JP7013296B2 - パラメータ同定装置及びその方法並びにプログラム - Google Patents
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Description
特許文献2には、多入力多出力系の線形モデルを対象として、モデルパラメータをPSO(粒子群最適化)により同定する方法が開示されている。
特許文献3には、非線形なモデルを線形化した上で、それと組み合わせるPID制御器のパラメータを周波数特性上の安定性を考慮しつつ調整する方法が開示されている。
ここで、非線形モデルの一例として、例えば、対象物が水中航走体、航空機、鉄道、自動車等の移動体である場合には、風洞実験等を通じて移動体の6軸方向の流体特性を計測し、この計測結果に基づいて運動方程式の構造や各流体係数が決定されたものを用いることが可能である。また、ロボットや工作機械などの機械装置であれば、機械図面などに基づいて運動方程式の構造や各状態係数が決定されたものを用いることが可能である。なお、非線形モデルについては上記例に限定されることなく、本発明は、パラメータの同定が必要とされる非線形モデルに対して広く適用することが可能である。
同定パラメータ決定部20は、非線形モデルに含まれる複数のパラメータのうち、同定を行うパラメータを絞り込み、同定対象パラメータを決定する。同定部30は、同定パラメータ決定部20によって決定された複数の同定対象パラメータの同定を行う。
まず、対象物の一例として示される水中航走体について説明する。図3は、水中航走体の一例としての概略構成を示した図、図4は図3に示した水中航走体を船尾から見たときの舵の配置について模式的に示した図、図5は水中航走体の運動の自由度について説明するための図である。
図3、図4に示すように、船体50には、複数の舵3a~3eが設けられている。舵3a~3dは、主にロール角φ、ピッチ角θ、方位角ψに関する制御に用いられ、舵3eは主に深度に関する制御に用いられる。
上記評価モデルにおいて、状態変数行列ζと、出力yは対象物(水中航走体)の実機データから得ることができ、実機データの値が代入される。また、未知パラメータ行列は、未知と称してはいるが、風洞試験等において得られた非線形モデルの各パラメータの初期値が代入されている。すなわち、「未知パラメータ」は、真値が未知であることからこのように称している。
また、同様に、パラメータa2に対応するパラメータ別評価モデルは、(6)式の未知パラメータ行列において、a2の値に初期値+αの値が入力され、その他の未知パラメータa1、a3~a21については、それぞれの初期値が入力されたモデルとなる。
評価値算出部21は、上記のようなパラメータ別評価モデルを用いて得た残差εを用いてパラメータの感度評価値を算出する。
例えば、感度評価値は以下の(7)式で与えられる。なお、感度評価値は、以下の(7)式で表されるように、残差の二乗平均として示されるものに限定されず、上記残差εを変数として有する関数であればよい。なお、以下の(7)式では、N個の残差εを累積した値を用いているが、これに代えて、残差εを所定の時間区間において積分した値を用いても良い。以下の(7)式において、iはサンプル数である。
決定部22は、評価値算出部21から入力されたパラメータ毎の感度評価値に基づいて複数のパラメータの中から同定を行うパラメータを絞り込み、同定対象パラメータを決定する。
例えば、決定部22は、予め設定されている所定の閾値以上の感度評価値を有するパラメータを同定対象パラメータとして決定する。また、決定部22は、感度評価値が高い方から所定個数のパラメータを選定し、選定したパラメータを同定対象パラメータとして決定してもよい。
感度評価値に基づいて同定を行うパラメータを絞り込むので、感度の低いパラメータをパラメータ同定の対象から除外することができ、パラメータ同定に要する時間を短縮することが可能となる。この感度の低いパラメータは、深度系の運動に関して感度が低いだけであり、例えば別の方位系の運動に重要な意味を持っているかもしれない。従って、感度評価によって感度の低いパラメータを同定するパラメータから除外しておくことは、別の運動の精度を悪化させないようにするために重要な意味を持っている。
