56の導入部24側の中空にバネ40が挿入されている。バネ40が、取り付け部57の環状の上面57bと接触している。上記したバネ40のz方向に沿う噴射孔25a側へ向かう付勢力により、弁体30の開口端の端面と可動コア56の取り付け部57の下面57aとの接触状態が保たれている。そのために弁体30と可動コア56はz方向にともに移動する。
図4および図6に示すように、可動コア56の外径は、非磁性部材23およびノズルボディ22それぞれの内径よりも狭くなっている。そのため、可動コア56と非磁性部材23、および、可動コア56とノズルボディ22によって、上記した第2流通路32の一部が構成されている。
ハウジング54、固定コア55、および、可動コア56それぞれは磁性材料によって形成されている。上記したようにノズルボディ22と導入部24も磁性材料によって形成されている。非磁性部材23は非磁性材料によって形成されている。固定コア55と可動コア56それぞれはx-y平面において非磁性部材23と隣り合っている。
以上により、通電によってソレノイドコイル51から発生する磁界は、導入部24、固定コア55、可動コア56、ノズルボディ22、および、ハウジング54を通る磁気回路を形成する。この磁気回路の形成により、可動コア56には、z方向に沿い、なおかつ、導入部24側向きの電磁力が発生する。この電磁力により、可動コア56はバネ40の付勢力に抗して導入部24側へと移動しようとする。
上記したように、バネ40の付勢力により可動コア56と弁体30はともにz方向に移動する。したがって電磁力による可動コア56の導入部24側への移動により、弁体30も導入部24側へ移動する。この結果、弁体30の先端(閉口端)が口端部25bの接触面25dから離座する。電磁力が無くなると、バネ40の付勢力により、可動コア56と弁体30は噴射部25側へ移動する。この結果、弁体30の開口端が口端部25bの接触面25dに着座する。
電磁力によって弁体30が接触面25dから離座している際に、ポンプ70による正圧の発生によって尿素水溶液が添加弁10に圧送されている場合、噴射孔25aから排気管310の中空への尿素水溶液の噴射がなされる。ポンプ70によって負圧が発生されている場合、添加弁10からタンク60への尿素水溶液と気体の吸い戻しがなされる。
<尿素水溶液の残留>
上記したようにDCU80は、エンジン300が燃焼駆動を停止した場合、添加弁10内の尿素水溶液をタンク60に吸い戻す。この際、以下に示す理由により、添加弁10内に尿素水溶液が残留する。
尿素水溶液の吸い戻しの際、ポンプ70によって負圧が発生されるとともに、添加弁10は開弁状態になる。噴射孔25aを介して排気管310から尿素水流路21へと気体が流動する。この気体が尿素水流路21から配管90へと流動する。この結果、図3に実線矢印で示す方向に尿素水溶液が気体とともに流れる。
しかしながら添加弁10内には、尿素水溶液の流動抵抗の高い場所や流通路を構成しない袋小路がある。例えば図4に示すように、添加弁10が開弁状態になると可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとが接触する。これにより空隙通路が無くなる。そのために空隙通路を介した第1流通路31と第2流通路32との連通が遮断される。空隙通路を介した第2流通路32から第1流通路31への尿素水溶液の流動が妨げられる。特に、可動コア56とボディ20との間に構成される第2流通路32内の尿素水溶液の吸い戻しが妨げられる。また、固定コア55とボディ20との間の隘路55b内の尿素水溶液の吸い戻しが困難になる。図3と図4ではドットハッチングで尿素水溶液を示している。
このように添加弁10には尿素水溶液の流動抵抗の高い場所や流通路を構成しない袋小路がある。そのため、添加弁10を開弁状態に維持して負圧を発生するだけでは、添加弁10内の尿素水溶液を全て吸い戻すことができない。また、例えば負圧を発生しつつ、尿水溶液の流動性などを何ら考慮せずに、単に添加弁10を開弁状態と閉弁状態に交互に切り換えるだけでは、添加弁10内の尿素水溶液を吸い尽くすことはできない。それは、尿素水溶液が上記の流動抵抗の高い場所や袋小路に留まるためである。
