以下、図面を適宜参照しながら本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明するが、本発明は以下の例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、生体試料管として採血管を例に挙げて、本実施形態の生体試料分析装置の説明を行う。
まず、第一実施形態(参考例)の生体試料分析装置100(後記する)では、カメラ201(後記する)により撮像して得られた画像を解析することで検出された生体試料(血清等)の存在位置と、赤外光を使用して検出された生体試料(血清等)の液面位置とを比較することで、採血管内部の生体試料の種別が精度良く取得される。即ち、生体試料分析装置100では、採血管209(後記する)について、ソフトウェアによる分析と、ハードウェアによる分析との双方が行われる。そして、このようにすることで、大型のラベル306(後記する)が採血管209の表面に貼付され、検査技師等が内部がほとんど確認できないような場合であっても、わずかな隙間(採血管の周方向におけるラベル端部同士の間)を利用して、生体試料の種別を精度良く把握することができる。
図1は、第一実施形態の生体試料分析装置100の全体図である。生体試料分析装置100は、搬送ライン101、投入モジュール102、遠心分離モジュール103、種別判定モジュール104、開栓モジュール105、生体試料を含む採血管209(図2参照、図1では図示しない)とは異なる、空の採血管(図示しない)にバーコードを印字して貼付するラベラモジュール106、分注モジュール107、閉栓モジュール108、仕分けモジュール109、及び収納モジュール110を備えて構成される。そして、この生体試料分析装置100には、生体試料分析装置100に備えられる入出力I/F207(図2参照、図1では図示しない)を介して、生体試料分析装置100を制御する制御用パーソナルコンピュータ111と、採血管209の内部の血清の成分を分析する自動分析装置112とが接続されている。
次に、生体試料の前処理及び分析を行う一連の工程について説明する。はじめに、患者(被験者)から採取された血液(生体試料)は、採血管209に入れられた後、投入モジュール102に投入される。ここで投入される採血管209には、ある程度大きなラベル306(図3(b)参照)が貼付され、採血管209の内部が視認しにくくなっている。通常、採血及び投入モジュール102への採血管209の投入は、検査技師等の手作業によって行われる。その後の採血管209は、搬送ライン101の上に載って、遠心分離モジュール103、種別判定モジュール104、開栓モジュール105、ラベラモジュール106、分注モジュール107、閉栓モジュール108、仕分けモジュール109、収納モジュール110の間で移動される。
遠心分離モジュール103では、投入された血液(生体試料)に対して遠心分離が実施される。遠心分離によって、相対的に比重の大きい血餅の層と、相対的に比重が小さく成分分析に使用される血清の層とに分離される。これらの層(血餅及び血清の層)には、赤外光を吸収する水分や血球成分が含まれる。次に、種別判定モジュール104では、生体試料(血液)の生体試料の種別及び量が検出される。具体的には、前記の自動分析装置112で分析される血清の量が検出される。ここで、溶血と判定された生体試料や、量が極めて少ない場合には、当該生体試料が収容された採血管209は仕分けモジュール109まで移動され、エラー検体に分類される。一方、溶血と判定されず、かつ、十分な血清量の場合であり、成分分析が行われる採血管209は、搬送ライン101によって開栓モジュール105に移動される。
開栓モジュール105では、採血管209の栓300(図3参照、図2では図示しない)が開栓される。ラベラモジュール106では、空の容器(図示しない)に、詳細は後記する種別判定モジュール104での判定結果を表すバーコード等が印刷されたラベル(図示しない)が貼付される。分注モジュール107では、遠心分離された採血管209(親検体)が、自動分析装置112等で分析されるために、図示しないラベルが貼付された採血管(子検体、図示しない)に小分けされる。閉栓モジュール108では、親検体及び子検体のそれぞれの採血管の栓が閉栓される。仕分けモジュール109では、親検体及び子検体の仕分けを行い、親検体の場合には収納モジュール110に、また、子検体の場合には自動分析装置112にまで移動され、各種成分の分析が実施される。
図2は、第一実施形態の生体試料分析装置100に備えられる種別判定モジュール104を示す図である。種別判定モジュール104は、カメラ201aを備えて構成される画像処理部201bと、赤外光を採血管209に照射する光源203a1及び採血管209を透過した赤外光を受光する受光部203a2を備えて構成される液面位置検出部203bと、を備えている。また、種別判定モジュール104は、可視光を採血管209に照射するとともに、採血管209で反射した光を受光する発光受光部204a,204aを備えて構成されるラベル位置検出部204bを備えている。発光受光部204a,204aは同軸上に採血管209を挟むように対向して二つ備えられ、これにより、精度の高いラベル位置の検出が行われる。
さらに、種別判定モジュール104は、前記画像処理部201b、液面検出部203b及びラベル位置検出部204bで得られたデータを蓄積するデータ蓄積部205と、得られたデータを比較解析する比較解析部206と、入出力I/F(インターフェース)207と、ユーザーI/F208とから構成される。これらは、いずれも図2において破線で示す電気信号線214により接続されている。
種別判定モジュール104で得られた各種情報(画像解析によって抽出された境界面502,503(図5参照)の位置情報や、液面位置検出部203bによって得られた血清の位置情報(図6参照)、血清の色情報(図7参照)等)は、検査技師等へと伝達される。具体的には、種別判定モジュール104に供えられた入出力I/F207(例えばUSB端子やLANポート等)及びユーザI/F208を介して、これらの情報が検査技師等に伝達される。
ここでいう「検査技師等」とは、必ずしも生体試料分析装置100の近くにいる検査技師等のことではなく、入出力I/F207を介してユーザI/F208を操作できる検査技師等を意味している。そのため、生体試料分析装置100では、遠隔地から無線やインターネットを通じ、検査技師等による操作が行われてもよい。