ここで、非線形モデルは、式の構造は同じで、パラメータにのみ誤差があると仮定する。すなわち、本実施形態では、この条件下においてパラメータを同定する。
ΔP=P-Pm (11)
この第2評価関数は、第1評価関数をパラメータ誤差の観点から捉えて表現したものであり、非線形モデルに含まれる各パラメータ誤差の関数として表される。
第1評価関数と、第2評価関数とは同じものを違う観点から表現したものなので、第1評価関数の出力値と第2評価関数の出力値とは等価であるとおくことができる。すなわち、第1評価関数の出力値と第2評価関数の出力値との差がゼロとなるような各パラメータ誤差の値を推定すればよい。
例えば、非線形モデルのパラメータを一つずつ個別に微小変化させたときの非線形モデル(以下「パラメータ変更モデル」という。)を生成し、そのパラメータ変更モデルに入力信号Uを与えたときの応答信号をそれぞれシミュレーションによって得る。そして、各パラメータ変更モデルの各応答信号と実機応答信号とから各パラメータ変更モデルに対応する応答誤差を算出し、算出した応答誤差を用いてパラメータ変更モデル毎に各第1評価関数の出力値を算出し、これらパラメータ変更モデル毎の第1評価関数の出力値と、非線形モデルの第1評価関数の出力値とを用いて、上記第2評価関数に含まれる各パラメータに対応する微係数(ΔJ1/ΔP1~ΔJr/ΔPn)を算出する。
例えば、上記(15)式における微係数は、以下の(16)式で表される。
δPV=(δP1,δP2,・・・δPn)T
JV=(J1,J2,・・・Jr)T
モデル更新部37は、パラメータ補正部36によって補正された新たな各パラメータを用いることにより、非線形モデルを更新する。
判定部38は、更新後の非線形モデルに所定の入力信号を与えたときの応答信号を得、応答信号と対象物10の実機の応答である実機応答信号との応答誤差に基づく評価値が予め設定されている許容範囲内であるか否かを判定する。例えば、更新後の非線形モデルの応答信号と実機応答信号との応答誤差を用いて算出した各第1評価関数J1~Jrの出力値がそれぞれ評価関数毎に設定された所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。
この結果、例えば、評価関数の出力値が許容範囲内にない評価関数が一つでも存在した場合には、現在のパラメータに含まれているパラメータ誤差が大きいと判断し、パラメータ同定装置1は、更新後の対象モデルを用いて再度パラメータの同定を行う。なお、この判定基準は、非線形モデルに求められる精度に応じて適宜設定することが可能である。
以下に説明するパラメータ同定方法は、例えば、補助記憶装置12に格納されているパラメータ同定プログラムをCPU11が主記憶装置13に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより実現される。
なお、図8~図11に示したパラメータ同定方法の手順は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。また、複数の処理を平行して行うこととしてもよい。
次に、感度評価値に基づいてパラメータ同定の対象となるパラメータを絞り込み、同定対象パラメータを決定する(SA4)。
次に、対象物の実機に入力信号Uを与えたときの応答信号X_0(t)と、応答信号Xm_0(t)との差分である応答誤差ΔX_0(t)を算出する(SB2)。
続いて、応答誤差ΔX_0(t)を各第1評価関数J1、J2に与えた時の出力値J1_0、J2_0を算出する(SB3)。
上記応答誤差ΔX_0(t)、出力値J1_0、J2_0は一時的に記憶部31に格納される。
上記応答誤差ΔX_1(t)、出力値J1_1、J2_1は一時的に記憶部31に格納される。
上記応答誤差ΔX_2(t)、出力値J1_2、J2_2は一時的に記憶部31に格納される。
ここで、行列ΔMの各要素は、以下の式によって算出される。
