JP7005956B2 - 汚泥処理の管理方法 - Google Patents
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Description
重力濃縮槽において、汚泥濃縮不良や汚泥浮上が起こると、(1)固形分回収率の低下による分離水の水質悪化、(2)引抜汚泥を脱水処理する工程での脱水効率の悪化、又は(3)脱水処理後の脱水ケーキ含水率の上昇、等の諸問題を引き起こす。このように、重力濃縮槽での汚泥濃縮不良や汚泥浮上は、排水処理、汚泥処理、さらには最終廃棄物にまで悪影響を及ぼす深刻な問題であった。
しかしながら、これら特許文献1~3は、汚泥濃縮不良や汚泥浮上を抑制する方法や薬剤に関するものであるが、汚泥濃縮不良や汚泥浮上がいつ起こるか把握する手段に関する記載がない。
従来技術において、薬剤使用量を削減しようと、汚泥濃縮不良や汚泥浮上が発生してから対策を開始した場合、実際には対策の開始が遅れ、改善が図れるまでの期間は長くなり、その改善が図れるまでの期間は悪化状態が継続するという不具合があった。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
本発明は、汚泥に含まれる二酸化炭素量を指標値として汚泥処理を管理する手段を有する制御部を備える汚泥処理管理装置である。
前記二酸化炭素量は、汚泥から気相中に放出させた二酸化炭素ガス濃度であってもよい。
前記汚泥は、投入汚泥及び/又は引抜汚泥であってもよい。
汚泥濃縮不良防止又は汚泥浮上防止のためであってもよい。
前記指標値に基づき、濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加を調節してもよい。
前記指標値が、以下の式から算出される指標値であり、かつ、当該指標値に基づき汚泥処理を管理してもよい。
指標値=ヘッドスペース中の二酸化炭素ガス濃度C[%(v/v)]×ヘッドスペース容量Y[mL]÷汚泥容量X[mL] … 式(1)
なお、ヘッドスペース容量[mL]=二酸化炭素ガス濃度測定容器の容量[mL]-汚泥容量[mL]である。
さらに、前記指標値2~5の間になるように濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加を行い、前記指標値2未満になったときに濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加を停止してもよい。
本発明の実施形態に係る汚泥処理の管理方法は、汚泥に含まれる二酸化炭素量を測定し、この測定値を指標として、汚泥処理を管理する方法である。例えば、図1に示すような水系の処理フローに適用することができる。
本実施形態の管理方法は、重力濃縮槽における汚泥処理の管理方法に適用することが好適である。
本実施形態の管理方法は、汚泥を投入して濃縮汚泥と分離液に固液分離し、濃縮汚泥と分離液を別々に移送する移送配管を備えた重力濃縮槽において、(1)投入汚泥に含まれる二酸化炭素量を測定し、及び/又は、(2)引抜汚泥に含まれる二酸化炭素量を測定し、この測定した値を用いて汚泥を管理することが、好適である。
まず、本実施形態の管理方法は、汚泥に含まれる二酸化炭素含有量を測定する。本実施形態において、汚泥中の二酸化炭素量を汚泥の管理方法の指標として用いる。
濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加開始の時期をより正確に判断する場合には、引抜汚泥を用いることが好ましく、また、濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加停止の時期をより正確に判断する場合には、投入汚泥を用いることが好ましい。
前記物理的衝撃の手段として、容器内の汚泥に強い衝撃を与えることができる手段が、汚泥中の固形分等に付着している気泡ガスを強制的に気相に放出させることができるので、好ましい。
前記物理的衝撃として、例えば、振とう、振動、及び攪拌等が挙げられる。前記振とうは、上下、左右、回転等の振とう装置で行うことが可能であり、ヒトが振ることにより行うことも可能である。また、前記振動は、マイクロ波発生装置、超音波振動装置、テーブル型等振動発生装置等で行うことが可能である。また前記攪拌は、撹拌子とマグネチックスターラー等で行うことが可能である。このうち、振とうが、簡便で検出精度も良いので好ましい。
