JP7002958B2 - 直列多重インバータ装置およびその制御方法 - Google Patents

直列多重インバータ装置およびその制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、単相インバータのユニットを2台以上直列に接続した、高周波数の単相電圧を出力する直列多重インバータ装置に係り、特に、損失による熱責務を各ユニット・各スイッチング素子で均等化する技術に関する。
誘導加熱用などに用いられる、出力周波数が1kHz以上の単相電圧を出力する高周波インバータ装置では、図13に示すように単相インバータを直列多重接続する構成をとることがある。
特許文献1には、単相インバータのユニット2台を直列接続し、三相インバータの1相を構成した直列多重インバータ装置の例が開示されている。図13に単相インバータのユニット2台を直列接続した直列多重インバータ装置の構成を示す。
このような直列多重インバータ装置の各スイッチング素子のゲート信号(オンオフ信号)を得る方法として、特許文献1の図4には、同じ位相、異なるオフセットを有する複数のキャリア三角波と電圧指令値とを比較する方法が開示されている。
また、図14に示すように、電圧指令値Vrefをキャリア三角波ではなく、固定のゲート閾値と比較しゲート信号を得る方法もある。図14の例では、固定のゲート閾値Vth1a、Vth1b、Vth2a、Vth2bとゲート信号GU1、GX1、GV1、GY1、GU2、GX2、GV2、GY2(すなわち、スイッチング素子のオンオフ状態)の関係を以下のように割り当てている。
・Vref>Vth1aならばスイッチング素子U1をON、スイッチング素子X1をOFF、Vref<Vth1aならばスイッチング素子U1をOFF、スイッチング素子X1をON。
・Vref>Vth2aならばスイッチング素子U2をON、スイッチング素子X2をOFF、Vref<Vth2aならばスイッチング素子U2をOFF、スイッチング素子X2をON。
・Vref>Vth2bならばスイッチング素子Y2をON、スイッチング素子V2をOFF、Vref<Vth2bならばスイッチング素子Y2をOFF、スイッチング素子V2をON。
・Vref>Vth1bならばスイッチング素子Y1をON、スイッチング素子V1をOFF、Vref<Vth1bならばスイッチング素子Y1をOFF、スイッチング素子V1をON。
なお、各ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bと電圧指令値Vrefが同値の場合は、2つのスイッチング素子のうちどちらをONとし、どちらをOFFとしても良い。
この動作により、第1,第2ユニット11,12の出力電圧Vo1、Vo2、合計出力電圧Voとして図14の波形が得られる。図14は単相インバータの第1,第2ユニット11,12を2台直列接続した構成であるが、単相インバータのユニットを複数多重接続し、ゲート閾値も複数用意すれば正弦波に近い合計出力電圧Voが得られる。
また、各スイッチング素子は出力電圧の基本波1周期に対して最大1回のスイッチングとなるため、キャリア三角波を用いる方式よりもスイッチング損失を低減できる。この方式は出力電圧の基本波1周期に対するスイッチング回数が少なくてよいため、出力電圧の周波数が高い高周波インバータ装置に適した方式である。
しかし、図14や特許文献1の図4に示されるゲート信号生成方法では各インバータユニットで発生する損失が大きくばらつく問題点がある。例えば、図14において、各ユニットの出力電流Ioが電圧指令値Vrefと同位相で力率1の場合を考える。このとき、スイッチング素子U1のターンOFF電流は常にスイッチング素子U2のターンOFF電流よりも大きくなる。他のスイッチング素子についても同様であり、第1ユニット11で発生するスイッチング損失は第2ユニット12で発生するスイッチング損失よりも大きくなる。
また、他例として、図15では電圧指令値Vrefの振幅が図14の振幅よりも小さく、電圧指令値Vrefの絶対値は固定のゲート閾値Vth1a、Vth1bの絶対値よりも小さい。このとき、スイッチング素子X1とスイッチング素子Y1は常時ONとなり導通損のみが発生する。スイッチング素子U1とスイッチング素子V1は常時OFFであり損失は零である。
スイッチング素子U2,V2,X2,Y2は導通損とスイッチング損の両方が発生する。ただし、出力電圧Vo2が零の期間は必ずスイッチング素子X2,Y2がONするため、スイッチング素子X2、Y2がONの時間はスイッチング素子U2、V2がONの時間よりも長くなり、スイッチング素子X2、Y2で発生する導通損もスイッチング素子U2、V2より大きくなる。
このように、各ユニット,各スイッチング素子で発生する損失にばらつきがある場合、損失が最大となるユニット・スイッチング素子に合わせて冷却設計を行うと損失の小さなユニットに対しては設計が過剰となり、コストや装置容積が増加してしまう。また、ユニットごとに冷却設計を変更すると設計に時間がかかり、ユニットの量産効果が出ずコストが増加し、装置の組み立ても複雑になるといった問題が生じる。
さらに、出力電圧振幅の変動が頻繁に生じる場合、スイッチング素子U1、V1においては損失が発生する期間と発生しない期間が交互に発生し、温度変化が大きくなる。その結果、スイッチング素子やユニットに熱疲労が起こり、装置の寿命が短くなってしまう。
各ユニット、各スイッチング素子の熱責務を均等化する手段としては、定期的にゲート信号を入れ替える方法が考えられる。ゲート信号を入れ替える方法の一例として、特許文献1が開示されている。
特開2000-324845号公報
特許文献1の方式では、条件によっては各ユニット、各スイッチング素子の熱責務を完全に均等化できないという問題がある。その例を図16、図17に示す。
図16は特許文献1の請求項3に従い、電圧指令値Vrefからゲート信号を生成した結果である。第1ユニット11の出力電圧Vo1が零となる場合はスイッチング素子X1、Y1がONになる区間とスイッチング素子U1、V1がOFFになる区間が混在するため、各スイッチング素子がONになる時間は等しくなり導通損の責務分担は改善される。
ここで、出力電流Ioの位相が図16のように電圧指令値Vrefの位相に対して少し遅れている場合を考える。このときスイッチング素子V1のターンON電流はプラスであるためスイッチング損失が発生する。しかし、スイッチング素子U1のターンON電流はマイナスとなりターンONによるスイッチング損失は発生しない。
