JP7035830B2 - 偏心量測定方法及び鋳造ストリップの製造方法 - Google Patents

偏心量測定方法及び鋳造ストリップの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、偏心量測定方法及び鋳造ストリップの製造方法に関する。
双ロール式連続鋳造装置は、回転軸が相互に平行になるように水平に対向して配置され、相反方向に回転する一対の鋳造用冷却ロール(鋳造ロール。以下適宜単にロールとも称する。)と、耐火物製のサイド堰とを有する。双ロール式連続鋳造は、冷却ロールの周面とサイド堰によって形成された湯溜り部に金属溶湯(溶融金属)を注入し、金属溶湯を冷却ロールの周面上で冷却、凝固させ、一対の冷却ロール間で圧着させることで、鋳造ストリップを連続鋳造する方法である。鋳造開始前、冷却ロールは、低温であることが一般的である。鋳造を開始すると、冷却ロールは、金属溶湯との接触により昇温するため、内面から水等の冷却媒体によって一定温度以上にならないように冷却される。
鋳造時において、金属溶湯は冷却ロールの周面で固まって凝固シェルが形成され、ロールギャップで張り合わされ、鋳造ストリップとして下方へ送り出される。このとき、鋳造ストリップが目標板厚となるように、各冷却ロールへ荷重を付与し、一定の荷重に制御される。ここで、溶融状態の金属が冷却ロールの外周面に触れて除熱が開始された後、ロールギャップの下方へ送り出されるに至るまでの時間が長いほど、冷却ロールの外周面に形作される凝固シェルが厚くなる。すなわち、鋳造ストリップの板厚を増加傾向とする制御は、冷却ロールの回転数を低くするか、あるいは湯溜まり部を深くして自由液面レベルを上げ、金属溶湯が冷却ロールの周面に触れている時間を延ばすことで達成される。これとは反対に、鋳造ストリップの板厚を減少傾向とする制御は、冷却ロールの回転数を高くするか、あるいは湯溜まりを浅くして自由液面レベルを下げ、金属溶湯が冷却ロールの周面に触れている時間を縮めることで達成される。
双ロール式連続鋳造においては、冷却ロールの偏心により鋳造ストリップ長さ方向にそった板厚変動が生じる場合がある。このような偏心はロールの組み立て時の位置合わせ誤差や、鋳造時のロールの不均一温度分等による歪みや摩耗に起因して生じ、結果として鋳造ストリップ全長にわたり周期的な厚み変動を生じさせる。上記問題を解決するため、種々の対策が提案されている。
特許文献1には、冷却ロール軸受部の間隔、冷却ロール本体の変位を測定して、ロールギャップが一定となるように制御する方法が開示されている。
特許文献2には、冷却ロールの偏変量を測定し、両冷却ロール回転角度間の位相を調節する方法が開示されている。
特表2000-511117号公報 特表2008-543575号公報
上記特許文献1の場合、冷却ロールの軸受部の間隔を測定しても、荷重変動によるギャップの変動と区別して、冷却ロールの偏心による冷却ロール表面間のギャップの変化を把握することができないため、ロールギャップが一定となるように制御することは、凝固シェルの厚みが予想通りでない場合に、ロール詰まりや内部に未凝固部が残ったホットバンドの状態となり、鋳造が不安定となるという問題がある。荷重変動が生じた場合は、ハウジングの伸びの変動に加えてロール自身の撓みも生じるため、鋳造部のロール軸は軸受部の軸位置と異なるためである。
上記特許文献2の場合、鋳造中に冷却ロール回転角度の位相差を制御することは、原理的に厚み変動を招くという問題がある。
本発明は、冷却ロールの偏心をより正確に測定することができる偏心量測定方法及び鋳造ストリップの製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る偏心量測定方法は、連続鋳造中のロールの偏心量を測定する偏心量測定方法において、ハウジングに回転可能に設けられた一対のロールと、前記一対のロールとサイド堰で形成された湯溜り部と、前記一対のロールのうちで偏心量を測定する一のロールを被計測ロールとした場合に、前記被計測ロールの近傍に設けられ、前記一対のロールの両方の軸を含む平面から角度θの位置で、前記被計測ロールの回転周面の半径方向の変位yを測定する距離計と、を有し、前記湯溜り部に注入された溶融金属を、前記一対のロールの軸間で圧着して、鋳造ストリップを連続鋳造する双ロール式連続鋳造装置を用い、前記被計測ロールの軸受け部に作用する荷重をP、ミル定数をkとした場合に、前記被計測ロールの偏心量yを下記式(1)により測定する。
