本発明の実施の形態を以下図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。本実施の形態のプラズマ処理装置500は、チャンバである真空容器100の内部に配置された処理室101内にマイクロ波の電界およびマイクロ波の周波数に対応した磁界を供給し、処理室101内に供給された処理用のガスを励起して電離、解離させてプラズマを形成し、処理室101内に配置された試料台112上に保持された試料をエッチング処理する装置である。特に、マイクロ波の電界と磁界とによりECR(Electron Cyclotron Resonance)を生起してプラズマを形成する技術である。本実施の形態では、処理対象として試料台112上に保持される上記試料が、ウエハ(半導体ウエハ)128などの基板状の試料の場合を説明する。
本実施の形態のプラズマ処理装置500は、真空容器100と、その上方および側壁外側の周囲に配置され、かつ真空容器100内の試料を処理するための空間である処理室101内に電界または磁界を形成して供給する電磁界供給部と、真空容器100の底面の下方に配置され、かつ真空容器100の底面に配置されて処理室101内と排気開口を介して連通された排気装置と、を備えている。なお、上記排気装置は、処理室101内のプラズマやガスの粒子を排気するターボ分子ポンプ120を含む装置である。
また、真空容器100の側壁は、別の真空容器であって、処理対象の試料であるウエハ128が減圧された内部の空間である搬送室125内を搬送される真空搬送容器の側壁と接続されており、処理室101と搬送室125とが連結されている。
そして、搬送室125の内部には、ウエハ128がその先端に載せられて保持される収縮または伸長するアームを有し、かつ上記アームの動作によりウエハ128を搬送室125と処理室101との間で搬送する搬送用ロボット127が配置されている。さらに、搬送室125の内部には、搬送室125と処理室101との間を連通し、かつ搬送用ロボット127のアーム上に載せられたウエハ128が内部を通過する通路を開放あるいは気密に閉塞して連通、遮断するゲートバルブ126が配置されている。
真空容器100の内部に配置された処理室101では、プラズマ処理の際には、内部が減圧されてプラズマが生成される。そして、処理室101は、円筒形を有した真空容器100の側壁に周囲を囲まれた空間である放電部を含んでいる。処理室101の放電部の上方の真空容器100の上部には、処理室101の上方を覆う円板状の石英などからなる誘電体製の部材である石英プレート105が配置されている。そして、外周縁部の下面が真空容器100の円筒形状の側壁の上端の上方にOリングなどのシール部材を間に挟んで載せられて真空容器100と接続され、真空容器100の一部を構成して処理室101の内外を気密に封止する。
石英プレート105の上方の円筒形の真空容器100の側壁の外部の外周側には、真空容器100をリング状に囲んで配置され、かつ処理室101内に供給される磁界を形成する複数段のソレノイドコイル109が配置されている。
処理室101の放電部の下方には、ウエハ128などの被処理対象である基板状の試料をその上面に載置する試料台112が、処理室101の底面の上方ですき間をあけて配置されている。試料台112の上面の上方の放電部には処理室101内に供給された処理用ガスを用いてプラズマが生成される。そして、プラズマの粒子およびウエハ128の上方で処理中に形成された反応生成物は、試料台112の側壁と処理室101を囲む側壁との間のすき間と、試料台112の底面および上記排気開口の間の空間と、を通して上記排気開口から処理室101外に排出される。
一方、処理室101の放電部の上方には、石英などの誘電体で構成され、かつ真空容器100の上部の蓋部材を構成する石英プレート105と、上記蓋部材の下方に所定の高さの微小隙間103を有して配置され、かつ処理室101の天井面を構成するシャワープレート102と、が配置されている。本実施の形態の微小隙間103は、円板または円筒形状の空間であり、この空間の下方にシャワープレート102が配置されている。円板形状を有したシャワープレート102の中央部には複数の貫通孔が円形の範囲に配置されている。
また、処理室101の放電部の外周を囲む箇所には、真空容器100の上部の側壁を構成する円筒形状を有した側壁部材111が備えられている。側壁部材111の上端と石英プレート105の外周縁部の下面の間であって、シャワープレート102の外周側にはこれをリング状に囲んだガスリング104が配置されている。側壁部材111は、ガスリング104の下面およびシャワープレート102の外周縁とOリングなどのシール部材を挟んで配置され、かつプラズマが生成される処理室101の内部と外部との間を気密に区画している。
ガスリング104には、微小隙間103に希ガスあるいは処理用のガスを供給するためのガス通路が備えられており、ガスリング104は、ガス供給配管124を介してガス貯留槽などのガス供給源123と連結されている。ガス供給源123から流出したガスは、ガス供給配管124およびガスリング104内のガス通路を介して微小隙間103に所定の流量または速度で流入してその内部で分散する。そして、シャワープレート102の貫通孔を通り処理室101に上方から分散して流入する。