前記化学的処理として、例えば、酸処理等が挙げられる。
また、二酸化炭素ガス濃度測定器や測定管等に接続できるような容器であることが好ましい。これにより、発生した気相中のガスを測定用バック等に移し替えなくともよいので、簡便である。また、直接的に接続して測定できるのでより精度を向上させることができる。
前記容器の材質は、合成樹脂、ガラス、金属等何れでもよい。作業性の点で、変性可能な素材が好ましい。また、コンタミ防止のため、ディスポーザブル製品(使い捨て可能製品)が好ましい。
前記合成樹脂製品の材質として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリカーボネイト、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。このうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、入手容易で強度性・透明性もあるので、好ましい。
このうち、ガス検知管を用いる方法が、簡便で短時間で測定でき、また現場でも測定できるので、好ましい。
〔手順1〕一定容量の汚泥を一定容量の容器に採取し、外気が流入しないように容器内の気相中のガスを採取できるように加工した蓋で密封する。容器気相中のガスを採取する際、容器内の気相容量が減少するため、測定には変形可能な素材の容器を用いるか、採取した気相の容量分だけ容器内に外気が容器気相と混合しないように流入するような部品を付けた容器を用いる。
一例として、変形可能なペットボトル等を用いることが好ましい。なお、容器気相部は一般的にヘッドスペースと呼ばれる。
また、気相ガスをバック等に採取しなくとも、外気が容器内に流入しないように、ヘッドスペースのガスを二酸化炭素ガス濃度測定器に直接導入できるような容器が、簡便であるので好ましい。具体的には、ペットボトル等の変形可能な容器を、外気が流入しないように加工した蓋で密封し、ガス検知管とガス検知管用気体採取器を用いてヘッドスペースのガスを直接吸引して二酸化炭素ガス濃度を測定する方法が最も好適である。
・ヘッドスペース容量[mL]=二酸化炭素ガス濃度測定容器の容量[mL]-汚泥容量[mL]
・汚泥容量:X[mL]
・ヘッドスペース容量(=容器容量-汚泥容量):Y[mL]
・測定されたヘッドスペース中の二酸化炭素ガス濃度:C[%(v/v)]
なお、本実施形態において、ガスの測定に用いる容器、採取する汚泥の量は、以下の量が好ましい。
・容器容量:好ましくは200mL~3,000mL、より好ましくは250mL~1,000mL。
・汚泥量 :好ましくは50mL~2,000mL、より好ましくは100mL~500mL。
・汚泥容量(X)とヘッドスペース容量(Y)の比率:
好ましくは、X:Y=1:9から1:0.25の範囲、
より好ましくは、X:Y=1:4から1:0.4の範囲。
密閉後この容器に、内部の汚泥に強い衝撃を与えるように外部から物理的衝撃を与える。例えば、容器を上下に10回強振とうすること等が挙げられる。この物理的衝撃により、汚泥中に存在する二酸化炭素等の気泡ガスを容器内のヘッドスペースの気相中に放出させることができる。
容器に外気が流入しない条件でガス検知管とガス検知管用気体採取器を容器に接続し、ヘッドスペースの気相中に放出された二酸化炭素ガスを、外気が流入しない条件下でガス検知管法により吸引し、二酸化炭素ガス濃度を測定する。
次に、本実施形態の管理方法は、前記測定値の二酸化炭素量を指標値として汚泥処理を管理する。
本実施形態の管理方法は、前記汚泥に含まれる二酸化炭素量を指標値とし、当該指標値に基づき、濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加を、調節することが好ましい。
