JP7038991B2 - 酸基含有アモルファスカーボンの製造方法 - Google Patents

酸基含有アモルファスカーボンの製造方法 Download PDF

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本開示は、酸基含有アモルファスカーボンの製造方法に関する。
原油価格の高騰や環境負荷低減の観点から、石油代替燃料として、バイオマス燃料の一つであるバイオエタノールが注目されている。既存のバイオエタノールの生産には、サトウキビやトウモロコシなどの食料系バイオマスが原料として利用されているが、世界的な食料不足を背景として、食物と競合しない非食料系バイオマス及び廃棄物系バイオマスなどのバイオマス(以下、「セルロース系バイオマス」ともいう。)を利用することが望まれている。
バイオエタノールの生産には、セルロースを分解して、グルコースなどの糖を得るための糖化工程が含まれる。糖化工程では、セルロースを水熱処理することが行われるが、この水熱処理の際、セルロースから糖への分解を促進するための酸触媒が用いられる。従来、酸触媒には、硫酸が用いられていたが、近年、担体を用いる固体酸触媒の開発が進められている(例えば、特許文献1~3参照)。また、例えば、市販の固体酸触媒としては、アンバーリスト(Amberlyst)15(オルガノ株式会社製)などのアンバーリストシリーズが知られている。
特開2009-201405号公報 特開2011-213634号公報 国際公開第2008/001696号
特許文献1~3に記載の固体酸触媒は、その製造工程において、炭素系材料などを発煙硫酸と高温で長時間反応させることが含まれる。そのため、特許文献1~3に記載の固体酸触媒の製造は、環境負荷が非常に大きく、硫酸の腐食性に対する耐薬品性プラントなどの設備が必要であるという問題を有する。このため、環境低負荷型のプロセスで固体酸触媒を作製するための技術開発が求められている。
また、特許文献1には、触媒を用いてセルロースからグルコースを生成した結果が示されているが、その効率は低い。
特許文献2には、触媒の分解活性が調べられているが、その基質はセロヘキサオースであるため、セルロースを基質とした場合の分解活性は不明である。
特許文献3には、触媒を用いてセルロースからグルコースを生成した結果が示されているが、その効率は低い。
また、糖化工程における水熱処理は、高温であるほどセルロースから糖への分解が促進されるが、例えばアンバーリスト15(オルガノ株式会社製)は最高操作温度が120℃であるため、150℃のような高温では溶解してしまい、繰返し使用することができない。そのため、セルロースを糖に分解する触媒活性を保持しつつ、150℃のような高温でも繰り返し使用できる固体酸触媒が望まれている。
上記に鑑み、本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、高温(例えば、150℃)でもセルロースを糖に分解する触媒活性を保持し、かつ繰り返し使用できる固体酸触媒を製造するための、環境低負荷型の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、高温(例えば、150℃)でもセルロースを糖に分解する触媒活性を保持し、かつ繰り返し使用できる酸基含有アモルファスカーボンを提供することである。
更に、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、酸基含有アモルファスカーボンを用いることで、セルロースからグルコースなどの糖への変換効率が高い、セルロースの糖化方法を提供することである。
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> アモルファスカーボン及び酸を含む水性溶液を液中プラズマで処理する工程を含む、酸基含有アモルファスカーボンの製造方法。
<2> 前記アモルファスカーボンが、カーボンブラック、木炭、活性炭、煙炭、コークス、及びセルロース系バイオマスを炭化させた炭化物からなる群から選択される1種以上である、<1>に記載の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法。
<3> 前記水性溶液中の前記酸の濃度が0.1M~5Mである、<1>又は<2>に記載の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法。
<4> 前記酸が硫酸である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法。
<5> 1.5mmol/g以上の酸基を含む、酸基含有アモルファスカーボン。
<6> 前記酸基が、スルホ基及びカルボキシル基を含む、<5>に記載の酸基含有アモルファスカーボン。
<7> 表面積が20m/g以上である、<5>又は<6>に記載の酸基含有アモルファスカーボン。
<8> セルロースの糖化に使用するための固体酸触媒である、<5>~<7>のいずれか1つに記載の酸基含有アモルファスカーボン。
<9> <5>~<8>のいずれか1つに記載の酸基含有アモルファスカーボン及びセルロースを含む水性溶液を水熱処理する工程を含む、セルロースの糖化方法。
本開示によれば、高温(例えば、150℃)でもセルロースを糖に分解する触媒活性を保持し、かつ繰り返し使用できる固体酸触媒を製造するための、環境低負荷型の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法が提供される。
また、本開示によれば、高温(例えば、150℃)でもセルロースを糖に分解する触媒活性を保持し、かつ繰り返し使用できる酸基含有アモルファスカーボンが提供される。
更に、本開示によれば、酸基含有アモルファスカーボンを用いることで、セルロースからグルコースなどの糖への変換効率が高い、セルロースの糖化方法が提供される。
液中プラズマ処理していないカーボンブラックの表面形態を示す図(スケールバー:200nm)である。 0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックの表面形態を示す図(スケールバー:100nm)である。 0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックの表面形態を示す図(スケールバー:100nm)である。 1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックの表面形態を示す図(スケールバー:100nm)である。
液中プラズマ処理していないカーボンブラック(Carbon)、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(0.1M HSO)、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(0.5M HSO)、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(1M HSO)のそれぞれについてのXPS(X線光電子分光)のスペクトルである。 図2Aにおいて結合エネルギー(Binding energy)160eV~180eV付近のピークを拡大したXPSのスペクトルである。
液中プラズマ処理していないカーボンブラック(CB)についての結合エネルギー280eV~295eVにおけるXPSのスペクトルである。 0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.1M HSO)についての結合エネルギー280eV~295eVにおけるXPSのスペクトルである。 0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.5M HSO)についての結合エネルギー280eV~295eVにおけるXPSのスペクトルである。 1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 1M HSO)についての結合エネルギー280eV~295eVにおけるXPSのスペクトルである。
