JP7004614B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Description
[1] 透光性基板、アノード層、有機発光材料を含有する発光層、カソード層、誘電体層及び金属系粒子集合体層をこの順に含み、前記透光性基板側から光が取り出される有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記金属系粒子集合体層は、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなり、前記金属系粒子の平均粒径が200nm以上1600nm以下の範囲内であり、平均高さが55nm以上500nm以下の範囲内であり、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1以上8以下の範囲内であり、隣り合う金属系粒子間の平均距離が1nm以上150nm以下の範囲内である、有機エレクトロルミネッセンス素子。
[2] 前記カソード層が、紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な材料で構成されている、[1]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[3] 前記カソード層の厚みが60nm以下である、[1]又は[2]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[4] 前記金属系粒子が、紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な金属系材料で構成されている、[1]~[3]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[5] 前記誘電体層の厚みが20nm以上200nm未満である、[1]~[4]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[6] 前記発光層の厚みが10nm以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[7] 前記アスペクト比が1を超える、[1]~[6]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明に係る有機EL素子は、ディスプレイ(画像表示装置)や照明装置に好適に適用することができる。
<有機EL素子>
(1)有機EL素子の構造
図1は、本発明に係る有機EL素子の一例を模式的に示す断面図である。図1に示される有機EL素子1は、透光性基板10;アノード層(アノード電極)20;有機発光材料を含有する発光層30;カソード層(カソード電極)40;誘電体層50;金属系粒子集合体層60をこの順に含む。金属系粒子集合体層60は、30個以上の金属系粒子61が互いに離間して二次元的に配置されてなる層である。
有機EL素子1は、透光性基板10側(アノード層20側)から光70が取り出されるボトムエミッションタイプの有機EL素子である。すなわち、有機EL素子1は、透光性基板10側が光取り出し面となっており、光70を出射する。
また、本発明に係る有機EL素子は、アノード層20とカソード層40との間に配置される、発光層30以外の他の層を1種以上含むことができる。他の層の具体例については後述する。
以下、有機EL素子を構成する各層について説明する。
金属系粒子集合体層60は、30個以上の金属系粒子61が互いに離間して二次元的に配置されてなる層である。
金属系粒子集合体層60は、有機EL素子の発光増強に特に有利な所定形状の金属系粒子集合体からなる層である。すなわち、金属系粒子集合体層60を構成する金属系粒子61の平均粒径は200nm以上1600nm以下の範囲内、平均高さは55nm以上500nm以下の範囲内、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比は1以上8以下の範囲内であり、かつ、隣り合う金属系粒子61間の平均距離(以下、「平均粒子間距離」ともいう。)は1nm以上150nm以下の範囲内である。
金属系粒子集合体層60が示すプラズモン共鳴の強さは、特定波長における個々の金属系粒子61が示す局在プラズモン共鳴の単なる総和ではなく、それ以上の強さである。すなわち、30個以上の所定形状の金属系粒子61が所定の平均粒子間距離で密に配置されることにより、個々の金属系粒子61が相互作用して強いプラズモン共鳴が発現する。これは、金属系粒子61の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
上記所定の構造を有する金属系粒子集合体層60は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光光度法により吸光スペクトルを測定したとき、紫外~可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
吸光度=-log10(I/I0)
で表される。
吸光スペクトルは、一般の分光光度計を用いて測定することができる。
例えば上記特許文献1には、互いに独立する多数の平板状金属粒子からなる粒子集合体を、局在プラズモン共鳴現象を利用して蛍光増強素子として用いることが開示されているが、この発光増強方法においても、効果的な発光増強効果を得るために有効な金属ナノ粒子と励起される分子との間の距離は10nm以下とされている。