真空容器100の上方の電磁界供給部は、真空容器100の上面および側壁面を外側から囲むソレノイドコイル109と、石英プレート105の上方に配置され、かつ内部をマイクロ波の電界が伝播する導波管107とを備えている。導波管107は、その軸が上下方向に延びて横断面が円形を有した円筒形の円形導波管と、ソレノイドコイル109の上方まで伸びた上記円形導波管の上端部と、その一端部が連結されて軸が水平方向に延びる縦断面が矩形または方形状を有した方形導波管と、を含んでいる。そして、上記方形導波管の他端側部分には、マイクロ波の電界を発振して形成する高周波電源110が配置されており、高周波電源110と、上記円形導波管と連結される上記方形導波管の一端部と、の間には図示しないアイソレータと整合器108が配置されている。
上記円形導波管の下端部と石英プレート105との間には、導波管107と同じ金属製の部材で構成された円筒形状の空間を内部に有する共振空間である空洞部106が配置されている。上記円形導波管の径は空洞部106の内部空間の径より小さく形成され、石英プレート105とその径が略同一に形成されている。
高周波電源110で発振されて上記方形導波管の他端部内で形成されたマイクロ波の電界は、アイソレータと整合器108部を経由して方形導波管内を伝播してその一端部で下向きに向きを代えて円形導波管内を伝播する。その後、円形導波管の下端部を通り空洞部106内に導入されて、その内部で所定のモードの電界が形成された後、石英プレート105およびシャワープレート102を透過して処理室101内に上方から導入される。
ここで、処理室101の放電部の下方に配置された試料台112は円筒形状を有している。試料台112の円形またはこれと見做せる程度に近似した形状を有した上面は、誘電体製の膜(誘電体膜)によって被覆されており、後述の通り、この誘電体製の膜の内部には膜状のヒータ(後述する図2に示すヒータ膜202)が複数個配置されている。このヒータ膜202にはヒータ用直流電源133が接続され、このヒータ用直流電源133から供給された電力によりヒータ膜202が発熱する。
ヒータ膜202の上方のウエハ128の載置面を構成する誘電体製の部材(静電吸着部材)の内部には、ウエハ128を誘電体製の膜(誘電体膜)の表面に吸着させる静電気力を生起するための膜状の電極(後述する図2に示す電極膜204)が配置されている。この膜状の電極は、直流電源114と電気的に接続されて直流電圧が印加され、上記誘電体製の部材の内部に電荷が生成、蓄積されて、上記誘電体製の膜が構成する試料台112の載置面の上方に載せられたウエハ128を、上記誘電体製の膜の方向に静電気で吸着する。
さらに、この膜状の電極は、高周波バイアス電源117と電気的に接続されている。処理室101の放電部内にプラズマが形成され、さらにウエハ128が処理されている最中に高周波バイアス電源117から供給された高周波電力が、上記膜状の電極に印加されることでウエハ128の上面の上方にバイアス電位が形成される。そして、この電位とプラズマの電位との間の電位差に応じてウエハ128の表面にプラズマ中の荷電粒子が誘引されウエハ128の表面に衝突することにより、エッチング処理の反応が促進される。
なお、試料台112は、内部に円板または円筒形状を有した金属製の部材である基材(後述する図2に示す基材200)が配置されている。さらに、この基材の内部にはその上下方向の軸回りに同心円状または螺旋状に多重に配置された図示しない冷媒流路が配置されており、この冷媒流路は、冷媒の温度を所定の範囲内の値に調節する機能を備えた温調ユニット115と配管を介して連結されている。温調ユニット115において温度または流量(速度)が所定の範囲内の値に調節された冷媒は、上記配管を通して冷媒流路に導入されて通流して冷媒流路から排出されるまでの間に上記基材を介して試料台112またはその上面上のウエハ128と熱的に接続されてこれらと熱交換する。これにより、試料台112の誘電体膜内のヒータ膜202による発熱と冷媒の熱交換と併せて、試料台112曳いてはウエハ128の温度が処理に適切な範囲内の値に調節される。
また、試料台112とウエハ128との間の熱伝達を向上するために、ウエハ128が試料台112の上面の載置面上に載せられた状態で誘電体膜の上面とウエハ128の裏面との間のすき間にHe(ヘリウム)などの熱伝達性のガスが供給される。そして、熱伝達性のガスのすき間内での拡散あるいは分散を促進するため、誘電体製の膜の上面にはその内側を熱伝達性のガスが流れる溝状の凹みであるガス流路113が配置されている。熱伝達性ガスは、熱伝達性ガス供給源116から熱伝達性ガス供給配管131を介して誘電体製の膜の上面に供給され、ウエハ128と誘電体製の膜の上面との間のすき間をガス流路113を介して分散し拡散する。また、熱伝達性ガスの圧力は、熱伝達性ガス供給配管131に接続され、かつ分岐した配管131aの端部の圧力計132により計測され、熱伝達性ガス供給配管131あるいは上記すき間の内部の圧力が検知される。
