以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
なお、実施形態として反応容器については焼却炉を例示として示しているが、もちろんこれに限られず、スラリー状物質を含む処理対象物を外から充填することができる反応容器であればなんでも良く、例えば加水分解を促進反応させる反応を内部で生じさせる反応容器や、内部で混練して化学反応させるよう充填する反応容器であってもよい。
図1は、第1の実施形態における供給システム100の一例を示す。供給システム100は、圧送装置である一軸偏芯ポンプ20、スクリューコンベヤ30(30a、30b)、流量計40(40a、40b)、遮断機構50(50a、50b)および制御装置60を有する。
一軸偏芯ポンプ20は、下水汚泥を脱水して得られるケーキが投入される投入口8に接続される流路10に配置される。下水汚泥のケーキは、固形分と水分(や液分)とを含み流動性を有するスラリー状物質の一例である。流路10の下流側は、例えば、2つの流路11(11b、11b)に分岐される。流量計40aおよび遮断機構50aは、流路11aに配置され、流量計40bおよび遮断機構50bは、流路11bに配置される。
流路11aの下流側は、スクリューコンベヤ30aが配置される流路12aに接続され、流路11bの下流側は、スクリューコンベヤ30bが配置される流路12bに接続される。流路12aおよび流路12bの下流側は、例えば、焼却炉200の側壁において互いに対向する位置に設けられるケーキの投入口に接続される。
図1に示す太線で囲まれる領域は、ケーキの流路を示している。流路10は、供給路の一例であり、流路11(11a、11b)および流路12(12a、12b)は、分岐路の一例である。流路10、11a、11b、12a、12bは、ケーキの投入口8と焼却炉200との間を接続する配管内に形成される。また、焼却炉200の運用時の温度変化による焼却炉200の膨張・収縮を吸収するために、各流路11a、11bを形成する配管においてスクリューコンベヤ30a、30b側の端は、例えば、ゴム製の伸縮継手15等を介して流路12a、12bを形成する配管に接続される。
以下の説明では、流路11a、12a、スクリューコンベヤ30a、流量計40aおよび遮断機構50aを含むグループと、流路11b、12b、スクリューコンベヤ30b、流量計40bおよび遮断機構50bを含むグループとは、それぞれ系列と称される。なお、図1は2つの分岐路を示すが、3以上の分岐路が流路10に接続されてもよく、この場合、流量計40、遮断機構50およびスクリューコンベヤ30が各分岐路に配置される。
図1に示す供給システム100では、投入口8から投入されるケーキは、一軸偏芯ポンプ20により流路10の下流側に向けて圧送され、流路10から分岐する流路11a、11bに分かれ、スクリューコンベヤ30a、30bに送られる。スクリューコンベヤ30a、30bは、流路11a、11bから送られるケーキを焼却炉200の別々の個所に供給する。ケーキを焼却炉200の複数個所に供給することで、ケーキが焼却炉200内で偏って焼却されることを抑止でき、ケーキの燃焼効率を向上することができる。また、焼却炉200内の位置に依存して燃焼特性に違いがある場合、複数個所に投入するケーキの量の比率を燃焼特性に合わせて調節することで、反応容器である炉内の処理対象物であるケーキ全体の燃焼効率を向上することができる。
一軸偏芯ポンプ20は、駆動機21と、駆動機21により駆動される回転軸22と、回転軸22に取り付けられたスクリュー23とを有する。スクリュー23は、例えば、予め設定された回転数で回転し、投入口8に投入されるケーキを下流側に圧送する。圧送されたケーキは、流路11a、11bの分岐部分に達した後、流路11a、11bのそれぞれに分かれて圧送される。この際、何も制御しない場合、投入口8に投入されるケーキの性状にばらつきがあると、流路11a、11bに圧送されるケーキの量は均等にならない。一軸偏芯ポンプ20は圧送装置の一例である。なお、一軸偏芯ポンプ20の代わりに、ピストンポンプまたはスクリューコンベヤ等の圧送用ポンプが設けられてもよい。
スクリューコンベヤ30aは、制御装置60からの制御信号MV1aに応じて動作する駆動機31aと、駆動機31aにより駆動される回転軸32aと、回転軸32aに取り付けられたスクリュー33aとを有する。駆動機31aは、可変速駆動機であり、制御信号MV1aに応じて回転軸32aの回転数(すなわち、スクリュー33aの回転数)を調節可能である。同様に、スクリューコンベヤ30bは、制御装置60からの制御信号MV1bに応じて動作する駆動機31bと、駆動機31bにより駆動される回転軸32bと、回転軸32bに取り付けられたスクリュー33bとを有する。駆動機31bは、可変速駆動機であり、制御信号MV1bに応じて回転軸32bの回転数(すなわち、スクリュー33bの回転数)を調節可能である。
以下では、駆動機31a、31bは駆動機31とも称され、回転軸32a、32bは回転軸32とも称され、スクリュー33a、33bは、スクリュー33とも称される。また、制御信号MV1a、MV1bは、制御信号MV1とも称される。なお、例えば、スクリューコンベヤ30a、30bは、一軸タイプが使用されるが、2軸以上のタイプが使用されてもよい。また、図1では、片持ちタイプのスクリューコンベヤ30a、30bを記載しているが、両持ちタイプが使用されても良い。
流量計40aは、流路11aを流れるケーキの流量を計測し、計測したケーキの流量PV1aを制御装置60に出力する。流量計40bは、流路11bを流れるケーキの流量を計測し、計測したケーキの流量PV1bを制御装置60に出力する。以下では、流量PV1a、PV1bは、流量PV1とも称される。
遮断機構50aは、駆動機51aと、駆動機51aにより駆動されて流路11aを遮断または開放する遮断弁52aとを有する。遮断機構50bは、駆動機51bと、駆動機51bにより駆動されて流路11bを遮断または開放する遮断弁52bとを有する。例えば、遮断機構50a、50bは、制御装置60からの制御信号に応じて動作してもよい。あるいは、遮断弁52a、52bは、手動で操作するタイプでもよい。遮断弁52a、52bは、例えば、ボール弁であるが、流路11a、11bをそれぞれ遮断または開放する機能を有する他の弁が使用されてもよい。なお、2つの遮断弁52a、52bの代わりに、1つの遮断弁が流路10に取り付けられてもよい。特に限定されないが、遮断弁52a、52bは、供給システム100および焼却炉200を含む設備の停止時に遮断される。なお、焼却炉200が、炉内の圧力が大気圧より高い過給式流動焼却炉等の高圧炉でない場合、遮断機構50a、50bは配置されなくてもよい。
