JP7033136B2 - 飲料カプセルにおいて有用な飲料組成物 - Google Patents

Description

本発明は、飲料カプセルにおいて有用な飲料組成物及びその調製に関し、特に、焙煎及び粉砕されたコーヒーと、コーヒーを６０℃未満の温度で抽出することによって得られる乾燥されたコーヒー抽出物とを含む飲料組成物に関する。

１杯分を供給する飲料調製マシンは、食品業界及び消費財分野において既知である。このようなマシンにより、消費者は、ドリップコーヒー、エスプレッソコーヒー、茶、ホットチョコレートドリンクなどの飲料を１杯分、又は更にはスープ若しくは乳児用調製粉乳製品などの液体食品を一食分、要求に沿って調製することが可能である。ほとんどの家庭用飲料調製マシンは、特に剛性又は半剛性カプセルの形態の個々の容器内に飲料原材料が１杯分のポーションで提供されるシステムによって動作する。このようなカプセルは、使用するまでカプセル内の飲料原材料の新鮮さ及び品質を維持するために、気密封止されてよい。１杯の飲料を調製するために、まず、カプセルを、これを受け入れるように適合された飲料調製装置（「飲料マシン」）に挿入する。飲料マシンは、飲料カプセル内に水を導くための手段を備え、水を飲料成分と組み合わせて飲料を製造する。通常、水は高温の飲料を製造するために加熱されるが、周囲温度又は低温であってもよい。水は圧を上昇させて注入してもよく（例えばエスプレッソコーヒーカプセル用）、又は単に大気圧でカプセル内に送ってもよい（例えばドリップコーヒー用）。調製されると、カプセルの出口から待機容器に飲料が注出され消費される。飲料が迅速に準備されることが望ましいことから、浸出時間又は抽出時間、すなわち飲料が完全に注出されるまでカプセル内で水が飲料成分と接触している時間は、通常は数秒又は数分程度である。

飲料カプセルから、新しい飲料、例えば、低温の飲料を調製することができることが望まれている。低温の飲料の例は、水出しコーヒーである。水出しコーヒーは、通常、周囲温度又は低温で水で長時間コーヒーを抽出することによって製造され、高温で浸出されたコーヒーよりも穏やかで新鮮な味及びアロマを有する。多くの場合、コーヒーを水中に放置して、一晩、例えば２４時間抽出し、１２時間未満はほとんどない。このようなプロセスは、抽出時間が最大で数分である１杯分の飲料調製マシンにおいて容易に再現することができず、そのため、従来の水出しコーヒーに関連する十分な味及びアロマをもたらすのに所望される抽出レベルを達成しない。したがって、従来の水出しコーヒーに関連する十分な味及びアロマを有するコーヒー飲料の迅速な調製を可能にする、飲料カプセルにおいて有用な飲料組成物が必要とされている。

本発明者らは、焙煎及び粉砕されたコーヒーと、焙煎及び粉砕されたコーヒーを６０℃未満の温度にて水で抽出することによって得られるコーヒー抽出物を乾燥させたものとの両方を含む飲料組成物を有する飲料カプセルは、抽出時間が最大で数分である従来の飲料調製マシンで使用される場合、従来の水出しコーヒーの十分な味及びアロマを有する飲料をもたらすことができることを見出した。焙煎及び粉砕されたコーヒーのみを含有する、又は焙煎及び粉砕されたコーヒーを６０℃未満の温度にて水で抽出することによって得られるコーヒー抽出物のみを含有する飲料組成物は、同じアロマの強度をもたらさないことも見出された。更に、低い抽出温度で製造されたコーヒー抽出物のみを含有する飲料組成物は、ケーキングを生じる傾向があり、貯蔵中に安定ではない。したがって、本発明は、ａ）焙煎及び粉砕されたコーヒーと、ｂ）焙煎及び粉砕されたコーヒーを６０℃未満の温度にて水で抽出することによって得られるコーヒー抽出物を乾燥させたものと、を含む、飲料組成物に関する。更なる態様では、本発明は、本発明の飲料組成物を含む飲料調製装置用飲料カプセル、本発明の飲料組成物を製造する方法及びコーヒー飲料装置においてコーヒー飲料を調製する方法に関する。