ΔM[1,2]=ΔJ1/ΔP2=[J1_2-J1_0]/ΔP2
ΔM[2,1]=ΔJ2/ΔP1=[J2_1-J2_0]/ΔP1
ΔM[2,2]=ΔJ2/ΔP2=[J2_2-J2_0]/ΔP2
ここで、δPV=(δP1,δP2)T、JV=[J1_0, J2_0]である。
P2e=P2m(0)-k・δP2
続いて、出力値が所定の許容範囲内であるか否かを判定し(SB16)、所定の許容範囲内であれば(SB16:YES)、現在の非線形モデルに用いられている各パラメータの値を確定し(SB17)、本処理を終了する。
また、本実施形態に係るパラメータ同定装置1及びその方法並びにプログラムによれば、例えば、多入力他出力系の非線形な流体運動モデルを対象とした場合に、同定したい応答に関与するモデルパラメータである流体係数のみを直接的に同定することができ、無関係な流体係数を無理に変更して別の応答の精度を悪化させることを未然に防止できる。
10 対象物
20 同定パラメータ決定部
21 評価値算出部
22 決定部
30 同定部
31 記憶部
32 シミュレーション部
33 応答誤差算出部
34 評価値算出部
35 パラメータ誤差推定部
36 パラメータ補正部
37 モデル更新部
38 判定部
Claims (7)
- 非線形要素を含む対象物をモデル化した非線形モデルに含まれる複数のパラメータのうち、同定を行う同定対象パラメータを決定する同定パラメータ決定部と、
決定された前記同定対象パラメータの同定を行う同定部と
を有し、
前記同定パラメータ決定部は、
各前記パラメータが前記非線形モデルの応答信号と前記対象物の実機の応答信号との応答誤差に与える影響を評価する評価値を前記パラメータ毎に算出する評価値算出部と、
算出された前記評価値を用いて前記同定対象パラメータを決定する決定部と
を備え、
前記評価値算出部は、
前記非線形モデルに含まれる各前記パラメータと前記応答誤差との相関を評価する評価モデルにおいて、前記評価モデルに含まれる複数の前記パラメータの値を個別に所定量変化させたパラメータ別評価モデルを作成し、
前記パラメータ別評価モデルを用いて前記パラメータ毎の前記評価値を算出し、
前記評価モデルは、前記非線形モデルを複数の非線形な状態変数からなる状態変数行列と複数の未知パラメータからなる未知パラメータ行列とに分離し、前記非線形モデルを前記状態変数行列と前記未知パラメータ行列とを用いた線形行列方程式に変換し、前記線形行列方程式から得られる出力に残差を加えた演算式として表現されるパラメータ同定装置。 - 非線形要素を含む対象物をモデル化した非線形モデルに含まれる複数のパラメータのうち、同定を行う同定対象パラメータを決定する同定パラメータ決定部と、
決定された前記同定対象パラメータの同定を行う同定部と
を有し、
前記同定パラメータ決定部は、
各前記パラメータが前記非線形モデルの応答信号と前記対象物の実機の応答信号との応答誤差に与える影響を評価する評価値を前記パラメータ毎に算出する評価値算出部と、
算出された前記評価値を用いて前記同定対象パラメータを決定する決定部と
を備え、
前記同定部は、
前記非線形モデルに所定の入力信号を入力したときの応答信号をシミュレーションするシミュレーション部と、
前記対象物に前記所定の入力信号を入力したときの実機応答信号に対する前記応答信号の応答誤差を算出する応答誤差算出部と、
応答誤差の関数として表された複数の異なる第1評価関数に対して、前記応答誤差算出部によって算出された前記応答誤差を与えることにより、各前記第1評価関数の出力値を算出する評価値算出部と、
前記第1評価関数を前記非線形モデルに含まれる各パラメータ誤差の関数として表した第2評価関数を用いて、前記第1評価関数の出力値と前記第2評価関数の出力値との差分がゼロとなるような各前記パラメータ誤差の値を推定するパラメータ誤差推定部と、
前記パラメータ誤差推定部によって推定された各前記パラメータ誤差の値を用いて、前記非線形モデルに含まれる各パラメータの値を補正するパラメータ補正部と
を具備するパラメータ同定装置。 - 前記評価値算出部は、