制御装置60は、スクリューコンベヤ30および遮断機構50をそれぞれ制御する機能を有する。例えば、制御装置60は、PLC(Programmable Logic Controller)を含み、PLCが実行する制御プログラムに基づいて動作する。
制御装置60は、例えば、各流量計40からの流量PV1と、流路11aに分岐させるケーキの分岐比率SVBR(0<SVBR<1)とに基づいて、各スクリューコンベヤ30の駆動機31に制御信号MV1を出力し、スクリュー33の回転数を調節する。なお、流路10が3以上の分岐路に分岐される場合、制御装置60は、分岐路毎に分岐比率SVBRを受ける。分岐比率SVBRは、制御装置60の外部から供給されているが、制御装置60に内蔵されるフラッシュメモリ等の記憶部に予め記憶されてもよい。
なお、各種信号は、矢印のついた破線で示される。また、図1では、分岐比率SVBRおよび制御信号MV1が流路11を跨いでいるが、分岐比率SVBRおよび制御信号MV1を伝達する信号線が、流路11を物理的に跨ぐことを示すものではない。制御装置60によるスクリューコンベヤ30の制御の例は、図2から図4で説明する。
焼却炉200は、スクリューコンベヤ30a、30bを介して複数個所に供給されるケーキを、空気および補助燃料を使って燃焼する。燃焼により発生した排ガスは、図示しない排ガスの処理設備に送られる。例えば、焼却炉200は、気泡式の流動焼却炉であり、炉内の圧力は大気圧に比べて僅かに低い。
図2は、図1に示す供給システム100の動作の一例を示す。すなわち、図2は、供給システム100の制御方法の一例を示す。図2に示す動作は、制御装置60が制御プログラムを実行することにより実現される。また、図2に示す動作は、制御装置60により所定の周期で繰り返し実行される。特に限定されないが、所定の周期は、例えば、数十ミリ秒から数百ミリ秒の間である。図2に示す処理は、スクリューコンベヤ30の回転数の変化を滑らかにするために、例えば、PID(Proportional Integral Differential)制御またはファジー制御等のフィードバック制御の手法が用いることが望ましい。あるいは、フィードフォワード制御の手法やロジック制御の手法が用いられてもよい。
まず、ステップS10において、制御装置60は、全ての系列の流量計40から流量PV1を取得する。次に、ステップS12において、制御装置60は、式(1)、(2)に示すように、流量PV1a、PV1bと分岐比率SVBRとを用いて、流路11aを含む系列に流すケーキの流量の目標値である流量目標値TFRaと、流路11bを含む系列に流すケーキの流量の目標値である流量目標値TFRbとを算出する。以下では、流量目標値TFRa、TFRbは、流量目標値TFRとも称される。例えば、分岐比率SVBRは、流路10に流れるケーキの量のうち、流路11aに分岐させるケーキの量の比率を示す。このため、流路11bに分岐させるケーキの量の比率は、”1-SVBR”で示される。
TFRa=(PV1a+PV1b)×SVBR ‥(1)
TFRb=(PV1a+PV1b)×(1-SVBR) ‥(2)
次に、ステップS14において、制御装置60は、流量計40で計測されるケーキの流量PV1が流量目標値TFRより小さいか否かを系列毎に判定する。なお、ステップS14、S16、S18、S20の処理は、系列毎に実行される。流量PV1が流量目標値TFRより小さい場合、制御装置60は、ステップS16において、系列に含まれるスクリューコンベヤ30の回転数を所定数だけ上げるための制御信号MV1を出力し、ステップS22の処理に移行する。
ここで、一軸偏芯ポンプ20のスクリュー23は気密性があり、各スクリューコンベヤ30のスクリュー33は、スクリュー33内のケーキによって形成されるマテリアルシールにより気密性があるため、各流路11は気密状態になる。スクリュー33の回転数を上げると、流路12内のケーキは焼却炉200に向けて移動しやすくなり、流路12内のケーキによるマテリアルシールのシール性(抵抗)は低下し、流路11の圧力は下がる。例えば、流路11aの圧力が下がると、流路10から流路11aにケーキが流れこみやすくなり、流路11aに流れ込むケーキの流量は、流路11bに流れ込むケーキの流量に対して相対的に増加する。すなわち、スクリュー33の回転数を上げることで、流路11から焼却炉200に供給されるケーキの量を増加させることができ、流量目標値TFRより小さいケーキの流量PV1を流量目標値TFRに近づけることができる。
駆動機31aによるスクリュー33aの回転数が下げられると、その上流にある圧送装置20により押し込まれるケーキは流路11a内への供給がそのままで、流路11aからのスクリューコンベヤ33による排出が少なくなるので、同じ容積内にケーキ量が増え続け圧密されることとなり、マテリアルシール性能は向上する。その状態で、排出は少なくなったとしても下流の焼却炉200への供給は続けられ、焼却炉200内の燃焼は継続しながらも燃料にあたるケーキ量が少なくなり、燃焼が穏やかになりその結果燃焼炉200内の主に空気や排ガスの熱による膨張が減少し、結果燃焼炉200内の圧力が減少する方向となる。駆動機31bによるスクリュー33bについても同様である。
ステップS14でケーキの流量PV1が流量目標値TFR以上の場合、制御装置60は、ステップS18において、流量PV1が流量目標値TFRより大きいか否かを判定する。流量PV1が流量目標値TFRより大きい場合、制御装置60は、ステップS20において、系列に含まれるスクリューコンベヤ30の回転数を所定数だけ下げるための制御信号MV1を出力し、ステップS22の処理に移行する。流量PV1が流量目標値TFRより大きくない場合、制御装置60は、流量PV1が流量目標値TRFに等しいと判断し、ステップS22の処理に移行する。なお、ステップS18では、流量PV1を流量目標値TFRより大きい流量目標値(例えば、TFR2)と比較してもよい。すなわち、流量制御は2つの閾値TFR、TFR2を用いて行われてもよい。
スクリュー33の回転数を下げると、流路12内のケーキは焼却炉200に向けて移動しにくくなり、流路12内のケーキによるマテリアルシールのシール性(抵抗)は上昇し、流路11の圧力は上がる。例えば、流路11aの圧力が上がると、流路10から流路11aにケーキが流れこみにくくなり、流路11aに流れ込むケーキの流量は、流路11bに流れ込むケーキの流量に対して相対的に減少する。すなわち、スクリュー33の回転数を下げることで、流路11から焼却炉200に供給されるケーキの量を減少させることができ、流量目標値TFRより大きいケーキの流量PV1を流量目標値TFRに近づけることができる。
