JP7023518B2 - 分泌障害の処置のための方法および組成物 - Google Patents

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Description

関連出願の参照
本願は、2016年5月25日に出願された米国仮出願第62/341,591号の利益を主張し、これは参照によってその全体が本明細書に取り込まれる。
政府の権利の記載
本発明は、国立衛生研究所により認可された認証番号第R01DK067158号の下で政府支援によりなされたものである。政府は本発明に一定の権利を有する。
配列表の取り込み
2017年5月24日に作成された482バイト(MS-Windows(登録商標)で測定)の"UTSW013WO_ST25.txt"という名前のファイルを含む配列表は、1つの配列を含み、参照によってその全体が本明細書に取り込まれる。
本発明の分野
本発明は一般に、分泌障害の処置のための治療薬に関する。特に本発明は、タンパク質合成を有害に誘導しない分泌促進物質の提供、およびこれらの化合物を利用した処置方法に関する。
分泌障害(膵外分泌機能不全(EPI)および唾液分泌障害を含む)の処置のための既存の治療法は、これらの疾患の進行を防がず、または元に戻すこともない。分泌障害は、他の疾患状態(嚢胞性線維症、アルコール依存症、膵炎、膵がん、胆石症、セリアック病、高トリグリセリドおよびループスを含む)に起因し、もしくは他の疾患状態との併存症であり、または外科手術に関連していることが多い。場合により、分泌障害(例えば嚢胞性線維症に起因する膵炎)は致命的であり得る。他の場合(アルコール依存症に起因するEPIなど)において、患者は疼痛および血液像が正常化されるまで、標準的な入院(時折、集中治療室での入院)の対象となる。
コレシストキニン(CCK)などの分泌促進物質が公知であるが、これらの化合物はタンパク質合成を増大させ、分泌障害の症状を悪化させるタンパク質毒性を導く。したがって、タンパク質毒性を導かず、または小胞体(ER)ストレスを増加させない分泌促進物質が必要とされている。
ある態様において、本発明は対象の分泌障害を処置する方法を提供し、これは前記対象に、治療に十分な量の線維芽細胞増殖因子21(FGF21)またはFGF21誘導体を投与することを含む。ある実施態様において、分泌障害は膵外分泌機能不全(EPI)(例えば、嚢胞性線維症、アルコール依存症、膵炎、膵がん、胆石症、セリアック病、高トリグリセリドおよびループスからなる群から選択される障害との併存症であるEPI)である。他の実施態様において、EPIは外科手術、例えば内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)に起因する。さらなる実施態様において、分泌障害はシェーグレン症候群などの唾液分泌障害(例えば、関節リウマチ、ループスおよびがんからなる群から選択される障害との併存症である唾液分泌障害)である。
ある実施態様において、治療に十分な量のFGF21を投与することは、局所投与、局部投与、全身投与または継続投与を含む。いくつかの実施態様において、投与は単回投与を提供することを含む。提供される本方法において、投与は経口投与、静脈内投与または筋肉内投与をさらに含む。いくつかの実施態様において、FGF21またはFGF21誘導体は0.1mg~300mgの用量(例えば1mg~200mgの用量)で投与される。さらなる実施態様において、FGF21の誘導体はFGF21の長時間作用型誘導体である。本発明の実施態様において、投与は、薬学的に許容され得る担体、緩衝液または希釈剤中に分散しているFGF21またはFGF21誘導体を含む医薬組成物を提供することを含む。
さらなる他の実施態様において、本発明によって提供される方法はFGF21を第2の治療法と共に提供することを含み、例えば、第2の治療法はFGF21またはFGF21誘導体を投与する前に提供され、または第2の治療法はFGF21またはFGF21誘導体を投与した後に提供され、または第2の治療法はFGF21またはFGF21誘導体と同時に提供される。
ある実施態様において、本発明は対象の分泌障害を処置する方法を提供し、ここで前記対象はヒトである。
以下の図は本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに示すために含まれる。本発明は、本明細書に示される具体的な実施態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図のうち1つ以上を参照することによってより良く理解され得る。
図1は、KLB-Tマウスの作製のためのCRISPR/Cas9を介するノックイン戦略を示す。Klbエクソン5の3’UTR(これはプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含んでいた)を標的とする配列を含む単一のガイドRNAを用いて、Tdtomatoを含むHDRテンプレート(ドナーDNA)の組換えを誘導した。HDRは2Kbの左アーム(HA-L)および相同の3Kbの右アーム(HD-R)を有していた。
図2は、FGF21が消化酵素のレベルを制御することを示す。(A、B)一晩絶食後、および2時間のリフィーディング期間後の野生型(WT)およびFgf21-ノックアウト(KO)マウスにおける、好酸球の面積の割合の定量化を伴う20倍の拡大率で画像化された膵臓のH&E染色(A)ならびにアミラーゼレベルおよびリパーゼレベルのウエスタンブロット定量化(B)。(C、D)2日間連続で1日に2回、賦形剤または1mg/kgの組換えFGF21で処理されたWTマウスおよびFgf21-KOマウスにおける、好酸球の面積の割合の定量化を伴う20倍の拡大率で画像化された膵臓のH&E染色(C)ならびにアミラーゼレベルおよびリパーゼレベルのウエスタンブロット定量化(D)。(E~G)一晩絶食後、および2時間のリフィーディング期間後のWTマウスにおける膵臓のFGF21 mRNAレベル(E)、膵臓のFGF21タンパク質レベル(F)および血漿FGF21レベル(G)。(H)自由摂食のWTマウスにおける15分間のCCK処理の前(基礎)または後の膵液および血漿中のFGF21タンパク質レベル。結果を平均値±S.E.Mとして表す。全ての実験において、n=3~6マウス/群であった。*、p<0.05;**、p<0.01;**、p<0.001;****,p<0.0001。
図3は、FGF21が腺房細胞に作用し、タンパク質合成に影響を与えることなく膵消化酵素の分泌を誘導することを示す。(AおよびB)賦形剤、1mg/kg FGF21、または5mg/kg CCKで2時間(A)または15分間(B)処理されたマウスにおける、H-フェニルアラニンの膵臓のタンパク質への取り込み(A)ならびに膵臓のホスホ(p)-eIF4E-BP1およびp-ERK1/2のウエスタンブロット定量化(B)。(C~F)2日間連続で賦形剤または1mg/kgのFGF21で処理されたWTマウス(CおよびD)またはヘテロ接合体(Het)対照マウスもしくはβクロトーノックアウト(KO)マウス(EおよびF)における膵液の流量および膵液中のアミラーゼレベル。(GおよびH)賦形剤、1μg/mL FGF21、10pM(初代腺房細胞)もしくは100pM(AR42J細胞) CCK、または1μg/mL FGF21と10pM CCK(初代腺房細胞)の両方で30分間処理されたマウス初代腺房細胞(G)およびAR42J細胞(H)からのアミラーゼ分泌。(IおよびJ)2日間連続で賦形剤または1mg/kgのFGF21で処理されたKlbfl/flマウスおよびKlbCela1-/-マウスの膵液におけるアミラーゼレベル(I)および膵液の流量(J)。結果を平均値±SEMとして表す;全ての実験において、n=4~6マウス/群であった。初代腺房細胞の実験は3回反復して行い、3回の独立した実験において類似の結果が得られた。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001。