上記所定の構造を有する金属系粒子集合体層60によれば、従来では概ねフェルスター距離の範囲内(約10nm以下)に限定されていたプラズモン共鳴の作用範囲を、例えば数百nm程度まで伸長することができる。この作用範囲の伸長によって、発光層30の厚みが大きい場合や、金属系粒子集合体層60を配置する位置が発光層30から離れている場合であっても発光層30の全体を増強させることが可能になり、これにより有機EL素子の輝度効率及び外部量子効率を向上させることができる。
上記のようなプラズモン共鳴の作用範囲の伸長効果もまた、30個以上の所定形状の金属系粒子61を所定間隔で密に配置したことによって生じた金属系粒子61の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
また、例えば10nm以上、さらには数十nm(例えば20nm、30nm又は40nm)以上、なおさらには数百nm以上離れた位置に配置された発光層30をも発光増強させる能力を有し得る。
具体的には、平均粒子間距離を一定にして金属系粒子61の平均粒径を大きくするに従い、紫外~可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフト(ブルーシフト)する。同様に、金属系粒子61が比較的大型である場合において、金属系粒子61の平均粒径を一定にして平均粒子間距離を小さくするに従い(金属系粒子61をより密に配置すると)、紫外~可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフトする。この特異な現象は、プラズモン材料に関して一般的に認められているミー散乱理論〔この理論に従えば、粒径が大きくなるとプラズモンピークの極大波長は長波長側にシフト(レッドシフト)する。〕に反するものである。
金属系粒子集合体層60(ガラス基板上に積層した状態)は、金属系粒子61の形状や平均粒子間距離に応じて、吸光光度法によって測定される紫外~可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークが、例えば350nm以上550nm以下又は350nm以上500nm以下の波長領域に極大波長を示し得る。また、金属系粒子集合体層60は、金属系粒子61が十分に長い粒子間距離(例えば1μm)を置いて配置される場合と比較して、典型的には30nm以上500nm以下(例えば30nm以上250nm以下)のブルーシフトを生じ得る。
金属系粒子61を構成する金属系材料は、紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な材料である。紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な材料とは、ナノ粒子又はその集合体としたときに、吸光光度法による吸光スペクトル測定において紫外~可視光領域に現れるプラズモンピークを示す材料であることを意味する。
紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な金属系材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属;アルミニウム、タンタル等の貴金属以外の金属;該貴金属及び貴金属以外の金属から選択される金属を含有する合金;該貴金属及び貴金属以外の金属から選択される金属を含む金属化合物(金属酸化物や金属塩等)が挙げられる。中でも、紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な金属系材料としては、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属が好ましく、安価で吸収が小さい(可視光波長において誘電関数の虚部が小さい)という観点からは銀であることがより好ましい。
金属系粒子61の平均粒径は、金属系粒子61を構成する金属系材料の種類に応じて適切に選択されることが好ましい。
平均粒子間距離は、発光層30の発光を増強させる効果を効果的に得るために、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは1nm以上50nm以下、さらに好ましくは1nm以上20nm以下の範囲内である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、局在プラズモンの失活の点で不利となる。
一部もしくは全ての金属系粒子61間で電子の授受が可能であると、プラズモン共鳴効果が低減する傾向にある。従って、金属系粒子61間は確実に離間されており、金属系粒子61間には導電性物質が介在されないことが好ましい。
上記積層体において、金属系粒子集合体層60は、支持基板80上に直接積層されることが好ましい。
一部もしくは全ての金属系粒子61間で電子の授受が可能であると、プラズモン共鳴効果が低減する傾向にある。従って、支持基板80上に金属系粒子集合体層60が積層された積層体が有機EL素子に組み込まれる場合、支持基板80は、非導電性材料からなることが好ましい。