上記の尿素水溶液の吸い戻し処理が終了すると、DCU80はソレノイドコイル51への通電とポンプ70の回転を停止する。これにより添加弁10は閉弁状態になる。添加弁10内での気体の流動が停止する。この後、添加弁10内に残留した尿素水溶液は自重と粘性のために添加弁10内を流動する。
図5と図6においてドットハッチングで尿素水溶液を示すように、尿素水溶液は噴射部25と弁体30との間に流れて留まる。尿素水溶液は可動コア56の上端面56aと固定コア55の下端面55aとの間の空隙通路に流れて留まる。尿素水溶液は可動コア56と非磁性部材23との間の第2流通路32に流れて留まる。また尿素水溶液はバネ40を構成する線形状の弾性材料間に留まる可能性もある。
以上に示したように尿素水溶液は、噴射部25と弁体30との間、可動コア56と固定コア55との間、および、可動コア56と非磁性部材23との間などに留まる。尿素水溶液はバネ40を構成する線形状の弾性材料間に留まる。
なお図3~図6においては、ボディ20の中心軸CAを鉛直方向に沿わせた場合の尿素水溶液の流動状態と滞留状態を示している。しかしながら中心軸CAを鉛直方向に対して傾斜する方向に沿わせたとしても、添加弁10内では流動抵抗の高い場所や袋小路が必ず生じる。そのために添加弁10内での尿素水溶液の残留が生じる。
<尿素の析出>
上記したように添加弁10は排気管310に装着される。排気管310を流動する排ガスは以下に示す場合に特に高温になる。すなわち、エンジン300を高出力で駆動した場合、SCR触媒400に含まれる触媒物質を昇温する場合、SCR触媒400に付着したススを燃焼によって除去する再生処理を行った場合、排ガスは特に高温になる。
上記の再生処理を行った場合、排ガスの温度は最高で700℃程度になる。これに伴い排気管310の温度は500℃程度になる。添加弁10を排気管310に装着する装着装置600における冷却水の流動によって添加弁10の温度上昇が抑制されているものの、添加弁10の温度は135℃程度になる。このような高温状態は、排ガスの排出や上記の再生処理の停止した後においても、各部品の比熱のためにしばらくの間保たれる。
尿素水溶液を吸い戻した後に、上記の高温状態が保たれると、添加弁10内に残留した尿素水溶液に含まれる水分が蒸発する。これにより尿素水溶液に溶質として含まれる尿素が添加弁10内に析出する。この尿素は、上記した噴射部25と弁体30との間、可動コア56と固定コア55との間、可動コア56と非磁性部材23との間、および、バネ40を構成する線形状の弾性材料間などに析出する。
この析出した尿素を放っておくと、添加弁10に尿素が固着する。この固着した尿素によって、噴射部25と弁体30、可動コア56と固定コア55、可動コア56と非磁性部材23、および、バネ40を構成する線形状の弾性材料間などが連結される。この結果、添加弁10の開閉が妨げられる。添加弁10から排気管310の中空への尿素水溶液の噴射が妨げられる。
さらに言えば、135℃よりもさらに高温に晒されると、析出した尿素はビウレット、シアヌル酸、アンメリンに変化する。これらビウレット、シアヌル酸、アンメリンそれぞれは尿素と比べて溶解度がけた違いに低い性質を有する。したがって、後述するように添加弁10内に尿素水溶液が充填されても、析出物が尿素水溶液に溶解することが期待できなくなる。添加弁10から析出物が除去されず、この析出物によって添加弁10が制御できなくなる虞がある。
以上に示した不具合が生じることを避けるために、DCU80は、尿素水溶液の吸い戻し処理後、添加弁10に尿素が固着したか否かを判定する固着判定を行う。尿素が固着していると判定される場合、DCU80は固着した尿素を除去する除去処理を行う。
<尿素の固着判定>
上記したように排気管310には第1排気温度センサ503と第2排気温度センサ504が設けられている。DCU80にはこれら第1排気温度センサ503と第2排気温度センサ504の少なくとも一方の出力が入力される。