また、第2ユニット12ではスイッチング素子U2のターンOFF電流はプラス、スイッチング素子V2のターンOFF電流はほぼ零であり、ターンOFFのスイッチング損失はスイッチング素子U2の方が大きくなる。このように、同一ユニット内で各スイッチング素子に発生するスイッチング損失にばらつきが生じる。
また、第1ユニット11の出力電圧Vo1、第2ユニット12の出力電圧Vo2それぞれがマイナスの時に流れる出力電流Ioを確認すると、第1ユニット11については黒色で示した箇所、第2ユニット12については斜線で示した箇所となる。第1ユニット11では一部電流がプラスであり、無効電力が発生している。有効電力は網掛けした箇所に該当する。
しかし、第2ユニット12の場合、斜線部はすべて有効電力である。これは、第1ユニット11と第2ユニット12で有効電力の責務が異なることを示している。例えば、直流電源としてダイオード整流器を使用する場合は整流器で発生する導通損がばらついてしまう。出力電流の位相によっては一部ユニットで有効電力が回生する場合もあり、ダイオード整流器では回生した有効電力の行き先がなく各ユニットの直流電圧が上昇しスイッチング素子が過電圧で破損する恐れがある。
また、他例として、図17は図16よりも小さい振幅の電圧指令値Vrefからゲート信号を生成した結果である。このとき、第1ユニット11ではスイッチング素子X1、V1のON時間がスイッチング素子U1、Y1のON時間に比べ短い。そのためスイッチング素子X1とスイッチング素子V1の導通損は小さくなり、熱責務のばらつきが生じる。
さらに、第1,第2ユニット11,12の出力電圧Vo1、Vo2は、図17に示すように、プラス側を出力する期間の幅とマイナス側を出力する期間の幅が一致していない。すなわち、第1,第2ユニット11,12の出力電圧Vo1、Vo2には直流のオフセットが重畳している。
例えば、図18に示すように、第1,第2ユニット11,12の直流電源13を共通とし、交流出力側を個別のトランスTr1,Tr2で絶縁して多重化する場合、図17のような出力電圧Vo1、Vo2を各トランスTr1,Tr2に印加するとトランスTr1,Tr2が偏磁し、出力電圧の大幅な減少、インバータ出力電流の急増によるスイッチング素子の破損、といった問題が生じてしまう。よって、図17のゲート信号は図18のようなトランスTr1,Tr2を持つ直列多重インバータ装置には適さない。
以上示したようなことから、直列多重インバータ装置において、各ユニット,各スイッチング素子で発生する損失を均一にすることが課題となる。
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、複数の単相インバータのユニットを直列接続して構成され、出力周波数1kHz以上の単相電圧を出力する直列多重インバータ装置であって、前記各ユニットごとに、電圧指令値と、少なくとも前記電圧指令値の半周期の間一定の値をとる2種類のゲート閾値とを比較して、スイッチング素子のゲート信号を生成するパルス幅変調回路を備え、前記ゲート閾値はすべて異なる値をとり、前記ゲート閾値を周期的に切り換え、前記ゲート閾値の切替周期は前記電圧指令値の周期の整数倍とすることを特徴とする。
また、その一態様として、前記電圧指令値のプラス側のピーク時に前記ゲート閾値を切り換えることを特徴とする。
また、その一態様として、前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットとを備え、前記第1ユニットのゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記第2ユニットのゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bは、以下の表1に示す大小関係となることを特徴とする。
Figure 0007002958000001
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
また、他の態様として、前記電圧指令値のマイナス側のピーク時に前記ゲート閾値を切り換えることを特徴とする。
また、その一態様として、前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットとを備え、前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bは、以下の表2に示す大小関係となることを特徴とする。
Figure 0007002958000002
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
また、他の態様として、前記ゲート閾値の切り換えのタイミングは、切り換え前後の前記ゲート閾値が共にプラスとなるパターンの場合、前記出力電圧指令値のマイナス側ピーク時とし、上記以外の前記ゲート閾値を切り換えるパターンの場合、前記電圧指令値のプラス側ピーク時としたことを特徴とする。
また、その一態様として、前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットを備え、前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに符号が反対の値であり、前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに符号が反対の値であり、前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vtb2a,Vth2bは、以下の表3の大小関係となることを特徴とする。
Figure 0007002958000003
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
また、他の態様として、前記ゲート閾値の切り換えのタイミングは、切り換え前の前記ゲート閾値がマイナス、かつ、最も0に近いマイナスのゲート閾値以外であれば、前記電圧指令値のプラス側ピーク時とし、切り換え前の前記ゲート閾値がプラスの値であれば、前記電圧指令値のマイナス側ピーク時とし、切り換え前の前記ゲート閾値が、最も0に近いマイナスのゲート閾値であれば、前記電圧指令値のプラス側ピーク時とする場合とマイナス側ピークとする場合が混在することを特徴とする。