前記指標値が高い場合には、汚泥濃縮不良又は汚泥浮上対策のため、濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤添加(具体的には開始又は継続)を行う。前記指標値が低い場合には、汚泥脱水工程負荷軽減又は薬剤使用量削減のため、濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤添加を停止する。なお、前記継続の場合、現場での引抜及び/又は添加は連続的であってもよく断続的であってもよい。
また、投入汚泥に含まれる二酸化炭素量と、引抜汚泥に含まれる二酸化炭素量との比較値を指標としてもよい。〔引抜汚泥の二酸化炭素量/投入汚泥の二酸化炭素量〕の比較値が、高い場合には、濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤添加を行い、当該比較値が低い場合には、濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤添加を停止する。この比較値としては、例えば、1.25~2.5よりも高い場合と低い場合とで、それぞれ汚泥処理の管理を行う。
なお、前記指標値とする二酸化炭素量は、使用する容器の容量、採取する汚泥の容量、汚泥性状、重力濃縮槽の構造等によって異なるが、本実施形態の測定方法を用いることで客観的評価を行うことができる。
さらに、前記指標値は、汚泥から気相中に強制的に放出させた二酸化炭素ガス濃度であることが好ましい。
このことから、本実施形態の測定方法に基づき、汚泥濃縮不良又は汚泥浮上の二酸化炭素ガス濃度が一定の基準値を超えるときに汚泥濃縮不良又は汚泥浮上が発生することが確認できた。このことから、汚泥処理の管理方法において、汚泥中の二酸化炭素量を指標値とすることができることが確認できた。
この指標にて汚泥濃縮不良や汚泥浮上の防止対策として、汚泥引抜及び/又は薬剤添加を調節することでできる。具体的には、汚泥引抜及び/又は薬剤添加の開始若しくは継続を行う、又はその停止を行う。
前記指数値(2以上5以下)の間になるように、汚泥処理管理として汚泥引抜及び/又は薬剤添加を行う。当該指数値の間になるように引抜及び/又は添加を継続して行ってもよい。指数値5超えると汚泥が浮上している状態になってしまうため、前記指数値の上限を低く設定することにより汚泥濃縮不良又は汚泥浮上を効率よく防止することができる。
前記指標値未満(2%未満)になったときに、汚泥処理管理として汚泥引抜の停止及び/又は薬剤添加の停止を行う。前記指数値の下限を高く設定することにより、汚泥脱水工程負荷軽減又は薬剤使用量削減を行いつつ、適切な汚泥処理の管理を行うことができる。
汚泥引抜及び/又は薬剤添加を停止した後、指標値が2~5になったときに汚泥引抜及び/又は薬剤添加を開始することが好ましい。より好ましくは指標値3以上になったときに開始することである。開始後は、上述の指数値の間になるように調節することが好適である。
〔指標値〕
X[mL]:汚泥容量、Y[mL]:ヘッドスペース容量(=容器容量-汚泥容量)、C[%(v/v)]:測定されたヘッドスペース中の二酸化炭素ガス濃度のとき、
(C×Y÷X)の値が3以上になった場合に汚泥濃縮不良や汚泥浮上の防止対策を実施し、(C×Y÷X)の値が2未満になった場合に汚泥濃縮不良や汚泥浮上の防止対策を停止することが好ましい。
また、汚泥脱水工程等の負荷をより軽減したい場合又は防止対策に用いる薬剤使用量等をより削減したい場合、(C×Y÷X)の値が、3.5以上になった場合に前記防止対策を開始することが好ましい。汚泥濃縮不良や汚泥浮上のリスクが高まるが、汚泥脱水工程等の負荷削減又は薬剤使用量等の削減がより好適にできる。
本実施形態の濃縮汚泥の引抜量又は引抜時間は、前記指数値2~5の間になるように行えばよく、さらに好ましくは前記(C×Y÷X)の値が3未満になるまで行うことが好ましい。
本実施形態の管理方法における薬剤添加の調節として、薬剤の添加タイミングや添加停止のタイミングを見極めることができる。これにより、最終的に、過剰薬注を防止し薬剤使用量を削減することができる。
本実施形態の薬剤の添加量は、前記指数値2~5の間になるように適宜調節すればよく、一例として、薬剤が亜硝酸塩系の場合、亜硝酸イオンとして10~70mg/L、より好ましくは10~50mg/Lである。