図4は、FGF21がFGFR-PLC-IPR経路を介して細胞内カルシウム放出をもたらすことを示す。(A~E)AR42J細胞におけるカルシウム放出を、ベースライン蛍光に正規化されたカルシウム指示薬であるFluo4-AMの信号マイナスバックグラウンド蛍光(ΔF/F0)によって、10倍の拡大率で2分間測定した。細胞を10秒間画像化し、次いで1μg/ml FGF21(左側のパネル)または100pM CCK(右側のパネル)のいずれかで処理した。黒色の矢印は処理の開始を示す。(B~E)において、細胞を画像化の30分前および画像化中に、1μM PD173074(B)、10μM L-364,718(C)、10μM U73122(D)、または100μM 2-APB(E)で処理した。カルシウムの過渡信号を、5~20個の細胞を含む各集団を伴う50~200細胞集団/群の平均のカルシウム放出として表す。2回の独立した実験において、類似の結果が得られた。(F)1mg/kg FGF21または5μg/kg CCK(腹腔内)で15分間処理されたWTマウスからの膵臓の全体(T)の、ならびにホスホ(p)PLCγおよびPLCβ、ならびにp-ERK1/2のウエスタンブロット画像および定量化。Hsp90はローティングコントロールである。結果を、n=4マウス/群の平均値±SEMとして表す。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。(G)消化酵素の分泌を刺激する、腺房細胞に対するFGF21の作用のモデル。
図5はAR42J細胞からのカルシウム放出の刺激を示す。ベースライン蛍光に正規化されたFluo4-AMの信号からバックグラウンド蛍光を差し引く(ΔF/F0)ことによって、カルシウムを10倍の拡大率で2分間測定した。細胞を画像化する30分前に、1μM PD173074、10μM L-364,718、10μM U73122または100μM 2-APBで処理し、その後賦形剤で処理した(黒色の矢印)。カルシウムの過渡信号を、5~20個の細胞を含む各集団を伴う50~200細胞集団/群の平均のカルシウム放出として表す。2回の独立した実験において、類似の結果が得られた。
図6は、FGF21がセルレイン誘導性膵炎においてERストレスを減弱することを示す。(A、B)膵炎を誘導するためにセルレインで処理された(CIP)、野生型(WT)マウスおよびFgf21ノックアウト(KO)マウス(A)またはWTマウスおよびFgf21トランスジェニック(Tg)マウス(B)においてqPCRで解析された、p-eIF2αタンパク質、ならびにAtf4、Chop、BipおよびXBP1s mRNAの定量化。結果を平均値±S.E.Mとして表す。全ての実験において、n=3~6マウス/群であった。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
膵外分泌機能不全(EPI)は、膵外分泌部が(消化酵素が栄養分の吸収のために消化中に栄養分を分解する場所である)小腸に消化酵素を分泌および送達できないことである。数種類の障害(アルコール依存症および嚢胞性線維症を含む)がEPIを引き起こし得、この病状の患者は処置をしなければ栄養失調状態となる。
EPI処置のための既存の治療法は、この障害の進行を防がず、または元に戻すこともない。また、膵外分泌の増加に関する公知の処置はタンパク質合成を増加させるように機能し、これはタンパク質毒性をもたらすため、この治療法は部分的である。結果として、嚢胞性線維症の場合に発生するEPIは通常、致命的であり、急性または慢性EPIの他の原因に罹患している患者は入院(時折、集中治療室での入院)の対象となる。EPIを直接処置できないという事実は膵がんを導き得、既存の治療法ではこの進行を防ぐことはできない。
本発明者らは驚くべきことに、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)がタンパク質合成を有害に増加させることなく、膵外分泌を増加できることを発見した。したがって、FGF21は唯一、タンパク質毒性を生じることなく分泌および膵液の流動を誘導することができる。FGF21は抗炎症機序を介して機能するとこれまで考えられていた(Fisher, et al., Annu Rev Physiol 78: 223-241, 2016; Johnson et al., Gastroenterology 137(5): 1795-1804, 2009)が、本開示はFGF21が分泌機序を介して機能することを初めて示す。驚くべきことに、標準的な食後の分泌促進物質(コレシストキニン(CCK)を含む)とは異なり、FGF21はタンパク質合成をすることなく分泌を誘導することによって膵臓の小胞体(ER)ストレス(タンパク質毒性)を減少させるように作用し、これはEPIに共通する過剰なタンパク質量を軽減する。本発明はさらに、FGF21を用いて分泌障害(EPIなど)を処置する新規な方法を提供する。
したがって、本発明は、FGF21治療が慢性的な膵炎の膵がんへの進行を防ぐ可能性を有することを初めて示す。FGF21は他の分泌障害または分泌疾患(唾液腺が唾液を産生できない口内乾燥疾患(シェーグレン症候群)など)に有用であることがさらに示される。嚢胞性線維症、アルコール依存症、膵炎、膵がん、胆石症、セリアック病、高トリグリセリドまたはループスとの併存症であり、または外科手術に起因する膵外分泌機能不全を処置する方法がさらに提供される。
I.線維芽細胞増殖因子21(FGF21)
線維芽細胞増殖因子21(FGF21)はホルモンであり、その合成および分泌は多様な代謝ストレスおよび細胞ストレス(これは飢餓からミトコンドリアストレスおよびERストレスに及ぶ)によって引き起こされる。FGF21は、1回膜貫通タンパク質であるβクロトーと複合体を形成するチロシンキナーゼ活性を有する通常のFGF受容体(FGFR)から構成される細胞表面受容体を介して作用する。FGF21、βクロトーおよびFGFRは膵外分泌部に共発現しており、これは膵腺房細胞がインビボ(in vivo)におけるFGF21の作用部位であることを示唆している。したがって、FGF21 mRNAレベルは、絶食状態から摂食状態への移行中に膵臓全体において、およびERストレスを誘導するタプシガルジン処理の後に単離された腺房細胞において誘導される。FGF21の薬理学的投与は遺伝的および薬理学的に誘導されたマウスモデルにおいて腺房細胞障害を減弱するが、膵外分泌におけるFGF21の生物学的機能は不明である。
本発明者らは、FGF21が膵外分泌部において分泌促進物質として機能し、分泌および膵液の流動を誘導することを発見した。本開示はさらに、FGF21が他の分泌促進物質とは異なる受容体を標的とし、したがってタンパク質合成を増加させず、これがタンパク質毒性のストレスを軽減する能力をもたらしていることを示す。この分泌過程が損なわれる膵炎の致死的な疾患は嚢胞性線維症およびアルコール依存症を含み、FGF21における膵臓の分泌および膵液の流動を促進する能力はこれらの疾患を軽減する。FGF21はさらに、FGF21受容体複合体であるFGFR1/13-クロトーを発現する、分泌能を有する他の組織(唾液腺を含む)において有用である。したがって、FGF21が分泌障害に罹患している患者のための有効な治療法であることは本開示において初めて示されている。
II.FGF21の治療的使用
