JP7040731B2 - 圧電基材、力センサー、及びアクチュエータ - Google Patents
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Description
上記圧電体におけるヘリカルキラル高分子として、ポリペプチド、ポリ乳酸系高分子等の光学活性を有する高分子を用いることが着目されている。中でも、ポリ乳酸系高分子は、機械的な延伸操作のみで圧電性を発現することが知られている。ポリ乳酸系高分子を用いた圧電体においては、ポーリング処理が不要であり、また、圧電性が数年にわたり減少しないことが知られている。
例えば、ポリ乳酸系高分子を含む圧電体として、圧電定数d14が大きく、透明性に優れる圧電体が報告されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、最近、圧電性を有する材料を、導体に被覆して利用する試みもなされている。
例えば、中心から外側に向って順に同軸状に配置された中心導体、圧電材料層、外側導体及び外被から構成される、ピエゾケーブルが知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、圧電性高分子からなる繊維を導電性繊維に被覆してなる圧電単位が知られている(例えば、特許文献4参照)。
また、特許文献3では、上述のように中心から外側に向って順に同軸状に配置された中心導体、圧電材料層、外側導体及び外被から構成されるピエゾケーブルが記載され、圧電材料としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)が記載されている。しかし、PVDFは経時的に圧電定数の変動が見られ、経時により圧電定数が低下する場合がある。また、PVDFは、強誘電体であるため焦電性を有し、このため、周囲の温度変化により圧電信号出力が変動する場合がある。従って、特許文献3に記載のピエゾケーブルでは、圧電感度の安定性が不足する場合がある。
また、特許文献4には、ポリ乳酸を含む圧電繊維(以下、圧電性繊維と称する)を被覆してなり、例えば、圧電性繊維で作製した編組チューブや丸打組紐を導電性繊維に巻き付けてなる圧電単位が記載されている。しかし、特許文献4に記載の圧電繊維を高温条件にした場合、圧電感度が不足する場合がある。従って、特許文献4に記載の圧電性繊維では、圧電感度が不足する場合がある。
<1> 長尺状の内部導体と、前記内部導体の外周面を被覆する圧電体と、前記圧電体の外周に配置された外部導体と、を備え、前記圧電体よりも高いガラス転移点を有する樹脂を含有する機能層を有する、圧電基材。
<2> 前記樹脂が、シアノアクリレート系樹脂、ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む<1>に記載の圧電基材。
<3> 前記機能層が、厚さが0.001mm以上0.2mm以下であり、幅が0.1mm以上30mm以下であり、前記厚さに対する前記幅の比が2以上である長尺平板形状のフィルムを被覆した層である<1>又は<2>に記載の圧電基材。
<4> 前記圧電体が、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、前記圧電体の長さ方向と、前記圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、下記式(a)によって求められる前記圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲である<1>から<3>のいずれか1つに記載の圧電基材。
配向度F=(180°-α)/180°・・(a)
(式(a)中、αはX線回折により測定される配向由来のピークの半値幅を表す。)
<5> 前記圧電体は、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200~60000の安定化剤(B)を、前記ヘリカルキラル高分子(A)100質量部に対して0.01質量部~10質量部含む、<4>に記載の圧電基材。
<6> 前記圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)が、下記式(1)で表される構造単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子である<4>又は<5>に記載の圧電基材。
<7> 前記圧電体が、長尺状であり、前記内部導体の外周面に沿って一方向に螺旋状に巻回されている<1>~<6>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<8> 長尺状の内部導体と、前記内部導体の外周面を被覆する圧電体と、前記内部導体の外周面を被覆し、前記圧電体よりも高いガラス転移点を有する樹脂を含有する機能層であって、前記機能層が前記圧電体と共に組紐構造の少なくとも一部を形成する機能層と、前記圧電体及び前記機能層の外周に配置された外部導体と、を備える圧電基材。
<9> 前記圧電体が、前記内部導体の軸方向に対して、15°~75°の角度を保持して巻回されている、<1>~<8>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<10> 前記圧電体が繊維形状を有し、前記圧電体の、前記内部導体の長軸方向と直交する断面の平均長軸径が、0.0001mm以上10mm以下である<1>~<9>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<11> 前記圧電体が長尺平板形状を有し、前記圧電体の平均厚さが0.001mm以上0.2mm以下であり、前記圧電体の幅が0.1mm以上30mm以下であり、前記圧電体の平均厚さに対する前記圧電体の幅の比が2以上である<1>~<10>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<12> さらに、帯電防止層、アンチブロック層、及び電極層からなる群より選択される少なくとも1種を有する<1>~<11>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<13> 前記内部導体が錦糸線である<1>~<12>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<14> <1>~<13>のいずれか1つに記載の圧電基材を備える力センサー。
<15> <1>~<13>のいずれか1項に記載の圧電基材を備えるアクチュエータ。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、長尺状とは、長さ寸法が幅寸法よりも十分に大きい形状を意味する。その長さ寸法は、通常、幅寸法の5倍以上であり、好ましくは10倍以上である。
本明細書において、長尺平板状の圧電体の「主面」とは、長尺平板状の圧電体の厚さ方向に直交する面(言い換えれば、長さ方向及び幅方向を含む面)を意味する。
本明細書中において、部材の「面」は、特に断りが無い限り、部材の「主面」を意味する。
本明細書において、厚さ、幅、及び長さは、通常の定義どおり、厚さ<幅<長さの関係を満たす。
本明細書において、2つの線分のなす角度は、0°以上90°以下の範囲で表す。
本明細書において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
本明細書において、「MD方向」とはフィルムの流れる方向(Machine Direction)、すなわち、延伸方向であり、「TD方向」とは、前記MD方向と直交し、フィルムの主面と平行な方向(Transverse Direction)である。
本明細書において、図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本発明の圧電基材は、長尺状の内部導体と、前記内部導体の外周面を被覆する圧電体と、前記圧電体の外周に配置された外部導体と、を備え、前記内部導体の外周側に、圧電体よりも高いガラス転移点を有する樹脂含有する機能層を有する。
この効果が奏される理由は以下のように推測される。
この原因として、同軸線構造圧電センサに張力が加わると、PLAの配向方向に対して45°方向に力が加わるが、上記の高温度環境下で使用した場合、PLAがガラス転移点以上の温度になっていると、上記張力の影響でPLAの配向が崩れると考えられる。この同軸線構造圧電センサを、室温に戻して再度使用した場合、圧電性が劣化していた。
一方、本開示の圧電基材(例えば、同軸線構造圧電センサ等)は、圧電体よりも高いガラス転移点を有する樹脂(例えば、PLAのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する材質)を含有する層(以下、「機能層」ともいう。)が設けられている。そのため、上記の高温度環境下でも、機能層が高い弾性力を発揮し、上記張力によるPLAへの応力を緩和し、PLAの配向方向が崩れることが抑制されるものと考えられる。