液中プラズマ処理していないカーボンブラック(CB)についての結合エネルギー160eV~178eVにおけるXPSのスペクトルである。 0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.1M HSO)についての結合エネルギー160eV~178eVにおけるXPSのスペクトルである。 0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.5M HSO)についての結合エネルギー160eV~178eVにおけるXPSのスペクトルである。 1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 1M HSO)についての結合エネルギー160eV~178eVにおけるXPSのスペクトルである。
液中プラズマ処理していないカーボンブラック(CB)、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(0.1M HSO)、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(0.5M HSO)、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(1M HSO)についてのFT-IR(フーリエ変換赤外分光)のスペクトルである。
液中プラズマ処理していないカーボンブラック(CB)、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_0.1M HSO)、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_0.5M HSO)、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_1M HSO)を触媒として用いてセルロースを水熱処理した後の分解生成物を示すHPLC(高速液体クロマトグラフィー)のスペクトルである。
液中プラズマ処理していないカーボンブラック(CB)、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_0.1M HSO)、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_0.5M HSO)、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_1M HSO)を触媒として用いてセルロースを水熱処理した場合における、セルロースから糖及び副産物への変化率を示すグラフである。
図7に示された変化率の全体を100%とした場合における生成物の内訳を選択性(%)として示したグラフである。
0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.1M HSO)、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.5M HSO)、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 1M HSO)を触媒として用いて水熱処理した場合における硫酸イオン(SO 2-)の溶出量を示すイオン交換クロマトグラフィのスペクトルである。なお、市販の-SO3H基含有触媒用イオン交換樹脂(Amberlyst 15、オルガノ株式会社製)を触媒として用いて150℃で水熱処理した場合における硫酸イオン濃度は極めて高かったため、図9に図示していない。
0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_0.5M HSO)について、1回~3回の水熱処理後におけるセルロースから糖及び副産物の生成量を示すHPLCのスペクトルである。 1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_1M HSO)について、1回~3回の水熱処理後におけるセルロースから糖及び副産物の生成量を示すHPLCのスペクトルである。
0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として1回~3回水熱処理した後における、セルロースから糖への変化率を示したグラフである。 図11に示された変化率の全体を100%とした場合における生成物の内訳を選択性(%)として示したグラフである。
0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.5M HSO)を1回~3回水熱処理した後における、水熱処理溶液中の硫酸濃度を示すイオン交換クロマトグラフィのスペクトルである。 1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 1M HSO)を1回~3回水熱処理した後における、水熱処理溶液中の硫酸濃度を示すイオン交換クロマトグラフィのスペクトルである。
液中プラズマ処理していないCSCNT(cup-stacked carbon nanotube)の表面形態を示す図(スケールバー:500nm)である。 0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNTの表面形態を示す図(スケールバー:500nm)である。 0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNTの表面形態を示す図(スケールバー:500nm)である。 1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNTの表面形態を示す図(スケールバー:500nm)である。
液中プラズマ処理していないCSCNT(未処理CSCNT)、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT(0.1M HSOCNT)0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT(0.5M HSOCNT)及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT(1M HSOCNT)を触媒として用いてセルロースを水熱処理した後の分解生成物を示すHPLCのスペクトルである。
炭素材料としてカーボンブラックを使用して1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒(SP_1M CB)、炭素材料としてCSCNTを使用して0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒(0.1M_CSCNT)、炭素材料としてCSCNTを使用して0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒(0.5M_CSCNT)、炭素材料としてCSCNTを使用して1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒(1M_CSCNT)、及び液中プラズマ処理していないCSCNT(CSCNT)を触媒として用いて水熱処理した場合における、セルロースから糖への変化率を示したグラフである。
図16に示された変化率の全体を100%とした場合における生成物の内訳を選択性(%)として示したグラフである。
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において「溶媒」とは、水、有機溶剤、及び水と有機溶剤との混合溶媒を包含する意味で用いられる。
<酸基含有アモルファスカーボンの製造方法>
本開示の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法は、アモルファスカーボン及び酸を含む水性溶液を液中プラズマで処理する工程を含む。
従来、セルロースの糖化工程に使用される固体酸触媒の製造には、発煙硫酸と高温で長時間反応させる工程が含まれていたことから、環境負荷が非常に大きく、硫酸の腐食性に対する耐薬品性プラントなどの設備が必要であるという問題を有していた。
これに対し、本開示の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法によると、環境低負荷型のプロセスで、セルロースの糖化工程に使用できる固体酸触媒として使用し得る酸基含有アモルファスカーボンを製造することができる。
その詳細な機構は不明であるものの、以下のように推察される。すなわち、本開示の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法においては、アモルファスカーボン及び酸を含む水性溶液が液中プラズマで処理されることにより、水性溶液中で発生したプラズマによる高エネルギー状態の環境で酸由来の陰イオンとアモルファスカーボンとの結合反応が促進され、低濃度の酸及び室温などの温和な条件においても酸基含有アモルファスカーボンが効率よく製造されると考えられる。