ユーザI/F208としては、例えば、前記の制御用パーソナルコンピュータ111に供えられた各種装置及びその動作、具体的には、マウス、キーボード、タッチパネル、ディスプレイ、ランプの点灯、スピーカによる警告音等が挙げられる。ユーザI/F208は、例えば、検出した生体試料種別や生体試料量の表示、生体試料種別、生体試料量の検出等に用いられるパラメータや閾値等の入力の際に使用される。なお、図2に示すユーザI/F208は、前記の図1を参照しながら説明した制御用パーソナルコンピュータ111に相当する。
また、生体試料分析装置100に備えられる画像処理部201b、液面位置検出部203b、ラベル位置検出部204b、データ蓄積部205及び比較解析部206は、それぞれ少なくとも一部が独立して又はこれらが一体となって、いずれも図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only
Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等を備えて構成される。そして、これらは、前記のROMに格納されている所定の制御プログラムが前記CPUによって実行されることにより具現化される。
種別判定モジュール104では、画像処理部201bによって取得した生体試料の境界面位置と、液面位置検出部203bによって得られた生体試料の液面位置とが比較解析されることで、採血管209内部の血清の種別(正常、溶血、黄疸又は乳び)が判定される。この判定は、詳細は後記するが、比較解析部206によって行われる。また、採血管209の断面積は分析前に把握できることから、血清の液面位置が把握されることで、血清の液量を測定することもできる。
そして、これら一連の検出動作は、ホルダ(図示しない)に載せられた採血管209が搬送ライン101の上を移動することによって行われる。なお、図2では、カメラ201aと、光源203a1及び受光部203a2と、発光受光部204a,204aとは、この順で図示したが、検出の順序は、上記に記載した順番どおりに実施することに限られたものではない。
図3は、図2に示した種別判定モジュール104に備えられるカメラ201aにより撮像される画像であり、(a)はラベル306が貼付されていないとした場合の採血管209、(b)はカメラ201a側にラベル306が配置された採血管209、(c)は画像上で大部分がラベル306で覆われた採血管209、(d)はラベル306の端部同士の間に形成された隙間がはっきりとわかる採血管209の様子を示す図である。
分離剤302が封入された採血管209を用いて血液305(図8(f)参照、図3では図示しない)を採取し、遠心分離を実施した後の検体は図3(a)に示すような配置構成となる。なお、図3(a)では、遠心分離後の採血管209の様子を示すために、前記のようにラベル306が貼付されていないとした場合の状態を示している。そして、図3(a)に示すように、採血管209に封入された血液は、分離剤302によって、上部に血清303の領域と、下部に血餅304の領域とに分離する。また、採血管209の上方には、空気301が存在している。そして、採血管209の上部にはキャップ300が配置され、生体試料が漏れないよう封がされている。
また、実際には、採血管209には前記のようにラベル306が貼付されているため、カメラ201a(図2参照)と採血管209との位置関係によっては、図3(b)のように血清303の部分がラベル306で覆われる場合がある。そこで、このような場合に対応するため、図示しない生体試料管回転装置により、採血管209が周方向に回転される。即ち、生体試料分析装置100では、高速に検出を行う観点から、この生体試料管回転装置によって採血管209が回転されながら、生体試料分析装置100に固定されたカメラ201aによる採血管209の撮像が連続的に行われる。これにより、カメラ201aと採血管209との位置関係が変化し、周方向でラベル306の端部同士の隙間から血清303の少なくとも一部が見える部位が撮像される(図3(c)及び図3(d))。ここでいう「連続的」とは、「複数枚の画像取得」であってもよいし、「動画」であってもよい。
なお、採血管209の背面に、白又は黒の背景307が設置されると、後記する画像処理がスムーズに行えるため好ましい。そして、ここで撮像された画像は、画像処理部201bに入力される。
図4は、第一実施形態の生体試料分析装置100において行われる画像解析のフローを示す図である。以下、適宜図2及び図3を併せて参照しながら、当該フローの説明を行う。はじめに、カメラ201aにより、採血管209が連続的に撮像されることで、二次元の画像が取得される(ステップS401)。ここで撮像され画像は、例えば前記の図3(b)~図3(d)に示したようなものである。撮像された画像データは画像処理部201bに転送され、以降の処理が行われる。
次に、画像処理部201bは、転送された画像に基づいて、ラベル306の隙間判定を行う(ステップS402)。即ち、画像処理部201は、周方向でラベル306の端部同士の間に隙間が形成されているか否かを判定する。例えば前記の図3(c)及び図3(d)の画像が、隙間が形成されている場合に該当する。ここでは、画像処理部201bでは、背景307の領域を除去する画像処理が行われる。また、ラベル306の表面には、バーコードラベルや文字、数字等の印字があるものの、ラベル306の色は白色である場合が多い。そのため、画素値の微分等を用いたエッジ抽出処理によって、ラベル306の隙間を容易に判定することができる。
なお、図4のフローでは、説明の簡略化のために記載を省略したが、このステップS402においてラベル306の隙間を見つけることができない場合には、図4のフローでは以降の処理には進むことはできない。そのため、後記する色情報を抽出することなく、終了となる。このとき、場合によっては、該当する採血管209は、生体試料分析装置100での分析にはその後供されずに、生体試料分析装置100から分離され、検査技師等の目視で作業が行われる。