したがって、本開示の圧電基材、並びに、この圧電基材を用いた力センサー及びアクチュエータは、圧電感度に優れている。
圧電基材における内部導体は、信号線導体であることが好ましい。信号線導体とは、圧電体から効率的に電気的信号を検出するための導体を意味する。より具体的には、圧電基材に張力が印加されたときに、印加された張力に応じた電圧信号(電荷信号)を検出するための導体である。
また、内部導体として導電性繊維を用いることもできる。導電性繊維としては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられ、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状もしくは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、又は繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが、生産性などの観点から電解メッキ又は無電解メッキが好ましい。このような金属がメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
本開示の圧電基材は、圧電体を備える。
圧電体は、圧電感度を向上する観点から、長尺平板形状又は繊維形状を有することが好ましい。
以下、長尺平板形状を有する圧電体(以下、長尺平板状圧電体ともいう)、及び繊維形状を有する圧電体(以下、繊維状圧電体ともいう)について順に説明する。
圧電体として、長尺平板状圧電体を用いることにより、内部導体に対する密着面を大きくでき、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することが可能となる。
以下、長尺平板状圧電体の寸法に関し、より詳細に説明する。
例えば、圧電フィルムから長尺平板状圧電体を製造する方法としては、原料をフィルム状に成形して未延伸フィルムを得、得られた未延伸フィルムに対し、延伸及び結晶化を施し、得られた圧電フィルムをスリットする(圧電フィルムを長尺状にカットする)ことにより得ることができる。
また、公知のフラットヤーン製法を用いて長尺平板状圧電体を製造してもよい。例えば、インフレーション成形により得られた幅広のフィルムをスリットして細幅のフィルムにした後、熱板延伸、ロール延伸等による延伸、及び結晶化を施すことにより、長尺平板状圧電体を得てもよい。
なお、上記延伸及び結晶化は、いずれが先であってもよい。また、未延伸フィルムに対し、予備結晶化、延伸、及び結晶化(アニール)を順次施す方法であってもよい。延伸は、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよい。二軸延伸の場合には、好ましくは一方(主延伸方向)の延伸倍率を高くする。
圧電フィルムの製造方法については、特許第4934235号公報、国際公開第2010/104196号、国際公開第2013/054918号、国際公開第2013/089148号、等の公知文献を適宜参照できる。
圧電体として、繊維状圧電体を用いることにより、より柔軟性と可撓性に優れた形態として利用することができ、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することが可能となる。
繊維形状としては特に制限はないが、例えば、単繊維の形状、繊維束(複数の繊維からなる束)の形状が挙げられる。
以下、繊維状圧電体の寸法に関し、より詳細に説明する。
繊維状圧電体の、内部導体の長軸方向と直交する断面の平均長軸径(以下、単に「長軸径」ともいう)は、圧電感度を向上する観点から、0.0001mm~10mmであることが好ましく、0.001mm~5mmであることがより好ましく、0.002mm~1mmであることが更に好ましい。
繊維状圧電体の長軸径が0.0001mm以上であると、強度がより向上する傾向にある。一方、繊維状圧電体の長軸径が10mm以下であると、繊維状圧電体の変形の自由度(柔軟性)がより向上する傾向にある。
ここで、「断面の長軸径」は、繊維状圧電体の断面が円形状である場合、「直径」に相当する。
繊維状圧電体の断面が円形とは異なる形状である場合、「断面の長軸径」は、断面における最も長い距離とする。
繊維状圧電体が繊維束からなる圧電体の場合、「断面の長軸径」とは、繊維束からなる圧電体の断面の長軸径とする。
具体的に、繊維状圧電体としては、例えば、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸が挙げられる。
モノフィラメント糸の単糸繊度は、好ましくは3dtex~30dtexであり、より好ましくは5dtex~20dtexである。
単糸繊度が3dtex未満になると、織物準備工程や製織工程において糸を取り扱うことが困難となる。一方、単糸繊度が30dtexを超えると、糸間で融着が発生し易くなる。
モノフィラメント糸は、コストの点を考慮すれば直接的に紡糸、延伸して得ることが好ましい。なお、モノフィラメント糸は入手したものであってもよい。
マルチフィラメント糸の総繊度は、好ましくは30dtex~600dtexであり、より好ましくは100dtex~400dtexである。
マルチフィラメント糸は、例えば、スピンドロー糸などの一工程糸の他、UDY(未延伸糸)やPOY(高配向未延伸糸)などを延伸して得る二工程糸のいずれもが採用可能である。なお、マルチフィラメント糸は入手したものであってもよい。
ポリ乳酸系モノフィラメント糸、ポリ乳酸系マルチフィラメント糸の市販品としては、東レ製のエコディア(R)PLA、ユニチカ製のテラマック(R)、クラレ製プラスターチ(R)が使用可能である。
例えば、繊維状圧電体としてのフィラメント糸(モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸)は、原料(例えばポリ乳酸)を溶融紡糸した後、これを延伸することにより得ることができる(溶融紡糸延伸法)。なお、紡出後において、冷却固化するまでの糸条近傍の雰囲気温度を一定温度範囲に保つことが好ましい。
また、フィラメント糸は、例えば、上記溶融紡糸延伸法で得られたフィラメント糸をさらに分繊することにより得てもよい。
本開示における圧電体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含むことが好ましい。
ここで、「光学活性を有するヘリカルキラル高分子」とは、分子構造が螺旋構造であり分子光学活性を有する高分子を指す。
上記ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ-ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ-メチル)等が挙げられる。
上記セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
光学純度(%ee)=100×|L体量-D体量|/(L体量+D体量)
すなわち、ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度は、
『「ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕との量差(絶対値)」を「ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕との合計量」で割った(除した)数値』に、『100』をかけた(乗じた)値である。
ここで、ポリ乳酸系高分子とは、「ポリ乳酸(L-乳酸及びD-乳酸から選ばれるモノマー由来の構造単位のみからなる高分子)」、「L-乳酸又はD-乳酸と、該L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、又は、両者の混合物をいう。
ポリ乳酸系高分子の中でも、ポリ乳酸が好ましく、L-乳酸のホモポリマー(PLLA、単に「L体」ともいう)又はD-乳酸のホモポリマー(PDLA、単に「D体」ともいう)が最も好ましい。
ポリ乳酸は、ラクチドを経由するラクチド法;溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法;などによって製造できることが知られている。
ポリ乳酸としては、L-乳酸のホモポリマー、D-乳酸のホモポリマー、L-乳酸及びD-乳酸の少なくとも一方の重合体を含むブロックコポリマー、及び、L-乳酸及びD-乳酸の少なくとも一方の重合体を含むグラフトコポリマーが挙げられる。
なお、ポリ乳酸のガラス転移点は、分子量や、延伸による結晶化度の多寡によっても異なるが、50℃~70℃程度である。
例えば、ヘリカルキラル高分子(A)が、ポリ乳酸系高分子である場合、ポリ乳酸系高分子中における、乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、コポリマー成分に由来する構造の濃度が20mol%以下であることが好ましい。
ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)は、5万~100万であることが好ましい。
ヘリカルキラル高分子(A)のMwが5万以上であることにより、圧電体の機械的強度が向上する。上記Mwは、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
一方、ヘリカルキラル高分子(A)のMwが100万以下であることにより、成形(例えば押出成形、溶融紡糸)によって圧電体を得る際の成形性が向上する。上記Mwは、80万以下であることが好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。
以下、GPCによるヘリカルキラル高分子(A)のMw及びMw/Mnの測定方法の一例を示す。
Waters社製GPC-100
-カラム-
昭和電工社製、Shodex LF-804
-サンプルの調製-
圧電体を40℃で溶媒(例えば、クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mlのサンプル溶液を準備する。
-測定条件-
サンプル溶液0.1mlを溶媒〔クロロホルム〕、温度40℃、1ml/分の流速でカラムに導入する。
ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
市販品としては、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学社製のLACEA(H-100、H-400)、NatureWorks LLC社製のIngeoTM biopolymer、等が挙げられる。
ヘリカルキラル高分子(A)としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、又は直接重合法によりポリ乳酸系高分子を製造することが好ましい。
本開示における圧電体中におけるヘリカルキラル高分子(A)の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、圧電体の全量に対し、80質量%以上が好ましい。
圧電体は、更に、一分子中に、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200~60000の安定化剤(B)を含有することが好ましい。これにより、耐湿熱性をより向上させることができる。
モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、等が好適である。
また、ポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができる。従来のポリカルボジイミドの製造方法(例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47-33279号公報、J.0rg.Chem.28,2069-2075(1963)、Chemical Review 1981,Vol.81 No.4、p619-621)により、製造されたものを用いることができる。具体的には特許4084953号公報に記載のカルボジイミド化合物を用いることもできる。
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(N,N’-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド、等が挙げられる。
環状カルボジイミド化合物は、特開2011-256337号公報に記載の方法などに基づいて合成することができる。
カルボジイミド化合物としては、市販品を用いてもよく、例えば、東京化成社製、B2756(商品名)、日清紡ケミカル社製、カルボジライトLA-1(商品名)、ラインケミー社製、Stabaxol P、Stabaxol P400、Stabaxol I(いずれも商品名)等が挙げられる。
分子量が上記範囲内ならば、安定化剤(B)がより移動しやすくなり、耐湿熱性改良効果がより効果的に奏される。
安定化剤(B)の重量平均分子量は、200~900であることが特に好ましい。なお、重量平均分子量200~900は、数平均分子量200~900とほぼ一致する。また、重量平均分子量200~900の場合、分子量分布が1.0である場合があり、この場合には、「重量平均分子量200~900」を、単に「分子量200~900」と言い換えることもできる。
・安定化剤B-1 … 化合物名は、ビス-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミドである。重量平均分子量(この例では、単なる「分子量」に等しい)は、363である。市販品としては、ラインケミー社製「Stabaxol I」、東京化成社製「B2756」が挙げられる。
・安定化剤B-2 … 化合物名は、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約2000のものとして、日清紡ケミカル社製「カルボジライトLA-1」が挙げられる。
・安定化剤B-3 … 化合物名は、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約3000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P」が挙げられる。また、重量平均分子量20000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P400」が挙げられる。
圧電体が安定化剤(B)を含む場合、安定化剤(B)の含有量は、ヘリカルキラル高分子(A)100質量部に対し、0.01質量部~10質量部であることが好ましく、0.01質量部~5質量部であることがより好ましく、0.1質量部~3質量部であることがさらに好ましく、0.5質量部~2質量部であることが特に好ましい。
上記含有量が0.01質量部以上であると、耐湿熱性がより向上する。
また、上記含有量が10質量部以下であると、透明性の低下がより抑制される。
安定化剤として安定化剤(B1)と安定化剤(B2)とを併用する場合、安定化剤(B1)を多く含むことが透明性向上の観点から好ましい。
具体的には、安定化剤(B1)100質量部に対して、安定化剤(B2)が10質量部~150質量部の範囲であることが、透明性と耐湿熱性の両立という観点から好ましく、50質量部~100質量部の範囲であることがより好ましい。
圧電体は、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の公知の樹脂;シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の公知の無機フィラー;フタロシアニン等の公知の結晶核剤;安定化剤(B)以外の安定化剤;等が挙げられる。
無機フィラー及び結晶核剤としては、国際公開第2013/054918号の段落0057~0058に記載された成分を挙げることもできる。
配向度F=(180°-α)/180°・・(a)
(式(a)中、αはX線回折により測定される配向由来のピークの半値幅を表す。)
なお、圧電体の配向度Fの測定方法の例は、後述の実施例に示すとおりである。
これにより、圧電基材に例えば張力を印加した場合に、より発生電荷量が増加する。
ここで、「一方向」とは、本開示の圧電基材を内部導体の軸方向の一端側から見たときに、圧電体が内部導体の手前側から奥側に向かって巻回されている方向をいう。具体的には、右方向(右巻き、即ち時計周り)又は左方向(左巻き、即ち反時計周り)をいう。
ここで、「螺旋角度β」とは、内部導体の軸方向と、内部導体の軸方向に対して圧電体が配置される方向(圧電体の長さ方向)とがなす角度を意味する。
これにより、例えば、圧電基材の長さ方向に張力が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)の分極が、圧電基材の径方向に発生しやすくなる。この結果、効果的に張力に比例した電圧信号(電荷信号)が検出され、圧電感度が向上しやすい。
さらに、本開示の圧電基材は、同軸ケーブルに備えられる内部構造と同一の同軸線構造体(内部導体及び誘電体)を備えるため、例えば、上記圧電基材を同軸ケーブルに適用した場合、電磁シールド性が高く、ノイズに強い構造となり得る。
これにより、圧電基材の長さ方向に張力(応力)が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わりやすく、圧電基材の径方向にヘリカルキラル高分子(A)の分極が生じやすい。