FGF21療法での処置によって修正可能であることが本開示において示されている分泌障害は、(例えば嚢胞性線維症、アルコール依存症、膵炎、膵がん、胆石症、セリアック病、高トリグリセリドもしくはループスに起因し、またはこれらとの併存症である)膵外分泌機能不全を含む。FGF21処置によって修正可能な他の分泌障害は、唾液分泌障害(シェーグレン症候群を含む)、および外科手術に起因する分泌障害(内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)に起因するEPIを含む)を含む。これらの障害に罹患する対象は、本明細書において提供される方法に従ってFGF21またはFGF21の誘導体で処理され得、これらの障害の症状を軽減する。
本開示において提供されるインビトロ(in vitro)およびインビボにおけるFGF21の生理活性に基づいて、本発明のFGF21製剤は単独で、または以下の症状の処置における他の治療薬と組み合わせて使用され得る:
膵外分泌機能不全(EPI)
本明細書に記載されるFGF21製剤はさらに、(例えば、嚢胞性線維症、アルコール依存症、膵炎、膵がん、胆石症、セリアック病、高トリグリセリドもしくはループスに起因し、またはこれらとの併存症である)EPIの処置に有用である。EPIは、膵外分泌部が(消化酵素が栄養分の消化および吸収を促進する場所である)小腸に消化酵素を分泌および送達できないことである。したがって、EPIに罹患している患者は栄養失調を経験する。EPIは他の膵臓疾患(膵炎および嚢胞性線維症など)から生じ得る。これらの疾患のための既存の治療法は症状を改善することに限定されており、これらの障害に直接対処し、またはEPIの進行を妨げる公知の処置は存在しない。本明細書において提供されるFGF21組成物および誘導体は消化酵素の分泌および膵液の流動を刺激し、EPI患者における消化酵素の分泌および流動を復元するために治療的に使用され得る。本発明のFGF21製剤およびFGF21療法は単独で、またはEPIを処置もしくは予防する他の物質と組み合わせて使用され得る。
唾液分泌障害
本明細書に記述されるように、FGF21またはその誘導体は分泌促進物質として作用し、タンパク質毒性を増加させることなく分泌を増加させる。したがって、FGF21およびその誘導体はシェーグレン症候群(口内乾燥疾患)を含む唾液分泌障害の処置に有用である。本発明のFGF21製剤およびFGF21療法は単独で、または唾液分泌障害を処置または予防する他の物質と組み合わせて使用され得る。
内視鏡的逆行性胆道膵管造影
内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)は、胆管、膵管および胆嚢を調べるために臨床において使用される技術である。この技術は、内視鏡を患者の口を通して導入し、これらの管が排出する場所である十二指腸にアクセスするために食道および胃を通過することからなる。内視鏡は、これらの管の可視化を促進する放射線造影剤を送達するために使用される。この手技後の一般的な合併症の1つは、この手技を経験している患者の約10%における膵炎である。
本開示は、FGF21またはその誘導体での処置が膵炎を減少させることを示す。FGF21は他の臨床適用のために承認され、ヒト対象において安全性および効力がテストされている。したがって、本明細書において提供されるFGF21製剤での処置は、ERCPによって誘導された膵炎を予防または減少させるために使用され得る。ある実施態様において、FGF21処置は予防的であり得、膵炎を誘導し得る外科手術の前にFGF21またはその誘導体を投与することからなり得る。
急性膵炎または慢性膵炎
100,000人のうち約50人が膵炎を経験している米国において、急性膵炎および慢性膵炎の両方の発生率が著しく増加している。慢性膵炎および急性膵炎の両方のための現在の標準的な治療法は、患者がこの疾患由来の数種の合併症(腹痛、嘔吐および吐き気)のうちいくつかを経験している場合は常に、入院に限定される。本明細書において提供されるFGF21製剤および誘導体は、急性膵炎および慢性膵炎の予防および処置に有用である。FGF21およびその誘導体は膵炎のげっ歯類モデルにおいて膵臓への炎症および損傷の両方を低減させるのに有効であることが本明細書において示される。
本明細書に記述されるように、FGF21またはその誘導体は分泌促進物質として作用し、タンパク質毒性を増加させることなく分泌を増加させる。したがって、FGF21およびその誘導体は、(例えば、嚢胞性線維症、アルコール依存症、膵炎、膵がん、胆石症、セリアック病、高トリグリセリドもしくはループスに起因し、またはこれらとの併存症である)急性膵炎または慢性膵炎の処置に有用である。本発明のFGF21製剤およびFGF21療法は単独で、または急性膵炎もしくは慢性膵炎を処置もしくは予防する他の物質と組み合わせて使用され得る。
がん
本明細書において記述されるFGF21製剤はさらに、がんまたは前がん状態の障害(例えばEPIの進行に起因する膵がん)の処置に有用である。既存の治療法は症状を対象としており、EPIの根底にある原因を処置せず、または膵がんの進行を妨げない。本発明のFGF21製剤およびFGF21療法は単独で、またはがんもしくは前がん状態の障害を処置もしくは予防する他の物質と組み合わせて使用され得る。
III.膵外分泌機能不全およびタンパク質毒性
EPIは、膵外分泌部が(消化酵素が栄養分の吸収のために消化中に栄養分を分解する場所である)小腸に消化酵素を分泌および送達できないことである。結果として、EPIに罹患している患者は処置をしなければ栄養失調状態となる。数種類の疾患(アルコール依存症および嚢胞性線維症など)がEPIを引き起こし得る。本明細書において提供されるFGF21製剤またはFGF21誘導体製剤は、膵臓の分泌および流動を誘導することによってEPIを予防または処置するように作用する。FGF21は標準的な食前の分泌促進物質(CCKなど)とは異なる受容体を介して作用し、この受容体は慢性膵炎または嚢胞性線維症において影響を受けない。これは正常な膵臓の分泌の復元を可能にする。
EPIの場合において、利用可能な唯一の処置は膵酵素補充療法(PERT)である。PERTは唯一、EPI患者の栄養失調状態を改善するが、膵臓の機能不全に対処しない。膵炎が既存の治療法で直接処置できないという事実は、膵がんを導き得る。
膵腺房細胞は他のあらゆる成体細胞種よりも多くのタンパク質を合成および分泌し、これは膵腺房細胞がタンパク質のミスフォールディングおよび関連する小胞体(ER)ストレスを最小化する機構を有することが不可欠であることを意味している。さらに、分泌障害の治療法として使用されている標準的な膵臓の分泌促進物質はタンパク質合成を誘導し、タンパク質毒性を導く。本発明者らは本開示において、FGF21またはその誘導体が有害なタンパク質合成を生じることなく膵外分泌部における分泌を誘導するのに使用できることを初めて示す。
IV.医薬組成物
本明細書に記載されるように、本発明のFGF21またはFGF21誘導体は分泌障害(EPI、唾液分泌障害、または外科手術に起因するEPIを含む)を処置するために投与され得る。これらは、個々の治療効果のある成分または治療効果のある成分の組合せのいずれかとしての医薬品と組み合わせた使用のために利用できる従来のあらゆる方法によって投与され得る。これらは単独で投与され得るが、一般的には選択された投与経路および標準的な医薬品の実務に基づいて選択された薬学的に許容され得る担体と共に投与される。
本発明の水溶性組成物は、タンパク質毒性を誘導することなく分泌促進物質として機能する、有効量のFGF21またはFGF21誘導体を有する。このような組成物は一般に、薬学的に許容され得る担体または水溶性媒体中に溶解または分散している。
