JP7013132B2 - プレキャストコンクリート部材の製造方法及びプレキャストコンクリート部材 - Google Patents
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第1工程:棒状の芯材の表面に弾性材料からなる被覆層を形成し、かつ、被覆層が芯材の周囲への弾性索状体の巻き付けにより径方向への凸部を形成した状態にある治具を用意する。
第2工程:型枠内の貫通孔を形成する予定の位置に治具を固定してコンクリートを打設する。
第3工程:脱型に際して所定の強度を発現したコンクリートから芯材及び弾性索状体を含む被覆層を順に除去する。これにより、弾性索状体の凸部を型とした凹部を内面に有する貫通孔が芯材の軸方向に形成されたプレキャストコンクリート部材を得る。
(1)プレキャスト施工時に型枠内に設置する治具は、「芯材」と弾性索状体を含む「被覆層」で構成されているため、コンクリート硬化後にこれらを「芯材」と「被覆層」に分けて順番に除去することができる。すなわち、硬化後のコンクリートから先ず芯材を除去する際は、芯材自身が単純な棒状であるため特段の抵抗を受けることがなく、容易にこれを除去可能である。次に、芯材を除去した後のコンクリート内部には被覆層が残された状態となるが、弾性索状体を含む被覆層は弾性材料であるため、縦方向への引き抜き力を加えるだけで横方向へは自ら縮み、コンクリート境界面から容易に剥離することができる。これにより、「芯材」及び「被覆層」のいずれも大きな抵抗を受けることなく、硬化後のコンクリートから容易に除去することができる。
本発明の製造方法で用いる治具には、以下のバリエーションが含まれる。
(i)芯材に弾性体チューブを被せ、その周囲に弾性索状体を少なくとも1条の螺旋状に巻き付けて凸部を形成したものを被覆層とするもの。
(ii)芯材に弾性体チューブを被せ、その周囲に弾性索状体が予め格子状に組まれた弾性体ネットを巻き付けて凸部を形成したものを被覆層とするもの。又は、弾性索状体が格子状に組まれた状態で全体としてシート状をなす弾性体ネットを芯材に直に巻き付けて凸部を形成したものを被覆層とするもの。なお、シート状をなす弾性体の表面に凸部となる弾性索状体が格子状をなして一体成型されたものを芯材に直に巻き付けてもよい。
(iii)芯材に弾性索状体同士を軸線方向に隙間なく螺旋状に巻き付け、互いに密集した凸部を形成したものを被覆層とするもの。
上記(ii)の治具を用いた場合、プレキャストコンクリート部材の完成時に貫通孔の内面に形成される凹部は、内面に沿って互いに交差した複数本の螺旋状に延びた態様となる。
上記(iii)の治具を用いた場合、プレキャストコンクリート部材の完成時に貫通孔の内面に形成される凹部は、貫通孔の軸線方向に隙間なく螺旋状に延びており、かつ、軸線方向で互いに密集した態様となる。
ここで、本発明の製造方法により得られる完成品としてのプレキャストコンクリート部材は、貫通孔内面の凹部が特徴的な形態を有している。すなわち、凹部は貫通孔の内面に沿って軸線方向に少なくとも一続きの螺旋状に延びており、コンクリート地肌が径方向外側へ部分楕円形断面の溝状に凹んだ状態にある。ここで、凹部を螺旋状に延びた溝状とすること自体は従来のものに近いが、凹部縦断面の形状を部分楕円形とした構成は従来にない。
上記の優位性には、本発明の製造方法による寄与が多大である。先ず、「シース管レスとした貫通孔内に凹凸を形成する」という観点だけからすれば、既に従来公知(非特許文献3)のものが存在するが、そのための製造方法は、「多角形状リブ付きゴムバッグを用いる」というものであった。しかし、この方法には上記のように「作業効率の悪化」という問題があり、さらに、得られた完成品の凹部形状にも「モルタル充填時の不良」という問題が懸念された。
図2は、図1中のII-II線に沿う縦断面図である。このうち図2中(A)は組み立て前の状態を示し、図2中(B)は組立後(グラウト充填後)の状態を示している。
図3は、比較例となるパネルゾーンPCa部材500の貫通孔506を示す縦断面図である。このうち図3中(A)は組み立て前の状態を示し、図3中(B)は組立後(グラウト充填後)の状態を示している。
次に、パネルゾーンPCa部材100の製造方法に好適な実施形態について説明する。