また、本開示の圧電基材では、圧電体を一方向に螺旋状に配置することにより、圧電基材の長さ方向に張力(応力)が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、圧電基材の径方向にヘリカルキラル高分子(A)の分極が生じる。その分極方向は、螺旋状に巻回された第一の圧電体を、その長さ方向に対して平面と見做せる程度の微小領域の集合体とみなした場合、その構成する微小領域の平面に、張力(応力)に起因したずり力がヘリカルキラル高分子に印加された場合、圧電定数d14に起因して発生する電界の方向と略一致する。
具体的には、例えばポリ乳酸においては、分子構造が左巻き螺旋構造からなるL-乳酸のホモポリマー(PLLA)の場合、PLLAの主配向方向と長さ方向が略平行な圧電体を、内部導体に対して、左巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。また、これとは逆にPLLAの主配向方向と長さ方向が略平行な圧電体を、内部導体に対して、右巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加された場合、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。
これにより、圧電基材の長さ方向に張力が印加された際、螺旋状に配置された圧電体の各部位において、張力に比例した電位差が位相の揃った状態で発生するため、効果的に張力に比例した電圧信号が検出されると考えられる。
これにより、圧電感度により優れた圧電基材が得られやすい。
また、本開示の圧電基材は、内部導体に対して、圧電体を右巻きに螺旋状に巻回し、かつ一部の圧電体を左巻きに螺旋状に巻回した構造体を含むものであってもよい。一部の圧電体を左巻きに螺旋状に巻回した場合、圧電感度の低下を抑制する観点から、左巻きの割合は全体(右巻き及び左巻きの合計)に対して50%未満であることが好ましい。
また、本開示の圧電基材は、内部導体に対して、圧電体を左巻きに螺旋状に巻回し、かつ一部の圧電体を右巻きに螺旋状に巻回した構造体を含むものであってもよい。一部の圧電体を右巻きに螺旋状に巻回した場合、圧電感度の低下を抑制する観点から、右巻きの割合は全体(右巻き及び左巻きの合計)に対して50%未満であることが好ましい。
更に、圧電体の長さ方向と、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であることは、例えば、延伸された圧電フィルムをスリットして圧電体(例えばスリットリボン)を得る際の生産性の面でも有利である。
本明細書中において、「略平行」とは、2つの線分のなす角度が、0°以上30°未満(好ましくは0°以上22.5°以下、より好ましくは0°以上10°以下、更に好ましくは0°以上5°以下、特に好ましくは0°以上3°以下)であることを指す。
また、本明細書中において、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向とは、ヘリカルキラル高分子(A)の主たる配向方向を意味する。ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、圧電体の配向度Fを測定することによって確認できる。
また、原料を溶融紡糸した後にこれを延伸して、圧電体を製造する場合、製造された圧電体におけるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、主延伸方向を意味する。主延伸方向とは、延伸方向を指す。
同様に、フィルムの延伸及び延伸されたフィルムのスリットを形成して圧電体を製造する場合、製造された圧電体におけるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、主延伸方向を意味する。ここで、主延伸方向とは、一軸延伸の場合には延伸方向を指し、二軸延伸の場合には、延伸倍率が高い方の延伸方向を指す。
第2の圧電体は、第1の圧電体と同様の特性を有していることが好ましい。
但し、第1の圧電体及び第2の圧電体の巻回方向、並びに、第1の圧電体及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティについては、本開示の効果がより奏される観点から、圧電基材の態様に応じて適宜選択すればよい。
また、第2の圧電体は、第1の圧電体と異なる特性を有していてもよい。
本開示における圧電体の配向度Fは、上述したとおり、0.5以上1.0未満であることが好ましく、0.7以上1.0未満であることがより好ましく、0.8以上1.0未満であることが更に好ましい。
圧電体の配向度Fが0.5以上であれば、延伸方向に配列するヘリカルキラル高分子(A)の分子鎖(例えばポリ乳酸分子鎖)が多く、その結果、配向結晶の生成する率が高くなり、より高い圧電性を発現することが可能となる。
圧電体の配向度Fが1.0未満であれば、縦裂強度が更に向上する。
本開示における圧電体の結晶化度は、上述のX線回折測定(広角X線回折測定)によって測定される値である。
本開示における圧電体の結晶化度は、好ましくは20%~80%であり、より好ましくは25%~70%であり、更に好ましくは30%~60%である。
結晶化度が20%以上であることにより、圧電性が高く維持される。結晶化度が80%以下であることにより、圧電体の透明性が高く維持される。
結晶化度が80%以下であることにより、例えば、圧電体の原料となる圧電フィルムを延伸によって製造する際に白化や破断がおきにくいので、圧電体を製造しやすい。また、結晶化度が80%以下であることにより、例えば、圧電体の原料(例えばポリ乳酸)を溶融紡糸後に延伸によって製造する際に屈曲性が高く、しなやかな性質を有する繊維となり、圧電体を製造しやすい。
本開示における圧電体において、透明性は特に要求されないが、透明性を有していてももちろん構わない。
圧電体の透明性は、内部ヘイズを測定することにより評価することができる。ここで、圧電体の内部ヘイズとは、圧電体の外表面の形状によるヘイズを除外したヘイズを指す。
圧電体は、透明性が要求される場合には、可視光線に対する内部ヘイズが5%以下であることが好ましく、透明性及び縦裂強度をより向上させる観点からは、2.0%以下がより好ましく、1.0%以下が更に好ましい。圧電体の前記内部ヘイズの下限値は特に限定はないが、下限値としては、例えば0.01%が挙げられる。
圧電体の内部ヘイズは、厚さ0.03mm~0.05mmの圧電体に対して、JIS-K7105に準拠して、ヘイズ測定機〔(有)東京電色社製、TC-HIII DPK〕を用いて25℃で測定したときの値である。
以下、圧電体の内部ヘイズの測定方法の例を示す。
まず、ガラス板2枚の間に、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製信越シリコーン(商標)、型番:KF96-100CS)のみを挟んだサンプル1を準備し、このサンプル1の厚さ方向のヘイズ(以下、ヘイズ(H2)とする)を測定する。
次に、上記のガラス板2枚の間に、シリコーンオイルで表面を均一に塗らした複数の圧電体を隙間なく並べて挟んだサンプル2を準備し、このサンプル2の厚さ方向のヘイズ(以下、ヘイズ(H3)とする)を測定する。
次に、下記式のようにこれらの差をとることにより、圧電体の内部ヘイズ(H1)を得る。
内部ヘイズ(H1)=ヘイズ(H3)-ヘイズ(H2)
ここで、ヘイズ(H2)及びヘイズ(H3)の測定は、それぞれ、下記測定条件下で下記装置を用いて行う。
測定装置:東京電色社製、HAZE METER TC-HIIIDPK
試料サイズ:幅30mm×長さ30mm
測定条件:JIS-K7105に準拠
測定温度:室温(25℃)
本開示の圧電基材は、絶縁体を備えることがある。例えば後述する第2実施形態の圧電基材は、絶縁体をさらに備えることがある。
絶縁体は、内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回されることが好ましい。この場合、圧電体と絶縁体とは交互に交差された組紐構造をなすことが好ましい。
なお、絶縁体の巻回方向は、圧電体の巻回方向と同じ方向であってもよく、異なる方向であってもよい。
詳細については後述するが、第2実施形態に係る圧電基材では、圧電体が組紐構造を形成することにより、圧電基材が屈曲変形する時に、内部導体と外部導体の電気的短絡の発生を抑制しやすくなるという利点がある。
絶縁体の形状は、内部導体に対する巻回の観点から、長尺形状であることが好ましい。
本開示の圧電基材は、圧電体の外周に配置された外部導体を備える。
本開示における外部導体は、グラウンド導体であることが好ましい。
グラウンド導体とは、信号を検出する際、例えば、内部導体(好ましくは信号線導体)の対となる導体を指す。
例えば、矩形断面を有するグラウンド導体としては、円形断面の銅線を圧延して平板状に加工した銅箔リボンや、アルミ箔リボンなどを用いることが可能である。
例えば、円形断面を有するグラウンド導体としては、銅線、アルミ線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、繊維に銅箔がスパイラルに巻回された錦糸線を用いることが可能である。