前記のステップS402において、ラベル306の隙間が存在することが確認された後、画像処理部201bは、撮像された複数の画像のうち、血清領域の面積、即ち、生体試料の部分の領域のうちの最も上に存在する領域(生体試料の存在領域)の面積が最も大きな画像を一つ選択する(ステップS403)。例えば、図3(b)~(d)に示すような複数の画像が取得された場合には、図3(d)の画像を選択し、以降の処理を行う。各層の判別及び各層の面積は、例えば前記のエッジ抽出処理等によって算出することができる。このステップS403は、次のステップS404と一緒に行われる。即ち、各境界面の判別が行われながら、各層の面積が算出される。
なお、このとき、採血管209の内壁に付着し易い生体試料、具体的には黄疸等であった場合、実際の量はさほど多くないにも関わらず、カメラ201aにより測定された画像での面積が最大と判定される可能性がある。この場合には、後記する液面位置検出部203bによる液面位置の検出時にも、このような生体試料を含む採血管209が検出されることになる(詳細は図7を参照しながら後記する)。そして、このような場合には、物理的に検出される液面位置によって補正されることになる。従って、ここでのステップS403及び後記するステップS404は、このような検出誤りを含んでいても構わない。
次いで、画像処理部201bは、血清領域の面積が最大となる画像(例えば前記の図3(d))から、境界面の抽出を行う(ステップS404)。即ち、前記のステップS403において説明した、血清領域の面積が最も大きくなる画像において、各層の境界面の抽出が行われる。
ここで、採血管209に分離剤が封入されていてかつ遠心分離が実施されている場合には、採血管209の内部では、生体試料の境界面は、空気-血清の境界面と、血清-分離剤の境界面と、分離剤-血餅の境界面との、いずれかとなる。各境界面は、採血管209の長さ方向に対して垂直方向(即ち、直立している採血管209に対して境界面は水平)に存在する。そのため、各境界面は、採血管209の長手方向に対する画素値の微分等を用いたエッジ抽出処理によって、検出することができる。また、血清303の領域は、分離剤302の領域及び血餅304の領域より上側となる。これにより、このステップS404により、空気と血清との境界面、即ち、血清が存在する領域を抽出することが可能である。
なお、ここで境界面が抽出できない場合には、境界面が存在していないことになる。即ち、採血管は空(後記する図8(g)を参照)となる。従って、この場合には、以降の処理を行うことなく、終了となる。この場合には、該当する採血管209は、生体試料分析装置100での分析にはその後供されずに、生体試料分析装置100から分離される。
最後に、画像処理部201bは、画像処理された画像において得られた血清の領域において、少なくとも一つの画素について、血清の色情報を抽出する(ステップS405)。そして、抽出された少なくとも一つの色情報を用いて、採血管209の表面に印字された文字や数字情報(例えば採血管209の製造ロット番号や型番等)の影響を除外することができる。このとき、精度をより高める観点から、二つ以上の色情報を抽出し、画素値の平均値や画素値の中央値、画素の分散値等を算出し、用いることが好ましい。ここで抽出された色情報により、血清の種別(正常、溶血、黄疸又は乳び)を判定することができる。なお、色情報の抽出の具体的方法については、図7を参照しながら後記する。
図5は、図4に示すフローにより得られる境界面502,503の位置を説明する図であり、(a)は正常な血清についての図面代用写真であり、(b)は(a)の画像解析により得られた境界面502,503及びこれらで区切られた領域504を示す図であり、(c)は黄疸と判定された血清についての図面代用写真であり、(d)は乳びと判定された血清についての図面代用写真であり、(e)は(d)の画像解析により得られた境界面502,503及びこれらで区切られた領域507を示す図である。また、図5では、図示の簡略化のために、血餅や分離剤を表す符号(それぞれ304,302)の図示を省略している。
図5(a)は、分離剤302を有する採血管209に血液を入れ、遠心分離した後の実際の採血管209の内部を示している。一方で、図5(a)において、前記の図4に示したフローに沿って得られた境界面502,503の位置(即ち、前記の図2に示した比較解析部206による画像解析により得られた境界面502,503の位置)を矢印で示している。この図5(a)に示すように、実際の血清の上下境界面の位置(図5(a)に示す図面代用写真における血清の上下界面の位置)と、画像解析により得られた境界面502,503とは、ほとんど一致していることがわかる。ここでいう一致とは、採血管209の長さ方向(高さ方向)の位置での一致を意味する。
図5(b)に示すように、画像解析により得られた境界面502,503によって区切られた領域504は、実際の血清303の領域に含まれている。そのため、この領域504の内部から色情報を抽出することで、血清の色情報を確実に抽出することができる。また、前記のように、実際の境界面(図5(a)に示す図面代用写真の位置)と、画像解析により得られた境界面502,503とは、ほとんど一致していることから、領域504の面積を算出することで、血清の量を高精度に把握することもできる。
次に、事前に別途成分分析を行い、黄疸と判定された血清(図5(c))、及び、乳びと判定された血清(図5(d))を用いて、前記の図4のフローに沿って画像処理を行った。そして、画像解析により得られた境界面502,503を、図5(c)及び図5(d)のそれぞれに付した。そして、これらの境界面502,503で区切られた領域507を模式的に表したものが、図5(e)である。
図5(e)に示すように、画像解析によって抽出された血清の境界面502,503で区切られた領域507には、実際の血清303の領域に含まれていない部分が存在する。即ち、画像解析によって抽出された血清303の境界面502,503で区切られた領域507が、実際の血清303の領域の内側に収まっていない。従って、この領域507の内部で色情報を抽出しても、必ずしも、血清303の領域内から色情報を抽出できるとは限らない。例えば、血清303以外の領域(例えば空気300(図5では符号省略、図3(a)参照)の背景)の色を血清の色と誤って抽出する場合がある。