すなわち、本実施形態の汚泥処理方法を用いれば、年間を通じて安定的に効率よく汚泥濃縮不良防止又は汚泥浮上防止することができ、かつ汚泥脱水工程等の負荷及び薬剤使用量も軽減することができる。
本実施形態に使用する薬剤として、以下のうち亜硝酸系の汚泥浮上防止剤系の静菌剤が好ましい。
本実施形態に用いる静菌剤としては、例えば、亜硝酸塩、次亜塩素酸塩、第四級アンモニウム塩、ホルムアルデヒド、ピリチオン又はその誘導体、ソルビン酸、アジ化ナトリウム、4,5-ジクロル-1,2-ジチオール-3-オン、トリアジン系化合物、ホスホニウム系化合物等を挙げることができる。これらから1種又は2種以上を選択して使用することができる。
これらの中で、亜硝酸塩及びピリチオン又はその誘導体を好適に用いることができる。亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ルビジウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸ニッケル、亜硝酸亜鉛、亜硝酸タリウム等を挙げることができる。ピリチオン又はその誘導体としては、例えば、ピリチオン、ナトリウムピリチオン、亜鉛ピリチオン、ジピリチオン等を挙げることができる。
本実施形態の汚泥処理管理装置は、上述した本実施形態の汚泥に含まれる二酸化炭素量を指標値として汚泥処理を管理する手段を有する制御部を備える汚泥処理管理装置である。当該汚泥処理管理装置は、CPUを備えるパーソナルコンピュータ等汎用的なコンピュータであってもよい。
なお、上述した本実施形態の汚泥処理管理方法(又は上述した指標値に基づく汚泥処理の管理方法)を、装置のCPU等を含む制御部、及び記憶媒体(USBメモリ、HDD、CD、ネットワークサーバ等)等を備えるハードウエア資源にプログラムとして格納し、制御部によって実現させることも可能である。
また、本実施形態は、上述した本実施形態の汚泥処理管理方法(又は、上述した指標値に基づく汚泥処理の管理方法)として、コンピュータを機能させるためのプログラムとすることも可能である。
また、本実施形態は、前記汚泥処理管理装置を備える汚泥処理引抜調節装置及び/又は薬剤添加調節装置であってもよい。
さらに、本実施形態は、汚泥処理管理装置と、汚泥処理引抜調節装置及び/又は薬剤添加調節装置とを備える汚泥処理装置であってもよい。
また、本実施形態は、前記汚泥処理管理装置及び/又は前記汚泥処理装置を備える水系又は水系システムとすることも可能である。
図1の工程系統図において、下水等の原水は、最初沈殿池2に供給され、沈殿物は、さらに、重力濃縮槽5において濃縮されたのち、濃縮汚泥として汚泥貯留槽6に貯留される。一方で、最初沈殿池2からの上澄み液は、曝気槽3を通って最終沈殿池4に導かれ、この最終沈殿池4の上澄み液は、そのままで、又は必要な処理が施された後に、放流される。また、最終沈殿池4で分離された汚泥は、返送汚泥として曝気槽3の方に戻されるか、又は余剰汚泥として機械濃縮機8で濃縮され、次いで貯留槽6に送られる。貯留槽6で重力濃縮槽5および機械濃縮機8に由来する汚泥が混合され、次いで、脱水機7に送られて脱水処理され、脱水ケーキとして排出される。
本実施形態において、投入汚泥及び/又は引抜汚泥中の二酸化炭素量を測定し、この測定値を指標値として、当該指標値に基づき、重力濃縮槽5の濃縮汚泥の引抜を調節する及び/又は重力濃縮槽5に対する薬剤の添加を調節するように、汚泥引抜制御装置及び/又は薬注制御装置に命令を行う。
これにより、重力濃縮槽5の汚泥を管理することができ、ここで生じる汚泥濃縮不良又は汚泥浮上を防止することができる。さらに、汚泥濃度が適切であるため脱水工程等の負担軽減を行うことができる。また、薬剤添加が適切であるため薬剤使用量の低減を行うことができる。
〔1〕 汚泥に含まれる二酸化炭素量を測定し、当該測定値を指標値として汚泥処理を管理する方法。
〔2〕 前記二酸化炭素量は、汚泥から気相中に放出させた二酸化炭素ガス濃度である、前記〔1〕記載の汚泥処理の管理方法。
〔3〕 前記汚泥は、投入汚泥及び/又は引抜汚泥である、前記〔1〕又は〔2〕記載の汚泥処理の管理方法。
〔4〕 汚泥濃縮不良防止又は汚泥浮上防止のためである、前記〔1〕~〔3〕の何れか1つ記載の汚泥処理の管理方法。
