(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るヒータおよび定着装置(加熱装置)を含む画像形成装置を示す構成図である。図1において、画像形成装置10は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
MFP10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13が開閉自在に設けられている。また、本体11の上部には操作部14が設けられている。操作部14は、各種のキーを有するオペレーションパネルとタッチパネル式の表示器を有している。
本体11内のADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15が設けられている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、密着型イメージセンサ16(以下、単にイメージセンサと呼ぶ)を備えている。イメージセンサ16は、主走査方向(図1では奥行方向)に配置されている。
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動しながら、原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し1ページ分の原稿の読み取りを行う。また、ADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。
更に、本体11内の中央部にはプリンタ部17を有している。プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、パーソナルコンピュータなどで作成された画像データを処理して、記録媒体(例えば用紙)に画像を形成する。また本体11の下部には、各種サイズの用紙を収容する複数の給紙カセット18を備えている。尚、画像を形成する記録媒体としては、用紙のほかにOHPシート等があるが、以下の説明では、用紙に画像を形成する例を説明する。
プリンタ部17は、感光体ドラムと、露光器としてLEDを含む走査ヘッド19を有し、走査ヘッド19からの光線によって感光体を走査して画像を生成する。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。
画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置されている。また、走査ヘッド19も画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対応した複数の走査ヘッド19Y、19M、19C、19Kを有している。
図2は、画像形成部20Y,20M,20C,20Kのうち、画像形成部20Kを拡大して示す構成図である。尚、以下の説明において各画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Kを例に説明する。
画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを有する。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電チャージャ23K、現像器24K、一次転写ローラ(転写器)25K、クリーナ26K、ブレード27K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、走査ヘッド19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を形成する。
画像形成部20Kの帯電チャージャ23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラ24aによりブラックのトナー及びキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム22Kに供給し、静電潜像の現像を行う。クリーナ26Kは、ブレード27Kを用いて感光体ドラム22K表面の残留トナーを除去する。
また、図1に示すように、画像形成部20Y~20Kの上部には、現像器24Y~24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジ28Y,28M,28C,28Kを含む。
中間転写ベルト21は、駆動ローラ31及び従動ローラ32に張架され、循環的に移動する。また中間転写ベルト21は感光体ドラム22Y~22Kに対向して接触している。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、一次転写ローラ25Kにより一次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、二次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と二次転写ローラ33間を用紙Pが通過する際に、二次転写ローラ33により二次転写電圧が用紙Pに印加される。そして中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Pに二次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34を設けている。
また、図1で示すように、給紙カセット18から二次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18内から取り出した用紙Pを搬送する給紙ローラ35を設けている。更に、二次転写ローラ33の下流には加熱装置である定着装置36を設けている。また、定着装置36の下流には搬送ローラ37を設けている。搬送ローラ37は用紙Pを排紙部38に排出する。更に、定着装置36の下流には、反転搬送路39を設けている。反転搬送路39は、用紙Pを反転させて二次転写ローラ33の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用される。
図1、図2は実施形態の一例を示すものであり、定着装置36以外の画像形成装置部分の構造は、図1、図2の例に限定するものではなく、公知の電子写真方式画像形成装置の構造を用いることができる。
図3は、加熱装置である定着装置36を示す構成図である。定着装置36は、回転体である定着ベルト41、プレスローラ42(加圧ローラ)、ベルト搬送ローラ43,44、テンションローラ45を有している。定着ベルト41は、弾性層が形成されたエンドレスベルトであり、ベルト搬送ローラ43,44及びテンションローラ45で回転可能に張架され、定着ベルト41がプレスローラ42の一部に巻きついている。テンションローラ45は、定着ベルト41に所定の張力を加える。
