JP7037807B2 - 食肉目動物の癌検出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、食肉目動物において癌を検出する方法に関する。
近年、イヌ、ネコをはじめとする愛玩動物の高齢化に伴って癌を発症する動物が増加傾向にある。ヒトと同様に、癌を早期に発見できれば、外科療法、放射線療法、抗癌剤療法など様々な治療を選択でき、一般的に早期発見ほど治療後の予後は良好であることが多い。
しかし、動物はヒトと異なり些細な症状を訴えることは困難である。飼い主が動物の症状を確認できたとしても、獣医師において癌と癌以外の疾患とを区別することは容易ではない場合が多い。例えば、尿路上皮癌は、膀胱炎などの様々な尿路疾患の症状と同様の症状を呈することがある。このような症状が認められた場合、通常、対象動物に対してX線検査や超音波検査を行うが、尿路上皮癌等の最終診断は細胞診の検査所見によらなければならなかった。このような背景のもと、尿試料を用いたイヌの悪性腫瘍の診断方法が提案されている(特許文献1)。
特表2016-537031号公報
本発明は、食肉目動物において癌を検出する新規な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは今般、イヌの尿沈渣細胞のHER2遺伝子のコピー数を指標にすることにより、膀胱癌の存在を検出できることを見出した。本発明者らはまた、この検出手法は、HER2タンパク質の免疫組織化学の結果と相関しないこと、すなわち、免疫組織化学では見つけることができない癌を発見できることを見出した。本発明者らはまた、BRAF遺伝子に変異がない症例において膀胱癌の存在を検出できること、すなわち、従来の遺伝子変異検査では見つけることができない癌を発見できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]被験動物の尿試料から得られた細胞におけるHER2遺伝子のコピー数を測定する工程を含んでなる、食肉目動物において癌を検出する方法。
[2]前記癌が、尿路上皮癌または前立腺癌である、上記[1]に記載の方法。
[3]前記尿路上皮癌が、膀胱癌、尿管癌、尿道癌または腎盂癌である、上記[2]に記載の方法。
[4]前記尿試料から得られた細胞が、尿沈渣細胞である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]HER2遺伝子のコピー数の測定をPCR法により実施する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]被験動物のHER2遺伝子のコピー数の対照遺伝子のコピー数に対する比率(コピー数比率)が、健常食肉目動物のコピー数比率(カットオフ値)を上回る場合に、被験動物に癌が存在することが示される、上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記カットオフ値が、下記式:
カットオフ値=(健常食肉目動物のコピー数比率の平均値)+2×(健常食肉目動物のコピー数比率の標準偏差)
により算出される、上記[6]に記載の方法。
[8]前記食肉目動物が、イヌ科動物またはネコ科動物である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]他の遺伝子変異検査と組み合わせて実施される、上記[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記他の遺伝子変異検査が、BRAF遺伝子変異を検出する検査である、上記[9]に記載の方法。
[11]食肉目動物の癌の診断方法である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
本発明の方法は、イエイヌ、イエネコなどの食肉目動物において癌を非侵襲的に検出できる点で有利である。
図1は、例2における健常犬、膀胱ポリープ患犬および膀胱癌患犬の膀胱組織におけるHER2遺伝子コピー数変化を示すグラフである。 図2は、例3における健常犬、対照疾患(膀胱炎、膀胱結石、膀胱ポリープ)患犬および膀胱癌患犬の尿沈渣細胞におけるHER2遺伝子コピー数変化を示すグラフである。 図3は、例4における尿沈渣細胞HER2遺伝子コピー数変化と膀胱癌組織HER2遺伝子コピー数変化との相関関係を示すグラフである。 図4は、例5における尿沈渣細胞HER2遺伝子コピー数変化と膀胱癌組織HER2タンパク過剰発現との相関関係を示すグラフである。 図5は、例6における尿沈渣細胞HER2遺伝子コピー数変化とBRAF遺伝子変異との相関関係を示すグラフである。