DCU80は温度センサの出力と比較するための比較温度を保有(記憶)している。DCU80は温度センサの出力が比較温度以上であるか否かを判定する。DCU80は温度センサの出力が比較温度以上である場合、添加弁10の温度は、尿素水溶液から尿素が析出し始める温度以上であると判定する。比較温度が析出温度に相当する。
またDCU80は析出した尿素が添加弁10に固着し始めたか否かを判定する固着時間を記憶している。DCU80は温度センサの検出温度が析出温度以上である時間を計測する。DCU80はこの計測時間が固着時間を超えるか否かを判定する。DCU80は計測時間が固着時間を超える場合、添加弁10に尿素が固着したと判定する。DCU80が比較部に相当する。
<尿素の除去処理>
DCU80は添加弁10に尿素が固着したと判定した場合、エンジン300の始動後、以下に示す除去処理を行う。
添加弁10に尿素が固着している場合、添加弁10を開閉できない可能性がある。そのためにDCU80は添加弁10の開閉弁制御を実施しない。添加弁10に固着した尿素を除去するべく、DCU80は添加弁10内への尿素水溶液の充填を実施する。
添加弁10は閉状態になっているために尿素水流路21での気体の流動は期待できない。したがって、単に添加弁10内に尿素水溶液を圧送するだけでは、添加弁10内に尿素水溶液を効果的に充填することができない。
そこでDCU80は、尿素水流路21内の気体の吸い出しと尿素水流路21内への尿素水溶液の圧送を交互に繰り返す。そのためにDCU80はポンプ70を正回転と逆回転とに交互に制御する。より具体的に言えば、DCU80は図7に示す回転制御信号をポンプ70に出力する。
この回転制御信号は、正転信号、第1待機信号、逆転信号、第2待機信号からなる。正転信号によりポンプ70は正回転する。逆転信号によりポンプ70は逆回転する。第1待機信号と第2待機信号によりポンプ70は回転を停止する。これら第1待機信号と第2待機信号は、ポンプ70を正転から逆転、逆転から正転に切り換えるために必要となる待機時間を稼ぐための停止信号に相当する。
正転信号の出力時間(圧送時間)はT1である。逆転信号の出力時間(排出時間)はT3である。第1待機信号の出力時間(第1待機時間)はT2である。第2待機信号の出力時間(第2待機時間)はT4である。本実施形態では第1待機時間T2と第2待機時間T4は同一である。
回転制御信号がポンプ70に順次入力されると、待機時間を挟んだ添加弁10内への尿素水溶液の圧送と添加弁10内の気体の吸い出しが交互に繰り返される。添加弁10内の気体が吸い出されることで、添加弁10内の気圧が低まる。この低気圧となった添加弁10内に尿素水溶液が圧送される。尿素水溶液の充填によって添加弁10内の気圧が回復し、添加弁10内への尿素水溶液の圧送が困難になる。そこで再び添加弁10内の気体が吸い出される。これにより添加弁10内の気圧が低まる。添加弁10内への尿素水溶液の圧送が再度実行される。
以上に示したように添加弁10内への尿素水溶液の圧送と添加弁10内の気体の吸い出しを繰り返すことで、添加弁10内に尿素水溶液を充填することができる。図8に示すように、回転制御信号が繰り返しポンプ70に入力されることで、添加弁10内の尿素水溶液の充填量が増大する。添加弁10内に充填される尿素水溶液の液面は、噴射部25から導入部24へと向かって上昇する。
添加弁10の中心軸CAの鉛直方向に対する傾斜角度を40°として回転制御信号の出力を行うと、およそ時間t6において、尿素水溶液の液面はバネ40に達する。すなわちおよそ6回の回転制御信号の出力によって、尿素水溶液の液面はバネ40に達する。尿素の固着する、噴射部25と弁体30との間、可動コア56と固定コア55との間、可動コア56と非磁性部材23との間、および、バネ40を構成する線形状の弾性材料間が尿素水溶液に浸される。これにより、これらの間に固着した尿素の尿素水溶液への溶解が始まる。
時間t8に達すると、尿素水溶液の液面は導入部24の先端の開口に達する。これ以降においては、添加弁10内の尿素水溶液の吸い出しと、添加弁10内への尿素水溶液の圧送とが繰り返される。そのために添加弁10内の尿素水溶液の充填量が上下動する。この上下動により添加弁10内の尿素水溶液が遊動する。これにより添加弁10内に固着した尿素の尿素水溶液への溶解が促進される。