また、グラウンド導体として、有機導電材料を絶縁材料でコーティングしたものを用いてもよい。
また、グラウンド導体として導電性繊維を用いることもできる。導電性繊維は、既述の内部導体として適用できる導電性繊維と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
このような内部導体の包み方としては、銅箔などを螺旋状に巻回して包む方法や、銅線などを筒状の組紐にして、その中に包みこむ方法などを選択することが可能である。
なお、内部導体の包み方は、これら方法に限定されない。内部導体を包み込むことにより、静電シールドすることが可能となり、外部の静電気の影響による、内部導体の電圧変化を防ぐことが可能となる。
また、グラウンド導体の配置は、本開示における内部導体及び圧電体を円筒状に包接するように配置することも好ましい形態の一つである。
グラウンド導体の断面形状は、円形状、楕円形状、矩形状、異形状など様々な断面形状を適用することが可能である。特に、矩形断面は、内部導体(好ましくは信号線導体)、圧電体、必要に応じて絶縁体などに対して、平面で密着することが可能となるため、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することが可能となる。
本開示の圧電基材は、圧電体よりも高いガラス転移点を有する樹脂を含有する機能層を備える。
機能層に含まれる樹脂のガラス転移点は圧電体よりも高ければよく、圧電基材が機能層を備えることにより、高温環境下で使用しても圧電感度の低下を抑制することができる。 また、機能層に含まれる樹脂のガラス転移点が高いほど耐熱性が高くなるという観点から、圧電体よりも3℃~90℃高い温度が好ましく、圧電体よりも5℃~80℃高い温度がより好ましく、圧電体よりも10℃~70℃高い温度がさらに好ましい。
機能層に使用する樹脂のガラス転移点として、65℃以上140度未満であることが好ましく、80℃以上135度未満であることがより好ましく、100℃以上130度未満であることがさらに好ましい。
これらの中でも、圧電感度に優れた圧電基材を得る観点から、シアノアクリレート系樹脂、ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含むことが好ましく、シアノアクリレート系樹脂を含むことがより好ましい。
なお、圧電体及び機能層に含まれる樹脂のガラス転移点は下記の方法で測定した。
ティーエーインスツルメント社製動的粘弾性装置RSA-IIIを用い、試料を窒素雰囲気で0~150℃の温度範囲を3℃/分で昇温した。試料に印加した歪は0.1%、周波数は1Hzとした。損失弾性率(E’’)が極大値を示す温度を、ガラス転移点(Tg)とした。
機能層の幅は、耐久性を保ち、圧電基材を製造する際のカバリング加工における破断を防止し、歩留りを向上させる、という観点から、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。
また、圧電基材の単位長さ当りの巻回回数が多い方が、可撓性が良くなるという観点から、機能層の幅は30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
機能層は、機能層の厚さに対する幅の比が2以上である長尺平板状のフィルムを被覆した層であることが好ましい。
機能層は、いずれの箇所にも設けることが可能である。外周側とは、内部導体の径方向外側のことをいう。
機能層は、例えば、内部導体と圧電体との間に設けられていてもよいし、圧電体と外部導体との間に設けられていてもよいし、圧電基材の最外層に設けられていてもよい。
また、機能層が内部導体と圧電体との間に設けられる態様とは、内部導体の外周面に機能層を直接設ける態様や、他の層を介して設ける態様も含む。また、内部導体の外周面に設ける態様とは、内部導体の外周面全面に設ける態様でもよいし、外周面の一部を除く面に設ける態様でもよい。
また、内部導体に錦糸線を用いる場合は、中心糸とそれを被覆する導体との間に機能層を設ける態様でもよい。
本開示の機能層は、圧電基材において、1層のみ設けられていてもよいし、2層以上設けられていてもよい。機能層を2層以上設ける場合は、それぞれの機能層の性質が同一であっても異なる性質であってもよい。
機能層は、例えば、樹脂分散液を塗布や含浸することにより設けたり、長尺状にスリットしたものを一方向に螺旋状に巻回することにより設けたり、フィルム形状のものを内部導体の周方向に巻き付けて被覆することにより設けたり、従来公知の被覆法により形成することができる。
機能層は、内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回されることが好ましい。この場合、機能層が圧電体と共に組紐構造の少なくとも一部を形成することが好ましい。
必要に応じ、圧電基材はその他の層を備えていてもよい。その他の層の種類は特に制限されず、用途に応じて選択できる。例えば、帯電防止層、アンチブロック層、及び電極層からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。圧電基材がその他の層を備えることで、例えば、圧電デバイス、力センサー、アクチュエータ、生体情報取得デバイスへの適用がより容易になる。その他の層は、1層のみでも2層以上であってもよく、2層以上のその他の層を備える場合は種類が異なる層を備えてもよい。
図1Aに、第1実施形態に係る圧電基材を構成する同軸線構造体の側面図を示し、図1Bに、第1実施形態に係る圧電基材の側面図を示し、図1Cに、図1BのX-X’線断面図を示す。
図1Aに示すように、圧電基材100(図1B参照)を構成する同軸線構造体10は、長尺状の内部導体12Aと、長尺状の圧電体14Aと、機能層15とを備えている。
図1Aに示すように、圧電体14Aは、内部導体12Aの外周面に沿って、螺旋角度β1で一端から他端にかけて、内部導体12Aが見えないように一方向に螺旋状に隙間なく巻回されている。
「螺旋角度β1」とは、内部導体12Aの軸方向G1と、内部導体12Aの軸方向に対する圧電体14Aの配置方向とがなす角度を意味する。
また、同軸線構造体10では、圧電体14Aは、内部導体12Aに対して左巻きで巻回している。具体的には、同軸線構造体10を内部導体12Aの軸方向の一端側(図1Aの場合、右端側)から見たときに、圧電体14Aは、内部導体12Aの手前側から奥側に向かって左巻きで巻回している。
また、図1A中、圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、両矢印E1で示されている。即ち、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、圧電体14Aの配置方向(圧電体14Aの長さ方向)とは、略平行となっている。
また、機能層15は、内部導体12Aの外周面に設けられており、内部導体12Aと圧電体14Aの間に位置している。
図1Bに示すように、第1実施形態に係る圧電基材100は、図1Aに示す同軸線構造体10の外周に、外部導体16が一方向に螺旋状に巻回されて配置されている。即ち、圧電基材100は、内側から順に、長尺状の内部導体12Aと、機能層15と、長尺状の圧電体14Aと、外部導体16と、を備えている。
例えば、圧電基材100の長さ方向に張力が印加されると、圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、ヘリカルキラル高分子(A)は分極する。このヘリカルキラル高分子(A)の分極は、図1C中、矢印で示されるように、圧電基材100の径方向(同軸線構造体10の径方向)に生じ、その分極方向は位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。
特に、第1実施形態に係る圧電基材100では、内部導体12Aの外周面に沿って内部導体12Aが見えないように、圧電体14Aを一方向に螺旋状に隙間なく巻回しているため、内部導体12Aと圧電体14Aとの密着性が高まり、内部導体12A及び外部導体16間に隙間が形成されにくくなる。
特に、第1実施形態に係る圧電基材100では、内部導体12Aの外周面に機能層15が設けられており、この圧電基材100を高温環境下で使用したとしても、圧電体14Aよりも高いガラス転移点を有する樹脂を含む機能層15の弾性力により、圧電体14Aにかかる張力の影響が緩和されるため、圧電体14Aに含まれる樹脂の配向が崩れることが抑制される。その結果、圧電基材100に張力を印加したときに、圧電体14Aよりも高いガラス転移点を有する樹脂を含む機能層を有さない圧電基材に比べ、高温環境下で使用しても圧電感度に優れたものとなる。
従って、圧電基材100によれば、圧電感度に優れたものとなる。
第1実施形態に係る圧電基材100では、前述したように、内部導体12Aと圧電体14Aとの間に機能層15が設けられているが、機能層はこれ以外に適宜設けてもよい。