発明の具体的説明
本発明の方法は食肉目動物に対して実施することができる。食肉目は、別名:ネコ目とも呼ばれ、イヌ亜目とネコ亜目に分類される。イヌ亜目に属する動物としてはイヌ科動物(例えば、イエイヌ)が挙げられ、ネコ亜目に属する動物としてはネコ科動物(例えば、イエネコ)が挙げられる。なお、本明細書において、「イエイヌ」と「犬」は同義である。
本発明の方法により検出できる癌としては、尿路上皮癌および前立腺癌が挙げられる。ここで、尿路上皮癌は、移行上皮癌と同義であり、例えば、膀胱癌、尿管癌、尿道癌および腎盂癌が挙げられる。
本発明の方法は、被験動物の尿試料から得られた細胞におけるHER2遺伝子のコピー数を測定することにより実施することができる。本発明の方法では、後述のように、HER2遺伝子のコピー数の対照遺伝子のコピー数に対する比率を算出するため、被験動物の尿試料から得られた細胞における対照遺伝子のコピー数の測定も合わせて実施することができる。
HER2遺伝子および対照遺伝子のコピー数の測定は、PCR法、次世代配列決定法、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)法、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法などの公知の方法により行うことができるが、高感度検出の観点からPCR法が好ましく、さらに迅速かつ簡便な検出の観点からデジタルPCRおよびリアルタイムPCRがより好ましい。特に、デジタルPCRおよびリアルタイムPCRは、被験動物から採取した試料について、HER2遺伝子および対照遺伝子のコピー数を同時に測定することができ、容易に比率を算出することができる点で有利である。デジタルPCRおよびリアルタイムPCRは、いずれも市販の装置、試薬およびキット等を使用して実施することができる。HER2遺伝子および対照遺伝子のコピー数の測定に当たって必要となるプローブやプライマーは、後述の公知の配列情報を元に設計することができる。
本発明の方法において、癌検出の指標となるHER2遺伝子は、検査対象となる食肉目動物のHER2遺伝子とすることができる。HER2遺伝子の塩基配列は本技術分野において周知であり、例えば、イエイヌのHER2遺伝子の塩基配列は、NCBIにGene ID:403883 (ERBB2 erb-b2 receptor tyrosine kinase 2 [Canis lupus familiaris (dog)])として登録されており、これを利用することができる。また、イエネコのHER2遺伝子の塩基配列は、NCBIにGene ID:751824 (ERBB2 erb-b2 receptor tyrosine kinase 2 [Felis catus (domestic cat)])として登録されており、これを利用することができる。
対照遺伝子は、癌(特に、尿路上皮癌および前立腺癌)の存在によってもコピー数が変動しない遺伝子あるいは染色体またはその一領域を選択することができ、例えば、CFA8(イエイヌの染色体8)の一領域(例えば、Shapiro SG et al., Chromosome Res. 2015 Jun;23(2):311-331参照)が挙げられる。対照遺伝子についても、NCBIなどの公知のデータベースに登録された塩基配列を利用することができる。
本発明の方法は、HER2遺伝子および対照遺伝子のコピー数の測定に先立って、被験動物の尿試料を採取する工程と、採取した尿試料から細胞を採取する工程を含んでいてもよい。尿試料から細胞を採取する工程は、遠心分離などの公知の手段により実施することができ、このようにして得られた尿沈渣細胞について遺伝子コピー数の測定を実施することができる。