また、ここでは、一例として黄疸や乳びの血清を用いたが、他の状態の生体試料でも、前記のように、画像解析によって抽出された血清の境界面502,503で区切られた領域507が、前記の領域504とは異なり、その生体試料の領域の内側に収まらない場合がある。例えば、ラベル306(図3(b)参照、図5では図示しない)の色に近い白濁した生体試料の場合に、ラベル306の端面を境界面と誤る場合がある。他にも例えば、採血管209の内壁面と親和性が高い等の理由により、生体試料が採血管209の内壁面近傍に吸着や残留し易い試料では、このような現象が生じやすい。そのため、これらの場合には、画像解析によっては、誤った血清の色の抽出を行う可能性がある。
ただし、前記のように、この場合には、後記する液面位置検出部203bによる液面位置の検出時に、このような生体試料を含む採血管209が検出されることになる。そして、このような場合には、物理的に検出される液面位置によって補正されることになる(詳細は後記する)。従って、前記のステップS403及びステップS404は、このような検出誤りを含んでいても構わない。そして、第一実施形態の生体試料分析装置100では、これらの画像解析に加えて、ハードウェアを使用した、画像解析によらない物理的な液面検出が行われている。
図6は、第一実施形態の生体試料分析装置100においてレーザ光を使用して行われる液面位置の決定方法を説明する図であり、(a)はラベル306が貼付されていない採血管209について決定するときの様子を示す図であり、(b)は(a)における透過光量と採血管209の長さ方向の位置(即ち高さ位置)との関係を示すグラフであり、(c)はラベル306が貼付された採血管209について決定するときの様子を示す図であり、(d)は(c)における透過光量と採血管209の長さ方向の位置(即ち高さ位置)との関係を示すグラフである。なお、前記の図2では、光源203a1及び受光部203a2と、ラベル位置を検出する発光受光部204a,204aとは独立したものとして示したが、この図6では、便宜的に、同じ図面に一体物として示すものとする。
図6(a)において、光源203a1及び受光部203a2は、生体試料を含む採血管209を挟んで向かい合わせに配置され、生体試料を透過した赤外光のみが検出される。ここで使用される光源203a1は、レーザである。このような指向性の高い光を使用することで、より精度良く液面位置の検知が可能となる。特に、レーザのように発光量の大きい光源203aを使用することで、採血管209の全周がラベル306に覆われている場合においてもラベル306を透過して、採血管209内部での液面位置が検出され易くなる。ただし、光源203a1としては、レーザのほかにも、ハロゲンランプやLED等も使用可能である。
光源203aから照射される光の波長は、前記のように赤外光であるが、具体的には例えば0.7μm以上、好ましくは1μm以上、また、その上限として、2.5μm以下、好ましくは2μm以下である。このような範囲にある赤外光を使用することで、血餅304に含まれる血球成分や、血清303に含まれる水分等では、大部分の光が吸収される一方で、分離剤302に用いられることが多い樹脂製のゲル成分中では大部分の光が透過する性質を利用することができる。
そして、これにより、血餅304と分離剤302との境界面、及び、分離剤302と血清303との界面面において、より急峻なシグナル変化を検知できる。即ち、赤外光を使用することで、より確実に、液面位置を検出することができる。また、透過光量は生体試料の成分及び体積によって変わるため、赤外光の透過光量に基づいて液面位置を検出することで、採血管209の内壁面近傍に吸着したり残留したりし易い生体試料の場合にも、高精度に液面位置を検出することができる。そして、高精度に液面位置が検出されることで、前記の図5を参照しながら説明したように、血清303の色情報を正確に取得することができ、血清303の種別を精度よく判定することができる。
さらに、分離剤302がゲル状の樹脂である場合には、その色は白色に近い場合が多くラベル306の色や乳びの血清303の色と似ている。そのため、画像解析のみでは、ラベル306の貼り方や血清303の状態によっては、分離剤302と血清303とが紛らわしくなり、血清303の種別を間違える場合もある。しかし、図6に示す方法を併用することで、このような誤りを防止することができ、高精度に液面位置を検出することができる。
また、生体試料分析装置100には、採血管209を、生体試料分析装置100に固定された光源203a1及び受光部203a2に対して上下方向に移動させる生体試料管移動装置(図示しない)が備えられている。従って、この生体試料管移動装置により、採血管209が上下方向のうちの少なくとも一方に移動しながら、透過した赤外光の光量(透過光量)が測定される。これにより、長さ方向における透過光量のプロファイル(図6(b)、後記する)が得られる。なお、ここで得られたプロファイルは、液面位置検出部203bを通じて、データ蓄積部205に蓄積される。
さらに、生体試料分析装置100では、このプロファイルの作成時に、ラベル306の貼付位置も検出される。具体的には、生体試料分析装置100に固定された発光受光部204a,204aに対して、前記の生体試料管移動装置によって採血管209が上下方向のうちの少なくとも一方に移動される際、採血管209で反射した光の量の変化が測定される。ラベル306が貼付された部分では、貼付されていない部分と比べて光(可視光)の反射量が変化する。そのため、この反射量を測定することで、光が照射された部分でのラベル306の有無を判定することができる。そして、この判定を採血管209の長さ方向の全域で行うことで、ラベル306の貼付位置を検出することができる。なお、ここで得られたラベル306の貼付位置は、ラベル位置検出部204b及び液面位置検出部203bを通じて、データ蓄積部205に蓄積される。
図6(b)は、前記の受光部203a2により取得された透過光量のプロファイルである。採血管209の液面より上面側の空気300(図3(a)参照)の領域、及び分離剤302の領域では、大部分の赤外光は透過されるため、透過光量は大きくなる。一方、血球成分が含まれる血餅304の領域、及び水分が含まれる血清303の領域では赤外光が吸収されるため、透過光量は小さくなる。