〔5〕 前記指標値に基づき、濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加を調節する、前記〔1〕~〔4〕の何れか1つ記載の汚泥処理の管理方法。
〔6〕 前記指標値が、以下の式から算出される指標値であり、かつ、当該指標値に基づき汚泥処理を管理する、前記〔1〕~〔5〕の何れか1つ記載の汚泥処理の管理方法。
指標値=ヘッドスペース中の二酸化炭素ガス濃度C[%(v/v)]×ヘッドスペース容量Y[mL]÷汚泥容量X[mL] … 式(1)
なお、ヘッドスペース容量[mL]=二酸化炭素ガス濃度測定容器の容量[mL]-汚泥容量[mL]である。
〔7〕 前記指標値2~5の間になるように濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加を行い、前記指標値2未満になったときに濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加を停止する、前記〔6〕記載の汚泥処理の管理方法。
〔8〕前記指標値2未満のときに濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加を停止し、前記指標値が2~5になったときに濃縮汚泥の引抜及び/又は薬剤の添加の開始する、前記〔6〕又は〔7〕記載の汚泥処理の管理方法。
〔10〕 さらに、濃縮汚泥の引抜を調節する手段及び/又は薬剤の添加を調節する手段を有する、前記〔9〕の汚泥処理管理装置。
〔11〕 前記制御部が、前記〔1〕~〔8〕の汚泥処理の管理方法に基づき制御するものである、前記〔9〕又は〔10〕の汚泥処理管理装置。
〔12〕 前記〔9〕~〔11〕の何れか1つの汚泥処理管理装置を備える水系又は水系システム。
1.試験方法
本発明者は、対象汚泥を密閉容器に入れて振とうすることで汚泥固形物から気泡ガスを剥離させ、気相側に強制的に放出させてヘッドスペース中のガス濃度を測定する方法(以後、ヘッドスペース法ともいう)を考え、対象汚泥中のガス成分及びその濃度で汚泥処理管理が可能かどうかを確認した。
<手順>
手順1:汚泥250mLを容積500mLのペットボトルに採取し、ガス検知管測定が可能なように加工した蓋で密封する。
手順2:ペットボトルを上下に10回以上強振とうし、汚泥固形物に付着している気泡ガスをヘッドスペース側に放出させる。
手順3:ガス検知管と気体採取器を接続し、ガスを吸引して各種ガスの濃度を測定する。
試料には、下水処理場の最初沈殿池汚泥を用いた。なお、今回試験した最初沈殿池汚泥では、硝酸イオンや亜硝酸イオンは検出されなかったため、脱窒により発生する窒素および窒素酸化物は検討外とした。
ペットボトルに汚泥を採取し、密閉後、35℃の恒温槽に5時間静置し(加速試験)、汚泥浮上を起こさせた。試験前と汚泥浮上後で、各種ガス濃度を測定した。最もガス濃度が高く、かつ増加量が多かったのは二酸化炭素であった(試験前1.5%;浮上後5.0%)。一方、硫化水素(試験前0.01%;浮上後0.07%)及び酢酸(試験前0.000005%未満、浮上後0.000005%未満)はガス濃度が低く、増加量も僅かであった。よって、二酸化炭素が汚泥浮上の主要因であることを確認した。
1.試験方法
汚泥浮上と二酸化炭素量との関係性を調べた。前述と同様に、35℃の恒温槽に入れたペットボトル内の汚泥の浮上状況を観察し、汚泥相の厚みのうち上部に浮上した分の厚みの割合を「浮上体積率」として記録した。記録後、ヘッドスペース法により二酸化炭素濃度を測定した。
浮上体積率=Δh1/(Δh1+Δh2)
Δh1+Δh2:汚泥相の厚み、Δh1:浮上汚泥の厚み、Δh2:沈降汚泥の厚み
測定結果を表1に示す。二酸化炭素濃度は経時的に増加し、試験開始から約3時間後に汚泥の一部が浮上した。この時点でのヘッドスペース法による二酸化炭素濃度は4%であった。他の下水処理場の最初沈殿池汚泥を用いた測定でも、汚泥浮上開始時は同様の二酸化炭素濃度が測定された。
よって、重力濃縮槽の汚泥において、汚泥浮上に関わる二酸化炭素濃度としてはこの測定値が採用できると考える。
重力濃縮槽の汚泥に対し、本手法と指標を用いれば、汚泥浮上の予兆を診断でき、汚泥浮上の予防や、対策実施タイミングの判定等に役立てられると考える。