本発明の方法においては、被験動物のHER2遺伝子のコピー数の対照遺伝子のコピー数に対する比率(以下、単に「コピー数比率」ということがある)が、健常食肉目動物のコピー数比率(以下、単に「カットオフ値」ということがある)を上回る場合に、被験動物に癌が存在すること、あるいは癌が存在する可能性が高いこと(すなわち、陽性判定)が示される。本発明の方法は、被験動物のHER2遺伝子および対照遺伝子のコピー数の測定の後に、コピー数比率を算出する工程と、該比率がカットオフ値を上回る場合に被験動物に癌が存在すると、あるいは癌が存在する可能性が高いと判定する工程を含んでいてもよい。
ここで、健常食肉目動物は、癌や癌以外の泌尿器系の疾患を有していない食肉目動物を意味する。また、健常食肉目動物は、被験動物と同じ種とすることが望ましく、例えば、イエイヌを被験動物とする場合には、健常食肉目動物としてはイエイヌを選択することができる。
本発明の方法の実施に当たっては、予め健常食肉目動物の尿試料から得られた細胞におけるHER2遺伝子のコピー数と対照遺伝子のコピー数とを測定しておき、カットオフ値を準備した上で上記判定工程を実施することができる。すなわち、本発明の方法は、健常食肉目動物の尿試料から得られた細胞におけるHER2遺伝子のコピー数と対照遺伝子のコピー数とを測定し、健常食肉目動物のコピー数比率を算出する工程をさらに含んでいてもよい。
本発明の方法においては、上記カットオフ値は、健常食肉目動物から得られたコピー数比率の平均値とすることができる。本発明の方法においてはまた、上記カットオフ値は、下記式:
カットオフ値=(健常食肉目動物のコピー数比率の平均値)+k×(健常食肉目動物のコピー数比率の標準偏差)
(上記式中、kは0~3の定数であり、好ましくはk=1~3であり、特に2とすることができる。)
により算出される値とすることができる。上記のいずれの場合も、複数の健常食肉目動物から得られたコピー数比率を算出に用いることができる。また、標準偏差は公知の方法に従って算出することができる。被験動物がイヌ科動物(特に、イエイヌ)であり、対照遺伝子がCFA8(イエイヌの染色体8)の一領域である場合には、上記式により算出されるカットオフ値は1.1とすることができる。
後記実施例(例3)に示されるように、本発明の方法を正常動物、尿疾患動物および癌羅患動物に実施した場合、コピー数比率が特定値を超えた検査対象動物に占める、癌羅患動物の割合(特異度)が非常に高いという結果が得られた。すなわち、本発明の方法は、高い精度で検査対象動物の癌を検出できる点で有利である。
本発明の方法は、検査対象動物における癌の存在を検出することができる。従って、本発明の方法は、癌の診断に補助的に用いることができ、検査対象動物が癌に罹っているか否かの判断は、場合によっては他の検査所見(例えば、X線検査、超音波検査、他の遺伝子検査、細胞診)と組み合わせて、最終的には獣医師が行うことができる。
本発明の方法と組み合わせることができる他の遺伝子検査としては、BRAF遺伝子変異検査(例えば、Mochizuki et al., PLoS ONE, 10(12):e0144170(2015)参照)が挙げられる。本発明の方法とBRAF遺伝子変異検査方法を併用した場合、本発明の方法およびBRAF遺伝子変異検査方法のいずれかまたは両方で陽性判定となった場合には、検査対象動物に癌が存在すると、あるいは癌が存在する可能性が高いと判定することができる。後記実施例(例6)に示されるように、BRAF遺伝子変異検査法では癌羅患動物であっても遺伝子変異が陰性である場合があるが、本発明の方法ではBRAF遺伝子変異検査法で陰性判定であった癌羅患動物を陽性判定することが可能である。すなわち、本発明の方法は、他の遺伝子検査法と組み合わせることによって、より精度高く癌を検出できる点で有利である。
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
例1:膀胱癌組織におけるHER2タンパク過剰発現
(1)膀胱癌組織サンプルの調製
膀胱癌患犬(n=23)から膀胱癌組織を採取した。膀胱癌組織をホルマリンで固定し、パラフィン包埋後、常温で保存した。
(2)HER2の免疫組織化学