また、その一態様として、前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットと第3ユニットと第4ユニットとを備え、前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに符号が反対の値であり、前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに符号が反対の値であり、前記第3ユニットの前記ゲート閾値のVth3aとVth3bは、互いに符号が反対の値であり、前記第4ユニットの前記ゲート閾値のVth4aとVth4bは、互いに符号が反対の値であり、前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2b、Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bは、以下の表4に示す大小関係となることを特徴とする。
Figure 0007002958000004
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
また、他の態様として、前記ゲート閾値の切り換えのタイミングは、切り換え前の前記ゲート閾値がプラスで、かつ、最も0に近いプラスのゲート閾値以外であれば、前記電圧指令値のマイナス側ピーク時とし、切り換え前の前記ゲート閾値がマイナスの値であれば、電圧指令値のプラス側ピーク時とし、切り換え前のゲート閾値が、最も0に近いプラスのゲート閾値であれば、前記電圧指令値のプラス側ピーク時とする場合とマイナス側ピーク時とする場合が混在していることを特徴とする。
また、その一態様として、前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットと第3ユニットと第4ユニットとを備え、前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに符号が反対の値であり、前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに符号が反対の値であり、前記第3ユニットの前記ゲート閾値のVth3aとVth3bは、互いに符号が反対の値であり、前記第4ユニットの前記ゲート閾値のVth4aとVth4bは、互いに符号が反対の値であり、前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a、Vth2b,Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bは、以下の表5に示す大小関係となることを特徴とする。
Figure 0007002958000005
p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
また、その一態様として、前記各ユニットの前記ゲート閾値にキャリア三角波を重畳させることを特徴とする。
本発明によれば、直列多重インバータ装置において、各ユニット,各スイッチング素子で発生する損失を均一にすることが可能となる。
実施形態1におけるパルス幅変調回路を示すブロック図。 実施形態1におけるゲート閾値および各波形の一例を示すタイムチャート。 実施形態1におけるゲート閾値および各波形の他例を示すタイムチャート。 電圧指令値の振幅が小さい時に、実施形態1を適用した場合の各波形を示すタイムチャート。 実施形態2におけるゲート閾値および各波形を示すタイムチャート。 電圧指令値の振幅が小さい時に、実施形態2を適用した場合の各波形を示すタイムチャート。 実施形態3における直列多重インバータ装置を示す回路構成図。 実施形態3におけるパルス幅変調回路を示すブロック図。 実施形態3におけるゲート閾値および各波形の一例を示すタイムチャート。 実施形態3におけるゲート閾値および各波形の他例を示すタイムチャート。 実施形態4におけるパルス幅変調回路を示すブロック図。 実施形態4におけるキャリア三角波と電圧指令値を示すタイムチャート。 直列多重インバータ装置を示す回路構成図。 従来技術におけるゲート閾値および各波形の一例を示すタイムチャート。 従来技術において電圧指令値の振幅が小さい時のゲート閾値および各波形の一例を示すタイムチャート。 従来技術におけるゲート閾値および各波形を示すタイムチャート。 従来技術において電圧指令値の振幅が小さい時のゲート閾値および各波形を示すタイムチャート。 各ユニットをトランスで絶縁して多重化した構成の直列多重インバータ装置を示す回路構成図。
以下、本願発明における直列多重インバータ装置の実施形態1~4を図1~図13に基づいて詳述する。
[実施形態1]
本実施形態1は、図13に示す直列多重インバータ装置を例として、各ユニット,各スイッチング素子で発生する損失を均一にする方法を説明する。まず、図13に示す直列多重インバータ装置の構成について説明する。
図13に示すように、本実施形態1における直列多重インバータ装置は、2つの第1ユニット11と第2ユニット12を備える。第1ユニット11はスイッチング素子U1,V1,X1,Y1がブリッジ接続され、第2ユニット12はスイッチング素子U2,V2,X2,Y2がブリッジ接続される。
第1ユニット11のスイッチング素子V1,Y1の共通接続点と第2ユニット12のスイッチング素子U2,X2の共通接続点が接続される。このように、各ユニットは単相インバータの構成をとっている。
スイッチング素子U1,X1の共通接続点とスイッチング素子V1,Y1の共通接続点との間を第1ユニット11の出力電圧Vo1とし、スイッチング素子U2,X2の共通接続点とスイッチング素子V2,Y2の共通接続点との間を第2ユニット12の出力電圧Vo2とする。また、第1ユニット11のスイッチング素子U1,X1の共通接続点と、第2ユニット12のスイッチング素子V2,Y2の共通接続点との間を合計出力電圧Voとする。
図1に実施形態1のパルス幅変調回路のブロック図を示す。 入力信号pは、ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に増加する信号である。入力信号pは、図2に示す波形の横軸(時間軸)に対応する。
テーブル2は、入力信号pを入力し、予め保存された入力信号pに対応したゲート閾値Vth1aを参照し、出力する。
