以下、信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の実施形態について順に説明する。
(信号処理装置の実施形態)
<1>
本実施形態の信号処理装置は、時系列信号の特性を表示装置に表示するための画像信号の時間的変化の大きさに基づいて、前記画像信号の時間的変化を平滑化する平滑化処理を前記画像信号に対して行う平滑化手段と、前記平滑化処理が行われた前記画像信号を、当該画像信号が示す表示画像を表示する表示手段に出力する出力手段とを備える。
本実施形態の信号処理装置は、時系列信号の特性(つまり、時系列信号の状態を特定することが可能な任意の指標であって、例えば、信号強度)に表示装置に表示するための信号処理を行う。つまり、本実施形態の信号処理装置は、時系列信号の特性を視覚的に特定することが可能な何らかの表示画像(或いは、表示対象物)を表示装置に表示するための信号処理を行う。尚、信号処理装置は、表示装置を備えていてもよい。或いは、信号処理装置は、表示装置を備えていなくともよい。また、表示画像は、時系列信号の特性に応じて表示態様が変化する表示画像であることが好ましい。言い換えれば、表示画像は、時系列信号の特性が大きく変化すればするほど表示態様が大きく変化する表示画像であることが好ましい。
尚、ここでいう「時系列信号」とは、時系列又は時間軸に沿った信号成分から構成される信号を意味する広い趣旨である。このような時系列信号は、信号処理装置自身によって直接的に検出されてもよい(つまり、直接的に取得されてもよい)。或いは、このような時系列信号は、信号処理装置の外部に設置される他の装置によって検出されてもよい(つまり、信号処理装置によって間接的に取得されてもよい)。
特に、本実施形態の信号処理装置は、時系列信号の特性を表示装置に表示するための信号処理を行うために、平滑化手段と、出力手段とを少なくとも備えている。
平滑化手段は、時系列信号の特性を表示装置に表示するための画像信号(つまり、時系列信号の特性を視覚的に特定する表示画像を示す画像信号)の時間的変化の大きさに基づいて、画像信号の時間的変化を平滑化する平滑化処理を行う。つまり、平滑化手段は、画像信号の時間的変化の大きさに基づいて定まる態様で、画像信号の時間的変化を平滑化する平滑化処理を行う。
ここで、画像信号が時系列信号の特性を表示装置に表示するための信号であるがゆえに、画像信号もまた、時系列信号と同様に、時系列又は時間軸に沿った信号成分から構成される信号となる。つまり、画像信号は、ある時点での時系列信号の特性を視覚的に特定する単一の表示画像が時系列又は時間軸に沿って複数枚並ぶことで構成される画像群を示す画像信号となる。言い換えれば、画像信号は、ある時点での時系列信号の特性を視覚的に特定する単一の表示画像を示す画像信号(言い換えれば、信号成分)が、時系列又は時間軸に沿って複数並ぶことで構成される画像信号となる。従って、「画像信号の時間的変化」とは、時間の経過に伴う画像信号の変化(典型的には、画像信号の特性の変化)を意味する。言い換えれば、「画像信号の時間的変化」とは、時間軸に沿った画像信号の変化を意味する。例えば、画像信号の時間的変化は、少なくとも2つの異なるタイミングにおける時系列信号の特性を表示するための少なくとも2つの画像信号の間での変化を意味していてもよい。言い換えれば、例えば、画像信号の時間的変化は、一のタイミングにおける時系列信号の特性を表示するための一の画像信号と他のタイミングにおける時系列信号の特性を表示するための他の画像信号との間の変化(例えば、他の画像信号を基準とした一の画像信号の変化)を意味していてもよい。
画像信号の時間的変化は、定量的な指標で特定されてもよい。例えば、画像信号の時間的変化は、一の画像信号と他の画像信号との間の変化が大きくなるほど(つまり、他の画像信号に対して、一の画像信号が大きく変化しているほど)画像信号の時間的変化が大きくなるように、定量的な指標で特定されてもよい。
尚、画像信号が何らかの表示画像を示すための信号であることを考慮すれば、画像信号の時間的変化に加えて又は代えて、当該画像信号が示す表示画像の時間的変化が用いられてもよい。つまり、平滑化手段は、画像信号が示す表示画像の時間的変化に基づいて、画像信号の時間的変化(或いは、画像信号が示す表示画像の時間的変化)を平滑化する平滑化処理を画像信号(或いは、画像信号が示す表示画像)に対して行ってもよい。
更に、このような「画像信号の時間的変化」を平滑する「平滑化処理」とは、平滑化処理が行われる前と比較して画像信号の時間的変化(好ましくは、単位時間当たりの時間的変化)を小さくする(言い換えれば、緩やかにする又は滑らかにする)処理を意味していてもよい。つまり、「平滑化処理」とは、平滑化処理が行われる前と比較して時間軸に沿った画像信号の変化量(好ましくは、単位時間当たりの変化量)を小さくする処理を意味していてもよい。言い換えれば、「平滑化処理」とは、平滑化処理が行われる前における画像信号の時間的変化と比較して、平滑化処理が行われた画像信号の時間的変化を小さくする処理を意味していてもよい。つまり、本実施形態では、「平滑化処理」とは、単一の画像信号が示す単一の表示画像内での平滑化処理(いわゆる、ノイズ除去処理等)を意味するものではない。
平滑化手段によって平滑化処理が行われた画像信号は、出力手段によって、表示装置に出力される。その結果、表示装置は、平滑化処理が行われた画像信号が示す表示画像を表示する。つまり、表示装置は、平滑化処理が行われた画像信号が示す表示画像を表示することで、時系列信号の特性を表示することができる。
ここで、画像信号が時系列信号の特性を表示するための信号であることを考慮すれば、時系列信号の特性が大きく変化した場合には、画像信号の時間的変化が相対的に大きくなる。このため、仮に画像信号に対して平滑化処理が行われていなければ、平滑化処理が行われていない画像信号が示す表示画像の時間的変化もまた相対的に大きいままである。従って、仮に画像信号に対して平滑化処理が行われていなければ、時系列信号の特性が大きく変化した場合には、表示装置が表示する表示画像(例えば、表示画像の表示態様)が、表示装置を見るユーザにとって刺激となり得る程度に大きく変化してしまうおそれがある。このような表示画像の表示は、ユーザにとって必ずしも見やすいとは限らない。
しかるに、本実施形態では、画像信号に対して平滑化処理が行われているため、画像信号に対して平滑化処理が行われていない場合と比較して、平滑化処理が行われた画像信号が示す表示画像の時間的変化が相対的に小さくなる。このため、時系列信号の特性が大きく変化した場合であっても、表示画像の時間的変化が相対的に小さくなる。従って、本実施形態では、画像信号に対して平滑化処理が行われていない場合と比較して、時系列信号の特性が大きく変化した場合であっても、表示装置が表示する表示画像(例えば、表示画像の表示態様)が、ユーザにとって刺激となり得る程度に大きく変化してしまうことは殆ど又は全くない。つまり、本実施形態では、表示画像の時間的変化を過度に大きくしたくない(言い換えれば、表示画像の表示態様を過度に大きく変化させたくない)場合には、平滑化手段は、画像信号に対して平滑化処理を行うことで、表示画像の時間的変化を相対的に小さくすることができる。
例えば、上述したように、時系列信号の特性のわずかな時間的変化をも表示することができるように画像信号が生成される場合を想定する。具体的には、例えば、時系列信号の特性(例えば、信号強度)の大きさに比例する大きさの表示画像(典型的には、図形)を表示するための画像信号が生成される場合を想定する。この場合、時系列信号の特性が相対的に大きく変化する場合には、画像信号に対して平滑化処理が行われなければ、特性が大きく変化する前の時系列信号に対応する表示画像の大きさと比較して、特性が大きく変化した後の時系列信号に対応する表示画像の大きさが非常に大きくなってしまう。その結果、表示装置を見ているユーザは、ユーザにとって刺激となり得る程度に相対的に激しく大きさが変化する表示画像を見る必要がある。従って、ユーザは、表示画像を好適に認識することができなくなるおそれがある。しかるに、本実施形態では、時系列信号の特性が相対的に大きく変化する場合であっても、画像信号に対して平滑化処理が行われるがゆえに、特性が大きく変化する前の時系列信号に対応する表示画像と比較して、特性が大きく変化した後の時系列信号に対応する表示画像の大きさが非常に大きくなってしまうことが殆ど又は全くなくなる。その結果、ユーザは、ユーザにとって刺激となり得る程度に相対的に激しく大きさが変化する表示画像を見なくともよくなる。従って、ユーザは、表示画像を好適に認識することができる。
このように、本実施形態の信号処理装置によれば、時系列信号の特性が好適に表示される。
尚、平滑化手段は、時系列信号の特性を視覚的に特定する表示画像の時間的変化の大きさに基づいて、前記表示画像の時間的変化を平滑化する平滑化処理を前記表示画像に対して行ってもよい。この場合、出力手段は、前記平滑化処理が行われた前記表示画像を示す画像信号を、当該表示画像を表示する表示装置に出力してもよい。
<2>
本実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記平滑化手段は、前記画像信号の時間的変化の大きさが所定閾値以下となるように、前記平滑化処理を行う。