[アモルファスカーボン及び酸を含む水性溶液を液中プラズマで処理する工程]
本開示の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法は、アモルファスカーボン及び酸を含む水性溶液を液中プラズマで処理する工程を含む。これにより、酸由来の酸基がアモルファスカーボン上に形成され、酸基含有アモルファスカーボンが製造される。
(水性溶液)
水性溶液は、アモルファスカーボン及び酸を含む。
水性溶液としては、例えば、電解質を溶解させた水、エタノール、又はアンモニア水などが挙げられる。電解質としては、特に限定されるものではなく、一般的な酸及び/又は塩基が含まれるものであれば限定されない。
水性溶液は、液中プラズマ処理を阻害しない範囲で、他の極性溶媒を含むことができる。そのような極性溶媒としては、例えば、メタノール、プロパノールなどのアルコールなどが挙げられる。極性溶媒の含有量は、水性溶媒100質量部に対し、0質量部~100質量部が好ましく、5質量部~30質量部がより好ましい。
-アモルファスカーボン-
アモルファスカーボンとは、少なくとも一部が非晶質である炭素をいう。
アモルファスカーボンには、例えば、カーボンブラック、木炭、活性炭、煙炭、コークス、及びセルロース系バイオマスを炭化させた炭化物からなる群から選択される1種以上が含まれる。好ましくは、アモルファスカーボンは、カーボンブラックである。
アモルファスカーボンは、水性溶液100質量部に対し、0.01質量部~10質量部、好ましくは0.1質量部~5質量部、より好ましくは0.5質量部~2.5質量部、更に好ましくは1質量部~2質量部含まれる。
-酸-
酸は、水性溶液に溶解して陰イオンを形成できる酸であれば限定されない。酸には、有機酸及び無機酸が含まれ、例えば、硫酸、スルファニル酸、ベンゼンスルホン酸などが含まれる。好ましくは、酸は、硫酸である。
水性溶液中の酸の濃度は、0.01M以上が好ましく、0.1M以上がより好ましく、0.5M以上が更に好ましく、1M以上が最も好ましい。水性溶液中の酸の濃度が0.01M以上であることにより、アモルファスカーボン及び酸を含む水性溶液を液中プラズマで処理することによる酸基含有アモルファスカーボンの生成効率が高くなる。
また、水性溶液中の酸の濃度は、5M以下が好ましく、3M以下がより好ましく、1M以下が最も好ましい。水性溶液中の酸の濃度が5M以下、より好ましくは1M以下であることにより、硫酸の腐食性に対する設備が必要でなくなり、廃液の硫酸イオン濃度が低くなるなどの環境低負荷型の酸基含有アモルファスカーボンの製造が実現される。
水性溶液中の酸の濃度は0.1M~5Mが好ましく、0.5M~3Mがより好ましく、0.5M~1Mが最も好ましい。
(液中プラズマ)
本開示において、「液中プラズマ」とは、水性溶液中で発生されるプラズマをいう。液中プラズマの用語には、ソリューションプラズマ、及び液体プラズマなどの用語も含まれる。
本開示において、「液中プラズマで処理する」とは、アモルファスカーボン及び酸を含む水性溶液中で対向するように配置された2つの電極の間に電圧を印加することにより、2つの電極間にプラズマを発生させて処理することをいう。電極に電圧が印加されることにより、電極周辺は加熱され、気泡を生じる。この気泡中で絶縁破壊が発生し、亜臨界状態を含む溶液に取り囲まれた空間でプラズマが発生し、高エネルギー状態の閉鎖系環境が生じる。この閉鎖系環境において、気相、液相、亜臨界相、及びそれらの界面で様々な化学反応が促進される。特に、液中プラズマにより、酸の陰イオンに由来するラジカルが発生し、このラジカルがアモルファスカーボンに結合して酸基を形成することで、酸基含有アモルファスカーボンを生成することができる。
液体プラズマ処理に使用する電源としては、パルス電圧を印加できるパルス電源が好ましい。パルス電源を用いることにより、溶液の過熱及び電極の劣化を抑制することができる。
液体プラズマ処理に使用する電極としては、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等が好ましい。
液体プラズマ処理における周波数は、1kHz~200kHzが好ましく、5kHz~150kHzがより好ましく、15kHz~100kHzが更に好ましい。
液体プラズマ処理におけるパルス幅は、0.05μs~40μsが好ましく、0.1μs~10μsがより好ましく、0.5μs~3μsが更に好ましい。
液体プラズマ処理における電極間距離は、0.01mm~20mmが好ましく、0.1mm~5mmがより好ましく、0.5mm~2mmが更に好ましい。
液体プラズマ処理における周波数、パルス幅、及び電極間距離が上記範囲であることにより、水性溶液に含まれる酸の陰イオンに由来するラジカルを効率的に発生させることができる。
(酸基含有アモルファスカーボン)
本開示の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法で製造される酸基含有アモルファスカーボンは、1.5mmol/g以上の酸基を含む酸基含有アモルファスカーボンに限定されないこと以外は、下記「<酸基含有アモルファスカーボン>」の項に記載した酸基含有アモルファスカーボンと同じである。
<酸基含有アモルファスカーボン>
酸基含有アモルファスカーボンは、0.5mmol/g以上の酸基を含む。酸基含有アモルファスカーボンは、好ましくは2.0mmol/g以上の酸基を含み、より好ましくは3.0mmol/g以上の酸基を含み、更に好ましくは4.0mmol/g以上の酸基を含む。0.5mmol/g以上、より好ましくは1.5mmol/g以上の酸基を含むことにより、酸基含有アモルファスカーボンのセルロースから糖(特にグルコース)への触媒活性が高くなる。
本開示の糖には、グルコース及びキシロースなどの単糖、セロビオースなどの二糖、及びオリゴ糖を含む。本開示の糖は、セルロースの分解生成物に関連することから、オリゴ糖であることが好ましく、二糖であることがより好ましく、単糖であることが更に好ましく、バイオエタノールの製造に用いる観点から、グルコースであることが最も好ましい。
酸基含有アモルファスカーボンの表面積は、10m/g以上であることが好ましく、30m/g以上であることがより好ましく、40m/g以上であることが更に好ましく、50m/g以上であることが最も好ましい。酸基含有アモルファスカーボンは、表面積が20m/g以上であることにより、触媒反応し得る面積が大きくなり、セルロースから糖(特にグルコース)への触媒活性を高めることができる。
(酸基)
酸基は、液中プラズマで処理する前にアモルファスカーボンが有する酸基、並びにアモルファスカーボン及び酸を含む水性溶液を液中プラズマで処理することによりアモルファスカーボン上に形成される前記酸由来の酸基の両方をいうことができる。好ましくは、酸基は、アモルファスカーボン及び酸を含む水性溶液を液中プラズマで処理することによりアモルファスカーボン上に形成される前記酸由来の酸基である。
酸基としては、例えば、スルホ基、アルデヒド基、カルボキシル基、フェノール性水酸基などが挙げられる。
酸基含有アモルファスカーボンは、1種の酸基を含んでよく、又は2種以上の酸基を含んでもよい。
酸基含有アモルファスカーボンにおける酸基としては、例えば、スルホ基、アルデヒド基、カルボキシル基、フェノール性水酸基などが挙げられる。
好ましくは、酸基含有アモルファスカーボンにおける酸基は、スルホ基である。酸基含有アモルファスカーボンにおける酸基がスルホ基であることにより、酸基含有アモルファスカーボンのセルロースから糖(特にグルコース)への触媒活性は高くなる。これは、スルホ基が、セルロースの分解における触媒部位として機能することに起因すると考えられる。
また、酸基含有アモルファスカーボンにおける酸基としては、例えば、スルホ基及び他の1種以上の酸基の組み合わせ、カルボキシル基及び他の1種以上の酸基の組み合わせ、フェノール性水酸基及び他の1種以上の酸基の組み合わせ、スルホ基及びカルボキシル基の組み合わせ、スルホ基及びフェノール性水酸基の組み合わせ、スルホ基、カルボキシル基及び他の1種以上の酸基の組み合わせ、スルホ基、カルボキシル基及びフェノール性水酸基の組み合わせ、並びにスルホ基、カルボキシル基、フェノール性水酸基及び他の1種以上の酸基の組み合わせなどが挙げられる。酸基含有アモルファスカーボンにおける酸基は、好ましくはスルホ基と他の1種以上の酸基との組み合わせであり、より好ましくはスルホ基及びカルボキシル基の組み合わせであり、更に好ましくはスルホ基、カルボキシル基及び他の1種以上の酸基の組み合わせである。