加算器1a,1b,1cは、入力信号pに固定のオフセット値1/2,1/4,3/4をそれぞれ加算する。テーブル2は、入力信号p+1/2,p+1/4,p+3/4を入力し、入力信号p+1/2,p+1/4,p+3/4の小数点以下の数値を参照し、対応したゲート閾値Vth1b,Vth2a,Vth2bを出力する。テーブル2自体はゲート閾値Vth1aを算出するテーブル2と同一であり、入力信号のみがp,p+1/2,p+1/4,p+3/4と異なる。
Vth1a,Vth1bは第1ユニット11用のゲート閾値である。Vth2a,Vth2bは第2ユニット12用のゲート閾値である。
電圧指令値Vrefは予め振幅・周波数の決められた正弦波などが与えられる場合や、出力電圧や出力電流を指令値通りにするフィードバック制御によって得られる場合がある。
減算器3a~3dは、電圧指令値Vrefとゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bとの差をそれぞれ演算する。
比較器4a~4dは、減算器3a~3dの演算結果を入力し、0と比較する。ただし、比較器4a,4cと比較器4b,4dとで大小関係が異なる。
比較器4aは、減算器3aの演算結果が0よりも大きいとき、すなわち、Vref>Vth1aのとき1を出力し、Vref≦Vth1aのとき0を出力する。比較器4bは、減算器3bの演算結果が0よりも小さいとき、すなわち、Vref<Vth1bのとき1を出力し、Vref≧Vth1bのとき0を出力する。比較器4cは、減算器3cの演算結果が0よりも大きいとき、すなわち、Vref>Vth2aのとき1を出力し、Vref≦Vth2aのとき0を出力する。比較器4dは、減算器3dの演算結果が0よりも小さいとき、すなわち、Vref<Vth2bのとき1を出力し、Vref≧Vth2bのとき0を出力する。
デッドタイム処理器5a~5dは、比較器4a~4dの出力を入力とし、デッドタイムを付加してゲート信号GU1,GX1,GV1,GY1,GU2,GX2,GV2,GY2を生成する。なお、GU1、GX1、GV1、GY1、GU2、GX2、GV2、GY2は、図13のスイッチング素子U1、X1、V1、Y1、U2、X2、V2、Y2のゲート信号である。
本実施形態1におけるテーブルの内容を図2,図3に示す。図2,図3では、横軸を入力信号p,縦軸を出力するゲート閾値Vthとしている。入力信号pに対応するゲート閾値Vth1aを太い実線で、入力信号p+0.5に対応するゲート閾値Vth1bを破線で示している。同様に、入力信号p十0.25に対応するゲート閾値Vth2aを太い実線で、入力信号p+0.75に対応するゲート閾値Vth2bを破線で示している。
図2,図3の波形では、0<p<1の範囲を示している。入力信号pが範囲外の場合でも、nが整数ならばゲート閾値Vthの波形はVth(n+p)=Vth(p)が成立する周期性のあるものである。
図2,図3では、Vth1a=-Vth1b,Vth2a=-Vth2bの関係にある。
下記の表1は、図2において電圧指令値Vrefの周期と、各ゲート閾値の大小関係を示した表である。
Figure 0007002958000006
図2や表1からわかるように、各ゲート閾値は少なくとも電圧指令値Vrefの1周期の間一定の値をとっている。
本実施形態1は、ゲート信号生成のために電圧指令値Vrefと比較するゲート閾値Vth1a、Vth1b、Vth2a、Vth2bを周期的に変化させることで、ゲート信号を他のユニットのものに切り替え、ユニットで生じる損失を均一にするものである。
図2に、本実施形態1によって得られる各スイッチング素子のゲート信号GU1、GX1、GV1、GY1、GU2、GX2、GV2、GY2、ユニットの出力電圧Vo1、Vo2を併せて示す。各ゲート信号が1のとき、対応するスイッチング素子がON状態となる。各ゲート信号が0のとき、対応するスイッチング素子がOFF状態となる。
導通損の責務均等化について説明する。図2ではゲート閾値Vth1aとゲート閾値Vth1bの大小関係が周期的に反転している。Vth1a>Vth1bである図2の両端ではスイッチング素子X1、Y1のON期間が長く、Vth1a<Vth1bである図2の中央(p=4/8)付近ではスイッチング素子U1、V1のON期間が長い。
基本波8周期の平均では、すべてのスイッチング素子のON時間が等しくなり、これによりスイッチング素子で発生する導通損を揃えることができる。
次にスイッチング損について説明する。スイッチング素子U1のターンONについて着目すると、出力電流Ioがピーク付近でのターンONが4回、ある程度小さくなったところでのターンONが2回、零付近でのターンONが2回である。
スイッチング素子Y2についても同様に確認すると、出力電流Ioがピーク付近でターンONが4回、ある程度小さくなったところでのターンONが2回、零付近でのターンONが2回であり、基本波8周期の間において、スイッチング素子U1とほぼ同じ大きさの電流をスイッチングしていることがわかる。これは、すべてのスイッチング素子について、またターンOFFについても同様である。
出力電圧の基本波1周期の単位でスイッチングするスイッチング素子を入れ替えているため、特定のスイッチング素子が特定の位相でのみスイッチングすることを避けることができる。電圧指令値Vref、出力電流Ioの波形が変化しなければ、任意の電圧指令値Vref、出力電流Ioでスイッチング損失を揃えることができる。
本実施形態1では、図2に示すように、任意の8周期において各スイッチング素子で発生する損失は等しくなるが、特定の1周期のみ抽出すると各スイッチング素子の損失はばらつく。しかし、スイッチング素子や冷却機構にはある程度の熱容量があり、基本波1周期間での温度上昇のばらつきはこの熱容量で吸収されるためほとんど発生しない。
ある程度長い周期におけるスイッチング素子での発生損失を均一にすれば、各スイッチング素子の温度上昇を揃えることができ、温度脈動も小さくすることができる。
また、本実施形態1には各ユニットの有効電力責務を均等化する効果もある。出力電圧Vo1,Vo2を見ると狭いパルス幅(網掛け部)と広いパルス幅(黒色部)が2周期ごとに現れている。
狭いパルス幅では合計出力電圧Voと出力電流Ioの極性が等しく、有効電力のみが出力されている。広いパルス幅では有効電力(黒色部)だけでなく無効電力(斜線部)も出力され、出力される有効電力は広いパルス幅の方が大きい。
このため、特定の1周期では有効電力責務はばらつく。しかし、電圧のパルス幅が周期的に切り替わるため、出力される電力も切り替わり、8周期の平均では各ユニットの有効電力責務を均等にすることができる。