そこで、予め定められた閾値605を設け、透過光量が当該閾値を上回り、かつ、採血管209の長さ方向で上側の部分(即ち、高さ位置として高い方の部分)は、空気300が含まれる領域と判定することができる。また、閾値605を下回り、かつ、採血管209の長さ方向で上側の部分は、血清303の領域と判定ことができる。さらに、当該閾値を上回り、かつ、採血管209の長さ方向で下側の部分(即ち、高さ位置として低い方の部分)は、分離剤302の領域と判定することができる。そして、閾値605を下回り、かつ、採血管209の長さ方向で下側の部分は、血餅304の領域と判定することができる。即ち、赤外光の透過光量と閾値605とを比較することで、生体試料の液面位置を決定することができる。そして、生体試料の液面位置、即ち採血管209の長さ方向の長さ(即ち高さ方向の位置)がわかることで、各生体試料(特には血清303)の量を把握することもできる。
また、前記の図6(a)では、便宜的にラベル306が貼り付けられていない例を説明したが、実際には、図6(c)に示すように、採血管209にはラベル306が貼付されている。そのため、ラベル306の表面での赤外光の散乱やラベル306の内部での赤外光の吸収によって、ラベル306が存在する部分において、赤外光の透過光量はわずかに減衰する(図6(d))。そこで、発光受光部204a,204aによってラベル306が存在すると検出された部分では、ラベル306の存在する領域での閾値605が部分的に変更(小さく)される。これにより、ラベル306が存在する場合にも、高精度に液面位置を検出可能である。そして、高精度に液面位置が検出されることで、前記の図5を参照しながら説明したように、血清303の色情報を正確に取得することができ、血清303の種別を精度よく判定することができる。
図7は、第一実施形態の生体試料分析装置100において行われる、血清の種別及び量を判定するフローである。まず、前記の図4のフローに沿って画像解析を行い、採血管209の内部での境界面502,503が抽出される(ステップS701)。ここで抽出された境界面502,503の位置は、前記のようにデータ蓄積部205に蓄積される。なお、採血管209の表面にはラベル306が貼付されている。ちなみに、生体試料である血清303は、正常なもののほか、溶血や黄疸、乳びの可能性がある。そして、これらの場合には、前記のように、正確な境界面502,503が抽出されない可能性がある。
次いで、前記のステップS701を経た採血管209について、前記の図6を参照しながら説明したようにして、血清303の液面位置が検出される(ステップS702)。ここで検出された液面位置は、前記のようにデータ蓄積部205に蓄積される。そして、比較解析部206(図2参照)は、データ蓄積部205に蓄積された境界面502,503と液面位置とを比較する。具体的には、まず、比較解析部206は、画像解析で得られた境界面502(図5参照)が、レーザ光を使用して得られた血清液面の上面よりも上側にあるか否かを判定する(ステップS703)。
もしこの条件が満たされれば(Yes方向)、前記の図5(e)を参照しながら説明したように、領域507のように上側端部が実際の血清303の領域からはみ出しており、この状態で血清303の色情報の抽出を行えば、血清303以外の部分の色情報が誤って抽出されてしまう可能性がある。そこで、この場合には、レーザ光を使用して得られた血清液面(液面位置検出部203bにより検出された液面)を考慮しながら、前記のステップS701において取得された画像での境界面502,503について再解析が行われる(ステップS705)。
一方で、前記のステップS703において、画像解析で得られた境界面502(図5参照)が、レーザ光を使用して得られた血清303の液面の上面よりも上側には無い場合(No方向)、前記の図5(b)を参照しながら説明したように、領域504の少なくとも上端は、血清303の領域に含まれていることになる。そのため、次のステップとして、比較解析部206は、画像解析で得られた境界面503(図5参照)が、レーザ光を使用して得られた血清303の液面の下よりも下側にあるか否かを判定する(ステップS705)。
もしこの条件が満たされれば(Yes方向)、前記の図5(e)を参照しながら説明した内容と同様に、領域507のように下側端部が実際の血清303の領域からはみ出しており、この状態で血清303の色情報の抽出を行えば、血清303以外の部分の色情報が誤って抽出されてしまう可能性がある。そこで、この場合には、レーザ光を使用して得られた血清303の液面を考慮しながら、前記のステップS701において取得された画像での境界面502,503について再解析が行われる(ステップS705)。
一方で、前記のステップS704において、画像解析で得られた境界面503(図5参照)が、レーザ光を使用して得られた血清303の液面の下面よりも下側には無い場合(No方向)、前記の図5(b)を参照しながら説明した内容と同様に、領域504のように下端も、血清303の領域に含まれていることになる。即ち、前記のステップS703及びステップS704の双方の条件が満たされなければ、画像解析により得られる領域504は、実際の血清303の領域に含まれているといえる。従って、当該領域504の内側から任意の部位で色情報の抽出を行うことで、血清303の色情報を抽出することができる。このことを換言すれば、以上の判定により、血清303の種別の判定対象となる部分(領域504)が特定されたことになる。
そこで、比較解析部206は、前記のステップS701で抽出した境界面502と境界面503との間の領域504(即ち、血清303の種別の判定対象となる部分)のうちの少なくとも一つの画素値に基づいて、血清303の色情報を抽出する(ステップS706)。ここで、例として、取得される色情報としては、人間が色を知覚する方法と類似したHSV系の色情報である。HSV系のうち、例えば色相であるHは、赤、黄、緑、青等の色の様相の相違を数値的に示したものであり、例えば0~360の範囲で数値的に示される。
そして、比較解析部206は、抽出したHSV系の色情報に基づいて、血清303の種別を判定する(ステップS707)。具体的には、血清303の種別の判定は、抽出された色相値(HSV系におけるHの値)を、基準となる閾値と比較することによって行われる。そして、この閾値は、血清303が例えば正常、溶血、黄疸、乳びのそれぞれについて範囲として設定されており、この比較により、血清303の種別を判定することができる。
