以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としての複写機、2は複数(この場合4つ)の感光体5の表面を帯電させる帯電部、3は露光光Lを各感光体5上に照射する露光部、4は各感光体5上にトナー像(画像)を形成する現像部、6は感光体5上に形成されたトナー像が一次転写される一次転写部(中間転写ベルト)、7はトナー像を一次転写部6から用紙Pに転写する二次転写部(二次転写ローラ)、12~14は用紙Pが収納された給紙部(給紙カセット)、20は用紙P上の未定着画像を定着する定着装置、21は定着装置20に設けられた定着ローラ、22は定着装置20に設けられた加圧ローラ、30は用紙Pを搬送経路に沿って搬送する搬送装置、31は用紙Pを搬送しながら用紙Pの姿勢、位置を補正する挟持ローラ対(補正ローラ)を示す。挟持ローラ対31は、補正ローラとしての機能に加え、二次転写部7への用紙Pの搬送タイミングを調整する(搬送速度を変更する)タイミングローラとしての機能を有するものであってもよい。また、挟持ローラ対31の搬送方向下流側に、別途タイミングローラを配置してもよい。
図1及び図2を参照して、複写機1における通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、帯電部2によって各感光体5の表面が所定の極性に一様に帯電される(帯電工程)。次に、読取装置又はコンピュータ等からから得られた画像情報に基づいて露光部3から各感光体5の表面に露光光Lが照射され、各感光体5の表面に静電潜像が形成される(露光工程)。そして、現像部4から各感光体5の表面に異なる色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーが供給され、各色のトナー像が形成される(現像工程)。
その後、各感光体5上に形成された各色のトナー像は、一次転写部6に重なり合うように一次転写されてカラー画像が形成された後、二次転写部7において用紙P上に二次転写される。
用紙Pは、手動又は自動で選択された給紙部12~14から搬送されたものである。例えば、複写機1内に配置されている給紙部12,13の1つが選択された場合、給紙ローラ41によって用紙Pが搬送経路の第1曲部200(図2参照)に向けて給送される。一方、複写機1外に配置されている給紙部14が選択された場合は、給紙ローラ41によって用紙Pが搬送経路の第2曲部300(図2参照)に向けて給送される。第1曲部200と第2曲部300とは、合流部Xで合流して搬送経路の第3曲部400に連続している。このため、いずれの給紙部12~14から給送された用紙Pも合流部Xを通過して第3曲部400に至る。その後、用紙Pは、直線搬送経路500を通過して、整合部51を構成する挟持ローラ対31の位置に達する。そして、挟持ローラ対31によって用紙Pの幅方向と斜行方向との位置補正が行われ二次転写部7に向けて搬送される。
用紙Pは、二次転写部7でトナー画像が転写された後、定着装置20に搬送される。定着装置20に搬送された用紙Pは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間に送入され、熱と圧力が付与されることでトナー像が定着される。そして、用紙Pは、複写機1から排出される。
また、両面印刷を行う場合は、上記のように、帯電工程、露光工程、現像工程を経て用紙Pの片側の面(表側の面)にトナー画像が転写され、定着装置20によって定着処理が行われた後、用紙Pは複写機1から排出されずに反転搬送経路600(図1参照)へ搬送される。反転搬送経路600に搬送された用紙Pは、反転搬送経路600内でスイッチバック(搬送方向逆転)されて、第1曲部200、第3曲部400、直線搬送経路500を経て、再び二次転写部7へと搬送される。そして、帯電工程、露光工程、現像工程を経て形成された裏面用のトナー像が用紙Pに転写され、当該トナー像が定着装置20によって定着された後、用紙Pは複写機1から排出される。
以上、一連の画像形成プロセスについて説明したが、全ての感光体5うちのいずれか1つを選択して単色画像を形成したり、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
次に、本実施形態に係る搬送装置30について詳しく説明する。なお、以下の説明において、搬送経路における「搬送方向上流側」を「上流側」といい、「搬送方向下流側」を「下流側」という。
図3(a)は、挟持ローラ対31及びその周辺の平面図、図3(b)は、その側面図である。
図3に示すように、搬送装置30は、用紙Pの位置を検知する位置検知手段としての複数のCIS100~102と、用紙Pを搬送する搬送手段としての機能と用紙Pの位置を補正する位置補正手段としての機能を兼ねる挟持ローラ対31とを備える。複数のCIS100~102は、直線搬送経路500の上流側(図の右側)から順に、第1のCIS(第1位置検知手段)100、第2のCIS(第2位置検知手段)101、第3のCIS(第3位置検知手段)102と称することにする。第1のCIS100と第2のCIS101は、挟持ローラ対31よりも上流側であって、挟持ローラ対31の1つ上流側にある搬送手段としての搬送ローラ対44よりも下流側に配置されている。一方、第3のCIS102は、挟持ローラ対31よりも下流側であって、二次転写部7{図3(b)参照}よりも上流側に配置されている。また、各CIS100~102は、用紙Pの幅方向(搬送方向に直交する方向)に対してそれぞれ平行に配置されると共に、用紙Pの搬送方向に対してそれぞれの相対位置及び挟持ローラ対31等の周囲の部材との位置関係が予め定められている。
CISは、近年、装置の小型化を目的として、形状の小さいLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を光源に利用し、レンズを介してリニアセンサで画像を直接読み取るコンタクト・イメージ・センサ(Contact Image Sensor)と呼ばれるものである。各CIS100~102は、用紙Pの幅方向に設けられた複数のラインセンサにより、用紙Pの幅方向の一端側の側端部Pa{図3(a)参照}を検知することが可能である。なお、位置検知手段は、CISに限らず、用紙Pの幅方向に沿って複数配置されるフォトセンサなど、用紙Pの側端部Paを検知できるものであればよい。
