JP7024338B2 - 印刷媒体群及び印刷方法 - Google Patents

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Description

本発明は、印刷媒体群及び印刷方法に関する。
近年、トレーサビリティー、商品紹介、ギャランティーシール、くじ、品質の保証などを目的に、商品ごとに異なるコード(識別情報または固有の情報を持つ媒体)や識別標識を付与する方法が幾つか開発されている。これらは、バーコードやQRコードなどの二次元コードを商品ごとに異なるコードとして印刷する例や、人工物メトリクスなど、個体の差異を読み取る例などがある。
二次元コードを個別コードとして用いてトレーサビリティーを追及する例としては、例えば特許文献1に記載されているような技術がある。また、人工物メトリクスを用いて認証等を行う方法として、特許文献2に記載されている技術などがある。さらには、人工物メトリクスとして、繊維や金属の周期構造によるモアレを用いる技術が、特許文献3に開示されている。
特開2011-210663号公報 特開2016-85679号公報 特開2003-29636号公報
ところで、バーコードやQRコードなどに共通の製品情報を含める場合には、同じバーコードやQRコードを製品パッケージに一律に印刷すればよい。このためには、共通の印刷版などを用いて同一のパターンを大量に安価に印刷できる大量印刷方式、例えばオフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷、凹版印刷、スクリーン印刷などが適している。
一方で、生鮮食品などの商品のトレーサビリティーなどを追及するシステムにおいては、同種の商品であっても、その品質、重量、大きさ、生産日等の商品ごとの個別の情報(以下「固有の情報」ともいう。)を、生鮮食品の商品パッケージ等に付与したいという要求がある。ところが、このような商品に固有の情報を商品パッケージ等に印刷しようとすると、商品に固有の情報に合わせて印刷するパターンや識別標識をそれぞれ個別に作成しなければならない。このため、上述したような共通の印刷版などを用いる大量印刷方式を適用することは難しいと考えられてきた。このため、そのような商品に固有の情報を商品パッケージ等に印刷する場合には、商品に固有の情報を個別の印刷内容に変換した上で、レーザー印字方式、インクジェット方式、熱転写方式などを用いて異なるパターンを個別に印刷する必要があった。しかしながら、これらの印刷方式は、一般的には高コストで、印刷に比較的時間がかかるため、大量に必要とされる商品パッケージの印刷に適さないという課題があった。
また、印刷された商品固有の情報は、スキャナーやデジタルカメラなどを用いて容易に複製できるものであるため、別の製品パッケージの製品固有の情報と差し替えることが容易にできてしまうという問題もあった。
一方、上記の異なるパターンを個別に印刷する手法に代えて、人工物メトリクスを用いる手法もある。公知の人工物メトリクスとしては、例えば特許文献2では、印刷による網点を認識する方法が開示されている。しかしながら、人工物メトリクスを用いる場合には、微小なパターンの変化を認識する必要があるため、パターンの検出には高い解像度の読取装置が必要であり、照合にも高性能な演算システムが必要となっていた。また、媒体に傷、汚れがあると誤判定が生じる恐れもあった。
更に、特許文献3は、繊維や金属ワイヤーなどによるランダムな周期構造によって生じるモアレパターンを提案しているが、その製造は通常の印刷と比較して複雑で高コストであるという欠点があった。加えて、この従来技術では立体的にパターンを配置しているため、読取装置の読取位置によっては、読み取るパターンに変化が生じ、その結果として誤判定が生じる恐れもある。
また、非印刷方式で生成される従来の個別コードは、商品そのもの、もしくは商品パッケージに個別コードを直接生成することが難しく、タグやシールなどとして商品に付随させる必要があり、それによりコスト増やタグの付け外しの手間、あるいはシールの貼り直しなどの不正を招く原因にもなっていた。
本発明は、従来技術における前記諸問題を解決し、同一の周期パターンを安価に、かつ、大量に印刷可能な印刷システムを用いて、個別に異なるモアレパターンの付与を可能とする印刷媒体群及び印刷方法を提供するものである。
本発明の一態様によれば、少なくとも2つの印刷媒体からなる印刷媒体群は、
前記印刷媒体群を構成する各印刷媒体には、前記印刷媒体群に共通に用いられる少なくとも2つの周期パターンが重なることによって生じるモアレパターンが形成されており
前記印刷媒体は、前記モアレパターンの違いによって識別可能であり、
前記印刷媒体には前記モアレパターンを光学的に読み取る際に、前記モアレパターンの読み込み姿勢を決定するために使用されるマークが、前記周期パターンに関係付けて形成されている。
本発明の一態様によれば、少なくとも2つの印刷媒体からなる印刷媒体群であって、
前記印刷媒体群を構成する各印刷媒体には、前記印刷媒体群に共通に用いられる少なくとも2つの周期パターンが重なることによって生じるモアレパターンが形成されており
前記印刷媒体は、前記モアレパターンの違いによって識別可能であり、
前記少なくとも2つの周期パターンのうち、一の周期パターンが形成されている領域と、他の周期パターンが形成されている領域とは最外縁の形状が異なる。
本発明の一態様によれば、少なくとも2つの印刷媒体からなる印刷媒体群であって、
前記印刷媒体群を構成する各印刷媒体には、前記印刷媒体群に共通に用いられる少なくとも2つの周期パターンが重なることによって生じるモアレパターンが形成されており
前記印刷媒体は、前記モアレパターンの違いによって識別可能であり、
前記少なくとも2つの周期パターンのうち、一方の周期パターンが形成されている領域に、他の周期パターンが形成されている領域が内包される。
本発明の一態様によれば、印刷方法は、
印刷媒体に第一の周期パターンを生成する第1印刷工程と、
前記印刷媒体に、前記第一の周期パターンに重ねて、第二の周期パターンを生成することによりモアレパターンを形成する第2印刷工程と、
前記第1印刷工程から前記第2印刷工程までの間において、前記印刷媒体の位置ずれを生じさせる工程と、を有する。