=y-Pcosθ/2k・・・(1)
本発明に係る鋳造ストリップの製造方法は、前記一対のロールが、前記ハウジングに固定された固定側ロールと、前記固定側ロールと平行に配置され半径方向に移動可能に前記ハウジングに設けられた可動側ロールとを有し、上記偏心量測定方法により前記被計測ロールの偏心量yを測定し、前記距離計で測定した前記被計測ロールの回転位置が前記軸間に到達した時点で、前記可動側ロールを移動して前記軸間の距離を変更する。
本発明によれば、被計測ロールの軸受け部に生じた荷重から算出したロール撓みの影響を補正して偏心量yを求めるので、冷却ロールの偏心をより正確に測定することができる。
本実施形態に係る双ロール式連続鋳造装置を示す概略図である。 本実施形態に係る距離計を示す概略図である。 距離計の測定原理の説明に供する概略図である。 本実施形態に係る双ロール式連続鋳造装置の概略平面図である。 実験の結果を示すグラフであり、図5Aはロール表面変位の測定結果、図5Bは荷重の測定結果を示すグラフである。 補正後の結果を示すグラフであり、図6Aはロールの撓みの影響を補正した結果、図6Bはロールの熱膨張による影響を補正した結果を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
(全体構成)
図1に示す双ロール式連続鋳造装置10は、鋳造機12と、コントローラ14とを備える。鋳造機12は、ハウジング16と、ハウジング16に支持された一対の冷却ロール17と、冷却ロール17の軸方向端部に配置されたサイド堰22と、一対の冷却ロール17及びサイド堰22によって形成された湯溜り部24と、浸漬ノズル26とを備える。ハウジング16は、軸受け部33,35を介して一対の冷却ロール17を回転自在に支持している。軸受け部33,35には、一対の冷却ロール17の軸32,34がそれぞれ嵌め込まれている。
一対の冷却ロール17は、固定側ロール18と、固定側ロール18に平行に配置された可動側ロール20とを有する。固定側ロール18を支持する軸受け部33は、ロードセル36を介してハウジング16に固定されている。ロードセル36は、軸受け部33に生じる荷重を測定する。一対の冷却ロール17は、例えば、ロール胴長(軸方向長さ)が200mm~1800mm、直径が300mm~1500mmである。固定側ロール18と可動側ロール20の軸間であって、表面間距離が最も短い位置をロールキス点という。
可動側ロール20を支持する軸受け部35は、アクチュエータ38に接続されており、可動側ロール20の半径方向に移動可能に、ハウジング16に設けられている。本実施形態の場合、アクチュエータ38は、オイルシリンダーであり、ハウジング16に固定されたシリンダー39と、シリンダー39に対し進退可能に設けられたピストンロッド41とを有する。ピストンロッド41の先端は、可動側ロール20を支持する軸受け部35に接続されている。
浸漬ノズル26は、タンディッシュ(図示しない)に接続されており、タンディッシュ内の溶融金属としての溶鋼28を、湯溜り部24に対して供給する。溶鋼28の鋼種は、例えば、0.001~0.01%C極低炭鋼、0.02~0.05%低炭鋼、0.06~0.4%中炭鋼、0.5~1.2%高炭鋼、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼、SUS430に代表されるフェライト系ステンレス鋼、3.0~4.0Si方向性電磁鋼、0.1~6.5%Si無方向性電磁鋼等があげられる(なお、%は質量%を意味する)。
双ロール式連続鋳造装置10は、溶鋼28が回転する一対の冷却ロール17に接触して冷却されることにより、一対の冷却ロール17の周面の上で凝固シェルが成長し、一対の冷却ロール17にそれぞれ形成された凝固シェル同士がロールキス点で圧着されることによって、所定厚みを有する鋳造ストリップ(薄肉鋳片)30が形成される。製造される鋳造ストリップ30の幅は200mm~1800mmの範囲内、厚さは1mm~5mmの範囲内である。