なお、試料台112の上部の載置面の外周側には、プラズマによるスパッタやエッチングから試料台112を保護するために、セラミクスなどの誘電体製のリング状の部材であるサセプタリング129が、載置面の外周を囲んで形成された凹み部上に載せられて配置されている。サセプタリング129の材料としては、石英、アルミナ、イットリアなどを使用することができる。
真空容器100の下方には、処理室101を所望の真空度まで排気して減圧する排気装置が配置されている。上記排気装置は、処理室101の試料台112の直下の底面に配置された円形の排気用開口に対して上下に移動して開放または気密に閉塞する排気ゲートプレート118と、上記排気用開口から処理室101内のガスやプラズマ、反応生成物の粒子を排気するターボ分子ポンプ120と、を備えている。さらに、上記排気装置は、排気用開口の下方でこれとターボ分子ポンプ120との間を連結する排気通路上に配置されたコンダクタンス可変バルブ119を備えている。コンダクタンス可変バルブ119は、流路面積を可変に増減することができるバルブである。ターボ分子ポンプ120の出口に連結された排気配管121の下流側にはロータリーポンプなどの粗引き用の排気ポンプ122が配置され両者が連通されている。
処理室101から上記排気用開口を通り排出された反応生成物などの処理室101内の粒子は、コンダクタンス可変バルブ119を通りターボ分子ポンプ120から排気される。ターボ分子ポンプ120の出口から排気された粒子は排気配管121を介して排気ポンプ122に流入し、プラズマ処理装置500が設置された建屋に配置された排気用の管路を通して排気される。なお、真空容器100には処理室用圧力計130が配置されており、処理室101内の圧力を示す処理室用圧力計130の出力は、プラズマ処理装置500の図示しない制御装置であるコントローラに送信される。
さらに、高周波電源110、直流電源114、高周波バイアス電源117、排気ゲートプレート118、コンダクタンス可変バルブ119、ターボ分子ポンプ120、排気ポンプ122、ガス供給源123、ゲートバルブ126、搬送用ロボット127、ヒータ用直流電源133の各々は、図示しないコントローラと信号を送受信可能に配置されている。そして、コントローラからの指令信号を受信してそれらの動作を行う。例えば、処理室用圧力計130からの出力を受信したコントローラは、その内部に配置されたROM,RAMあるいはハードディスクなどの記憶装置に記憶されたソフトウエア内のアルゴリズムに沿って、検出された圧力の値に応じて指令信号を算出する。そして、処理室101内の圧力値が所期の範囲内の値となるように、ガス供給源123またはコンダクタンス可変バルブ119に信号を送信してこれらの動作を調節する。
このようなプラズマ処理装置500において、所定の処理が施される処理対象のウエハ128は、ゲートバルブ126が開放された状態で、搬送用ロボット127のアーム先端部の上面上に載せられて、搬送室125内から真空容器100内に搬送され、試料台112の上面の上方で試料台112に受け渡される。そして、アームが収縮して処理室101の外部に退出すると、載置面を構成する試料台112の上面にウエハ128が載せられる。
その後、コントローラからの指令信号に応じてゲートバルブ126が閉じられて、処理室101の内部が気密に封止される。試料台112の上面の載置面を構成する誘電体製の膜内の膜状の静電吸着用の電極に直流電源114から直流電力が供給された結果、生起された静電気力により、ウエハ128が誘電体製の膜に対して吸着されて試料台112上に保持される。
また、ヒータ用直流電源133から供給された電力により、試料台112の誘電体製の膜の内部に配置されたヒータ用の電極が発熱する。さらに、熱伝達性ガス供給源116より試料台112の上面の誘電体膜とウエハ128の裏面との間にHeなどの熱伝達性ガスが供給される。この状態で、ウエハ128と試料台112との間の熱伝達が促進され、その結果、ウエハ128が加熱されてその温度が所定の範囲内の値に調節される。
次に、処理ガスがガス供給源123からガス供給配管124を介して微小隙間103に導入され、さらにシャワープレート102のガス供給口から処理室101内に供給される。その際、ガス供給源123から供給される処理ガスの流量、速度と、コンダクタンス可変バルブ119による排気用開口からの排気の流量、速度と、のバランスにより処理室101内の圧力が所定の範囲内の値に調節される。
そして、処理室用圧力計130からの出力を用いて処理室101内の圧力が処理の開始に適切な範囲内であることがコントローラにおいて検出されると、コントローラからの指令信号に応じて、高周波電源110により形成されたマイクロ波の電界が導波管107および空洞部106を通して石英プレート105およびシャワープレート102を透過して処理室101に導入される。さらに、ソレノイドコイル109で形成された磁界が処理室101内に導入される。これら電界と磁界との相互作用によって、処理ガスが励起され、電離、解離してウエハ128の上方の放電部にプラズマが形成される。