なお、ここで行われる判定は、予め設定されている閾値との比較に限られるものではない。例えば、生体試料種別間の判別式を予め設定しておき、検出対象領域の全画素の画素値又は代表値(検出対象領域の全画素の画素値の平均値や画素値の中央値等)を判別式に代入して得られた値によって、生体試料種別を判定するようにしてもよい。このような方法によれば、分類すべき血清の色の状態に似た色、例えば溶血の場合には赤色、黄疸の場合には緑色や茶色、乳びの場合には白色の印字が存在するような生体試料管の場合にも、高精度に血清色を抽出することができる。
ちなみに、ステップS703やステップS704において「Yes」と判定された場合、ワーニングを通知させる等してその旨が検査技師等に知らせるようにしてもよい。また、ステップS703やステップS704において「Yes」と判定された場合には、ステップS701及びステップS702において、複数枚画像を取得した後にラベル隙間判定を行う段階で判定を間違えている可能性もある。そこで、ラベル隙間の判定を行う候補画像をユーザI/F208(図2参照、図1の制御用パーソナルコンピュータ111に相当)に表示させ、検査技師等に目視で判定してもらい、再解析を行う等すれば、さらに信頼性を向上させることができる。
以上の説明のように、生体試料分析装置100では、前記の図3~図5を参照しながら説明した画像解析に加え、図6を参照しながら説明したようなレーザによる液面位置の検出が行われる。このようにすることで、特に採血管209の内壁面近傍に吸着したり残留したりし易い生体試料の場合にも、高精度に液面位置を検出することができる。
ここで、本発明者らは、分離剤が封入された採血管209に血液を採取し、遠心分離して作製した擬似検体を用いて、図7のフローを実行した。なお、擬似検体が含まれる採血管209には、予め用意したラベル306(バーコードが印字されている)を一枚貼付した。その結果、作製した疑似検体の約10%で、画像解析で得られた境界面502,503とレーザ光を用いて検出された液面位置との間に乖離がみられ、ステップS705の処理が行われた。これにより、血清液面を正しく抽出できた疑似検体の割合は、最終的に95%に上昇し、残りの5%に関しても、前記に示したようにワーニングを検査技師等に通知することが可能であった。これにより、今回用いたほぼ全ての擬似検体で何らかの状態に分類が可能、又は、検査技師等にワーニングを通知することが可能であり、分類の精度を向上させることができることがわかった。
また、生体試料は、国籍や地域性によって、その傾向が異なる場合もある。そこで、使用が想定される場所ごとに、試料種別や液量が既知の試料を事前に用意し、検出装置のパラメータを逐次変更させるなどの手法をとれば、検出の信頼性をさらに向上させることができる。
以上の第一実施形態では、採血管209の内部に血餅304、分離剤302、及び血清303の全てが収容されていることを前提として、採血管209の内部の血清303の種別(正常、溶血、黄疸、乳び)が判定されていた。しかし、以下で説明する第二実施形態では、採血管209の内部に血餅304、分離剤302、及び血清303の全てが収容されていない場合、即ち、血餅304、分離剤302、及び血清303のうちの少なくとも一つを含まない採血管029も考慮し、血清303の種別が判定される。以下、第二実施形態の生体試料分析装置について説明する。
なお、第二実施形態で使用する生体試料分析装置は、制御のみが異なること以外は、前記の生体試料分析装置100の構成と同じである。そこで、第二実施形態で使用する生体試料分析装置のことを便宜的に「生体試料分析装置200」というが、その図示は省略する。また、以下で示す符号は、前記の生体試料分析装置100において示した符号と同じものを使用している。
図8は、第二実施形態の生体試料分析装置200において分析される採血管209を表し、(a)は血清303のみが入った、(b)は血清303、分離剤302及び血餅304が入った、(c)は血清303及び血餅304が入った、(d)は分離剤302及び血餅304が入った、(e)は血液305のみが入った、(f)は血液305及び分離剤302が入った、(g)は空(即ち空気301のみ)の、それぞれ生体試料管を表す。それぞれの採血管209において、空の部分(空気の部分)は「空気301」として示している。なお、図8では、説明の便宜上、ラベル306の図示は省略している。
前記のように、採血管209に含まれている成分には、様々なものがある。具体的には、図8(a)は、血清303が分注によって小分けにされた場合であり、液体成分のみが含まれる場合である。図8(b)は、分離剤302が封入された採血管209を用いて、血液305(図8(b)では図示しない)が遠心分離された場合である。図8(c)は、分離剤302(図8(c)では図示しない)が封入されていない採血管209を用いて、血液305(図8(c)では図示しない)が遠心分離された場合である。
図8(d)は、分離剤302が封入された採血管209を用いて、血液305(図8(d)では図示しない)が遠心分離された後、分注によって血清303(図8(d)では図示しない)が小分けされて除去された後の状態である。図8(e)は、分離剤302(図8(e)では図示しない)が封入されていない採血管209に血液305を採取し、遠心分離される前の状態である。図8(f)は、分離剤302(図8(f)では図示しない)が封入されている採血管209に血液305を採取し、遠心分離される前の状態である。図8(g)は、空の採血管であり、空気301のみが含まれている状態である。
これらのように、生体試料の種類には、遠心分離前の血液305のほか、遠心分離により得られる血清303や血餅304等がある。また、採血管209には、分離剤302が封入されているものもあれば、封入されていないものもある。さらに、遠心分離が行われる前に採血管209や、遠心分離が行われた後の採血管209もある。そこで、第二実施形態の生体試料分析装置200では、これらのような様々な状態の採血管209について、含まれる生体試料の分類処理が行われる。具体的には、生体試料分析装置200では、画像解析による境界面の抽出と、レーザによる液面位置の検出とを併用することで、採血管209の内部の生体試料の種別(空の状態を含む)の判定が行われる。