この態様によれば、平滑化手段が行う平滑化処理によって、画像信号の時間的変化の大きさは、当該時間的変化の大きさが所定閾値以下となるまで小さくなる。従って、上述した各種効果が好適に享受される。
尚、前記平滑化手段は、前記表示画像の時間的変化の大きさが所定閾値以下となるように、前記平滑化処理を行ってもよい。
<3>
本実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記平滑化手段は、(i)前記画像信号の時間的変化の大きさが所定閾値より大きい場合には前記平滑化処理を行い、(ii)前記画像信号の時間的変化の大きさが所定閾値より大きくない場合には前記平滑化処理を行わない。
この態様によれば、平滑化手段は、画像信号の時間的変化の大きさが所定閾値より大きい場合に平滑化処理を行えば足りる。言い換えれば、平滑化手段は、画像信号の時間的変化の大きさが所定閾値より大きくない場合には、平滑化処理を行わなくともよくなる。その結果、平滑化手段は、画像信号の時間的変化の大きさが所定閾値より大きい場合には、画像信号の時間的変化の大きさが所定閾値以下となるように(言い換えれば、画像信号の時間的変化の大きさが所定閾値以下となるまで)平滑化処理を行うことができる。このような平滑化手段が行う平滑化処理によって、画像信号の時間的変化の大きさは、当該時間的変化の大きさが所定閾値以下となるまで小さくなる。従って、上述した各種効果が好適に享受される。
尚、画像信号に対して1回でも平滑化処理が行われた場合には、出力手段は、平滑化処理が行われた画像信号(つまり、平滑処理が行われた結果、時間的変化の大きさが所定閾値以下となるという条件を満たした画像信号)を表示装置に出力することは上述したとおりである。一方で、画像信号に対して1回も平滑化処理が行われなかった場合には、出力手段は、平滑化処理が行われていない画像信号(つまり、平滑処理が行われてない状態でも、時間的変化の大きさが所定閾値以下となるという条件を満たしている画像信号)を表示装置に出力してもよい。
また、前記平滑化手段は、(i)前記表示画像の時間的変化の大きさが所定閾値より大きい場合には、前記平滑化処理を行い、(ii)前記表示画像の時間的変化の大きさが前記所定閾値より大きくない場合には、前記平滑化処理を行わなくともよい。
<4>
本実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記平滑化手段は、一のタイミングにおける前記時系列信号の特性を表示するための一の画像信号と前記一のタイミングよりも前の他のタイミングにおける前記時系列信号の特性を表示するための他の画像信号との間の時間的変化に基づいて、前記一の画像信号と前記他の画像信号との間の時間的変化を平滑化する前記平滑化処理を前記一の画像信号に対して行う。
この態様によれば、平滑化手段は、相前後する2つのタイミングにおける時系列信号の特性を表示するための2つの画像信号(つまり、一の画像信号及び他の画像信号)の間の時間的変化を平滑化する平滑化処理を行うことができる。このとき、平滑化手段は、一のタイミングにおける時系列信号の特性を表示するための一の画像信号と、一のタイミングの直前に位置する他のタイミングにおける時系列信号の特性を表示するための他の画像信号との間の時間的変化を平滑化する平滑化処理を行うことが好ましい。その結果、平滑化処理が行われた一の画像信号が示す一の表示画像の、他の表示画像を基準とする時間的変化もまた小さくなっている。従って、表示装置に表示されている表示画像が他の表示画像から一の表示画像に切り替わったとしても、表示画像の表示態様が、ユーザにとって刺激となり得る程度に過度に大きく変わってしまうことが殆ど又は全くなくなる。このため、他のタイミングから一のタイミングに至るまでの間に(つまり、他の表示画像が表示されてから一の表示画像が表示されるまでの間に)時系列信号の特性が大きく変化してしまった場合であっても、表示装置が表示する表示画像(例えば、表示画像の表示態様)がユーザにとって刺激となり得る程度に大きく変化してしまうことが殆ど又は全くなくなる。従って、上述した各種効果が好適に享受される。
尚、前記平滑化手段は、一のタイミングでの前記時系列信号の特性を視覚的に特定する一の表示画像と前記一のタイミングよりも前の他のタイミングでの前記時系列信号の特性を視覚的に特定する他の表示画像との間の時間的変化に基づいて、前記一の表示画像と前記他の表示画像との間の時間的変化を平滑化する前記平滑化処理を前記一の表示画像に対して行ってもよい。
<5>
上述の如く一の画像信号と他の画像信号との間の時間的変化を平滑化する平滑化処理を一の画像信号に対して行う信号処理装置の他の態様では、前記平滑化処理は、時間的に連続し且つ前記一の画像信号を含む所定数の前記画像信号の移動平均を新たな前記一の画像信号に設定する処理であり、前記平滑化手段は、前記一の画像信号と前記他の画像信号との間の時間的変化の大きさに基づいて前記所定数を設定する。
この態様によれば、平滑化手段は、時間的に連続する所定数の画像信号の移動平均(つまり、時間軸に沿った移動平均)を算出することで、画像信号を平滑化することができる。言い換えれば、平滑化手段は、時間的に連続する所定数のタイミングの夫々の時系列信号の特性を表示するための所定数の画像信号の移動平均を算出することで、画像信号を平滑化することができる。更に言い換えれば、平滑化手段は、時間的に連続する所定数のタイミングの夫々の時系列信号の特性を視覚的に特定する所定数の表示画像を示す所定数の画像信号の移動平均を算出することで、画像信号を平滑化することができる。具体的には、平滑化手段は、時間的に連続する所定数の画像信号(但し、一の画像信号を、例えば時間的に最後の又は最新の画像信号として含む)の移動平均を算出することで、一の画像信号を平滑化することができる。その結果、他のタイミングから一のタイミングに至るまでの間に(つまり、他の表示画像が表示されてから一の表示画像が表示されるまでの間に)時系列信号の特性が大きく変化してしまった場合であっても、表示装置が表示する表示画像(例えば、表示画像の表示態様)がユーザにとって刺激となり得る程度に大きく変化してしまうことが殆ど又は全くなくなる。従って、上述した各種効果が好適に享受される。
加えて、この態様では、平滑化手段は、一の画像信号と他の画像信号との間の時間的変化の大きさに基づいて所定数を設定する。従って、平滑化手段は、例えば、一の画像信号と他の画像信号との間の時間的変化を過度に大きくしないという観点で所定数を設定することができる。
尚、前記平滑化処理は、前記一のタイミングを終端時刻とする所定数の連続するタイミングの夫々の前記時系列信号の特性を視覚的に特定する前記所定数の前記表示画像の移動平均を新たな前記一の表示画像に設定する処理であり、前記平滑化手段は、前記一の表示画像と前記他の表示画像との間の時間的変化の大きさに基づいて前記所定数を設定してもよい。
<6>
上述の如く一の画像信号と他の画像信号との間の時間的変化の大きさに基づいて所定数を設定する信号処理装置の他の態様では、前記平滑化手段は、前記一の画像信号と前記他の画像信号との間の時間的変化の大きさが所定閾値以下となるように、前記所定数を設定する。
この態様によれば、平滑化手段が行う平滑化処理によって、一の画像信号と他の画像信号との間の時間的変化の大きさは、当該時間的変化の大きさが所定閾値以下となるまで小さくなる。従って、上述した各種効果が好適に享受される。
尚、前記平滑化手段は、前記一の表示画像と前記他の表示画像との間の時間的変化の大きさが所定閾値以下となるように、前記所定数を設定してもよい。
<7>
上述の如く一の画像信号と他の画像信号との間の時間的変化の大きさに基づいて所定数を設定する前記平滑化手段は、前記一の画像信号と前記他の画像信号との間の時間的変化の大きさが前記所定閾値以上である場合に前記所定数が増加するように、前記所定数を設定する。
この態様によれば、平滑化手段が行う平滑化処理によって、一の画像信号と他の画像信号との間の時間的変化の大きさは、当該時間的変化の大きさが所定閾値以下となるまで小さくなる。というのも、移動平均を算出するに当たっての母数が所定数の増加に伴って多くなるがゆえに、所定数が増加するほど、一の画像信号と他の画像信号との間の時間的変化の大きさが小さくなる可能性が高いからである。従って、上述した各種効果が好適に享受される。
尚、前記平滑化手段は、前記一の表示画像と前記他の表示画像との間の時間的変化の大きさが前記所定閾値以上である場合に前記所定数が増加するように、前記所定数を設定してもよい。
<8>
本実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記平滑化手段は、前記画像信号のうちの一部の画像信号の時間的変化の大きさに基づいて、当該一部の画像信号の時間的変化を平滑化する前記平滑化処理を前記一部の画像信号に対して行う。
この態様によれば、平滑化手段は、画像信号の全体に対して平滑化処理を行うことに加えて又は代えて、画像信号の一部に対して平滑化処理を行うことができる。その結果、平滑化手段は、画像信号が示す表示画像のうちの一部の時間的変化を選択的に小さくしたいという要請がある場合であっても、表示画像のうちの一部の時間的変化を選択的に小さくするように平滑化処理を行うことができる。
<9>