プラズマが形成されると、高周波バイアス電源117から試料台112の誘電体製の膜内の電極にマイクロ波より低い所定の周波数の高周波電力が供給されて高周波バイアスがウエハ128の上面の上方に形成される。そして、バイアス電位とプラズマ電位との電位差によりプラズマ中の荷電粒子がウエハ128の上面に向けて誘引され、ウエハ128の上面上に予め形成されたマスクと処理対象の膜層とを含む膜構造の処理対象の膜層のエッチング処理が開始される。なお、エッチング処理中は、排気ゲートプレート118は常時処理室101の内部で排気用開口の上方に位置してこの排気用開口を開放しており、コンダクタンス可変バルブ119の開度の調節によって処理室101の内部の圧力が調節される。
また、エッチング処理の所定の終点への到達が図示しない検知装置からの出力に基づいてコントローラにより検出されると、コントローラからの指令信号に応じて、電界および磁界の供給が停止されてプラズマが消失され、さらに高周波バイアス電源117からの出力が停止されてエッチング処理が停止される。この後、直流電源114からの静電吸着用の電極への直流電圧の供給が停止され、静電気力が低下、除去される。
その後、ガス供給源123から希ガスが処理室101内に導入されつつ、コンダクタンス可変バルブ119の開度が処理中より大きくなり、ターボ分子ポンプ120および排気ポンプ122の動作によって処理室101内の圧力が処理中より低くなる。これにより、処理室101内の反応生成物や残留した処理ガスが排気される。その後、ゲートバルブ126が開放され、伸長されて処理室101内に進入した搬送用ロボット127のアームに処理済みのウエハ128が受け渡され、アームの収縮によって処理室101外に搬出される。搬出完了が確認された後、ゲートバルブ126が通路の開口を気密に閉塞する。
次に、図1、図2を用いて本実施の形態に係る試料台112の構成を詳細に説明する。図2は図1に示すプラズマ処理装置の試料台の構成の一部を模式的に示す部分拡大断面図である。特に、試料台112の上部に配置された金属製の基材およびその上面に配置された誘電体製の膜状の部材を含む一部を拡大して示している。
本実施の形態において、図2に示す試料台112の内部に配置され、かつ円板または円筒形状の基材200は、チタンあるいはアルミニウムまたはこれらの化合物などの金属製の材料から構成されており、接地電極Sと電気的に接続されるとともに図1に示す真空容器100の壁面と導通可能に連結されて接地電位に固定されている。基材200は、中央部にウエハ128がその上に載せられる凸部と、上記凸部の外周側でリング状に配置されて凸部を囲みその上面の高さが低く形成された凹部と、を備えている。そして、これら凸部と凹部との間は、凸部の外周の側壁を構成する段差部を備えている。リング状の凹部には、上述の通り、セラミクス材料から構成されたサセプタリング129が載せられる。
基材200の凸部部分の平坦な上面にはセラミクスなどの誘電体材料から構成された膜である誘電体膜201が配置されている。さらに、この誘電体膜201の膜層の下部の内部には導電性材料から構成された膜状の電極であって直流電力が供給されて発熱する複数のヒータ膜202が、基材200の上面の複数の領域を覆って配置されている。つまり、基材200の上面には誘電体膜201が配置され、さらにこの誘電体膜201の内側には膜状のヒータであるヒータ膜202が形成されている。
これら複数のヒータ膜202の各々は、コントローラからの指令信号に応じて動作が調節される直流電源214と給電ケーブル(給電線、給電経路)219を介して接続されており、直流電源214により直流電力が供給可能なように構成されている。すなわち、給電ケーブル219は、ヒータ膜202とこのヒータ膜202に直流電力を供給する直流電源214とを電気的に接続するケーブルである。ただし、給電ケーブル219は、高周波電力用のフィルタは備えていない。また、基材200の内部であってヒータ膜202の各々が覆う上面の領域の下方の投影部分の各々にこの投影部分の温度を検知する温度センサ209が配置されている。このように、本実施の形態の試料台112の上面に配置された誘電体膜201の内部は、各々の領域(ゾーン)毎に発熱量曳いては誘電体膜201の上面の温度を調節可能な複数のヒータ膜202(マルチゾーンヒータ)を有した構成を備えている。
ヒータ膜202は誘電体膜201の内部に配置され、その周囲が誘電体製の部材(誘電体膜201)で囲まれている。本実施の形態の試料台112は、誘電体膜201の内部に配置されてヒータ膜202の上面の上方および周縁部の外周を囲んで配置された膜状の導電性を有する部材であるシールド膜203を備えており、ヒータ膜202がシールド膜203によって囲まれた(覆われた)構造となっている。言い換えると、ヒータ膜202がシールド膜(導体膜)203によって囲まれた構造が、誘電体膜201の一部を構成する誘電体材料によって内包されている。そして、シールド膜203は、基材200と電気的に接続されており、これにより、シールド膜203は基材200と同じく接地電位に固定され、その結果、ヒータ膜202への高周波の流入を抑制することができる。