ステップS22において、制御装置60は、タイマ機能等を用いて、設定時間(例えば、5秒)が経過したか否かを判定する。設定時間が経過していない場合、処理は終了する。一方、設定時間が経過した場合、制御装置60は、ステップS24において、スクリュー33の回転数が最も高い系列において、スクリュー33の回転数を所定数だけ上げるための制御信号MV1を出力し、処理を終了する。なお、制御装置60が出力する制御信号MV1の上限値は、スクリューコンベヤ30で設定可能な回転数の最大値(すなわち、能力の100%)より小さい。ステップS24の処理を実行することで、図3で説明するように、スクリュー33の回転数の高い系列のスクリュー33の回転数の増加に追従して、他の系列のスクリュー33の回転数を増加することができる。これにより、各流路11の圧力を下げることができ、一軸偏芯ポンプ20に掛かる負荷を小さくすることができる。
なお、スクリューコンベヤ30の回転数が増加してケーキの焼却炉200への供給能力が上がり、スクリュー33内に滞留するケーキがほとんどなくなった場合、焼却炉200からの輻射熱により、スクリュー33が熱くなるおそれがある。これを防止するため、スクリューコンベヤ30の回転数の上限値は、スクリュー33が焼却炉200からの輻射熱の影響を受けない程度の量のケーキを、スクリュー33内に滞留させる回転数に設定されることが望ましい。
以上説明したように、図2のフローによるスクリューコンベヤ30の制御では、スクリューコンベヤ30の回転数の増減により、流路11a、11bのそれぞれに分岐されるケーキの流量を微調節することができる。例えば、含水率やケーキに含まれる成分等のケーキの性状が変化し、流路11a、11bのそれぞれに分岐されるケーキの流量が一次的に変化した場合、各流路11a、11bから焼却炉200にそれぞれ供給されるケーキの量の比は、分岐比率SVBR、1-SVBRから外れる。この場合にも、図2に示す処理を繰り返すことで、焼却炉200の複数個所にそれぞれ供給されるケーキの量を、所望の分岐比率にすることができる。
なお、図2では、制御装置60は、全てのスクリュー33の回転数を調節するが、ケーキを流す流路11を含む系列が2つの場合、制御装置60は、一方のスクリュー33の回転数を一定にし、他方のスクリュー33の回転数のみを調節してもよい。これにより、例えば、一方のスクリュー33の回転数が上がると同時に、他方のスクリュー33の回転数が下がることを防止することができ、各流路11を流れるケーキの流量が、流量目標値TFRを挟んで繰り返し変化することを防止することができる。
図3は、図2に示すフローチャートの処理を実行する供給システム100の動作の一例を示す。図3に示す例では、ケーキの焼却炉200への供給を開始する場合のスクリュー33a、33bの初期の回転数は、上限値の50%に設定される。また、流路11aに流すケーキの分岐比率SVBRは60%に設定される。したがって、流路11bに流すケーキの分岐比率(1-SVBR)は40%である。なお、説明を分かりやすくするため、時刻T1以前の時刻方向の縮尺を時刻T1以降の時間方向の縮尺より大きくしている。すなわち、図3において、時刻T1以前の単位長さ当たりの時間は、時刻T1以降の単位時間当たりの時間より短い。
制御装置60は、流路11aの流量PV1aを流量目標値TFRaに近づけるため、スクリュー33aの回転数を順次上げる(図3(a))。また、制御装置60は、流路11bの流量PV1bを流量目標値TFRbに近づけるため、スクリュー33bの回転数を順次下げる(図3(b))。制御装置60の制御により、時刻T1において、流量PV1aは、ほぼ流量目標値TFRaになり、流量PV1bは、ほぼ流量目標値TFRbになる(図3(c))。すなわち、流路10に流れるケーキの全量に対する流路11aに流れるケーキの流量の比率は、分岐比率SVBR(60%)と等しくなる。なお、この時点で、スクリュー33aの回転数は上限値になっていない。
また、制御装置60は、図2に示したステップS24で説明したように、所定時間の経過毎に、回転数が最も高いスクリュー33aの回転数を所定数だけ上げる(図3(d))。ここで、一軸偏芯ポンプ20から流路10を介して流路11a、11bに流れこむケーキの総量は変わらない。このため、例えば、スクリューコンベヤ30aの回転数が上げられて流路11aに流れ込むケーキの流量が増加した場合、流路11bに流れるケーキの流量は相対的に減少する(図3(e))。
流路11aを流れるケーキの流量が流量目標値TFRaを超えた場合、流量が流量目標値TFRaに戻るまでスクリュー33aの回転数が下げられる(図3(f))。一方、流路11bを流れるケーキの流量が流量目標値TFRbより低下した場合、流量が流量目標値TFRbに戻るまでスクリュー33bの回転数が上げられる(図3(g))。したがって、スクリュー33の回転数の高い系列のスクリュー33の回転数の増加に追従して、他の系列のスクリュー33の回転数を増加することができる。そして、所定時間の経過毎に、回転数が最も高いスクリュー33aの回転数を所定数だけ上げることで、スクリュー33aの回転数は上限値近づいていく(図3(h))。各スクリュー33の回転数が増加するほど、各流路11の圧力が下がるため、一軸偏芯ポンプ20に掛かる負荷を小さくすることができる。この結果、一軸偏芯ポンプ20の電力消費量を削減することができる。
なお、図3では、スクリュー33の初期の回転数は、上限値の50%に設定する例を示しているが、上限値に設定されてもよい。この場合、スクリュー33の回転数が高い状態を維持して、所望の流量PV1に安定させるまでの時間を短縮することができる。また、スクリュー33の初期の回転数を上限値に設定する場合、複数の系列において分岐比率が最も高い系列のスクリュー33の回転数を上限値に固定してもよい。
図4は、スクリューコンベヤ30の回転数を変化させた場合と、ボールバルブの開度を変化させた場合との圧力損失の変化の概要を示す。ここで、圧力損失は、スクリュー33が配置される流路12内のケーキにより形成されるマテリアルシールによる抵抗に対応するパラメータであり、抵抗が高い場合、圧力損失は高くなり、抵抗が低い場合、圧力損失は低くなる。