単管パイプ400には、各種の鋼管(例えばSGP、STPG、STK等)を用いることができる。単管パイプ400の長さLpは、製作するパネルゾーンPCa部材100の仕口部104の高さを基準として、これよりある程度(例えば200mm以上)長く設定することができる。また、外径(呼び径)Dpについては、製作する貫通孔106の基準内径(平滑部104aにおける内径)を基準として、これより小さく設定することができる。
図5は、治具の製作手順を示した図である。
図5中(A):先ず、芯材としての単管パイプ400にビニールホース402を被せる。このとき、単管パイプ400の一端にビニールホース402の一端を合わせる。これらを合わせた一端は、治具となった場合の下端とする。
図6は、治具600を用いてパネルゾーンPCa部材100を製作する過程を示した図である。
図6中(C):補助的な型枠702を設置してパネルゾーンPCa部材100の外形を仕上げ、時間を置いてコンクリートCを硬化させる。
図7は、治具600を除去する手順について説明した図である。
治具600の除去は、コンクリートの硬化により所定の強度を発現した後に行う。ここでは、以下の順番で治具600を除去することとする。
図8は、パネルゾーンPCa部材100の製造方法を工程順に示したフローチャートである。
ステップS100:上記の要領により、貫通孔106を施工するための治具600を調製(製作)する。
ステップS102:型枠700内で貫通孔106を形成する予定の位置に全ての治具600を固定する。また、適宜配筋も行う。
ステップS104:型枠700内にコンクリートを打ち込む。
ステップS106:全ての単管パイプ400を除去する。
ステップS108:全てのビニールホース402を除去する。
ステップS110:全てのゴムひも404を除去する。
また、適宜型枠700を脱型してパネルゾーンPCa部材100を得る。
以上がプレキャストコンクリート部材の製造方法及びプレキャストコンクリート部材の一実施形態であるが、その他の実施形態についても以下に説明する。
図9は、第2実施形態のパネルゾーンPCa部材100の貫通孔106の形状を示す縦断面図である。
第2実施形態では、凹部106bが交差した螺旋状をなして軸線方向(上下方向)に延びている点が異なっている。このような凹部106bは、互いに交差した複数本の螺旋状(又は斜め格子状)に延びた形態である。また、凹部106bの断面は部分楕円形状である。
図10は、第2実施形態のパネルゾーンPCa部材100の製造方法に用いることができる2つの治具602,604を示す斜視図である。
また、通常はゴムネット406の網目部分406bは開口しているが、格子の密集度合(いわゆるメッシュ)を可能な限り高くすることで網目部分406bの開口面積を極限まで小さくすることもできる。このように網目部分406bの開口面積を極小とすれば、ゴムネット406が全体として1枚のシート状をなす弾性体となることから、型枠700内で打設したコンクリートを不透過とすることもできる。したがって、この場合はビニールホース402を用いることなくゴムネット406を単管パイプ400に直に巻き付けて治具604としてもよい。
図11は、第3実施形態のパネルゾーンPCa部材100の貫通孔106の形状を示す縦断面図である。
第3実施形態では、凹部106bが貫通孔106の軸線方向(上下方向)に隙間なく螺旋状に延びており、各凹部106bが互いに密集した状態にある点が異なっている。この場合、貫通孔106の内面には平滑部106aがない(なお、一部に存在してもよい。)。また、ここでも凹部106bの断面は部分楕円形状である。
図12は、第3実施形態のパネルゾーンPCa部材100の製造方法に用いることができる治具606の製作手順を示した図である。
102 梁部
104 仕口部(本体)
106 貫通孔
106a 平滑部
106b 凹部
108 鉄筋
400 単管パイプ(芯材)
402 ビニールホース(被覆層)
404 ゴムひも(弾性索状体、被覆層)
Claims (8)
- 接合対象である他の構造部材から延びた主筋を挿通可能な貫通孔が形成されたプレキャストコンクリート部材の製造方法であって、
棒状の芯材の表面に弾性材料からなる被覆層を形成し、かつ、前記被覆層が前記芯材の周囲への無負荷状態で円形断面をなす中実の弾性索状体の巻き付けにより径方向への凸部を形成した状態にある治具を用意する第1工程と、
