JP7037165B2 - 抗adamタンパク質基質抗体及びその利用 - Google Patents
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(2)前記抗体はモノクローナル抗体である、(1)に記載の阻害剤。
(3)低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)又はその部分ペプチドにおける配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又は低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)又はその部分ペプチドにおける配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する抗体である、出血性ヘビ毒による出血阻害剤。
(4)低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)又はその部分ペプチドにおける配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる領域又は低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)又はその部分ペプチドにおける配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる領域を認識して結合する抗体である、Wntシグナル伝達経路阻害剤。
(5)低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)又はその部分ペプチドにおける配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる領域又は低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)又はその部分ペプチドにおける配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる領域を認識して結合する抗体である、Wntシグナル伝達経路の活性化によって促進される疾患の予防又は治療剤。
(6)ADAMタンパク質の作用阻害方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞において、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するADAMタンパク質の結合を、前記第1の領域又は第2の領域を認識して結合する抗体を用いて阻害する工程、
を備える、方法。
(7)ADAMタンパク質の作用阻害方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する細胞を有する非ヒト動物において、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる領域に対するADAMタンパク質の結合を、前記第1の領域又は第2の領域を認識して結合する抗体を用いて阻害する工程、
を備える、方法。
(8)Wntシグナル伝達の阻害方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞において、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するADAMタンパク質の結合を、前記第1の領域又は第2の領域を認識して結合する抗体を用いて阻害する工程、
を備える、方法。
(9)Wntシグナル伝達レベルの評価方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞に対して、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する抗体を供給する工程と、
前記第1の領域及び/又は前記第2の領域に結合する抗体量を評価する工程と、
を備える、方法。
(10)Wntシグナル伝達の促進に関連する疾患又は病態の診断を補助する方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞に対して、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する抗体を供給する工程と、
前記抗体の供給により阻害された前記第1及び/又は前記第2の領域に対するADAMタンパク質の結合の阻害程度を評価する工程と、
を備える、方法。
(11)ADAMタンパク質の作用阻害剤のスクリーニング方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞又は非ヒト動物に対して、1又は2以上の被検化合物を供給してLRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するADAMタンパク質の結合を阻害の程度を評価する工程、
を備える、方法。
(12)Wntシグナル伝達阻害剤のスクリーニング方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞又は非ヒト動物に対して、1又は2以上の被検化合物を供給してLRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するWntシグナル伝達経路関連タンパク質の結合を阻害の程度を評価する工程、
を備える、方法。
本阻害剤は、LRP5又はその部分ペプチドにおける特定領域、及び/又は、LRP6又はその部分ペプチドにおける特定領域を認識して結合する抗体を有効成分とすることができる。以下、かかる結合性を有する抗体を本抗体ともいう。
本抗体は、出血性ヘビ毒による出血阻害剤の有効成分としても用いることができる。本発明者らは、VAP1の作用を本抗体によって阻害し結果として出血が抑制されたことを確認している。したがって、本抗体は、出血性ヘビ毒の種類に特定されず、LRP5及びLRP6の切断除去による出血に対して広く適用される。
本抗体は、LRP5及びLRP6の細胞外領域を除去してこれらのタンパク質を活性化することを阻害する。この結果、本抗体は、当該活性化によるWntシグナル伝達経路の活性化を阻害する阻害剤として機能することができる。Wntシグナル伝達経路の活性化は、広く動物において遺伝子発現、細胞増殖、細胞運動、細胞極性に関わっていることが知られている。このため、Wntシグナル伝達経路阻害剤は、それ自体研究用途として有用である。