本実施形態の信号処理装置の他の態様では、前記平滑化手段は、前記画像信号が示す表示画像のうちの一部の画像部分を示す一部の画像信号の時間的変化の大きさに基づいて、当該一部の画像信号の時間的変化を平滑化する前記平滑化処理を前記一部の画像信号に対して行う。
この態様によれば、平滑化手段は、画像信号が示す表示画像の全体の時間的変化を小さくするように平滑化処理を行うことに加えて又は代えて、表示画像の一部の時間的変化を小さくするように平滑化処理を行うことができる。その結果、平滑化手段は、表示画像のうちの一部の時間的変化を選択的に小さくしたいという要請がある場合であっても、表示画像のうちの一部の時間的変化を選択的に小さくするように平滑化処理を行うことができる。
<10>
本実施形態の信号処理装置の他の態様では、当該信号処理装置に入力される時系列信号を前記画像信号に変換する変換手段を更に備える。
この態様によれば、平滑化手段は、信号処理装置自身が生成する(言い換えれば、信号処理装置が備える変換手段が生成する)画像信号に対して平滑化処理を行うことができる。
(信号処理方法の実施形態)
<11>
本実施形態の信号処理方法は、時系列信号の特性を表示装置に表示するための画像信号の時間的変化の大きさに基づいて、前記画像信号の時間的変化を平滑化する平滑化処理を前記画像信号に対して行う平滑化工程と、前記平滑化処理が行われた前記画像信号を、当該画像信号が示す表示画像を表示する表示手段に出力する出力工程とを備える。
本実施形態の信号処理方法によれば、上述した本実施形態の信号処理装置が享受する各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
尚、上述した本実施形態の信号処理装置が採用し得る各種態様に対応して、本実施形態の信号処理方法もまた、各種態様を採用してもよい。
(コンピュータプログラムの実施形態)
<12>
本実施形態のコンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるコンピュータプログラムであって、時系列信号の特性を表示装置に表示するための画像信号の時間的変化の大きさに基づいて、前記画像信号の時間的変化を平滑化する平滑化処理を前記画像信号に対して行う平滑化工程と、前記平滑化処理が行われた前記画像信号を、当該画像信号が示す表示画像を表示する表示手段に出力する出力工程とを前記コンピュータに実行させる。
本実施形態のコンピュータプログラムによれば、上述した本実施形態の信号処理装置が享受する各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
尚、上述した本実施形態の信号処理装置が採用し得る各種態様に対応して、本実施形態のコンピュータプログラムもまた、各種態様を採用してもよい。
(記録媒体の実施形態)
<13>
本実施形態の記録媒体は、コンピュータにより実行されるコンピュータプログラムが記録されている記録媒体であって、時系列信号の特性を表示装置に表示するための画像信号の時間的変化の大きさに基づいて、前記画像信号の時間的変化を平滑化する平滑化処理を前記画像信号に対して行う平滑化工程と、前記平滑化処理が行われた前記画像信号を、当該画像信号が示す表示画像を表示する表示手段に出力する出力工程とを前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムが記録されている。
本実施形態の記録媒体によれば、上述した本実施形態の信号処理装置が享受する各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
尚、上述した本実施形態の信号処理装置が採用し得る各種態様に対応して、本実施形態の記録媒体もまた、各種態様を採用してもよい。
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされる。
以上説明したように、本実施形態の信号処理装置は、平滑化手段と、出力手段とを備える。本実施形態の信号処理方法は、平滑化工程と、出力工程とを備える。本実施形態のコンピュータプログラムは、平滑化工程と出力工程とをコンピュータに実行させる。本実施形態の記録媒体は、平滑化工程と出力工程とをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが記録されている記録媒体である。従って、より見やすい態様で時系列信号が表示される。
以下、図面を参照しながら、信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の実施例について説明する。
(1)第1実施例
はじめに、図1から図9を参照しながら、第1実施例の信号処理システム1について説明する。
尚、第1実施例では、時系列信号として、呼吸音を示す呼吸音信号Sが用いられるものとする。但し、時系列信号として、呼吸音信号とは異なるその他の生体音信号が用いられてもよい。その他の生体音信号の一例としては、例えば、心音を示す心音信号や、脈動(言い換えれば、脈波)に起因した音を示す脈動音信号や、内臓器官の活動状況に起因した音(例えば、腸の動きに起因した腸音)を示す内臓音信号や、血液の流れに起因した音を示す血流音信号等が一例としてあげられる。或いは、第2実施例において説明するように、時系列信号として、生体音信号以外の任意の信号(例えば、第2実施例で示す気圧信号P等)が用いられてもよい。
(1-1)第1実施例の信号処理システム1の構成
はじめに、図1を参照しながら、第1実施例の信号処理システム1の構成について説明する。図1は、第1実施例の信号処理システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施例の信号処理システム1は、呼吸音センサ11と、信号解析装置12と、信号処理装置13と、表示装置14とを備えている。
呼吸音センサ11は、生体に取り付けられると共に生体の呼吸音を検出することで、呼吸音信号Sを取得する。また、呼吸音センサ11は、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、取得した呼吸音信号Sを信号解析装置12に対して送信する。
このような呼吸音センサ11は、典型的にはマイク(例えば、コイル型マイクや、コンデンサ型マイクや、圧電型マイク等)である。但し、呼吸音センサ11が呼吸音を検出することができる限りは、呼吸音センサ11はどのような形式のセンサであってもよい。
尚、図1は、呼吸音センサ11が信号処理装置13の外部に配置される例を示している。しかしながら、呼吸音センサ11が信号処理装置13の内部に配置されていてもよい。
信号解析装置12は、呼吸音センサ11が取得した呼吸音信号Sに対して所定の解析処理を行う。呼吸音信号に対して所定の解析処理を行うために、信号解析部12は、A/D(Analogue to Digital)変換部121と、信号解析部122と、信号分離部123とを備えている。
A/D変換部121は、呼吸音センサ11から送信される呼吸音信号Sに対してA/D変換処理を行う。つまり、A/D変換部121は、呼吸音センサ11から送信されるアナログ信号としての呼吸音信号Sを、デジタル信号としての呼吸音信号Sに変換する。
信号解析部122は、A/D変換処理が行われた呼吸音信号Sに対して、所定の解析処理を実行する。第1実施例では、所定の解析処理は、呼吸音信号Sを、互いに区別可能な複数種類の信号成分skに分離する解析処理を含んでいる。言い換えれば、所定の解析処理は、呼吸音信号Sから、互いに区別可能な複数種類の信号成分skのうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいる。言い換えれば、所定の解析処理は、呼吸音信号Sにどのような種類の信号成分skが含まれているかを解析する解析処理を含んでいる。
具体的には、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号Sを、正常音に相当する信号成分skと、正常音とは異なる異常音に相当する信号成分skとに分離する解析処理を含んでいてもよい。言い換えれば、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号Sから、正常音に相当する信号成分sk及び異常音に相当する信号成分skのうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいてもよい。
或いは、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号Sを、互いに区別可能な複数種類の正常音に相当する複数種類の信号成分skに分離する解析処理を含んでいてもよい。言い換えれば、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号Sから、互いに区別可能な複数種類の正常音に相当する複数種類の信号成分skのうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいてもよい。
或いは、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号Sを、互いに区別可能な複数種類の異常音に相当する複数種類の信号成分skに分離する解析処理を含んでいてもよい。言い換えれば、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号Sから、互いに区別可能な複数種類の異常音に相当する複数種類の信号成分skのうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいてもよい。