図4(A)に示すように、スクリューコンベヤ30の回転数を制御する場合、圧力損失は、回転数に応じてほぼ線形に変化する。さらに、スクリューコンベヤ30を正回転する場合だけでなく逆回転した場合にも、圧力損失を制御することができるため、圧力損失の調節範囲を広くすることができる。スクリューコンベヤ30を逆回転した場合、圧力損失を、スクリューコンベヤ30の停止時(回転数=ゼロ)に比べて高くすることができる。また、例えば、スクリューコンベヤ30で搬送するケーキの含水率が低下した場合、圧力損失の特性は、圧力損失が高い側にシフトし、ケーキの含水率が上昇した場合、圧力損失の特性は、圧力損失が低い側にシフトするが、シフトした特性はほぼ線形に維持される。このため、スクリューコンベヤ30の回転数を制御する場合、搬送するケーキの性状にかかわりなく、スクリューコンベヤ30の回転数により、圧力損失を微調節することができ、ケーキによるマテリアルシールのシール性を微調節することができる。この結果、スクリューコンベヤ30の回転数を制御することで、流路11a、11bに流れこむケーキの流量を微調節することができる。
駆動機31aによるスクリュー33aの回転数がゼロにまで下げられると、その上流にある圧送装置20により押し込まれるケーキは流路11a内への供給がそのままで、流路11aからのスクリューコンベヤ30aによる排出がゼロとなり、同じ容積内にケーキ量が増え続けさらに圧密されることとなり、マテリアルシール性能は向上する。その状態で、排出はゼロとなり下流の焼却炉200への燃料供給が停止され、焼却炉200内の燃焼は継続しながらも燃料にあたるケーキ量が少なくなり、燃焼が穏やかになりその結果燃焼炉200内の主に空気や排ガスの熱による膨張が減少し、結果燃焼炉200内の圧力が減少する方向となる。
駆動機31aによるスクリュー33aの回転数がさらにマイナスになると、その上流にある圧送装置20により押し込まれるケーキは流路11a内への供給がそのままで、流路11aへ下流側の燃焼炉200から押し戻されてスクリューコンベヤ内のケーキが供給されることとなり、同じ容積内にケーキ量が増え続けさらに圧密されることとなり、マテリアルシール性能は向上する。その状態で、排出はもちろんゼロとなり下流の焼却炉200への燃料供給が停止され、焼却炉200内の燃焼は継続しながらも燃料にあたるケーキ量が少なくなり、燃焼が穏やかになりその結果燃焼炉200内の主に減少する方向となる。
図4(B)は、比較例として、ケーキが搬送される流路の焼却炉側の端に、流路の軸長方向に移動可能なコーンバルブを配置する場合の圧力損失の変化の例を示す。例えば、コーンバルブが僅かに開き、流路の末端とコーンバルブとの間に隙間ができると、圧力損失は急激に低下する。特に、ケーキの含水率が高く、流動性が高いほど、圧力損失は急激に低下する。したがって、コーンバルブでは、圧力損失を微調節できず、調節範囲も狭い。また、ケーキの性状に合わせた制御を行うことが困難である。すなわち、コーンバルブでは、ケーキの性状に合わせて、ケーキによるマテリアルシールのシール性を微調節することができず、複数に分岐された分岐路に流れこむケーキの流量を微調節することはできない。
以上、第1の実施形態では、複数のスクリュー33の回転数をそれぞれ調節することにより、複数の流路11から焼却炉200に供給するケーキの量を調節することができ、焼却炉200の複数個所の各々に所定の比率でケーキを供給することができる。特に、スクリュー33が配置される流路12内のケーキにより形成されるマテリアルシールのシール性(抵抗)は、スクリュー33の回転数に応じて線形に変化するため、焼却炉200に供給するケーキの量を容易かつ精度良く微調節することができる。例えば、ケーキの性状が変化し、流路11a、11bのそれぞれに分岐されるケーキの流量が変化した場合にも、焼却炉200の複数個所にそれぞれ供給されるケーキの量を、所望の分岐比率にすることができる。
また、スクリュー33の回転数が最も高い系列において、スクリュー33の回転数を所定数だけ上げることで、各流路11の圧力を下げることができ、一軸偏芯ポンプ20に掛かる負荷を小さくすることができる。この結果、一軸偏芯ポンプ20の電力消費量を削減することができる。さらに、スクリュー33の初期の回転数を上限値に設定することで、スクリュー33の回転数が高い状態を維持しながら、所望の流量PV1に安定させるまでの時間を短縮することができる。
図5は、第2の実施形態における供給システム102の一例を示す。図1に示した供給システム100と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、供給システム102は、例えば、過給式の流動焼却炉(高圧炉)の複数個所にケーキを供給するために使用される。なお、焼却炉202は、過給式以外の高圧の流動焼却炉でもよく、流動焼却炉以外の高圧の焼却炉でもよい。例えば、高圧とは、炉内の圧力が大気圧より高いことを示す。
図5に示す供給システム102は、図1に示す供給システム100の構成に加えて、圧力計61(61a、61b)、62(62a、62b)および差圧演算器70(70a、70b)を有する。また、遮断機構50aの駆動機51aは、制御装置60から出力される制御信号MV2aにより制御され、遮断機構50bの駆動機51bは、制御装置60から出力される制御信号MV2bにより制御される。圧力計61a、62aおよび差圧演算器70aは、スクリューコンベヤ30aを含む系列に属し、圧力計61b、62bおよび差圧演算器70bは、スクリューコンベヤ30bを含む系列に属する。以下の説明では、駆動機51a、51bは、駆動機51とも称される。
圧力計61aは、流路11aを形成する配管に設けられる開口部に設置され、流路11aの気体圧力P1aを計測する。圧力計62aは、焼却炉202の側壁に設けられる開口部に設置され、焼却炉202内の、気体、流動流体、気液混合体などの圧力P2aを計測する。圧力計61bは、流路11bを形成する配管に設けられる開口部に設置され、流路11bの気体圧力P1bを計測する。圧力計62bは、例えば、焼却炉202の側壁において、圧力計62aに対向する位置に設けられる開口部に設置され、焼却炉202内の、気体、流動流体、気液混合体などの圧力P2bを計測する。なお、焼却炉202内の、気体、流動流体、気液混合体などの圧力P2a、P2bがほぼ同じ場合、圧力計62a、62bのいずれか一方は設置されなくてもよい。以下の説明では、圧力P1a、P2a、P1b、P2bの値を、それぞれ圧力値P1a、P2a、P1b、P2bとも称する。