本抗体は、Wntシグナル伝達経路の活性化によって促進される疾患の予防又は治療剤(以下、単に、本治療剤ともいう。)として用いることができる。本抗体は、Wntシグナル伝達経路を阻害できるからである。
(1)癌
例えば、大腸癌(例えば、結腸直腸癌腫(CRC))、黒色腫、乳癌、肝臓癌、肺癌、胃癌、悪性髄芽腫および他の原発性CNS悪性神経外胚葉腫瘍、横紋筋肉腫、消化管由来腫瘍(食道、胃、膵臓および胆管系の癌、前立腺および膀胱癌が挙げられるが、これらに限定されない。なお、本開示を限定するものではないが、仮足の先端部分にADAMタンパク質が発現して癌の浸潤を促進すると推測されている。
(2)骨関連障害
例えば、骨折の場合、骨ミネラル密度(BMD)が健常対象と比較して異常におよび/または病理学的に高い障害および骨ミネラル密度(BMD)が健常対象と比較して異常におよび/または病理学的に低い障害又は疾患、骨硬化症、Van Buchem症候群、骨過成長障害およびSimpson-Golabi-Behmel症候群(SGBS)が挙げられるが、これらに限定されない。
(3)炎症(とくに、喘息)
ADAM33は喘息のリスクファクターであり、ADAM33及びADAM8が喘息患部で高発現している。Wntシグナルが喘息患部で活性化されており、Wnt阻害剤で抑制されることが報告されている。
(4)糖尿病性血管症(とくに糖尿病性網膜症)
ADAM9、15ノックアウトで糖尿病モデル動物の血管新生が抑制されることが報告されている。また、患部でWntシグナルの活性化が起こっていることが報告されている。
(5)動脈硬化(とくに冠動脈硬化)
ADAM8のSNPが喫煙と同程度の心筋梗塞のリスクファクターであることが報告されている。LRP6のSNPが心筋梗塞のリスクファクターであることが報告されている。
(6)そのほか
多発性嚢胞腎
本明細書に開示されるADAMタンパク質の作用阻害方法は、LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞において、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するADAMタンパク質の結合を本抗体を用いて阻害する工程、を備えることができる。かかる作用阻害方法によれば、各種動物の生体外細胞において、LRP5及びLRP6に
に対するADAMタンパク質の作用を阻害することができる。
本明細書に開示されるWntシグナル伝達経路の活性化レベルの評価方法は、LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞に対して、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する抗体を供給する工程と、前記第1の領域及び/又は前記第2の領域に結合する抗体量を評価する工程と、を備えることができる。この評価方法によれば、細胞表層における抗体量を評価することで、当該細胞のWntシグナル伝達経路の状態を評価することができる。すなわち、細胞表層のLRP5及びLRP6の第1の領域及び第2の領域に結合した本抗体の量は、Wntシグナル伝達経路が活性化されていない、すなわち、抑制された状態にあることを意味するほか、ADAMタンパク質やその他のWntシグナル伝達経路関連タンパク質によって活性化されうる状態にあることを意味している。
本明細書に開示される診断補助方法は、LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞に対して、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する抗体を供給する工程と、前記第1の領域及び/又は前記第2の領域に結合する抗体量を評価する工程と、を備え得ることができる。この方法によれば、抗体量に基づいて細胞におけるWntシグナル伝達経路の活性化レベルを評価することができる。活性化レベルにより、Wntシグナル伝達経路の活性化に関連する疾患の、予兆、改善、予後、治療効果の判断などの診断を補助することができる。なお、抗体量は、既述のとおり周知の方法で測定することができる。
本明細書に開示されるスクリーニング方法は、LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞又は非ヒト動物に対して、1又は2以上の被検化合物を供給してLRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するADAMタンパク質の作用の阻害の程度を評価する工程、を備えることができる。このスクリーニング方法によれば、被検化合物の添加によってADAMタンパク質によるLRP5及びLRP6の作用部位における切断除去が阻害される程度、すなわち、ADAMタンパク質の作用の阻害の程度を評価することで、有用な阻害剤候補をスクリーニングできる。なお、ADAMタンパク質の作用の阻害の程度は、ADAMタンパク質の作用の阻害方法と同様にして実施することができる。
また、本明細書に開示される別のスクリーニング方法は、LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞又は非ヒト動物に対して、1又は2以上の被検化合物を供給してLRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するWntシグナル伝達経路関連タンパク質の結合の阻害の程度を評価する工程を備えることができる。このスクリーニング方法によれば、被検化合物の添加によってWntシグナル伝達経路関連タンパク質によるLRP5及びLRP6の作用部位における切断除去が阻害される程度、すなわち、Wntシグナル伝達経路関連タンパク質の作用の阻害の程度を評価することで、有用な阻害剤候補をスクリーニングできる。なお、被験化合物、シグナル伝達経路関連タンパク質の作用の阻害の程度は、ADAMタンパク質の作用の阻害方法と同様にして実施することができる。
1.試薬
VAP1とVAP2は、参考文献のように精製した(増田ほか、1998)。 要約すると、ガラガラヘビCrotalus atrox(シグマアルドリッチ、セントルイーズ、MO、USA)の素毒から、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーと陰イオン・イオン交換クロマトグラフィーによって分離された。ヒトリコンビナントLRP6-Fcタグ、ヒトADAM8、ADAM12、VE-カドヘリンとマウスLRP6-Hisタグ、LRP5-Hisタグは、R&Dシステム社(ミネアポリス、MN、USA)から購入した。