本発明によれば、同一の周期パターンを印刷する印刷システムを用いて、個別に異なるモアレパターンの付与を可能とする印刷媒体群及び印刷方法を提供することができる。
モアレパターンを構成する第一の周期パターンの図である。 モアレパターンを構成する第二の周期パターンの図である。 閉曲線からなる第一の周期パターンと第二の周期パターンとかなるモアレパターンの図である。 モアレパターンの別な例を示す図である。 モアレパターンの別な例を示す図である。 モアレパターンの別な例を示す図である。 モアレパターンの別な例を示す図である。 モアレパターンの別な例を示す図である。 直線を持つ第一の周期パターンと第二の周期パターンとからなるモアレパターンの図である。 直線を持ち、周期が変化する第一の周期パターンと第二の周期パターンとからなるモアレパターンの図である。 閉曲線からなる第一の周期パターンと第二の周期パターンとからなるモアレパターンの拡大図である。 第一の周期パターンと第二の周期パターンの重なり位置が異なるモアレパターンの比較図である。 第一の周期パターンと第二の周期パターンの形成された領域の大きさ(サイズ)が異なる例を示す図である。 第一の周期パターンと第二の周期パターンの形成された領域の大きさ(サイズ)が異なる別な例を示す図である。 第一の周期パターンに補正マークを持たせ、第二の周期パターンに補正マークを持たせない周期パターンの図である。 補正マークをもつモアレパターンの図である。 印刷媒体の製造装置の構成を示す側面図である。 印刷媒体の構成を示す断面図である。 印刷媒体を飲料のパッケージとした場合の斜視図である。 モアレパターンを用いた照合システムを適用する情報通信システムを示す概略図である。 照合システムの動作を示すシーケンス図である。 印刷媒体の作成工程を説明するフローチャートである。 照合システムを用いたトレーサビリティーシステムの概念図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具現化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術思想は、構成部品の形状、構造、及び配置などを下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術範囲において、種々の変更を加えることができる。
本明細書において、「周期パターン」とは、フーリエ変換などを用いてパターンを空間的な周波数成分に分解した際、周波数0以外の周波数に一つもしくは複数のピークを持つパターンを指す。
「2つの周期パターンが重なって生じるモアレパターン」とは、複数の工程で形成した周期パターンを物理的に重ねることでモアレパターンを形成することのほか、画像データ上で2つの周期パターンを合成した上で、一つの画像としてモアレパターンを出力することも含む。重ね合わされる周期パターンは、互いに略同一とするのが好ましい。略同一の周期パターンとは、同一の周期パターンについて縮尺の変更、変形、回転等を行ったものがある。また、これらの周期パターンは、変位、傾斜、変形等を行って重ね合わされることにより、多種のモアレパターンを形成することができる。なお、重ね合わせる周期パターンは略同一に限るものではなく、周期パターンの重ね合わせによってモアレが発生するものであれば良い。
ただし、以下の実施の形態では、印刷媒体上に複数の印刷工程を経て形成された周期パターンを重ねることについて、主として説明する。モアレパターンを印刷する印刷方式としては、あらゆる方式を採用することができる。
(モアレパターンについて)
本実施の形態で用いるモアレパターンについて、説明する。モアレ(仏: moire)は、干渉縞ともいい、例えば規則正しい繰り返しパターンを複数重ね合わせた時に、それらの周期のズレにより視覚的に発生する縞模様のことであり、重ね合わせるパターンの位置や角度、縮尺などが僅かにずれただけで、発生するモアレの模様すなわちモアレパターンは大きく変化する。したがって、例えば同一の印刷版を用いた場合でも、印刷のずれを変動させることにより、異なるモアレパターンを無数に発生させることができる。このモアレパターンを用いて、商品の識別などを行うことが可能となる。
(モアレパターンの例)
以下の例では、2つの周期パターンを用いて、モアレパターンを形成する。図1は、第一の周期パターンを示す図である。図2は、第二の周期パターンを示す図である。第一の周期パターン220は、矩形枠(領域)内に同一間隔で半径が変化する同心円を形成したパターンである。一方、第二の周期パターン230も、矩形枠(領域)内に同一間隔で半径が変化する同心円を形成したパターンであるが、第一の周期パターンの1周期を1とした場合、円の中心をy軸方向に4.5周期分移動させ、かつ第一の周期パターンの92%に縮小した同心円パターンとしている。ここでは、同心円を閉曲線の一例として用いたが、閉曲線としては楕円でもよいし多角形状でもよいし、閉じた自由曲線でもよい。
第一の周期パターン220と第二の周期パターン230は、それぞれ周期構造をもつため、お互いの周期構造を近似するものとした場合、重ねて印刷することで、図3に示すようにモアレパターン240が生じる。
更に、図4に、図3のモアレパターンに対して第二の周期パターン230のみy方向に0.1周期だけずらしたことにより生成されるモアレパターン241を示す。図5に、図3のモアレパターンに対して第二の周期パターン230のみy方向に0.5周期だけずらしたことにより生成されるモアレパターン242を示す。図6に、図3のモアレパターンに対して第二の周期パターン230のみy方向に1周期だけずらしたことにより生成されるモアレパターン243を示す。図7に、図3のモアレパターンに対して第二の周期パターン230のみ、x方向に0.5周期だけずらしたことにより生成されるモアレパターン244を示す。図8に、図3のモアレパターンに対して第二の周期パターン230のみ1%拡大したことにより生成されるモアレパターン245を示す。以上から明らかなように、周期パターンの1周期以下という微小な移動や、数%という微小な縮尺の変化でも、モアレパターンは大きく変化するので、パターン識別性が高まる。