差圧演算器70aは、圧力値P1a、P2aの差(P1a-P2a)を演算して圧力差PV2aを算出し、算出した圧力差PV2aを制御装置60に出力する。差圧演算器70bは、圧力値P1b、P2bの差(P1b-P2b)を演算して圧力差PV2bを算出し、算出した圧力差PV2bを制御装置60に出力する。以下の説明では、圧力差PV2a、PV2bを圧力差ΔPとも称する。圧力計61a、62aおよび差圧演算器70aは、圧力差PV2aを計測する計測機構の一例であり、圧力計61b、62bおよび差圧演算器70bは、圧力差PV2bを計測する計測機構の一例である。
なお、差圧演算器70a、70bの機能は、制御装置60により実現されてもよい。この場合、供給システム102は差圧演算器70a、70bを持たない。制御装置60は、圧力計61aから出力される圧力値P1aと、圧力計62aから出力される圧力値P2aとを直接受け、圧力差PV2aを算出し、圧力計61bから出力される圧力値P1bと、圧力計62bから出力される圧力値P2bとを直接受け、圧力差PV2bを算出する。
さらに、圧力計61a、62aおよび差圧演算器70aの代わりに第1差圧計が配置され、圧力計61b、62bおよび差圧演算器70bの代わりに第2差圧計が配置されてもよい。この場合、第1差圧計は、流路11aの圧力P1aと焼却炉202の圧力P2aとを計測し、計測結果を圧力差PV2aとして制御装置60に出力する。第2差圧計は、流路11bの圧力P1bと焼却炉202の圧力P2bとを計測し、計測結果を圧力差PV2bとして制御装置60に出力する。
制御装置60は、複数の系列の1つを差圧制御系に設定し、残りの系列を流量制御系に設定する。制御装置60は、差圧制御系に対して、差圧演算器70から受ける圧力差ΔPと圧力目標値SVDPとの比較に基づいて、スクリュー33の回転数を制御する制御信号MV1を生成する差圧制御を実行する。圧力目標値SVDPは、焼却炉202から流路11に排ガス等を逆流させないための最小限の圧力差であり、圧力目標値の一例である。圧力目標値SVDPは、通常運転時における焼却炉202および流路11の各々の圧力変動等を考慮して決められる。なお、流路11の圧力が小さいほど、ケーキの流路11への圧送時に一軸偏芯ポンプ20に掛かる負荷が小さくなるため、圧力差ΔPは小さい方が好ましい。また、制御装置60は、差圧制御系に対して、圧力差ΔPと、圧力目標値SVDPより小さい下限値LMTとの比較に基づいて、遮断機構50の遮断弁52を遮断する制御信号MV2(MV2aまたはMV2b)を生成する。
さらに、制御装置60は、流量制御系に対して、流量計40からの流量PV1と分岐比率SVBRとに基づいて、スクリュー33の回転数を制御する制御信号MV1を生成する流量制御を実行する。圧力目標値SVDP、分岐比率SVBRおよび下限値LMTは、制御装置60の外部から供給されているが、制御装置60に内蔵されるフラッシュメモリ等の記憶部に予め記憶されてもよい。制御装置60によるスクリューコンベヤ30および遮断弁52の制御の例は、図6から図9で説明する。
なお、図5では、供給システム102が2つの系列を有する例を示すが、供給システム102は、3以上の系列を有してもよい。この場合、系列毎に、流路11、スクリューコンベヤ30、流量計40、遮断機構50、圧力計61、62および差圧演算器70が設けられる。
図6は、図5に示す供給システム102の動作の一例を示す。すなわち、図6は、供給システム100の制御方法の一例を示す。図6に示す動作は、制御装置60が制御プログラムを実行することにより実現される。図6に示す処理は、PID制御またはファジー制御等のフィードバック制御の手法が用いられてもよく、フィードフォワード制御またはロジック制御の手法が用いられてもよい。
まず、ステップS30において、制御装置60は、複数の系列の1つを差圧制御系に設定し、残りの系列を流量制御系に設定する。次に、ステップS32において、制御装置60は、圧力差ΔPが下限値LMTより小さいか否かを系列毎に判定する。制御装置60は、圧力差ΔPが下限値LMTより小さい系列が1つでもある場合、処理をステップS34に移行する。ステップS34において、制御装置60は、圧力差ΔPが下限値LMTより小さい系列の駆動機51に、遮断弁52を遮断するための制御信号MV2を出力する。なお、制御装置60は、全ての系列の駆動機51に制御信号MV2を出力してもよい。次に、ステップS36において、制御信号MV2を受けた駆動機51は、遮断弁52を遮断する。この場合、制御装置60は、図6に示す動作を繰り返すことなく処理を停止する。
すなわち、制御装置60は、圧力差ΔPが下限値よりも小さく、ケーキによるマテリアルシールが維持できないおそれがある系列が1つでも存在する場合、少なくともその系列の遮断弁52を遮断する。遮断弁52により流路11が遮断されることで、遮断弁52とスクリューコンベヤ30との間の流路11の圧力が抜けることを防止でき、焼却炉202中の排ガスや燃焼中のケーキが流路11に逆流することを防止できる。なお、一軸偏芯ポンプ20や一軸偏芯ポンプ20の代わりに配置される圧送用ポンプのシール性の劣化を考慮しなくてよい場合、流路11に遮断機構50を設けなくてもよい。逆に、シール性の劣化が懸念される場合、流路11に遮断機構50を設けることが望ましい。
一方、ステップS32で全ての系列の圧力差ΔPが下限値LMT以上の場合、ステップS38において、制御装置60は、各系列が差圧制御系であるか流量制御系であるかを判定する。選択した系列が差圧制御系の場合、制御装置60は、ステップS40において、差圧制御(図7)を実行し、処理をステップS44に移行する。選択した系列が流量制御系の場合、制御装置60は、ステップS42において、流量制御(図8)を実行し、処理をステップS44に移行する。
各系列の差圧制御または流量制御を実行した後、ステップS44において、制御装置60は、各系列の圧力差ΔPを取得する。次に、ステップS46において、制御装置60は、圧力差ΔPが最も小さい系列を差圧制御系に設定し、残りの系列を流量制御系に設定する。例えば、ステップS40で差圧制御を実行した差圧制御系の圧力差ΔPが、ステップS42で流量制御を実行した流量制御系の少なくともいずれかの圧力差ΔPより大きい場合、差圧制御系は流量制御系に設定され、圧力差ΔPが最も小さい流量制御系が差圧制御系に設定される。圧力差ΔPが最も小さい系列を差圧制御系に設定して差圧制御(図7)を実行することで、全ての系列において圧力差ΔPが下限値LMTに近づくことを防止することができ、遮断弁52が遮断される可能性を低くすることができる。