また回転体(定着ベルト41)の内側にあって、ベルト搬送ローラ43と44の間に板状の加熱部材46(ヒータ)を設けている。加熱部材46は、定着ベルト41の内側に接触し、プレスローラ42の方向に押圧され、定着ベルト41とプレスローラ42との間に所定幅の定着ニップを形成する。
用紙Pが定着ニップを通過する際に、熱と圧力で用紙P上のトナー像を用紙Pに定着する。プレスローラ42は、モータによって駆動力が伝達され回転する(回転方向を図3の矢印tで示す)。定着ベルト41、ベルト搬送ローラ43,44及びテンションローラ45は、プレスローラ42が回転することで従動する(その回転方向を図3の矢印sで示す)する。
回転体である定着ベルト41は、例えば厚さ50umのSUS基材或いは70umの耐熱樹脂であるポリイミド上の外側に厚さ200umのシリコンゴム層(弾性層)が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。プレスローラ42は、例えばφ10mmの鉄棒表面に厚さ5mmのシリコンスポンジ層が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。加熱部材46の詳細な構成については、後述する。
図4は、第1の実施形態におけるMFP10の制御系の構成例を示すブロック図である。制御系は、例えば、MFP10全体を制御するCPU100、バスライン110、リードオンリーメモリ(ROM)120、ランダムアクセスメモリ(RAM)121、インターフェース(I/F)122、スキャナ部15、入出力制御回路123、給紙・搬送制御回路130、画像形成制御回路140、定着制御回路150を備えており、CPU100と各回路はバスライン110を介して接続されている。
CPU100は、MFP10全体を制御するもので、ROM120或いはRAM121に記憶されるプログラムを実行することにより画像形成のための処理機能を実現する。ROM120は、画像形成処理の基本的な動作を司る制御プログラム及び制御データなどを記憶する。RAM121は、ワーキングメモリである。
ROM120(或いはRAM121)は、例えば、画像形成部20や定着装置36等の制御プログラムと、制御プログラムが使用する各種の制御データを記憶する。本実施形態における制御データの具体例としては、用紙の印字領域の大きさ(主走査方向での幅)と通電させる発熱部材との対応関係などが挙げられる。
定着装置36の定着温度制御プログラムは、トナー像が形成された用紙における画像形成領域の大きさを判定する判定ロジックと、用紙が定着装置36の内部に搬送される前に画像形成領域が通過する位置に対応する発熱部材のスイッチング素子を選択して通電し、加熱部材46における加熱を制御する加熱制御ロジックとを含んでいる。
I/F122は、ユーザ端末やファクシミリ等の各種装置との通信を行う。入出力制御回路123は、オペレーションパネル14aと表示器14bを制御する。オペレーションパネル14aを操作者が操作することで、例えば用紙サイズや、原稿のコピー部数、等を指定することができる。
給紙・搬送制御回路130は、給紙ローラ35或いは搬送路の搬送ローラ37等を駆動するモータ群131等を制御する。給紙・搬送制御回路130は、CPU100からの制御信号に基づいて給紙カセット18近傍或いは搬送路上の各種センサ132の検知結果を考慮してモータ群131等を制御する。
画像形成制御回路140は、CPU100からの制御信号に基づいて感光体ドラム22、帯電器23、露光器(走査ヘッド)19、現像器24、転写器25をそれぞれ制御する。
定着制御回路150は、CPU100からの制御信号に基づいて定着装置36のプレスローラ42を回転する駆動モータ151を制御する。また加熱部材46の発熱部材(後述)への通電を制御する。また定着制御回路150は、サーミスタ等の温度検知部材152から加熱部材46の温度情報を入力し、加熱部材46の温度を制御する。尚、本実施形態では定着装置36の制御プログラム及び制御データをMFP10の記憶装置内に記憶してCPU100で実行する構成としているが、定着装置36専用に演算処理装置と記憶装置を別途設ける構成にしてもよい。
図5は、第1の実施形態における加熱部材46(ヒータ)の基本構成を示す平面図である。加熱部材46は発熱部材群で構成される。図5に示すように、加熱部材46は、耐熱性の絶縁基材、例えばセラミック基板50の上に長手方向(図示左右方向)に所定の幅の発熱部材51を複数本並べて配列している。
発熱部材51は、例えばセラミック基板50の一方の面上に直接あるいはグレーズ層及び発熱抵抗体層を積層して形成される。発熱抵抗体層は、上述したように発熱部材51を構成するもので、例えばTaSiO2などの既知の素材で形成され、加熱部材46の長手方向において所定の長さと所定の個数に分割されている。発熱部材51の配置の詳細については、後述する。また、発熱部材51の用紙搬送方向(図示上下方向)の両端部には電極52a,52bを形成している。
尚、用紙搬送方向は、以下の説明ではY方向として説明する。また加熱部材46の長手方向は、用紙搬送方向と直交する方向であり、用紙に画像を形成するときの主走査方向に対応し、以下の説明ではX方向として説明する。
図6は、図5の加熱部材46の、発熱部材群とその駆動回路の接続状態を示す説明図である。図6において、複数の発熱部材51は、それぞれ複数の駆動IC(集積回路)531,532,533,534によって個別に通電が制御される。即ち、発熱部材51の各電極52aは、駆動IC531,532,533,534を介して駆動源54の一端に接続され、各電極52bは、駆動源54の他端に接続されている。
駆動IC531~534の具体例としては、FETで成るスイッチング素子、トライアックス、スイッチングICなどを用いることができる。駆動IC531~534の各スイッチがオンすることで、駆動源54から発熱部材51に通電される。したがって、駆動IC531~534は、発熱部材51の切替部を構成する。駆動源54は、例えば、交流電源(AC)や、直流電源(DC)を使用することができる。尚、以下の説明では、駆動IC531~534を総称して駆動IC53と呼ぶ場合がある。
また、駆動源54に直列にサーモスタット55を接続してもよい。サーモスタット55は、加熱部材46の温度が予め設定した温度(危険温度)になったときにオフして、駆動源54と発熱部材51との接続を絶ち、加熱部材46が異常に加熱されるのを防ぐ。
図7は、図6の発熱部材群と用紙の印字領域との位置関係を説明する図である。ここでは、用紙Pが矢印Y方向に搬送されるものとする。図7においては、用紙の印字領域(画像形成領域の幅W)に対応する位置にある発熱部材51に接続された駆動IC53のスイッチが選択的にオンして通電され、加熱される状態を示している。即ち、用紙Pの印字領域のみが集中的に加熱される。