通常、インバータではスイッチングサージ吸収や動作の安定化のため直流側にある程度の容量のコンデンサを接続する。そのため、短い周期の電力脈動であればコンデンサによって吸収できる。本実施形態1では、コンデンサでは吸収できない長い周期の電力脈動を抑制することができる。これにより、各ユニットに入力する直流電力の責務を均等にすることができる。
本実施形態1は電圧指令値Vrefの8周期をゲート閾値の切替周期としているが、この周期は変更することができる。(ただし、ゲート閾値の切替周期は電圧指令値Vrefの周期の整数倍とする。)電圧指令値Vrefの周波数が高く、温度脈動が問題にならない場合やインバータに十分大きな容量の直流コンデンサを接続している場合はゲート閾値の切替周期を長くしてもよい。
図4に電圧指令値Vrefの振幅が小さいときに、実施形態1を適用した場合を示す。図17とは異なり、出力電圧Vo1、Vo2に直流のオフセットは生じない。そのため、本実施形態1は図18のように第1,第2ユニット11,12をトランスTr1,Tr2で多重化した構成にも適用することができる。
さらに、本実施形態1では図18の構成におけるトランスTr1,Tr2の磁束密度が小さくなるという特長もある。図4の最下段に出力電圧Vo1の積分結果∫Vo1dtを示す。積分結果∫Vo1dtはプラス側とマイナス側に均等に振れ絶対値が小さい。積分結果∫Vo1dtはトランスTr1,Tr2の磁束密度に比例するため、トランスTr1,Tr2の磁束密度が小さくなることを示している。磁束密度が小さければ、トランスTr1,Tr2の鉄心断面積を小さくしてもトランスTr1,Tr2が偏磁しにくくなり、トランスTr1,Tr2のコスト・重量・体積を小さくすることができる。
図2、図4では、電圧指令値Vrefのプラス側ピーク時にゲート閾値を変化させている。電圧指令値Vrefのマイナス側ピーク時にゲート閾値を変化させてもよい。図3がその例である。
図3では、ゲート閾値Vth1a=-Vth1b、Vth2a=-Vth2bの関係にある。下記の表2は、図3において電圧指令値Vrefの周期と各ゲート閾値の大小関係を示した表である。
Figure 0007002958000007
以上示したように、本実施形態1によれば、 各ユニット、各スイッチング素子で発生する損失を均一にすることができる。これにより装置の熱設計が容易になり、また負荷変動時に特定のユニットのみ温度が大きく変動するといった事態がなくなるため、スイッチング素子やユニットの熱疲労を抑制することができる。
これにより、インバータ装置を長寿命化できる。さらに、損失の均―化によって、損失の小さいユニットに対しての過剰設計がなくなり、インバータ装置の低コスト化、小型化を図ることが可能となる。
また、各ユニットの有効電力責務を均一にすることもできる。さらに、各ユニットの出力電圧Vo1,Vo2に直流オフセットを含まないため、図18のように直流電源13を共通化して第1,第2ユニット11,12の交流側出力にトランスTr1,Tr2を接続し多重化した構成において、トランスTr1,Tr2の偏磁を抑制し、トランスTr1,Tr2のコスト・重量を低減することができる。
[実施形態2]
図5に、本実施形態2によって得られる各スイッチング素子の状態、各ユニットの出力電圧Vo1、Vo2を示す。図2との違いは、ゲート閾値が変化するときの入力信号pに一部差があるのみである。
本実施形態2は、実施形態1とはゲート閾値を変化させるタイミングが異なる。ゲート閾値の変化前・変化後の値が両方ともプラスの場合、電圧指令値Vrefのプラス側ピーク時ではなくマイナス側ピーク時でゲート閾値を変化させている。
それ以外の場合は、電圧指令値Vrefのプラス側ピーク時にゲート閾値を切り替えている。
以下の表3は、図5において電圧指令値Vrefの周期と各ゲート閾値の大小関係を示した表である。
Figure 0007002958000008
図5や表3からわかるように、各ゲート閾値は少なくとも電圧指令値Vrefの半周期の間一定の値をとっている。
実施形態1に比べて各スイッチング素子のスイッチングタイミングと第1,第2ユニット11,12の出力電圧Vo1、Vo2は異なるが、合計出力電圧Voの波形は同じものが得られる。本実施形態2においても実施形態1と同様に各スイッチング素子、各ユニットで発生する損失の均等化、ユニット出力電力の均等化の効果が得られる。
本実施形態2は、電圧指令値Vrefの振幅が小さいときに実施形態1よりもスイッチング損失を低減できる特徴がある。図6に電圧指令値Vrefの振幅が小さい場合の各スイッチング素子の状態、第1,第2ユニット11,12の出力電圧Vo1,Vo2を示す。実施形態1では、図4に示すようにゲート閾値Vthを変化させる時にゲート閾値と電圧指令値Vrefが交差してしまうことがある(例:A点)。
しかし、本実施形態2では図6に示すように、ゲート閾値の変化前・変化後の値が両方ともプラスの場合は電圧指令値Vrefがマイナス側ピーク時に変化させるため、ゲート閾値が変化するタイミングで電圧指令値Vrefとゲート閾値が交差しない。
図6では図4に比べて各スイッチング素子のスイッチング回数が減少していることを確認できる。図4では10回、図6では8回である。スイッチング回数が減少すればスイッチング損失も下がるため、本実施形態2は実施形態1よりも効率を向上させることができる。
しかしながら、図18のような第1,第2ユニット11,12をトランスTr1,Tr2で多重化した構成の場合、本実施形態2は実施形態1よりもトランスTr1,Tr2が飽和しやすくなるという問題がある。図6の最下段に出力電圧Vo1の積分結果∫Vo1dtを示す。図4とは異なり積分結果∫Vo1dtはマイナス側にだけ振れ、絶対値が図4のものよりも大きくなっている。これは、トランスTr1,Tr2の磁束密度が2倍に増加することを示している。
トランスTr1,Tr2の偏磁を防ぐためには、実施形態1に比べてトランスTr1,Tr2の鉄心断面積を2倍にしなければならない。ただし、図13のようにトランスTr1,Tr2を使用せず、第1,第2ユニット11,12を直接多重接続する構成ならば、問題なく適用することができ、スイッチング損失の低減の効果を得られる。
以上示したように、本実施形態2によれば、 実施形態1と同様の作用効果を奏する。また、ゲート閾値の切り替えを行ってもスイッチング回数が増加しないため、実施形態1に比べてスイッチング損失を小さくすることができ、さらなる長寿命化を図ることができる。さらに、トランスTr1,Tr2を使用しない構成においては、インバータ装置の低コスト化、小型化を図ることができる。
