JP7023090B2 - 熱間鍛造材の製造方法 - Google Patents
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上述した問題に対しては、以前より多くの提案がなされている。例えば、特開2002-321031号公報(特許文献1)には、保温容器中に被加工材を挿入し、保温容器ごと加熱して鍛造機等の加工機の近くまで運搬し、そこで筒状の保熱容器から加熱された被加工材Wを取り出す発明がある。また、例えば、特開2001-79633号公報(特許文献2)には、被加工材を耐熱セラミック繊維質材料で被覆し、該被覆した層の外周を金属材料で包囲して加熱炉で加熱し、昇温後該加熱炉から取り出してそのまま四面鍛造加工を施す発明がある。
本発明の目的は、加熱炉から取り出した鍛造用素材を比較的短時間で鍛造装置に載置可能で、且つ、鍛造用素材の温度低下を抑制することが可能な熱間鍛造材の製造方法を提供することである。
すなわち本発明は、被鍛造素材表面に、セラミック層とガラス潤滑層とを順次積層するように被覆して被覆層を形成した鍛造用素材とする被覆工程と、
前記鍛造用素材を熱間鍛造温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱した鍛造用素材を熱間鍛造して熱間鍛造材とする熱間鍛造工程と、を含み、
前記セラミック層の厚さが200μm未満であり、且つガラス潤滑層厚さがセラミック層厚さ以上の厚さである熱間鍛造材の製造方法である。
好ましくは、前記セラミック層の厚さが50μm以上、ガラス潤滑層の厚さが100~500μmである。
前記被覆工程は、前記被鍛造素材の表面温度が常温~200℃の温度範囲で行われることが好ましい。
また、本発明においては、前記被鍛造素材の形状が円柱形状またはリング形状であり、前記被覆工程において、前記被覆層は少なくとも前記被鍛造素材の側面の一部に形成されることが好ましい。
本発明の熱間鍛造材の製造方法は、前記熱間鍛造が、型彫り面を有する上型と型彫り面を有する下型による型鍛造に好適である。
以下に、本発明を詳しく説明する。説明の順序は、熱間鍛造する工程順に説明する。
<被覆工程>
先ず、熱間鍛造される形状に成形した被鍛造素材(荒地)を用意する。例えば、図1(円柱状の鍛造用素材断面模式図)や図2(リング状の鍛造用素材断面模式図)に示すように、用意した被鍛造素材1の表面に、セラミック層2とガラス潤滑層3とを順次積層するように被覆して被覆層4を形成して鍛造用素材5とする。この被覆工程において、被鍛造素材表面上にセラミック層を被覆形成し、前記セラミック層上にガラス潤滑層を形成するのは、次の理由によるものである。
セラミック層は、保温機能を高める“断熱層(保温層)”として機能する。これを被鍛造素材表面に被覆することで、熱間鍛造温度に加熱した後に下型に載置するまでの間の鍛造用素材の温度低下を抑制するようにする。そして、セラミック層上に形成するガラス潤滑層は、保温機能を高める他、熱間鍛造温度で軟化しやすいため潤滑機能を高めて熱間鍛造中の潤滑性を確保するものである。なお、単体では潤滑性を低下させるセラミック層上にガラス潤滑層を被覆することで潤滑性低下の度合いを緩和する。また、単体では剥離しやすいセラミック層上にガラス潤滑層を塗布することで剥離しにくくする効果もある。
また、ガラス潤滑層の厚さはセラミック層の厚さ以上とする。前述のように、ガラス潤滑層は、保温機能を高める他、熱間鍛造温度で軟化しやすいため潤滑機能を高めて熱間鍛造中の潤滑性を確保するものである。前記のセラミック層は潤滑性は殆ど期待できないため、セラミック層上には前記セラミック層の厚さ以上の厚さでガラス潤滑層の形成が必要である。ガラス潤滑層の厚さが過度に薄いと、熱間鍛造中に潤滑切れを生じるおそれがあるため、好ましいガラス潤滑層の厚さの下限は100μmである。より好ましくは150μmであり、更に好ましくは175μmである。なお、前記ガラス潤滑層の下限の厚さについては、前記のセラミック層の厚さ以上であることが前提であることは言うまでもない。また、ガラス潤滑層の厚さの上限は500μmとすると良い。これは、500μmを超えてガラス潤滑層を形成してもガラス潤滑層のより一層の効果向上は望めないからである。好ましいガラス潤滑層上限は300μmである。
なお、前述のセラミック層とガラス潤滑層の厚さは、電磁式または渦電流式の接触型膜厚計を使用して各層の塗布が完了した後にそれぞれ測定することができる。厚さは複数箇所で測定し、その平均を算出すればよい。厚さの測定は、被覆層を形成した場所の全域を測定するのは時間がかかり過ぎるので、例えば、円柱形状またはリング形状の被鍛造素材の場合であれば、被覆層を円周方向に40~60°ピッチで各角度の位置で3~4箇所ずつ、計18~36箇所程度測定し、その平均で求めれば良い。
なお、例えば、300kg以上の重量を有する大型鍛造製品の場合には200℃を超える温度では、所定の場所に被覆層を形成することが安全上問題となる場合があり、好ましくは、90~110℃の範囲に被鍛造素材を予熱するのが好ましい。
なお、前記「円柱形状」とは、熱間鍛造装置に備えられた上型と下型に接触する面の形状が円形のものを言い、例えば、樽形のものも円柱状の範疇である。また、前記「リング形状」とは、熱間鍛造装置に備えられた上型と下型に接触する面の形状がリング形状のものを言う。