また、定着装置36内に用紙Pが搬送される前に、用紙Pの印字領域の大きさが判定される。用紙Pの印字領域を判定する方法としては、スキャナ部15で読み取った画像データや、パーソナルコンピュータなどで作成された画像データの解析結果を利用する方法がある。また、用紙Pに対する余白設定などの印刷フォーマット情報に基づいて印字領域を判定する方法や、光学センサの検出結果に基づいて印字領域を判定する方法などが挙げられる。
図8は、第1の実施形態における発熱部材群の別の配置例を示す図である。定着装置36に搬送される用紙Pのサイズは様々である。例えば、A5サイズ(148mm)、A4サイズ(210mm)、B4サイズ(257mm)、A4横のサイズ(297mm)が比較的多く用いられる。
そこで、図8では、用紙サイズ(ここでは上述の4種類のサイズ)に対応して、複数種の幅の発熱部材51をX方向に配列している。発熱部材群は、搬送される用紙の搬送精度やスキューの発生、或いは非加熱部分への熱の逃げを考慮して、加熱領域に5%程度の余裕を持つように通電される。
例えば、上記の4種類のサイズの中で、最小サイズであるA5サイズの幅(148mm)に対応して、X方向の中央部に第1の発熱部材511を設けている。また、次に大きいA4サイズの幅(210mm)に対応して、発熱部材511のX方向の外側に、第2の発熱部材512,513を設けている。同様に、次に大きいB4サイズの幅(257mm)に対応して、第2の発熱部材512,513の外側に第3の発熱部材514,515を設けている。また、更に大きいA4横サイズの幅(297mm)に対応して、第3の発熱部材514,515の外側に第4の発熱部材516,517を設けている。
そして、各発熱部材(511~517)の電極52aは、駆動IC531~537を介して駆動源54の一端に接続され、各電極52bは、駆動源54の他端に接続されている。尚、図8に示す発熱部材(511~517)の数とそれぞれの幅は一例として挙げたもので、これに限定されるものではない。
こうして、図8では、用紙Pが搬送路の中央部に沿って搬送され、最小サイズ(A5)の用紙Pが搬送された場合には、中央部の第1の発熱部材511に接続された駆動IC531のみがスイッチオンとなる。また用紙Pのサイズが大きくなるにつれて、第2~第4の発熱部材(512~517)に接続された駆動IC(532~537)がそれぞれ順次にスイッチオンとなる。
図9は、第1の実施形態における発熱部材群の更に別の配置例を示す図である。図9では、用紙Pが搬送路の一方の端部(例えば左側)に沿って搬送される例を示しており、図8と同様に、4種類の用紙サイズに対応して、複数種の幅の発熱部材51をX方向に配列している。
例えば、4種類のサイズの中で、最小サイズであるA5サイズの幅に対応して、X方向の最も左側に第1の発熱部材511を設けている。また、次に大きいA4サイズの幅に対応して、発熱部材511の右側に第2の発熱部材512を設けている。同様に、次に大きいB4サイズの幅に対応して、第2の発熱部材512の右側に第3の発熱部材513を設けている。また、更に大きいA4横サイズの幅に対応して、第3の発熱部材513の右側に第4の発熱部材514を設けている。
そして、各発熱部材(511~514)の電極52aは、駆動IC531~534を介して駆動源54の一端に接続され、各発熱部材(511~514)の電極52bは、駆動源54の他端に接続されている。尚、図9に示す発熱部材(511~514)の数とそれぞれの幅は一例として挙げたもので、これに限定されるものではない。
こうして、図9では、最小サイズ(A5)の用紙Pが搬送された場合には、最も左側の第1の発熱部材511に接続された駆動IC531のみがスイッチオンとなる。また用紙Pのサイズが大きくなるにつれて、第2~第4の発熱部材(512~514)に接続された駆動IC(532~534)がそれぞれ順次にスイッチオンとなる。
また、本実施形態では、通紙領域にラインセンサ40(図1参照)を配置し、通過する用紙のサイズと位置をリアルタイムで判定できるようにしている。或いは、印刷動作の開始時に画像データ、或いはMFP10内の用紙の貯蔵されている給紙カセット18の情報から用紙サイズを判定するようにしてもよい。
ところで、図5、図6の加熱部材46では、隣接する発熱部材51の間に間隙56が存在する。また図8、図9の加熱部材46も同様に、隣接する発熱部材の間に間隙56が存在する。この間隙56部分は発熱できないため、間隙部分で温度低下を生じ、用紙の搬送方向Yと直角する方向に発熱むらが生じていた。発熱むらは、定着品質に影響し、特にカラー印刷の場合は、発色、光沢に差異が発生する可能性があるため、加熱部材46を均熱化することが課題となっている。
そこで、第1の実施形態に係るヒータおよび定着装置は、セラミック基板を、例えば、多層構造とし、セラミック基板の第1の面(第1層上)に複数の発熱部材51をX方向に配列し、第2の面(第2層上)に、複数の発熱部材間の間隙を補足するように、能動的又は受動的に発熱(保有した熱を放射)する熱放射体を配置するようにしている。
図10は、一実施形態に係る加熱部材46(ヒータ)の構成を示す図であり、(a)は、斜視図である。図10(a)の加熱部材46は、図5に示すように、一定幅の発熱部材51をX方向に複数個配列した例に対応する。
図10(a)に示すように、耐熱性の絶縁基材であるセラミック基板50は、第1層のセラミック基板501と第2層のセラミック基板502を有する多層構造としている。尚、第1層のセラミック基板501は、セラミック基板50の中で本体部分を構成する層、即ち、基層を成す。
そして、セラミック基板50の第1の面(例えば、第1層のセラミック基板501)上に直接、発熱抵抗層が積層されている。またセラミック基板50の第2の面(例えば、第2層のセラミック基板502)上に直接、発熱抵抗層が積層されている。発熱抵抗層は、発熱部材51を構成し、例えばTaSiO2などの既知の素材で形成される(或いは、発熱部材51は、セラミック基板501、502上にグレーズ層及び発熱抵抗層を積層して構成してもよい)。ここで、第2の面の複数の発熱部材51は、均熱化のための部材であり、能動的に保有した熱を放射する熱放射体を構成する。
また、第1層のセラミック基板501上の各発熱部材51は、所定の間隙57を置いて、セラミック基板501の長手方向(X方向)に配列している。また、第2層のセラミック基板502上の各発熱部材51も所定の間隙57を置いて、セラミック基板502の長手方向(X方向)に配列している。
但し、第2層に配置した発熱部材51は、第1層の発熱部材51間の間隙57を補足するように配置している。つまり、第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51は、上下方向に互い違いに配置されている。また、第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51は、X方向の端部がそれぞれオーバラップしている。
したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、切れ目なくX方向に配置され、均一の温度に制御することが可能となる。更に第2層のセラミック基板502上に保護層503を設けても良い。保護層503は、例えばSi3N4などによって形成される。