上記(1)で調製したパラフィン包埋した膀胱癌組織から4μmの薄切スライド標本を作製した。各スライドを脱パラフィン処理後、10mMのクエン酸バッファー(pH6.0)に浸漬し、121℃で5分間オートクレーブ処理することで抗原賦活した。続いて、REAL Peroxidase-Blocking Solution(Dako社製)を用いて室温で10分間処理して内因性ペルオキシダーゼを不活化した後、5%スキムミルクを含むTris-buffered saline with 0.1% Tween 20(TBST)により室温で60分間ブロッキング処理を行った。次いで、一次抗体としてrabbit polyclonal anti-HER2 antibody(100倍希釈、Dako社製)を添加し37℃で40分間静置した。スライドをTBSTで3回洗浄し、EnVision polymer reagent for rabbit(Dako社製)と37℃で40分間反応させた。TBSで3回洗浄後、四塩酸3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)を用いて反応産物を可視化した。以下の染色強度スコアの判定基準に従って、HER2タンパク量を評価した。
<免疫組織化学法の判定基準>
スコア0:細胞膜に陽性染色なし(細胞質に限局する陽性染色は判定対象外)
スコア1:弱い不完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞>5%
スコア2:強いが不完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞>10%
スコア3:強い完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞>10%
スコア0および1に該当する症例をHER2タンパクを過剰に発現していないと判断した。また、スコア2および3に該当する症例をHER2タンパクを過剰に発現していると判断し、全膀胱癌患犬数に対するHER2タンパクを過剰発現する膀胱癌患犬の比率(スコア2および3に該当する膀胱癌患犬数/全膀胱癌患犬数)を算出した。
(3)結果
スコア2およびスコア3に該当する膀胱癌患犬数は14匹であり、HER2タンパクを過剰発現する膀胱癌患犬の比率は61%であったことから、膀胱癌であってもHER2タンパクを過剰に発現しない症例が半数近く存在することが確認された。
例2:膀胱組織のHER2遺伝子コピー数変化
(1)組織サンプルの調製
膀胱癌患犬(n=36)、膀胱ポリープ患犬(n=8)および健常犬(n=39)から膀胱組織を採取した以外は例1(1)の記載に従って実施した。なお、膀胱ポリープは対照疾患として扱った。
(2)DNA抽出
QIAmp DNA FFPE Tissue Kit(キアゲン社製)を用いて、上記(1)で調製した膀胱組織サンプルからDNAを抽出した。抽出したDNAは-20℃で冷凍保存した。
(3)デジタルPCRによるHER2遺伝子コピー数の定量
HER2遺伝子およびコントロール遺伝子であるCFA8のプライマー配列およびTaqMan MGBプローブをPrimer Express Software(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて作製した。HER2遺伝子のプライマー配列およびプローブ配列は、Primer Express Software v3.0.1のアルゴリズムに基づいて設計した。具体的には、上記ソフトウェアの設計結果の中から、極端に各遺伝子の5’寄りまたは3’寄りの配列は避け、かつUCSC Blatサーチで相同性の高い配列を増幅しないような領域に設計した。CFA8のプライマー配列およびプローブ配列は、癌の存在によってもコピー数が変動しない領域が増幅されるように、Shapiro SG et al., Chromosome Res. 2015 Jun;23(2):311-331を参考にして設計した。各プライマーおよびプローブの配列は以下の通りである。
HER2遺伝子(増幅産物サイズ81bp)
フォワードプライマー:GTGGTGAGGCTGGTTTTCAGA(配列番号1)
リバースプライマー:CCTGTCCTCCCACCTCTTCAT(配列番号2)
プローブ(FAM標識):TAACCGCTAAGCAGTATGT(配列番号3)
CFA8(増幅産物サイズ81bp)
フォワードプライマー:TGCAGAGTTTGATTTGTTGTTTGAA(配列番号4)
リバースプライマー:TGGAAGAAGGTGCATTTTTCTGA(配列番号5)