支持基板80を構成する非導電性材料としては、マイカ、SiO2、ZrO2、ガラス等の無機絶縁材料、熱可塑性樹脂等が挙げられる。金属系粒子集合体層60が形成される支持基板80の表面は、平滑であることが好ましい。
支持基板80は、透光性を有する基板又は光学的に透明な基板であってもよいし、非透光性(光吸収性)であってもよい。支持基板80側からの光出射を防止するために、支持基板80を、光を反射する機能を有する反射基板としてもよい。支持基板80を透光性を有する基板又は光学的に透明な基板とし、支持基板80における金属系粒子集合体層60とは反対側に反射基板を配置してもよい。
支持基板80の厚みは特に制限されず、例えば10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
〔a〕基板(例えば支持基板80)上において微小な種(seed)から金属系粒子61を成長させていくボトムアップ法、
〔b〕所定の形状を有する金属系粒子61を所定の厚みを有する両親媒性材料からなる保護層で被覆した後、LB(Langmuir Blodgett)膜法により、これを基板(例えば支持基板80)上にフィルム化する方法、
〔c〕その他、蒸着又はスパッタリングにより作製した薄膜を後処理する方法、レジスト加工、エッチング加工、金属系粒子が分散された分散液を用いたキャスト法など。
アノード層20としては、透光性の電極層が用いられ、高い透光性を有することが好ましく、高い透光性及び高い電気伝導度を有することがより好ましい。
アノード層20としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、金、白金、銀、及び銅等からなる薄膜を用いることができ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。アノード層20として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。
アノード層20は、異種材料からなる2層以上の多層構造であってもよい。
発光層30は発光する機能を有する層であり、有機発光材料を含有する。発光層30は、当該分野において従来公知の材料で構成することができる。有機発光材料は、例えば、従来公知の有機燐光発光材料(燐光発光性高分子等)や有機蛍光発光材料(蛍光発光性高分子等)等である。
本発明に係る有機EL素子は、1層又は2層以上の発光層を有していてもよい。
発光層30は、発光性低分子又は発光性高分子がマトリックス中に分散された層であってもよい。マトリックス材料としては、導電性高分子及び半導体高分子等の透明高分子を用いることができる。
本発明によれば、強いプラズモン共鳴を示すとともに、プラズモン共鳴の作用範囲(プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)が伸長された金属系粒子集合体層60を備えるため、発光層30の金属系粒子集合体層60側の表面と金属系粒子集合体層60の発光層30側の表面との間の距離が例えば10nm以上、さらには20nm以上、なおさらには30nm以上の厚みを有する場合であっても、発光層30の発光増強、ひいては輝度効率及び外部量子効率の向上が可能である。
本発明に係る有機EL素子において、金属系粒子集合体層60は、カソード層40の外側(カソード層40を基準にアノード層20側とは反対側)に配置されている。このような層構成において、金属系粒子集合体層60のプラズモン共鳴による発光増強効果がカソード層40によって遮断されるおそれをなくすために、カソード層40は、紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な材料で構成されることが好ましい。紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な材料の意味及び例については、金属系粒子61を構成する金属系材料についての記述が引用される。中でも、カソード層40は、銀、アルミニウム、又は、銀若しくはアルミニウムを含む合金からなることが好ましく、銀又はアルミニウムからなることがより好ましい。
カソード層40は、異種材料からなる2層以上の多層構造であってもよい。
カソード層40が銀で構成される場合、カソード層40の厚みは、好ましくは60nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは45nm以下であり、なおさらに好ましくは40nm以下であり、とりわけ好ましくは30nm以下であり、特に好ましくは20nm以下である。
カソード層40がアルミニウムで構成される場合、カソード層40の厚みは、好ましくは40nm以下であり、より好ましくは30nm以下であり、さらに好ましくは25nm以下であり、なおさらに好ましくは20nm以下である。
カソード層40の厚みは、電極としての機能の観点から、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上である。
カソード層40の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、塗布法等が挙げられる。
カソード層40と金属系粒子集合体層60との間に配置される誘電体層50は、カソード層40と金属系粒子集合体層60との間の電気的絶縁性を図るための層である。カソード層40と金属系粒子集合体層60との間の電気的絶縁性を確保することにより、金属系粒子集合体層60に電流が流れてプラズモン共鳴による発光増強効果が十分に得られないおそれを防ぐことができる。