図10(b)は、図10(a)の矢印A方向から見た加熱部材46の断面図である。図10(b)で示すように、発熱部材51はセラミック基板501,502に多層に形成されている。発熱部材51(発熱抵抗層)の形成方法は既知の方法(例えばサーマルヘッドの作成方法)と同様であり、発熱抵抗層の上にアルミニウムでマスキング層を形成する。隣接する発熱部材間は絶縁される。また、Y方向に発熱部材51が露出するようなパターンでアルミニウム層(電極52a,52b)を形成する。
各発熱部材51の両端のアルミニウム層(電極52a,52b)には配線用の導電体58が接続され、導電体58は、セラミック基板501,502にスクリーン印刷等で形成された配線パターン59にスルーホールパターン(スルーホールに銀ペーストを充填)で接続され、配線パターン59を、それぞれ駆動IC53のスイッチング素子に繋ぐようにしている。したがって、各発熱部材51への給電は、駆動源54から配線パターン59と導電体58、及び駆動IC53のスイッチング素子を介して行われる。
更に、第2層のセラミック基板502上の発熱部材51、アルミニウム層(電極52a,52b)、導電体58等の全てを覆うように、最上部に保護層503を形成する。このような発熱部材群に対して駆動源54からACやDCを供給する場合は、駆動ICのスイッチング素子(トライアック、FET)をゼロクロス回路によってスイッチングし、フリッカにも配慮するとよい。
図10(c)は、加熱部材46をY方向から見た概略断面図である。図10(c)から分かるように、第1層のセラミック基板501、第2層のセラミック基板502上には、発熱部材51が配列されている。第1層の発熱部材51は、所定幅の間隙57を置いて、セラミック基板501のX方向に配列している。また、第2層の発熱部材51は、第1層の間隙57を補足するように所定幅の間隙57を置いて配列されている。
第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51は、上下方向に互い違いに配置されており、第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51は、X方向の端部がそれぞれオーバラップしている。したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、切れ目なくX方向に配置され、均一の温度に制御することが可能となる。
図10(d)は、加熱部材46の他の例を示す概略断面図である。図10(d)の加熱部材46は、図8の例に対応する。図10(d)では、発熱部材511、512,514,516のみを示している。発熱部材511、513,515,517は、発熱部材511、512,514,516の配置に対して左右対称であり、図示は省略する。
図10(d)の例では、第1層のセラミック基板501上の各発熱部材516、512は、所定幅の間隙57を置いて、セラミック基板501上のX方向に配列している。また、第2層のセラミック基板502上の各発熱部材514,511は、第1層の間隙57を補足するように所定幅の間隙57を置いて配列している。
第1層の発熱部材(516,512)と、第2層の発熱部材(514,511)は、上下方向に互い違いに配置されている。また、第1層の発熱部材のX方向の両端部は、第2層の発熱部材のX方向の両端部とオーバラップしている。したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、切れ目なくX方向に配置され、均一の温度に制御することが可能となる。
加熱部材46の温度を均一化することにより、定着ベルト41の温度ムラを低減して均熱化を図ることができ、画像形成時にトナーが均一に付着し、色ムラが少なくなり、画像の品質を向上することができる。
尚、図10(d)の加熱部材46は、図8の例に対応するものであるが、図9の例に対応するように構成することもできる。即ち、セラミック基板501上に、図9の発熱部材511、513を、間隙57を置いて配置し、セラミック基板502上に、発熱部材512、514を、間隙57を置いて配置してもよい。この場合も、第1層の発熱部材のX方向の両端部は、第2層の発熱部材のX方向の両端部とオーバラップするように配列する。
第1の面(第1層)の発熱部材と、第2の面(第2層)の発熱部材は、セラミック基板50の表面(加熱部材46が定着ベルト41と接触する位置)から遠い層(第1層)の発熱部材の発熱量が大きくなるように設定すると、より均熱化を図ることができる。
即ち、加熱部材46を定着ベルト41に接触した際に、セラミック基板50の基層を成す第1層のセラミック基板501は、定着ベルト41から離れた距離に位置する。このため、定着ベルト41に近い第2層の発熱部材51の発熱量よりも、第1層の発熱部材の発熱量を大きくすることで、定着ベルト41と接する加熱部材46の長手方向の発熱量は、ほぼ均一となり、定着ベルト41を均一の温度で加熱することができる。
定着ベルト41と接触する位置から遠い層の発熱部材の発熱量を大きくするには、材質の異なる抵抗発熱層を用いるとよい。或いは、発熱量を大きくするために、同一材料で膜厚の厚い抵抗発熱層を形成するとよい。またセラミック基板50の表面から見たとき、遠い層の発熱部材のY方向の長さを短くしてもよい。
こうして、加熱部材46は、第1の面の発熱部材の発熱量と、第2の面の発熱部材(熱放射体)の発熱量が異なるように設定し、定着ベルト41との接触位置(ニップ)に対して近い層(第2層)にある発熱部材51の発熱量よりも、遠い層(第1層)にある発熱部材51の発熱量が大きくなるようにすることで、より均熱化を図ることができる。
図11は、一実施形態に係る加熱部材46(ヒータ)の他の構成を示す図である。図11(a)は、斜視図である。加熱部材46は、単一の絶縁基板(例えば、セラミック基板501)の両面に、それぞれ一定幅の発熱部材51をX方向に複数個配列している。尚、図11において、セラミック基板501の上側の面を表面とし、下側の面を裏面として説明する。
セラミック基板501の裏面(第1の面)及び表面(第2の面)には、それぞれ直接、発熱抵抗層が積層されて形成されている(或いはセラミック基板501の裏面及び表面にグレーズ層及び発熱抵抗層が積層されて形成されてもよい)。発熱抵抗層は、発熱部材51を構成し、例えばTaSiO2などの既知の素材で形成される。
また、セラミック基板501の裏面(第1の面)に形成した各発熱部材51は、所定の間隙57を置いて、長手方向(X方向)に配列している。また、セラミック基板501の表面(第2の面)に形成した各発熱部材51も所定の間隙57を置いて、長手方向(X方向)に配列している。但し、表面に配置した発熱部材51は、裏面の発熱部材51間の間隙57を補足するように配置され、裏面に配置した発熱部材51と、表面に配置した発熱部材51は、X方向の端部がそれぞれオーバラップしている。
したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、切れ目なくX方向に配置され、均一の温度に制御することが可能となる。更にセラミック基板501の上面側に保護層503を設け、下面側に保護層504を設けても良い。保護層503、504は、例えばSi3N4などによって形成される。
図11(b)は、図11(a)の矢印A方向から見た加熱部材46の断面図である。図11(b)で示すように、発熱部材51はセラミック基板501の両面に形成している。また、Y方向に発熱部材51が露出するようなパターンでアルミニウム層(電極52a,52b)を形成している。
各発熱部材51の両端の電極52a,52bには、配線用の導電体58が接続されている。導電体58は、セラミック基板501にスクリーン印刷等で形成された配線パターン59に接続され、配線パターン59は、それぞれ駆動IC53のスイッチング素子に繋ぐようにしている。
図11では、主に発熱部材51の配置を説明するため、配線パターン59の詳細は略しているが、セラミック基板501のY方向の幅を広くすれば、配線パターン59を形成するスペースを確保することができる。こうして、各発熱部材51への給電は、駆動源54から配線パターン59と導電体58、及び駆動IC53のスイッチング素子を介して行われる。
図11(c)は、加熱部材46をY方向から見た概略断面図である。セラミック基板501の裏面側の発熱部材51は、所定幅の間隙57を置いて、X方向に配列している。また、表面側の発熱部材51は、裏面側の間隙57を補足するように所定幅の間隙57を置いて配列している。
裏面側の発熱部材51と表面側の発熱部材51は、上下方向に互い違いに配置されており、それぞれの発熱部材51は、X方向の端部がそれぞれオーバラップしている。したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、切れ目なくX方向に配置され、均一の温度に制御することが可能となる。
図11(d)は、加熱部材46の他の例を示す概略断面図である。図11(d)の加熱部材46は、図8の例に対応する。図11(d)では、発熱部材511、512,514,516のみを示している。発熱部材511、513,515,517は、発熱部材511、512,514,516の配置に対して左右対称であり、図示は省略する。
図11(d)の例では、セラミック基板501の裏面側に、所定幅の間隙57を置いて発熱部材516,512をX方向に配列している。また、セラミック基板501の表面側に、間隙57を補足するように発熱部材514、511を所定幅の間隙57を置いて、X方向に配列している。裏面側の発熱部材(516,512)と、表面側の発熱部材(514,511)は、上下方向に互い違いに配置され、それぞれの発熱部材のX方向の両端部はオーバラップしている。
したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、切れ目なくX方向に配置され、均一の温度に制御することが可能となる。加熱部材46の温度を均一化することにより、定着ベルト41の温度ムラを低減して均熱化を図ることができ、画像形成時の品質を向上することができる。
尚、第1の面(裏面)の発熱部材と、第2の面(表面)の発熱部材は、セラミック基板501の表面(加熱部材46が定着ベルト41と接触する位置)から遠い面(裏面)の発熱部材の発熱量が大きくなるように設定すると、より均熱化を図ることができる。
尚、図11(d)の加熱部材46は、図8の例に対応するものであるが、図9の例に対応するように構成することもできる。即ち、セラミック基板501の第1の面(例えば裏面)に、図9の発熱部材511、513を、間隙57を置いて配置する。また、間隙57を補足するように、第2の面(例えば表面に)に発熱部材512、514を、間隙57を置いて配置する。この場合も、第1の面の発熱部材のX方向の両端部は、第2の面の発熱部材のX方向の両端部とオーバラップするように配列する。
図12は、加熱部材46の別の変形例を示す概略断面図である。図12は、図10(c)における第1層の発熱部材51と第2層の発熱部材51の配列の変形例である。図12(a)に示すように、第1層、第2層のセラミック基板501、502上には、発熱部材51が配列されている。第1層の発熱部材51は、所定幅の間隙57を置いて、セラミック基板501のX方向に配列している。また、第2層の発熱部材51は、第1層の間隙57を補足するように所定幅の間隙57を置いて配列されている。
第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51は、上下方向に互い違いに配置されているが、第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51は、X方向の端部がオーバラップすることなく、対向する間隙57に一致するようにしている。つまり、間隔57は、第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51のX方向の幅と一致するように設定している。
したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、切れ目なくX方向に配置され、均一の温度に制御することが可能となる。図10(c)のように、第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51がオーバーップしていないが、第1層の間隙57を第2層の発熱部材51で補足しているため、間隙57部分の温度低下を抑えることができる。
また、図12(b)は、加熱部材46の更なる変形例である。第1層、第2層のセラミック基板501、502上には、それぞれ発熱部材51が所定幅の間隙57を置いてX方向に配列されており、第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51は、上下方向に互い違いに配置されている。
但し、第1層の発熱部材51と、第2層の発熱部材51は、X方向の端部がオーバラップすることなく、間隔57は、第1層、第2層の発熱部材51のX方向の幅よりも若干大き目に設定している。したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、多少の切れ目を有してX方向に配置されることになる。
図12(b)の例では、図10(d)のように、第1層と第2層の発熱部材51の端部がオーバラップしていないが、第1層の間隙57の大部分を第2層の発熱部材51で補足しているため、間隙57部分の温度低下を抑える効果はある。
尚、第1層の発熱部材51と第2層の発熱部材51がオーバーップしない構成は、図8、図9の加熱部材46、及び図11の単層構造のセラミック基板501に形成した加熱部材46にも、適用することができる。