ハウジング16には、一対の第1電極44がそれぞれ設けられている。一対の第1電極44は、固定側ロール18及び可動側ロール20と所定の間隔を開けて、湯溜り部24に対し固定側ロール18及び可動側ロール20の回転方向の手前側に配置されている。
ロードセル36、アクチュエータ38、一対の第1電極44は、鋳造装置コントローラ(以下、コントローラ)14に電気的に接続されている。コントローラ14は、予め格納されている基本プログラムや演算処理プログラムなどのアプリケーションプログラムを読み出して、これら各種プログラムに従って、双ロール式連続鋳造装置10全体を制御する演算部(図示しない)を備える。演算部は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。図示しないが、コントローラ14は、演算部に、バスを介して、記憶部、入力部、出力部を接続してもよい。
記憶部は、例えば、半導体記憶装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部は、コントローラ14での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部は、アプリケーションプログラムとして、冷却ロール17の偏心量を算出する偏心量算出処理をコントローラ14に実行させるための偏心量算出プログラムなどを記憶する。偏心量算出プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部にインストールされてもよい。記憶部は、偏心量算出処理で使用される種々のデータを記憶する。さらに、記憶部は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
入力部は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボード等である。作業者は、入力部を用いて、文字、数字、記号等を入力することができる。入力部は、作業者により操作されると、その操作に対応する信号を生成する。そして、生成された信号は、作業者の指示として、コントローラ14に供給される。
出力部は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。出力部は、コントローラ14から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。また、出力部は、紙等の表示媒体に、映像、画像又は文字等を印刷する出力装置であってもよい。
距離計40,42は、計測対象である被計測ロールが異なるのみで構成は同じであることから、距離計40について図2,3を参照して説明する。図2に示すように、距離計40は、静電容量式距離計であり、固定側ロール18を被計測ロールとし、第1電極44と、第2電極46と、距離計制御部48とからなる。距離計40は、固定側ロール18及び可動側ロール20の両方の軸を含む平面から角度θの位置で、固定側ロール18の回転周面の半径方向の変位yを測定する。距離計制御部48は、コントローラ14内において、バスを介して演算部に接続されている。第1電極44は、例えば、直径が2mm~16mmの円柱状部材であり、固定側ロール表面との間に、3mm~8mm程度のギャップを開けて設置される。距離計40は、1mm~10mmにおける測定レンジが10μmの精度で測定可能であることが好ましい。第2電極46は、固定側ロール18の周面に接触し回転駆動するブラシロールが設けられている。ブラシロールは、固定側ロール18の軸方向長さ以上の長さを有し、導電性材料、例えばカーボンや金属で形成され、固定側ロール18と導通を図りながら回動し、固定側ロール18表面の残留物を除去する。
距離計40の測定原理について、図3を参照して説明する。本実施形態に係る距離計40は、静電容量式であり、第1電極44と、第2電極46と電気的に接続された固定側ロール18表面間の静電容量を測定して、第1電極44と固定側ロール18表面の間の距離に換算する。電極面積をA、誘電率をεとすると、静電容量Cと距離tの関係は、下記式(2)で表すことができる。