誘電体層50は、図2に示されるように、金属系粒子61間の間隙を埋めるように形成されていてもよく、この場合、誘電体層50は、金属系粒子61間の電気的絶縁性を確保する役割をも果たす。
また、誘電体層50の厚みは、金属系粒子集合体層60に励起されるプラズモンとカソード層40に励起されるプラズモンとを良好に相互作用させ、その結果励起されるプラズモン共鳴をより強くし、増強電場をカソード層40の向こう側(発光層30側)にも及ぼし、有機EL素子の能力を高める観点から、好ましくは20nm以上200nm未満であり、より好ましくは30nm以上150nm以下であり、さらに好ましくは40nm以上100nm以下であり、なおさらに好ましくは50nm以上80nm以下である。
透光性基板10を構成する材料は、透光性を有する限り制限されず、例えば、SiO2、ZrO2、ガラス、シリコン等の無機絶縁材料、熱可塑性樹脂等が挙げられる。透光性基板10は、発光層30から出射される光に関して、60%以上の光透過率を有することが好ましく、80%以上の光透過率を有することがより好ましく、90%以上の光透過率を有することがさらに好ましい。
透光性基板10の厚みは特に制限されず、例えば10μm以上2mm以下であり、好ましくは20μm以上1.5mm以下である。
本発明に係る有機EL素子は、アノード層20とカソード層40との間に配置される、発光層30以外の他の層を1種以上含むことができる。
他の層としては、カソード層40と発光層30との間に設ける層、アノード層20と発光層30との間に設ける層が挙げられる。
電子注入層は、カソード層40からの電子注入効率を改善する機能を有する層であり、電子輸送層は、電子注入層又はカソード層40により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。
正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、ホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
正孔注入層は、アノード層20からの正孔注入効率を改善する機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔注入層又はアノード層20により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する層である。
電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
a)アノード層20/発光層30/カソード層40
b)アノード層20/正孔注入層/発光層30/カソード層40
c)アノード層20/正孔注入層/発光層30/電子注入層/カソード層40
d)アノード層20/正孔注入層/発光層30/電子輸送層/カソード層40
e)アノード層20/正孔輸送層/発光層30/電子注入層/カソード層40
f)アノード層20/正孔輸送層/発光層30/電子輸送層/電子注入層/カソード層40
g)アノード層20/正孔注入層/発光層30/電子輸送層/電子注入層/カソード層40
h)アノード層20/正孔注入層/正孔輸送層/発光層30/カソード層40
i)アノード層20/正孔注入層/正孔輸送層/発光層30/電子注入層/カソード層40
j)アノード層20/正孔注入層/正孔輸送層/発光層30/電子輸送層/カソード層40
k)アノード層20/正孔注入層/正孔輸送層/発光層30/電子輸送層/電子注入層/カソード層40
l)アノード層20/発光層30/電子注入層/カソード層40
m)アノード層20/発光層30/電子輸送層/電子注入層/カソード層40
記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。
上述のとおり、透光性基板、アノード層、有機発光材料を含有する発光層、カソード層及び誘電体層をこの順に含み、透光性基板側から光が取り出される有機EL素子において、特定の位置に所定の構造を有する金属系粒子集合体層を配置することにより、有機EL素子の発光を増強させることができ、これにより輝度効率及び外部量子効率を向上させることができる。
すなわち、本発明は、下記に示す有機EL素子の発光増強方法にも関する。
透光性基板、アノード層、有機発光材料を含有する発光層、カソード層及び誘電体層をこの順に含み、前記透光性基板側から光が取り出される有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法であって、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなり、前記金属系粒子の平均粒径が200nm以上1600nm以下の範囲内であり、平均高さが55nm以上500nm以下の範囲内であり、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1以上8以下の範囲内であり、隣り合う金属系粒子間の平均距離が1nm以上150nm以下の範囲内である金属系粒子集合体層を前記誘電体層における前記カソード層側とは反対側に配置することを特徴とする、有機EL素子の発光増強方法。