酸基含有アモルファスカーボンにおける酸基が、スルホ基を含むことにより、酸基含有アモルファスカーボンのセルロースから糖(特にグルコース)への触媒活性が高くなる。これは、スルホ基が、セルロースの分解における触媒部位として機能することに起因すると考えられる。
また、酸基含有アモルファスカーボンにおける酸基が、スルホ基に加えて、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を含むことにより、酸基含有アモルファスカーボンのセルロースから糖(特にグルコース)への触媒活性が更に高くなる。これは、酸基含有アモルファスカーボンにおけるカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が、セルロースに含まれる極性基との間で水素結合を形成し、セルロースを酸基含有アモルファスカーボンの表面に固定化することにより、触媒効率が高められることに起因すると考えられる。
酸基含有アモルファスカーボンは、水酸基(ヒドロキシ基)、アルデヒド基、カルボキシル基などの他の官能基を含んでもよい。酸基含有アモルファスカーボンが、スルホ基に加えて、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基などの他の官能基を含むことにより、酸基含有アモルファスカーボンのセルロースから糖(特にグルコース)への触媒活性が更に高くなる。これは、酸基含有アモルファスカーボンにおける水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基などの他の官能基が、セルロースに含まれる極性基との間で水素結合を形成し、セルロースを酸基含有アモルファスカーボンの表面に固定化することにより、触媒効率が高められることに起因すると考えられる。
(アモルファスカーボン)
アモルファスカーボンとは、少なくとも一部が非晶質である炭素をいう。
アモルファスカーボンには、例えば、カーボンブラック、木炭、活性炭、煙炭、コークス、及びセルロース系バイオマスを炭化させた炭化物などが含まれる。好ましくは、アモルファスカーボンは、カーボンブラックである。
酸基含有アモルファスカーボンは、好ましくは、セルロースの糖化に使用するための固体酸触媒である。ここで、セルロースの糖化とは、セルロースを分解して糖を得ることをいい、例えば、以下に詳細を記載する水熱処理により行われる。
酸基含有アモルファスカーボンは、酸基をアモルファスカーボン上に形成し得る任意の製造方法により製造することができる。好ましくは、酸基含有アモルファスカーボンは、本開示の酸基含有アモルファスカーボンの製造方法によって製造される。
<セルロースの糖化方法>
本開示のセルロースの糖化方法は、本開示の酸基含有アモルファスカーボン及びセルロースを含む水性溶液を水熱処理する工程を含む。
[水性溶液]
水性溶液は、前記「<酸基含有アモルファスカーボンの製造方法>」の「(水性溶液)」の項に記載した水性溶液と同じである。
(酸基含有アモルファスカーボン)
酸基含有アモルファスカーボンは、前記「<酸基含有アモルファスカーボン>」の項に記載した酸基含有アモルファスカーボンと同じである。
酸基含有アモルファスカーボンは、水性溶液100質量部に対し、0.01質量部~10質量部、好ましくは0.1質量部~5質量部、より好ましくは0.5質量部~2.5質量部、更に好ましくは1質量部~2質量部含まれる。
(セルロース)
セルロースは、特に制限されず、セルロースを含む任意の植物、微生物等に由来してよい。セルロースは、食料系バイオマス(例えば、トウモロコシ、サトウキビ、テンサイ、コムギ、オオムギ、イネ、エンバクなど)、非食料系バイオマス(例えば、間伐材などの木、非食用の草、農作物の非食用部、稲藁、麦藁、籾殻、バガスなど)、及び廃棄物系バイオマス(例えば、廃木材、廃紙など)などに由来することができるが、食料との競合の観点から、非食料系バイオマス及び廃棄物系バイオマスなどのセルロース系バイオマス由来であることが好ましい。
セルロースは、食料系バイオマス、非食料系バイオマス、及び廃棄物系バイオマスから公知の方法で精製された、精製セルロースであってよい。精製セルロースは、市販品であってもよい。
セルロースの含有量は、水性溶液100質量部に対し、0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましく、0.5質量部~1質量部が更に好ましい。セルロースの含有量が上記範囲であることにより、液中プラズマ処理を効率的に行うことができる。
[水熱処理]
水熱処理は、本開示の酸基含有アモルファスカーボン及びセルロースを含む水性媒体を、以下に示すような温度等の条件で処理することにより、当該セルロースを加水分解して糖を生成する処理である。水熱処理は、例えば、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)を用いて行うことができる。
水熱処理の回数は、特に制限されず、1回であってよく、2回以上であってもよい。水熱処理を2回以上行う場合、第1の水熱処理と、その後の水熱処理とは、異なる条件で行うことができる。
水熱処理において、本開示の酸基含有アモルファスカーボンの含有量は、水性媒体100質量部に対し、0.02質量部~20質量部が好ましく、0.2質量部~10質量部がより好ましく、1質量部~2質量部が更に好ましい。
水熱処理において、セルロースの含有量は、水性媒体100質量部に対し、0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましく、0.5質量部~1質量部が更に好ましい。
水熱処理において、温度は、100℃~180℃が好ましく、120℃~180℃がより好ましく、125℃~160℃が更に好ましい。水熱処理が、100℃以上であることにより、セルロースの糖化が促進される。また、水熱処理が、120℃以上であることにより、セルロースの糖化がより促進され、かつ、市販の-SOH基含有触媒用イオン交換樹脂であるアンバーリストシリーズ(例えば、アンバーリスト15)を使用できない温度範囲での使用となるため、本開示の酸基含有アモルファスカーボンの有利な効果が好ましく発揮される。
水熱処理の時間は、3時間~48時間が好ましく、6時間~36時間がより好ましい。
水熱処理において、圧力は、0.01MPa~10MPaが好ましく、0.1MPa~10MPaがより好ましい。
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<酸基含有カーボンブラック>
(液中プラズマ処理)
内径43mm、高さ75mmのグラスビーカー(100mL)の2つの対極側から、円錐形のシリコンプラグを備えた1対のタングステン電極(直径1mm)を挿入した。2つの電極間の距離は、0.5mmとした。なお、上記電極を備える容器は、以下「液中プラズマ反応容器」ともいう。
液中プラズマ反応容器に、0.1M硫酸水溶液、0.5M硫酸水溶液、又は1M硫酸水溶液(各100ml)を入れ、炭素源としてカーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製)1gをスターラーで撹拌しながら懸濁させて、液中プラズマ処理を行った。
液中プラズマ処理は、双極電極を用いて、一次電圧を100V、二次電圧を1kV、パルス幅を0.5μs、パルス周波数を30kHzとして、室温、大気圧条件下で30分間、プラズマを発生させることにより行った。
上記液中プラズマ処理後、黒色溶液を濾紙(メルク株式会社社製、型番AAWP01300)で濾過し、純度99.5%エタノール(関東化学株式会社社製、型番053-00453)50mlで洗浄した。その後、濾過物を100℃の純水200mlで更に洗浄した後、電気炉に入れ100℃で24時間乾燥させた。
(表面形態)
上記液中プラズマ処理したカーボンブラックの表面の形態を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM;JEOL社製、型番JSM-7610F)を用いて観察した。