以上の例では閉曲線を使った例を示した。このような閉曲線を少なくとも一部に使うことで二つの周期パターンがいずれかの方向にわずかにずれた場合であってもモアレパターンの大きな変化が生じるため、識別性の高いパターンの生成が可能になる。一方、閉曲線を用いる代わりに開いた曲線を周期パターンの少なくとも一部に用いることでデザインの自由度を上げることが可能になり、デザイン的に優れたパターンを得ることが可能になる。閉曲線と開曲線を組み合わせることは任意である。
図9は、第一の周期パターンを水平な直線から構成される等間隔の周期パターンとし、第二の周期パターンを水平から4.5度傾けた直線からなる周期パターンとして、これらを重ねて生成されるモアレパターン250を示す。曲率半径が無限大である曲線は、直線と認識される。このように開いた曲線の一例である直線からなる周期構造を用いることで、モアレパターンも直線構造となり、例えばパターン一致の解析に必要なプロセスを減らすことができる。上記曲率半径は有限であってもよい。
図10は、第一の周期パターンを水平な直線から構成され周期がy方向に進むに従って広がる周期パターンとし、第二の周期パターンを水平から4.5度傾けた直線からなる周期パターンとして、これらを重ねて生成されるモアレパターン255を示す。このように周期が変化する周期構造を用いることで、印刷機の精度にかかわらずモアレパターンの認識を容易に行うことが可能になる。
なお、以上述べた例では、曲線と曲線から生成されるモアレパターン、直線と直線から生成されるモアレパターンの例を示したが、これに限ることはなく、曲線と直線の組合せ、網点と網点、網点と曲線、網点と直線の組合せなど、モアレパターンが生じる周期パターンの組合せであればいずれでもよい。網点は通常のプロセス印刷の製版システムによって容易に発生させることが可能となる。また、網点の面積や濃度を変化、または線の幅を変化させることで濃淡をつけた絵柄を重ねて表現することも可能になる。
本例では、第一の周期パターンと第二の周期パターンを同じ色とした。この場合、生じるモアレパターンのコントラストが高くなり、かかるモアレパターンに識別情報や固有の情報を持たせた場合、その認識が容易になるという利点がある。
ただし、複数の周期パターンの少なくとも一部を異なる色で表現してもよく、また一つの周期パターン内で色を変化させても良い。この場合、色のグラデーションがついた美しい模様が表現でき、デザイン的に優れたパターンの表現が可能になる。
なお、本例では、モアレパターンとして二つの周期パターンの組合せの例を示したが、それに限らず3つ以上の周期パターンを組み合わせてモアレパターンを生成してもよい。
各周期パターンは基材の同一の表面に形成することで、後述する読取装置の読取位置が変化してもモアレパターンの変化が少なく、誤判定の少ない読み取りを可能にすることができる。なお、印刷面の保護のためモアレパターンが生成される表面に透明な保護層を設けてもよく、また、透明な基材の裏面からモアレパターンを観察してもよい。
(モアレパターンの分解)
また、印刷後のモアレパターン240は、印刷に用いた第一の周期パターン220と、第二の周期パターン230とに分解できる場合がある。かかる場合、1つのモアレパターンがあれば、これを生成するために使用した第一の周期パターンと第二の周期パターンとを精度よく推定できることとなる。3つ以上の周期パターンから生成されるモアレパターンの場合も同様である。
(周期パターンの位置ずれについて)
図11は、図3に示すモアレパターンの中心部260の拡大図である。モアレパターンに変化を生じさせるためには、印刷時の印刷位置のばらつき(印刷ずれ)の最小距離が、周期パターンの平均周期mの1/10倍以上あることが望ましい。なぜなら、重ねる周期パターンのずれ量に応じて、モアレパターンの周期が拡大されて変化するから、周期パターンの平均周期mの1/10倍以上のずれ量であれば、モアレパターンの違いを容易に判断できるからである。ここで、「印刷ずれ」とは、印刷媒体に対して2つの印刷版に形成された二つの周期パターンの基準点(たとえば同心円なら中心)同士が一致する位置に対して、一方の周期パターンが、いずれかの方向にずれることをいう。
図12に、図3に示すモアレパターン240(a)と、図4に示すモアレパターン241(b)を並べて図示している。図12(b)のモアレパターン241では、図12(a)のモアレパターン240の場合に比べて、第一の周期パターンと第二の周期パターンのy方向の印刷ずれの大きさを、第一の周期パターンの1周期に対して1/10だけ変化させている。つまり、モアレパターン240(a)とモアレパターン241(b)では、第一の周期パターンと第二の周期パターンのy方向の印刷ずれの相対差が、第一の周期パターンの1周期に対して1/10となっている。
ここで、同心円中心からy方向に第一のモアレ縞の中央までの距離をそれぞれp1、p2とすると、二つのモアレパターンにおける周期パターン同士のずれ量(相対差)は、第一の周期パターンの1周期に対して1/10とわずかなものであるが、モアレパターンにおいては、距離p1、p2の差が拡大されて視認できる。よって、印刷時の印刷位置のばらつきの最小距離が周期パターンの周期の1/10倍以上あれば、例えば肉眼でもモアレパターンの違いを判別可能である。なお、高精度の画像解析を行う場合、印刷時の印刷位置のばらつきの最小距離が、いずれかの周期パターンの周期の1/50倍以上あればモアレパターンの違いを測定可能である。
このことから、モアレパターンの作成に当たっては、二つの周期パターンの印刷ずれを少なくともいずれかの周期パターンの平均周期の1/50倍以上としておくことが必要であるといえる。
ただし、周期パターンの印刷位置のズレが相当に大きくなると、第一の周期パターンと第二の周期パターンが重ならず、モアレパターンが発生しなくなる恐れが生じる。これを防止するため、図13Aに示すように、第一の周期パターン221(a)が形成された領域よりも、第二の周期パターン231(b)が形成された領域の面積を大きくすれば、たとえ印刷位置が大きくずれたとしても、第二の周期パターン231内で第一の周期パターン221が変位する分には必ず重なりが生じるから、モアレパターンの生成が可能になる。但し、周期パターンの印刷位置のズレは、第二の周期パターン231のサイズ(ここでは一辺の半分)以下とする必要がある。
また、第一の周期パターン221の矩形枠と、第二の周期パターン231の矩形枠とは、サイズを異ならせ、図13B(b)に示すように一方の周期パターンを他方の周期パターンの最外縁に内包させることで、周期パターンを重ねたときの枠ずれが気にならなくなり見る者の違和感を抑制できる。