高濃度の重力濃縮汚泥を得るには、沈殿を加速させるか、時間を稼いで沈殿を待つ必要がある。沈殿を加速させるためには、みずみち棒や汚泥凝集によって作った汚泥固形物の間隙から水を逃がす方法が取られているが、気泡ガスが付着して浮力を得た汚泥固形物に対しては有効と言えない。一方、時間を稼ぐ方法としては、減圧や攪拌、曝気による脱気処理により気泡ガスを取り除いて沈殿を待つ方法のほか、冷却や殺菌・静菌等により汚泥腐敗に伴うガス発生を抑制して沈殿を待つ方法が有効と考えられる。
しかし、設備改造を伴う脱気処理や冷却処理は適用が限定的になると考えられる。そこで、本発明者は、適用が簡単な薬剤添加による汚泥腐敗ガス発生の抑制を検討することとした。
汚泥浮上抑制剤クリブレーク T-600(栗田工業株式会社製:亜硝酸塩系)と、各種薬剤を評価した。なお、500mLペットボトルに、各薬剤を添加した最初沈殿池汚泥250mLを採取し、密閉後、35℃に調節した恒温槽に入れた。5時間加温後、ペットボトルを上下に10回強振とうし、強制的に気相中に二酸化炭素を放出させ、その濃度を測定した。(表2参照)。
汚泥浮上抑制剤クリブレーク T-600(亜硝酸塩系)が、最初沈殿池汚泥における二酸化炭素の発生抑制に有効であった。硝酸カルシウムによる硝酸態酸素供給(嫌気化抑制)効果では、二酸化炭素の発生抑制効果が得られなかった。ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄等の鉄系凝集剤は二酸化炭素の発生抑制効果が得られなかった。
また、薬剤による汚泥浮上対策を検討し、汚泥の腐敗を抑制する薬剤(汚泥浮上抑制剤(クリブレーク T-600)が有効であることを確認した。
これにより、本測定法にて汚泥から気相中に放出させた二酸化炭素量と、汚泥濃縮不良又は汚泥浮上とに関連性があることを見出した。さらに、汚泥に含まれる二酸化炭素量を測定することで、当該測定値を汚泥処理の管理の指標とすることができることを見出した。また、汚泥に含まれる二酸化炭素量を指標とし、薬剤の添加時期を把握し易くなったので、薬剤添加の調節も容易に行うことができる。
<実験条件>
机上試験にて試験を実施した。
下水処理場の重力濃縮槽投入汚泥(汚泥固形分濃度1.7%、pH 5.8)を採取し、容量500mLのペットボトルに30℃に調節した汚泥250mLを採取した。経時的にペットボトル内の汚泥から発生する二酸化炭素ガス濃度を測定するため、測定回数と同じ数である6本のサンプルを準備した。
30℃恒温槽に静置し、0時間、1.5時間、3時間、6時間、9時間、12時間に、ペットボトル1本を取り出し、外気が流入しないように加工した蓋で密封し、上下に10回強振とうしたのち、ヘッドスペースのガスをガス検知管法で吸引し、二酸化炭素ガス濃度を測定した。
二酸化炭素ガス濃度の測定結果が以下の指標値以上になった時、残りのペットボトル内の汚泥に汚泥浮上防止薬剤を添加した。
・汚泥容量:X[mL]
・ヘッドスペース容量(容器容量-汚泥容量):Y[mL]
・測定されたヘッドスペース中の二酸化炭素ガス濃度:C[%]
〔浮上防止剤添加タイミング〕
C×Y÷X ≧ 3
汚泥浮上防止薬剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様の試験を実施した。
実施例1及び比較例1の結果を表3に示す。
1.5時間後には、本方法で発生する二酸化炭素ガス濃度が3.1%となり、C×Y÷X ≧ 3 となった。
実施例1、つまり、汚泥浮上防止剤を添加すると12時間後でも汚泥浮上は起きなかった。なお、12時間後のC×Y÷Xの値は3.6であった。
比較例1、つまり、汚泥浮上防止剤を添加しないと、3時間後には汚泥浮上が起きた。この時のC×Y÷Xの値は4.2であり、12時間後のC×Y÷Xの値は5.8であった。
<実験条件>
下水処理場の重力濃縮槽の汚泥浮上管理に本発明を適用した。重力濃縮槽への汚泥投入量は1日平均200m3であり、年間73,000m3であった。
汚泥浮上が起きていない状態から重力濃縮槽の投入汚泥および引抜汚泥から発生する二酸化炭素ガス濃度を測定した。重力濃縮槽の引抜汚泥から発生する二酸化炭素ガス濃度の測定値が以下の指標値以上になった時、汚泥浮上防止剤として亜硝酸ナトリウム液を、亜硝酸イオンとして50mg/L、投入汚泥に添加した。