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、ベクトンディッキンソン社(フランクリンレイク、NJ、USA)から購入した。 FGFは参考文献に記述されるように、精製された。HUVECは10%ウシ胎児血清、FGFを含むMCDB105培地(シグマアルドリッチ、セントルイーズ、MO、USA)で37℃で培養された。マウスNIH3T3線維芽細胞(エンツォ・ライフサイエンス社、Farmingdale、USA)は37℃で10%ウシ胎児血清を含むMCDB105培地で培養された。
切断断片と対照は、SDS-PAGEで分離された。ゲルは、SilverQuestTM銀染色試薬(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、MA、USA)で染色されたあと、断片バンドに切り分けられた。バンドは、ゲル内消化をし、 DTTとヨードアセトアミドによる処置の後、50mMの重炭酸アンモニウム中で0.01g/mLトリプシンで37℃一晩処理した。 消化物は、液体クロマトグラムUltimate3000(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、MA、USA)と質量分析計LTQ-XL(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック)を用いたLC/MS分析された。結果は、LC/MS分析で、3回確かめられた。
収集された細胞は、各々の溶解バッファで溶解した。 サンプルは、SDS電気泳動の後、PVDF膜に転写された。TBSTバッファ中、5%脱脂乳でブロッキングした後に、膜は抗ヒトLRP6ポリクローンヤギ抗体(R&Dシステム社、ミネアポリス、MN、USA)の示された量でインキュベートした。膜はTBSTで洗浄し、1/4000の抗ヤギIgG-HRP(サンタクルス・バイオテクノロジー社、ダラス、テキサス、USA)でインキュベートした。反応したバンドは化学発光(ECLプライム、GE Healthecare、リトル・チャルフォント、英国)によって検出した。
細胞は4%のパラホルムアルデヒドで固定され、1%脱脂乳でブロッッキングされ、0.1%のサポニンで透過処理し、1/200の抗VE-カドヘリン抗体(BECKMAN COULTER)または1/200の抗-γ-カテニン抗体(Novus Biologicals、ミネアポリス、MN、USA)で一晩インキュベートした。細胞は3回TBSで洗い、Alexa488を結合した抗マウスIgG抗体(インビトロゲン、カールズバッド、CA、USA)でインキュベートした。染色像は、倒立蛍光顕微鏡(IX83、オリンパス、東京)で観察した。
LRP6のVAP1-切断部位近傍のペプチド(VKELNLQEY)に対して常法に従いウサギ抗血清が作製された。ポリクローナル抗体と対照ウサギ血清は、Protein Aを用いて抗血清から常法に従い精製された。HUVECを1.35mg/mlの各々の抗体で1時間インキュベート後、140ng/ml のVAP1で1時間処理された。
LRP6切断部抗血清または対照血清20μl と、5μg VAP1は、雄マウスの剃った背の皮膚の左右対称な2点に各々皮内注射された。1時間後に、マウスは処理され、皮膚は慎重に取り出された。その後、皮膚の内面の出血量が測定された。 出血斑の出血インデックスは、デンシトメトリー(CSアナライザー、ATTO、東京、日本)による赤色密度の総和として計算された。
データ(平均±標準エラー)は、スチューデントのt検定を使って分析された。出血分析での2グループ解析は、ペアードt検定によって評価された。P値は0.05以下を有意差ありとした。
ヘビ出血ADAM毒素VAP1は、培養血管内皮細胞の細胞間解離を誘導するかどうについて実験した。細胞間解離のメカニズムを解明するために、細胞間接着因子へのVAP1の作用を調査した。VAP1処置によって、VE-カドヘリンは細胞間接着部から消えて、局在が細胞質へ移動した(図5A)。ここで、VE-カドヘリンはADAM10によって切断され遊離されることがあることが報告されている(シュルツ、2008)。そこでVE-カドヘリンがVAP1によって切断されて、除去されるかどうかを調査した。
VAP1がカテニンの局在変化を誘導したことから、我々はWnt受容体のLRP6を調べた。β-プロペラ領域を除去されたLRP6は、Wnt経路シグナリングの常時活性型であることが知られている。そこで我々はVAP1に、LRP6の切断活性があるかどうかを調べた。LRP6を多く持っているNIH3T3細胞で、VAP1とのインキュベーションにより、LRP6が消失した(図6A)。また、VAP1はヒトLRP6の細胞外領域の組み換え体タンパク質を140kDaと60kDaの断片に切断した。ほとんどすべてのADAMタイプのヘビの毒メタロプロテアーゼにおいてもっとも感度が高い基質であることが知られているフィブリノゲーンαチェーンよりも速く、VAP1はLRP6を切断した(図6B)。 同様に、VAP1は、マウスLRP6組み換え体も切断し、140kDaの断片を生産した(図6C)。 そして、より多くの量を必要とするが、VAP2(もう一つの出血ADAM毒素)もLRP6を切断した(データ非掲載)。
細胞外領域を欠失したLRP5変異体も、WNT経路の常時活性型であることが知られている(マオ、Jほか(2001)。そこで我々はADAM毒素が、LRP6と同様に、LRP5を切断するかどうかを調べた。VAP1はマウス組み換え体LRP5を切断したが、LRP5を切断するのにLRP6より多い量を必要とした(図7A)。LRP6と同様に、140kDの断片が得られた(図7B)。この140kDaの質量分析の結果、VAQHLTGIHAVEEのペプチドが検出され、VAP1がglu1206-val1207でLRP5を切断することが示唆された。それはVAP1のLRP6-切断部位と同じドメイン構造上の位置である(図7C)。P1’位アミノ酸はLRP6における場合と同じように疎水性アミノ酸であり、金属プロテアーゼの性質と一致する。