周期パターンの図示を省略した図13B(a)に示す実施形態では、第一の周期パターンの領域の最外縁OE1の形状と、第二の周期パターンの領域の最外縁OE2の形状とが異なっている。さらに、第一の周期パターンの最外縁OE1の一部が、第二の周期パターンの最外縁OE2の外側にはみ出しており、且つ第二の周期パターンの最外縁OE2の一部が、第一の周期パターンの最外縁OE1の外側にはみ出している。本実施形態は、両方の周期パターンが重ね合わさった六角形の中央部にモアレパターンが生じる例である。
また、周期パターンの図示を省略した図13B(b)に示す実施形態では、第一の周期パターンの領域の最外縁OE1が、第二の周期パターンの領域の最外縁OE2を内包している。より具体的には、第一の周期パターンの最外縁OE1の全部が、第二の周期パターンの最外縁OE2の外側にはみ出している。本実施形態は、両方の周期パターンが重ね合わさった円形の中央部(すなわち最外縁OE2内部)にモアレパターンが生じる例である。
(補正マークについて)
後述する通信端末のカメラなどでモアレパターンを光学的に読み取って画像データに変換する際、カメラの位置による歪や光軸回りの回転位置ずれ等により、モアレパターンの誤判定が生じる可能性がある。そこで、補正用のマーク(以下、補正マークという)を周期パターンが印刷された媒体上に設けることが望ましい。補正マークは、周期パターンのいずれか一つに関係付けて設ければよい。
図14(a)に示すように、第一の周期パターン220のみに補正マークを設けた例を示す。この第一の周期パターン220と、図14(b)に示す第二の周期パターン230を重ねて印刷したモアレパターン240の例を図15に示す。本例では、補正マークは周期パターンの外部に4つの記号300(+、△、○、□)を設けており、いずれか一つの記号300を読み込むことで、それを基準としてモアレパターン240の読み込み姿勢が定まる。
ただし、補正マークとしては、例えばスマートフォンなどに搭載されたカメラでも十分に読み取れること、位置が特定できる程度に細かいこと、傾きや回転がわかるように二つ以上複数存在すること、補正マークに十分な大きさがあることが望ましい。補正マークとして、上記以外にドット形状、大きなパターンの例として周期パターンを取り囲むような枠形状、これらを組合せものなどが考えられる。また、補正マークは周期パターン内に組み込まれていてもよい。
(印刷方法及び印刷媒体の製造方法)
次に、図16を参照し、印刷方法及び印刷媒体の製造方法について説明する。本実施形態の印刷媒体とは、モアレパターンが単独で印刷されたものでも、商品の一部に印刷されたもの、商品パッケージの一部に印刷されたものでもよい。
図17に示すように印刷媒体2は、基材210を備える。基材210としては、例えば、紙基材、PET(polyethylene terephthalate)等のフィルム基材が採用できる。基材210はシート状のものに限らず、商品そのものを基材210とし、そこにモアレパターンを印刷してもよく、また商品パッケージに用いる紙媒体、プラスチック媒体を基材210として、そこにモアレパターンを印刷しても良い。以下の例では、連続した基材シート6を印刷後に裁断して、基材210としている。
(印刷媒体の印刷装置)
図16において、印刷媒体の印刷装置は、シアン用の画像を転写形成するための版胴7Cと、それに対向配置された圧胴7Pと、マゼンタ用の画像を転写形成するための版胴8Mと、それに対向配置された圧胴8Pと、イエロー用の画像を転写形成するための版胴9Yと、それに対向配置された圧胴9Pと、ブラック用の画像及び第1の周期パターンを転写形成するための版胴10Bと、それに対向配置された圧胴10Pと、テンションローラTP1,TP2と、空気吹付装置DBと、ブラックで第2の周期パターンを転写形成するための版胴11Bと、それに対向配置された圧胴11Pとを有している。以下、版胴を印刷版ということもある。
テンションローラTP1,TP2は不図示の駆動機構により、相互の間隔を変更して基材シート6へ付与するテンション(引っ張り力)を調整したりすることができる。また、空気吹付装置DBは、水蒸気を発生させる加湿器や、加熱ヒータを内蔵しており、水分を含んだ空気や加熱空気を回転ファンにより吹付量を調整しながら、基材シート6の表面へと吹付可能となっている。これらを総称して、位置ずれ発生装置という。
帯状の基材シート6は、版胴7C~10Bと、これに対向する圧胴7P~10Pとの間を通過し、所定のテンションを付与すべくテンションローラTP1,TP2とに巻き回された後、空気吹付装置DBの近傍を通過し、さらに版胴11Bと、これに対向する圧胴11Pの間を通過するようになっている。このとき、各版胴7C~10Bにより一致した印刷タイミングで各色の画像が基材シート6に転写形成され、これを組み合わせることで特定の絵柄のカラー画像が印刷される。
基材シート6を、版胴7C~10Bと、これに対向する圧胴7P~10Pとの間を通過させる際は、基材シート6の幅方向端部に予め付されているトンボ(位置決めマーク)などで印刷タイミング制御(印刷位置制御)を行う。このときの位置制御としては、例えば、胴の回転速度を制御する方法や、基材シート6の搬送速度を制御する方法があるが、印刷ずれを起こさないようにするのが望ましい。
一方、基材シート6には、版胴10Bによりブラックで第一の周期パターンが転写形成され、これとずれるようにして版胴11Bによりブラックで第二の周期パターンが転写形成され、これらが重ねあわされることでモアレパターンが生じることとなる。その後、カラー画像とモアレパターンが形成された基材シート6は、個別に裁断されて基材210(図17)となり、さらに折りたたまれて接着され、たとえば図18に示すような商品パッケージとして形成される。
図18に示す例は、日本酒のパッケージを基材210とし、絵柄310とモアレパターン240が同一の基材210の表面に印刷されたものである。なお、本例では飲料のパッケージの例を示したが、電化製品、部品、農産物、水産物、加工食品、物流コンテナ、ダンボールなど梱包資材、トイレタリー商品、化粧品、ソフトウエア、電子マネー、クレジットカード、プリペイドカード、商品券、交換部品、衣料品など、あらゆる商品や商品のパッケージなど、さらには車などの移動体やペットや家畜などの生き物も印刷媒体の対象となる。