C=ε・A/t・・・(2)
距離計40は、上記式(2)のように静電容量Cが電極間距離tと反比例することを利用して距離測定を行う。距離計40のプローブは第1電極44のみのため、耐熱性に優れ、近距離の測定分解能が高いという特徴がある。
例えば、交流定電流を駆動電源として用いることにより、電流の実効値をI、角周波数をωとすると、出力電圧Vは、下記式(3)で表すことができる。この場合、出力電圧Vは測定される距離tに比例することを利用し、出力電圧Vを検知することにより、距離tを計測してもよい。
V=I/ωC=I・t/(ωεA)・・・(3)
第1電極44の直径は、固定側ロール18の表面粗さに対して、より大きい方が、固定側ロール18の表面粗さの影響を受けないため、測定精度を向上できるので好ましい。
第1電極44の設置場所は、第2電極46に対し、固定側ロール18の回転方向の下流側であるのが、好ましい。第2電極46であるロールブラシが固定側ロール18表面の残留物を除去するので、残留物が第1電極44に接触することを防いで、より測定精度を向上することができる。
鋳造ストリップ30を製造する過程において、一対の冷却ロール17間に生じる荷重が増加することにより、図4に示すように、一対の冷却ロール17が撓み、互いに離れる方向に変形する(図中、破線)。加えて、一対の冷却ロール17における荷重の増加によって、ハウジング16も引張方向に変形する。
固定側ロール18と可動側ロール20において、偏心量の測定方法に違いはないので、被計測ロールとして固定側ロール18の偏心量を測定する場合について説明する。距離計40によって測定される、固定側ロール18近傍に設けられた第1電極44と、固定側ロール18との回転周面の半径方向の変位をy、前記一対の冷却ロール17の両方の軸を含む平面と、固定側ロール18近傍に設けられた第1電極44と固定側ロール18の中心軸とを結ぶ直線とのなす角度をθ、軸受け部33に作用する荷重をP、ミル定数をkとした場合、固定側ロール18の偏心量yは、下記式(4)により、表すことができる。
=y-Pcosθ/2k・・・(4)
ミル定数は、固定側ロール18と可動側ロール20を接触させて、可動側ロール20を固定側ロール18へ押し付ける荷重Pと、アクチュエータ38のピストンロッド41の変位との相関から求められる。
偏心量yには、固定側ロール18の熱膨張による変形量が含まれる。熱膨張による変形量は、偏心量yの時系列データにおいて、固定側ロール18の回転周期に一致した移動平均を求めることにより得られる。したがって偏心量yから上記移動平均を減算することにより、固定側ロール18の偏心成分を得ることができる。
(作用及び効果)
次に双ロール式連続鋳造装置10における作用及び効果を説明する。まず、湯溜り部24に浸漬ノズル26を介して溶鋼28を供給すると共に、一対の冷却ロール17を同じ速度で回転させる。一対の冷却ロール17の回転方向は、ロールキス点が鋳造ストリップ30の引抜方向、すなわち図1の下方向に向かう方向である。そうすると、冷却ロール17の周面には、凝固シェルが形成される。
冷却ロール17の周面で凝固シェルが成長し、一対の冷却ロール17にそれぞれ形成された凝固シェル同士がロールキス点で圧着されることによって、鋳造ストリップ30が形成される。
距離計制御部48は、第1電極44と第2電極46間に交流定電流を供給し、一対の冷却ロール17が回転を開始した直後から、第1電極44及び第2電極46間の電圧を検知する。検知された電圧は、出力信号としてコントローラ14に出力される。ロードセル36は、軸受け部33,35に生じた荷重を検知する。検知された荷重は、荷重信号としてコントローラ14に出力される。
コントローラ14は、距離計制御部48から出力信号が入力されると、上記式(3)を用いて、第1電極44と固定側ロール18表面の間の距離tを測定する。測定した距離tに基づき、コントローラ14は、時間経過とともに変化する固定側ロール18の表面の変位yのデータを得る。
次いで、コントローラ14は、ロードセル36から入力された荷重信号から荷重値を算出すると共に、得られた荷重値と上記式(4)を用いて、変位yからロール撓みの影響を補正した偏心量yを求める。