LRP6の切断がVAP1によって誘導された細胞反応に関与しているかどうか調べるために、我々はVAP1によるLRP6切断に対しての抑制抗体を作った。抗LRP6切断部抗体は、VAP1によるLRP6の切断と140kDa断片の生産を有意に妨げた(図8AB)。阻害抗体は、位相差顕微鏡による観察においてVAP1による内皮細胞の細胞間接着の解離を妨げた(図8C)。同時に、VAP1によって誘導された細胞間ジャンクションのVE-カドヘリンの消失も、抗体によって阻害された(図8C)。これらは、VAP1によるLRP6切断が細胞間ジャンクションの崩壊に関与していることを示唆する。なお、対照抗体として、ヒトLRP6の細胞外ドメイン全体の組み換え体に対するモノクローン抗体 (MAB1505, R&Dシステムズ) を用いたところ、図8に示すように、有意な断片生成、細胞間接着の解離の抑制は観察されなかった。同様に、ヒトLRP6の細胞外ドメイン全体の組み換え体に対するポリクローン抗体(AF1505, R&Dシステムズ)、及びLRP6に結合するタンパク質である、ヒトRAP (Receptor-associated protein) 組み換え体 (エンゾ・ライフサイエンシズ)を用いても、同様の結果が得られた。
我々は、生体でVAP1によって誘導される出血にLRP6切断が関係しているかどうかを調査した。切断抑制抗体は、VAP1の皮内注射において、対照抗体と比較して出血を有意に妨げた(図9)。これは、VAP1による生体内で出血にLRP6切断が関与することを示唆している。
LRP5/6の切断活性化がヘビADAM毒素による出血に関係しているとすると、ヘビ毒抵抗性の動物の間で、出血耐性に都合がいいようにLRP5/6が変異している種が存在するかもしれない。 出血耐性は、毒蛇、フクロネズミ(オポッサム)、マングース、ハリネズミ、ジリス、ネズミ、ラクダなどで報告されている(ノグチ、1909; ガランほか、2004; マドセンとノグチ、1907;ハリソンほか2006)。NCBIデータベースを調査した結果、人間、マウス、モルモットを含む多くの動物で、LRP5/6が第1およびまたは第2β-プロペラ領域でしばしば欠失が見られた(図10AB)。
VAP1のLPR6切断活性化が、ヒトを含む動物のADAMファミリーの間での共通な性質である可能性を知るために、我々は、VAP1と高い相同性のアミノ酸配列を持っているヒトADAM8とADAM12の組み替え体を用いた。ヒトADAM8とADAM12組み換え体の両方ともLPR6を切断し、VAP1の場合と同じサイズの140kDaの断片を作った(図11AB)。このとき、VAP1と比較すると活性は非常に弱かった。140kDaの断片の質量分析の結果、VAP1と同じ切断部位断片IAQLSDIHEVKEが、ADAM8とADAM12で検出された。それはこのLPR6切断とWNT信号の活性化が、ヘビADAM毒素とヒトなどの哺乳類のADAMの間の共通の機能であることを示唆している。
Claims (14)
- 低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)又はその部分ペプチドにおける配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域を認識して結合する第1の抗体、及び低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)又はその部分ペプチドにおける配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する第2の抗体のいずれか又は双方を含む、ADAMタンパク質の作用阻害剤。
- 前記第1の抗体は、前記第1の領域に対する結合性に基づいて単離された抗体であり、前記第2の抗体は、前記第2の領域に対する結合性に基づいて単離された抗体である、請求項1に記載の作用阻害剤。
- 前記第1の抗体及び前記第2の抗体は、モノクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の作用阻害剤。
- 低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)又はその部分ペプチドにおける配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域を認識して結合する第1の抗体、及び低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)又はその部分ペプチドにおける配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する第2の抗体のいずれか又は双方を含む、出血性ヘビ毒による出血阻害剤。
- 低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)又はその部分ペプチドにおける配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域を認識して結合する第1の抗体、及び低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)又はその部分ペプチドにおける配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する第2の抗体のいずれか又は双方を含む、Wntシグナル伝達経路阻害剤。
- 低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)又はその部分ペプチドにおける配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域を認識して結合する第1の抗体、及び低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)又はその部分ペプチドにおける配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する第2の抗体のいずれか又は双方を含む、Wntシグナル伝達経路の活性化によって促進される疾患の予防又は治療剤。
- ADAMタンパク質の作用阻害方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞において、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するADAMタンパク質の結合を、前記第1の領域を認識して結合する第1の抗体又は前記第2の領域を認識して結合する第2の抗体を用いて阻害する工程、