図17において、基材210の一方の面(以下、「表面」とも呼ぶ)には、図1に示すような第一の周期パターン220と、図2に示すような第二の周期パターン230とが重ねて印刷されている。第一の周期パターン220と第二の周期パターン230は、本実施の形態においては、ずれた印刷タイミングで基材210上に重なるようにして印刷を行っている。
一般的な印刷機においては、印刷ずれを回避するために位置合わせ機構等による基材シート6の位置決めなどを行っている。したがって、特に制御をおこなわずとも、位置合わせ機構等を停止したり、位置決め精度を低下させる等を行えば、第一の周期パターンと第二の周期パターンとの間にある程度の位置ずれを生じさせることができる。
第一の周期パターン220と第二の周期パターン230は、このように位置ずれした状態で基材210上に印刷されるため、位置合わせ機構を停止等することで、その印刷装置の精度などによる印刷位置の変化や、基材210の伸びや縮みなどにより変動が生じる。その微小な変動が、モアレパターン240を変化させ、その結果、同一パターンを印刷しても、個々に異なるパターンを印刷することが可能になる。なお、同一版内に複数の周期パターンを面付けして印刷する場合や、工程の中で版の交換を行うような場合、各々が異なる周期パターンを用いてもよい。その場合、面付け位置やロットの違いを、周期パターンの違いによって容易に判定することが可能になる。
しかしながら、より明瞭に異なるモアレパターンを得るためには、積極的に第一の周期パターンと第二の周期パターンとの間に位置ずれを生じさせることが望ましい。
そこで本実施の形態では、以下のようにして、第一の周期パターンと第二の周期パターンとの間に積極的に位置ずれを生じさせている。具体的には、印刷中における基材シート6のテンションを変更すべく、版胴10B、11Bの間で、テンションローラTP1,TP2の間隔を変更させ、また空気吹付装置DBにより、水分を含んだ空気や加熱空気を基材シート6の表面へと吹付けることにより、基材シート6に伸びを生じさせ、また吹付空気が直接当たることで基材シート6のばたつき等を生じさせることができる。これにより第一の周期パターンと第二の周期パターンとの間に位置ずれが生じる。
テンションローラや空気吹付装置の制御は、版胴10Bにより第一の周期パターンが形成されるごとに(テンション力や、吹き付ける空気の湿度、温度、風量など)変更することが望ましい。それにより、先に形成された第一の周期パターンと第二の周期パターンとの位置ずれと、その後に形成された第一の周期パターンと第二の周期パターンとの位置ずれを異ならせることができ、その結果として異なるモアレパターンを次々と生じさせることができる。
本実施の形態によれば、版胴10B、11Bの間で積極的に位置ズレを生じさせているので、その影響は版胴10Bより上流側に及ばないことから、版胴7C~10Bにより形成されるカラー画像は従来通り印刷ずれがなく高い画質で形成できる。ただし、第二の周期パターンの印刷工程が、絵柄の印刷工程の精度に影響を及ぼしてしまう場合、一旦他の絵柄の印刷を終えた後、別工程で第二の周期パターンの印刷を行っても良い。
その他、印刷装置の部品を交換する等、印刷装置側を調整することによっても、第一の周期パターンと第二の周期パターンとの間に位置ずれを生じさせることができる。たとえば、硬度、シリンダー径、シリンダーの傾きまたは形状を変えた版胴(オフセット印刷機の場合はゴムブランケット等)を用いたり、クッション性のある土台に変更して印刷装置の支持剛性を変化させたり、印刷装置のあて(基材シート6の案内)を変化させたりするほか、追加の装置で印刷装置を振動させるなどが考えられる。ちなみに、ブランケットの硬さは、JIS-A型硬度計で測定して73~83度の範囲で変更すればよい。かかる印刷装置の調整と、上述した位置ずれ発生装置の駆動制御とを組み合わせることで、さらに多数の異なるモアレパターンを生成できる。
更に、基材シート6に音波を当てたり、基材シート6の厚みや質を変えたりすることでも、第一の周期パターンと第二の周期パターンとの位置ずれを生じさせることができる。
なお、周期パターンの印刷インキには、可視光で反射するインキを用いても良いし、モアレパターンを隠蔽したい場合は赤外光や紫外光などに反射する特殊なインキを用いても良い。また、商品パッケージではなく、例えばノートやカレンダーなどの商品自体に、直接モアレパターンを印刷してもよい。
以上の例では、商品パッケージの絵柄の印刷として、4色のプロセス印刷によるカラー印刷装置の例を示したが、これに限らず、特色を用いた印刷装置を用いてもよい。また、第一の周期パターンの印刷に独立した版胴を用いても良いし、さらに枚葉印刷の装置を用いてもよい。
周期パターンの印刷に用いる印刷版は、オフセット印刷やグラビア印刷、凸版印刷、凹版印刷、スクリーン印刷など物理的な版がある場合でもよく、また、静電印刷のように電子的な固定パターンを異なるタイミングで印刷してもよい。なお、周期パターンを印刷する版を用いて商品や商品パッケージである基材に絵柄を印刷してもよい。物理的な版を用いる場合、高速で安価に印刷することができる利点があり、電子的な版を用いる場合は、製版する工程を省略できる利点がある。
本実施形態では、例えば商品パッケージの印刷工程と同様の印刷装置を用いて、同じ印刷工程で固有のモアレパターンを印刷することができるため、かかるモアレパターンに情報を関連付けすることで、その情報と商品パッケージとを一対一で対応付け(以下「紐づけ」ともいう。)することが可能になる。
(モアレパターンの識別性)
以上のような製造工程によって、同じ周期パターンを用いて印刷しながらも、印刷媒体群を構成する個々の印刷媒体にそれぞれ異なるモアレパターンを作成することができる。したがって2つ以上の商品が存在するとき、例えばその商品パッケージに印刷されたモアレパターンの違いに基づいて商品を識別することができる。また、モアレパターンを後述する照合システムによって認識することで、各々の印刷媒体を個別に認証することも可能となる。
(照合システム)