挟持ローラ対31は、幅方向の補正{図3(a)に示す幅方向の位置ずれαに対する補正}と斜行補正{図3(a)に示す斜行の位置ずれβに対する補正}との整合動作を行う整合部51として機能する。そのため、挟持ローラ対31は、軸方向中央位置に設けられた軸部104aを中心に図3(a)のW方向{斜行方向に対応する用紙搬送面(被搬送媒体搬送面)内での回転方向}に回転可能に構成されていると共に、同図のS方向{用紙幅方向(被搬送媒体幅方向)に対応する方向}に移動可能に構成されている。なお、挟持ローラ対31は、軸方向の端部側の位置を中心にしてW方向に回転するように構成されていてもよい。
図4に、挟持ローラ対31及びこれを駆動させる駆動機構の構成を示す。
図4に示すように、挟持ローラ対31は、軸方向に分割された複数のローラ部を有するローラ対であって、駆動手段(第1駆動手段)としての第1駆動モータ61によって回転駆動される駆動ローラ31aと、駆動ローラ31aの回転駆動に従動して回転する従動ローラ31bとで構成されている。挟持ローラ対31は、用紙Pを挟持した状態で回転駆動することによって用紙Pを搬送する。なお、挟持ローラ対31は、軸方向に分割されずに軸方向に渡って連続して延在する1つのローラ部を有するローラ対であってもよい。
第1駆動モータ61は、搬送装置30のフレームに固定されている。第1駆動モータ61のモータ軸には駆動ギア61aが設けられ、駆動ギア61aは挟持ローラ対31の駆動ローラ31aと一緒に回転するフレーム側回転軸105のギア部105aと噛み合っている。これにより、第1駆動モータ61が駆動すると、その駆動力が駆動ギア61a、フレーム側回転軸105のギア部105aを介して挟持ローラ対31の駆動ローラ31aに伝達される。
フレーム側回転軸105は、挟持ローラ対31の図4のS方向(用紙幅方向に対応する方向)の移動に伴って同様にS方向に移動できるように、ベース部104の起立部104bによって移動可能に保持されている。フレーム側回転軸105のギア部105aは、フレーム側回転軸105がS方向に移動しても駆動ギア61aとの噛み合いが保持されるように、軸方向へ十分長く形成されている。
フレーム側回転軸105と挟持ローラ対31の駆動ローラ31aとは、カップリング106を介して駆動伝達可能に連結されている。カップリング106は、等速ジョイント、ユニバーサルジョイント等のカップリング(軸継ぎ手)で構成されている。これにより、挟持ローラ対31の図4のW方向(斜行方向に対応する用紙搬送面内での回転方向)の回転に伴ってフレーム側回転軸105に対する軸角度が変化しても、回転速度に変化が生じることがなく駆動力を伝達することができる。
挟持ローラ対31の駆動ローラ31a及び従動ローラ31bは、略矩形枠体状に形成された保持部材72によってそれぞれの軸回りに回転可能に保持されている。また、駆動ローラ31a及び従動ローラ31bは、それぞれ、保持部材72に対してS方向(軸方向)に移動可能に保持されている。
保持部材72は、搬送装置30(複写機1)のフレームの一部として機能するベース部104に対して、軸部104aを中心にしてW方向に回転可能に支持されている。さらに、ベース部104の幅方向一端側には、軸部104aを中心に保持部材72をW方向に回転駆動させる第2駆動手段としての第2駆動モータ107が設けられている。第2駆動モータ107のモータ軸107aの表面にはギア部が形成されており、このギア部が保持部材72の幅方向一端側に形成されたギア部72aと噛み合っている。これにより、第2駆動モータ107が正逆方向に回転駆動すると、保持部材72とこれに保持される挟持ローラ対31とが軸部104aを中心にしてW方向へ回転する。また、第2駆動モータ107のモータ軸107aには、公知のエンコーダが設けられていて、挟持ローラ対31の基準位置に対するW方向の回転量や正逆方向が間接的に検知されるように構成されている。また、保持部材72の一端側の支柱部72bとギア部72aとの間には十分な空隙が設けられていて、駆動ローラ31aと従動ローラ31bとが幅方向一端側にスライド移動しても、これらの回転軸がギア部72aに干渉しないように構成されている。
また、搬送装置30(複写機1)のフレームには、挟持ローラ対31をS方向に移動させるための第3駆動手段としての第3駆動モータ108が設けられている。第3駆動モータ108のモータ軸108aにはピニオンギアが形成されており、このピニオンギアはフレーム側回転軸105の軸方向他端側に設けられたラックギア部109と噛み合っている。ラックギア部109は、フレーム側回転軸105に対して相対的に回転可能に設けられ、フレーム側回転軸105が回転しても非回転でS方向にスライド移動できるように構成されている。
挟持ローラ対31の駆動ローラ31a及び従動ローラ31bは、これらが一緒にS方向へ移動できるように連結部材110を介して互いに連結されている。連結部材110は、カップリング106と保持部材72との間に配置され、駆動ローラ31a及び従動ローラ31bの各回転軸に設けられた止め輪111によって挟持されている。このような構成により、第3駆動モータ108が正逆方向に回転駆動すると、挟持ローラ対31がS方向に移動する。また、第3駆動モータ108のモータ軸108aには、公知のエンコーダが設けられていて、挟持ローラ対31の基準位置に対するS方向の移動量や正逆方向が間接的に検知されるように構成されている。
以下、図3、図5~図15を参照しつつ、用紙の位置を補正する補正動作について説明する。
給紙部から搬送装置30へ送り出された用紙Pは、搬送ローラ対44によってさらに下流側へ搬送され、第1のCIS100を通過する(図3)。そして、用紙Pの先端部Pbが第2のCIS101に到達すると(図5)、用紙Pの位置が検知される(これを、以下、「第1検知」という。)。そして、この第1検知の結果に基づいて、用紙Pの幅方向の位置ずれ量と斜行の位置ずれ量とが算出される。
具体的に、第1検知の結果に基づく用紙Pの幅方向の位置ずれ量の算出は、第2のCIS101によって検知された用紙Pの幅方向の位置(用紙Pの幅方向の側端部Paの位置)と、図10において搬送方向に平行な直線で示される搬送基準位置Kとを比較することで行われる。すなわち、これらの位置の間の幅方向の距離K1が、用紙Pの幅方向の位置ずれ量αとして算出される。