語句「薬学的に許容され得る」または「薬理学的に許容され得る」は、動物またはヒトに適切に投与された場合に、有害反応、アレルギー反応または他の望ましくない反応を生じない分子実体および組成物を指す。本明細書において、「薬学的に許容され得る担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに等張遅延剤および吸収遅延剤などを含む。医薬品有効物質のためのこのような媒体および物質の使用は当分野で周知である。従来のあらゆる媒体または物質がこの有効成分に適合しない場合を除き、治療組成物におけるその使用が想定される。追加の有効成分(他の降圧剤、抗炎症剤、または抗増殖剤など)もまた、組成物中に組み込まれ得る。
非経口投与(静脈内注射または筋肉内注射など)のために処方された化合物に加えて、他の薬学的に許容され得る形態は、例えば、経口投与のための錠剤または他の固形物質;持続放出型のカプセル;および現在使用されているあらゆる他の形態(クリーム、ローション、マウスウォッシュ、吸入剤、脂質担体およびリポソームなどを含む)を含む。
経口投与
ある実施態様において、本発明の有効な化合物は経口投与され得る。これは一般的に消化酵素によるタンパク質分解に対して抵抗性である、または抵抗性を与えられた物質において想定される。そのような化合物は、製造者から錠剤の形状で入手できるあらゆるそれらの化合物または薬剤、ならびにそれらの誘導体および類似体を含むことが想定される。
経口投与において、本発明の有効な化合物は、例えば不活性希釈剤もしくは吸収可能な食用の担体と共に投与され得、または硬もしくは軟シェルゼラチンカプセル(shell gelatin capsule)に封入され得、または錠剤に圧縮され得、または食品に直接組み込まれ得る。治療的な経口投与のために、有効な化合物は賦形剤に組み込まれ得、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップおよびウエハーなどの形状で使用され得る。このような組成物および調製物は少なくとも0.1%の有効な化合物を含むはずである。当然のことだが、組成物および調製物の割合は様々であり得、都合の良いように、その構成単位の重量の約2~約60%であり得る。そのような治療に有用な組成物中の有効な化合物の量は、適切な用量が得られるような量である。
錠剤、トローチ、丸剤およびカプセルなどはまた、以下を含み得る:結合剤(トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンなど);賦形剤(リン酸二カルシウムなど);崩壊剤(コーンスターチ、ジャガイモデンプンおよびアルギン酸など);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムなど);および甘味剤(ショ糖、乳糖またはサッカリンなど)または香味剤(ペパーミント、冬緑油、またはサクランボ香料など)を添加してもよい。単位用量の形状がカプセルである場合、これは上記の種類の物質に加えて液体担体を含み得る。コーティングとして、または単位用量の物理的形状を改変する、様々な他の物質が存在し得る。例えば、錠剤、丸剤またはカプセルは、セラック、糖またはその両方でコーティングされ得る。エリキシル錠のシロップは、有効な化合物、甘味剤としてのショ糖、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素および香味剤(サクランボ香料またはオレンジ香料など)を含み得る。当然のことだが、任意の単位用量の形状を調製するのに使用されるあらゆる物質は、薬学的に純粋であり、利用される量において実質的に非毒性であるべきである。さらに、有効な化合物を徐放性調製物および徐放性製剤に組み込んでもよい。
処方に際し、本発明のFGF21またはFGF21誘導体は製剤に適合する様式で、治療に有効な量を投与される。製剤は様々な剤形(特定の実施例において後述される剤形など)で容易に投与される。
非経口投与
本発明の有効な化合物はまた、非経口投与のために処方され得る(例えば静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、または腹腔内経路を介した注射のために処方され得る)。本発明のFGF21またはFGF21誘導体を活性成分として含む水溶性組成物の調製は、本開示を考慮すると当業者に公知である。通常、このような組成物は注射剤(溶液または懸濁液のいずれか)として調製され得る;注射の前に液体を添加することによって溶液または懸濁液を調製するための使用に適した固体形状もまた調製され得る;この調製物はまた、乳化していてもよい。
遊離塩基または薬理学的に許容され得る塩としての有効な化合物の溶液は、界面活性剤(ヒドロキシプロピルセルロースなど)と適切に混合した水中で調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中、ならびに油中で調製され得る。通常の保存条件下および使用条件下において、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐ保存剤を含む。
いくつかの形態において、一般的に溶解性およびバイオアベイラビリティを向上させ、より容易に吸収される有効な剤形を提供するために、本発明の化合物を塩の形態で処方することが望ましい。本明細書において、用語「薬学的に許容され得る塩」は、溶液中のFGF21またはその誘導体を生理学的に許容される適切な酸で酸性化させることによって形成される化合物を指す。生理学的に許容される適切な酸は有機酸および無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、サリチル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、イソチオン酸(isothionic acid)、乳酸、グルコン酸、グルクロン酸、アミド硫酸、安息香酸、酒石酸、およびパモ酸(pamoaic acid)など)である。通常、有効な化合物のこのような塩形態は使用前に提供または混合される。
注射での使用に適切な医薬品の形態は、滅菌水溶液または分散液;ゴマ油、落花生油、または水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌注射用溶液または分散液を即時調製するための滅菌粉末を含む。あらゆる場合において、この形態は無菌的でなければならず、容易に注射針が通過できる程度の流体でなければならない。これは製造条件下および保存条件下で安定でなければならず、微生物(細菌および真菌など)の汚染作用に対して維持されなければならない。
有効な化合物は、中性または塩の形態で組成物中に処方され得る。薬学的に許容され得る塩は酸付加塩を含み、これは無機酸(例えば塩酸またはリン酸など)または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸およびマンデル酸など)によって形成される。
本発明の化合物はまた、リポソームまたはあらゆる他の脂質担体を含む組成物中に処方され得る。リポソームは、多胞性(multivesicular)リポソーム、多重膜リポソームおよび単層リポソームを含む。
担体はまた、溶媒または分散媒(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含む)であり得る。適切な流動性は、例えばコーティング(レシチンなど)の使用、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の予防は様々な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸およびチメロサールなど)によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤(例えば糖または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物における吸収を遅延する物質(例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によってもたらされ得る。