<尿素水溶液の充填時間>
図9に、出力時間の異なる複数の形態の回転制御信号を示す。図9では、待機時間T2,T4を基準値の1としている。
第1形態の回転制御信号では、圧送時間T1が待機時間T2,T4および排出時間T3よりも長くなっている。また排出時間T3は待機時間T2,T4と等しくなっている。
第2形態の回転制御信号では、排出時間T3が待機時間T2,T4および圧送時間T1よりも長くなっている。また圧送時間T1は待機時間T2,T4と等しくなっている。
第3形態の回転制御信号では、圧送時間T1と排出時間T3が待機時間T2,T4と等しくなっている。
第4形態の回転制御信号では、圧送時間T1が待機時間T2,T4および排出時間T3よりも短くなっている。また排出時間T3は待機時間T2,T4と等しくなっている。
第5形態の回転制御信号では、圧送時間T1と排出時間T3が待機時間T2,T4よりも短なっている。また排出時間T3は圧送時間T1よりも短くなっている。
以上に示した第1形態~第5形態の回転制御信号のいずれにおいても、6回の回転制御信号の出力によって、尿素水溶液の液面はバネ40に達する。しかしながら6回の回転制御信号の出力にかかる時間は、第5形態が最も短い。その次に第4形態が短い。その次に第3形態が短い。その次に第1形態と第2形態が短い。
したがって、第5形態の回転制御信号を採用することで、添加弁10内への尿素水溶液の充填を早めるとともに、固着した尿素の尿素水溶液への溶解の開始を早めることができる。なおもちろんではあるが、上記した各種形態の回転制御信号、および、これら形態とは異なる回転制御信号を採用することができる。
<接着力>
次に、図10および図11に基づいて、添加弁10に固着した析出物の添加弁10に接着する力(接着力)を説明する。この接着力を計測するために以下の処理を行った。
先ず、閉弁状態の添加弁10内への尿素水溶液の充填を行う。そして添加弁10内から尿素水溶液を排出する。これにより添加弁10内に尿素水溶液を残留させる。
その次に添加弁10を第1所定時間、恒温槽にいれて昇温する。これにより尿素水溶液に含まれる水分を蒸発させ、尿素を析出させる。
次いで添加弁10を恒温槽から取り出して、第2所定時間、室温に晒して降温する。これにより析出した尿素を添加弁10に固着させる。
この後、添加弁10内を尿素水溶液で満たす。この尿素水溶液の満水状態を第3所定時間維持した後、尿素水溶液を排出する。これにより固着した尿素を尿素水溶液に溶解させる。
最後に、ハンドプレスなどによって弁体30を開弁させる。その際の弁体30の開弁に必要な力をロードセルで計測する。すなわち、弁体30とボディ20との間などで固着した析出物の接着力をロードセルで計測する。
上記処理において、恒温槽の温度、および、尿素水溶液の充填と排出回数を変化させて複数のデータを取得している。図10および図11の横軸は恒温槽の温度、縦軸は接着力を示している。データ点は、菱形、三角形、および、丸で示している。
菱形で示されるデータ点は尿素水溶液の充填と排出回数がゼロの場合の接着力を示している。三角形で示されるデータ点は尿素水溶液の充填と排出回数が2の場合の接着力を示している。丸で示されるデータ点は尿素水溶液の充填と排出回数が6の場合の接着力を示している。
したがって菱形で示されるデータ点は析出物の溶解がゼロの場合の接着力を示している。三角形で示されるデータ点は析出物の溶解がある場合の接着力を示している。丸で示されるデータ点は析出物の溶解が三角形で示されるデータよりも行われた場合の接着力を示している。
図10に示すように、尿素水溶液の充填と排出回数の相違のために、菱形で示される接着力が最も高くなっている。その次に三角形で示される接着力が高くなっている。丸で示される接着力が最も低くなっている。ただし、恒温槽の温度条件がおよそ135℃を超えると、尿素水溶液の充填と排出回数の相違に関わらずに、接着力がけた違いに高くなる。これは、析出した尿素がビウレット、シアヌル酸、アンメリンに変化するためである。そしてビウレット、シアヌル酸、アンメリンそれぞれは尿素と比べて溶解度がけた違いに低いためである。