以下、モアレパターンを用いた照合システムを実現するための印刷媒体の照合方法の例について説明する。たとえば、商品のパッケージなどの印刷媒体は印刷工場で製造されるが、商品は別の商品製造工場等で製造されることが多い。かかる場合、商品製造工場で製造した商品をパッケージに包装する際に、当該パッケージに印刷されたモアレパターンを光学的に読み取り、画像データ(モアレ画像データ)に変換する。その後、当該画像データと当該パッケージ内の商品情報を対応付けて、後述する印刷パターン照合装置に個別に記憶することとする。なお、商品製造工場で上記モアレ画像データを抽出して記憶する工程を第一工程といい、例えば商品が市場に出回った後に、その商品のパッケージのモアレパターンを読み取ってモアレ画像データを抽出して記憶する工程を第二工程という。
図19に示すように、例えば、照合システム1は、不図示の商品に付随しモアレパターンが印刷されている複数の印刷媒体2と、印刷媒体2を撮影又はスキャン等をして印刷媒体画像データ(モアレパターンデータを含むもの)として読み取る読取装置(以下「カメラ」ともいう)3a、印刷媒体画像データ送信するための通信端末3、携帯電話通信網やインターネット網等で実現される通信路5、当該通信路に接続可能な印刷パターン照合装置4から構成される。なお、読取装置3aは通信端末と一体に構成されていても良い。
印刷パターン照合装置4は、通信端末3から送信された印刷媒体画像データを受信し、受信した印刷媒体画像データを記憶する照会情報記憶部410、照会情報記憶部410に記憶された印刷媒体画像データからモアレ画像データを抽出するモアレパターン抽出部420、印刷媒体製造時にモアレパターン抽出部420によって抽出されたモアレ画像データ及びこのモアレ画像データと対応付けられた製品情報を保存した基盤情報記憶部430、モアレパターン抽出部420に記憶されたモアレ画像データと、基盤情報記憶部430に保存されたモアレ画像データとを照合するモアレパターン照合部440を有している。
図20は、照合システムの動作を示す梯子チャートである。モアレパターンが印刷された商品が販売された後に、例えば消費者が通信端末3のカメラ3aを操作し、商品に付随する印刷媒体2を撮影し(ステップS101)、通信路5を介して印刷媒体画像データを印刷パターン照合装置4に送信したものとする。これに応じて、印刷パターン照合装置4の照会情報記憶部410が、送信された印刷媒体画像データを受信する(ステップS102)。続いて、モアレパターン抽出部420が、受信した印刷媒体画像データから、モアレ画像データの抽出を行う(ステップS103)。モアレ画像データを抽出する際には、カメラ3aのセンサー特性による画像歪や画像位置の修正、画像の不要部分の削除、不要な成分(モアレ以外の周波数成分、ゴミ、傷など)の除去など、照合に必要な成分を抜き出す作業を行うことが望ましい。これにより照合の精度が高まる。前記不要な成分を除去する手段として、画像の高周波成分を取り除くローパスフィルターなどがある。
モアレパターン照合部440は、このようにして抽出されたモアレ画像データと、基盤情報記憶部430が記憶しているモアレ画像データ(「照合用モアレ画像データ」ともいう)とを照合して(ステップS104)、基盤情報記憶部430が記憶している照合用モアレ画像データの中から、抽出したモアレ画像データと同一のモアレ画像データを抽出する。
同一のモアレ画像データを抽出できた場合、モアレパターン照合部440が、印刷媒体2の認証処理を行い(ステップS105)、対応付けられた商品情報(商品の製造年月日等)を、送信元の通信端末3に返信する。
このとき、モアレパターン照合部440は、まず、同一のモアレ画像データを抽出できた旨の肯定情報を通信端末3に送信し、その後に消費者から通信端末3を介してダウンロード要求があった場合に限り、商品の情報を通信端末3に送信することとしてもよい。
一方、印刷パターン照合装置4が、印刷パターン特定部に記憶されたモアレパターンと同一のモアレ画像データを印刷パターン記憶部に発見できなかった場合、モアレパターン照合部440は、同一のモアレ画像データが存在しなかったとする否定情報を、通信端末3に返信する。それに応じて通信端末3は、送信された判定結果を不図示のディスプレイに表示する(ステップS106)。
本実施の形態によれば、通信端末3の読取装置(カメラ)3aは、複数のモアレパターン間の違いを検出できる精度があればよく、高性能なレンズや撮像素子は不要となる。
(モアレパターンの設計と選択)
次に、照合に適したモアレパターンの設計と選択について、図面に基づき説明する。印刷時の印刷位置のばらつきの最小距離は、実際に長時間もしくは多数個の印刷等を行いその位置ズレを測定することで求めることができる。
また、商品パッケージの印刷後に、全ての商品パッケージを不図示の電子カメラで撮影し、商品パッケージの画像データから、モアレパターンの画像データ(モアレ画像データともいう)を抽出してデータ記憶部に記憶する。そして、商品パッケージの出荷前の検査において、すでに同一のモアレパターンが印刷されていないか(2以上の同じモアレ画像データが記憶されていないか)の確認を行うことができる。同一のモアレパターンが印刷されていると確認された場合、例えば後で得られた商品パッケージを除去する工程を設けてもよい。
かかるプロセスを、図21を用いて詳細に説明する。まず、商品パッケージの企画・デザインを行い(ステップS201)、それに基づき周期パターンのデータを作成し(ステップS203)、絵柄のデータを作成する(ステップS204)。周期パターンを作成する場合、印刷機による印刷位置のばらつきなどの固有値をもとに周期パターンを求める(ステップS202)ことが望ましいが、使用する印刷機の情報がないような場合は一般的な印刷機の情報から周期パターンを求めてもよい。
例えば、175lpi(line per inch)で印刷を行うグラビア印刷の場合、その最小の位置ズレは10μm程度と想定し、第一の周期パターンの周期を100μm以下の90μm、第二の周期パターンの周期をそれより若干小さい83μmとすることができる。これらの値は、実際のモアレパターンを発生させたうえで、デザイン面やモアレの認識のしやすさなどから最終的なパターンを決定する。
次に、得られたデータから、印刷版を作成する(ステップS205)。作成した印刷版を用いて印刷を行うが、第一の周期パターンの印刷(ステップS206)と、第二の周期パターンの印刷(ステップS207)は、異なる工程で印刷を行う。二つの周期パターンが重ねて印刷されることで、上述したようにモアレパターンが生じる。