滅菌注射溶液は、必要量の有効な化合物を上記で列挙された様々な他の成分を含む適切な溶媒に組み込み、必要に応じてその後に濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、滅菌された様々な活性成分を基本的な分散媒および上記で列挙された必要とされる他の成分を含む滅菌賦形剤に組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合において、好ましい調製法は、あらかじめ滅菌濾過した溶液から活性成分プラスあらゆる追加の所望の成分の粉末をもたらす真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。
処方に際し、溶液は製剤に適合する様式で、治療に有効な量を投与される。製剤は様々な剤形(使用可能な薬剤放出カプセルなどを伴う、上述の注射溶液の種類など)で容易に投与される。
水溶液における非経口投与のために、例えば、溶液は必要に応じて適切に緩衝化され、溶液希釈剤はまず十分な生理食塩水またはグルコースによって等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に特に適している。この点において、利用され得る滅菌水性溶媒は本開示を考慮して当業者に公知である。例えば、一回量が等張NaCl溶液1mLに溶解され得、そして皮下注入液1000mLに添加され得るか、または提案される注入部位に注入され得る(例えば"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, 1035-1038ページおよび1570-1580ページ参照)。処置される対象の状態に依存して、投与量のいくらかの変動が必然的に生じる。投与の責任者はいずれにせよ、個々の対象のために適切な投与量を決定する。
V.治療
これを達成する1つの方法は、新規な薬剤を従来の治療法と組み合わせることである。本発明の文脈において、本発明によって提供されるFGF21またはその誘導体は、新規または既存の医薬品、手術、化学療法、放射線療法および/または遺伝子療法と組み合わせて使用され得ることが想定される。
「有効量」または「治療に十分な量」は、治療的有用性をもたらすのに十分な(例えば、降圧剤および/または抗炎症剤および/または抗増殖剤として機能するのに有効な)化合物の量である。対象の処置の文脈において、有効量は治療的有用性をもたらすのに十分である。本明細書における用語「治療的有用性」は、対象の疾患の医学的処置に関して、対象の健康を促進または増強するあらゆるものを指す。治療的有用性の例の網羅的でないリストは、患者の生命の任意の期間の延長;疾患の発生の減少または遅延;高血圧の減少;炎症の減少;細胞増殖の減少;および/または患者の状態に起因し得る対象に対する痛みの減少を含む。
用語「約」は、値が、その値を決定するために利用されるデバイスまたは方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを指すことが明確に示されていない限り、または代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するように使用されるが、本開示は代替物のみを指す定義および「および/または」を指す定義を支持する。特許請求の範囲において、単語「含む」または他のオープンランゲージと組み合わせて使用される場合、単語「a」および「an」は具体的な記載がない限り「1以上」を意味する。用語「含む」、「有する」および「包含する」は非限定的な連結動詞である。これらの1以上の動詞のあらゆる形式または時制(「含んでいる」、「有している」または「包含している」など)もまた非限定的である。例えば、1以上の工程を「含む」、「有する」または「包含する」あらゆる方法は、それらの1以上の工程のみを有することに限定されず、記載されていない他の工程を包含する。同様に、1以上の形質を「含む」、「有する」または「包含する」あらゆる植物はそれら1以上の形質のみを有することに限定されず、記載されていない他の形質を包含する。
用語「阻害する」、「減少させる」もしくは「予防」またはこれらの用語の任意の変化形は、特許請求の範囲および/または本明細書において使用される場合、所望の効果を達成するための測定可能な任意の減少または完全な阻害を含む。
用語「有効」は、本明細書および/または特許請求の範囲において使用される場合、所望の結果、期待される結果または意図される結果を達成するのに十分であることを意味する。
本発明の他の目的、特徴および利点は、この詳細な説明および以下で提供される実施例から明らかである。しかしながら、本発明の精神および範囲内における様々な変化および修飾がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるため、提供される詳細な説明およびあらゆる具体的な実施例は本発明の具体的な実施態様を示すが、例示の目的のみによって与えられることが理解されるはずである。
実施例1.Fgf21ノックアウトマウスおよびFgf21トランスジェニックマウス
マウス研究
Fgf21ノックアウト(KO)マウス(Potthoff, et al., Proc Natl Acad Sci USA 106, 10853-10858, 2009)、Fgf21トランスジェニック(Tg)マウス(Inagaki, et al., Cell Metab 5, 415-425, 2007)、KLB-TおよびWTの同腹仔のうちの1匹をC57Bl/6Jバックグラウンド上で維持した。βクロトーKOおよびヘテロ接合体の同腹仔のうちの1匹を、混合したC57BL/6J;129/Svバックグラウンド上で保持した(Ding, et al., Cell Metab 16, 387-393, 2012)。全てのマウスを無菌設備において飼育し、標準的な固形飼料の食事を与えた(Harlan Teklad 2916)。絶食とリフィーディング実験のために、マウスを一晩絶食させ、次に標準的な固形飼料の食事を2時間再供給した。急性膵炎を、50μg/kgセルレイン(Sigma)の7時間毎の腹腔内注射による投与によって誘導し、対照群のマウスに生理食塩水を注射した。血漿中のFGF21を、マウスFGF21 ELISAキット(Biovendor)を用いて測定した。全ての実験において雄性マウスを使用した。
ベータクロトー-Tdtomato(KLB-T)レポーターマウスを、(Yang, et al., Cell 154, 1370-1379, 2013)に記述されるようにCRISPR/Cas9ノックイン法を用いて作製した。Tdtomato遺伝子のコーディング領域を、Klb遺伝子の最後のコーディングエクソン(エクソン5)の3’末端にインフレームで融合した。配列番号1の配列を有し、Klbエクソン5の3’UTRを標的とする単一のガイドRNAを、Cas9 mRNA(Trilink Bio)、ならびに相同配列の左アーム(2kb)および右アーム(3kb)に結合したTdtomatoと融合したKlbエクソン5を含む環状相同組換え修復(HDR)テンプレートと組み合わせて、C57Bl/6J接合体に微量注射した(図1)。注射された接合体を、偽妊娠した雌性C57Bl/6Jマウスに移植した。これらの微量注射から生まれたマウスを尾のDNAからPCRによってスクリーニングしてHDRテンプレートの挿入を確認し、生殖細胞系伝達をWT C57Bl/6Jマウスとの交配による第2世代において確認し、あらゆるモザイク現象の可能性を排除した。本研究のために、雄性ホモ接合体KLB-Tおよびそれらの同腹仔を使用した。
膵液の回収