信号分離部123は、信号解析部122による解析処理の結果に基づいて、呼吸音信号Sを複数種類の信号成分skに分離する。信号分離部123は、更に、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、当該分離した複数種類の信号成分skの夫々を信号処理装置13に対して送信する。
尚、信号解析装置12は、信号解析部122及び信号分離部123を備えていなくともよい。この場合、信号解析装置12は、A/D変換部121によってデジタル信号に変換された呼吸音信号Sを、信号処理装置13に対して送信すればよい。この場合、信号処理装置13は、複数種類の信号成分skの夫々に対して所定の信号処理を行うことに代えて、呼吸音信号Sに対して所定の信号処理を行ってもよい。
更には、信号解析部12は、A/D変換部121を備えていなくともよい。この場合、呼吸音センサ11は、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、取得した呼吸音信号Sを信号処理装置13に対して送信すればよい。
また、図1に示す例は、信号解析装置12が信号処理装置13の外部に配置される例を示している。しかしながら、信号解析装置12のうちの少なくとも一部が信号処理装置13の内部に配置されていてもよい。
信号処理装置13は、信号解析部12から送信される複数種類の信号成分(つまり、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分)skの夫々を対象として、各信号成分skの特性を視覚的に特定する表示画像を生成する所定の信号処理を行う。つまり、信号処理装置13は、信号成分sk毎に所定の信号処理を行う。
呼吸音信号Sを構成する複数種類の信号成分skの夫々に対して所定の信号処理を行うために、信号処理装置13は、信号記憶部131と、画像生成部132と、過去画像記憶部133aと、比較画像記憶部133bと、画像差異判定部134と、平滑化パラメータ更新部135と、平滑化部136とを備えている。
信号記憶部131は、信号解析装置12から送信される複数種類の信号成分skを一時的に記憶する。このため、信号記憶部131は、メモリ又はバッファを含んでいてもよい。尚、後述するように、信号記憶部131は、所定期間分の呼吸音信号Sを構成する複数種類の信号成分skを記憶することが好ましい。
画像生成部132は、信号記憶部131が記憶している各信号成分skの特性を視覚的に特定する表示画像を示す画像信号Dを生成する。
表示画像は、各信号成分skの特性を視覚的に特定することができる限りは、どのような表示画像であってもよい。例えば、表示画像は、各信号成分skの特性を視覚的に特定するテキスト(例えば、文字や数値等)を含む表示画像であってもよい。或いは、例えば、表示画像は、各信号成分skの特性を視覚的に特定する図画(例えば、グラフやチャート等)を含む表示画像であってもよい。但し、第1実施例では、表示画像は、各信号成分skの特性に応じて表示態様(例えば、大きさや、形状や、色や、輝度等)が変化する表示画像を含んでいることが好ましい。また、表示画像は、各信号成分skの特性が大きく変化すればするほど表示態様(例えば、大きさや、形状や、色や、輝度等)が大きく変化する表示画像を含んでいることが好ましい。言い換えれば、表示画像は、各信号成分skの特性の時間的変化の大きさに応じた量(程度)だけ表示態様が変化する表示画像を含んでいることが好ましい。
過去画像記憶部133aは、画像生成部132が生成した画像信号Dを一時的に記憶する。このため、過去画像記憶部133aは、メモリ又はバッファを含んでいてもよい。尚、後述するように、過去画像記憶部133aは、所定期間分の画像信号D(つまり、呼吸音信号Sを構成する複数種類の信号成分skの夫々の特性を視覚的に特定する表示画像を示す画像信号D)を記憶することが好ましい。
比較画像記憶部133bは、画像差異判定部134が表示装置14に対して送信した画像信号Dを一時的に記憶する。比較画像記憶部133bが記憶している画像信号Dは、画像差異判定部134における判定動作に用いられる。
画像差異判定部134は、画像生成部132が生成した又は平滑化部136が平滑化処理を行った最新の画像信号Dと比較画像記憶部133bが記憶している過去の画像信号Dとの間の差異(つまり、最新の画像信号Dと過去の画像信号Dとの間の時間的変化)を算出する。更に、画像差異判定部134は、最新の画像信号Dと過去の画像信号Dとの間の差異が所定閾値よりも大きいか否かを判定する。
加えて、画像差異判定部134は、最新の画像信号Dと過去の画像信号Dとの間の差異が所定閾値よりも大きくないと判定される場合には、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、画像生成部132が生成した又は平滑化部136が平滑化処理を行った最新の画像信号Dを表示装置14に対して送信する。この場合、上述したように、画像差異判定部134は、表示装置14に対して送信した画像信号Dを比較画像記憶部133bに対しても送信する。
平滑化パラメータ更新部135は、画像差異判定部134における判定結果に基づいて、平滑化部136が行う平滑化処理の態様を規定する平滑化パラメータnを更新する(言い換えれば、設定する)。具体的には、平滑化パラメータ更新部135は、最新の画像信号Dと過去の画像信号Dとの間の差異が所定閾値よりも大きいと判定される都度、平滑化パラメータnを1ずつインクリメントする。
平滑化部136は、画像差異判定部134における判定結果に基づいて、最新の画像信号Dに対して平滑化処理を行う。例えば、平滑化部136は、最新の画像信号Dと過去の画像信号Dとの間の差異が所定閾値よりも大きいと判定される都度、最新の画像信号Dに対して、平滑化パラメータ更新部135が更新した平滑化パラメータnに応じた平滑化処理を行う。第1実施例では、最新の画像信号Dに対する平滑化処理は、時間的に連続する直近n個の画像信号D(但し、そのうちの1つの画像信号Dは最新の画像信号Dとなる)の移動平均を算出する処理である。平滑化処理の結果得られる画像信号Dは、以降最新の画像信号Dとして取り扱われる。
尚、信号解析装置12及び信号処理装置13のうちの少なくとも一部(例えば、信号解析部122や、信号分離部123や、画像生成部132や、画像差異判定部134や、平滑化パラメータ更新部135や、平滑化部136)は、CPU(Central Processing Unit)上で論理的に実現される処理ブロックである。但し、信号解析装置12及び信号処理装置13のうちの少なくとも一部は、半導体チップ等によって物理的に実現される処理回路であってもよい。
表示装置14は、信号処理装置13から送信される最新の画像信号D(つまり、画像生成部132が生成した又は平滑化部136が平滑化処理を行った最新の画像信号D)が示す表示画像を表示するディスプレイ装置である。その結果、表示装置14は、各信号成分skの特性を、当該表示装置14の表示画面上に表示することができる。
但し、表示装置14は、信号処理装置13内の画像記憶部133が記憶している過去の画像信号Dが示す表示画像を表示してもよい。この場合、画像記憶部133は、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、過去の画像信号Dを表示装置14に対して送信してもよい。
尚、図1に示す例は、表示装置14が信号処理装置13の外部に配置される例を示している。しかしながら、表示装置14のうちの少なくとも一部が信号処理装置13の内部に配置されていてもよい。
(1-2)第1実施例の信号処理システム1の動作
続いて、図2から図9を参照しながら、第1実施例の信号処理システム1の動作について説明する。図2は、第1実施例の信号処理システム1の動作の流れを示すフローチャートである。図3は、呼吸音センサ11の生体に対する装着態様の一例を示す模式図及び呼吸音信号Sの波形を時間軸上で示すグラフである。図4は、呼吸音の種類を示す分類チャートである。図5は、5種類の呼吸音(肺胞呼吸音、低音性連続性ラ音(類鼾音)、高音性連続性ラ音(笛声音)、細かい断続性ラ音(捻髪音)及び粗い断続性ラ音(水泡音))に相当する5種類の信号成分skの波形を時間軸上で示すグラフである。図6は、信号記憶部131が呼吸音信号Sを記憶する動作の一例を示す模式図である。図7は、呼吸音信号Sを構成する2種類の信号成分sk#1及びsk#2の夫々の特性の表示態様の一例を示す平面図である。図8は、過去画像記憶部133aが画像信号Dを記憶する動作の一例を示す模式図である。図9は、平滑化処理を行った場合の2種類の信号成分sk#1及びsk#2の夫々の特性の表示態様の一例を、平滑化処理を行っていない場合の2種類の信号成分sk#1及びsk#2の夫々の特性の表示態様の一例と共に示す平面図である。
図2に示すように、まず、呼吸音センサ11は、呼吸音信号Sを取得する(ステップS11)。更に、呼吸音センサ11は、取得した呼吸音信号Sを、信号解析装置12に対して送信する(ステップS11)。