前記非線形モデルに含まれる各前記パラメータと前記応答誤差との相関を評価する評価モデルにおいて、前記評価モデルに含まれる複数の前記パラメータの値を個別に所定量変化させたパラメータ別評価モデルを作成し、
前記パラメータ別評価モデルを用いて前記パラメータ毎の前記評価値を算出する請求項2に記載のパラメータ同定装置。 - 前記評価モデルは、前記非線形モデルを複数の非線形な状態変数からなる状態変数行列と複数の未知パラメータからなる未知パラメータ行列とに分離し、前記非線形モデルを前記状態変数行列と前記未知パラメータ行列とを用いた線形行列方程式に変換し、前記線形行列方程式から得られる出力に残差を加えた演算式として表現される請求項3に記載のパラメータ同定装置。
- コンピュータが、
非線形要素を含む対象物をモデル化した非線形モデルに含まれる複数のパラメータのうち、同定を行う同定対象パラメータを決定する同定パラメータ決定工程と、
決定された前記同定対象パラメータの同定を行う同定工程と
を実行し、
前記同定パラメータ決定工程は、
各前記パラメータが前記非線形モデルの応答信号と前記対象物の実機の応答信号との応答誤差に与える影響を評価する評価値を前記パラメータ毎に算出する評価値算出工程と、
算出された前記評価値を用いて前記同定対象パラメータを決定する決定工程と
を含み、
前記評価値算出工程は、
前記非線形モデルに含まれる各前記パラメータと前記応答誤差との相関を評価する評価モデルにおいて、前記評価モデルに含まれる複数の前記パラメータの値を個別に所定量変化させたパラメータ別評価モデルを作成する工程と、
前記パラメータ別評価モデルを用いて前記パラメータ毎の前記評価値を算出する工程とを含み、
前記評価モデルは、前記非線形モデルを複数の非線形な状態変数からなる状態変数行列と複数の未知パラメータからなる未知パラメータ行列とに分離し、前記非線形モデルを前記状態変数行列と前記未知パラメータ行列とを用いた線形行列方程式に変換し、前記線形行列方程式から得られる出力に残差を加えた演算式として表現されるパラメータ同定方法。 - コンピュータが、
非線形要素を含む対象物をモデル化した非線形モデルに含まれる複数のパラメータのうち、同定を行う同定対象パラメータを決定する同定パラメータ決定工程と、
決定された前記同定対象パラメータの同定を行う同定工程と
を実行し、
前記同定パラメータ決定工程は、
各前記パラメータが前記非線形モデルの応答信号と前記対象物の実機の応答信号との応答誤差に与える影響を評価する評価値を前記パラメータ毎に算出する評価値算出工程と、
算出された前記評価値を用いて前記同定対象パラメータを決定する決定工程と
を含み、
前記同定工程は、
前記非線形モデルに所定の入力信号を入力したときの応答信号をシミュレーションする工程と、
前記対象物に前記所定の入力信号を入力したときの実機応答信号に対する前記応答信号の応答誤差を算出する工程と、
応答誤差の関数として表された複数の異なる第1評価関数に対して、前記応答誤差算出部によって算出された前記応答誤差を与えることにより、各前記第1評価関数の出力値を算出する工程と、
前記第1評価関数を前記非線形モデルに含まれる各パラメータ誤差の関数として表した第2評価関数を用いて、前記第1評価関数の出力値と前記第2評価関数の出力値との差分がゼロとなるような各前記パラメータ誤差の値を推定する工程と、
推定された各前記パラメータ誤差の値を用いて、前記非線形モデルに含まれる各パラメータの値を補正する工程と
を含むパラメータ同定方法。 - コンピュータを請求項1から4のいずれかに記載のパラメータ同定装置として機能させるためのパラメータ同定プログラム。
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JP2018054254A JP7013296B2 (ja) | 2018-03-22 | 2018-03-22 | パラメータ同定装置及びその方法並びにプログラム |
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