図1Aは、液中プラズマ処理していないカーボンブラックの表面形態を示し、図1Bは、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックの表面形態を示し、図1Cは、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックの表面形態を示し、図1Dは、1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックの表面形態を示す。
この結果、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した場合としない場合において、カーボンブラックに形態上の変化はみられなかった。
(元素分析)
上記液中プラズマ処理したカーボンブラックについて、エネルギー分散型X線分光装置(JEOL社製、型番JSM-7610F)を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)で元素分析を行った。
元素分析の結果を下記表1に示す。
Figure 0007038991000001
この結果、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した場合には、硫酸の濃度依存的に硫黄原子の量が増加することが示された。これは、カーボンブラックを硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したことにより、カーボンブラック表面にスルホ基が結合したことに起因すると考えられる。
また、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した場合には、硫酸の濃度依存的に酸素原子及びタングステン原子の量も増加することが示された。
(組織)
液中プラズマ処理していないカーボンブラック、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックのそれぞれについて、BET(株式会社島津製作所製、自動比表面積/細孔分布測定装置 トライスターII 3020)で測定した。結果を下記表2に示す。
Figure 0007038991000002
この結果、液中プラズマ処理の有無、又は硫酸水溶液の濃度にかかわらず、カーボンブラックの物理的特性にはほとんど差がないことが示された。
(酸基及び官能基の存在量)
液中プラズマ処理していないカーボンブラック、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックのそれぞれについて、カーボンブラックの表面に存在する酸基の合計量、スルホ基(HSO基)の量、並びにカルボキシル基及びヒドロキシ基の合計量を測定した。
上記酸基及び官能基の測定は、酸-塩基滴定測定により行った。酸基の合計量は、以下のように求めた。0.06gのカーボンブラックを30mlの0.01MNaOH溶液に加え、4時間、800rpm(rotation per minute)で循環させ、濾過した。濾過した溶液に対して、200μlのpH指示薬(フェノールフタレイン)を添加し、0.01M HClで滴定した。濾過した溶液の色がピンクから透明色に変化させるために必要となる0.01M HClの溶液量を計測した。酸基の合計量は、[(0.01×NaOHの容量(30ml)-0.01×HClの容量(ml))/カーボンブラックの重量(g)]から計算した。
スルホ基(HSO基)の量の測定は、以下のように求めた。0.06gのカーボンブラックを30mlの0.01M NaCl溶液に加え、4時間、800rpmで循環させ、濾過した。濾過した溶液に対して、200μlのpH指示薬(フェノールフタレイン)を添加し、0.01M NaOHで滴定した。濾過した溶液を透明からピンク色に変化させるために必要となる0.01M HClの溶液量を計測した。スルホ基(HSO基)の量は(0.01×NaOHの容量(ml)/カーボンブラックの重量(g))から計算した。
カルボキシル基及びヒドロキシ基の合計量は、酸基の合計量-スルホ基(HSO基)の量で計算した。
上記結果を表3に示す。
Figure 0007038991000003
この結果、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理することで、スルホ基(HSO基)がカーボンブラックの表面に存在するようになり、かつ、硫酸の濃度依存的にスルホ基の存在量が高くなっていることが示された。
また、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理することで、酸基、並びにカルボキシル基(COOH基)及びヒドロキシ基(OH基)の存在量が、硫酸の濃度依存的に増加していることが示された。
(化学結合)
-XPS(X線光電子分光)-
カーボンブラックの表面に存在する官能基をXPSで詳細に調べた。XPSには、X線光電子分光装置(JEOL社製、型番JPS-9010MC)を用い、条件は、加速電圧を10kV、電流を10mAとした。その結果を図2A及び図2Bに示す。
図2Aには、液中プラズマ処理していないカーボンブラック(Carbon)、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(0.1M HSO)、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(0.5M HSO)、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(1M HSO)のそれぞれについてのXPSの結果を示している。この結果、全ての試料において、O1sとして表記される酸素の1s軌道のエネルギーピーク位置が532.2eVの位置に、C1sとして表記される炭素の1s軌道のエネルギーピーク位置が284.5eVに観測された。酸素の1s軌道のエネルギーピークの存在により、液中プラズマ処理していないカーボンブラック及び硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックには、カルボキシル基及びヒドロキシ基などの酸素を含む官能基が存在することが示された。
また、図2Bには、図2Aにおいて結合エネルギー(Binding energy)160eV~180eV付近のピークを拡大したXPSの結果を示している。この結果、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックにおいて、S2pとして表記される硫黄の2p軌道のエネルギーピーク位置を示す168eVのピークが観測された。硫黄の2p軌道のエネルギーピークの存在により、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックには、スルホ基などの硫黄を含む官能基が存在することが示された。
図3A~図3Dには、図2AにおけるC1sピークを、C-C結合、C-O結合及びC-S結合、並びにC=O結合の成分ごとに分けて詳細に示したXPSの結果を示す。
図3Aには液中プラズマ処理していないカーボンブラック(CB)、図3Bには0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.1M HSO)、図3Cには0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.5M HSO)、及び図3Dには1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 1M HSO)の結果を示す。
また、図3A~図3Dに示されているC-C結合、C-O結合及びC-S結合、並びにC=O結合の成分ごとの強度の比率を以下の表4に示す。
Figure 0007038991000004
図3A~図3D及び表4の結果から、液中プラズマ処理されたカーボンブラックにおけるC-O結合及びC-S結合の存在割合が硫酸水溶液の濃度依存的に増加し、特に硫酸水溶液の濃度が0.5M~1Mの場合にC-O結合及びC-S結合の存在割合が顕著に高いことが示された。これにより、液中プラズマ処理されたカーボンブラックにおいては、カルボキシル基及びヒドロキシ基などの酸素を含む官能基、並びにスルホ基などの硫黄を含む官能基が増加していることが示された。
図4A~図4Dには、S2pとして表記される硫黄の2p軌道のエネルギーピーク位置である168eVを含む160eV~180eV付近を拡大したXPSの結果を示す。