以上述べたように、一実施形態に係るヒータおよび定着装置によれば、加熱部材46(ヒータ)における複数の発熱部材は、発熱部材間の絶縁が確保され、かつ温度ムラの発生を低減することができる。
尚、本実施形態では、耐熱性の絶縁基材として、セラミックスを例として述べたが、ガラス・エポキシ基板や、ガラス・コンポジット基板などの耐熱性の絶縁基材であれば、同様の効果があることは明白であ。また、例えば発熱抵抗層の上部のより上の層をSiO2としても良い。
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態に係るヒータ及び定着装置について説明する。第2の実施形態における加熱部材46は、セラミック基板を、例えば多層構造とし、セラミック基板の第1の面(第1層のセラミック基板上)に複数の発熱部材51をX方向に配列し、第2の面(第2層のセラミック基板上)に複数の発熱部材間の間隙を補足するように、複数の熱良導体60を配列するようにしている。第2の面の複数の熱良導体60は、均熱化のための部材であり、受動的に発熱(保有した熱を放射)する熱放射体を構成する。
図13は、第2の実施形態に係る加熱部材46の構成を示す図であり、(a)は、斜視図である。図13(a)の加熱部材46は、図5に示すように、一定幅の発熱部材51をX方向に配列した例に対応する。
図13(a)に示すように、耐熱性の絶縁基材であるセラミック基板50は、第1層のセラミック基板501と第2層のセラミック基板502を有する多層構造としている。そして第1層のセラミック基板501上に直接、発熱抵抗層が積層されている(或いは第1層のセラミック基板501上にグレーズ層及び発熱抵抗層が積層されている)。発熱抵抗層は、発熱部材51を構成し、例えばTaSiO2などの既知の素材で形成される。
また、第2層のセラミック基板502上には、第1層のセラミック基板501上の各発熱部材51間の間隙56部分を補足するように所定の間隔を置いて、熱良導体60を配列している。熱良導体60は、アルミニウムや銅などの金属層でなる均熱化のための部材であり、第1層の発熱部材51の熱を受けることで発熱する。つまり、熱良導体60は、受動的に保有した熱を放射する熱放射体を構成する。第1層の発熱部材51と、第2層の熱良導体60は、X方向の端部がそれぞれオーバラップしている。
したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、間隙56が熱良導体60によって隠れるようにX方向に配置され、発熱部材51の熱を熱良導体60に伝えることで、間隙56部分の温度低下を低減するようにしている。これにより加熱部材46を均一の温度に制御することが可能となる。更に第2層のセラミック基板502上に保護層503を設けても良い。保護層503は、例えばSi3N4やSiO2などによって形成される。
図13(b)は、図13(a)の矢印A方向から見た加熱部材46の断面図である。図13(b)で示すように、発熱部材51はセラミック基板501上に形成されている。発熱部材51(発熱抵抗層)の形成方法は既知の方法(例えばサーマルヘッドの作成方法)と同様であり、発熱抵抗層の上にアルミニウムでマスキング層を形成する。隣接する発熱部材間は絶縁される。また、Y方向に発熱部材51が露出するようなパターンでアルミニウム層(電極52a,52b)を形成する。
各発熱部材51の両端のアルミニウム層(電極52a,52b)には配線用の導電体58が接続され、導電体58は、セラミック基板501にスクリーン印刷等で形成された配線パターン59にスルーホールパターンで接続され、配線パターン59に、それぞれ駆動IC53のスイッチング素子に繋ぐようにしている。したがって、各発熱部材51への給電は、駆動源54から配線パターン59と導電体58、及び駆動IC53のスイッチング素子を介して行われる。
また、第2層のセラミック基板502上には、第1層のセラミック基板上の各発熱部材51間の間隙56部分を補足するように所定の間隔を置いて、熱良導体60を配列している。更に、第2層のセラミック基板502の熱良導体60等の全てを覆うように、最上部に保護層503を形成する。
図13(c)は、加熱部材46をY方向から見た概略断面図である。図13(c)から分かるように、第1層、第2層のセラミック基板501、502上には、発熱部材51と熱良導体60がそれぞれ配置されている。第1層のセラミック基板501上の各発熱部材51は、所定幅の間隙56を置いて、セラミック基板501のX方向に配列している。
また、第2層に配列した熱良導体60は、第1層の間隙56を補足するように所定の間隔を置いて配列している。第1層の発熱部材51と、第2層の熱良導体60は、X方向の端部がそれぞれオーバラップしている。したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、間隙56が熱良導体60によって隠れるように配置され、発熱部材51の熱を熱良導体60に伝えることで間隙56部分の温度低下を低減するようにしている。これにより加熱部材46を均一の温度に制御することが可能となる。
図13(d)は、加熱部材46の他の例を示す概略断面図である。図13(d)の加熱部材46は、図8に示した例に対応する。図13(d)では、発熱部材511、512,514,516のみを示している。発熱部材511、513,515,517は、発熱部材511、512,514,516の配置に対して左右対称であり、図示は省略する。
図13(d)の例では、第1層のセラミック基板501上の各発熱部材511、512,514,516は、所定幅の間隙56を置いて、セラミック基板501のX方向に配列している。また、第2層のセラミック基板502に配列した熱良導体60は、第1層の間隙56を補足するように配列している。
第1層の発熱部材511、512,514,516と、第2層の熱良導体60は、X方向の端部がそれぞれオーバラップしている。したがって、発熱部材51は、間隙56が熱良導体60によって隠れるようにX方向に配置され、発熱部材51の熱を熱良導体60に伝えることで間隙56部分の温度低下を低減するようにしている。
図13の実施形態に係る定着装置によれば、加熱部材46における複数の発熱部材51は、発熱部材間の絶縁が確保される。かつ間隙56部分にある熱良導体60は、発熱部材51からの熱を受けて受動的に発熱することで、間隙部分の温度低下を低減し、温度ムラの発生を低減することができる。
加熱部材46で発生した熱は、定着ベルト41の基材、弾性層、表面保護層等により拡散されていくため、熱良導体60は、発熱部材51間の間隙56部分を跨ぐ形で配置すると良い。
本実施例では画像サイズに相当する部分の発熱に関して述べたが、ヒータを細分化して、画像のあるところのみ加熱させるか、或いは何らかの事情で、部分的に温度差があるところを補正しながら加熱することもできる。