続いて、コントローラ14は、求めた偏心量yの時系列データにおいてロール回転周期に一致した移動平均を求め、熱膨張による変形量を算出する。
最後に、コントローラ14は、偏心量yから、熱膨張による変形量を減算することにより、固定側ロール18の偏心成分を得ることができる。
本実施形態では、被計測ロールの軸受け部33,35に生じた荷重から算出したロール撓みの影響を補正して偏心量yを求めるので、冷却ロール17の偏心をより正確に測定することができる。さらに偏心量yから、熱膨張による変形量を補正することにより、より正確な偏心成分を得ることができる。
得られた偏心成分に基づき、コントローラ14は、ロールキス点におけるロールギャップの大きさを制御する。偏心成分は、第1電極44が設置された回転位置におけるものであるから、当該位置がロールキス点に到達したタイミングで、固定側ロール18に対する可動側ロール20の軸受け部35の位置を、アクチュエータ38で変更する。本実施形態の場合、コントローラ14は、偏心成分に応じた制御信号を、当該偏心成分の回転位置がロールキス点に到達したタイミングで、アクチュエータ38に出力する。アクチュエータ38は、コントローラから出力された制御信号に基づき、ピストンロッド41をシリンダー39に対し進退させることによって固定側ロール18に対する可動側ロール20の軸受け部35の位置を変更する。このようにして双ロール式連続鋳造装置10は、固定側ロール18の偏心が鋳造ストリップ30の厚みに転写されることを防止することができる。
固定側ロール18と同様に、可動側ロール20についても、偏心成分を得ることができる。この場合、軸受け部33,35は同一平面上にあり、軸受け部35に生じる荷重は、軸受け部33に生じる荷重Pと同じ大きさの逆向きの荷重である。したがってロードセル36で計測した荷重Pを用いて、可動側ロール20における偏心量を求めることができる。
コントローラ14は、固定側ロール18の偏心成分、及び可動側ロール20の偏心成分をそれぞれ測定すると共に合算し、第1電極44が設置された回転位置がロールキス点に到達したタイミングで、上記合算した偏心成分に基づいて固定側ロール18に対する可動側ロール20の軸受け部35の位置を、アクチュエータ38で変更する。このようにして双ロール式連続鋳造装置10は、一対の冷却ロール17の偏心が鋳造ストリップ30の厚みに転写されることを防止することができる。
(実施例)
実際に双ロール鋳造実験装置を用いて、本発明の効果を検証した。電気炉にて溶解した溶鋼を、厚さ2.0mm板として直接鋳造した。冷却ロール17の回転速度は、一定速度の21.5rpm(1周あたり2.8秒)に設定した。距離計40,42は、第1電極44の直径が9mm、0~6mmの測定レンジにおいて10μmの精度で測定可能なものを用いた。距離計40,42の設置位置は、ロール胴長の中央部であって、第1電極44と固定側ロール18の中心軸とを結ぶ直線とのなす角度が30°の位置に、固定側ロール18表面との間に4mmのギャップをあけた位置とした。
図5に鋳造開始60秒間の固定側ロール18の測定例を示す。図5Aの縦軸は距離計40で測定されたロール表面変位y(mm)、横軸は時間(秒)を示す。図5Bの縦軸はロードセル36で測定された固定側ロール18の軸受け部33に生じた荷重(ton)、横軸は時間(秒)を示す。鋳造初期においては、固定側ロール18が急激に熱膨張していく不安定な状況であり、不均一な熱膨張や地金噛み込みの影響と推定される荷重の変動がみられる。この荷重変動に同期して、ロール表面変位が変動している。これは、測定センサがハウジング16に設置されており、圧延機と同様にロール荷重の増加により、ロールの撓みが発生するためである。
このロール撓みの影響を上記式(4)により補正した結果を図6Aに示す。図6Aの縦軸は偏心量(mm)、横軸は時間(秒)である。補正に際して、k:ミル定数は、予め一対の冷却ロール17を接触させて、押し付荷重とアクチュエータ38の変位との相関を調査して得た。ロール周回に伴う2.8秒周期の変動と、熱膨張に伴う変動がみられる。合わせて図中に直前の2.8秒間分の平均値、即ち、ロール1回転時間の移動平均値を連続的に計算した結果を太い実線で示す。これは、熱膨張にともなう変動を算出できていることが分かる。図6Bに熱膨張の影響を減算した結果を示す。図6Bの縦軸は偏心成分(mm)、横軸は時間(秒)である。これにより固定側ロール18の偏心成分のみを抽出することができる。