例えば、図3(a)に示すように、呼吸音センサ11は、生体の体表面(図3(a)に示す例では、左胸付近の体表面)に取り付けられてもよい。このとき、呼吸音センサ11の装着位置は、固定されていてもよい。或いは、医療従事者が聴診する際に聴診器をあてる位置を適宜変更していることを考慮すれば、呼吸音センサ11の装着位置は、呼吸音信号Sの取得の途中で適宜変更されてもよい。その結果、呼吸音センサ11は、呼吸音信号Sを取得する。このとき、呼吸音センサ11は、所定のサンプリング周波数に応じて周期的に呼吸音信号Sを取得してもよい。つまり、呼吸音センサ11は、呼吸音信号Sのサンプル値を周期的に取得してもよい。但し、呼吸音センサ11は、非周期的に又は連続的に呼吸音信号Sを取得してもよい。その結果、呼吸音センサ11は、図3(b)に示す時間軸上の波形として特定される呼吸音信号Sを取得することができる。
尚、以下の説明では、最新の時刻tに取得された呼吸音信号Sのサンプル値を、呼吸音信号S(t)と称する。同様に、過去の時刻t-k(但し、kは1以上の整数)に取得された呼吸音信号Sのサンプル値を、呼吸音信号S(t-k)と称する。
尚、図3(b)に示すように、生体の呼吸が吸気(つまり、肺への空気の取り込み)と呼気(つまり、肺からの空気の吐き出し)との繰り返しであることを考慮すれば、呼吸音信号は、周期性を有する信号であると言える。呼吸音信号の1周期は、吸気区間(つまり、吸気が行われる期間)と当該吸気区間に続く呼気区間(つまり、呼気が行われる期間)とを合算した期間となる。尚、呼吸音信号の周期は、時間の経過と共に変動してもよいことは言うまでもない。
呼吸音センサ11による呼吸音信号S(t)に続いて、A/D変換部121は、呼吸音センサ11から送信される呼吸音信号S(t)に対してA/D変換処理を行う。その後、信号解析部122は、最新の呼吸音信号S(t)(或いは、最新の呼吸音信号S(t)を含む呼吸音信号S)に対して所定の解析処理を実行する(ステップS122)。つまり、信号解析部122は、呼吸音信号Sに対して、呼吸音信号Sを複数種類の信号成分skに分離する解析処理を実行する。
ここで、図4を参照しながら、呼吸音の種類について説明する。図4に示すように、広義の呼吸音(つまり、肺音)は、狭義の呼吸音と、異常音の一例である副雑音とに分類される。狭義の呼吸音は、正常音の一例である正常な呼吸音と、異常音の一例である異常な呼吸音とに分類される。正常な呼吸音は、肺胞呼吸音と、気管支呼吸音と、気管支肺胞呼吸音と、気管呼吸音とに分類される。異常な呼吸音は、減弱・消失に起因した呼吸音と、増強に起因した呼吸音と、呼気延長に起因した呼吸音と、気管支呼吸音化に起因した呼吸音と、気管狭窄音とに分類される。副雑音は、ラ音と、その他の音とに分類される。ラ音は、連続性ラ音と、断続性ラ音とに分類される。連続性ラ音は、低音性連続性ラ音(類鼾音)と、高音性連続性ラ音(笛声音)と、スクウォーク(吸気性の連続性ラ音)とに分類される。断続性ラ音は、細かい断続性ラ音(捻髪音)と、粗い断続性ラ音(水泡音)とに分類される。その他の音は、胸膜摩擦音と、肺血管性雑音とに分類される。
第1実施例では、信号解析部122は、呼吸音信号Sを、断続性ラ音に相当する信号成分(以下、“断続性ラ音成分sk#1”と称する)と、断続性ラ音以外の呼吸音に相当する信号成分(以下、“非断続性ラ音成分sk#2”と称する)とに分離する解析処理を行う。言い換えれば、信号解析部122は、呼吸音信号Sから、断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分sk#2のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を行う。尚、図6の1段目のグラフは、非断続性ラ音成分sk#2の一部である肺胞呼吸音に相当する信号成分の一例を示している。図6の2段目のグラフは、非断続性ラ音成分sk#2の一部である類鼾音に相当する信号成分の一例を示している。図6の3段目のグラフは、非断続性ラ音成分sk#2の一部である笛声音に相当する信号成分の一例を示している。図6の4段目のグラフは、断続性ラ音成分sk#1の一部である捻髪音に相当する信号成分の一例を示している。図6の5段目のグラフは、断続性ラ音成分sk#1の一部である水泡音に相当する信号成分の一例を示している。
信号解析部122は、以下の観点から、呼吸音信号Sを、断続性ラ音成分sk#1と、非断続性ラ音成分sk#2とに分離してもよい。
具体的には、非断続性ラ音成分sk#2が時間的に継続する(つまり、連続する)信号成分である一方で、断続性ラ音成分sk#1が時間的に断続するパルス状の信号成分であるという違いがある。従って、信号解析部122は、このような時間軸上での信号成分の分布の違いに着目することで、呼吸音信号Sを、断続性ラ音成分sk#1と非断続性ラ音成分sk#2とに分離してもよい。
尚、呼吸音信号Sを2種類の信号成分(つまり、断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分sk#2)に分離する解析処理に関する上述の方法はあくまで一例である。従って、信号解析部122は、その他の方法で呼吸音信号Sを2種類の信号成分sk#1及びsk#2に分離する解析処理を実行してもよい。尚、呼吸音信号Sを複数種類の信号成分skに分離する(或いは、呼吸音信号Sから特定種類の信号成分skを抽出する)方法は、例えば、特表2004-531309号公報や、特開2005-66045号公報や、特表2001-505085号公報や、特表2007-508899号公報や、「肺音信号のスパース表現と断続音分離への応用、酒井・里元・喜安・宮原、長崎大学国学研究報告第41巻第76号」等に開示されている。従って、信号解析部122は、これらの文献に開示された方法を用いて、呼吸音信号Sを複数種類の信号成分skに分離してもよい。
また、信号解析部103は、呼吸音信号Sを上述した2種類の信号成分sk#1及びsk#2に分離する解析処理に加えて又は代えて、呼吸音信号Sを任意の複数種類の信号成分skに分離する(或いは、呼吸音信号Sから任意の一以上の信号成分skを抽出する)解析処理を実行してもよい。
尚、信号解析部122による解析処理の対象となっている呼吸音信号Sは、典型的には、非断続性ラ音成分sk#2の一部である肺胞呼吸音に相当する信号成分を常に含んでいる可能性が高い。なぜならば、生体が呼吸をしている以上、その呼吸音には、異常音の一例である断続性ラ音が含まれているか否かに関わらず、正常音の一例である肺胞呼吸音が含まれているはずであるからである。一方で、信号解析部122による解析処理の対象となっている呼吸音信号Sは、断続性ラ音成分sk#1を含んでいることもあれば、含んでいないこともある。いずれの場合であっても、信号解析部122は、呼吸音信号Sを上述した2種類の信号成分sk#1及びsk#2に分離する解析処理を実行することで、2種類の信号成分sk#1及びsk#2の夫々を取得することができる。例えば、信号解析部122は、解析処理を実行することで、呼吸音信号Sに含まれている信号成分skを取得することができると共に、呼吸音信号Sに含まれていない信号成分skを振幅レベルがゼロとなる信号成分skとして取得することができる。
信号解析部122によって行われる解析処理と並行して、信号分離部123は、呼吸音信号Sを2種類の信号成分(つまり、断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分sk#2)に分離する。更に、信号分離部123は、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、当該分離した2種類の信号成分sk(つまり、断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分sk#2)の夫々を信号処理装置13に対して送信する。
信号解析部122によって行われる解析処理と並行して、信号記憶部131は、信号解析装置12から送信される呼吸音信号S(つまり、呼吸音信号Sを構成する断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分sk#2)を一時的に記憶する(ステップS131)。
このとき、信号記憶部131は、時間的に連続する所定数の呼吸音信号Sのサンプル値を一時的に記憶することが好ましい。尚、第1実施例では、信号記憶部131は、直近128個の呼吸音信号Sのサンプル値を一時的に記憶するものとする。つまり、信号記憶部131は、最新の呼吸音信号S(t)を含む時間的に連続する128個の呼吸音信号Sのサンプル値を一時的に記憶するものとする。このような直近128個の呼吸音信号Sのサンプル値を一時的に記憶するために、信号記憶部131は、リングバッファを含んでいることが好ましい。但し、信号記憶部131は、任意の数の呼吸音信号Sのサンプル値を一時的に記憶してもよい。
更に、第1実施例では、信号記憶部131は、呼吸音信号Sを、信号成分sk毎に記憶することが好ましい。つまり、信号記憶部131は、断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分sk#2の夫々を、別個独立に記憶することが好ましい。