[実施形態3]
図7に本実施形態3の1相あたりの主回路構成図を示す。本実施形態3は単相インバータの第1~第4ユニット11~14を4多重接続に拡張したものである。
図8に本実施形態3の制御ブロック図を示す。実施形態1と同様の箇所は同一符号を付してその説明を省略する。
加算器1d,1e,1f,1gは、入力信号pに1/8,5/8,3/8,7/8をそれぞれ加算する。テーブル2は、入力信号p+1/8,p+5/8,p+3/8,p+7/8を入力し、入力信号p+1/8,p+5/8,p+3/8,p+7/8の小数点以下の数値を参照し、対応したゲート閾値Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bを出力する。
減算器3e~3hは、電圧指令値Vrefとゲート閾値Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bとの差を演算する。比較器4e~4hは、減算器3e~3hの演算結果を入力し、0と比較する。ただし、比較器4e,4gと比較器4f,4hとで大小関係が異なる。
比較器4eは、減算器3eの演算結果が0よりも大きいとき、すなわち、Vref>Vth3aのとき1を出力し、Vref≦Vth3aのとき0を出力する。比較器4fは、減算器3fの演算結果が0よりも小さいとき、すなわち、Vref<Vth3bのとき1を出力し、Vref≧Vth3bのとき0を出力する。比較器4gは、減算器3gの演算結果が0よりも大きいとき、すなわち、Vref>Vth4aのとき1を出力し、Vref≦Vth4aのとき0を出力する。比較器4hは、減算器3hの演算結果が0よりも小さいとき、すなわち、Vref<Vth4bのとき1を出力し、Vref≧Vth4bのとき0を出力する。
デッドタイム処理器5e~5hは、比較器4e~4hの出力を入力とし、デッドタイムを付加してゲート信号GU3,GX3,GV3,GY3,GU4,GX4,GV4,GY4を生成する。なお、GU3、GX3、GV3、GY3、GU4、GX4、GV4、GY4は、図7のスイッチング素子U3、X3、V3、Y3、U4、X4、V4、Y4のゲート信号である。
本実施形態3におけるテーブルの内容を図9,図10に示す。ユニットが4台に増加したため出力するゲート閾値Vthも8つの値をとる。これら8つの値を入力信号pに応じて周期的に切り替え、ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2b,Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bとして出力する。
図9,図10では、ゲート閾値Vth1a,Vth2a,Vth3a,Vth4aを実線,ゲート閾値Vth1b,Vth2b,Vth3b,Vth4bを破線で示している。
本実施形態3は、実施形態2を第1~第4ユニット11~14の4多重接続に拡張したものである。拡張する場合は電圧指令値Vrefと比較するゲート閾値の数が増加するため、それに併せてテーブルを図9,図10のように変更すれば対応することができる。
本実施形態3は4多重接続のため、ゲート閾値は8個となる。図9、図10は8個のゲート閾値を周期的に変化させるテーブルの一例である。なお、図9,図10において、ゲート信号は、代表として第1ユニット11のゲート信号GU1、GX1、GV1、GY1のみを示している。
図9のテーブルは、切り替え前のゲート閾値Vthの符号がマイナスで、かつ、最大のマイナスの値Vth-max以外ならば、電圧指令値Vrefがプラス側ピークのタイミングでゲート閾値Vthが切り替わる。ここでの最大のマイナスの値Vth-maxとは、図9に示すように、最も0に近いマイナスのゲート閾値のことである。
切り替え前のゲート閾値Vthの符号がプラスならば、電圧指令値Vrefがマイナス側ピークのタイミングでゲート閾値Vthが切り替わる。
切り替え前のゲート閾値Vthが最大のマイナスの値Vth-maxの場合は、電圧指令値Vrefがプラス側ピークのタイミングでゲート閾値Vthが切り替わる場合と、電圧指令値Vrefがマイナス側ピークのタイミングでゲート閾値Vthが切り替わる場合とが混在する。その例を示す。
図9のA点では、電圧指令値Vrefがプラス側ピークのタイミングで太線のゲート閾値Vth1aがVth-maxから変化している。図12のB点では、電圧指令値Vrefがマイナス側ピークのタイミングで太線のゲート閾値Vth1aがVth-maxから変化している。
下記の表4は、図9において、電圧指令値Vrefの周期と各ゲート閾値の関係を示した表である。
Figure 0007002958000009
図10のテーブルは、切り替え前のゲート閾値Vthの符号がプラスで、かつ、最小のプラスの値Vth+min以外ならば、電圧指令値Vrefがマイナス側ピークのタイミングでゲート閾値Vthが切り替わる。ここでの最小のプラスの値Vth+minとは、図10に示すように、最も0に近いプラスのゲート閾値のことである。
切り替え前のゲート閾値Vthの符号がマイナスであれば、電圧指令値Vrefがプラス側ピークのタイミングでゲート閾値Vthが切り替わる。切り替え前のゲート閾値Vthが最小のプラスの値Vth+minの場合は、電圧指令値Vrefがプラス側ピークのタイミングでゲート閾値Vthが切り替わる場合と、電圧指令値Vrefがマイナス側ピークのタイミングでゲート閾値Vthが切り替わる場合とが混在する。
その例を示す。図10のA点では、電圧指令値Vrefがマイナス側ピークのタイミングで太線のゲート閾値Vth1aがVth+minから変化している。図10のB点では、電圧指令値Vrefがプラス側ピークのタイミングで太線のゲート閾値Vth1aがVth+minから変化している。
下記の表5は、図10において、電圧指令値Vrefの周期と各ゲート閾値の大小関係を示した表である。
Figure 0007002958000010
この切り替え動作によって、実施形態2と同様にゲート閾値の切り替えでスイッチングが発生しないようにした。
また、図9,図10では、ゲート閾値の切り替え時にゲート閾値を一部2段変化させている(例:図9のC点)。これにより、ゲート閾値が切り替わる間隔は、基本的に、実施形態1、2同様、電圧指令値Vrefの1周期に保ち、かつ、インバータのユニット直列数が2倍(2直列→4直列)に増加しても、ゲート閾値の切替1周期を電圧指令値Vrefの8周期に抑えることができる。