次に、用紙Pの斜行の位置ずれ量は、第1のCIS100及び第2のCIS101のそれぞれによって検知される用紙Pの幅方向の端部位置の差により算出することができる。つまり、図10に示すように、用紙Pの先端部Pbが第2のCIS101に到達した時点において、搬送基準位置Kからの幅方向の距離K1及び距離K2が、第1のCIS100及び第2のCIS101によって検知される。そして、第1のCIS100と第2のCIS101との間の搬送方向の距離M1が予め定められていることから、tanβ=(K1-K2)/M1により、用紙Pの搬送方向に対する斜行の位置ずれ量βが求められる。
以上のようにして得られた用紙Pの幅方向の位置ずれ量α及び斜行の位置ずれ量(斜行角)βに基づいて、挟持ローラ対31によって用紙Pの幅方向補正と斜行補正とが行われる(これを、以下、「第1補正」という。)。斜行補正の補正量は、斜行角βである。また、幅方向の補正量は、幅方向の位置ずれ量αと斜行角βに基づいて算出される。例えば、図11に示すように、斜行角βの斜行補正された用紙P'は、幅方向の位置ずれ量がαからα'に変化する。この位置ずれ量α'を算出し、これを挟持ローラ対31による幅方向の補正量α'とする(ただし、補正量α'は斜行角の補正をどの位置を基準に補正するかによって変化する。)。
ここで、挟持ローラ対31は、第1検知の前には図3(a)に示す基準位置に配置されている。そして、用紙Pが挟持ローラ対31へ搬送されてくるまでに、挟持ローラ対31は、第1補正による移動量の分だけ第1補正の方向とは逆方向へ移動する迎え動作を行う。具体的には、図12に示すように、挟持ローラ対31は、用紙Pを挟持する前に、軸部104aを中心にして矢印W1の方向へ角度βだけ回転すると共に、矢印S1の方向へ距離α'だけ平行移動する。これにより、軸部104aは軸部104a'の位置に移動する。このような迎え動作を、挟持ローラ対31は、第1検知後、挟持ローラ対31が用紙Pを挟持するまでに行う(図5)。
そして、用紙Pの先端部Pbが挟持ローラ対31に到達すると、挟持ローラ対31が用紙Pを挟持する(図6)。このとき、図6(b)に示すように、挟持ローラ対31の上流側にある搬送ローラ対44は互いに離間して、用紙Pを挟持しない状態になる。
図6(a)に示すように、第1補正が開始されると、挟持ローラ対31は、用紙Pを挟持して搬送しながら、第1検知結果から得られた用紙Pの位置ずれ量に基づいて、軸部104aを中心に矢印W2の方向へ回転することで用紙Pの斜行方向の位置を補正すると共に、矢印S2の方向へ平行移動することで用紙Pの幅方向の位置を補正する。以上により、挟持ローラ対31による第1補正が完了し、用紙Pの位置が補正される(図7)。
以上の第1補正までの制御フローを図13に示し、第1補正に関する制御部のブロック図を図14に示す。
図13に示すように、まず、第1のCIS100と第2のCIS101とが用紙Pを検知して(ステップN1)、用紙Pの幅方向の位置ずれ量α及び斜行の位置ずれ量βが算出される(ステップN2)。そして、算出された位置ずれ量α,βに基づいて、幅方向の補正量α'が算出され(ステップN3)、第1補正の補正量(斜行補正量β及び幅方向の補正量α')が決定される。
この補正量に基づいて、それぞれのエンコーダ(図14参照)によりエンコーダカウント数が算出される(ステップN4)。
そして、決定されたカウント数は、挟持ローラ対31を駆動させるためのコントローラに入力される。そして、入力されたカウント数に応じて、それぞれのモータドライバによって第2駆動モータ107及び第3駆動モータ108が駆動され、挟持ローラ対31が用紙搬送面内の回転方向(W方向)に回転したり、幅方向(S方向)に移動したりすることにより、迎え動作が行われる(ステップN5)。そして、挟持ローラ対31が用紙Pを挟持した後、各モータ107,108の駆動により、挟持ローラ対31が用紙Pを搬送しながら迎え動作とは反対方向に回転あるいは移動し、第1補正が行われる(ステップN6)。迎え動作及び第1補正の際は、エンコーダによって、時々刻々の挟持ローラ対31の位置情報がフィードバックされ、挟持ローラ対31が決められた移動量だけ移動するように制御がなされる。これにより、第1位置補正完了後の挟持ローラ対31の位置は、基準位置により近い状態となる。ただし、後述する第2補正により、基準位置に戻ってくるとは限らない。
このように、本実施形態では、第1のCIS100と第2のCIS101との検知結果から得られた用紙Pの位置ずれ量に基づいて用紙Pの位置補正(第1補正)を行っているが、当該補正のみでは、用紙Pに求められる位置精度に対して十分とはならない場合がある。
つまり、第1検知の後、用紙Pが挟持ローラ対31に挟持される際に挟持ローラ対31から用紙Pに力が加わることにより、用紙Pの位置にさらにずれが生じることがある。また、その後の挟持ローラ対31による用紙Pの位置補正や下流側への搬送時に、用紙Pの位置にずれが生じることも考えられる。さらに、第1補正時の補正の誤差なども考えられる。
そこで、本実施形態の搬送装置では、第1補正の後に、さらに用紙Pの位置を補正する第2補正を行っている。以下、第2補正について説明する。
上記第1補正後に、用紙Pの先端部Pbが第3のCIS102に到達すると(図8)、第3のCIS102及び第2のCIS101によって、用紙Pの位置が再度検知される(これを、以下、「第2検知」という。)。そして、この第2検知の結果に基づいて、用紙Pの位置ずれ量が算出される。
第2検知の結果に基づく用紙Pの位置ずれ量の算出は、上記第1検知の際と同様の方法で、用紙Pの搬送方向の上流側と下流側に設けられた2つのCISの検知結果に基づいて行われる。つまり、第3のCIS102によって得られた用紙Pの幅方向の位置(幅方向の側端部Paの位置)から幅方向の位置ずれ量αを求める。また、第2のCIS101及び第3のCIS102よって得られた用紙Pの幅方向の各位置と、これらのCIS101,102間の搬送方向距離とから、用紙Pの斜行の位置ずれ量を算出する(第2検知では、第1検知時の第1のCIS100に代わって第2のCIS101が、また、第1検知時の第2のCIS101に代わって第3のCIS102が、それぞれ用紙Pの位置を検知することになる。)。
そして、第2検知の結果により算出された用紙Pの位置ずれ量に基づき、挟持ローラ対31が、用紙Pを搬送しながら、図8(a)に示す矢印S3の方向へ移動し、軸部104aを中心にして矢印W3の方向へ回転することで第2補正が行われる。
図15に、第2補正の制御フローを示す。