このように析出した尿素を放っておくと、析出物の接着力がけた違いに高くなる。上記の磁気回路の形成によって生じる電磁力よりも接着力が高くなり、添加弁10を開閉弁制御できなくなる。そこで、上記したように尿素が析出したと判断した場合、DCU80は析出した尿素を除去する除去処理を実行する。
図11に示すように尿素水溶液の充填と排出回数が6の場合、析出物の接着力が他と比べて数倍に低くなる。磁気回路の生成によって可動コア56に発生する電磁力の大きさは、ソレノイドコイル51に供給される電流量に依存する。この電流量は車両に搭載されたバッテリの供給電圧に依存する。図11に、供給電圧が最も低い場合の電磁力をFbminとして一点鎖線で示す。供給電圧が最も高い場合の電磁力をFbmaxとして二点鎖線で示す。
尿素水溶液の充填と排出回数を6回行った場合、恒温槽の温度が135℃以下において、接着力は電磁力をFbminとFbmaxのいずれよりも低くなる。したがって電磁力によって添加弁10を開閉弁制御できるようになる。なお、上記の135℃という温度は、尿素の析出温度に相当する。これによりも高温になると、尿素はビウレットに変化する。
<尿素の固着判定>
次に、図12に基づいてDCU80による尿素の固着判定を説明する。
先ずステップS10においてDCU80は、エンジン300が燃焼駆動を停止したか否かを判定する。エンジン300が燃焼駆動を停止したと判定すると、DCU80はステップS20へと進む。エンジン300の燃焼駆動が停止していないと判定すると、DCU80はステップS10を繰り返して待機状態になる。なおDCU80はこの固着判定とは別ロジックで、エンジン300の燃焼駆動の停止後、尿素水溶液の吸い戻し処理を実行する。
ステップS20へ進むとDCU80は、尿素水溶液の吸い戻し処理が終了したか否かを判定する。吸い戻し処理が終了したと判定すると、DCU80はステップS30へと進む。吸い戻し処理が終了していないと判定すると、DCU80はステップS20を繰り返して待機状態になる。
ステップS30へ進むとDCU80は、排気温度センサの出力を取得する。そしてDCU80は取得したセンサ温度が析出温度を上回る時間が固着時間を上回るか否かを判定する。センサ温度が析出温度を上回る時間が固着時間を上回る場合、DCU80は尿素が析出したと判定し、ステップS40へ進む。センサ温度が析出温度を上回る時間が固着時間を下回る場合、DCU80は尿素が析出していないと判定し、ステップS50へと進む。
なお、排気温度センサの出力の取得終了タイミングは、例えば取得開始タイミングから固着時間以上の時間経過後に設定することができる。排気温度センサの出力の取得終了タイミングは、センサ温度が析出温度を下回った時点に設定することができる。
ステップS40へ進むとDCU80は固着フラグをオンにして記憶する。そしてDCU80は尿素の固着判定を終了する。
ステップS50へ進むとDCU80は固着フラグをオフにして記憶する。DCU80は尿素の固着判定を終了する。
<尿素の固着判定>
次に、図13に基づいてDCU80による尿素の除去処理を説明する。
先ずステップS110においてDCU80はエンジン300が始動したか否かを判定する。エンジン300が始動したと判定すると、DCU80はステップS120へと進む。エンジン300が始動していないと判定すると、DCU80はステップS110を繰り返して待機状態になる。
ステップS120へ進むと、DCU80は記憶した固着フラグがオンかオフかを判定する。固着フラグがオンの場合、DCU80はステップS130へと進む。固着フラグがオフの場合、DCU80は除去処理を終了する。
ステップS130へと進むと、DCU80は回転制御信号をポンプ70に出力する。こうすることでDCU80はポンプ70を交互に正転と逆転させる。これによりDCU80は添加弁10内に尿素水溶液を充填させる。この結果、固着した尿素の尿素水溶液への溶解が行われる。なおDCU80は回転制御信号の出力回数をカウントしてインクリメントする。この後にDCU80はステップS140へと進む。