プローブ(VIC標識):AATGCCTTTGACCAGTGGGTAGCC(配列番号6)
デジタルPCRは、QuantStudio 3D Digital PCR system(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて実施した。900nMの各プライマー、200nMの各プローブ、20ngの上記(2)で調製したDNAおよびQuantiStudio 3D Digital PCR Master Mix v2を含む反応液15μLを調製した。該反応液をQuantiStudio 3D Digital PCR 20K Chipにマウントして、反応液中のDNAをランダムにチップ上の20000個のウェル内に分配した。反応液をマウントしたチップをProFlex 2xFlat PCR Systemサーマルサイクラー(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にセットし、96℃10分→60℃2分および98℃30秒を39サイクル→60℃2分→10℃の反応条件でPCRを実施した。PCR反応後、チップをQuantStudio 3D Digital PCR Instrument(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に挿入し、HER2遺伝子およびCFA8のコピー数(コピー数/μL)の測定データを得た。得られたデータは、QuantStudio 3D AnalysisSuite version 3.1.2(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて解析した。
(4)結果
結果を図1に示す。
図1の結果より、カットオフ値が1.0を超えるとき、感度が33.3%であり、特異度が95.8%であった。また、膀胱組織のHER2遺伝子コピー数変化の測定により、膀胱癌患犬と健常犬とを有意に識別できることが確認された(p<0.0001)。
例3:尿沈渣細胞のHER2遺伝子コピー数変化
(1)尿沈渣細胞サンプルの調製
膀胱癌患犬(n=57)、膀胱炎患犬(n=16)、膀胱結石患犬(n=4)、膀胱ポリープ患犬(n=10)および健常犬(n=10)から尿を採取した。なお、膀胱炎患犬、膀胱結石患犬および膀胱ポリープ患犬を「対照疾患」とした。採取した尿は1500rpmで5分間遠心し、癌細胞を含む尿沈渣細胞を分離した。分離した尿沈渣細胞サンプルは-20℃で冷凍保存した。
(2)DNA抽出
上記(1)で調製した尿沈渣細胞サンプルからのDNA抽出は、例2(2)の記載に従って実施した。
(3)デジタルPCRによるHER2遺伝子コピー数の定量
上記(2)で調製したDNAについてHER2遺伝子コピー数の定量は、例2(3)の記載に従って実施した。
(4)結果
結果を図2に示す。
図2の結果より、カットオフ値が1.1を超えるとき、感度が33.3%であり、特異度が100%であった。また、尿沈渣細胞のHER2遺伝子コピー数変化の測定により、膀胱癌患犬と、健常犬または対照疾患患犬とを有意に識別できることが確認された(p<0.05)。
例4:尿沈渣細胞HER2遺伝子コピー数変化と腫瘍組織HER2遺伝子コピー数変化との相関関係
(1)尿沈渣細胞サンプルの調製
尿沈渣細胞サンプルの調製は、膀胱癌患犬(n=12)から尿を採取した以外は例3(1)の記載に従って実施した。
(2)膀胱癌組織サンプルの調製
上記(1)の膀胱癌患犬(n=12)から膀胱癌組織を採取した以外は例1(1)の記載に従って実施した。
(3)DNA抽出
上記(1)で調製した尿沈渣細胞サンプルおよび上記(2)で調製した膀胱癌組織サンプルからのDNA抽出は、例2(2)の記載に従って実施した。
(4)デジタルPCRによるHER2遺伝子コピー数の定量
上記(3)で調製した各DNAについてHER2遺伝子コピー数の定量は、例2(3)の記載に従って実施した。
(5)結果
結果を図3に示す。
図3の結果より、膀胱癌患犬同一症例の尿中膀胱癌細胞HER2遺伝子コピー数変化と膀胱癌組織HER2遺伝子コピー数変化との間に有意に正の相関関係が認められることが確認された(p<0.05)。
例5:尿沈渣細胞のHER2遺伝子コピー数変化と膀胱癌組織HER2タンパク発現との相関関係