ステップS46の後、処理はステップS32に移行する。なお、ステップS32、S38、S40(またはS42)、S44、S46による処理は、所定の周期で繰り返し実行される。特に限定されないが、所定の周期は、例えば、数十ミリ秒から数百ミリ秒の間である。
図7は、図6に示すステップS40の処理(差圧制御)の一例を示す。図7に示すフローチャートにおいて、ステップS400は、差圧演算器70の動作を示し、ステップS402、S404、S406、S410、S412は、制御装置60の動作を示す。ステップS408、S414は、スクリューコンベヤ30の動作を示す。
まず、ステップS400において、差圧演算器70は、圧力計61から出力される圧力値P1と、圧力計62から出力される圧力値P2との差である圧力差ΔPを演算する。差圧演算器70は、演算により得た圧力差ΔPを制御装置60に出力してもよく、内蔵するレジスタ等の記憶部に保持してもよい。なお、圧力差ΔPの演算は、差圧制御系の差圧演算器70のみで実行されてもよく、全ての系列の差圧演算器70で実行されてもよい。
次に、ステップS402において、制御装置60は、差圧制御系の差圧演算器70から圧力差ΔPを取得する。次に、ステップS404において、制御装置60は、圧力差ΔPが圧力目標値SVDPより小さいか否かを判定する。圧力差ΔPが圧力目標値SVDPより小さい場合、ステップS406において、制御装置60は、差圧制御系の駆動機31にスクリュー33の回転数を所定数だけ下げるための制御信号MV1を出力する。次に、ステップS408において、差圧制御系の駆動機31は、制御信号MV1に基づいてスクリュー33の回転数を下げ、図7に示す処理を終了する。
圧力差ΔPが圧力目標値SVDPより小さい場合にスクリュー33の回転数を下げることで、スクリュー33が配置される流路12内のケーキにより形成されるマテリアルシールのシール性(抵抗)が高くなる。これにより、流路11の圧力は上昇して圧力差ΔPは大きくなるため、焼却炉202内で発生する排ガス等の高温、高圧の物質が流路11側に噴出する可能性を下げることができる。また、伸縮継手15等の熱に弱い部品が噴出した排ガス等により焼損または劣化することを防止できる。
なお、図7に示す処理では、回転数の最小値は、例えばゼロに設定されるが、図4で説明したように、回転数の最小値をゼロより小さく設定し、スクリュー33を逆回転させてもよい。スクリュー33が逆回転した場合に、ケーキが流路11側に移動するか焼却炉202側に移動するかは、流路11の圧力に依存する。なお、回転数がゼロまたは予め設定された最小値になった場合、制御装置60は、回転数が制御可能な範囲を下回ったことを示す警報を制御装置60に接続される表示装置等に出力してもよい。
一方、ステップS404で圧力差ΔPが圧力目標値SVDP以上であると判定された場合、ステップS410において、制御装置60は、圧力差ΔPが圧力目標値SVDPより大きいか否かを判定する。圧力差ΔPが圧力目標値SVDPより大きい場合、ステップS412において、制御装置60は、差圧制御系の駆動機31にスクリュー33の回転数を所定数だけ上げるための制御信号MV1を出力する。次に、ステップS414において、差圧制御系の駆動機31は、制御信号MV1に基づいてスクリュー33の回転数を上げ、図7に示す処理を終了する。
なお、ステップS410では、圧力差ΔPを圧力目標値SVDPより大きい圧力目標値(例えば、SVDP2)と比較してもよい。すなわち、圧力差ΔPが圧力目標値SVDP、SVDP2の間にある場合、スクリュー33の回転数を変更することなく維持してもよい。
圧力差ΔPが圧力目標値SVDPより大きい場合にスクリュー33の回転数を上げることで、スクリュー33が配置される流路12内のケーキにより形成されるマテリアルシールのシール性(抵抗)が低くなる。これにより、流路11の圧力は低下するため、ケーキを差圧制御系の流路11に圧送する一軸偏芯ポンプ20に掛かる負荷が小さくすることができる。この結果、一軸偏芯ポンプ20の電力消費量を削減することができる。
なお、回転数が、予め設定された最大値、またはスクリューコンベヤ30で設定可能な最大値になった場合、制御装置60は、回転数が制御可能な範囲を上回ったことを示す警報を制御装置60に接続される表示装置等に出力してもよい。
ステップS410で圧力差ΔPが圧力目標値SVDPより大きくないと判定された場合、制御装置60は、圧力差ΔPが圧力目標値SVDPと等しいと判断し、図7に示す処理を終了する。この場合、スクリュー33の回転数は、変更されることなく維持される。制御装置60は、スクリュー33の回転数を維持するための制御信号MV1をスクリューコンベヤ30の駆動機31に出力してもよい。
図8は、図6に示すステップS42の処理(流量制御)の一例を示す。図2と同じ処理については、詳細な説明を省略する。図8に示すステップS10、S12、S14、S16、S18、S20の処理は、図2に示したステップS10、S12、S14、S16、S18、S20の処理と同じである。すなわち、各流量制御系では、ケーキの流量PV1が式(1)、(2)に示した流量目標値TFR(TFRaまたはTFRb)より小さい場合、スクリュー33の回転数を上げることで、流路11から焼却炉200に供給されるケーキの量が増加される。また、ケーキの流量PV1が流量目標値TFRより大きい場合、スクリュー33の回転数を下げることで、流路11から焼却炉200に供給されるケーキの量が減少させる。これにより、流量制御系では、第1の実施形態と同様に、ケーキの流量PV1を流量目標値TFRに近づけることができる。
図9は、図6に示すフローチャートの処理を実行する供給システム102の動作の一例を示す。図9に示す例では、供給システム102は、2つの系列を有し、流量が互いに等しくなるように制御を実行する。すなわち、式(1)、(2)の演算に使用される分岐比率SVBRは、”0.5”に設定される。図9に示す時間範囲では、スクリューコンベヤ30aを含む系列が差圧制御系として制御され、スクリューコンベヤ30bを含む系列が流量制御系として制御される。
制御装置60は、各系列から取得した流量PV1a、PV1bの総和に基づいて、流量制御系の流路11bを流れるケーキの流量比が50%になるようにスクリュー33bの回転数を調節する。流量制御系におけるケーキの流量PV1bが例えば50%になることで、差圧制御系におけるケーキの流量PV1aは、流量制御を実行することなく50%になる。このように、複数の系列のうちの1つのみを差圧制御系に設定することで、供給システム102が3以上の系列を有する場合にも、差圧制御系におけるケーキの流量を、他の流量制御系による流量制御により所望の流量比率にすることができる。