本発明は、飲料カプセルにおいて有用な飲料組成物に関する。飲料組成物とは、水又は別の好適な液体と組み合わせて飲料を調製するのに有用な、好ましくは粉末の形態の乾燥組成物を意味する。

飲料組成物は、焙煎及び粉砕されたコーヒーを含む。コーヒー豆は、コーヒーの木、例えば、アラビカコーヒーとも呼称されるアラビアコーヒーノキ（Ｃｏｆｆｅａ ａｒａｂｉｃａ）品種、又はロブスタコーヒーとも呼称されるロブスタコーヒーノキ（Ｃｏｆｆｅａ ｃａｎｅｐｈｏｒａ）品種からの豆、又は種子である。焙煎及び粉砕されたコーヒーは、コーヒーの製造分野で一般的に使用される焙煎及び粉砕のプロセスに供されたコーヒー豆である。生コーヒー豆とも呼称される未焙煎コーヒー豆の焙煎は、焙煎コーヒーに付随するアロマノートを生み出す任意の好適な方法で実施し得る。好適な焙煎方法は当該技術分野において公知である。同様に、コーヒー豆の粉砕方法及び器具は当該技術分野において周知であり、任意の好適な方法を用いて本発明に係る焙煎及び粉砕されたコーヒー豆を製造し得る。

飲料組成物はまた、コーヒーを６０℃未満の温度にて水で抽出することによって得られるコーヒーの抽出物を含む。抽出は、任意の好適な方法で、及び任意の好適な時間にわたって実行されてもよい。コーヒーを抽出するための方法は、例えば、可溶性コーヒー、又はインスタントコーヒーを製造するために、例えば、欧州特許第０８２６３０８号より当該技術分野において周知である。抽出は、任意の好適な抽出容器で実施してよく、例えば、固定床反応器又は連続式向流抽出器（ｃｏｎｔｉｎｕｏｕｓ ｃｏｕｎｔｅｒ－ｃｕｒｒｅｎｔ ｅｘｔｒａｃｔｏｒｓ）で実施してよい。水出しコーヒーを製造するための従来の方法を使用してよく、例えば、周囲温度で８～２４時間コーヒーを抽出し、抽出物を濾過してコーヒー粉を除去する。抽出は、好ましくは、２℃～５０℃の温度、例えば、２℃～４０℃、５℃～４０℃、又は１０℃～３０℃の温度で実施される。アロマの損失を回避するため、アロマは抽出前に焙煎及び粉砕されたコーヒーから除去されて、乾燥前に抽出物に加え戻されてもよく、アロマを除去するための方法は、例えば国際公開第０１／１３７３５号より、可溶性コーヒーの抽出の技術分野において周知である。

コーヒー抽出物を乾燥させて、例えば粉末の形態の乾燥コーヒー抽出物を製造する。乾燥は、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、又は真空ベルト乾燥などの任意の好適な方法によって行われてよい。乾燥前に、コーヒー抽出物は、乾燥ステップ中に除去される水の量を低減するために、例えば蒸発によって濃縮されてよい。乾燥後に粉末の形態ではない場合、乾燥されたコーヒー抽出物は、好ましくは乾燥後に粉末に粉砕される。粉末の形態により、カプセル内での焙煎及び粉砕されたコーヒーと、乾燥されたコーヒー抽出物との混合が促進される。焙煎及び粉砕されたコーヒー並びに乾燥されたコーヒー抽出物は、好ましくは、粉末混合物としてカプセル内に存在し、別個の層としては存在しない。