その結果、図6に示すように、信号記憶部131は、最新の時刻tに取得された呼吸音信号S(t)を構成する断続性ラ音成分sk#1のサンプル値sk#1(t)と、時刻t-1に取得された呼吸音信号S(t-1)を構成する断続性ラ音成分sk#1のサンプル値sk#1(t-1)と、・・・、時刻(t-127)に取得された呼吸音信号S(t-127)を構成する断続性ラ音成分sk#1のサンプル値sk#1(t-127)とを一時的に記憶する。同様に、信号記憶部131は、最新の時刻tに取得された呼吸音信号S(t)を構成する非断続性ラ音成分sk#2のサンプル値sk#2(t)と、時刻t-1に取得された呼吸音信号S(t-1)を構成する非断続性ラ音sk#2のサンプル値sk#2(t-1)と、・・・、時刻(t-127)に取得された呼吸音信号S(t-127)を構成する非断続性ラ音sk#2のサンプル値sk#2(t-127)とを一時的に記憶する。
尚、以下では、最新の時刻tに取得された呼吸音信号S(t)を構成する断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分sk#2のサンプル値を、夫々、断続性ラ音成分sk#1(t)及び非断続性ラ音成分sk#2(t)と称する。同様に、過去の時刻t-kに取得された呼吸音信号S(t-k)を構成する断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分sk#2(t)のサンプル値を、夫々、断続性ラ音成分sk#1(t-k)及び非断続性ラ音成分sk#1(t-k)と称する。
続いて、最新の呼吸音信号S(t)が信号記憶部131によって記憶される都度(言い換えれば、信号記憶部131が新たな呼吸音信号S(t)を記憶する都度)、平滑化パラメータ更新部135は、平滑化パラメータnを初期化する(ステップS135a)。言い換えれば、断続性ラ音sk#1(t)及び非断続性ラ音sk#2(t)が信号記憶部131によって記憶される都度(言い換えれば、信号記憶部131が新たな断続性ラ音sk#1(t)及び非断続性ラ音sk#2(t)を記憶する都度)、平滑化パラメータ更新部135は、平滑化パラメータnを初期化する。つまり、信号記憶部131の記憶内容が更新される都度、平滑化パラメータ更新部135は、平滑化パラメータnを初期化する。ここでは、平滑化パラメータnの初期化は、平滑化パラメータnに初期値“1”を設定する動作を意味するものとする。
更に、最新の呼吸音信号S(t)が信号記憶部131によって記憶される都度、画像生成部132は、最新の呼吸音信号S(t)に対応する画像信号D(t)を生成する(ステップS132)。つまり、画像生成部132は、最新の呼吸音信号S(t)を構成する断続性ラ音成分sk#1(t)及び非断続性ラ音成分sk#2(t)の夫々の特性を視覚的に特定する表示画像を示す画像信号D(t)を生成する(ステップS132)。尚、以下では、最新の時刻tに取得された呼吸音信号S(t)を構成する2種類の信号成分skの夫々の特性を視覚的に特定する表示画像を示す画像信号Dを、画像信号D(t)と称する。同様に、過去の時刻t-kに取得された呼吸音信号S(t-k)を構成する2種類の信号成分skの夫々の特性を視覚的に特定する表示画像を示す画像信号Dを、画像信号D(t-k)と称する。
第1実施例では、信号成分の特性が、信号成分の振幅レベル(つまり、信号強度を示す特性)であるものとする。但し、信号成分の特性が振幅レベルとは異なる特性(言い換えれば、信号成分の状態を特定することが可能な指標(変量))であってもよいことは言うまでもない。
また、第1実施例では、表示画像は、各信号成分の振幅レベルが大きくなればなるほど直径が大きくなる円形の図形を含む表示画像であるものとする。具体的には、図7に示すように、表示画像は、(i)断続性ラ音成分sk#1の振幅レベルが大きくなればなるほど直径が大きくなる円形の図形(図7中、左側に位置する円形の図形参照)と、(ii)非断続性ラ音成分sk#2の振幅レベルが大きくなればなるほど直径が大きくなる円形の図形(図7中、右側に位置する円形の図形参照)とを含む表示画像であるものとする。図7に示す表示画像は、断続性ラ音成分sk#1(t)の振幅レベルが相対的に大きい一方で、非断続性ラ音成分sk#2(t)の振幅レベルが相対的に小さいことを示している。しかしながら、上述したように、表示画像は、各信号成分skの特性を視覚的に特定する限りは、どのような表示画像であってもよい。但し、表示画像は、各信号成分skの特性が大きく変化すればするほど表示態様が大きく変化する表示画像を含んでいることが好ましい。
また、第1実施例では、画像生成部132は、画像信号D(t)として、断続性ラ音成分sk#1(t)の振幅レベルを示す表示画像を示す画像信号D1(t)と、非断続性ラ音成分sk#2(t)の振幅レベルを示す表示画像を示す画像信号D2(t)とを別個独立に生成するものとする。つまり、画像生成部132は、画像信号D(t)として、断続性ラ音成分sk#1(t)の振幅レベルを示す表示画像(つまり、図7に示す表示画像のうち相対的に左側の表示画像)を示す画像信号D1(t)と、非断続性ラ音成分sk#2(t)の振幅レベルを示す表示画像(つまり、図7に示す表示画像のうち相対的に右側の表示画像)を示す画像信号D2(t)とを別個独立に生成するものとする。但し、画像生成部132は、断続性ラ音成分sk#1(t)及び非断続性ラ音成分sk#2(t)の夫々の振幅レベルを示す単一の表示画像を示す単一の画像信号D(t)を生成してもよい。つまり、画像生成部132は、画像信号D1(t)及び画像信号D2(t)を重畳することで得られる単一の画像信号D(t)を生成してもよい。
画像生成部132が画像信号D(t)を生成した後、過去画像記憶部133aは、画像信号D(t)を一時的に記憶する(ステップS133a)。このとき、過去画像記憶部133aは、時間的に連続する所定数の画像信号Dを一時的に記憶することが好ましい。尚、第1実施例では、過去画像記憶部133aは、直近128個の画像信号D1を一時的に記憶するものとする。つまり、過去画像記憶部133aは、呼吸音信号S(t)に対応する画像信号D1(t)を含む時間的に連続する128個の画像信号D1を一時的に記憶するものとする。具体的には、図8に示すように、過去画像記憶部133aは、最新の時刻tに取得された呼吸音信号S(t)に対応する画像信号D1(t)と、時刻t-1に取得された呼吸音信号S(t-1)に対応する画像信号D1(t-1)と、・・・、時刻(t-127)に取得された呼吸音信号S(t-127)に対応する画像信号D1(t-127)とを一時的に記憶する。同様に、第1実施例では、過去画像記憶部133aは、直近128個の画像信号D2を一時的に記憶するものとする。つまり、過去画像記憶部133aは、最新の時刻tに取得された呼吸音信号S(t)に対応する画像信号D2(t)を含む時間的に連続する128個の画像信号D2を一時的に記憶するものとする。具体的には、図8に示すように、過去画像記憶部133aは、最新の時刻tに取得された呼吸音信号S(t)に対応する画像信号D2(t)と、時刻t-1に取得された呼吸音信号S(t-1)に対応する画像信号D2(t-1)と、・・・、時刻(t-127)に取得された呼吸音信号S(t-127)に対応する画像信号D2(t-127)とを一時的に記憶する。このような直近128個の画像信号Dを一時的に記憶するために、過去画像記憶部133aは、リングバッファを含んでいることが好ましい。但し、過去画像記憶部133aは、任意の数の画像信号Dを一時的に記憶してもよい。
画像生成部132が画像信号D(t)を生成した後、画像差異判定部134は、最新の時刻tに取得された呼吸音信号S(t)に対応する画像信号D(t)と過去の時刻t-kに取得された呼吸音信号S(t-k)に対応する画像信号D(t-k)との間の差異を算出する(ステップS134a)。つまり、画像差異判定部134は、画像信号D1(t)と画像信号D1(t-k)との間の差異及び画像信号D2(t)と画像信号D2(t-k)との間の差異を算出する。尚、以下の説明では、説明の簡略化のために、画像信号D1及び画像信号D2の夫々を画像信号Dと総括して説明を進める。つまり、以下の説明では、画像信号Dを対象とする動作は、画像信号D1を対象とする動作及び画像信号D2を対象とする動作の夫々を意味しているものとする。
第1実施例では、画像差異判定部134は、最新の時刻tに取得された呼吸音信号S(t)に対応する画像信号D(t)と、1つ前の時刻t-1に取得された呼吸音信号S(t-1)に対応しており且つ比較画像記憶部133bに記憶されている画像信号D(t-1)との間の差異を算出するものとする。尚、画像信号D(t-1)が比較画像記憶部133bに記憶されているため、画像差異判定部134は、比較画像記憶部133bから画像信号D(t-1)を取得することが好ましい。一方で、画像差異判定部134は、画像生成部132又は平滑化部136から直接的に画像信号D(t)を取得してもよい。
具体的には、例えば、画像差異判定部134は、表示画像を構成する画素毎に、画像信号D(t)が示す表示画像の輝度値と画像信号D(t-1)が示す表示画像の輝度値との間の差分を算出する。更に、画像差異判定部134は、算出した画素毎の差分を、全ての画素に渡って加算する。更に、画像判定部134は、加算結果(つまり、画素毎の差分を全ての画素に渡って加算することで得られる値)を、全ての画素の数で除算する。つまり、画像差異判定部134は、数式1に示す演算を行う。但し、表示画像の水平方向(X方向)の画素数をwとし、表示画像の垂直方向(Y方向)の画素数をhとし、画像信号D(t)が示す表示画像を構成する座標位置が(x,y)となる画素の輝度値をBt(x,y)とし、画像信号D(t-1)が示す表示画像を構成する座標位置が(x,y)となる画素の輝度値をBt-1(x,y)とする。