この効果として、ユニット増加時のゲート閾値の切り替え1周期にかかる時間を短くし、各ユニット・各スイッチング素子の温度上昇のばらつきを小さくすることができる。また、ユニットの出力電力責務の変動周期も短くすることができる。
ただし、1段変化させる場合に比べてゲート切り替え時の出力電圧パルス幅の変化は大きくなり、トランスが偏磁しやすくなる。このような場合、実施形態1と同様にゲート閾値Vthを切り替えるタイミングを電圧指令値Vrefのプラス側ピークで統一することで偏磁を抑制することができる。
本実施形態3はユニットの4多重接続であるが、同様の拡張を行うことにより多重数を増加することができる。多重数をnとすると、図8の左下の加算器(図8では1a~1g)に加算するオフセット値は、1/2n,2/2n,…,(2n-1)/2nとなる。(ただし、この順番ではない。)
以上示したように、本実施形態3によれば、各ユニット,各スイッチング素子で発生する損失を均一にすることができる。
また、本実施形態3により熱責務変動の周期を短くすることができ、各ユニット,各スイッチング素子の温度変動の大きさを小さくすることができる。このため、実施形態1や実施形態2に比べ、熱疲労を抑制する効果が高く、さらなる長寿命化ができる。
[実施形態4]
図11に本実施形態4の制御ブロックを示す。実施形態1と同様の箇所は同一の符号を付してその説明を省略する。
キャリア三角波発生器6は、キャリア三角波を出力する。加算器7a~7dは、テーブル2から出力されたゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bにキャリア三角波を加算する。加算器7a~7dの出力はオフセットが重畳されたキャリア三角波c1a,c1b,c2a,c2bとなり、電圧指令値Vrefとの差を演算する減算器3a~3dに入力される。
本実施形態4のテーブル2は、図2に示す実施形態1のテーブルと同一のものを使用する。
本実施形態4は、ゲート信号生成のための比較用信号として、実施形態1に示す固定値ではなく、特許文献1に示すキャリア三角波を用いた方式である。
本実施形態4は、実施形態1~3と比較して出力電圧をより正弦波に近づけることができ、高調波電圧を抑制できる。そのため、図13や図7の直列多重インバータ装置の出力に高調波除去用のLCフィルタを接続する必要がなくなる。もしくは、LCフィルタを小型化することができる、
図12に本実施形態4で得られるキャリア三角波c1aの波形を示す。キャリア三角波に重畳するオフセットを周期的に切り替えることで、実施形態1同様に各ユニット・各スイッチング素子の熱責務を均等にすることができる。
以上示したように、本実施形態4によれば、キャリア三角波を使用してゲート信号を生成する場合、各ユニット、各スイッチング素子で発生する損失を均一にすることができ、実施形態1と同じ効果を得ることができる。
また、実施形態2と組み合わせ、重畳するオフセットを変更してスイッチング回数の増加を抑制することができる。また、実施形態3と組み合わせ3台以上のユニットを直列接続した構成にも対応することができる。
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
Vref…電圧指令値
Vth1a~Vth4b…ゲート閾値
Vo1,Vo2…出力電圧
Vo…合計出力電圧
Io…出力電流

Claims (11)

  1. 複数の単相インバータのユニットを直列接続して構成され、出力周波数1kHz以上の単相電圧を出力する直列多重インバータ装置であって、
    前記各ユニットごとに、電圧指令値と、少なくとも前記電圧指令値の半周期の間一定の値をとる2種類のゲート閾値とを比較して、スイッチング素子のゲート信号を生成するパルス幅変調回路を備え、
    前記ゲート閾値はすべて異なる値をとり、
    前記ゲート閾値を周期的に切り換え、
    前記ゲート閾値の切替周期は前記電圧指令値の周期の整数倍とし、
    前記電圧指令値のプラス側のピーク時に前記ゲート閾値を切り換えることを特徴とする直列多重インバータ装置。
  2. 前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットとを備え、
    前記第1ユニットのゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
    前記第2ユニットのゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
    前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bは、以下の表1に示す大小関係となることを特徴とする請求項1記載の直列多重インバータ装置。
    Figure 0007002958000011
    p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
  3. 複数の単相インバータのユニットを直列接続して構成され、出力周波数1kHz以上の単相電圧を出力する直列多重インバータ装置であって、
    前記各ユニットごとに、電圧指令値と、少なくとも前記電圧指令値の半周期の間一定の値をとる2種類のゲート閾値とを比較して、スイッチング素子のゲート信号を生成するパルス幅変調回路を備え、
    前記ゲート閾値はすべて異なる値をとり、
    前記ゲート閾値を周期的に切り換え、
    前記ゲート閾値の切替周期は前記電圧指令値の周期の整数倍とし、
    前記電圧指令値のマイナス側のピーク時に前記ゲート閾値を切り換えることを特徴とする直列多重インバータ装置
  4. 前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットとを備え、
    前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
    前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに絶対値が等しく符号が反対の値であり、
    前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2bは、以下の表2に示す大小関係となることを特徴とする請求項3記載の直列多重インバータ装置。
    Figure 0007002958000012