また、圧電基材100においては、同軸線構造体10の外周面に、外部導体16を一方向に螺旋状に巻回して配置したが、外部導体16の配置方法はこれに限定されない。即ち、外部導体16は圧電体14Aの外周の少なくとも一部に配置されていればよい。また、外部導体16の巻回方向も特に限定されない。
図2Aに、第2実施形態に係る圧電基材を構成する同軸線構造体の側面図を示し、図2Bに、第2実施形態に係る圧電基材の側面図を示す。
図2Aに示すように、圧電基材100A(図2B参照)を構成する同軸線構造体10Aは、圧電体14A(以下、「第1の圧電体」と称する。)に加え、長尺状の第2の圧電体14Bを備えている点、及び、第1の圧電体14A及び第2の圧電体14Bが組紐構造をなしている点が第1実施形態に係る圧電基材100と異なる。ここで、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティのキラリティとでは、互いに異なっている。また、機能層は、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に設けられているが、図示は省略する。
具体的には、図2Aに示すように、同軸線構造体10Aは、第1の圧電体14Aが、内部導体12Aの軸方向G2に対し、螺旋角度β1で一端から他端にかけて左巻きで螺旋状に巻回され、第2の圧電体14Bが螺旋角度β2で一端から他端にかけて右巻きで螺旋状に巻回され、かつ第1の圧電体14A及び第2の圧電体14Bが交互に交差されて組紐構造をなしている。即ち、第1の圧電体14A及び第2の圧電体14Bは、内部導体12Aの外周面に対し、内部導体12Aが見えないように組紐構造を形成している。
「右巻きで螺旋状に巻回」とは、同軸線構造体10Aを内部導体12Aの軸方向の一端側(図2Aの場合、右端側)から見たときに、第2の圧電体14Bが、内部導体12Aの手前側から奥側に向かって右巻きで巻回していることを意味する。
「螺旋角度β2」とは、前述の螺旋角度β1と同義である。
また、同軸線構造体10Aの組紐構造において、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向(両矢印E1)と、第1の圧電体14Aの配置方向とは、略平行となっている。同様に、第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向(両矢印E2)と、第2の圧電体14Bの配置方向とは、略平行となっている。
例えば、圧電基材100Aの長さ方向に張力が印加されると、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)及び第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)両方にずり応力が印加され、分極が生じる。分極方向はいずれも圧電基材100Aの径方向(同軸線構造体10Aの径方向)に生じ、かつ位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。
特に、第2実施形態に係る圧電基材100Aでは、内部導体12Aの外周面に沿って、第1の圧電体14Aと第2の圧電体14Bとで組紐構造を形成することにより、組紐構造を形成しない場合に比べ、圧電基材が屈曲変形させるような力が働いた際にも、しなやかに屈曲変形しやすくなる。これにより、例えば圧電基材に引張力を印加したときの発生電荷量が増加しやすくなる。
従って、圧電基材100Aによれば、圧電感度に優れたものとなる。
第3実施形態に係る圧電基材(不図示)は、第2実施形態に係る圧電基材100Aの第2の圧電体14Bを機能層に置き換えた圧電基材である。
即ち、第3実施形態に係る圧電基材では、圧電体14Aが、内部導体12Aの軸方向G2に対し、螺旋角度β1で一端から他端にかけて左巻きで螺旋状に巻回され、機能層が螺旋角度β2で一端から他端にかけて右巻きで螺旋状に巻回され、かつ圧電体14A及び機能層が交互に交差されて組紐構造をなしている。
また、第3実施形態に係る圧電基材においても、第2実施形態に係る圧電基材と同様に、圧電体と機能層とで組紐構造を形成することにより、組紐構造を形成しない場合に比べ、圧電基材が屈曲変形させるような力が働いた際にも、しなやかに屈曲変形しやすくなる。これにより、例えば圧電基材に引張力を印加したときの発生電荷量が増加しやすくなる。
従って、第3実施形態に係る圧電基材においても、圧電感度に優れたものとなる。
なお、第3実施形態に係る圧電基材は上記形態に限定されない。例えば機能層の巻回方向は上記形態に限定されない。また、例えば圧電体14Aに溶融紡糸PLAを使用してもよいし、機能層にPETフィルムを使用してもよい。このとき、溶融紡糸PLAとPETフィルムは組紐構造を形成する。
以下、第4実施態様及び第5実施態様に係る圧電基材について説明する。第4実施形態、及び第5実施形態における機能層の設け方については省略するが、第1実施形態と同様に設けてもよいし、それ以外の態様で設けてもよい。機能層の態様及びその設け方については、前述のとおりとする。
本開示の圧電基材としては、張力が印加されたときに生じる電荷(電界)を電圧信号として取り出す構成に限定されず、例えば、ねじり力が印加されたときに生じる電荷(電界)を電圧信号として取り出す構成であってもよい。
本開示の圧電基材の製造方法には特に限定はないが、例えば、圧電体を準備して、別途準備した内部導体(好ましくは信号線導体)に対して、圧電体を被覆し(好ましくは一方向に螺旋状に巻回し)、圧電体の外周に外部導体(好ましくはグラウンド導体)を配置することにより製造することができる。
圧電体は、公知の方法で製造したものであっても、入手したものであってもよい。
また、本開示の圧電基材は、圧電体として、第1の圧電体及び第2の圧電体、さらに絶縁体を備えていてもよい。かかる圧電基材は、第1の圧電体を螺旋状に巻回する方法に準じて、製造することができる。
但し、第1の圧電体及び第2の圧電体の巻回方向、並びに、第1の圧電体及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティについては、圧電基材の態様に応じて適宜選択することが好ましい。
なお、内部導体及び外部導体の少なくとも一方と圧電体との間、必要に応じて、本開示の圧電基材に備えられる各部材間を、接着剤を介して貼り合わせてもよい。
本開示の圧電基材(例えば第1実施形態に係る圧電基材)は、例えば引張力を印加することで、引張力に比例したずり歪が、ヘリカルキラル(A)に印加され、電圧信号(電荷信号)として内部導体及び外部導体の少なくとも一方から検出される。圧電基材に引張力を印加する方法としては、様々な方法があり、圧電基材に直接張力を印加する方法、又は図8A及び図8Bに示すように、平板52に粘着テープ51を用いて圧電基材100(第1実施形態に係る圧電基材、以下同様)を貼り付けて平板付き圧電基材50とし、平板52に押圧力を印加し、平板52に生じる撓み変形を介して圧電基材100へ張力を印加して電圧信号を検出してもよい。なお、図8Aは、粘着テープ51を用いて平板52を貼り付けた圧電基材100(平板付き圧電基材50)を示す概略図であり、図8Bは粘着テープ51を用いて平板52を貼り付けた圧電基材100(平板付き圧電基材50)を押圧したときの概略図である。
本開示の圧電基材は、例えば、センサー用途(着座センサー等の力センサー、圧力センサー、変位センサー、変形センサー、振動センサー、超音波センサー、生体センサー、ラケット、ゴルフクラブ、バット等の各種球技用スポーツ用具の打撃時の加速度センサーやインパクトセンサー等、ぬいぐるみのタッチ・衝撃センサー、ベッドの見守りセンサー、ガラスや窓枠等のセキュリティセンサー等)、アクチュエータ用途(シート搬送用デバイス等)、エネルギーハーベスティング用途(発電ウェア、発電靴等)、ヘルスケア関連用途(Tシャツ、スポーツウェア、スパッツ、靴下等の各種衣類、サポーター、ギプス、おむつ、乳幼児用手押し車のシート、車いす用シート、医療用保育器のマット、靴、靴の中敷、時計等に本センサーを設けた、ウェアラブルセンサー等)などとして利用することができる。