更なる態様では、本発明は、飲料調製装置用の飲料カプセルに関し、カプセルは、本発明の飲料組成物を含む。飲料カプセルは当該技術分野において周知であり、任意の好適なカプセルの構造が使用され得る。好適なカプセルは、例えば、国際公開第０３０５９７７８号及び欧州特許第０５１２４６８号に開示されている。カプセルの構造は、使用することが意図される特定の飲料マシン（複数可）によって異なる。カプセルから飲料を調製するよう構成されたいくつかのこのような飲料マシンが存在し、当該技術分野において周知である。飲料カプセルは、焙煎及び粉砕されたコーヒー並びに乾燥されたコーヒー抽出物が存在するチャンバを含む。チャンバは気密封止されてもよく、又は周囲に対して部分的に開放されてもよい。飲料カプセルは、飲料調製装置においてカプセルから飲料が調製されるときに、焙煎及び粉砕されたコーヒー並びに乾燥されたコーヒー抽出物が存在するチャンバ内に水又は別の好適な液体を注入して、乾燥されたコーヒー抽出物を溶解させて、可溶性コーヒー固形分を焙煎及び粉砕されたコーヒーから抽出できるように構成される。溶解したコーヒー固形分を有する液体は、カプセルからカップ又は他の好適な容器に誘導され、コーヒー飲料を提供する。

飲料組成物のケーキング
従来の可溶性コーヒー又はインスタントコーヒーの製造において、コーヒー豆の抽出は、高温（例えば、１１０～１８０℃）で実施され、これにより、高分子量（ＨＭＷ）材料として抽出物中に放出される、コーヒー豆中の複合長鎖炭水化物の加水分解がもたらされる。抽出が低温（例えば、６０℃未満）で行われる水出しコーヒーを製造する場合、この加水分解は行われないか、又は非常に限定され、従来の可溶性コーヒーと比較してＨＭＷ材料の含有量が少なくなる。本発明者らは、コーヒー豆を６０℃未満の温度で抽出することによって製造された乾燥されたコーヒー抽出物の粉末は、時間の経過とともにケーキングを生じる傾向があることを見出した。このケーキングは、特に高温での保管中に起こり得、飲料カプセル中で使用される場合に飲料の調製に影響を及ぼし得る。これは、低分子量（ＬＭＷ）材料及び低含有量のＨＭＷ材料によって引き起こされると考えられている。

本発明者らは、コーヒー豆を６０℃未満の温度で抽出することによって製造された乾燥されたコーヒー抽出物の粉末を、焙煎及び粉砕されたコーヒーと混合すると、コーヒー抽出物のケーキングの傾向が大幅に減少することを見出した。本発明の好ましい実施形態では、飲料カプセル中の焙煎及び粉砕されたコーヒー対乾燥されたコーヒー抽出物の量の重量比は、２０：１～１：１０、例えば１０：１～１：５、又は約５：１～１：１である。

ケーキングの影響はまた、例えばコーヒー抽出物の膜濾過によって、ＬＭＷ材料を除去することによって低減され得る。しかし、これは製造のコスト及び複雑さの増加を招く可能性があり、また製品に望まれる他のＬＭＷ化合物（例えば、味及び香気化合物）の損失を招く可能性がある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、焙煎及び粉砕されたコーヒー豆を６０℃未満の温度にて水で抽出することによって得られるコーヒー抽出物は、膜濾過に供されていない。