図9は、第二実施形態の生体試料分析装置200においてレーザを使用して行われる液面位置の決定方法を説明する図であり、(a)は図8(a)に示す採血管209についての、(b)は図8(c)に示す採血管209についての、(c)は図8(e)に示す採血管209についての、透過光量と採血管209の長さ方向の位置(即ち高さ位置)との関係を示すグラフである。なお、図9では、説明の便宜上、ラベル306の貼付がされていない採血管209について、評価している。ただし、実際には、前記の第一実施形態と同様にラベル306が貼付された採血管209について判定が行われる。そして、透過光のプロファイルでの閾値(図9では図示しない)も、ラベル306の貼付位置によって変更される。
前記の図6を参照しながら説明したように、血清303及び血餅304は赤外光を吸収する。また、水分や血球を含む血液305も、赤外光を吸収する。一方で、空気301及び分離剤302は赤外光を吸収しない。そうすると、血清303及び血餅304のみを含む(即ち分離剤302を含まない)ような場合や、血液305及び分離剤302を含むような場合には、血清303、血餅304及び血液305のいずれもが赤外光を吸収し、大きな透過光ピークが現れないため、液面位置を反映した透過光のプロファイルを得ることが難しい。そこで、生体試料分析装置200では、画像解析により、ラベル306の貼付された部分以外の領域(具体的には採血管209の底付近)の色情報を抽出し、これにより、生体試料の種類の判定が行われる。
図10は、第二実施形態の生体試料分析装置200において行われる、生体試料の種別及び量を判定するフローである。以下、図10に示すフローについて、前記の第一実施形態で参照した図面を適宜併せて参照しながら説明する。
まず、液面位置検出部203b(図2参照)は、前記の生体試料分析装置100と同様にして、採血管209での生体試料の透過光プロファイル(図6(d)参照)を取得する(ステップS1001)。この透過光プロファイルは、生体試料管の内部における生体試料の液面位置を表すものである。次に、ラベル位置検出部204b(図2参照)は、前記の生体試料分析装置100と同様にして、ラベル306の貼付位置の検出を行い、ラベル306が存在する領域で閾値を一定値低下させる処理を行い(図6(d)参照)、採血管209の長さ方向(高さ方向)全体での閾値を取得する(ステップS1002)。
次いで、比較解析部206(図2参照)は、透過光量とステップS1002で取得した閾値とを比較する(ステップS1003)。そして、比較解析部206は、透過光量が閾値を下回っている領域が少なくとも一つ存在するかどうか判定を行う(ステップS1004)。透過光量が閾値を下回っている領域が存在しない場合には、赤外光を吸収する血清303及び血餅304のいずれも存在しないと判定される。そのため、比較解析部206は、生体試料種別は空(図8(g)参照)と判定し、処理を終了する(ステップS1005)。
一方で、透過光量が閾値を下回っている領域が存在する場合には、そこで、比較解析部206は、その領域の数を判定し、二つ以上あるか否かの判定を行う(ステップS1006)。そして、透過光量が閾値を下回っている領域が二つ以上存在する場合には、分離剤302に挟まれて血清303及び血餅305が存在することを意味する。即ち、血餅305と分離剤302との間には、透過光量の変化によって認識可能な液面が存在していることになる。また、分離剤302と血清302との間にも、透過光量の変化によって認識可能な液面が存在していることになる。そのため、比較解析部206は、生体試料種別は分離剤302を含み、かつ、遠心後(図8(b)参照)と判定し、処理を終了する(ステップS1007)。
次に、比較解析部206は、採血管209の底付近の透過光量の大小を判定する(ステップS1008)。即ち、採血管209の底付近の透過光量が閾値よりも大きいか否かが判定される。ここで、採血管209は、半透明又は透明な材料により構成されるため、赤外光の大部分は透過する。しかし、採血管209の底付近では、湾曲した形状となっており、入射した赤外光が強く散乱して透過光量が減衰する。そのため、このような減衰を検出することで、底付近かどうかを検知することができる。なお、もし、この方法で底の位置を検知することができない場合には、透過光プロファイルを取得する時点で基準となる位置を設ければよい。
採血管209の底付近での透過光量が前記の閾値を上回る場合には(大きい場合には)、その採血管209には、底付近に分離剤302が存在していることを意味している。そのため、比較解析部206は、生体試料種別は分離剤302を含み、かつ、遠心前(図8(f)参照)と判定し、処理を終了する(ステップS1009)。
一方で、採血管209の底付近での透過光量が前記の閾値を下回る場合には(小さい場合には)、画像処理部201b(図2参照)は、カメラ201a(図2参照)により、採血管209の全周の撮像を行い、複数の画像を連続的に取得する(ステップS1010)。ここでの画像の取得は、前記の第一実施形態において図3及び図4を参照しながら説明した方法と同様の方法により行われる。
次に、画像処理部201bは、取得された画像について、ラベル位置検出部204b(図2参照)により検出されたラベル306の貼付位置以外の領域において、採血管209の色情報(前記のHSV系での色相(H)の値)を少なくとも一つ、抽出する(ステップS1011)。ここでは、画像処理部201bは、採血管209の底周辺の画素の色相値(以下、この値のことを「色相値1」という)と、採血管209の底より上方の画素の色相値(以下、この値のことを「色相値2」という)を取得する。従って、このステップ1011では、カメラ201bにより、生体試料の存在領域が画像として抽出されることになる。そして、この画像と、前記の採血管209の内部における生体試料の液面位置を表す透過光プロファイル(図9参照)とに基づいて、生体試料の種別の判定対象となる部分(採血管209の底の部分及び底より上方の部分)が特定されることになる。
なお、色相値1及び色相値2は、それぞれ、前記の第一実施形態と同様に、抽出された色情報を用いて、画素値の平均値や、画素値の中央値、画素の分散値として算出することもできる。また、「底より上方」とは、採血管209の内底部と、ラベル位置検出部204bにより検出可能なラベル306の下側端部(即ち、当該端部よりも下方にはラベル306は存在しない)との間であれば、どこであってもよく、例えば、ラベル306の下側端部のすぐ真下等とすることができる。