また本開示の圧電基材は各種衣料(シャツ、スーツ、ブレザー、ブラウス、コート、ジャケット、ブルゾン、ジャンパー、ベスト、ワンピース、ズボン、パンツ、下着(スリップ、ペチコート、キャミソール、ブラジャー)、靴下、手袋、和服、帯地、金襴、冷感衣料、ネクタイ、ハンカチーフ、マフラー、スカーフ、ストール、アイマスク)、サポーター(首用サポーター、肩用サポーター、胸用サポーター、腹用サポーター、腰用サポーター、腕用サポーター、足用サポーター、肘用サポーター、膝用サポーター、手首用サポーター、足首用サポーター)、履物(スニーカー、ブーツ、サンダル、パンプス、ミュール、スリッパ、バレエシューズ、カンフーシューズ)、インソール、タオル、リュックサック、帽子(ハット、キャップ、キャスケット、ハンチング帽、テンガロンハット、チューリップハット、サンバイザー、ベレー帽)、帽子顎紐、ヘルメット、ヘルメット顎紐、頭巾、ベルト、シートカバー、シーツ、座布団、クッション、布団、布団カバー、毛布、枕、枕カバー、ソファー、イス、デスク、テーブル、シート、座席、便座、マッサージチェア、ベッド、ベッドパット、カーペット、かご、マスク、包帯、ロープ、ぬいぐるみ、各種ネット、バスタブ、壁材、床材、窓材、窓枠、ドア、ドアノブ、パソコン、マウス、キーボード、プリンタ、筐体、ロボット、楽器、義手、義足、自転車、スケートボード、ローラースケート、ゴムボール、シャトルコック、ハンドル、ペダル、釣竿、釣用浮き、釣用リール、釣竿受け、ルアー、スイッチ、金庫、柵、ATM、取っ手、ダイアル、橋、建物、構造物、トンネル、化学反応容器及びその配管、空圧機器及びその配管、油圧機器及びその配管、蒸気圧機器及びその配管、モータ、電磁ソレノイド、ガソリンエンジン等の各種物品に配設され、センサー、アクチュエータ、エネルギーハーベスト用途に使用される。
配設方法としては、例えば、圧電基材を対象物に縫い込む、対象物で挟み込む、対象物に粘接着剤で固定する等の各種方法が挙げられる。
例えば、圧電織物、圧電編物、及び圧電デバイスは、これらの用途に適用することができる。
上記用途の中でも、本開示の圧電基材は、センサー用途、又はアクチュエータ用途として利用することが好ましい。
具体的に、本開示の圧電基材は、力センサーに搭載して利用されるか、又は、アクチュエータに搭載して利用されることが好ましい。
また、前述の圧電基材、圧電織物、圧電編物、及び圧電デバイスは、応力によって発生する電圧を電界効果トランジスタ(FET)のゲート・ソース間に加えることでFETのスイッチングが可能であり、応力によってON-OFFが可能なスイッチとして利用することもできる。
本開示の圧電基材は、上述した用途以外のその他の用途に用いることもできる。
その他の用途としては、寝返り検知のための寝具、移動検知のためのカーペット、移動検知のためのインソール、呼吸検知のための胸部バンド、呼吸検知のためのマスク、りきみ検知のための腕バンド、りきみ検知のための足バンド、着座検知のための着座シート、接触状態を判別できる、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ型ソーシャルロボット等が挙げられる。接触状態を判別できる、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ型ソーシャルロボット等では、例えば、ぬいぐるみ等に局所的に配置された接触センサーによって圧力変化を検出し、人がぬいぐるみ等を「撫でた」のか「たたいた」のか「ひっぱった」のか等の各動作を判別することができる。
また、本開示の圧電基材は、例えば、車載用途;振動・音響センシングを利用した自動車ハンドル把持検出用途、振動・音響センシングを利用した共振スペクトラムによる車載機器操作システム用途、車載ディスプレイのタッチセンサー用途、振動体用途、自動車ドア及び自動車ウィンドウの挟まれ検知センサー用途、車体振動センサー用途等に特に適している。
本開示に係る力センサーは、上述の圧電基材を備える。
本開示に係る力センサーは、圧電感度に優れた圧電基材を備えるので、センサー感度の向上が期待される。
以下、本開示の実施形態に係る力センサーの具体的態様について、図面を参照しながら説明する。
図11は、本開示に係る力センサーの概念図である。
本開示に係る力センサー40は、圧電基材100Dと、圧電基材100Dの外周に配置された円筒形状のゴム系熱収縮チューブ(以下、単に「収縮チューブ」とも称する)44と、収縮チューブ44の両端部に配置された一対の圧着端子(取出し電極)46と、を備える。一対の圧着端子46は、本体部46aと、圧着部46bとからなり、中央部に貫通孔46cを有する。圧電基材100Dは、内部導体12Cと、内部導体12Cの周りに一方向に螺旋状に巻回された圧電体14Dと、圧電体14Dの外周面に一方向に螺旋状に巻回された外部導体42(グラウンド導体)と、を備える。
圧電基材100Dにおいては、内部導体12Cの一端(図11の右端)が、収縮チューブ44の外側に延在して、圧着部46bで圧着されて圧着端子46に電気的に接続されている。一方、外部導体42は、内部導体12Cの一端側から他端側に向かって巻回された後、内部導体12Cの他端(図11の左端)を越えて延在し、その延在部分が収縮チューブ44内で応力緩和部42aを形成している。
外部導体42は、この応力緩和部42aを経た後、収縮チューブ44のさらに外側(図11の左端)に延在して、圧着部46bで圧着されて圧着端子46に電気的に接続されている。
応力緩和部42aは、図11に示すように、たるんだ外部導体42からなる。上記応力緩和部42aにおいては、力センサー40に張力(応力)が印加されたときに、たるんだ部分が延びることで圧電体14Dに過度な力が負荷されるのを抑制する。
また、圧電体14Dは、長尺平板形状の圧電体からなり、両面には機能層としてアルミ蒸着膜(不図示)が蒸着されている。なお、一対の圧着端子46は、力センサー40の出力信号を処理する外部回路等(不図示)に接続されている。
なお、図11で示した実施形態では、応力緩和部42aとしてたるんだ外部導体42が配置されているが、本開示の実施形態はこれに限定されず、圧電基材100Dの少なくともいずれか一方の端部又は両端部に、線状の応力緩和部を接着、糸結び目等の方法等により張力が伝達するように配置することにより応力を緩和する機能を力センサー40に付与してもよい。
このとき線状の応力緩和部には電気的な接続の機能は存在しないが、電気的接続機能は、応力緩和部とは独立に、圧電基材の端部から内部導体及び外部導体を同軸ケーブル等に接続することにより、応力や歪の電圧信号を検出することが可能となる。
このとき応力緩和部の材料及び形態は特に限定されず、例えば、天然ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の伸縮性のある弾性材料からなる糸、紐、チューブ等;リン青銅等の金属材料、線状のポリマー等からなるスプリング;等が挙げられる。応力緩和部と電気的接続部とをそれぞれ独立に別の部位に配置することにより、電気的接続部の最大伸長量に起因する応力緩和部の歪量の制限が無くなり、張力センサーとしての最大歪量を増大させることが可能となる。
力センサー40に張力(応力)が印加されると、圧電基材100Dに張力が印加され、圧電基材100Dの圧電体14Dに含まれるヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、このずり力により圧電基材100Dの径方向にヘリカルキラル高分子(A)の分極が生じる。分極方向は圧電基材100Dの径方向である。これにより、張力に比例した電荷(電界)が発生し、発生した電荷は電圧信号(電荷信号)として検出される。なお、電圧信号は、圧着端子46に接続される外部回路等(不図示)で検出される。
従って、上記力センサー40は感度に優れたものとなる。
また、本開示の力センサー40は、同軸ケーブルに備えられる内部構造と同一の同軸線構造体(内部導体12C及び圧電体14D)を備えるため、電磁シールド性が高く、ノイズに強い構造となり得る。加えて、構造が簡易であるため、例えばウェアラブルセンサーとして、身体の一部に装着して用いることができる。
本開示に係るアクチュエータは、上述の圧電基材を備える。
本開示に係るアクチュエータは、圧電感度に優れた圧電基材を備えるので、感度の向上が期待される。
ヘリカルキラル高分子としてのNatureWorks LLC社製ポリ乳酸(品名:IngeoTM biopolymer、銘柄:4032D)100質量部に対して、安定化剤〔ラインケミー社製Stabaxol P400(10質量部)、ラインケミー社製Stabaxol I(70質量部)、及び日清紡ケミカル社製カルボジライトLA-1(20質量部)の混合物〕1.0質量部を添加し、ドライブレンドして原料を作製した。
作製した原料を押出成形機ホッパーに入れて、210℃に加熱しながらTダイから押し出し、50℃のキャストロールに0.3分間接触させて、厚さ150μmの予備結晶化シートを製膜した(予備結晶化工程)。前記予備結晶化シートの結晶化度を測定したところ6%であった。
得られた予備結晶化シートを70℃に加熱しながらロールツーロールで、延伸速度10m/分で延伸を開始し、3.5倍までMD方向に一軸延伸した(延伸工程)。得られたフィルムの厚さは49.2μmであった。
その後、前記一軸延伸フィルムを、ロールツーロールで、145℃に加熱したロール上に15秒間接触させアニール処理し、その後急冷を行って、圧電フィルムを作製した(アニール処理工程)。
次いで、圧電フィルムをスリット加工機を用いて、スリットする方向と圧電フィルムの延伸方向とが略平行となるようにスリットした。これにより、幅0.39mm、厚さ50μmのリボン状の圧電体(スリットリボン)を得た。なお、得られた圧電体の断面形状は矩形であった。