ステップS140へ進むとDCU80は、回転制御信号の出力回数が所定回数に達したか否かを判定する。上記したように回転制御信号を6回ほど出力すると、添加弁10内は、バネ40まで尿素水溶液で満たされる。この結果、析出した尿素が尿素水溶液に浸り、尿素の溶解が始まる。したがってこの所定回数としては、例えば6を採用することができる。なおもちろんではあるが、この6という回数は一例に過ぎない。所定回数は、添加弁10の排気管310への搭載状態、添加弁10の内部構造、正圧と負圧の発生時間やその強さに応じて適宜設定変更することができる。
回転制御信号の出力回数が所定回数に達したと判定すると、DCU80はステップS150へと進む。回転制御信号の出力回数が所定回数に達していないと判定すると、DCU80はステップS130へと戻る。
ステップS150へ進むとDCU80は回転制御信号の出力を停止するとともに、回転制御信号の出力回数のカウント数をクリアする。そしてDCU80はステップS160へと進む。
ステップS160へ進むとDCU80はソレノイドコイル51に電流供給することで添加弁10を開弁制御する。そしてDCU80はステップS170へと進む。
ステップS170へ進むとDCU80は添加弁10が開弁状態になったか否かを判定する。添加弁10が閉弁状態から開弁状態になった場合、ソレノイドコイル51に供給する電流量が変化する。またDCU80が添加弁10を開弁制御するとともに、ポンプ70を正回転させた場合、添加弁10から排気管310内に尿素水溶液が噴射される。そのために添加弁10よりも下流に位置する第2NOxセンサ502の出力が変化する。これら電流量や第2NOxセンサ502の出力の変化に基づいて、DCU80は添加弁10が開弁状態になったか否かを判定する。
添加弁10が開弁状態になったと判定すると、DCU80は除去処理を終了する。添加弁10が開弁状態になっていないと判定すると、DCU80はステップS130へと戻る。
<作用効果>
次に、本実施形態に係る添加装置100の作用効果を説明する。上記したように添加弁10に固着した析出物を除去する際、DCU80はポンプ70に正圧と負圧を交互に発生させる。これにより、閉弁状態の添加弁10内への尿素水溶液の圧送と添加弁10内の気体の排出とが交互に繰り返され、添加弁10内に尿素水溶液が充填される。
これによれば添加弁10に固着した尿素が尿素水溶液に溶解する。これにより固着した尿素が添加弁10から除去される。
回転制御信号は、ポンプ70を正回転する正転信号、待機する第1待機信号、ポンプ70を逆回転する逆転信号、待機する第2待機信号からなる。この正転信号の圧送時間T1と逆転信号の排出時間T3を、第1待機信号の第1待機時間T2と第2待機信号の第2待機時間T4それぞれよりも短くしている。
これによれば、圧送時間T1と排出時間T3が待機時間T2,T4よりも長い構成とは異なり、添加弁10内に尿素水溶液の満たされる時間が短くなる。この結果、固着した尿素の尿素水溶液への溶解の開始を早めることができる。
また、排出時間T3は圧送時間T1よりも短くなっている。これによれば、圧送時間T1と排出時間T3とが同一の構成と比べて、添加弁10内に尿素水溶液の満たされる時間が短くなる。これによっても、固着した尿素の尿素水溶液への溶解の開始を早めることができる。
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は上記した実施形態になんら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
なお本実施形態ではDCU80が、添加弁10の開閉制御、ポンプ70の回転制御、尿素の固着判定、および、尿素の除去処理の全てを実行する例を示した。しかしながら、例えばDCU80が添加弁10の開閉制御とポンプ70の回転制御、および、尿素の除去処理を行い、他のコントロールユニットが尿素の固着判定を行ってもよい。