マウスに賦形剤(10mM NaHPO、2%[w/v]グリセロール、pH7.6)または1mg/kgヒト組換えFGF21(Novo Nordisk)を、2日間連続で1日に2回皮下注射した。マウスを6時間絶食させ、膵液を15分間回収した。膵液を回収する1時間前に、賦形剤またはFGF21の最後の注射を行った。
膵臓のタンパク質合成の測定
膵臓のタンパク質合成を、H-フェニルアラニンを用いた大量投与法によって測定した(Sans, et al., American journal of physiology 287, G667-675, 2004)。
リアルタイム定量PCR
膵臓由来のRNAをRNA-Stat60(IsoTex Diagnostics)を用いて抽出した。cDNAをRNA(2μg)からHigh-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Life Technologies)を用いて作製した。qPCRを、(Bookout, et al. Current protocols in molecular biology / ed. Ausubel, Chapter 15, Unit 15-18, 2006)に記載されるように、SYBR green法によって行った。
組織学
マウスの膵臓を10%中性緩衝ホルマリンで一晩固定し、次にパラフィン包理し、薄片を作製し、ヘマトキシリンおよびエオシン染色した。新鮮凍結した組織学のために、膵臓をすぐに切断し、冷却イソペンタン中で瞬間凍結させ、14~16μmの薄片を作製した。次に薄片を10%中性緩衝ホルマリン中において4℃で15分間固定し、1X PBSで3回洗浄し、DAPIを含むVectashield mounting medium(Vector Laboratories)を用いてマウントした。画像をZeiss Axioscan Z1スライドスキャナーを用いて20倍の拡大率で取得した。好酸球の面積の定量化をImage Jを用いて行った。
免疫ブロット法
膵臓を、プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤の混合物(Roche)を添加した1X RIPA緩衝液(Cell Signaling Technology)中において、Fastprep-24用lysing matrixビーズチューブ(MP Biomedicals)を用いてホモジナイズした。タンパク質溶解物の濃度をDCプロテインアッセイ(Biorad)を用いて測定した。等量のタンパク質をロードし、4~20%SDS-ポリアクリルアミドゲル(Biorad)中で電気泳動し、ニトロセルロース膜(Biorad)に移行した。膜をTBST中において5%BSAで1時間ブロックした。FGF21、アミラーゼおよびリパーゼ(Santa Cruz);βアクチン(Abcam);p-EIF2α、p-ERK1/2およびp-eIF4E-BP1(Cell Signaling Technology)に対する抗体を用いた膜の探索を4℃で一晩行った。次に膜を、一次抗体の宿主種(host species)に対するHRP標識二次抗体(Cell Signaling Technology)で1時間インキュベートした。膜を、Super Signal West化学発光キット(Thermo)を用いて展開し、信号をImageQuant LAS4000発光イメージャー(General Electric)を用いて検出した。定量化をImage Jを用いて行った。
統計解析
二群分析のためにスチューデントのT検定を行った。多群分析のために、ニューマン・コイルス事後補正を伴う一元配置分散分析および二元配置分散分析(Graphpad Prism)を用いた。データを平均値±SEMで表す;p<0.05を有意であると見なした。
実施例2.Fgf21ノックアウトマウスの膵臓の表現型
Fgf21ノックアウト(KO)マウスを調べ、膵臓の表現型を示すか否かを決定した。H&E染色された膵臓の薄片の組織学的分析は、絶食していたマウスおよび摂食したマウスの両方に由来するFgf21-KOの膵臓における好酸球染色の有意な増加を明らかにし、これはチモーゲン顆粒密度の増加を示していた(図2A)。この観察を支持するように、Fgf21-KOの膵臓におけるアミラーゼレベルおよびリパーゼレベルは絶食中および摂食中において増加していた(図2B)。外来性FGF21の投与は、Fgf21-KOマウスにおける膵臓の好酸球の面積の割合を野生型(WT)のレベルまで減少させた(図2C)。免疫ブロット解析は、FGF21処理後のFgf21-KOマウスにおける膵臓の代謝酵素レベルの対応する減少を確認した(図2D)。膵臓におけるFGF21 mRNAおよびタンパク質のレベルがリフィーディング中に誘導された(図2Eおよび図2F)。しかしながら、注目すべきことに、リフィーディングは血漿中のFGF21濃度を減少させ(図2G)、これはFGF21が膵外分泌部から血中に分泌されていないことを示す。対照的に、自由摂食のWTマウスの血漿と比較して200倍高いFGF21レベルが膵液において観察された(図2H)。さらに、膵臓の酵素合成を著しく増加させることが知られているCCKでの処理は、血中においていかなる変化も生じることなく、膵液中のFGF21濃度をさらに3倍増加させた(図2H)。したがって、生理的ストレスおよび薬理的ストレスに応じて、FGF21は自己分泌またはパラ分泌の様式で作用し、膵消化酵素のレベルを制御している。
実施例3.膵臓のタンパク質合成に対するFGF21の効果
FGF21はタンパク質合成を阻害するか、または消化酵素の分泌を増加させるかのいずれかによって、膵腺房細胞中の消化酵素濃度を減少させ得る。CCKと比較した、膵臓のタンパク質合成に対するFGF21の効果を調べた。予想されるように、CCKの投与はH-フェニルアラニンの膵臓のタンパク質への取り込みを著しく増加させた(図3A)。対照的に、FGF21の投与は膵臓のタンパク質合成に対して有意な効果を持たなかった(図3A)。このタンパク質合成のプロファイルと一貫して、CCKは真核生物翻訳開始因子4E結合タンパク質1(eIF4E-BP1)のリン酸化を増加させたが、FGF21は効果を持たなかった(図3B)。FGF21とCCKの両方は、膵臓中のERK1/2のリン酸化を誘導し(図3B)、これはこれらが共に膵臓中でシグナル伝達することを示した。したがって、FGF21はタンパク質合成を抑制することによって膵臓中の消化酵素レベルを減少させるのではない。さらに、CCKとは異なり、FGF21は膵臓のタンパク質合成を刺激しない。
本研究で利用したFGF21化合物は、Novo Nordiskからのヒト組換えFGF21であった。この化合物はヒトFGF21の天然型であるが、他のFGF21類似体および模倣物が利用可能である;これらは全てFGFR/βクロトー受容体複合体を標的とする。これらのFGF21誘導体のいくつかには、限定されないが、LY2405319(Lilly Research Laboratories)、FGF21模倣物モノクローナル抗体mimAb1(Amgen)、PF-05231023(Pfizer)、FGF21模倣物アゴニスト抗FGFR1(FGF受容体1)抗体R1MAbs(Genentech)が含まれる。
実施例4.膵臓のタンパク質分泌に対するFGF21の効果
マウスの一次腺房細胞の調製