(1)尿沈渣細胞サンプルの調製
尿沈渣細胞サンプルの調製は、膀胱癌患犬(n=16)から尿を採取した以外は例3(1)の記載に従って実施した。
(2)DNA抽出
上記(1)で調製した尿沈渣細胞サンプルからのDNA抽出は、例2(2)の記載に従って実施した。
(3)デジタルPCRによるHER2遺伝子コピー数の定量
上記(2)で調製したDNAについてHER2遺伝子コピー数の定量は、例2(3)の記載に従って実施した。
(4)膀胱癌組織サンプルの調製
膀胱癌組織サンプルの調製は、上記(1)の膀胱癌患犬(n=16)から膀胱癌組織を採取した以外は、例1(1)の記載に従って実施した。
(5)HER2の免疫組織化学
上記(4)で調製した膀胱癌組織サンプルのHER2免疫組織化学は、例1(2)の記載に従って実施した。HER2タンパク発現量がスコア0および1に該当する症例をHER2タンパク過剰発現が陰性であると判断し、スコア2および3に該当する症例をHER2タンパク過剰発現が陽性であると判断した。
(6)結果
結果を図4に示す。
図4の結果より、膀胱癌組織HER2タンパク過剰発現の有無と尿中膀胱癌細胞HER2遺伝子コピー数変化との間には有意な相関関係が認められなかったことから、尿沈渣細胞のHER2遺伝子コピー数変化の測定により、HER2タンパク過剰発現では特定できないHER2遺伝子の異常を検出できることが確認された。
例6:尿沈渣細胞のHER2遺伝子コピー数変化とBRAF遺伝子変異との相関関係
(1)尿沈渣細胞サンプルの調製
例3(1)に記載の膀胱癌患犬(n=57)から採取した尿沈渣細胞サンプルを用いた。
(2)DNA抽出
例3(2)に記載の上記(1)の尿沈渣細胞サンプルから抽出したDNAを用いた。
(3)デジタルPCRによるHER2遺伝子コピー数の定量
例3(3)に記載の上記(2)で調製したDNAを用いて定量したHER2遺伝子コピー数の値を用いた。
(4)BRAF遺伝子変異の解析
デジタルPCRによるBRAF遺伝子変異を持つ腫瘍細胞の検出は、Mochizuki et al., PLoS ONE, 10(12):e0144170に記載の手順に従って実施した。
(5)結果
結果を図5に示す。
図5の結果より、BRAF遺伝子変異が陰性であっても、尿中膀胱癌細胞のHER2遺伝子コピー数変化が検出されたことから、尿沈渣細胞のHER2コピー数変化の測定により、BRAF遺伝子変異による尿路上皮癌および前立腺癌の診断精度を高められることが示された。

Claims (9)

  1. 被験動物の尿試料から得られた細胞におけるHER2遺伝子のコピー数を測定する工程を含んでなる、イヌ科動物において尿路上皮癌または前立腺癌を検出する方法。
  2. 前記尿路上皮癌が、膀胱癌、尿管癌、尿道癌または腎盂癌である、請求項に記載の方法。
  3. 前記尿試料から得られた細胞が、尿沈渣細胞である、請求項1または2に記載の方法。
  4. HER2遺伝子のコピー数の測定をPCR法により実施する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
  5. 被験動物のHER2遺伝子のコピー数の対照遺伝子のコピー数に対する比率(コピー数比率)が、健常イヌ科動物のコピー数比率(カットオフ値)を上回る場合に、被験動物に尿路上皮癌または前立腺癌が存在することが示される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記カットオフ値が、下記式:
    カットオフ値=(健常イヌ科動物のコピー数比率の平均値)+k×(健常イヌ科動物のコピー数比率の標準偏差)
    (上記式中、kは0~3の定数である。)
    により算出される、請求項に記載の方法。
  7. 他の遺伝子変異検査と組み合わせて実施される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記他の遺伝子変異検査が、BRAF遺伝子変異を検出する検査である、請求項に記載の方法。
  9. イヌ科動物の尿路上皮癌または前立腺癌の診断方法である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
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