市販ソフト「Rsoft CAD」を用いて、複数の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる金属系粒子集合体層と、カソード層を想定した金属薄膜とからなる積層構造を二次元空間に作成し、この積層構造について、金属系粒子集合体層のプラズモン共鳴による増強電場の及ぶ範囲がどのようになるかを、市販ソフト「Fullwave」を用いたFDTD計算によって検証した。この計算によれば、金属系粒子集合体層のプラズモン共鳴による増強電場の及ぶ範囲とその強度を求めることができる。
計算条件は次のとおりである。
(計算条件)
グリッド:2nm
計算領域:x軸方向3μm×z軸方向1.5μm
境界条件:z軸両端 PML 4nm
x軸両端 periodic
光源条件:Current Type
金属系粒子の誘電関数:銀の誘電関数
金属薄膜の誘電関数:銀、アルミニウム又はITOの誘電関数
その他の領域の誘電関数:1
金属薄膜のz軸方向長さ(厚み):15nm又は40nm
金属系粒子のサイズ:z軸方向長さ100nm、x軸方向長さ300nm
金属系粒子集合体層と金属薄膜との間の距離(z軸方向長さ):80nm
計算条件を下記のとおりとしたこと以外は実験例1と同様のFDTD計算によって、カソード層を想定した金属薄膜の厚み及び材質と、金属薄膜の向こう側(金属薄膜を基準に金属系粒子集合体層とは反対側)に及ぶ増強電場の強度との関係を検証した。
(計算条件)
グリッド:2nm
計算領域:x軸方向3μm×z軸方向1.5μm
境界条件:z軸両端 PML 4nm
x軸両端 periodic
光源条件:Current Type
検出器条件:x座標 金属系粒子短軸と同一
z座標 金属薄膜から見て金属系粒子集合体層とは反対側の金属薄膜表面から、10nm離れた位置
金属系粒子の誘電関数:銀の誘電関数
金属薄膜の誘電関数:銀又はアルミニウムの誘電関数
その他の領域の誘電関数:1
金属薄膜のz軸方向長さ(厚み):図3のとおり
金属系粒子のサイズ:z軸方向長さ100nm、x軸方向長さ300nm
金属系粒子集合体層と金属薄膜との間の距離(z軸方向長さ):15nm、30nm、40nm、50nm、60nm
計算条件を下記のとおりとしたこと以外は実験例1と同様のFDTD計算によって、金属系粒子集合体層と金属薄膜との間の距離(z軸方向長さ)と、金属薄膜の向こう側(金属薄膜を基準に金属系粒子集合体層とは反対側)に及ぶ増強電場の強度との関係を検証した。
(計算条件)
グリッド:2nm
計算領域:x軸方向3μm×z軸方向1.5μm
境界条件:z軸両端 PML 4nm
x軸両端 periodic
光源条件:CW
金属系粒子の誘電関数:銀の誘電関数
金属薄膜の誘電関数:アルミニウムの誘電関数
その他の領域の誘電関数:1
金属薄膜のz軸方向長さ(厚み):15nm
金属系粒子のサイズ:z軸方向長さ100nm
x軸方向長さ300nm、400nm又は500nm
図4に示される計算結果によれば、金属薄膜の向こう側に及ぶ増強電場を十分に高めるためには、金属系粒子集合体層と金属薄膜との間の距離(誘電体層の厚みに相当)は、好ましくは20nm以上200nm未満であり、より好ましくは30nm以上150nm以下であり、さらに好ましくは40nm以上100nm以下であり、なおさらに好ましくは50nm以上80nm以下である。
直流マグネトロンスパッタリング装置を用いて、下記の条件で、支持基板としての超薄ガラス基板(日本電気硝子社製「OA-10G」、厚み50μm)上に、銀粒子を極めてゆっくりと成長させ、支持基板表面の全面に金属系粒子集合体の薄膜を形成して、支持基板と金属系粒子集合体層との積層体を得た。
使用ガス:アルゴン
チャンバ内圧力(スパッタガス圧):10Pa
基板・ターゲット間距離:100mm
スパッタ電力:4W
平均粒径成長速度(平均粒径/スパッタ時間):0.9nm/分
平均高さ成長速度(=平均堆積速度=平均高さ/スパッタ時間):0.25nm/分
基板温度:300℃
基板サイズ及び形状:7mm×11mmの長方形
テスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」)〕を用いた上述の方法により、実験例4の金属系粒子集合体層の導電性の有無を確認したところ、上述の測定条件にて抵抗値が30MΩ以上である結果、「オーバーロード」と表示された。実験例4の金属系粒子集合体層は、導電性を有していないことが確認された。
直流マグネトロンスパッタリング法のスパッタ時間を変更したこと以外は実験例4と同様にして、支持基板と金属系粒子集合体層との積層体を2種類作製した(実験例5及び実験例6)。実験例5の金属系粒子集合体層は、金属系粒子の平均高さが約10nmであること以外は実験例4と略同じ粒子形状、アスペクト比及び平均粒子間距離を有し、実験例6の金属系粒子集合体層は、金属系粒子の平均高さが約30nmであること以外は実験例4と略同じ粒子形状、アスペクト比及び平均粒子間距離を有するものであった。
図7は、実験例4、実験例5及び実験例6で得られた金属系粒子集合体層を有する積層体の吸光光度法により測定された吸光スペクトルである。非特許文献(K. Lance Kelly, et al., "The Optical Properties of Metal Nanoparticles: The Influence of Size, Shape, and Dielectric Environment", The Journal of Physical Chemistry B, 2003, 107, 668)に示されているように、実験例4のような扁平形状の銀粒子は、平均粒径が200nmのとき約550nm付近に、平均粒径が300nmのときは650nm付近にプラズモンピークを持つことが一般的である(いずれも銀粒子単独の場合である)。