第2補正では、まず、第2のCIS101及び第3のCIS102によって用紙Pが検知され(ステップN11)、第1補正と同様の方法で、用紙Pの位置ずれ量(幅方向の位置ずれ量及び斜行の位置ずれ量)が算出される(ステップN12)。そして、算出された位置ずれ量により補正量が算出され(ステップN13)、エンコーダカウント数が算出される(ステップN14)。そして、算出されたエンコーダカウント数に応じて、それぞれのモータドライバによって第2駆動モータ107及び第3駆動モータ108が駆動され、第2補正が行われる(ステップN15)。
第2補正では、補正開始後から、第2のCIS101及び第3のCIS102によって時々刻々の用紙Pの位置情報が検知される。そして、当該位置情報に基づいて用紙Pの位置ずれ量が算出されて制御部にフィードバックされ、用紙Pの位置補正量(エンコーダカウント数)が、時々刻々修正される。このフィードバック制御が行われることにより、第2補正の際に生じる用紙Pの位置ずれや、第2補正時の補正の誤差等を低減することが可能となり、より精度の高い補正を行うことができる。ただし、このフィードバック制御を行わず、最初に用紙Pの先端部が第3のCIS102に到達した時点において算出された補正量によって、第2補正を行ってもよい。
以上のように、第1補正及び第2補正が行われた用紙Pは、挟持ローラ対31によって二次転写部7に向けて搬送される。用紙Pが二次転写部7に到達すると(図9)、挟持ローラ対31が用紙Pから離間し、次の用紙Pの位置補正及び搬送に備えて、再び基準位置に戻る{図9(a)では、矢印S4方向への移動及び軸部104aを中心とする矢印W4方向への回転により基準位置に戻る}。
ところで、上記のように、搬送経路内で用紙を移動させて位置補正する搬送装置においては、位置補正の際に用紙が搬送ガイドや搬送ローラ対等の周辺部材に接触することで接触抵抗が発生する。そして、このような接触抵抗の影響により用紙が挟持ローラ対の補正動作に追従しにくくなることで、位置補正の精度が低下する虞がある。特に、本実施形態のように、挟持ローラ対31の上流側に曲部(第1~第3曲部200~400)がある構成においては(図2参照)、挟持ローラ対31による位置補正時に用紙の後端部が曲部の搬送ガイド等に強く接触するため、用紙の後端部に生じる接触抵抗が大きくなり、補正動作に対する用紙の追従性がますます低下すると考えられる。
そこで、本実施形態に係る搬送装置においては、用紙が周囲の部材に接触することによる接触抵抗を軽減する接触抵抗軽減手段を設けている。
以下、接触抵抗軽減手段について説明する。
図16は、接触抵抗軽減手段として球体を用いた構成を示す図である。
図16に示すように、本実施形態では、(挟持ローラ対31よりも上流側の)第3曲部400に、接触抵抗軽減手段として転がり部材である球体80を複数配置している。各球体80は、搬送される用紙をガイドするための上下方向に対向する搬送ガイド120a,120bのうち、下側の搬送ガイド120bから上方(搬送経路側)に突出するように配置されている。なお、下側の搬送ガイド120bよりも上方(搬送経路側)に突出する部分は、球体80の半分よりも少ない部分であり、球体80の中心は下側の搬送ガイド120bの上面(ガイド面)よりも下方(搬送経路側とは反対側)に配置されている。
また、各球体80は、下側の搬送ガイド120bの屈曲部(折り曲げられた箇所の頂点又は角部)121に対応する位置に配置されている。すなわち、各球体80は、下側の搬送ガイド120bの上面のうち、特に用紙が接触しそうな箇所に配置されている。
図17に示すように、下側の搬送ガイド120bの屈曲部121には、孔部122が形成されており、この孔部122から球体80が上方へ突出するように配置されている。また、本実施形態では、各球体80は、第3曲部400における幅方向中央位置(図17中の一点鎖線で示す位置)を基準に両側に対称位置に配置されている。
図18に示すように、球体80は、複数の支持球体82と一緒にハウジング81内に組み付けられ、これらが1つの球体ユニット83として構成されている。複数の支持球体82は、球体80よりも小径に形成されており、ハウジング81と球体80との間に収容されている。球体80は、回転可能な支持球体82によって支持されていることで、任意のあらゆる方向、すなわち用紙が搬送される搬送方向及びこれと交差する全方向に回転可能に構成されている。
このような球体80を搬送ガイド120bから突出するように設けていることで、図19に示すように、第3曲部400内に用紙Pが搬送され、(挟持ローラ対31によって)用紙Pの位置補正が行われる際、用紙Pが球体80に接触することで、用紙Pの幅方向や用紙搬送面内での回転方向の動きに追従して各球体80が回転する。これにより、用紙Pを円滑に移動させることができる。また、このとき用紙Pは球体80に対して点接触となるので、用紙Pが下側の搬送ガイド120bに対して面接触する場合に比べて、接触抵抗が小さくなる。このように、球体80によって、用紙Pの動きが円滑になると共に、用紙Pに生じる接触抵抗が小さくなることで、位置補正動作に対する用紙Pの追従性が向上し、位置補正をより高精度に行うことができるようになる。
球体80の配置や個数、直径は、搬送される用紙の種類や大きさ、搬送経路の曲率などに応じて適宜決定すればよい。本実施形態では、図17に示すように、球体80(図における手前側の球体80)を搬送ローラ対44の近傍に配置することで、種々の幅方向サイズの用紙に対して球体80が接触するようにしている。すなわち、球体80同士の幅方向間隔を広げ過ぎないように配置することで、特に幅方向に小さいサイズの用紙に対しても球体80を接触させることができるようにしている。
また、本実施形態では、搬送方向(図17中の矢印の方向)の下流側に配置された2つの球体80同士の方が、上流側に配置された2つの球体80同士よりも、幅方向間隔が広くなっている。このように、上流側と下流側とで球体80同士の幅方向間隔を異ならせることで、用紙に対して球体80が幅方向に異なる位置で接触することができるため、球体80によって用紙を安定して支持しやすくなる。なお、これに限らず、球体80同士の幅方向間隔を同じ間隔としてもよい。