本発明はまた、本発明の飲料組成物を製造する方法に関する。この方法は、ｉ）コーヒー豆を焙煎及び粉砕するステップと、ｉｉ）焙煎及び粉砕されたコーヒー豆を６０℃未満の温度にて水で抽出し、当該液体抽出物を乾燥させるステップと、ｉｉｉ）ステップｉ）の粉砕されたコーヒーと、ステップｉｉ）の乾燥されたコーヒー抽出物とを飲料カプセル中に混合するステップと、を含む。本発明の方法の好ましい実施形態では、焙煎及び粉砕されたコーヒー豆を６０℃未満の温度にて水で抽出することによって得られるコーヒー抽出物は、膜濾過に供されない。好ましい実施形態では、焙煎及び粉砕されたコーヒー豆は、ステップｉｉ）において、２℃～５０℃の温度、例えば、２℃～４０℃、５℃～４０℃、又は１０℃～３０℃で抽出される。アロマの損失を回避するため、アロマは抽出前に焙煎及び粉砕されたコーヒーから除去されて、乾燥前に抽出物に加え戻されてもよく、アロマを除去するための方法は、例えば国際公開第０１／１３７３５号より、可溶性コーヒーの抽出の技術分野において周知である。ステップｉｉｉ）において混合される、焙煎及び粉砕されたコーヒー対乾燥されたコーヒー抽出物の量の重量比は、好ましくは２０：１～１：１０、例えば１０：１～１：５、又は約５：１～１：１である。ステップｉｉ）におけるコーヒー抽出物の乾燥は、任意の好適な方法、好ましくは、凍結乾燥、噴霧乾燥、ローラー乾燥、ベルト乾燥、オーブン乾燥、真空オーブン乾燥、又は真空ベルト乾燥によって行われてよい。最も効率的なケーキングの低減を達成するために、焙煎及び粉砕されたコーヒーと乾燥されたコーヒー抽出物とを一緒に混合する。混合は、好ましくは、乾燥されたコーヒー抽出物の粒子を破壊することなく均質な混合を達成する、任意の好適な手段によって実施されてよい。

更なる態様では、本発明は、飲料調製装置で使用するための飲料カプセルを製造する方法であって、本発明の方法によって得られる飲料組成物を飲料カプセルに充填する、方法に関する。

更なる態様では、本発明は、飲料調製装置でコーヒー飲料を製造する方法であって、請求項１～５のいずれか一項に記載のカプセルに水を注入し、飲料がカプセルから容器内に放出される、方法に関する。飲料カプセルに水を注入し、容器内への飲料の放出を可能にするのに好適な飲料マシンは、当該技術分野において周知であり、任意の好適なマシンを使用することができる。水の注入は、例えば、水が通って注入される中空針でカプセルを穿孔することによって実施され得る。飲料の放出は、例えば、水の注入時に開口し、飲料を容器内に流入させる、カプセル内の開口手段によって達成されてもよく、又はカプセルに開口がなされ、飲料が放出されてもよい。飲料は、任意の好適な容器、例えばカップ、マグ、ジャー、ポットなどに放出されてもよい。カプセルに注入される水は、好ましくは、低温又は周囲温度の飲料を提供するように、２～３０℃、より好ましくは１０～２５℃の温度を有する。

実施例１－乾燥されたコーヒー抽出物の調製
コーヒー豆を焙煎及び粉砕した。真空抽出プロセスを使用して、焙煎及び粉砕された豆からコーヒーアロマを抽出した。コーヒーアロマは、後でプロセスに再導入するため保存した。

アロマ抽出された焙煎及び粉砕されたコーヒーを抽出器に導入し、４．０の水対コーヒー比を用いて、２５℃の温度で水を使用してコーヒー固形分を抽出した。濾過によって、焙煎及び粉砕されたコーヒー粒子を抽出物から除去した。

次いで、上記の得られたコーヒー抽出物には、１ｋＤａの分画分子量の半透膜を使用してナノ濾過プロセスを行い、低分子量化合物を除去した。真空抽出によって除去されたコーヒーアロマを抽出物に再導入し、抽出物を凍結乾燥して、安定した乾燥されたコーヒー抽出物粉末を製造した。

実施例２－飲料カプセルの調製
実施例１のように調製した乾燥されたコーヒー抽出物を飲料カプセルに充填し、飲料調製マシンで使用した。周囲温度で水を使用して、４グラムの乾燥されたコーヒー粉末を含有する飲料カプセルを使用してコーヒー飲料を調製した。