    p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
  5. 複数の単相インバータのユニットを直列接続して構成され、出力周波数1kHz以上の単相電圧を出力する直列多重インバータ装置であって、
    前記各ユニットごとに、電圧指令値と、少なくとも前記電圧指令値の半周期の間一定の値をとる2種類のゲート閾値とを比較して、スイッチング素子のゲート信号を生成するパルス幅変調回路を備え、
    前記ゲート閾値はすべて異なる値をとり、
    前記ゲート閾値を周期的に切り換え、
    前記ゲート閾値の切替周期は前記電圧指令値の周期の整数倍とし、
    前記ゲート閾値の切り換えのタイミングは、
    変化前後の前記ゲート閾値が共にプラスとなるパターンの場合、前記出力電圧指令値のマイナス側ピーク時とし、
    上記以外の前記ゲート閾値を切り換えるパターンの場合、前記電圧指令値のプラス側ピーク時としたことを特徴とする直列多重インバータ装置。
  6. 前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットを備え、
    前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vtb2a,Vth2bは、以下の表3の大小関係となることを特徴とする請求項5記載の直列多重インバータ装置。
    Figure 0007002958000013
    p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
  7. 複数の単相インバータのユニットを直列接続して構成され、出力周波数1kHz以上の単相電圧を出力する直列多重インバータ装置であって、
    前記各ユニットごとに、電圧指令値と、少なくとも前記電圧指令値の半周期の間一定の値をとる2種類のゲート閾値とを比較して、スイッチング素子のゲート信号を生成するパルス幅変調回路を備え、
    前記ゲート閾値はすべて異なる値をとり、
    前記ゲート閾値を周期的に切り換え、
    前記ゲート閾値の切替周期は前記電圧指令値の周期の整数倍とし、
    前記ゲート閾値の切り換えのタイミングは、
    切り換え前の前記ゲート閾値がマイナス、かつ、最も0に近いマイナスのゲート閾値以外であれば、前記電圧指令値のプラス側ピーク時とし、
    切り換え前の前記ゲート閾値がプラスの値であれば、前記電圧指令値のマイナス側ピーク時とし、
    切り換え前の前記ゲート閾値が、最も0に近いマイナスのゲート閾値であれば、前記電圧指令値のプラス側ピーク時とする場合とマイナス側ピークとする場合が混在することを特徴とする直列多重インバータ装置。
  8. 前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットと第3ユニットと第4ユニットとを備え、
    前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記第3ユニットの前記ゲート閾値のVth3aとVth3bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記第4ユニットの前記ゲート閾値のVth4aとVth4bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a,Vth2b、Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bは、以下の表4に示す大小関係となることを特徴とする請求項7記載の直列多重インバータ装置。
    Figure 0007002958000014
    p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
  9. 複数の単相インバータのユニットを直列接続して構成され、出力周波数1kHz以上の単相電圧を出力する直列多重インバータ装置であって、
    前記各ユニットごとに、電圧指令値と、少なくとも前記電圧指令値の半周期の間一定の値をとる2種類のゲート閾値とを比較して、スイッチング素子のゲート信号を生成するパルス幅変調回路を備え、
    前記ゲート閾値はすべて異なる値をとり、
    前記ゲート閾値を周期的に切り換え、
    前記ゲート閾値の切替周期は前記電圧指令値の周期の整数倍とし、
    前記ゲート閾値の切り換えのタイミングは、
    切り換え前の前記ゲート閾値がプラスで、かつ、最も0に近いプラスのゲート閾値以外であれば、前記電圧指令値のマイナス側ピーク時とし、
    切り換え前の前記ゲート閾値がマイナスの値であれば、電圧指令値のプラス側ピーク時とし、
    切り換え前のゲート閾値が、最も0に近いプラスのゲート閾値であれば、前記電圧指令値のプラス側ピーク時とする場合とマイナス側ピーク時とする場合が混在していることを特徴とする直列多重インバータ装置。
  10. 前記単相インバータとして、第1ユニットと第2ユニットと第3ユニットと第4ユニットとを備え、
    前記第1ユニットの前記ゲート閾値のVth1aとVth1bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記第2ユニットの前記ゲート閾値のVth2aとVth2bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記第3ユニットの前記ゲート閾値のVth3aとVth3bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記第4ユニットの前記ゲート閾値のVth4aとVth4bは、互いに符号が反対の値であり、
    前記ゲート閾値Vth1a,Vth1b,Vth2a、Vth2b,Vth3a,Vth3b,Vth4a,Vth4bは、以下の表5に示す大小関係となることを特徴とする請求項9記載の直列多重インバータ装置。
    Figure 0007002958000015
    p:ゲート閾値の切替周期で0から1に徐々に変化する値
  11. 前記各ユニットの前記ゲート閾値にキャリア三角波を重畳させることを特徴とする請求項1~10のうち何れかに記載の直列多重インバータ装置。
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