本実施形態では、各球体80を第3曲部400のみに配置しているが、図20に示す構成のように、球体80を第2曲部300に配置してもよい。第2曲部300から第3曲部400へ至る経路は、途中で曲げ方向が逆転するS字状の搬送経路となるため、用紙がこの経路に沿って搬送されると、搬送ガイドに対する用紙の接触抵抗が特に大きくなる可能性がある。例えば、長尺の用紙の場合、挟持ローラ対31による位置補正が行われる際に、用紙の後端部が第2曲部300内にあることで、用紙の後端部に対して大きな接触抵抗が生じることが予想される。従って、このような第2曲部300内での接触抵抗を軽減するには、図20に示す構成のように、第2曲部300に球体80を配置することが有効である。これにより、S字状の搬送経路における用紙の移動が円滑になり、位置補正動作に対する用紙の追従性を向上させることができる。
また、図21に示す構成のように、球体80を第1曲部200に配置してもよい。第1曲部200から第3曲部400に至る経路は、曲げ方向が連続して同じ方向となるU字状の搬送経路であるが、挟持ローラ対31によって位置補正をする際に、用紙の後端部が第1曲部200を通過中である場合、用紙の後端部に対して接触抵抗が生じる。このため、図21に示す構成のように、第1曲部200にも球体80を配置することで、第1曲部200内での接触抵抗を軽減し、用紙を円滑に移動させることができるようになる。
また、図16に示す実施形態では、各球体80を第3曲部400における内側(第3曲部400が膨らむ方向とは反対側)に配置しているが、図22に示す構成のように、球体80を第3曲部400における外側に配置してもよい。搬送経路における用紙の接触箇所は搬送経路の形状や用紙の剛性などに応じて異なるため、球体80を曲部における内側、又は外側、あるいはこれらの両方のいずれの箇所に配置するかは種々の条件に応じて適宜決定すればよい。
球体80の材質としては、金属や樹脂、ガラス等を用いることができる。また、球体80の表面にコーティングを施してもよい。例えば、球体80を鋼球で構成する場合、鋼球の表面を樹脂でコーティングすることで、回転時の振動音を抑制することが可能である。
また、球体80は、トナーが付着しにくい処理がされていることが望ましい。球体80の表面に僅かな傷があると、その部分にトナーが付着して堆積し、用紙が球体80に接触した際に画像に擦れ跡を発生させたり、球体80の円滑な回転を阻害したりする要因となる。特に、本実施形態に係る複写機のように、両面印刷を行う場合は、用紙の表側に定着されたトナー像が両面印刷搬送時に球体80に接触するため、球体80にトナーの一部が付着する可能性がある。そのため、球体80は、表面にトナーが付着しにくいように、ラッピング等の方法で鏡面加工されたステンレス又は真鍮の金属球、ガラス球、あるいは樹脂球で構成されていることが望ましい。
また、位置補正時の用紙の移動に対する球体80の追従性を向上させるために、球体80を低質量化して転がり抵抗を少なくするようにしてもよい。例えば、球体80の芯材(コア部)をプラスチックで構成し、その表面に光沢ニッケル、又は光沢クローム等のハードメッキを施して、低質量でありながら平滑性と硬度が得られるようにする。また、平滑性、硬度、低摩擦性が不十分である場合は、球体表面にダイヤモンドコーティング(DLC)などを施す処理が有効である。また、このような表面加工を支持球体82に対して施してもよい。これにより、支持球体82の平滑性、硬度、低摩擦性が向上し、球体80のより安定した回転が得られるようになる。
搬送経路に複数の球体80を配置するにあたって、球体80と支持球体82とハウジング81とから成る球体ユニット(図18参照)を1つずつ搬送ガイドに取り付けると、特に取り付ける球体ユニットの数が多い場合、大変な作業になる。また、球体ユニットを1つずつ取り付けるための構造も必要になる。例えば、球体ユニットを固定するためのネジ孔や、球体ユニットを位置決めするための位置決め孔等を搬送ガイドに設けると、これらが用紙の移動を阻害することが考えられる。
そこで、図23に示す構成のように、用紙幅方向に延びるように形成された基台85に複数の球体ユニット83を取り付けたものを予め作成し、これを搬送ガイドに取り付けるようにしてもよい。図24に示すように、基台85の裏面(搬送経路側とは反対側の面)には凹部85aが形成されており、この凹部85aに球体ユニット83が嵌め込まれて固定されることで、球体80が基台85に対して回転可能に取り付けられる。このような基台85を搬送ガイドに取り付けるには、基台85に取り付けられた各球体80を搬送ガイドに設けられた孔部122(図17参照)に位置合わせし、基台85の両端部に設けられた孔85b(図23参照)にネジ等の締結具を挿通させて搬送ガイドに締結する。また、このような基台85を搬送ガイドに対して搬送方向に複数取り付けることで、球体ユニット83を搬送方向に並べて配置することができる。
このように、予め複数の球体ユニット83を1つの基台85に取り付けておくことで、搬送ガイドに対する球体ユニット83の取り付け作業が容易になる。さらに、各球体ユニット83の取付精度も向上させることができるようになる。また、球体ユニット83を1つずつ取り付けるためのネジ孔や位置決め孔等を搬送ガイドに設ける必要がなくなるので、搬送ガイドに対する用紙の引っ掛かりを抑制し、位置補正時の用紙の移動をより円滑に行えるようになる。
上述の例では、球体ユニット83を搬送ガイドに取り付けるようにしているが、図25に示す構成のように、球体80と支持球体82とを搬送ガイド120に直接組み付けるようにしてもよい。
図25に示す構成では、湾曲した搬送ガイド120を樹脂で一体成型し、これに球体80と支持球体82とを直接組み付けている。搬送ガイド120には、球体80を嵌め込む孔と各支持球体82が嵌め込まれる2本の溝とが形成された球体収容部123が設けられている。球体80及び支持球体82は、搬送ガイド120の裏側(点線矢印で示す搬送経路側とは反対側)から球体収容部123内に挿入されて収容される。球体収容部123内に球体80と支持球体82とが収容された状態で、搬送ガイド120の裏側から蓋部材124を球体収容部123の開口部に取り付けることで、球体80及び支持球体82の脱落が防止される。
このように、搬送ガイド120に対して球体80と支持球体82とを直接組み付けることで、低コスト化や小型化、組付け作業の効率化も図れるようになる。すなわち、搬送ガイド120が球体80及び支持球体82を保持するハウジングの機能を兼ねるので、ハウジングを別途設ける必要がなくなり、部品点数を削減することが可能となる。