この結果、液中プラズマ処理されたカーボンブラックにおけるC-O結合及びC-S結合の存在割合が硫酸水溶液の濃度依存的に増加し、特に硫酸水溶液の濃度が0.5M~1Mの場合に-SOH結合が顕著に増加することが示された。これにより、液中プラズマ処理されたカーボンブラックにおいては、スルホ基などの硫黄を含む官能基が増加していることが示された。
-FT-IR(フーリエ変換赤外分光)-
カーボンブラックの表面に存在する化学結合の状態をFT-IRで詳細に調べた。FT-IRは、被検体のカーボンブラック:KBr=1:400(質量比)となるよう試料を調製し、フーリエ変換赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、IR Prestige2)を用いて観測された赤外線吸収スペクトルに基づいて解析する。赤外線吸収スペクトルは、4000cm-1~400cm-1の範囲にわたり4cm-1の解像度で得ることができる。
この結果、液中プラズマ処理されたカーボンブラックには、1116.83cm-1~1117.78cm-1付近に-SOH結合を示すピークが存在し、特に0.5M~1M硫酸水溶液の濃度で液中プラズマ処理したカーボンブラックにおいて-SOH結合が顕著に多いことが示された。
(セルロースのボールミル処理)
ボールミル処理は、小型ボールミル架台(株式会社アサヒ理化製作所製、AV-1型)
に、微結晶セルロース粉末(和光純薬工業株式会社製、036-2225)10g、及びアルミナボール(株式会社ニッカトー製、型番HD-10、直径10mm)1kgを入れ、振動回転数650rpm、処理時間を48時間として行った。
本明細書において、「48時間ボールミル処理したセルロース」は、上記と同じ処理を行った。
<酸基含有カーボンブラックを用いたセルロースの分解>
純水5mlに、48時間ボールミル処理したセルロース45mg、及び触媒として以下に示す触媒50mgを懸濁した溶液をオートクレーブに入れ、150℃で24時間水熱処理した。
-触媒-
・0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_0.1M HSO
・0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_0.5M HSO
・1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_1M HSO
・市販の-SOH基含有触媒用イオン交換樹脂[アンバーリスト(Amberlyst)15、オルガノ株式会社製]
・1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックの酸基の量に対応する硫酸(4.4mmol HSO
(糖の生成量の測定)
糖の生成量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて測定した。測定条件について、一般移動相は0.005N硫酸、カラムの流量は0.6mL/分、温度は60℃、測定時間は45分であった。この結果を図6に示す。
この結果、グルコース、キシロース、及びセロビオースなどの糖の生成量が、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合に増加することが示され、特に0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合に糖の生成量が顕著に増加することが示された。
他方、グリセロール、酢酸、及びエタノールなどの糖以外の副産物は、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合に減少することが示され、特に0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合に上記副産物の生成量が顕著に減少することが示された。
(セルロースから糖への触媒効率)
図7は、前記触媒を用いてセルロースを前記条件で水熱処理した場合における、セルロースから糖及び副産物への変化率を示すグラフである。
この結果、液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合に、セルロースから糖への変化率が高いことが示され、特に0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合に糖への変化率が顕著に高くなることが示された。
具体的には、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合、セルロースから糖への変化率は、市販の-SOH基含有触媒用イオン交換樹脂(Amberlyst 15、オルガノ株式会社製)と同等で約10分子%であることが示された。
これに対し、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合、セルロースから糖への変化率は、約30分子%であり、市販の-SOH基含有触媒用イオン交換樹脂を用いた場合の約3倍の変換効率を有することが示された。
更に、1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合、セルロースから糖への変化率は、約40分子%であり、市販の-SOH基含有触媒用イオン交換樹脂を用いた場合の約4倍の変換効率を有することが示された。
なお、1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックの酸基の量に対応する4.4mmol HSOを触媒として用いた場合、セルロースから糖への変化率は1分子%程度であり、変換効率が非常に低いことが示された。
図8は、図7に示された変化率を100%とした場合における生成物の内訳を選択性(%)として示したグラフである。
この結果、市販の-SOH基含有触媒用イオン交換樹脂、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合にグルコースの選択性が非常に高い(約80%)ことが示された。
0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックにおいてもグルコースの選択性は高い(約50%)ことが示された。
このように、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック、特に0.1M以上、好ましくは0.5M~1Mの硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックは、触媒活性の観点から、セルロースの糖化に使用するための固体酸触媒として優れた効果を有することが示された。
(水熱処理後の溶液中の硫酸濃度)
純水5mlに、48時間ボールミル処理したセルロース45mg、及び触媒として以下に示す触媒50mgを懸濁した溶液をオートクレーブに入れ、150℃で24時間水熱処理した後の溶液(以下「水熱処理溶液」という。)中の硫酸濃度をイオン交換クロマトグラフィで測定した。イオン交換水はp-ヒドロキシ安息酸1.105g, ビストリス0.670g、ホウさん3.092gを1L純水で添加し準備した。測定条件はカラムの流量は1.2mL/分、温度は40℃、測定時間は20分で行った。
-触媒-
・0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.1M HSO
・0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.5M HSO
・1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 1M HSO
・市販の-SOH基含有触媒用イオン交換樹脂(Amberlyst 15、オルガノ株式会社製)
この結果を図9及び下記表5に示す。
Figure 0007038991000005
この結果、表5に記載しているように、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを用いた水熱処理溶液には0.60%の硫酸イオン(SO 2-)が溶出し、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを用いた水熱処理溶液には1.30%の硫酸イオンが溶出し、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを用いた水熱処理溶液には2.30%の硫酸イオンが溶出することが示された。