さらに、シールド膜203の上面の上方および周縁部の周囲は、誘電体膜201の一部を構成する誘電体製材料の部材に覆われており、この誘電体製材料の部材の内部に静電吸着用の電極および高周波バイアス形成のための高周波電力が供給される電極である電極膜204が内蔵されて配置されている。つまり、電極膜204は、導電体製の材料から構成された膜であり、所定の周波数の高周波電力を供給する高周波バイアス電源213と電気的に接続されている。なお、電極膜204には、直流電源212も電気的に接続されており、直流電圧が印加されることで、試料台112の載置面に載せられたウエハ128を静電気によって吸着することができる。
また、電極膜204を内蔵する誘電体製の材料の部材の上面の上方には、試料台112の最上面であってウエハ128を載置する載置面を構成するセラミクス材料から構成された誘電体膜(静電吸着部材)205が、凸部の上面とその周囲の凹部および凸部の側壁である段差部を覆って配置されている。すなわち、試料台112の最上面には、シールド膜203上でこのシールド膜203を覆い、かつ内部に、静電気力によりウエハ128を吸着する電極膜(電極)204を備えた誘電体膜205が配置されている。別の表現で述べると、シールド膜203は、基材200上において、リフトピン貫通孔211とヒータ膜202との間に誘電体膜201を挟んで(介在させて)、かつリフトピン貫通孔211の外周を囲んで配置されている。
また、試料台112は、凸部上の誘電体膜205の上面と基材200の底面との間を貫通する複数の貫通孔を備えている。これらの貫通孔は、その内部に上下に移動してウエハ128を下方から支持して試料台112の上面の上方で移動させるリフトピン(ピン)206を収納する複数のリフトピン貫通孔211と、誘電体膜205の上面とこれに載せられたウエハ128の裏面との間のすき間に供給されるHeなどの熱伝達性ガスが通流する熱伝達性ガス供給孔208と、を含んでいる。リフトピン貫通孔211内に配置されたリフトピン206は、ウエハ128を誘電体膜205の上面の上方で上昇または下降させるものである。ここで、複数のリフトピン貫通孔211は、誘電体膜205の上面に開口し、かつ誘電体膜201および誘電体膜205を貫通している。なお、試料台112の内部には、電極膜204に電力を印加するための給電用のケーブルおよびコネクタが内部に配置された静電吸着用給電孔216、ヒータ膜202に電力を供給する給電ケーブルおよびコネクタが内部に配置されたヒータ給電孔218が配置されている。
これらの孔の基材200の内部を貫通する部分の内周の壁面は、誘電体材料あるいは絶縁性材料により構成された円筒形部材である絶縁ボス207、210、215、217が配置されている。すなわち、試料台112の基材200には、基材200の内部で基材200の内周壁面を構成し、かつ複数の貫通孔のそれぞれの内部に配置された絶縁材料からなる円筒形部材である絶縁ボス207、210、215、217が形成されている。これらの絶縁ボス207、210、215、217によって、ウエハ128の処理中に高周波電力による電界に曝される孔内部の空間での放電の発生を抑制することができる。これらの絶縁ボス207、210、215、217を構成する材料としてはアルミナやイットリアなどのセラミクス材料や樹脂材を用いることができる。
また、誘電体膜201、ヒータ膜202、シールド膜203、電極膜204および誘電体膜205の各々は、上記各々用の材料が溶射されることによって成膜されて形成される。なお、シールド膜203は電極膜204に供給された高周波電力がヒータ膜202に流入することを抑制するため、電極膜204の下面とヒータ膜202の上面との間でヒータ膜202の全体を覆うだけでなく、ヒータ膜202の外周縁の端部の周囲も囲んで配置する必要がある。また、リフトピン貫通孔211などの貫通孔の周囲に配置されたヒータ膜202についても同様に外周縁の周囲を囲んでシールド膜203が配置されることが必要となる。ただし、リフトピン貫通孔211の内側の空間にシールド膜203が露出してしまうと高周波電力による放電が発生してしまう虞があるため、リフトピン貫通孔211の周囲においてシールド膜203は誘電体膜201で覆われている必要がある。
一方、本実施の形態の試料台112に配置されたリフトピン貫通孔211や基材200に配置された静電吸着用給電孔216などの貫通孔の周辺は、貫通孔を挟んでヒータ膜202が配置されることになる。さらに、本実施の形態では、誘電体膜201の内部において上方から見てヒータ膜202の周囲を囲んでシールド膜203が配置され、さらには、ヒータ膜202は、シールド膜203で囲まれて内部に配置された誘電体膜201に内蔵されている。すなわち、ヒータ膜202は、シールド膜203と接触すること無く配置される構成であるため、これら貫通孔の周辺ではヒータ膜202同士の距離をあけて配置せざるを得ない。そのため、貫通孔の周辺の試料台112の上面の温度はその周囲の領域の温度と比べて温度差が生じやすくなりウエハ128の面内の方向について温度の分布の均一性が損なわれる虞がある。