なお、異なる工程とは、少なくとも異なる印刷版を用いればよく、同一の印刷機で印刷をしても良いし、異なる印刷機を用いてもよい。なお、ここでは、第一の周期パターンと絵柄の印刷を同一の工程とするが別工程で印刷してもよい。また、絵柄も一つの版で印刷する必要はなく複数の版で多色の印刷としてもよい。
次に、モアレパターンを含む印刷パターンを、検査装置(カメラ等)などを用いて光学的に読み取り画像データに変換して、その中からモアレ画像パターンを抽出して認識し(ステップS208)、サーバーなどのデータ記憶部に記憶しておくことで、その都度、記憶されたモアレパターンの画像データと照合することができる。同一のモアレパターンが既に印刷されていた場合や不良なモアレパターンがある場合は、その印刷媒体を除去する(ステップS209)。これによりパターン照合時の混乱を回避することができる。一方、同一のモアレパターンがない場合、そのモアレパターン(これが最初に記憶したモアレパターンとなる)を記憶(ステップS210)したうえで、次工程に進める。
本実施の形態では、周期パターンの組合せによって印刷媒体を形成しているため、スキャナーやコピー機、デジタルカメラなどを用いて複製した場合、これらの画像形成装置の撮像素子の画素やマイクロレンズアレイの周期構造との新たなモアレパターンが生じやすい。そのため、本実施の形態によるモアレパターンを持つ印刷媒体を複製することは困難といえる。なお、前記画像形成装置の特性に起因したモアレパターンを避けるためにローパスフィルターを用いる方法あるが、これによって複製されたモアレパターンは、周期パターンをもたない文様となるから、目視あるいはカメラなどにより複製されたかどうか判定が可能になる。
(トレーサビリティーシステムへの適用)
モアレパターンを商品の一部もしくは商品のパッケージの一部などに表示し、商品の出所等を確認するために用いるトレーサビリティーコード等の情報を付与した印刷媒体に、本実施形態を適用することができる。
図22を用いて、モアレパターン照合システムを利用したトレーサビリティーシステムについて説明する。図において、実線の矢印は商品の流れを示し、点線の矢印は情報の伝達を示す。製造者610は、商品が完成した段階で、商品そのものまたは商品パッケージに印刷されたモアレパターンを読取装置によって読取り、画像データに変換し、モアレパターンの画像データに対応付けて、商品の様々な情報、IDなどの情報(商品情報、または固有の情報ともいう)を、通信路を通してクラウドサーバー(データ処理装置)600に送信する。
これを受信したクラウドサーバー600では、画像データに基づきモアレパターンの照合、個別コードの認証(同じモアレパターンがないかの確認)などを行ったのち、モアレパターンの画像データと製品情報との関連付けの処理650行い、データベース内の所定の記憶領域に記憶する。所定の記憶領域としては、認証したモアレパターンの画像データと商品情報を同じフォルダとしてもよいし、認証したモアレパターンの画像データと商品情報の記憶領域を関連付けた上で別の記憶領域に保存しても良い。
トレーサビリティーシステムにおいては、当該商品が、卸売業者620や、小売業者630を経由する際、それぞれの入荷、出荷などのタイミングで、読取装置や読取装置を内蔵した通信端末などによって、モアレパターンが読み取られることとなる。そして、読み取られたモアレパターンは画像データに変換され、場所や流通経路の情報及び価格などの情報(以下「付加情報」という。)と共にクラウドサーバー600に送付される。これらのモアレパターンの読取、画像データへの変換、付加情報の送信などは、流通段階で任意の回数だけ行われ、そのたびにクラウドサーバーに蓄積される付加情報の数は増加する。
通信端末から画像データと付加情報を受信したクラウドサーバー600は、画像データに基づきモアレパターンと付加情報との関連付けの処理650を行い、すでに記憶されているモアレパターンに対応する商品情報に追加する情報として、付加情報をデータベースの所定の領域に追加的に蓄積する。
流通経路の末端にいる消費者640は、商品を購入する際、自身の持つスマートフォンなどのモアレパターンの読取機能を有する通信端末を用いて、商品パッケージのモアレパターンを読取り、クラウドサーバー600に当該商品に関する商品情報、付加情報などの照会をすることができる。かかる場合、通信端末からモアレパターンの画像データとともに照会要求を受信したクラウドサーバー600は、受信した画像データとクラウドサーバー600内に記憶しているモアレパターンと比較照合して、両者が一致すると判断した場合、それに対応するクラウドサーバー600内の商品情報及び付加情報を、消費者640のスマートフォンに返信する。このとき送信される情報は、モアレパターンが一致したことを示す情報であるともいえる。なお、一致するモアレパターンがなかった場合、クラウドサーバー600はモアレパターンが一致しなかったことを示す情報を通信端末へと送信する。
クラウドサーバー600から、モアレパターンが一致したことを示す情報を受信した消費者640は、個別の商品情報及び付加情報などの情報を得て、商品購入の判断に役立てることができる。さらに、消費者640は、商品を消費した、もしくは使った感想などを、商品パッケージのモアレパターンを読取ることで、クラウドサーバー600を介して製造者610へとフィードバックすることもできる。
このようにモアレパターンを使ったトレーサビリティーシステムは、あらゆる商品に有効であるが、特に農産物、水産物、宝石、貴金属、工芸品、美術品など、個々の商品の品質が異なるものや、食品、医薬品など期限管理や流通・保管での管理が必要なものには特に有効である。
