JP7007648B2 - 自発分極検出装置、自発分極検出方法及び自発分極検出プログラム - Google Patents
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Description
静磁場電源22は、制御部10による制御のもと、静磁場磁石21に電流を供給することで静磁場磁石21を励磁する。
静磁場磁石21は、例えば、永久磁石、電磁石又は超伝導磁石により構成され、励磁されることにより試料61の周囲に静磁場を生成する。
送信回路32は、制御部10による制御のもと、試料61を構成する原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア周波数に対応するRFパルス信号を電源からの入力電力に基づき生成し、そのRFパルス信号を送信コイル31に出力する。送信回路32は、RFパルス信号を生成するための入力電力を調整する電力調整部32aを備える。電力調整部32aにより入力電力が高く調整されることにより、後述する図5等の周波数解析結果(周波数スペクトル)において広い周波数帯を励起することができる一方、周波数分解能は低下する。送信コイル31は、送信回路32からのRFパルス信号を電波として送信する。これにより、試料台60に設置される試料61の周囲に高周波磁場が発生する。
受信コイル41は、例えば、複数のコイルエレメントを有する。受信コイル41は、高周波磁場の影響によって試料61から発せられるMR信号を受信する。受信コイル41は、MR信号を受信すると、受信したMR信号を受信回路42へ出力する。
受信回路42は、受信コイル41を通じて受信したMR信号をデジタル変換し、そのデジタル変換したMR信号を制御部10に出力する。
また、本例では、自発分極検出装置1は、試料61に送信される電波(スピンエコー法においてはπ/2パルス信号Sg90°及びπパルス信号Sg180°)のラーモア周波数を連続的に変化させながら受信する信号(スピンエコー法においてはスピンエコー信号Ssp)の信号強度を検出及び記録することにより周波数スペクトルを生成するPoint-by-point法を採用している。
制御部10は、周波数解析部10aと、自発分極有無判別部10bと、自発分極量検出部10cと、自発分極分布検出部10dと、自発分極割合検出部10eと、表示制御部10fと、記憶部10gと、を備える。
なお、周波数解析部10a、自発分極有無判別部10b、自発分極量検出部10c、自発分極分布検出部10d、自発分極割合検出部10e及び表示制御部10fの詳細な処理内容については後述する図2及び図3のフローチャートとともに説明する。
具体的には、自発分極分布検出部10dは、各サテライトピークPs1,Ps2の半値幅W1,W2が小さいほど試料61の空間的に自発分極量の差が少なく、試料61の全域に均一な自発分極が生じている傾向がある。一方、各サテライトピークPs1,Ps2の半値幅W1,W2が大きいほど試料61の空間的に自発分極量の差が多く、試料61に自発分極が空間的に広く分布している傾向がある。
例えば、自発分極分布検出部10dは、複数の半値幅W1,W2の平均値を算出し、その算出した平均値に基づき自発分極の空間的な分布を検出する。
ここで、半値幅W1,W2と自発分極の空間的な分布を関連づけることができる原理について説明する。図4に示すように、各サテライトピークPs1,Ps2の互いに対向する斜辺L1,L2間の差分を第2の周波数差Δf2と規定する。半値幅W1,W2が大きいほど、各サテライトピークPs1,Ps2の頂点に近い第2の周波数差Δf2と各サテライトピークPs1,Ps2の底辺に近い第2の周波数差Δf2との差が大きくなる。第2の周波数差Δf2は、上記第1の周波数差Δf1と同様に、自発分極量を示す値であるため、この場合には、試料61において自発分極量が大きい箇所と自発分極量が小さい箇所が存在すること、言い換えると、自発分極が空間的に広く分布していることが予想される。よって、半値幅W1,W2により自発分極の空間的な分布が検出可能となる。
A=Sm/(S1+S2+Sm)
本願発明者は、試料61が窒化ガリウム結晶である場合と試料61が窒化ガリウム粉末である場合について上述した図2のフローチャートに示す周波数解析処理に関する実験を行った。窒化ガリウムは半導体として利用されることが想定される。試料61が窒化ガリウム粉末である場合には、その試料61には自発分極が存在せず、試料61が窒化ガリウム結晶である場合には、その試料61には自発分極が存在することを前提に実験が行われた。
以上で、窒化ガリウムに関する実験結果の説明を終了する。
試料61の内部の核スピンは、当該の核スピンの位置における磁場の大きさに応じて、電波を吸収する。これが周波数スペクトルのメインピークPmを与える。核スピンの中には、磁場以外に電場勾配の大きさに比例して電波を吸収するものが少なからず存在する。この電場勾配により、試料61を構成する原子の4つのエネルギー準位におけるエネルギーの差が等間隔でなくなるため、周波数スペクトルにおいてメインピークPmの両側に偶数本のサテライトピークPs1,Ps2が現れる。隣接するサテライトピークPs1,Ps2同士の間隔である第1の周波数差Δf1が電場勾配の大きさに比例する。試料61が窒化ガリウム結晶のようなイオン結合性が支配的なイオン結晶である場合、試料61の構成原子が電界を生じるため、試料61の内部にナノスケールの電場勾配が形成される。詳しくは、陽イオンであるガリウム(Ga)が結晶の上部最表面に、陰イオンである窒素(N)が結晶の下部最表面にあるため、イオン結晶の上部から下部に向かって内部電界が生じる。この内部電界が自発分極である。この自発分極によりガリウムの核スピンが感じことができるナノスケールの電場勾配が生成され、これによりメインピークPmとサテライトピークPs1,Ps2が観測される。よって、このサテライトピークPs1,Ps2の第1の周波数差Δf1が自発分極を反映している。
一方、窒化ガリウム粉末は、正電荷をもつガリウムと負電荷をもつ窒素のそれぞれの核スピンが空間的にランダム方向を向いているため内部電界が生じない。このため、電場勾配が生成されず、ガリウムの核スピンからの応答は、外部から印加した磁場のみによる信号であるメインピークPmが観測される。