また、図26に示す構成のように、球体80の周囲に、球体80に向かって搬送経路側(図の上方)へ傾斜する傾斜面84を設けてもよい。このような傾斜面84が球体80の上流側(図の右側)にあることで、用紙の先端部が球体80に対して円滑に乗り上がりやすくなる。これにより、用紙の先端部が球体80に接触(衝突)することによる斜行の発生を防止でき、用紙の斜行量が増大して補正可能な範囲を超えるのを回避することができる。また、傾斜面84が球体80の下流側(図の左側)にあることで、特に厚紙搬送時や高速搬送時に用紙の後端部が球体80の段差で跳ねることによる音の発生を軽減でき、静音性を維持できるようになる。
図26に示す構成では、傾斜面84をハウジング81に一体成型しているが、同様の機能を有する傾斜面を搬送ガイドに設けてもよい。例えば、搬送ガイドが板金製の場合、球体80を突出させるための孔部122の縁を折り曲げて傾斜面を形成することが可能である。また、傾斜面84は、球体80ごとに分けて形成してもよいし、複数の球体80が幅方向に狭い間隔で並んでいる場合は、傾斜面84を幅方向に連続して形成してもよい。
また、搬送ガイドに対する球体80の突出量を変更可能に構成してもよい。図27に示す構成では、搬送ガイド120aに対する球体80の突出量Aを変更する突出量変更機構86を設けている。突出量変更機構86は、複写機のフレームに固定された柱状のガイド部材87に沿ってスライドするスライド部材88と、バネ89の付勢力に抗してスライド部材88をスライドさせるカム部材90と、カム部材90を駆動させる駆動手段としてのモータ91等を備える。スライド部材88には、球体ユニット83が取り付けられており、スライド部材88がスライドすることで球体80が搬送ガイド120aから突出する方向とその反対方向とに移動する。モータ91は、ステッピングモータであり、所定のステップ数回転することで、カム部材90をホームポジションセンサ92によって検知されたホームポジション(初期位置)から所定角度回転させる。カム部材90が回転し、スライド部材88がカム部材90によって図27における左側へ押し動かされると、搬送ガイド120aに対する球体80の突出量Aが大きくなる。反対に、カム部材90が逆方向に回転すると、スライド部材88がバネ89の付勢力で図27における右側に引き戻され、搬送ガイド120aに対する球体80の突出量Aが小さくなる。
また、この突出量変更機構86は、使用者が操作パネル93で入力した用紙の種類(剛性、厚さ)、又は、複写機内に設けられた用紙種類検知センサ94によって検知された用紙の種類に基づいて、予め設定された最適な球体80の突出量Aに調整(変更)可能に構成されている。入力又は検知された用紙の種類に関する情報は、複写機に設けられたCPU等から成る制御部95に送られ、用紙の種類に基づき制御部95がモータコントローラ96に指示を与えることでモータ91が所定のステップ数回転し、カム部材90を所定角度回転させる。これにより、球体80の突出量Aが用紙の種類に最適な量に調整される。
例えば、用紙が厚さ0.2mm以下の薄紙である場合は、僅かな突出量Aであっても球体80との接触抵抗により用紙の先端部に変形が生じやすい。このため、用紙の先端部に変形が生じることによる用紙の位置ずれ検知精度の低下や印刷物としての品質の低下が懸念される。また、用紙の先端部が球体80に接触(衝突)することによる余計な斜行が発生することも考えられる。そのため、このような薄紙を搬送する場合は、球体80を搬送ガイド120aに対して突出しない状態(突出量Aが0又はマイナスの状態)にしておき、用紙の先端部が球体80の位置を通過した後に、球体80を搬送ガイド120aから突出させればよい。これにより、用紙の先端部が球体80に接触(衝突)することによる変形や斜行の発生を回避することができる。また、球体80を突出させるタイミングは、用紙の位置補正が開始される前に行うことで、位置補正時においては球体80によって用紙を円滑に移動させることができる。なお、用紙の先端部が球体80の位置を通過するタイミングは、搬送経路に設けられた用紙位置検知センサによって把握することが可能である。
図27では、球体ユニット83が1つしか示されていないが、複数の球体ユニット83を1つのスライド部材88に取り付ければ、複数の球体80の突出量Aを同時に変更することが可能である。また、複数の球体80又は複数の球体列ごとに図27に示す突出量変更機構86を設けてもよい。また、その場合、ギアやタイミングベルト等を用いて複数のカム部材90を1つのモータ91で回転するように構成することで、複数の球体80又は複数の球体列を同時に同じ変位量移動させることが可能である。
図28に示す構成は、搬送ガイド120bに対する球体80の突出動作を、搬送ローラ対44の離間動作と連動させるようにしたものである。この構成では、リンク機構97によって、球体80が搬送ローラ対44の接触離間動作(この場合、駆動ローラ44aに対する従動ローラ44bの接触離間動作)に連動するように構成されている。
図28(a)に示すように、搬送ローラ対44が互いに接触している状態では、球体80は搬送ガイド120bから上方(搬送経路側)へ突出しない状態で保持される。この状態から、図28(b)に示すように、搬送ローラ対44が互いに離間した状態になると、この離間動作に連動してリンク機構97が動作することで、球体80が搬送ガイド120bから上方へ突出した状態に切り換えられる。その後、搬送ローラ対44が互いに接触する状態に戻ったときは、ばね等の付勢手段によって球体80は搬送ガイド120bから突出しない状態{図20(a)に示す状態}に戻される。
このように、球体80が搬送ローラ対44の離間動作に連動して突出した状態に切り換えられるようにすることで、構成の簡素化と小型化を図れる。すなわち、球体80を突出させるための駆動源を、搬送ローラ対44を離間させるための駆動源と共用できるので、球体80を突出させるための専用の駆動源を設けなくてもよくなる。また、この構成においても、上記図27に示す構成と同様に、用紙の先端部が球体80の位置を通過するまでは、球体80を搬送ガイド120bに対して突出しない状態にしておくことで、用紙の先端部が球体80に接触(衝突)することを回避することができる。また、用紙の先端部が球体80の位置を通過した後は、用紙の位置補正が行われる前のタイミングで搬送ローラ対44が互いに離間することで、これに連動して球体80が突出した状態に切り換えられて、位置補正時に用紙を円滑に移動させることができるようになる。