また、制御装置60は、差圧制御系である差圧演算器70aからの圧力差PV2aを圧力目標値SVDPに近づける制御を実行する。図9に示す例では、圧力差PV2aは下限値LMT以上に維持されるため、流路11へのケーキの逆流や排ガスの噴出は発生せず、遮断弁52は遮断されない。
以上、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、スクリュー33の回転数の調節により、複数の流路11から焼却炉200の複数個所の各々に所定の比率でケーキを供給することができる。
さらに、この実施形態では、炉内の圧力が大気圧より高い焼却炉202の複数個所にケーキを供給する場合に、焼却炉202内の高温の物質が圧力差により流路11に逆流することを防止しつつ、流路11毎に設定された所定の比率でケーキを焼却炉202に供給することができる。また、圧力差ΔPが最も小さい系列を差圧制御系に設定することで、全ての系列において圧力差ΔPが下限値LMTに近づくことを防止することができ、遮断弁52が遮断される可能性を低くすることができる。さらに、ケーキの含水率等の性状の急激な変化により、圧力差ΔPが下限値LMTより小さくなった場合、遮断弁52を遮断することで、焼却炉202内で発生する排ガス等の高温の物質が圧力差により流路11側に逆流することを防止することができる。
図10は、第3の実施形態における供給システム104の一例を示す。図1に示した供給システム100と同じ要素については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
図10に示す供給システム104では、流路12aの上流側に開口部が形成され、開口部にホッパ80が設けられる。また、流路11aを形成する配管の下流側の端が開口されてホッパ80上に配置される。流路11aは第1分岐路の一例である。さらに、し渣・沈砂をホッパ80上に搬送するフライトケースコンベヤ90等の搬送機がホッパ80上に設けられる。例えば、し渣は、下水に含まれる繊維状の物質であり、繊維、トイレットペーパー、髪の毛、食料残渣などを含む。沈砂は、下水に含まれる砂である。スクリューコンベヤ30aは、ホッパ80に堆積されたケーキとし渣・沈砂とを含む堆積物82を混合する混合機としても機能する。なお、混合効率を上げるため、2軸タイプのスクリューコンベヤ30aが使用されてもよい。し渣・沈砂は、焼却炉200で処理する固形物の一例であり、ホッパ80は、ケーキとし渣・沈砂とを受ける容器の一例である。
また、供給システム104は、ホッパ80の上部に配置されたレベル計84を有する。レベル計84は、例えば、超音波等を堆積物82の表面に当てることで堆積物82の高さを計測し、計測した高さを高さ値PV3aとして制御装置60に出力する。例えば、堆積物82の高さは、堆積物82の体積にほぼ比例する。すなわち、レベル計84は、ホッパ80に蓄積された堆積物82の嵩を検出する検出器の一例である。なお、流路11aには、図1の遮断機構50aの代わりに調節機構53aが配置される。調節機構53aは、駆動機54aと、駆動機54aにより駆動されて、流路11aの開度を調節する調節弁55aとを有する。駆動機54aは、制御装置60から受ける制御信号MV2aに応じて調節弁55aの開度を調節する。
制御装置60は、第1の実施形態で説明した機能に加えて、レベル計84から受ける高さ値PV3aと予め設定された基準のレベル(高さ)を示す目標レベル値SVLVとに基づいて、スクリュー33aの回転数を調節する機能を有する。また、制御装置60は、スクリュー33bの回転数に基づいて、遮断弁52aの開度を調節する機能を有する。
図11は、図10に示す供給システム104の動作の一例を示す。すなわち、図11は、供給システム104の制御方法の一例を示す。図11に示す動作は、制御装置60が制御プログラムを実行することにより実現される。また、図11に示す動作は、制御装置60により所定の周期(例えば、数十ミリ秒から数百ミリ秒の間)で繰り返し実行される。図11に示す処理は、図2等の処理と同様に、PID制御またはファジー制御等のフィードバック制御の手法が用いられてもよく、フィードフォワード制御またはロジック制御の手法が用いられてもよい。なお、後述するステップS56、S58による調節弁55aの制御は、制御信号MV2aの出力から開度の変更までにタイムラグが発生して開度が期待する方向と逆に変化することを防止するため、ロジック制御(逐次制御)の手法を用いることが望ましい。
まず、ステップS50において、制御装置60は、図8に示したステップS42の処理を実行し、ホッパ80に接続された流路12aに配置されたスクリューコンベヤ30aを除くスクリューコンベヤ30bの流量制御を実行する。なお、図9での説明と同様に、ホッパ80を含む系列を除く系列で流量制御が実行されるため、結果的にホッパ80を含む系列の流量制御が実施されることになる。すなわち、図8に示したステップS42の処理を実行することで、焼却炉200の複数個所にケーキを所定の比率で供給することができる。なお、流路12aを介して焼却炉200に供給されるケーキとし渣・沈砂との混合物と、流路12bを介して焼却炉200に供給されるケーキとを所定の比率で供給したい場合、予め、し渣・沈砂の混合比率等を考慮した分岐比率SVBRが設定されてもよい。
次に、ステップS52において、制御装置60は、タイマ機能等を用いて、設定時間(例えば、10秒)が経過したか否かを判定する。設定時間が経過していない場合、処理はステップS60に移行される。設定時間が経過した場合、制御装置60は、ステップS54において、スクリュー33bの回転数が予め設定された上限値(100%)になっているか否かを判定する。なお、予め設定された上限値は、スクリュー33bの最大の回転数より小さくてもよい。この場合、制御装置60は、スクリュー33bの回転数が上限値以上になっているか否かを判定する。