画像差異判定部134は、数式1に示す演算の結果得られる数値を、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異として取り扱う。
尚、上述の例では、画像差異判定部134は、画像信号Dが示す表示画像の輝度値に着目して、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異を算出している。しかしながら、画像差異判定部134は、画像信号Dが示す表示画像のその他の特性(例えば、色相や、明度や、彩度や、透過度等)に着目して、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異を算出してもよい。
その後、画像差異判定部134は、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異が、所定閾値よりも大きくなるか否かを判定する(ステップS134b)。尚、所定閾値には任意の値が設定されてもよい。第1実施例では、例えば、所定閾値には、表示装置14が出力可能な輝度値の最大値と表示装置15が出力可能な輝度値の最小値との差分に対して所定係数を掛け合わせることで得られる値が設定されてもよい。具体的には、例えば、所定閾値には、(表示装置14が出力可能な輝度値の最大値-表示装置14が出力可能な輝度値の最小値)×所定係数(例えば、0.3)という値が設定されてもよい。
ステップS134bの判定の結果、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異が、所定閾値よりも大きい(つまり、所定閾値以下にならない)と判定される場合は(ステップS134b:Yes)、画像信号D(t)が示す表示画像と画像信号D(t-1)が示す表示画像との間の時間的変化が相対的に大きい(或いは、過度に大きい)と想定される。その結果、表示装置14が表示している表示画像が、画像信号D(t-1)が示す表示画像から画像信号D(t)が示す表示画像に切り替えられると、表示画像の大きな変化が表示装置14を見ているユーザ(例えば、医師等の医療従事者)にとって過度な刺激になってしまうおそれがある。
そこで、第1実施例では、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異が所定閾値よりも大きい場合には、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異を小さくするために、平滑化部136が画像信号D(t)に対して平滑化処理を行う。
具体的には、まず、平滑化パラメータ更新部135は、平滑化パラメータnを1だけインクリメントする(ステップS135b)。尚、画像信号D(t)として画像信号D1(t)及び画像信号D2(t)が別個独立に生成される場合には、平滑化パラメータnとして、画像信号D1(t)に対する平滑化処理を行う際に用いられる平滑化パラメータn1と、画像信号D2(t)に対する平滑化処理を行う際に用いられる平滑化パラメータn2とが別個に用意されることが好ましい。
その後、平滑化部136は、平滑化パラメータ更新部135が更新した平滑化パラメータnを用いて、画像信号D(t)に対して平滑化処理を行う(ステップS136)。第1実施例での平滑化処理は、直近n個の画像信号(つまり、画像信号D(t)から画像信号D(t-n+1))の移動平均(例えば、単純移動平均)を、新たな画像信号D(t)に設定する動作を意味するものとする。つまり、平滑化部136は、数式2に示す演算の結果得られる画像信号を、新たな画像信号D(t)に設定する。但し、第1実施例での平滑化処理は、直近n個の画像信号の移動平均を新たな画像信号D(t)に設定する動作に限らず、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異を小さくすることが可能な任意の処理であってもよい。
尚、直近n個の画像信号D(つまり、画像信号D(t)から画像信号D(t-n+1)が過去画像記憶部133aに記憶されているため、平滑化部136は、過去画像記憶部133aから直近n個の画像信号D(つまり、画像信号D(t)から画像信号D(t-n+1)を取得することが好ましい。
以降は、画像生成部132が生成した画像信号D(t)に代えて平滑化処理が行われた結果得られた新たな画像信号D(t)を用いながら、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異が所定閾値以下となるまで、ステップS134a以降の動作が繰り返される。
尚、平滑化パラメータnがインクリメントされるたびに移動平均を算出する際の母数が多くなっていくため、平滑化パラメータnがインクリメントされることで画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異は小さくなる可能性が高い。但し、過去画像記憶部133aが記憶する画像信号Dの個数に上限(図8に示す例では、128個)があることを考慮すれば、平滑化パラメータ更新部135は、平滑化パラメータnが上限(例えば、128)を超えない範囲で平滑化パラメータnをインクリメントすることが好ましい。仮に、平滑化パラメータnが上限を超えてしまう場合には、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異が所定閾値以下となっていない場合であっても、その時点の画像信号D(t)に応じた表示処理が行われることが好ましい。
他方で、ステップS134bの判定の結果、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異が、所定閾値よりも大きくない(つまり、所定閾値以下になる)と判定される場合は(ステップS134b:No)、画像信号D(t)が示す表示画像と画像信号D(t-1)が示す表示画像との間の時間的変化が相対的に小さい(或いは、過度に大きくない)と想定される。その結果、表示装置14が表示している表示画像が、画像信号D(t-1)が示す表示画像から画像信号D(t)が示す表示画像に切り替えられたとしても、ユーザにとって過度な刺激になってしまうおそれは少ない。
このため、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異が所定閾値以下となる場合には、平滑化部136が画像信号D(t)に対して平滑化処理を行わなくともよい。
その後、画像差異判定部134は、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異が所定閾値よりも大きくない(つまり、所定閾値以下になる)と判定された時点で、画像信号D(t)を表示装置14に対して送信する。その後、表示装置14は、画像信号D(t)に基づく表示処理を行う(ステップS14)。その結果、表示装置14は、2種類の信号成分sk(つまり、断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分sk#2)の夫々の振幅レベルを表示する。
加えて、画像差異判定部134は、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異が所定閾値よりも大きくない(つまり、所定閾値以下になる)と判定された時点で、画像信号D(t)を比較画像記憶部133bに対して送信する。その後、比較画像記憶部133bは、画像信号D(t)を一時的に記憶する。比較画像記憶部133が記憶した画像信号D(t)は、新たな呼吸音信号S(t)が取得された後、画像差異判定部134による判定動作で用いられる過去の画像信号D(t-1)として取り扱われる。
以上説明した動作が、呼吸音センサ11が新たな呼吸音信号S(t)を取得しなくなるまで(或いは、信号処理システム1の動作が終了するまで)繰り返し行われる(ステップS15)。呼吸音センサ11が新たな呼吸音信号S(t)を取得した場合には(ステップS11)、当該新たな呼吸音信号S(t)を対象として、ステップS122以降の動作が再度行われる。
ここで、図9を参照して、表示画像の具体的な表示態様について説明する。まず、時刻t-1に取得された呼吸音信号S(t-1)が、振幅レベルが11dBである断続性ラ音成分sk#1(t-1)と、振幅レベルが32dBである非断続性ラ音成分sk#2(t-1)とを含んでいるとする。この場合、図9(a)に示すように、画像生成部132は、(i)11dBという断続性ラ音成分sk#1(t-1)の振幅レベルに応じた直径(例えば、11という直径)を有する円形の図形を含む表示画像を示す画像信号D1(t-1)と、(ii)32dBという非断続性ラ音成分sk#2(t-1)の振幅レベルに応じた直径(例えば、32という直径)を有する円形の図形を含む表示画像を示す画像信号D2(t-1)とを生成する。
その後、時刻tに取得された呼吸音信号S(t-1)が、振幅レベルが51dBである断続性ラ音成分sk#1(t)と、振幅レベルが27dBである非断続性ラ音成分sk#2(t)とを含んでいるとする。