もし、取得した色相値1と色相値2とが近い場合(例えば色相値1と色相値2との比率が予め定められた所定範囲内の場合)には、撮像で認識できた領域の生体試料の成分は一つであることを意味する。一方で、取得した色相値1と色相値2とが近くない場合(例えば色相値1と色相値2との比率が予め定められた所定範囲から外れる場合)には、撮像で認識できた領域に複数の種類の生体試料が存在することを意味する。そこで、比較解析部206は、底付近の色相値1と予め定められた閾値範囲とを比較し、色相値1が閾値範囲内であるか否かを判定する(ステップS1012)。
ここで、色相値は色の様相の違いを表わす。そのため、予め定められた閾値範囲と比較をすることで、色情報を取得した領域の生体試料の成分を見積もることができる。例えば、色相値1が0~360の範囲で表現される場合に、色相値1の閾値範囲を30~120とすれば、色相値1が30~120に含まれれば、採血管209の底付近の生体試料の色は黄色又は黄色に近い色であると判定することができる。
この判定の結果、色相値1が上記の閾値範囲に含まれる場合には、採血管1の底付近の生体試料の色は黄色又は黄色に近い色であることを意味する。そのため、比較解析部206は、生体試料の種別は血清(図8(a))のみと判定し、処理を終了する(ステップS1013)。しかし、色情報1の色相値が上記の閾値範囲に含まれない場合には、次のステップS1014の処理が実行される。
このステップS1014において、比較解析部206は、底付近よりも上方での色相値2と予め定められた閾値範囲とを比較し、色相値2が閾値範囲内であるか否かを判定する。なお、ここでも、前記の色相値1と同様に、例えば色相値2が0~360の範囲で表現される場合には、色相値2の閾値範囲を30~120とすれば、生体試料の色が黄色又は黄色に近い場合のみを判定することができる。即ち、採血管209の底付近での生体試料の色は黄色以外であるものの、底よりも上方では生体試料の色が黄色に近いという判定結果より、撮像で認識できた領域には複数の種類の生体試料が存在していることを表わしている。そして、この判定の結果、色相値2が閾値範囲内である場合には、比較解析部206は、生体試料種別は分離剤無し遠心後(図8(c))と判定し、処理を終了する(ステップS1015)。
一方で、色相値2が上記の閾値範囲に含まれない場合には、以下のステップが行われる。まず、比較解析部206は、赤外光の透過光プロファイル解析に戻り、判定を行う。残っている未分類の状態は、試料が血液の場合で、分離剤が無く遠心分離も実施されていない状態(図8(e)参照)、又は、分離剤が有り遠心分離も実施されているが分注により血清が空に近い状態(図8(d)参照)のどちらかである。
前者の場合(図8(e))には、生体試料が均一であるため、透過光プロファイルはラベル306が存在しない領域で、ほぼ一定の値を示す。一方、後者の場合(図8(d))には、生体試料に分離剤302が含まれるため、ラベル306が存在しない領域においても、分離剤302の部分で透過光プロファイルに変化が生じる。具体的には、分離剤302の上方において、分離剤302と空気301の界面(液面)、又は、分離剤302と血清303との界面(液面)において、入射光が散乱する。これにより、透過光は減衰し、透過光プロファイルには急峻なピーク(所謂スパイク)が現れる。
そこで、比較解析部206は、透過光プロファイルにスパイク状の急峻な透過光量の変化があるか否かの判定を行う(ステップS1016)。スパイクが見つからなかった場合には(No方向)、比較解析部206は、生体試料の種別は分離剤無し遠心前(図8(e)参照)と判定し、処理を終了する(ステップS1018)。一方で、スパイクが見つかった場合には(Yes方向)、比較解析部206は、生体試料種別は分離剤有り遠心後で血清空(図8(d)参照)と判定し、処理を終了する(ステップS1017)。
以上のフローを用いることで、ラベル306が採血管209のほぼ全周に存在し、採血管209の内部が極めて視認しにくい場合においても、生体試料の種別を高精度に判定することが可能である。
ここで、本発明者らは、前記の図8に示したような配置構成となるように作成された擬似検体7種類を用いて、図10に示したフローで処理を行い、疑似検体の分類を実施した。なお、ラベル306の影響が除外できているか確認するために、擬似検体が含まれる採血管209には、ラベル306が貼付されていないもの、ラベル306が採血管209の周囲の一部に貼付されているものに加えて、参考としてラベル306が採血管209の全周に貼付されているものの合計三種類を用いた。従って、疑似検体の数は全部で21種類である。
図10に示したフローで処理を実行することで、用意した21種類の検体のうち19種類を正しく判定することができ、約90%の正答率であった。これは、液面計測の結果のみを用いて判定した場合(即ち画像解析を行わない場合)と比較して、約30%正答率が向上した。分類結果を一意に決定できなかった残りの2種類の検体についても、分離剤302の有無の判定については正しい結果を得られた。従って、今回用いた全ての模擬検体において遠心分離の実施判定は行うことができる。そのため、例えば、前記の画像解析の結果得られた色情報に基づいて判定された生体試料の種別に応じて、前記の図1に示した遠心分離モジュール103に供して、遠心分離を行うか否かの判断を行うことができる。
また、得られた生体試料の種別に基づいてに、生体試料が次に移動されるべきモジュールを自動で決めることで、効率的な前処理が可能である。例えば、遠心分離後の生体試料については、開栓モジュール105、ラベラモジュール106及び分注モジュール107へと順次移動させた後、分注が実施される。また、分離剤有りで遠心前の試料については、遠心分離モジュール103に移動され、遠心分離が実行される。そのほかには、空と判定されている生体試料の場合には、ユーザI/F208にワーニングの表示をさせることも可能である。
なお、生体試料としては、例えば、生体試料の例として、前記の実施形態では血液や血清等を例示したが、例えば尿などであってもよい。また、他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、任意に変形して実施可能である。