プラズモンピークの極大波長は金属系粒子の平均粒径にも依存する。例えば、実験例5及び実験例6では、平均粒径が小さいために実験例4と比較してかなり長波長側にプラズモンピークを有しており、その極大波長は、それぞれ約510nm、約470nmである。
また実験例4では、紫外~可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が約1.9と、実験例5及び実験例6に比べて極めて高く、これより実験例4の金属系粒子集合体層は、極めて強いプラズモン共鳴を示すことがわかる。
厚み700μmの無アルカリガラス基板上にアノード層として平均厚み45nmのITO層を成膜した後、正孔注入層形成用溶液をアノード層上にスピンコートして、平均厚み65nmの正孔注入層を積層した。正孔注入層形成用溶液には、PLEXTRON ICS社製、商品名「Plexcore AQ 1200」を、エタノールを用いて希釈したものを用いた。
次に、発光材料を含有するキシレン溶液を正孔輸送層上にスピンコートして、65nm厚の発光層を形成した。発光材料は、特許第6159715号公報の調製例に従って合成した高分子化合物である。発光材料の構成単位及び各構成単位のモル比を表1に示す。モル比は、仕込み比に基づき算出した。
ついで、アクリル樹脂(アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルをモノマー単位とする、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが130万、分子量分布Mw/Mnが4.2のアクリル樹脂)を含有する酢酸エチル溶液をSOG層上にスピンコートして平均厚み50nmのアクリル樹脂層を積層した。
上記の基礎有機EL素子を比較例1の有機EL素子とした。
実施例1及び比較例1の有機EL素子について、次の方法に従って輝度効率及び外部量子効率(EQE)を測定し、評価した。
輝度測定装置を用いて、電圧を掃引して、有機EL素子の基板発光面から垂直上面方向にて観測される輝度(Cd/m2)を測定した。
観測された輝度が1000Cd/m2であったときの電流値(単位:A)を測定し、当該輝度をその電流値で割ってCd/A @1000Cd/m2を求めた。
電流量が1mA/cm2であるときの輝度からCd/A @1mA/cm2を求めた。
観測された輝度が1000Cd/m2であったときの当該輝度、発光スペクトル、印加電圧及び電流量からEQE @1000Cd/m2を求めた。
結果を表2に示す。実施例1の有機EL素子の輝度効率及びEQEは、比較例1の有機EL素子に比べて有意に向上していた。
Claims (8)
- 透光性基板、アノード層、有機発光材料を含有する発光層、カソード層、誘電体層及び金属系粒子集合体層をこの順に含み、前記透光性基板側から光が取り出される有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記金属系粒子集合体層は、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなり、前記金属系粒子の平均粒径が200nm以上1600nm以下の範囲内であり、平均高さが55nm以上500nm以下の範囲内であり、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1以上8以下の範囲内であり、隣り合う金属系粒子間の平均距離が1nm以上150nm以下の範囲内である、有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 前記カソード層が、紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な材料で構成されている、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記カソード層の厚みが60nm以下である、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記金属系粒子が、紫外~可視光領域においてプラズモン共鳴可能な金属系材料で構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記誘電体層の厚みが20nm以上200nm未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記発光層の厚みが10nm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記アスペクト比が1を超える、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記誘電体層は、1層又は2層から構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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