一次腺房細胞を、公開されたプロトコル(Williams, et al., The American journal of physiology 235, 517-524, 1978)の改変によって調製した。簡潔に述べると、マウスを断頭によって屠殺し、次に切開し、膵臓を1X PBSで洗浄した。膵臓の消化培地(DMEM中、0.75mg/ml XI-S型コラゲナーゼ[Sigma]、0.1mg/mlダイズトリプシンインヒビター[Sigma]、1%BSA)を膵臓実質に30gのシリンジで注入した。次に、膵臓を直径が減少していくセロロジカルピペットを用いて一定に混合しながら、消化培地中で20~40分間インキュベートした。細胞を100μmの濾過器に通して濾過し、洗浄毎に50 x gで3分間遠心分離することによってインキュベーション培地(DMEM中、0.1mg/mlダイズトリプシンインヒビター、1%BSA)で3回洗浄した。細胞を播種し、インキュベーション培地中で2時間、37℃で回復させた。
細胞分泌アッセイ
一次腺房細胞およびAR42J細胞を賦形剤、FGF21(一次腺房細胞およびA42Jの両方について1μg/ml)またはCCK(一次腺房細胞について10pM、およびAR42J細胞について100pM[Phoenix Pharmaceuticals])で30分間、37℃で処理した。細胞培地および細胞の両方におけるアミラーゼレベルをアミラーゼアッセイキット(Amylase Assay Kit)を用いて分析した。
カルシウムイメージング
AR42J細胞を1μMのカルシウム指示薬fluo4-AM(Life Technologies)で30分間、37℃で前処理した。指示されているように、1μM PD173074(Sigma)、10μM L-364,718(Tocris Bioscience)、10μM U73122(Tocris Bioscience)または100μM 2-APB(Tocris Bioscience)をfluo4-AMの前処理中にイメージング培地(imaging medium)(フェノールレッドを含まないDMEM)に添加した。細胞をBD Pathway 855 bioimager上で10倍の対物レンズを用いて画像化した。賦形剤、FGF21(1μg/ml)およびCCK(100pM)を、自動点滴機構によってベースライン蛍光取得の10秒後に送達し、合計2分間画像化した。カルシウム放出を、Image Jを用いてΔF/F0として計算し、ここでΔFは細胞からの未加工の蛍光信号(F)マイナス(細胞が存在せず、蛍光信号が存在しないと予想された領域から計算された)それらのバックグラウンド蛍光であり、F0は化合物を添加する前の最初の6フレームの平均であった。試料サイズ(n)は、5~20細胞を含む各細胞集団と共に測定された細胞集団の数に対応する。
FGF21がインビボで膵腺房細胞に対して直接作用するか否かを調べるために、我々は、Creリコンビナーゼ発現が改変エストロゲン受容体およびエラスターゼプロモーターの制御下にある誘導性腺房細胞特異的βクロトー(Klb)ノックダウンマウスモデルを作製した。タモキシフェン投与後にKlb発現の効率的なノックダウンが、Cre対立遺伝子を保有する、loxPが導入されたKlbマウス(KlbCela1-/-)において確認された。絶食条件下のKlbCela1-/-マウスにおいて、血漿FGF21濃度に変化はなかった。Fgf21 KOマウスに類似して、KlbCela1-/-マウスはチモーゲン顆粒密度および膵消化酵素濃度が増加していた。FGF21が膵腺房細胞に直接作用し、分泌を刺激するか否かをテストするために、Klbfl/flおよびKlbCela1-/-マウスを賦形剤またはFGF21のいずれかで処理し、膵液を15分間回収した。消化酵素の分泌に対するFGF21の効果はKlbCela1-/-マウスにおいて消失し(図3I)、膵液の流量に対する効果は排除されなかったが、著しく減少した(図3J)。この後者の結果に関して、我々はβクロトーとTdTomatoの融合を発現するノックインマウスを用いた膵管上皮細胞においてβクロトー発現を検出せず(図S3)、これはFGF21が導管細胞に対して直接作用していないことを示した。さらに、FGF21はセクレチン(膵管細胞に対して作用し、膵液の流動を誘導する腸ホルモン)の血中濃度を増加させなかった。したがって、膵液の流量に対するFGFの残りの効果の根拠にはさらなる研究が必要とされる。それにもかかわらず、このデータは、FGF21が膵腺房細胞に直接作用し、分泌液の流動および消化酵素の分泌の両方を刺激することを示す。
実施例5.FGF21シグナル伝達
CCKは、ERからの細胞内カルシウム放出を誘導するホスホリパーゼC(PLC)-イノシトール三リン酸受容体(IP3R)シグナル伝達カスケードを活性化することによって、膵外分泌部からの分泌を刺激する。膵外分泌部に発現するFGF21補助受容体(co-receptor)であるFGFR21もまたPLCを活性化し、これはFGF21が類似の機構を介して作用してい得ることを示唆している。これを支持するように、AR42J細胞のFGF21またはCCKのいずれかでの処理は、細胞内カルシウム放出をもたらした(図4A)。興味深いことに、CCKと比較して、FGF21での処理によるカルシウム放出のプロファイルは動的および時間的に異なっていた:カルシウムレベルはCCK処理の後30秒以内にピークに達したが、FGF21の効果は処理の1~2分後にピークに達したカルシウムレベルを伴ってより持続していた(図4A)。FGF21によって誘導されたカルシウム放出は、FGF受容体アンタゴニストであるPD173074によって遮断されたが、CCK-A受容体アンタゴニストであるL-364,718によっては遮断されなかった;逆に、CCKを介するカルシウム放出はL-364,718によって遮断されたが、PD173074によっては遮断されなかった(図4Bおよび図4C)。AR42J細胞のPLC阻害剤U73122またはIP3R阻害剤2-APBのいずれかでの処理は、FGF21およびCCKの両方によって誘導されたカルシウム放出を遮断した(図4Dおよび図4E)。単独でカルシウム放出に影響を与える阻害剤は存在しなかった(図5)。まとめると、これらのデータは、FGF21およびCCKが異なる細胞表面受容体を介して作用して、下流のPLC-IP3R経路に関与し、膵腺房細胞においてカルシウム放出を誘導していることを示す。
CCK-A受容体の活性化は、PLCのbアイソフォームのリン酸化、カルシウム放出およびその後の分泌を導く。対照的に、FGF受容体はγアイソフォームを活性化する。FGF21とCCKがPLCアイソフォームの異なる活性化プロファイルを有するか否かを調べるために、我々はWTマウスを賦形剤、FGF21またはCCKで15分間処理した。予想されるように、CCKはPLCβのリン酸化を誘導した(図4F)。対照的に、FGF21はPLCγのリン酸化を誘導した(図4F)。FGF21およびCCKは共にERK1/2のリン酸化を誘導し、これはシグナル伝達がCCKまたはFGF21のいずれかの投与の15分後に膵臓において活性であったことを示している(図4F)。まとめると、これらのデータは、FGF21およびCCKが異なる細胞表面受容体およびPLCアイソフォームを介して作用し、膵腺房細胞において下流のIPRを介するカルシウム放出に関与していることを示す。
実施例6.薬理学的に誘導された膵炎におけるFGF21の役割
FGF21は、強力なCCK類似体であるセルレインによって誘導された膵炎からマウスを保護する。しかしながら、この有益な効果の根底にある機構は不明である。FGF21が膵臓の分泌を刺激し、これによりERストレスおよび組織損傷を減弱することによってセルレイン誘導性膵炎(CIP)を防いでいるのか否かを調べた。CIPをWTマウスおよびFgf21-KOマウスにおいて誘導し、ERストレスのマーカー(真核生物翻訳開始因子2(eIF2)のサブユニットのリン酸化、ならびに活性化転写因子4(Atf4)、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質相同タンパク質(Chop)および免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(Bip)の誘導を含む)を測定した。CIPは、WTマウスおよびFgf21-KOマウスの両方の膵臓において強いERストレス応答を誘導した(図6A)。しかしながら、ERストレスは、リン酸化eIF2ならびにAtf4、ChopおよびBipのmRNAの著しく高いレベルによって明らかなように、Fgf21-KOマウスにおいて悪化した(図6A)。逆に、循環FGF21を超生理学的なレベルに増加させる肝臓特異的な導入遺伝子を用いたFGF21の慢性投与は、CIPに応答するこれらのERストレスのパラメータを抑制した(図6B)。これらのデータは、FGF21が薬理学的に誘導された膵臓のERストレスを軽減し、それにより腺房細胞におけるタンパク質恒常性(proteostasis)を回復することを示唆している。