を備える、方法。 - ADAMタンパク質の作用阻害方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する細胞を有する非ヒト動物において、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するADAMタンパク質の結合を、前記第1の領域を認識して結合する第1の抗体又は前記第2の領域を認識して結合する第2の抗体を用いて阻害する工程、
を備える、方法。 - Wntシグナル伝達の阻害方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞において、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するADAMタンパク質の結合を、前記第1の領域を認識して結合する第1の抗体又は前記第2の領域を認識して結合する第2の抗体を用いて阻害する工程、
を備える、方法。 - Wntシグナル伝達レベルの評価方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞に対して、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域を認識して結合する第1の抗体又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する第2の抗体を供給する工程と、
前記第1の領域又は前記第2の領域に結合する抗体量を評価する工程と、
を備える、方法。 - Wntシグナル伝達の促進に関連する疾患又は病態の診断を補助する方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞に対して、LRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域を認識して結合する第1の抗体又はLRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域を認識して結合する第2の抗体を供給する工程と、
前記第1の抗体又は前記第2の抗体の供給により阻害された前記第1又は前記第2の領域に対するADAMタンパク質の結合の阻害程度を評価する工程と、
を備える、方法。 - ADAMタンパク質の作用阻害剤のスクリーニング方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞又は非ヒト動物に対して、1又は2以上の被検化合物を供給してLRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域、LRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するADAMタンパク質の結合の阻害程度を評価する工程、
を備える、方法。 - Wntシグナル伝達阻害剤のスクリーニング方法であって、
LRP5又はLRP6若しくはこれらの部分ペプチドを発現する生体外細胞又は非ヒト動物に対して、1又は2以上の被検化合物を供給してLRP5又はその部分ペプチドについては配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域、LRP6又はその部分ペプチドについては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対するWntシグナル伝達経路関連タンパク質の結合を阻害の程度を評価する工程、
を備える、方法。 - ADAMタンパク質の作用阻害又はWntシグナル伝達阻害のための抗体の生産方法であって、
前記抗体を、
低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)の部分ペプチドにおける配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる第1の領域に対する結合性、又は
低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)の部分ペプチドにおける配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる第2の領域に対する結合性
に基づいて取得する工程、
を備える、方法。
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JP2011503025A (ja) | 2007-11-02 | 2011-01-27 | ノバルティス アーゲー | 低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質6(lrp6)を調節するための分子および方法 |
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2015-2016 Product Catalog,Boster,2016年,p. 39, PA2273,https://www.bosterbio.com/media/pdf/collaterals/Product_Catalog.pdf |
Anti-LRP5 Antibody datasheet,Boster,Catalog Number:PA2273,https://www.bosterbio.com/datasheet?sku=PA2273,[online], [令和2年12月10日検索] |
LIANG, X. et al.,Specific inhibition of ectodomain shedding of glycoprotein Ibα by targeting its juxtamembrane shedding cleavage site,Journal of thrombosis and haemostasis,2013年,11,pp. 2155-2162 |
瀬尾忠彦ほか,出血性ヘビ毒ADAMの細胞上の標的分子,第39回日本分子生物学会年会プログラム,2016年,39,3P-0416 |
瀬尾忠彦ほか,出血性ヘビ毒ADAMの細胞上の標的分子,第62回トキシンシンポジウム予稿集,2015年06月15日,62,p. 49 |
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