図14は、第2の実施形態に係る加熱部材46の変形例の構成を示す図であり、(a)は、斜視図である。図14(a)の加熱部材46は、単一の絶縁基板(例えば、セラミック基板501)の第1の面(裏面)に発熱部材51をX方向に複数個配列し、第2の面(表面)に熱良導体60をX方向に配列している。
図14(a)に示すように、セラミック基板501の裏面には、直接、発熱抵抗層が積層されて形成されている(或いは、セラミック基板501の裏面にグレーズ層及び発熱抵抗層が積層されて形成されている)。発熱抵抗層は、発熱部材51を構成し、例えばTaSiO2などの既知の素材で形成される。各発熱部材51は、所定の間隙56を置いて、長手方向(X方向)に配列している。
また、セラミック基板501の表面には、裏面に形成した各発熱部材51間の間隙56部分を補足するように所定の間隔を置いて、熱良導体60を配列している。熱良導体60は、アルミニウムや銅などの金属層である。セラミック基板501の裏面の発熱部材51と、表面の熱良導体60は、X方向の端部がそれぞれオーバラップするように配列している。
したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、間隙56が熱良導体60によって隠れるようにX方向に配置され、発熱部材51の熱を熱良導体60に伝えることで、間隙56部分の温度低下を低減するようにしている。これにより加熱部材46を均一の温度に制御することが可能となる。
更にセラミック基板501の表面に保護層503を設け、裏面に保護層504を設けても良い。保護層503、504は、例えばSi3N4やSiO2などによって形成される。
図14(b)は、図14(a)の矢印A方向から見た加熱部材46の断面図である。図14(b)で示すように、発熱部材51はセラミック基板501の裏面に形成されている。また、発熱部材51のY方向にアルミニウム層(電極52a,52b)を形成している。
各発熱部材51の両端の電極52a,52bには配線用の導電体58が接続され、導電体58は、セラミック基板501にスクリーン印刷等で形成された配線パターン59に接続され、配線パターン59に、それぞれ駆動IC53のスイッチング素子に繋ぐようにしている。
図14では、主に、発熱部材51と熱良導体60の配置を説明するため、配線パターン59の詳細は略しているが、セラミック基板501のY方向の幅を広くすれば、配線パターン59を形成するスペースを確保することができる。こうして、各発熱部材51への給電は、駆動源54から配線パターン59と導電体58、及び駆動IC53のスイッチング素子を介して行われる。
図14(c)は、加熱部材46をY方向から見た概略断面図である。図14(c)から分かるように、セラミック基板501の裏面には、発熱部材51が配置され、表面には、熱良導体60が配置されている。
セラミック基板501の裏面に形成した各発熱部材51は、所定幅の間隙56を置いて、セラミック基板501のX方向に配列している。また、セラミック基板501の表面に配列した熱良導体60は、発熱部材51の間隙56を補足するように所定の間隔を置いて配列している。裏面の発熱部材51と、表面の熱良導体60は、X方向の端部がそれぞれオーバラップしている。
したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51は、間隙56が熱良導体60によって隠れるように配置される。熱良導体60は、発熱部材51からの熱を受けて受動的に発熱することで、間隙56部分の温度低下を低減するようにしている。これにより加熱部材46を均一の温度に制御することが可能となる。
図14(d)は、加熱部材46の他の例を示す概略断面図である。図14(d)の加熱部材46は、図8に示した例に対応する。図14(d)では、発熱部材511、512,514,516のみを示している。発熱部材511、513,515,517は、発熱部材511、512,514,516の配置に対して左右対称であり、図示は省略する。
図14(d)の例では、セラミック基板501の裏面に形成した各発熱部材511、512,514,516は、所定幅の間隙56を置いて、セラミック基板501のX方向に配列している。また、セラミック基板501の表面の熱良導体60は、間隙56を補足するように配列している。
発熱部材511、512,514,516と、熱良導体60は、X方向の端部がそれぞれオーバラップしている。したがって、発熱部材51は、間隙56が熱良導体60によって隠れるようにX方向に配置される。熱良導体60は、発熱部材51からの熱を受けて受動的に発熱し、間隙56部分の温度低下を低減する。
図14の実施形態に係る定着装置によれば、加熱部材46における複数の発熱部材は、発熱部材間の絶縁が確保される。かつ間隙56部分にある熱良導体60は、発熱部材51からの熱を受けて受動的に発熱することで、間隙部分の温度低下を低減し、温度ムラの発生を低減することができる。
尚、図14(d)の加熱部材46は、図8の例に対応するものであるが、図9の例に対応するように、セラミック基板501の第1の面(例えば裏面)に発熱部材511、512、513、514を、間隙56を置いて配置し、第2の面(例えば表面に)に熱良導体60を、互い違いになるように配置してもよい。
図15は、加熱部材46の別の変形例を示す概略断面図である。図15は、図13(c)における第1層の発熱部材51と、第2層の熱良導体60の配列の変形例である。図15(a)から分かるように、セラミック基板501、502上には、発熱部材51と熱良導体60がそれぞれ配置されている。第1層のセラミック基板501上の各発熱部材51は、所定幅の間隙56を置いて、セラミック基板501のX方向に配列している。
第1層の発熱部材51と、熱良導体60は、上下方向に互い違いに配置されているが、熱良導体60のX方向の幅は、対向する間隙56に一致するようにしている。
したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51と熱良導体60は、切れ目なくX方向に配置される。つまり、図10(c)のように、第1層の発熱部材51と、第2層の熱良導体60は、オーバーップしていないが、第1層の間隙56を第2層の熱良導体60で補足しているため、間隙56部分の温度低下を抑えることができる。
また、図15(b)は、加熱部材46の更なる変形例である。第1層のセラミック基板501上には、発熱部材51が所定幅の間隙56を置いてX方向に配列されている。また、第2層の熱良導体60は、間隙56を補足するように配列されている。
第1層の発熱部材51と、第2層の熱良導体60は、上下方向に互い違いに配置されているが、X方向の端部はオーバラップすることなく、熱良導体60のX方向の幅は、間隙56よりも若干小さくなっている。
したがって、加熱部材46を図の真上から見た場合、発熱部材51と熱良導体60は、多少の切れ目を有してX方向に配置される。図14(c)のように、第1層の発熱部材51と、第2層の熱良導体60の端部はオーバーップしていないが、第1層の間隙56の大部分を第2層の熱良導体60で補足しているため、間隙56部分の温度低下を抑える効果はある。