例えば、農産物を考えた場合、生産者、地域、農薬・肥料などの使用状況、収穫時期、水分量、品種、甘みなど食味、重さ、サイズなどの情報が製品の情報となる。本システムを使うことで卸、小売などの流通側では、物流や在庫の管理を商品毎個別に行うことが可能になる。場合によっては、収穫時期からの時間などの商品情報によって、細かな価格決定をすることも可能になる。また、不良・事故が起きた場合、速やかな商品の回収と原因の特定が可能になる。消費者は、価格やブランドだけでない商品情報をもとに、納得した価格と品質で商品の購入ができることになる。生産者は、流通が間に入ることで、なかなか得られなかった生の消費者の動向をリアルタイムで知ることが出来るため、生産計画、販売計画、商品企画などに役立てることが可能になる。従来は個別コードを農産物につけるためには、QRコード等を個別に印刷したシールを商品毎に貼り付ける必要があったため、コストがかかり高価な果物などにしか利用できていなかった。本実施形態による印刷媒体を用い、安価でモアレパターンを発生させ、スマートフォンなどの広く普及している通信端末を利用することで、大きなコストをかけることなくトレーサビリティーシステムなどを構築することが可能になる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、同一絵柄を印刷する印刷装置で印刷しながらも、個々に異なるモアレパターンを表現できるため、各モアレパターンに商品固有の情報を紐付けることで、識別性が高いパターンを安価にまた大量に生成することが可能になる。これにより大量生産品を消費者に販売した後に、特定のモアレパターンを抽選で選び、それと同一のモアレパターンの商品パッケージを持つ消費者だけに抽選で賞品を授与することなど容易に行えるようになるので、商品の販促等に用いることもできる。
さらに、生成されたモアレパターンは、多様なパターン間の変化が大きいため、読取精度の高い、高価な照合装置が不要な識別標識であるということができる。また、モアレパターンは、パターン上に多少の汚れ、傷があっても、パターンの違いを正確に判断し易いという利点がある。また、商品そのものへの印刷、もしくは商品のパッケージの印刷を行うのと同じ印刷装置で印刷が可能であるため、タグやシールなどとして、個別コードを商品に添付する手間がかからないといった利点も有している。さらに、モアレパターンは、人口メトリクスとは異なり、商品や商品パッケージに直接印刷することができる識別標識であることから、付け替えなど不正を防止する機能も有する。また、モアレパターンは、スキャナーやデジタルカメラなどで複製しようとしても、モアレパターンとは異なる絵柄が取り込まれてしまうため偽造が困難になる。また、読取装置の読取位置が変化しても、誤判定の少ない読み取りも可能である。
1 照合システム
2 印刷媒体
3 通信端末
4 印刷パターン照合装置
410 照会情報記憶部
420 モアレパターン抽出部
430 基盤情報記憶部
440 モアレパターン照合部
220、221 第一の周期パターン
230、231 第二の周期パターン
240,241,242,243,244,245 印刷媒体のモアレパターン
250 直線の周期パターンによるモアレパターン
255 周期が変化する直線の周期パターンによるモアレパターン
260 閉曲線の周期パターンによるモアレパターンの中心部
300 補正マーク(記号)
6 基材シート
7C シアン用版胴
8M マゼンタ用版胴
9Y イエロー用版胴
10B ブラックおよび第一の周期パターン用版胴
11B 第二の周期パターン用版胴
7P~11P 圧胴
310 絵柄
600 クラウドサーバー
610 製造者
620 卸売業者
630 小売業者
640 消費者

Claims (9)

  1. 少なくとも2つの印刷媒体からなる印刷媒体群であって、
    前記印刷媒体群を構成する各印刷媒体には、前記印刷媒体群に共通に用いられる少なくとも2つの周期パターンが重なることによって生じるモアレパターンが形成されており
    前記印刷媒体は、前記モアレパターンの違いによって識別可能であり、
    前記印刷媒体には前記モアレパターンを光学的に読み取る際に、前記モアレパターンの読み込み姿勢を決定するために使用されるマークが、前記周期パターンに関係付けて形成されている
    印刷媒体群。
  2. 少なくとも2つの印刷媒体からなる印刷媒体群であって、
    前記印刷媒体群を構成する各印刷媒体には、前記印刷媒体群に共通に用いられる少なくとも2つの周期パターンが重なることによって生じるモアレパターンが形成されており
    前記印刷媒体は、前記モアレパターンの違いによって識別可能であり、
    前記少なくとも2つの周期パターンのうち、一の周期パターンが形成されている領域と、他の周期パターンが形成されている領域とは最外縁の形状が異なる
    印刷媒体群。
  3. 少なくとも2つの印刷媒体からなる印刷媒体群であって、
    前記印刷媒体群を構成する各印刷媒体には、前記印刷媒体群に共通に用いられる少なくとも2つの周期パターンが重なることによって生じるモアレパターンが形成されており
    前記印刷媒体は、前記モアレパターンの違いによって識別可能であり、
    前記少なくとも2つの周期パターンのうち、一方の周期パターンが形成されている領域に、他の周期パターンが形成されている領域が内包される
    印刷媒体群。
  4. 前記印刷媒体は、前記少なくとも2つの周期パターンが個別に印刷されたものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷媒体群。
  5. いずれかの2つの印刷媒体間における、2つの周期パターンの位置ずれの大きさの差異は、いずれかの周期パターンの平均周期の1/50以上である
    請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷媒体群。
  6. 前記周期パターンの少なくとも一部が、開曲線または閉曲線からなる
    請求項1~5のいずれか1項に記載の印刷媒体群。
  7. 前記周期パターンの少なくとも一部が、異なる色である
    請求項1~6のいずれか1項に記載の印刷媒体群。
  8. 印刷媒体に第一の周期パターンを生成する第1印刷工程と、
    前記印刷媒体に、前記第一の周期パターンに重ねて、第二の周期パターンを生成することによりモアレパターンを形成する第2印刷工程と、
    前記第1印刷工程から前記第2印刷工程までの間において、前記印刷媒体の位置ずれを生じさせる工程と、を有する
    印刷方法。
  9. 前記第1印刷工程及び前記第2印刷工程の少なくとも一方において、前記周期パターンとともに絵柄が印刷される
    請求項8に記載の印刷方法。
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