型枠内の前記貫通孔を形成する予定の位置に前記治具を固定してコンクリートを打設する第2工程と、
脱型に際して所定の強度を発現したコンクリートから前記芯材及び前記弾性索状体を含む前記被覆層を順に除去することにより、巻き付け時の張力及びコンクリートからの圧縮力により断面が偏平した円形に変形した状態の前記弾性索状体の凸部を型として、断面が部分楕円形状をなす凹部を内面に有する前記貫通孔が前記芯材の軸方向に形成されたプレキャストコンクリート部材を得る第3工程と
を有するプレキャストコンクリート部材の製造方法。 - 請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法において、
前記第1工程では、
前記芯材に弾性体チューブを被せ、その周囲に前記弾性索状体を少なくとも1条の螺旋状に巻き付けて凸部を形成したものを前記被覆層とすることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。 - 請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法において、
前記第1工程では、
前記芯材に弾性体チューブを被せ、その周囲に前記弾性索状体が予め格子状に組まれた弾性体ネットを巻き付けて凸部を形成したものを前記被覆層とすることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。 - 接合対象である他の構造部材から延びた主筋を挿通可能な貫通孔が形成されたプレキャストコンクリート部材の製造方法であって、
棒状の芯材の表面に弾性材料からなる被覆層を形成し、かつ、前記被覆層が前記芯材の周囲への弾性索状体の巻き付けにより径方向への凸部を形成した状態にある治具を用意する第1工程と、
型枠内の前記貫通孔を形成する予定の位置に前記治具を固定してコンクリートを打設する第2工程と、
脱型に際して所定の強度を発現したコンクリートから前記芯材及び前記弾性索状体を含む前記被覆層を順に除去することにより、前記弾性索状体の凸部を型とした凹部を内面に有する前記貫通孔が前記芯材の軸方向に形成されたプレキャストコンクリート部材を得る第3工程とを有し、
前記第1工程では、
前記弾性索状体が格子状に組まれた状態で全体としてシート状をなすとともに、網目部分の開口面積が型枠内に打設したコンクリートを不透過とする大きさとなるように格子の密集度合が設定された弾性体ネットを前記芯材に直に巻き付けて凸部を形成したものを前記被覆層とすることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。 - 請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法において、
前記第1工程では、
前記芯材に前記弾性索状体同士を軸線方向に隙間なく螺旋状に巻き付け、互いに密集した凸部を形成したものを前記被覆層とすることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。 - 構造部材を構成する鉄筋コンクリートの本体と、
前記本体を柱状に貫通して延び、接合対象となる他の構造部材から延びる主筋を挿通可能で内面にコンクリート地肌が露出した貫通孔と、
前記貫通孔の内面に沿って軸線方向に少なくとも一続きの螺旋状に延び、コンクリート地肌が径方向外側へ部分楕円形断面の溝状に凹んだ状態にある凹部と
を備えたプレキャストコンクリート部材。 - 請求項6に記載のプレキャストコンクリート部材において、
前記凹部は、
前記貫通孔の内面に沿って互いに交差した複数本の螺旋状に延びていることを特徴とするプレキャストコンクリート部材。 - 請求項6に記載のプレキャストコンクリート部材において、
前記凹部は、
前記貫通孔の軸線方向に隙間なく螺旋状に延びており、前記溝状の凹みが軸線方向で互いに密集した状態にあることを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
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