このように、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックは、水熱処理溶液に溶出する硫酸イオンが非常に低いことから、固体触媒としての再利用効率が高い。また、水熱処理溶液に溶出する硫酸イオンが非常に低いことから、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを用いた水熱処理溶液の処理が容易であり、環境低負荷型の水熱処理が実現される。
このように、0.1M以上、好ましくは0.5M~1Mの硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックは、再利用能の観点から、セルロースの糖化に使用するための固体酸触媒として優れた効果を有することが示された。
これに対し、表5に記載しているように、Amberlyst 15の水熱処理溶液におけるSO 2-の溶出率は、100%<であることが示された(図9にはピークが大きすぎるため図示せず。)。これは、150℃の水熱条件下により、Amberlyst 15が全て溶解したことに起因する。従って、Amberlyst 15は、150℃の水熱処理を含むセルロースの糖化における固体酸触媒として機能し得ないことが示された。
(固体酸触媒としての再利用能)
硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックの固体酸触媒としての再利用能を調べた。
触媒として0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP_0.5M HSO)を使用して、第一回目の水熱処理溶液を回収した(「1st run」に使用)。この水熱処理溶液から前記カーボンブラックを回収し、第一回目と同じ条件で第二回目の水熱処理を行い、水熱処理溶液を回収した(「2nd run」に使用)。更に、この水熱処理溶液から前記カーボンブラックを回収し、第一回目と同じ条件で第三回目の水熱処理を行い、水熱処理溶液を回収した(「3rd run」に使用)。
上記のように、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを用いて得られた水熱処理溶液に含まれる成分をHPLCで検出した。HPLCの測定条件は、一般移動相は0.005N硫酸、カラムの流量は0.6mL/分、温度は60℃、測定時間は45分とした。
この結果を図10Aに示す。0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックは、水熱処理1回目~3回目にわたり、セルロースから糖を生成する触媒活性が同等であることが示された。すなわち、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックのセルロースから糖を生成する触媒活性は、少なくとも3回以上ほとんど低下しないことが示された。
また、触媒として1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを用いて得られた水熱処理溶液に含まれる成分を、上記と同じ条件HPLCで検出した。
この結果を図10Bに示す。1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックについても、水熱処理1回目~3回目にわたり、セルロースから糖を生成する触媒活性が同等であることが示された。すなわち、1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックのセルロースから糖を生成する触媒活性は、少なくとも3回以上ほとんど低下しないことが示された。
更に、1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合には、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合の水熱処理2回目及び3回目に存在したエタノールのピークがみられなかった。これは、1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合には、糖以外の副産物の量が少ないことを示し、セルロースから糖を生成するための固体酸触媒としてより優れていることを示す結果である。
(セルロースから糖への触媒効率)
図11は、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として1回~3回水熱処理した後における、セルロースから糖への変化率を示したグラフである。
この結果、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合は、糖(グルコース及びキシロース)への変化率が、水熱処理1回目~3回目にわたり、約23%~約25%であることが示された。
また、1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合は、糖(グルコース及びキシロース)への変化率が、水熱処理1回目~3回目にわたり、約37%~約35%であることが示された。
このように、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合は、いずれも、触媒活性及び再利用能の観点から、セルロースの糖化に使用するための固体酸触媒として優れた効果を有することが示された。
図12は、図11に示された変化率の全体を100%とした場合における生成物の内訳を選択性(%)として示したグラフである。これらはいずれも、グルコースの生成に高い選択性を有し、水熱処理1回目ではともにグルコースの選択性が80%程度であり、かつキシロースの選択性が10%程度であったことが示された。このような選択性は、水熱処理2回目及び3回目においても維持されていた。
従って、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラックを触媒として用いた場合は、いずれも、セルロースから単糖、特にグルコースを選択する選択性が顕著に高いことから、セルロースの糖化に使用するための固体酸触媒として優れた効果を有することが示された。
(水熱処理1回後~3回後の溶液中の硫酸濃度)
0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 0.5M HSO)及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したカーボンブラック(SP 1M HSO)を1回~3回水熱処理した水熱処理溶液中の硫酸濃度をイオン交換クロマトグラフィで測定した。イオン交換水はp-ヒドロキシ安息香酸1.105g、ビストリス0.670g、ホウ酸3.092gを1Lの純水に添加し調製した。測定条件はカラムの流量は1.2mL/分、温度は40℃、測定時間は20分で行った。
この結果を図13A及び図13B、並びに下記表6に示す。
Figure 0007038991000006
<炭素材料がCSCNT(cup-stacked carbon nanotube)である場合の比較例>
炭素材料の結晶性が、セルロースから糖を生成する触媒活性に及ぼす影響を調べるために、炭素材料をCSCNTとしてカーボンブラックと同様に液中プラズマ処理した試料を作製した。液中プラズマ処理は、前記「<酸基含有カーボンブラック>」の「(液中プラズマ処理)」の項に記載の手順に従い、炭素源としてCSCNT(株式会社名城ナノカーボン製、型番:EC1.0)を使用して、行った。
(表面形態)
液中プラズマ処理していないCSCNT、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNTのそれぞれについて、前記「<酸基含有カーボンブラック>」の「(表面形態)」の項に記載の手順に従い、表面形態を観察した。その結果を図14A~14Dに示す。
図14A~Dは細長いチューブの形で、直径は約50nmである。また、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した場合としない場合において、CSCNTに形態上の変化はみられなかった。
(酸基及び官能基の存在量)
液中プラズマ処理していないCSCNT、0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT、0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT、及び1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNTのそれぞれについて、CSCNTの表面に存在する酸基の合計量、スルホ基(HSO基)の量、並びにカルボキシル基(COOH基)及びヒドロキシ基(OH基)の合計量を測定した。