尚、第1層の発熱部材51と第2層の発熱部材51がオーバーップしない構成は、図8、図9の加熱部材46、及び図14の単層構造のセラミック基板501に形成した加熱部材46にも、適用することができる。
図16は、実施形態に係る定着装置36の変形例を示す構成図である。図16の定着装置36は、図3の定着ベルト41を、円筒状のエンドレスベルト411に置換したものである。定着装置36は、円筒状の回転体である定着ベルト411、プレスローラ42を有している。
プレスローラ42は、モータによって駆動力が伝達されて回転する(回転方向を図16の矢印tで示す)。プレスローラ42が回転することで定着ベルト411は従動して回転する(その回転方向を図10の矢印sで示す)。また回転体(定着ベルト411)の内側にあって、プレスローラ42と対向するように板状の加熱部材46を設けている。
また定着ベルト41の内側には、円弧状のガイド47を設け、定着ベルト411は、ガイド47の外周に沿って取り付けられている。また加熱部材46は、ガイド47に取り付けた支持部材48に支持され、加熱部材46は、定着ベルト411の内側に接触し、かつプレスローラ42の方向に押圧される。したがって、定着ベルト411とプレスローラ42との間に所定幅の定着ニップを形成し、用紙Pが定着ニップを通過する際に、熱と圧力で用紙P上のトナー像を用紙Pに定着する。
つまり、定着ベルト411は、ガイド47に支持されながら、加熱部材46の周りを周回する。また加熱部材46は、図6又は図8、図9に示す基本構成を有し、図10(または図13)に示すように、多層構造のセラミック基板50、又は、図11(または図14)に示すように、単層構造のセラミック基板501に形成される。
以下、上記のように構成されたMFP10の印刷時の動作を図17のフローチャートを用いて説明する。図17は、第1の実施形態におけるMFP10の制御の具体例を示すフローチャートである。
先ず、Act1(動作1)において、スキャナ部15が画像データを読込むと、CPU100は、画像形成部20における画像形成制御プログラムと定着装置36における定着温度制御プログラムを並列して実行する。
画像形成処理が開始されると、Act2では、読込んだ画像データを処理し、Act3で、感光体ドラム22の表面に静電潜像が書込まれる。またAct4で、現像器24は、静電潜像を現像する。
他方、定着温度制御処理が開始されると、例えば、ラインセンサ40の検出信号や、オペレーションパネル14aによる用紙選択情報、或いは画像データの解析結果等に基づいて、CPU100は、Act5で、用紙サイズと画像データの印字範囲の大きさをそれぞれ判定する。またAct6で、定着制御回路150は、用紙Pの印字範囲に対応する位置に配置された発熱部材群を発熱対象として選択する。例えば、図7に示した例では、印字領域の幅に対応して中央に配置されている14個の発熱部材51が選択される。
次に、ACt7で、選択された発熱部材群への温度制御開始信号をONにすると、選択された発熱部材群への通電が行われ、温度が上昇する。
次に、Act8で、定着ベルト41の内側或いは外側に配置された温度検知部材152により、発熱部材群の表面温度を検知する。更にAct9で、CPU100は、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内か否かを判定する。ここで、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内であると判定した場合(Act9:Yes)は、Act10へ進む。一方、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内でないと判定した場合(Act9:No)は、Act11へ進む。
Act11で、CPU100は、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えているか否かを判定する。ここで、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えていると判定した場合(Act11:Yes)、CPU100は、Act12で、先のAct6において選択された発熱部材群への通電をOFFにし、Act8へ戻る。
また、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えていないと判定した場合(Act11:No)は、Act9の判定結果より表面温度が所定の温度下限値に満たない状態であるため、CPU100は、Act13で、発熱部材群への通電をON状態に維持、或いは、再度ONにし、Act8へ戻る。
次に、CPU100は、Act10で、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内の状態で、用紙Pを転写部に搬送する。また、Act14で、用紙Pにトナー像を転写する。そして用紙Pにトナー像を転写した後、用紙Pを定着装置36内に搬送する。
次に、Act15で、定着装置36は用紙Pにトナー像を定着させる。またAct16で、CPU100は、画像データの印字処理を終了するか否かを判定する。ここで、印字処理を終了すると判定した場合(Act16:Yes)は、Act17で、全ての発熱部材群への通電をOFFにし、処理を終了する。一方、画像データの印字処理を未だ終了しないと判定した場合(Act16:No)、すなわち、印刷対象の画像データが残っている場合には、Act1へ戻り、終了するまで同様の処理を繰り返す。
以上述べたように、本実施形態に係る定着装置36は、加熱部材46(ヒータ)の発熱部材群が用紙搬送方向Yと直角する方向(X方向)に配置され、定着ベルト41の内側に接触して配置される。また画像データの印字範囲(画像形成領域)に対応して発熱部材群のいずれかを選択的に通電する。したがって、加熱部材46の用紙の非通紙部分の異常発熱を防止でき、非通紙部分の無駄な加熱を抑制できるため、熱エネルギーを大幅に削減することができる。
また、加熱部材46の発熱部材が所定の間隙を置いて配置されても、多層に補足配置した発熱部材や、熱良導体層により、上記間隙部分での温度低下を抑えて均熱化することができる。したがって、定着品質を高めることができる。
尚、セラミック基板50への発熱抵抗層や熱良導体層の形成や、配線パターンの形成につていては、LTCC(Low Temperature Co-fired ceramics)多層基板で構成することもできる。LTCC多層基板は、配線導体とセラミックス基材を例えば900℃以下の低温で同時焼成して作る低温焼成積層セラミックス基板として知られている。または、様々な膜形成(薄膜、厚膜)プロセスにより、耐熱の絶縁体の層形成で実現することも可能である。
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。