・汚泥容量:X[mL]
・ヘッドスペース容量(容器容量-汚泥容量):Y[mL]
・測定されたヘッドスペース中の二酸化炭素ガス濃度:C[%]
〔浮上防止剤添加開始タイミング〕
C×Y÷X ≧ 3.5
また、重力濃縮槽投入汚泥から発生する二酸化炭素ガス濃度の測定結果が以下の指標値以下になった時、汚泥浮上防止剤の添加を停止した。
〔浮上防止剤添加停止タイミング〕
C×Y÷X < 2.0
二酸化炭素ガス濃度による汚泥浮上防止剤の添加管理をせず、常時、亜硝酸ナトリウム液を、亜硝酸イオンとして50mg/L添加したこと以外は、実施例2と同じである。
[比較例3]
汚泥浮上防止剤の添加を行わなかったこと以外は、実施例2と同じである。
実施例2、比較例2及び比較例3の結果を表4に示す。
比較例3では、汚泥浮上防止対策を実施しなかったため、重力濃縮槽で年間60日、汚泥浮上が発生した。その結果、固形分回収率の悪化により分離液水質が悪化し、また、引抜汚泥濃度が低下して脱水処理時間の延長や脱水ケーキ含水率の上昇が起きた。
比較例2では、常時、汚泥浮上防止剤を添加したため、重力濃縮槽での汚泥浮上は年間0日であった。しかし、汚泥浮上防止剤の使用量は40%亜硝酸ナトリウム液として年間14.6tonとなり、経済的な負担となった。
実施例2では、汚泥から発生する二酸化炭素ガス濃度を測定して、汚泥浮上が予測される時のみ汚泥浮上防止剤を添加した。その結果、重力濃縮槽での汚泥浮上は年間0日であり、また、汚泥浮上防止剤の使用量は40%亜硝酸ナトリウム液として年間3.5tonとなり、薬剤使用の無駄を削減することができた。
Claims (4)
- 最初沈殿池から引き抜かれ重力濃縮槽に投入するための投入汚泥及び/又は重力濃縮槽から引き抜かれた引抜汚泥の汚泥について、当該投入汚泥及び/又は引抜汚泥に含まれる二酸化炭素量を密閉容器内で測定し、以下の式(1)から算出される指標値に基づき、重力濃縮槽からの濃縮汚泥の引抜及び/又は重力濃縮槽に対する薬剤の添加を調節する、
重力濃縮槽における汚泥濃縮不良又は汚泥浮上を防止するための汚泥処理の管理方法。
指標値=密閉容器内で前記汚泥から気相中に放出させたヘッドスペース中の二酸化炭素ガス濃度C[%(v/v)]×ヘッドスペース容量Y[mL]÷汚泥容量X[mL] … 式(1)
なお、前記ヘッドスペース容量(Y)[mL]=前記二酸化炭素ガス濃度を測定する密閉容器の容器容量[mL]-前記汚泥容量(X)[mL]であり、当該汚泥容量(X)は当該密閉容器に採取したガス放出前の汚泥容量であり、当該汚泥容量(X):当該ヘッドスペース容量(Y)=1:4~0.4である。 - 前記指標値2~5の間になるように重力濃縮槽からの濃縮汚泥の引抜及び/又は重力濃縮槽への薬剤の添加を行い、前記指標値2未満になったときに当該濃縮汚泥の引抜及び/又は当該薬剤の添加を停止する、請求項1記載の汚泥処理の管理方法。
- 請求項1又は2記載の重力濃縮槽における汚泥濃縮不良又は汚泥浮上を防止するための汚泥処理の管理方法に基づいて、重力濃縮槽における汚泥濃縮不良又は汚泥浮上を防止するために、重力濃縮槽の汚泥処理を管理する制御部を備える、重力濃縮槽の汚泥処理管理装置。
- 重力濃縮槽と、
重力濃縮槽の濃縮汚泥の引抜を調節する汚泥引抜制御装置及び/又は重力濃縮槽に対する薬剤の添加を調節する薬注制御装置と、
前記汚泥引抜制御装置における重力濃縮槽の濃縮汚泥の引抜を調節する手段及び/又は前記薬注制御装置における重力濃縮槽に対する薬剤の添加を調節する手段と、二酸化炭素量を指標値として重力濃縮槽の汚泥処理を管理する手段とを含む制御部を備える、重力濃縮槽の汚泥処理管理装置と、を備える水系又は水系システムであり、
前記制御部は、請求項1又は2記載の重力濃縮槽における汚泥濃縮不良又は汚泥浮上を防止するための汚泥処理の管理方法に基づいて、重力濃縮槽における汚泥濃縮不良又は汚泥浮上を防止するために、重力濃縮槽の汚泥処理を管理する、水系又は水系システム。
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