以上説明した構成においては、用紙が接触して回転する転がり部材として、あらゆる方向に回転可能な球体80を用いているが、球体80以外のものを用いることも可能である。例えば、用紙を幅方向のみに動かして用紙の位置を補正する構成においては、図29に示す構成のように、転がり部材として幅方向に回転可能なローラ130を用いてもよい。この場合、用紙がローラ130に接触することによって用紙の幅方向移動が円滑に行えるようになるため、位置補正動作に対する用紙の追従性を向上させることができる。
また、このようなローラ130は球体80に比べて回転方向が大幅に制限されるが、幅方向に回転可能なローラ130を、用紙の幅方向補正のみ行う搬送装置に限らず、上述のような用紙の幅方向と斜行方向の両方向の補正を行える搬送装置、あるいは用紙の斜行方向の補正のみ行える搬送装置に用いてもよい。このような場合でも、用紙の幅方向の移動が円滑に行えるようになるため、位置補正動作に対する用紙の追従性の向上がある程度期待できる。なお、ローラ130の回転方向は、搬送方向と直交する方向に限らず、搬送方向に交差する幅方向であれば任意の方向に適宜設定可能である。また、言うまでもないが、球体80も、上述のような用紙の幅方向と斜行方向の両方向の補正を行える搬送装置に限らず、用紙の幅方向の補正のみ行える搬送装置や、用紙の斜行方向の補正のみ行える搬送装置においても適用可能である。
以下、接触抵抗軽減手段として転がり部材以外のものを用いた構成について説明する。
図30に示す構成では、接触抵抗軽減手段として、空気を吹き出す空気吹き出し手段140を設けている。空気吹き出し手段140は、複数個の非常に小さな吹き出し孔140aが複数形成された部材であり、吹き出し孔140aが搬送ガイド120a,120bに設けられた開口部から搬送ガイド120a,120bよりも搬送経路側へ僅かに突出するように配置されている。空気吹き出し手段140に対しては、給気手段としてのエアコンプレッサ141から空気が送られるように構成され、送られた空気は吹き出し孔140aから搬送経路に向かって吹き出される。図30に示す構成では、空気吹き出し手段140が第1曲部200と第2曲部300と第3曲部400とのそれぞれに配置されているが、空気吹き出し手段140は、上記転がり部材と同様に、これらの曲部200~400のうちから必要な箇所を選択して配置されればよい。また、空気吹き出し手段140は、使用される全てのサイズの用紙幅に対応できるように幅方向に渡って配置されていることが望ましい。
このように、各曲部200~400に空気吹き出し手段140が配置されていることで、これらの曲部200~400内に用紙が搬送された際、空気吹き出し手段140から吹き出される空気によって、用紙と搬送ガイド120a,120bとの間の接触抵抗を軽減することができる。すなわち、用紙と搬送ガイド120,120bとの間に吹き出された空気(気流)が介在することで、用紙が搬送ガイド120a,120bに対して微小量浮く(離間する)ので、用紙と搬送ガイド120a,120bとの接触抵抗を少なくすることができる。これにより、搬送方向及びこれと交差する全方向への接触抵抗が軽減され、位置補正動作に対する用紙の追従性を向上させることができるので、より高精度に位置補正を行うことができるようになる。
また、図30に示す構成においては、エアコンプレッサ141から送られる空気の量(強度)を調整する吹き出し量調整手段としての空気弁142と、使用者が操作パネル144で入力した用紙の種類(剛性、厚さ)に基づいて空気弁142を制御する制御部143とが設けられている。これにより、空気弁142は、入力された用紙の種類に基づいて空気流路の開口量を変更して、空気吹き出し手段140から吹き出される空気の量を調整する。
このように、用紙の種類に基づいて制御部143が空気弁142を制御することで、空気吹き出し手段140から吹き出される空気量(吹き出し強度)を用紙の種類ごとに最適な吹き出し量(強度)に調整することができる。一般的に、厚く剛性の高い用紙の方が搬送ガイド等の周辺部材に対する接触が強くなる傾向にあるので、このような用紙ほど吹き出し量を多く(強度を強く)することで、用紙を搬送ガイド等から確実に浮かせて、接触抵抗を軽減することができるようになる。
次に、図31に示す構成では、接触抵抗軽減手段として、用紙に振動を付与する振動付与手段150を設けている。振動付与手段150は、振動子150aとホーン150bと加振部150cとで構成される。振動子150aには振動波発信器151によって振動させられるピエゾ素子(圧電素子)が用いられている。また、振動子150aにはステンレス製のホーン150bが接合されており、ホーン150bによって振動子150aの振動が増幅される。また、ホーン150bには加振部150cが接合されており、ホーン150bによって増幅された振動が加振部150cへ伝達されることで加振部150cが振動する。加振部150cは、搬送ガイド120a,120bに設けられた開口部から搬送ガイド120a,120bよりも搬送経路側へ僅かに突出するように配置されている。図31に示す構成では、振動付与手段150が第1曲部200と第2曲部300と第3曲部400とのそれぞれに配置されているが、振動付与手段150は、上記転がり部材や空気吹き出し手段と同様に、これらの曲部200~400のうちから必要な箇所を選択して配置されればよい。また、振動付与手段150は、使用される全てのサイズの用紙が通過する幅に対応して振動を付与できるように幅方向に渡って複数配置されていることが望ましい。
このように、各曲部200~400に振動付与手段150が配置されていることで、これらの曲部200~400内に用紙が搬送された際、用紙が振動付与手段150に接触して振動が付与されることで、用紙と搬送ガイド120a,120bとの間の接触抵抗を軽減することができる。すなわち、用紙が振動することで、用紙が搬送ガイド120a,120bに対して微小量浮く(離間する)ので、用紙と搬送ガイド120a,120bとの接触抵抗を少なくすることができる。これにより、搬送方向及びこれと交差する全方向への接触抵抗が軽減され、位置補正動作に対する用紙の追従性が向上するので、より高精度に位置補正を行うことが可能となる。
また、図31に示す構成においては、振動付与手段150で生じさせる振動波の周波数や振幅を調整する振動調整部152と、使用者が操作パネル154で入力した用紙の種類(剛性、厚さ)に基づいて振動調整部152を制御する制御部153とが設けられている。これにより、振動調整部152は、入力された用紙の種類に基づいて振動波の周波数や振幅を調整する。