上記酸基及び官能基の測定は、酸-塩基滴定測定により行った。酸基の合計量は、以下のように求めた。0.06gのカーボンブラックを30mlの0.01MNaOH溶液に加え、4時間、800rpmで循環させ、濾過した。濾過した溶液に対して、200μlのpH指示薬(フェノールフタレイン)を添加し、0.01M HClで滴定した。濾過した溶液の色がピンクから透明色に変化させるために必要となる0.01M HClの溶液量を計測した。酸基の合計量は、[(0.01×NaOHの容量(30ml)-0.01×HClの容量(ml))/カーボンブラックの重量(g)]から計算した。
スルホ基(HSO基)の量の測定は、以下のように求めた。0.06gのカーボンブラックを30mlの0.01M NaCl溶液に加え、4時間、800rpmで循環させ、濾過した。濾過した溶液に対して、200μlのpH指示薬(フェノールフタレイン)を添加し、0.01M NaOHで滴定した。濾過した溶液を透明からピンク色に変化させるために必要となる0.01M HClの溶液量を計測した。スルホ基(HSO基)の量は(0.01×NaOHの容量(ml)/カーボンブラックの重量(g))から計算した。
カルボキシル基及びヒドロキシ基の合計量は、酸基の合計量-スルホ基(HSO基)の量で計算した。
結果を表7に示す。
Figure 0007038991000007
この結果、0.5M以上の硫酸水溶液中で液中プラズマ処理することで、スルホ基(HSO基)がCSCNTの表面に存在するようになり、かつ、硫酸の濃度依存的にスルホ基の存在量が高くなっていることが示された。
また、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理することで、酸基、並びにカルボキシル基(COOH基)及びヒドロキシ基(OH基)の存在量が、硫酸の濃度依存的に増加していることが示された。
(セルロースから糖への触媒効率)
純水5mlに、48時間ボールミル処理したセルロース45mg、及び触媒として以下に示す触媒50mgを懸濁した溶液をオートクレーブに入れ、150℃で24時間水熱処理した。
-触媒-
・液中プラズマ処理していないCSCNT(未処理CSCNT)
・0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT(0.1M HSOCNT)
・0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT(0.5M HSOCNT)
・1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNT(1M HSOCNT)
(糖の生成量の測定)
糖の生成量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて測定した。測定条件について、一般移動相は0.005N硫酸、カラムの流量は0.6mL/分、温度は60℃、測定時間は45分であった。この結果を図15に示す。
この結果、硫酸水溶液中で液中プラズマ処理したCSCNTでは、硫酸水溶液の濃度依存的に、糖の生成量が増加していることが示された。
(炭素材料がカーボンブラックである場合と、CSCNTである場合との、触媒効率の比較)
図16には、炭素材料としてカーボンブラックを使用して1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒(SP_1M CB)、炭素材料としてCSCNTを使用して0.1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒(0.1M_CSCNT)、炭素材料としてCSCNTを使用して0.5M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒(0.5M_CSCNT)、炭素材料としてCSCNTを使用して1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒(1M_CSCNT)、及び液中プラズマ処理していないCSCNT(CSCNT)を触媒として用いて、前記条件で水熱処理した場合における、セルロースから糖への変化率を示したグラフである。
この結果、炭素材料としてカーボンブラックを使用して1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒では、セルロースからグルコース及びキシロースを含む糖への変化率が37分子%程度であったのに対し、炭素材料としてCSCNTを使用して硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒では、セルロースからグルコース及びキシロースを含む糖への変化率が2分子%~4分子%程度であったことが示された。
すなわち、炭素材料としてカーボンブラックを使用して硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒は、炭素材料としてCSCNTを使用して硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒よりも、セルロースから糖への触媒効率が約10倍高いことが示された。このように、炭素材料としてカーボンブラックを使用して硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒は、セルロースの糖化に使用するための固体酸触媒として、非常に優れていることが示された。
また、本開示の固体酸触媒の炭素材料には、結晶性のCSCNTよりも、アモルファス性のカーボンブラックを用いた場合に、触媒性能がより高いことが示された。
図17には、セルロースからの分解生成物を成分ごとに示したグラフである。炭素材料としてカーボンブラックを使用して1M硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒では、グルコース及びキシロースを含む糖の選択性が約90%であったのに対し、炭素材料としてCSCNTを使用して硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒では、約約35%~60%であったことが示された。
すなわち、炭素材料としてカーボンブラックを使用して硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒は、炭素材料としてCSCNTを使用して硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒よりも、セルロースを分解した場合の糖への選択性が約1.5倍~3倍高いことが示された。このように、炭素材料としてカーボンブラックを使用して硫酸水溶液中で液中プラズマ処理した固体酸触媒は、セルロースの糖化に使用するための固体酸触媒として、非常に優れていることが示された。
また、本開示の固体酸触媒の炭素材料には、結晶性のCSCNTよりも、アモルファス性のカーボンブラックを用いた場合に、触媒性能がより高いことが示された。
本開示の酸基含有アモルファスカーボンは、好ましくは、セルロースの糖化に使用するための固体酸触媒として利用できる。

Claims (4)

  1. アモルファスカーボン及びスルホ基を有する酸を含む水性溶液を液中プラズマで処理する工程を含む、スルホ基含有アモルファスカーボンの製造方法。
  2. 前記アモルファスカーボンが、カーボンブラック、木炭、活性炭、煙炭、コークス、及びセルロース系バイオマスを炭化させた炭化物からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のスルホ基含有アモルファスカーボンの製造方法。
  3. 前記水性溶液中の前記スルホ基を有する酸の濃度が0.1M~5Mである、請求項1又は請求項2に記載のスルホ基含有アモルファスカーボンの製造方法。
  4. 前記スルホ基を有する酸が硫酸である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のスルホ基含有アモルファスカーボンの製造方法。
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