そこで、本実施の形態のプラズマ処理装置500の試料台112では、シールド膜203は熱伝達率の高いアルミニウムや銅などの材料を用いて構成されている。このため、ヒータ膜202の発熱により発生し、かつシールド膜203で囲まれたその内側の誘電体膜201の誘電体材料の部材を介してシールド膜203に伝導された熱は、シールド膜203内において短時間で全体に伝達される。さらに、上記熱は、貫通孔の周囲に配置され、かつ上方から見てヒータ膜202の外周端の周囲を囲む部分を通して基材200にも伝達される。このことは、貫通孔の周囲のシールド膜203の温度は、ヒータ膜202の加熱により高い値に加熱されたヒータ膜202の上方のシールド膜203の領域のものと十分に差が小さい温度にされた値となることを意味する。つまり、上記熱は、基材200に伝達されるため、貫通孔の周囲のシールド膜203の温度と、ヒータ膜202の上方のシールド膜203の温度との差は小さくなる。これにより、ウエハ128の面内方向についての温度の局所的なバラつきを低減して均一性を高めることができる。
また、本実施の形態の試料台112では、ヒータ膜202、シールド膜203および電極膜204の各々の膜状の電極が、同一の材料で、かつ同じ組成で構成された誘電体膜201の内部に配置された構成を備えている。ただし、試料台112は、この構成のみに限定されず、各々の膜が各々異なる材料あるいは組成の誘電体製の膜の内部に配置あるいは内包されていてもよく、いずれかの膜が他と異なる材料あるいは組成の誘電体製の膜の内部に配置あるいは内包されていてもよい。また、試料台112は、電極膜204とこれを内包する誘電体膜201との部分を焼結板として一体に構成した構造体を、溶射加工により構成され内部にシールド膜203とヒータ膜202とを有する誘電体膜201上に接着層を間に挟んで接合した構成を備えたものであってもよい。
本実施の形態のプラズマ処理装置500によれば、試料台112の内部のヒータ膜202の上面およびその外周縁の周囲は接地電位に固定されるシールド膜203によって覆われる。このため、ウエハ128の処理中に電極膜204に供給される高周波バイアス電源213からの高周波電力がヒータ膜202に流入することが抑制され、実際の処理の結果としての加工後の形状の所期のものからのズレを低減することができ、プラズマ処理の歩留まりを向上させることができる。また、製造される半導体デバイスの性能を高めることができる。なお、高周波電力がヒータ膜202の給電ケーブル(給電線、給電経路)219および直流電源214に流れることを抑制するために、給電ケーブル219にフィルタ回路(フィルタ)を設けると、製造のコストが増加するとともにプラズマ処理装置の設置面積も増加する。しかしながら、本実施の形態のプラズマ処理装置500では、ウエハ128の処理中に電極膜204に供給される高周波バイアス電源213からの高周波電力がヒータ膜202に流入することを抑制できるため、給電ケーブル219にフィルタ回路(フィルタ)を設ける必要が無く、その結果、製造のコストおよびプラズマ処理装置の設置面積を低減することができる。
次に、図5~図7を用いて、本実施の形態のリフトピン貫通孔211の周囲の誘電体膜201の構成の詳細を説明する。図5は図2に示す試料台におけるリフトピン貫通孔およびその周囲の構造を一部破断して模式的に示す部分拡大斜視図、図6は図5に示すA-A線に沿って切断した構造を模式的に示す部分断面図、図7は図5に示すB-B線に沿って切断した構造を模式的に示す部分断面図である。なお、これらの図において、図2に示したものと同じ構成については説明を省略する。
図5に示すように、リフトピン貫通孔211は、誘電体膜205の上面と基材200の下面とに開口を有した貫通孔であって、内部に一本のリフトピン206が挿入されている。つまり、リフトピン貫通孔211は、リフトピン206を収納可能な孔である。さらに、基材200の内部の箇所において、リフトピン貫通孔211の内側壁面を覆うように円筒形部材である絶縁ボス210がリフトピン貫通孔211内に挿入されており、リフトピン貫通孔211と絶縁ボス210とは密着されている。さらに、絶縁ボス210の円筒形部分の上端面は、その周囲に位置する基材200の凸部の上面と同様に、材料が溶射されて構成された誘電体膜201で覆われており、処理室101の内部に基材200の上面が暴露されないように構成されている(P部参照)。
すなわち、本実施の形態では、絶縁ボス210の上端面を含めてリフトピン貫通孔211の周囲の基材200の凸部の上面は、誘電体膜201およびその上面の上方の全体を覆って配置された誘電体膜205に覆われている。さらに、リフトピン貫通孔211の内側壁面は、基材200を貫通する部分では絶縁ボス210により構成され、基材200の凸部の上面の上方の部分は誘電体膜201およびその上方に配置された誘電体膜205により構成されている。そして、下方の誘電体膜201の内部の上部には電極膜204が配置されている。さらに、誘電体膜201の内部の下部には、上方から見て電極膜204に覆われた領域の投影領域内に、シールド膜203およびこれに覆われた下方の誘電体膜201の一部を構成する部分に内蔵されたヒータ膜202が配置されている。
また、リフトピン貫通孔211の周囲に位置するシールド膜203の部分は、上方から見てヒータ膜202の外周縁よりリフトピン貫通孔211に近い箇所まで延在しており、上方から見たシールド膜203の投影領域内にヒータ膜202が内包されている。つまり、シールド膜203は、ヒータ膜202のリフトピン貫通孔211に最も近い外周縁よりも近い箇所では下方の基材200の上面まで上下方向に延在して基材200に接している。さらに、上方から見てシールド膜203の上下方向に延在した部分のリフトピン貫通孔211に近い側の表面も誘電体膜201の一部を構成する誘電体材料の部材で覆われている。このことにより、ヒータ膜202はシールド膜203およびその外側の処理室101の内部と絶縁されて配置されているとともに、シールド膜203も処理室101の内部に曝されることなく配置されている。