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
この構成によれば、試料61に自発分極が存在するか否かを周波数解析結果から直接的に非破壊で検出することができる。
特に、試料61が半導体材料である場合、半導体材料の自発分極を検出することにより、電気的動作を向上させた半導体材料の開発に資することができる。
この構成によれば、試料61の内部磁界の大きさである自発分極量を検出することができる。
この構成によれば、試料61における自発分極の空間的な分布を検出することができる。よって、試料61の自発分極の詳細を知ることができる。
例えば、自発分極分布検出部10dは、半値幅W1,W2が小さいほど試料61の全域に生じている自発分極の均一度が高い旨検出し、半値幅W1,W2が大きいほど均一度が低く、試料61の全域における自発分極の大きさのバラツキが大きい旨検出する。このように、試料61における自発分極の空間的な分布を検出することができる。
この構成によれば、試料61の全域に占める自発分極が存在しない割合Aを検出することができる。よって、試料61の自発分極の詳細を知ることができる。
この構成によれば、スピンエコー法により周波数解析が行われるため、より正確な自発分極の検出を実現することができる。
この方法によれば、上述したように、試料61の自発分極を直接的に検出することができる。
この自発分極検出プログラムによれば、上述したように、試料61の自発分極を直接的に検出することができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
また、自発分極分布検出部10dは、各サテライトピークPs1,Ps2の傾きに基づき試料61の自発分極量を検出してもよい。自発分極分布検出部10dは、各サテライトピークPs1,Ps2の傾きの絶対値が大きい場合、各サテライトピークPs1,Ps2の幅が小さいとして、試料61の空間的に自発分極量の差が少ない旨検出し、各サテライトピークPs1,Ps2の傾きの絶対値が小さい場合、各サテライトピークPs1,Ps2の幅が大きいとして、試料61の空間的に自発分極量の差が大きい旨検出してもよい。
B=(S1+S2)/(S1+S2+Sm)
また、自発分極が存在しない割合A及び自発分極が存在する割合Bは、計算式により算出されていたが、記憶部10gに記憶される積分強度S3,Smと自発分極が存在しない割合A又は自発分極が存在する割合Bとが対応づけられたデータテーブルに基づき求められてもよい。
10 制御部
10a 周波数解析部
10b 自発分極有無判別部
10c 自発分極量検出部
10d 自発分極分布検出部
10e 自発分極割合検出部
10f 表示制御部
10g 記憶部
20 静磁場生成部
21 静磁場磁石
22 静磁場電源
30 送信部
31 送信コイル
32 送信回路
32a 電力調整部
40 受信部
41 受信コイル
42 受信回路
50 ディスプレイ
60 試料台
P ピーク
Pm メインピーク
Ps1,Ps2 サテライトピーク
S1,S2,S3,Sm 積分強度
W1,W2 半値幅
Δf1 第1の周波数差
Δf2 第2の周波数差
Claims (7)
- 試料に電波を送信する送信部と、
前記送信部からの前記電波の送信後に信号を受信する受信部と、
受信した前記信号について周波数解析を行う周波数解析部と、
前記周波数解析部による周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別部と、を備える、
自発分極検出装置。 - 前記周波数解析結果に基づき前記複数のピークの間の周波数差に応じて前記試料の自発分極量を検出する自発分極量検出部を備える、
請求項1に記載の自発分極検出装置。 - 前記複数のピークは、
最大の信号強度を有するメインピークと、
前記メインピークよりも信号強度が弱いサテライトピークと、を備え、
前記自発分極検出装置は、さらに、前記サテライトピークの幅に応じて前記試料における自発分極の空間的な分布を検出する自発分極分布検出部を備える、
請求項1又は2に記載の自発分極検出装置。 - 前記複数のピークは、
最大の信号強度を有するメインピークと、
前記メインピークよりも信号強度が弱いサテライトピークと、を備え、
前記自発分極検出装置は、さらに、前記メインピークの積分強度と前記サテライトピークの積分強度に基づき前記試料の全域に占める自発分極が存在しない割合又は自発分極が存在する割合を検出する自発分極割合検出部を備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の自発分極検出装置。 - 前記自発分極検出装置は、前記試料の周囲に静磁場を生成する静磁場生成部を備え、
前記送信部は、前記電波としてラーモア周波数のπ/2パルスとπパルスを所定の時間間隔で送信し、
前記受信部は、前記信号としてスピンエコー信号を受信し、
前記周波数解析部は、前記ラーモア周波数を変化させつつ、前記スピンエコー信号のピーク強度を検出することにより前記周波数解析を行う、
請求項1から4の何れか一項に記載の自発分極検出装置。 - 送信部を通じて試料に電波を送信する送信ステップと、
前記送信部からの前記電波の送信後に受信部を通じて信号を受信する受信ステップと、
受信した前記信号について周波数解析を行う周波数解析ステップと、
前記周波数解析ステップによる周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別ステップと、を備える、
自発分極検出方法。 - コンピュータに、
送信部を通じて試料に電波を送信した後に受信部を通じて受信した信号について周波数解析を行う周波数解析機能と、
前記周波数解析機能による周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別機能と、を実現させるための自発分極検出プログラム。
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JP2017067544A (ja) | 2015-09-29 | 2017-04-06 | 積水化学工業株式会社 | コバルト錯体含有試料の評価方法、及び電解液の製造方法 |
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