実施例３－飲料カプセルの調製
実施例１のように調製した乾燥されたコーヒー抽出物（１グラム）を焙煎及び粉砕されたコーヒー（４グラム）と混合し、この混合物を飲料調製マシンで使用するために飲料カプセルに充填した。コーヒーマシンで飲料カプセルを使用する場合、高レベルのコーヒーアロマの放出を伴う高品質のコーヒー飲料を、周囲温度にて水で調製した。以下の表３は、測定された官能特性を示す。数字は、高／中レベルの群内の強度値を示す。

実施例４－官能試験
実施例１及び２において調製した飲料と、同じ方法であるが、４グラムの焙煎及び粉砕されたコーヒーを含有し、乾燥されたコーヒー抽出物を含有しない飲料カプセルから調製した対照飲料とを、官能試験において比較した。異なるアロマの属性の強度を表１に示す。

実施例５－コーヒー粉末の安定性
焙煎及び粉砕されたコーヒー豆から、コーヒーを乾燥させたコーヒー抽出物を製造した。真空抽出プロセスを使用して、焙煎及び粉砕した豆からコーヒーアロマを抽出した。コーヒーアロマは、後でプロセスに再導入するため保存した。

アロマ抽出された焙煎及び粉砕されたコーヒーを抽出器に導入し、４．０の水対コーヒー比を用いて、２５℃の温度で水を使用してコーヒー固形分を抽出した。焙煎及び粉砕されたコーヒー粒子を濾過によって抽出物から除去した。真空抽出によって除去されたコーヒーアロマを抽出物に再導入し、抽出物を噴霧乾燥して、乾燥されたコーヒー抽出物粉末を製造した。

安定性の測定のために、３つの試料を調製した。
Ａ）上記のように調製した乾燥されたコーヒー抽出物
Ｂ）焙煎及び粉砕されたコーヒー豆
Ｃ）２０％（重量／重量）の試料Ａ）と８０％（重量／重量）の試料Ｂとの混合物
試料をバイアルに充填し、その後、水分の取り込みを防止するために密封した。次いで、全ての３つの試料のバイアルを、３０～９０℃の異なる温度で８時間保管した。バイアル中の試料を手動で振盪し、観察することによって、３時間後及び８時間後にバイアル中の粉末の流動性を確認した。以下の尺度の後に流動性を評価した。
１：流動可能
２：粘着性
３：ケーキング

焙煎及び粉砕されたコーヒーの存在により、高温での保管中にコーヒー抽出物粉末の安定性が増加することが分かる。

Claims (5)

1. 飲料調製装置でコーヒー飲料を製造する方法であって、水が、２～３０℃の温度で飲料カプセルに注入され、前記飲料が前記カプセルから容器内に放出され、
   前記飲料カプセルは、
   ａ）焙煎及び粉砕されたコーヒーと、
   ｂ）焙煎及び粉砕されたコーヒーを６０℃未満の温度にて水で抽出することによって得られるコーヒー抽出物を乾燥させたものと、
   を含む、飲料組成物を含む、方法。
2. 焙煎及び粉砕されたコーヒー対乾燥されたコーヒー抽出物の量の重量比が２０：１～１：１０である、請求項１に記載の方法。
3. 焙煎及び粉砕されたコーヒー対乾燥されたコーヒー抽出物の量の重量比が１０：１～１：５である、請求項１又は２に記載の方法。
4. 乾燥されたコーヒー抽出物が、焙煎及び粉砕されたコーヒーを２℃～４０℃の温度で、水で抽出することによって得られる、請求項１～３のいずれか一項に記載の方法。
5. 焙煎及び粉砕されたコーヒーを６０℃未満の温度にて水で抽出することによって得られるコーヒー抽出物が、膜濾過に供されていない、請求項１～４のいずれか一項に記載の方法。