本実施の形態のヒータ膜202は、導電性部材の材料が溶射加工によって形成されたものであって、上方から見て所定の幅と所定の厚さとを有しており、さらに縦断面がおよそ方形状を有した膜状の線路から構成されている。さらに、上記線路は円形を有した載置面の中心について周方向に円弧状に配置された箇所が上記中心から半径方向について多重に配置され、各円弧状の箇所がそれらの両側の端部において交互に接続されている。ヒータ膜202の線路は、謂わばジグザクに配置された平面形状を有している。このようなヒータ膜202の線路は、リフトピン貫通孔211の周囲ではこれを避けてジグザグに配置されている。言い換えると、シールド膜203は、平面視で複数に折れ曲がった形状のヒータ膜202を覆っている。
また、誘電体膜201内の電極膜204は、内部が円筒形の空間であるリフトピン貫通孔211の周囲でその中心軸周りに外周全体を囲んでおり、図6に示すように、上方から見てリフトピン貫通孔211が内側を貫通して配置される円形の孔を有している。リフトピン貫通孔211の上記円形の孔の内周端は、上方から見て絶縁ボス210の外周縁より中央側に位置している。
一方、電極膜204の下方でこれに覆われたシールド膜203は、ヒータ膜202の上方ではジグザグに配置された(平面視で複数に折れ曲がった形状を成す)ヒータ膜202の領域全体を覆っており、かつ水平方向に所定の厚さを有する膜状または板状に配置されている。さらに、シールド膜203は、リフトピン貫通孔211の周囲では、溶射加工によってかつ導電性を有する材料を用いて、絶縁ボス210の外周でこれを囲んで上下方向に円筒形または上方向に向かって径が大きくなるすり鉢状に所定の厚さで形成されている。そして、その円筒またはすり鉢の上端部で膜状または板状の部分と一体に接続されている。
つまり、本実施の形態のシールド膜203は、その円筒状またはすり鉢状の部分の内側に孔を有した構成であり、図7に示すように、その上方から見てシールド膜203の内周壁面(内周壁)は絶縁ボス210の内周面(内周壁)より外側に位置している。さらに、シールド膜203は、円筒状またはすり鉢状の部分の下端部において基材200の上面に接しており、基材200とシールド膜203との間の電気的な接続が達成されている。また、図5に示すように、絶縁ボス210の上端面の上方(P部)では、シールド膜203の円筒状またはすり鉢状の部分の内側壁面(内周壁)に沿って誘電体材料が溶射加工されて円筒形状に膜(誘電体膜201の一部)が積層されることで、誘電体膜201によるリフトピン貫通孔211の基材200の上方の部分(P部)が円筒形状に形成される。
なお、図5~図7に示す構成は、リフトピン貫通孔211の周囲のものに限らず熱伝達性ガス供給孔208や静電吸着用給電孔216の周囲の構成にも適用される。
次に、図8の構成について説明する。
本実施の形態の図2に示すヒータ膜202は、略円形を有したウエハ128が載置される図8の試料台112の載置面700の上下方向の中心周りおよび半径方向について複数に分けられた複数の領域毎に配置され、分割された複数のヒータ膜202の各々が図1に示す複数の直流電源114の各々と接続されている。ここで、図8は、図2に示す試料台のヒータ膜が配置される複数の領域を模式的に示す上面図である。
図2に示す試料台112の基材200の円筒形を有する凸部の上面に配置された略円形の図8に示す載置面700は、その中心からの半径方向について4つの領域に分けられる。さらに、載置面700において、これら半径方向に複数配置された領域のうちの上記中心を含む領域の外周側をリング状に囲んで配置された領域は、周方向に複数に分けられている(半径方向に複数に分けられたそれぞれの領域は、周方向にも複数に分けられている)。そして、半径方向と周方向とに複数に分けられた載置面700の各々の領域701、702、703、704、705、706、707、709、710、711に、各々が図1の直流電源114と接続された図2のヒータ膜202が配置されている。
さらに、上述の各領域は、載置面700の中心からの半径方向について外周側ほど領域の数が増えている。図8の例では、載置面700の中心部の領域711は1つであって円形またはこれと見做せる程度に近似した形状を有し、その半径方向の外側で同じ半径方向の幅を有して領域711の全周を囲む2つの半円リング状の領域709、710が配置されている。さらに、半円リング状の領域709、710の半径方向の外側の位置に、同じ半径方向の幅を有した3つの円弧状の領域705、706、707が配置されている。さらに、半径方向の最も外側の位置に、同じ半径方向の幅を有した4つの円弧状の領域701、702、703、704が配置されている。