この場合、画像信号D(t)に対して平滑化処理が行われなければ、図9(b)に示すように、画像生成部132は、(i)51dBという断続性ラ音成分sk#1(t)の振幅レベルに応じた直径(例えば、51という直径)を有する円形の図形を含む表示画像を示す画像信号D1(t)と、(ii)27dBという非断続性ラ音成分sk#2(t)の振幅レベルに応じた直径(例えば、27という直径)を有する円形の図形を含む画像信号D2(t)とを生成する。しかしながら、図9(b)に示す断続性ラ音成分sk#1(t)の振幅レベルを特定する円形の図形の直径は、図9(a)に示す断続性ラ音成分sk#1(t-1)の振幅レベルを特定する円形の図形の直径と比較して、大きく変化している。従って、このような表示画像(つまり、円形の図形)の大きさの大きな変化は、ユーザにとって過度な刺激になってしまうおそれがある。
しかるに、第1実施例では、平滑化部136が画像信号D1(t)に対して平滑化処理を行うことができる。従って、図9(c)に示すように、断続性ラ音成分sk#1(t)の振幅レベルを特定する円形の図形の直径は、(11+51)/2=32となる。その結果、ユーザに対して過度な刺激を与えない程度にしか変化しない表示画像(つまり、円形の図形)が表示される。
尚、断続性ラ音成分sk#1の振幅レベルを特定する円形の図形に限らず、非断続性ラ音成分sk#2の振幅レベルを特定する円形の図形についても同様である。但し、図9に示す例では、図9(b)に示す非断続性ラ音成分sk#2(t)の振幅レベルを特定する円形の図形の直径は、図9(a)に示す非断続性ラ音成分sk#2(t-1)の振幅レベルを特定する円形の図形の直径と比較して、大きく変化していないため、平滑化部136は、画像信号D2(t)に対して平滑化処理を行わなくともよい。
以上説明したように、第1実施例の信号処理システム1は、画像信号Dに対して平滑化処理を行うことができるため、画像信号Dに対して平滑化処理が行われていない場合と比較して、表示装置14に表示される表示画像の時間的変化が相対的に小さくなる。このため、呼吸音信号S(或いは、呼吸音信号Sを構成する断続性ラ音成分sk#1及び非断続性ラ音成分Sk#2)の特性が大きく変化した場合であっても、表示画像の時間的変化が相対的に小さくなる。従って、画像信号Dに対して平滑化処理が行われていない場合と比較して、呼吸音信号Sの特性が大きく変化した場合であっても、表示装置14に表示される表示画像の表示態様が相対的に大きく変化してしまうことは殆ど又は全くない。つまり、表示画像の表示態様を過度に大きく変化させたくない(言い換えれば、表示画像の時間的変化を過度に大きくしたくない)場合には、平滑化部136は、画像信号D(t)に対して平滑化処理を行うことで、表示画像の表示態様の過度に大きな変化を好適に防止することができる。
(2)第2実施例
続いて、図10から図12を参照しながら、第2実施例の信号処理システム2について説明する。図10は、第2実施例の信号処理システム2の構成を示すブロック図である。図11は、気圧信号Pの特性の表示態様の一例を示す平面図である。図12は、平滑化処理を行った場合の気圧信号Pの特性の表示態様の一例を、平滑化処理を行っていない場合の気圧信号Pの特性の表示態様の一例と共に示す平面図である。尚、第1実施例の信号処理システム1が備える構成要素と同一の構成要素については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を照射する。
図10に示すように、第2実施例の信号処理システム2は、第1実施例の信号処理システム1と比較して、呼吸音センサ11を備えていない一方で、気圧センサ21を備えているという点で異なっている。更に、第2実施例の信号処理システム2は、第1実施例の信号処理システム1と比較して、信号解析装置22が信号解析部122及び信号分離部123を備えていないという点で異なっている。第2実施例の信号処理システム2のその他の構成要件は、第1実施例の信号処理システム1のその他の構成要件と同一であってもよい。
気圧センサ21は、気圧値を検出することで、気圧信号Pを取得する。また、気圧センサ21は、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、取得した気圧信号Pを信号解析装置22に対して送信する。
気圧信号Pが送信される信号解析装置22では、A/D変換部121が、気圧センサ21から送信される気圧信号Pに対してA/D変換処理を行う。つまり、A/D変換部121は、気圧センサ21から送信されるアナログ信号としての気圧信号Pを、デジタル信号としての気圧信号Pに変換する。その後、A/D変換部121は、デジタル信号に変換された気圧信号Pを、信号処理装置13に対して送信する。
気圧信号Pが送信される信号処理装置13では、第1実施例と概ね同様の動作が行われる。但し、第2実施例では、以下に特記する動作については、第1実施例と異なる態様で行われてもよい。
まず、第2実施例では、画像生成部132は、最新の時刻tに取得された気圧信号P(t)に対応する画像信号D(t)を生成する。つまり、第2実施例では、画像生成部132は、最新の時刻tに取得された気圧信号P(t)の特性を視覚的に特定する表示画像を示す画像信号D(t)を生成する。尚、第2実施例では、気圧信号Pの特性が、振幅レベル(つまり、気圧値の大きさ)であるものとする。但し、気圧信号Pの特性が振幅レベルとは異なる特性(言い換えれば、気圧信号Pの状態を特定することが可能な指標(変量))であってもよいことは言うまでもない。また、第2実施例では、表示画像は、図11に示すように、気圧信号Pの振幅レベル(つまり、気圧値)に応じて色相が変化する表示画像であるものとする。具体的には、図11に示す表示画像は、最新の時刻tにおける気圧が、概ね1013.00hPaであることを示している。しかしながら、上述したように、表示画像は、気圧信号Pの特性を視覚的に特定する限りは、どのような表示画像であってもよい。但し、表示画像は、気圧信号Pの特性が大きく変化すればするほど表示態様が大きく変化する表示画像を含んでいることが好ましい。
更に、第2実施例では、画像差異判定部134は、表示画像を構成する画素毎に、画像信号D(t)が示す表示画像の色相と画像信号D(t-1)が示す表示画像の色相との間の差分を算出する。更に、画像差異判定部134は、算出した画素毎の差分を、全ての画素に渡って加算する。更に、画像判定部134は、加算結果(つまり、画素毎の差分を全ての画素に渡って加算することで得られる値)を、全ての画素の数で除算する。つまり、画像差異判定部134は、数式3に示す演算を行う。但し、方向(X方向)の画素数をwとし、表示画像の垂直方向(Y方向)の画素数をhとし、画像信号D(t)が示す表示画像を構成する座標位置が(x,y)となる画素の色相をHt(x,y)とし、画像信号D(t-1)が示す表示画像を構成する座標位置が(x,y)となる画素の色相をHt-1(x,y)とする。第2実施例では、画像差異判定部134は、数式3に示す演算の結果得られる数値を、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異として取り扱う。
更に、第2実施例では、画像信号D(t)と画像信号D(t-1)との差異を判定する際に用いられる所定閾値として、表示装置14が出力可能な色相の最大値と表示装置14が出力可能な色相の最小値との差分に対して所定係数を掛け合わせることで得られる値が設定されてもよい。具体的には、例えば、所定閾値には、(表示装置14が出力可能な色相の最大値-表示装置14が出力可能な色相度の最小値)×所定係数(例えば、0.3)という値が設定されてもよい。
ここで、図12を参照して、表示画像の具体的な表示態様について説明する。まず、時刻t-1に取得された気圧信号P(t-1)が示す気圧値が、1012.52hPaであるとする。この場合、図12(a)に示すように、画像生成部132は、1012.52hPaという気圧値に応じた色相を有する表示画像を示す画像信号D(t-1)を生成する。
その後、時刻tに取得された気圧信号P(t-1)が示す気圧値が、1013.48hPaであるとする。この場合、画像信号D(t)に対して平滑化処理が行われなければ、図12(b)に示すように、画像生成部132は、1013.48hPaという気圧値に応じた色相を有する表示画像を示す画像信号D(t)を生成する。しかしながら、図12(b)に示す気圧信号P(t)の特性(気圧値)を特定する表示画像の色相は、図12(a)に示す気圧信号P(t-1)の特性(気圧値)を特定する表示画像の色相と比較して、大きく変化している。従って、このような表示画像の色相の大きな変化は、ユーザにとって過度な刺激になってしまうおそれがある。
しかるに、第1実施例では、平滑化部136が画像信号D(t)に対して平滑化処理を行うことができる。従って、図12(c)に示すように、気圧信号P(t)の特性(気圧値)を特定する表示画像は、(1012.52+1013.48)/2=1013.00hPaという気圧値に応じた色相を有する表示画像となる。その結果、ユーザに対して過度な刺激を与えない程度にしか変化しない表示画像が表示される。
このような第2実施例の信号処理システム2であっても、上述した第1実施例の信号処理システムが享受することができる各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術思想に含まれる。