本発明では、鍛造用素材を加熱炉内にて熱間鍛造温度に加熱する。加熱の温度は被鍛造素材の材質に応じて適宜選択するとよく、例えば、Ni基超耐熱合金で代表的な718合金の場合、1000~1040℃である。
<熱間鍛造工程>
熱間鍛造を行う場合、加熱炉から鍛造用素材をマニピュレータ等を用いて取り出して、熱間鍛造装置に具備された下型上に載置する。このとき、熱間鍛造装置に備えられた上型と下型はその作業面に型彫り面を有するものとし、この上型と下型による型鍛造によって所定の形状の熱間鍛造材とすることができる。
この鍛造用素材を搬送する際には、本発明の被覆層の形成によって、鍛造用素材の温度低下を抑制することができる。そして、鍛造用素材の最表面側(上型と下型に接触する面)に、ガラス潤滑層を形成しておくことにより、熱間鍛造時の鍛造荷重の上昇を抑制しつつ、カラス潤滑剤の効果が十分に発揮されて、潤滑切れなどの問題も抑制することができる。
被鍛造素材として、図1に示すような円柱状の718合金製の被鍛造用素材1を用意した。この被鍛造素材を100℃に予熱した後、被鍛造素材1の表面に溶媒で希釈した粉末状のセラミックをスプレーにて塗布してセラミック層2を形成し、そのセラミック層上に溶媒で希釈した粉末状のガラスをスプレーにて塗布し、ガラス潤滑層3を順次形成して、セラミック層とガラス潤滑層との積層構造の被覆層4とした。これを鍛造用素材5とした。被覆層のうち、特にセラミック層の保温効果を確かめる目的で被覆層の形成は全面とし、ガラス潤滑層の厚さは200μmで固定した。なお、従来例としてガラス潤滑層のみの鍛造用素材も準備した。表1に厚さと被覆層の構成を示す。なお、表1に示す本発明例と従来例の熱間鍛造温度までの昇温時間は1.5時間程度であり、保温層として機能するセラミック層を形成したにもかかわらず、ほぼ同じ時間で昇温することができた。なお、セラミック層とガラス潤滑層の厚さはそれぞれの層の塗布した後に接触型膜厚計で測定した全測定点の平均値として求めた。測定した場所は円周方向に45°ピッチ、各角度位置で3箇所ずつの計24箇所を測定し、その平均とした。
以上の結果から、本発明で規定する被覆層の構造を有するものにおいては、温度低下が抑制でき、且つ被覆層の剥離も認められないことから、大型製品の熱間鍛造に好適であることか分かる。
実施例1の結果を基に、重量が300kg以上の大型製品の熱間鍛造を実施した。被鍛造素材の材質は前記実施例1と同じく718合金とし、その寸法は外径1410mm×内径900mm×高さ150mmのリング状の形状を有し、重量は約400kgであった。
この被鍛造素材を100℃に予熱した後、被鍛造素材の表面にセラミック層を塗布によって形成し、そのセラミック層上にガラス潤滑層を塗布することで順次形成して、セラミック層とガラス潤滑層との積層構造の被覆層とした。セラミック層の厚さは100μm、ガラス潤滑層の厚さは250μmであり、セラミック層の保温効果を確実に得るために被覆層の形成は全面とした。これを鍛造用素材とした。なお、セラミック層とガラス潤滑層の厚さはそれぞれの層の塗布した後に接触型膜厚計で測定した全測定点の平均値として求めた。測定した場所は円周方向に45°ピッチ、各角度位置で3箇所ずつの計24箇所を測定し、その平均とした。従来例として、重量、寸法及び材質を同じとし、ガラス潤滑層のみの鍛造用素材も準備した。
これにより、重量が300kg以上の大型鍛造材へ適用しても十分な温度低下を抑制する効果が得られることが明らかとなった。
2 セラミック層
3 ガラス潤滑層
4 被覆層
5 鍛造用素材
Claims (5)
- 被鍛造素材表面に、セラミック層とガラス潤滑層とを順次積層するように被覆して被覆層を形成した鍛造用素材とする被覆工程と、
前記鍛造用素材を熱間鍛造温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱した鍛造用素材を熱間鍛造して熱間鍛造材とする熱間鍛造工程と、を含み、
前記セラミック層の厚さが200μm未満であり、且つガラス潤滑層厚さがセラミック層厚さ以上の厚さであり、
前記セラミック層は、セラミック粒子を層状に堆積するように被覆することを特徴とする熱間鍛造材の製造方法。 - 前記セラミック層の厚さが50μm以上、ガラス潤滑層の厚さが100~500μmであることを特徴とする請求項1に記載の熱間鍛造材の製造方法。
- 前記被覆工程は、前記被鍛造素材の表面温度が常温~200℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間鍛造材の製造方法。
- 前記被鍛造素材の形状が円柱形状またはリング形状であり、前記被覆工程において、前記被覆層は少なくとも前記被鍛造素材の側面の一部に形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の熱間鍛造材の製造方法。
- 前記熱間鍛造が、型彫り面を有する上型と型彫り面を有する下型による型鍛造であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の熱間鍛造材の製造方法。
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