スクリュー33bの回転数が上限値の場合、ステップS56において、制御装置60は、調節弁55aの開度を所定値だけ下げるために制御信号MV2aを駆動機54aに出力し、処理をステップS60に移行する。調節弁55aの開度を小さくすることで、流路11aの抵抗が上がるため、流路11aを流れるケーキの流量PV1aが相対的に減少し、流路11bを流れるケーキの流量PV1bが相対的に増加する。これにより、流路11bを流れるケーキの流量PV1bが式(2)に示した流量目標値TFRbより大きくため、所定の周期後に実行されるステップS50において、スクリュー33bの回転数が下げられる。したがって、スクリュー33bの回転数を上限値より下げることができ、図8に示した流量制御を正常に実行することができる。
一方、スクリュー33bの回転数が上限値以上の場合、ステップS58において、制御装置60は、調節弁55aの開度を所定値だけ上げるために制御信号MV2aを駆動機54aに出力し、処理をステップS60に移行する。調節弁55aの開度を大きくすることで、流路11aの抵抗が下がるため、流路11aを流れるケーキの流量PV1aが相対的に増加し、流路11bを流れるケーキの流量PV1bが相対的に減少する。これにより、流路11bを流れるケーキの流量PV1bが式(2)に示した流量目標値TFRbより小さくなるため、所定の周期後に実行されるステップS50において、スクリュー33bの回転数が上げられる。したがって、流路11bの圧力を下げることができ、一軸偏芯ポンプ20に掛かる負荷を小さくすることができる。
なお、供給システム104が3以上の系列を有する場合、制御装置60は、ステップS54でホッパ80を含まない2以上の系列のスクリュー33bの少なくともいずれかが上限値になっている場合、ステップS56の処理を実行する。また、制御装置60は、ステップS54でホッパ80を含まない2以上の系列の全てのスクリュー33bが上限値でない場合、ステップS58の処理を実行する。
ステップS60において、制御装置60は、ホッパ80に堆積された堆積物82の高さ値PV3aが目標レベル値SVLVより大きいか否かを判定する。高さ値PV3aが目標レベル値SVLVより大きい場合、ステップS62において、制御装置60は、スクリュー33aの回転数を所定数だけ上げるための制御信号MV1aを出力し、処理を終了する。スクリュー33aの回転数を上げることで、ホッパ80内の堆積物82の焼却炉200への供給量が増加するため、堆積物82の高さを減らすことができる。
一方、ステップS60で高さ値PV3aが目標レベル値SVLVより大きくない場合、ステップS64において、制御装置60は、高さ値PV3aが目標レベル値SVLVより小さいか否かを判定する。高さ値PV3aが目標レベル値SVLVより小さくない場合、制御装置60は、高さ値PV3aが目標レベル値SVLVに等しいと判断し、処理を終了する。
高さ値PV3aが目標レベル値SVLVより小さい場合、ステップS66において、制御装置60は、スクリュー33aの回転数を所定数だけ下げるための制御信号MV1aを出力し、処理を終了する。スクリュー33aの回転数を下げることで、ホッパ80内の堆積物82の焼却炉200への供給量が減少する。これにより、ホッパ80内の堆積物82を増やし、高さを目標レベル値SVLVに近づけることができる。
例えば、ホッパ80内の堆積物82が減り続け、流路12aに滞留するケーキがほとんどなくなった場合、焼却炉200からの輻射熱によりスクリュー33aが熱くなるおそれがある。ステップS58の処理により、堆積物82の高さが目標レベル値SVLVを大きく下回らないようにすることで、所定量のケーキを流路12aに常に滞留させることができ、輻射熱によりスクリュー33aが熱くなることを防止することができる。
なお、図10および図11では、制御信号MV2aに応じて流路11aの開度を調節可能な調節機構53aを用いて、流路11aを流れるケーキの流量を調節する例に付いて述べた。しかしながら、流路11aの開度を手動で調節可能な調節弁が使用されてもよい。この場合、制御装置60は、ステップS56の処理の代わりに、スクリュー33bの回転数が上限値以上になったことを示す情報を制御装置60に接続される表示装置等に出力する。また、制御装置60は、ステップS58の処理の代わりに、スクリュー33bの回転数が上限値より小さくなったことを示す情報を表示装置等に出力する。
焼却炉200の運用を管理する管理者等は、スクリュー33bの回転数が上限値以上になったことを表示装置等により認識し、調節弁の開度を手動で下げる。また、管理者等は、スクリュー33bの回転数が上限値より小さくなったことを表示装置等により認識し、調節弁の開度を手動で上げる。
さらに、ステップS52、S54、S56、S58の処理を実行する代わりに、流路11aの途中に、ケーキの流量を絞るオリフィス等の絞り部材を配置してもよい。流路11に絞り部材を配置した場合、流路11aを流れるケーキの流量は、流路11bを流れるケーキの流量よりも常に少なくなる。このため、スクリュー33bの回転数が上限値(100%)に達した場合にも、スクリュー33aの回転数は上限値(100%)に達しておらず、堆積物82の焼却炉200への供給量をスクリュー33aの回転数の増減により調節することができる。
以上、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、スクリュー33の回転数の調節により、複数の流路11から焼却炉200の複数個所の各々に所定の比率でケーキを供給することができる。
さらに、この実施形態では、複数の系列のいずれかにより焼却炉200に供給されるケーキにし渣・沈砂が混合される場合にも、焼却炉200の複数個所にケーキを所定の比率で供給することができる。スクリュー33aの回転数の調節によりホッパ80内に堆積される堆積物82の高さを目標レベル値SVLVに近づけることができる。この結果、堆積物82がホッパ80からあふれることを防止することができ、スクリュー33aが配置される流路12aに滞留するケーキがほとんどなくなってしまう不具合を防止することができる。
また、スクリュー33bの回転数に基づいて、調節弁55aの開度を調節することで、スクリュー33bの回転数が上限値に達し、流量制御ができなくなることを防止することができ、図8に示した流量制御を正常に実行することができる。
なお、上述した供給システム100、102、104は、下水汚泥のケーキ以外の処理対象物を、焼却炉200、202以外の炉に供給するために使用されてもよい。例えば、供給システム100、102、104は、バイオマスケーキを高圧の反応炉に供給するために使用されてもよく、スラリー状物質や水分を含む樹脂粉末等を乾燥炉または加熱炉等に供給するために使用されてもよい。すなわち、供給システム100、102、104は、スラリー状物質等を含む処理対象物を、処理対象物を処理する炉に供給するために使用可能である。