なお、偏心成分は、距離計40を設置した位置のものであるので、当該位置における冷却ロール17表面がロールキス点に到達するタイミングで、ロールキス点におけるロールギャップの大きさを制御することで、固定側ロール18の偏心成分が鋳造ストップ厚みに転写されることを防止できる。出力タイミングの具体的な設定としては、本実験の場合、2.8秒×150°/180℃=0.67秒、遅らせてロールギャップの大きさを調整する。
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。上記実施形態の場合、アクチュエータは、オイルシリンダーである場合について説明したが、本発明はこれに限らず、エアシリンダーでもよい。
また、上記実施形態の場合、ロールとして冷却ロールを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、連続鋳造装置に用いられるロール全般について適用可能である。
また、上記実施形態の場合、距離計として静電容量式の距離計を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、レーザ距離計等の距離計を用いることができる。その場合、第2電極46を省略したり、第2電極46を構成していたブラシロールを導電性でない部材に変更することが可能となる。
10 双ロール式連続鋳造装置
16 ハウジング
17 冷却ロール(ロール)
18 固定側ロール
20 可動側ロール
22 サイド堰
24 湯溜り部
28 溶鋼
30 鋳造ストリップ
40,42 距離計
44 第1電極
46 第2電極

Claims (5)

  1. 連続鋳造中のロールの偏心量を測定する偏心量測定方法において、
    ハウジングに回転可能に設けられた一対のロールと、
    前記一対のロールとサイド堰で形成された湯溜り部と、
    前記一対のロールのうちで偏心量を測定する一のロールを被計測ロールとした場合に、前記被計測ロールの近傍に設けられ、前記一対のロールの両方の軸を含む平面から角度θの位置で、前記被計測ロールの回転周面の半径方向の変位yを測定する距離計と、
    を有し、
    前記湯溜り部に注入された溶融金属を、前記一対のロールの軸間で圧着して、鋳造ストリップを連続鋳造する双ロール式連続鋳造装置を用い、
    前記被計測ロールの軸受け部に作用する荷重をP、ミル定数をkとした場合に、前記被計測ロールの偏心量yを下記式(1)により測定する偏心量測定方法。
    =y-Pcosθ/2k・・・(1)
  2. 前記距離計が、静電容量式距離計である、請求項1に記載の偏心量測定方法。
  3. 前記距離計は、
    前記被計測ロールの表面から離れた位置に固定された第1電極と、
    前記被計測ロールの表面に接触して回動し、前記一対のロールの軸方向長さ以上の長さを有する導電性のブラシが設けられた第2電極と、
    を有する、請求項2に記載の偏心量測定方法。
  4. 前記偏心量yの時系列データから求めた前記偏心量y の、前記ロールの回転周期に対応する時間における移動平均を、前記偏心量yから減算し、前記被計測ロールの偏心成分を得る、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏心量測定方法。
  5. 前記一対のロールは、前記ハウジングに固定された固定側ロールと、前記固定側ロールと平行に配置され半径方向に移動可能に前記ハウジングに設けられた可動側ロールとを有し、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の偏心量測定方法により前記被計測ロールの偏心量yを測定し、
    前記角度θの位置が前記軸間に到達した時点で、前記可動側ロールを移動して前記軸間の距離を変更する鋳造ストリップの製造方法。
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