本発明は、FGF21が自己分泌またはパラ分泌のシグナル伝達機構を介して膵腺房細胞に作用し、チモーゲン分泌および膵液の流動を刺激することを初めて示した。膵臓の分泌促進物質の原型であるCCKと同様に、FGF21はPLC/IP3Rシグナル伝達およびカルシウム放出を活性化することによって分泌を誘導する。しかしながら、重要なことは、FGF21がCCKとは異なる受容体複合体を介して作用し、タンパク質合成を同時に誘導しないことである。結果として、CCKとは異なり、FGF21は、絶食/リフィーディングなどの生理的条件下、または膵炎などの病的状態下のいずれにおいても膵臓に生じ得るERストレスを軽減する。
実施例7.内視鏡的逆行性胆道膵管造影
FGF21がERCP誘導性膵炎に対して有益な効果を与えるか否かを評価するために、ERCPの24時間後に膵炎が発生するERCPの確立されたげっ歯類モデルにおいて前臨床試験を行った。雌性Swiss Websterマウスを、以下の方法で賦形剤または1mg/kgのFGF21のいずれかの4回の皮下注射を用いて処理した:ERCPの前日における1回の注射、ERCP処置の日における2回の注射、およびERCPの次の日における1回の注射。マウスにERCP処置を行い、これは膵管を介する放射線造影剤の高圧注入からなっていた。マウスの膵臓の組織学的グレード分類は、FGF21がERCP後の浮腫および炎症の両方を減少させたことを明らかにした。
本発明におけるFGF21またはその誘導体をERCP後のEPIに罹患している対象に投与し、これはタンパク質合成の増加を伴わずに分泌の増加をもたらし、したがってEPIの根底にある原因を処置し、ERストレスを解消するように作用する。
FGF21またはFGF21誘導体は、予防的に(ERCPの前に)、処置中に、または処置の後に、経口注入、静脈内注射または筋肉内注射によって投与され得る。典型的な服用量は、個々のFGF21類似体の薬物動態に依存して0.1~300mgであり得る。例えば服用量は使用されるFGF21類似体に従って、1~200mg、10~150mgまたは50~100mgであり得る。
実施例8.膵炎
本発明におけるFGF21またはその誘導体を膵炎に罹患している対象に投与し、これはタンパク質合成の増加を伴わずに分泌の増加をもたらし、したがって膵炎の根底にある原因を処置し、ERストレスを解消するように作用する。
FGF21またはFGF21誘導体は経口注入、静脈内注射または筋肉内注射で投与される。典型的な服用量は、個々のFGF21類似体の薬物動態に依存して0.1~300mgであり得る。例えば服用量は使用されるFGF21類似体に従って、1~200mg、10~150mgまたは50~100mgであり得る。
実施例9.膵外分泌機能不全
本発明におけるFGF21またはその誘導体をEPIに罹患している対象に投与し、これはタンパク質合成の増加を伴わずに分泌の増加をもたらし、したがってEPIの根底にある原因を処置し、ERストレスを解消するように作用する。
FGF21またはFGF21誘導体は経口注入、静脈内注射または筋肉内注射で投与される。典型的な服用量は、個々のFGF21類似体の薬物動態に依存して0.1~300mgであり得る。例えば服用量は使用されるFGF21類似体に従って、1~200mg、10~150mgまたは50~100mgであり得る。

Claims (18)

  1. 治療に十分な量の線維芽細胞増殖因子(FGF21)またはFGF21の有効な誘導体を対象に投与することを含む、前記対象の膵外分泌機能不全(EPI)を処置する方法における使用のための、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)またはFGF21の有効な誘導体を含む組成物。
  2. 膵外分泌機能不全が、嚢胞性線維症、アルコール依存症、膵炎、膵がん、胆石症、セリアック病、高トリグリセリドおよびループスからなる群から選択される障害との併存症である、請求項1記載の組成物。
  3. 膵外分泌機能不全が外科手術に起因している、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 外科手術が内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)である、請求項3記載の組成物。
  5. 局所投与、局部投与、全身投与または継続投与のために製剤化されている、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
  6. 単回投与のために製剤化されている、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
  7. 経口投与、静脈内投与または筋肉内投与のために製剤化されている、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
  8. FGF21またはFGF21の有効な誘導体が0.1mg~300mgの用量で投与される、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
  9. FGF21またはFGF21の有効な誘導体が1mg~200mgの用量で投与される、請求項8記載の組成物。
  10. FGF21の有効な誘導体がFGF21の長時間作用型誘導体である、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
  11. FGF21の有効な誘導体が、FGFR/βクロトー受容体複合体を標的とするFGF21類似体またはFGF21模倣物である、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
  12. FGF21の有効な誘導体が、LY2405319、FGF21模倣物モノクローナル抗体mimAb1、PF-05231023、またはFGF21模倣物アゴニスト抗FGFR1(FGF受容体1)抗体R1MAbである、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
  13. FGF21またはFGF21の有効な誘導体が、薬学的に許容され得る担体、緩衝液または希釈剤中に分散している、請求項1~12のいずれかに記載の組成物。
  14. 第2の治療法と組み合わせて使用され、前記第2の治療法が医薬品、手術、化学療法、放射線療法および遺伝子療法からなる群から選択される、請求項1~13のいずれかに記載の組成物。
  15. 第2の治療法がFGF21またはFGF21の有効な誘導体を投与する前に提供される、請求項14記載の組成物。
  16. 第2の治療法がFGF21またはFGF21の有効な誘導体を投与した後に提供される、請求項14記載の組成物。
  17. 第2の治療法がFGF21またはFGF21の有効な誘導体と同時に提供される、請求項14記載の組成物。
  18. ヒトに投与される、請求項1~17のいずれかに記載の組成物。
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