また、得られた圧電体のガラス転移点は68.8℃であった。
上記のようにして得られたリボン状圧電体について、以下の物性測定を行った。結果を表1に示す。
測定は、広角X線回折装置(リガク社製 RINT2550、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)を用いて、サンプル(圧電体)をホルダーに固定し、結晶面ピーク[(110)面/(200)面]の方位角分布強度を測定することで行った。
得られた方位角分布曲線(X線干渉図)において、結晶化度、及びピークの半値幅(α)から下記の式よりポリ乳酸の配向度F(C軸配向度)を算出して評価した。その結果、結晶化度は45%であり、配向度Fは0.97であった。
配向度(F)=(180°-α)/180°
(αは配向由来のピークの半値幅)
測定は、JIS C2151(2006)に準拠し、誘電率測定装置(アジレント・テクノロジー社製、precision LCR meter HP4284A)を用いて測定周波数1kHz、試験環境22℃、60%RHにて行った。その結果、圧電体(スリットリボン)の比誘電率εSは2.75であった。
<圧電基材の作製>
図1Aに示す圧電基材10と同様の構成の圧電基材に、さらに外部導体(グラウンド導体)として銅箔リボンを備えた圧電基材を以下に示す方法により作製した。
まず内部導体(信号線導体)として、明清産業社製錦糸線U24-01-00(線外径0.3mm、長さ250mm)を準備した。なお、用いた錦糸線は、中心線にメタ系アラミド繊維(40番手2本撚り)を用い、圧延銅箔(幅0.3mm×厚さ0.02mm)2本を用いて、中心線が露出しないように、10mm当たり22回、左巻きに螺旋状に2重に巻回して包接した。錦糸線の両端に、電気的接続部及び機械的接続部として圧着端子をかしめて、設けた。
次に、上記のようにして得た幅0.6mm、厚さ49.2μmのリボン状圧電体(スリットリボン)を錦糸線の周りに左巻きに、錦糸線の長軸方向に対して45°の方向を向くように(螺旋角度45°)、錦糸線が露出して見えないよう隙間なく、螺旋状に巻回し、錦糸線を包接した。なお、「左巻き」とは、信号線導体(錦糸線)の軸方向の一端(図1Aの場合、右端側)から見たときに、信号線導体の手前側から奥側に向かってリボン状圧電体が左巻きで巻回していることをいう。
次に、錦糸線とリボン状圧電体とを機械的に一体化するため、前記リボン状圧電体を巻回した部分に、接着剤として東亞合成社製のアロンアルファ(シアノアクリレート系接着剤)911P2を滴下、含浸させ、機能層を作成した。
次に、幅0.6mmにスリットした接着剤付の銅箔リボンを準備した。この銅箔リボンを、前記リボン状圧電体と同様の方法により、リボン状圧電体の周りに、リボン状圧電体が露出しないよう隙間なく巻回し包接した。
以上のようにして、実施例1の圧電基材を得た。
なお、錦糸線は、図1A中の内部導体12Aに相当する。リボン状圧電体は、図1A中の圧電体14Aに相当する。接着剤は、図1A中不図示だが、内部導体12A及び圧電体14Aの間に配置される。グラウンド導体も図1A中不図示である。
下記表2に示すものを圧電ライン表面(最外層)に塗布し、温度-感度特性を測定した。
また、得られた実施例1の圧電基材を用い、圧電基材に引張力を印加したときに発生する電荷量(発生電荷量)を測定し、発生電荷量から単位引張力当たりの発生電荷量を算出した。さらに、実施例1については、温度変化による発生電荷量の評価も行い、初期値に対する変化率を求めた。結果を表3に示す。
・「アルマテックス L1043(商品名)」・・・アクリル樹脂、三井化学社製
・「アロンアルファ ♯911P2(商品名)」・・・シアノアクリレート系接着剤、東亞合成社製
・「アロンアルファ ♯901H2(商品名)」・・・シアノアクリレート系接着剤、東亞合成社製
・「アロンアルファ ♯901H3(商品名)」・・・シアノアクリレート系接着剤、東亞合成社製
・「アロンアルファ ♯201」・・・シアノアクリレート系接着剤、東亞合成社製
これは、スリットリボン(圧電体)を圧電体のガラス転移点よりも高い機能層を設けたことにより、高温環境下でも高い弾性率を保てる材質(PLAよりも高いTgを有する材質)の機能層を設けることでスリットリボン(圧電体)への応力を緩和し、スリットリボン(圧電体)の配向方向が崩れることを防いだものと考えられる。
次に、図12に示すように、圧電体14Aと外部導体16との間に、機能層15であるPETフィルムを介在させて圧電基材101を作製した。
具体的には、内部導体12Aとして実施例1で使用した錦糸線と、圧電体14Aとして実施例1で使用したリボン状圧電体を接着剤を使用せず一体化し、リボン状圧電体にPETフィルム(Tg100℃程度)をカバリングさせ(巻回の確度は特に限定なし)、さらに外部導体(グラウンド導体)として実施例1で使用した銅箔リボンを備えた圧電基材を作製した。得られた圧電基材の温度-感度特性を測定した。結果を表4に示す。
Claims (14)
- 長尺状の内部導体と、
前記内部導体の外周面を被覆する圧電体と、
前記圧電体の外周に配置された外部導体と、を備え、
前記圧電体よりも高いガラス転移点を有する樹脂を含有する機能層を有し、
前記機能層が、厚さが0.001mm以上0.2mm以下であり、幅が0.1mm以上30mm以下であり、前記厚さに対する前記幅の比が2以上である長尺平板形状のフィルムを被覆した層である、
圧電基材。 - 前記樹脂が、シアノアクリレート系樹脂、ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む請求項1に記載の圧電基材。
- 前記圧電体が、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、
前記圧電体の長さ方向と、前記圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
下記式(a)によって求められる前記圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲である請求項1又は請求項2に記載の圧電基材。
配向度F=(180°-α)/180°・・(a)
(式(a)中、αはX線回折により測定される配向由来のピークの半値幅を表す。) - 前記圧電体は、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200~60000の安定化剤(B)を、前記ヘリカルキラル高分子(A)100質量部に対して0.01質量部~10質量部含む、請求項3に記載の圧電基材。
- 前記圧電体が、長尺状であり、前記内部導体の外周面に沿って一方向に螺旋状に巻回されている請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の圧電基材。
- 長尺状の内部導体と、
前記内部導体の外周面を被覆する圧電体と、
前記内部導体の外周面を被覆し、前記圧電体よりも高いガラス転移点を有する樹脂を含有する機能層であって、前記機能層が前記圧電体と共に組紐構造の少なくとも一部を形成する機能層と、
前記圧電体及び前記機能層の外周に配置された外部導体と、
を備える圧電基材。 - 前記圧電体が、前記内部導体の軸方向に対して、15°~75°の角度を保持して巻回されている、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の圧電基材。
- 前記圧電体が繊維形状を有し、
前記圧電体の、前記内部導体の長軸方向と直交する断面の平均長軸径が、0.0001mm以上10mm以下である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の圧電基材。 - 前記圧電体が長尺平板形状を有し、
前記圧電体の平均厚さが0.001mm以上0.2mm以下であり、
前記圧電体の幅が0.1mm以上30mm以下であり、
前記圧電体の平均厚さに対する前記圧電体の幅の比が2以上である請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の圧電基材。 - さらに、帯電防止層、アンチブロック層、及び電極層からなる群より選択される少なくとも1種を有する請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の圧電基材。
- 前記内部導体が錦糸線である請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の圧電基材。
- 請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の圧電基材を備える力センサー。
- 請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の圧電基材を備えるアクチュエータ。
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