このように、用紙の種類に基づいて制御部153が振動調整部152を制御することで、振動付与手段150で生じさせる振動波の周波数や振幅を用紙の種類ごとに最適な値に調整することができる。振動付与手段150で生じさせる振動波は、概ね周波数が40~60KHZ、振幅が15~30μmであるが、特に厚く剛性の高い用紙は周波数を高くしたり振幅を大きくしたりすることで、用紙を搬送ガイド等から確実に浮かせて、接触抵抗を軽減することができるようになる。
以上、本発明に係る搬送装置が備える接触抵抗軽減手段(球体80、ローラ130、空気吹き出し手段140、振動付与手段150)について説明したが、本発明は上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
上述の構成では、接触抵抗軽減手段を曲部に配置しているが、曲部は、連続する曲線のみで形成されたものに限らず、角度の異なる複数の直線を屈曲部(角部)を介して連続して組み合わせたもの、あるいは曲線と直線を組み合わせて形成されるものであってもよい。
また、上述の構成では、接触抵抗軽減手段を挟持ローラ対31よりも上流側の曲部に配置しているが、このような箇所に限らず、挟持ローラ対31よりも下流側の搬送経路や直線搬送経路に接触抵抗軽減手段を配置してもよい。例えば、接触抵抗軽減手段として球体80を用いた場合を例に挙げると、図32に示すように、球体80を挟持ローラ対31と二次転写部7との間の直線搬送経路500に配置してもよい。上述の複写機ように、用紙の先端部が挟持ローラ対31を通過した後も、用紙の位置補正(第2補正)が行われる構成においては、当該位置補正時に直線搬送経路500内において用紙の先端部に接触抵抗が発生する可能性がある。そのため、図32に示す構成のように、直線搬送経路500に球体80を配置することで、用紙の先端部の移動が円滑になり、位置補正動作に対する用紙の追従性を向上させることができる。
また、上述の構成では、用紙を搬送する搬送装置に本発明を適用しているが、本発明は、用紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒等を含む)のほか、OHPシート、OHPフィルム等の画像が印刷される記録媒体、あるいは原稿等のシートを搬送する搬送装置にも適用可能である。さらに、本発明は、記録媒体や原稿等のシートに限らず、電子基板等の被搬送媒体を搬送する搬送装置にも適用可能である。
また、本発明に係る搬送装置は、図1に示すようなカラー画像形成装置に搭載されるものに限らず、モノクロ画像形成装置に搭載されるものや、電子写真方式以外の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置や、オフセット印刷機など)に搭載されるものであってもよい。
図33に、インクジェット方式の画像形成装置に搭載された搬送装置の例を示す。
図33に示す画像形成装置700は、インクジェット方式によりインクを吐出する複数の吐出ヘッド705を備える画像形成部701と、用紙を供給する給紙部702と、用紙を搬送する搬送装置706と、画像が形成された用紙を乾燥させる乾燥部703と、乾燥された用紙が排出される排紙部704とを備える。搬送装置706は、給紙部702から画像形成部701までの搬送経路に、用紙の位置を検知する位置検知手段としての複数のCIS708~710と、各CIS708~710の検知結果に基づいて用紙の位置補正を行う位置補正手段としての挟持ローラ対711とを備える。給紙部702から供給された用紙は、挟持ローラ対711によって搬送されながら、各CIS708~710の検知結果に基づいて幅方向あるいは斜行方向の位置補正が行われた後、画像形成部701へと搬送される。そして、画像形成部701において吐出ヘッド705から各色のインクが用紙に吐出されることにより画像が形成される。その後、用紙は乾燥部703にて乾燥された後、排紙部704に排出される。
このようなインクジェット方式の画像形成装置700においても、用紙の位置補正を行う際に用紙が搬送ガイド等の周辺部材に接触することで接触抵抗が生じるため、上述の構成と同様、挟持ローラ対711の上流側と下流側の一方又は両方の搬送経路において接触抵抗軽減手段800(球体80、ローラ130、空気吹き出し手段140又は振動付与手段150)を配置するのがよい。これにより、位置補正時における用紙の移動が円滑になり、位置補正動作に対する用紙の追従性を向上させることが可能となる。
また、本発明に係る搬送装置は、画像形成装置から排出された用紙に対して後処理を行う後処理装置にも適用可能である。
図34に、後処理装置に搭載された搬送装置の例を示す。
図34に示す後処理装置900は、画像形成装置1から排出された用紙を受け入れる受入部901と、受け入れた用紙を搬送する搬送装置902と、用紙に対して中折り処理、綴じ処理又はパンチ処理等の後処理を行う後処理部903と、用紙を排出する排出部904とを主な構成としている。
受入部901から後処理装置900内に受け入れられた用紙は、搬送装置902が備える複数の搬送ローラ対(搬送手段)905によって、後処理部903を通過する第1搬送経路210か、あるいは後処理部903を通過しないで排出部904へと続く第2搬送経路220に搬送される。また、搬送装置902は、第1搬送経路210と第2搬送経路220とが分岐する分岐部Yの上流側に、用紙の位置を検知する位置検知手段としての複数のCIS906~908と、各CIS906~908の検知結果に基づいて用紙の位置補正を行う位置補正手段としての挟持ローラ対と909とを備えている。用紙は、挟持ローラ対909によって搬送されながら、各CIS906~908の検知結果に基づいて幅方向あるいは斜行方向の位置補正が行われた後、第1搬送経路210又は第2搬送経路220へと搬送される。
ここで、このような後処理装置900においても、挟持ローラ対909によって用紙の位置補正が行われる際、用紙が搬送ガイド等の周辺部材に接触すると、接触抵抗が発生する。特に、図34に示す例のように、挟持ローラ対909が搬送経路の曲部に配置されている場合はなおさらである。従って、上述の画像形成装置と同様、このような後処理装置900においても、図34に示すように、挟持ローラ対909の上流側と下流側の一方又は両方の搬送経路に接触抵抗軽減手段800(球体80、ローラ130、空気吹き出し手段140又は振動付与手段150)を配置することで、位置補正時における用紙の移動が円滑になり、位置補正動作に対する用紙の追従性を向上させることができる。