以上のように、半径方向と周方向とに複数に分けられた領域701、702、703、704、705、706、707、709、710、711のそれぞれにヒータ膜202が接続されていることにより、試料台112の円形の載置面700を領域毎に温度調節(温度制御)することができ、ウエハ128の面内温度の均一性を高めることができる。
次に、図3、図4を用いて本実施の形態の変形例を説明する。図3は図2に示す試料台の変形例の構成を模式的に示す部分拡大断面図、図4は図2に示す試料台の別の変形例の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。図3および図4は、試料台112の上部に配置された金属製の基材およびその上面に配置された誘電体製の膜状の部材を含む一部を拡大して示す図である。なお、これらの図において、図2に示したものと同じ構成については説明を省略する。
図3の変形例と図2の実施の形態との構成上の差異は、図2で示したリフトピン貫通孔211などの複数の貫通孔の周囲において、シールド膜203を導電性を有する材料を溶射加工して形成する代わりに、熱伝達率が高いアルミニウムや銅などの金属を材料として構成されたパイプ(第2部分)301を用いる点にある。また、試料台112の最外周の側面に溶射加工によって形成されて配置されたシールド膜203も、これに代えて金属などの熱伝達率が高い材料で形成されたリング302が配置されている点にある。パイプ301の内径および外径の各々は、絶縁ボス210の内径および外径の各々より大きく形成されており、基材200の上面に形成された貫通孔の開口の周囲にパイプ301が配置され、この状態でパイプ301と基材200の上面とが接触して電気的な導通が得られるように構成されている。図3の構造では、基材200上にこの基材200に接続して設けられる導体膜は、ヒータ膜202の上部に配置されるシールド膜(第1部分)303と、円筒状もしくはすり鉢状の金属製のパイプ(第2部分)301と、からなる。すなわち、基材200上に複数の金属製のパイプ301が配置され、複数のパイプ301同士がシールド膜303によって電気的に接続されている。
なお、パイプ301およびリング302は貫通孔の周囲で基材200の上面にこれと接して載せられた状態で、基材200の上面に誘電体材料が溶射加工されて誘電体膜201が形成された後、2つのパイプ301同士の間の基材200の上面の所定の領域にヒータ膜202を溶射加工によって形成する。そして、誘電体膜201およびヒータ膜202の上に再度誘電体膜201が溶射加工によって形成され、さらに複数のパイプ301同士の上端面の間を接続するようにシールド膜(第1部分)303が溶射加工によって形成される。その結果、貫通孔の周囲で円筒またはすり鉢状に図2のシールド膜203を溶射加工によって形成する工程を省いて、代わりにリング302を配置する工程とすることで、試料台112の製造に要する時間と工数を少なくして図1のプラズマ処理装置500の製造に要するコストをさらに低減することができる。
なお、本変形例においても基材200は接地電位に固定されている。本変形例のシールド膜303は図2のシールド膜203と同様に溶射加工により形成されてもよいが、熱伝導率が高いアルミニウムや銅などの金属製の板(例えば、アルミニウム箔)を用いて形成されてもよい。
次に、図4の変形例と図2の実施の形態との構成上の差異は、図2で示したリフトピン貫通孔211などの複数の貫通孔の周囲において、シールド膜203を、導電性を有する材料を溶射加工して形成する代わりに、接地電位に固定された基材200の上面にこれと一体に、ヒータ膜402が配置される領域を内包する平面形状の大きさを有する凹み部401を配置した点にある。すなわち、基材200の上面に凹み部401を形成し、その後、内部にヒータ膜402を溶射加工により形成し、さらに、ヒータ膜402の周囲と上面とを誘電体膜201を構成する誘電体材料の部材で覆った後、基材200の上面に導電性材料を用いて溶射することによりシールド膜403を形成するものである。なお、溶射加工によって形成されたシールド膜403に代えて、図3の変形例と同様に、熱伝達率が高いアルミニウムや銅などの金属製の板(例えば、アルミニウム箔)を用いて形成してもよい。
図4に示す変形例によれば、試料台112の内部のヒータ膜402の上面およびその外周縁の周囲は接地電位に固定されるシールド膜403によって覆われる。このため、ウエハ128の処理中に電極膜204に供給される高周波バイアス電源213からの高周波電力がヒータ膜402に流入することが抑制され、実際の処理の結果としての加工後の形状の所期のものからのズレを低減することができ、処理の歩留まりを向上させることができる。なお、高周波電力がヒータ膜402の給電ケーブル(給電線、給電経路)219および直流電源214に流れることを抑制するために、給電ケーブル219にフィルタ回路(フィルタ)を設けると、製造のコストが増加するとともにプラズマ処理装置の設置面積も増加する。しかしながら、図4の変形例においても、ウエハ128の処理中に電極膜204に供給される高周波バイアス電源213からの高周波電力がヒータ膜402に流入することを抑制できるため、給電ケーブル219にフィルタ回路(フィルタ)を設ける必要が無く、その結果、製造のコストおよびプラズマ処理装置の設置面積を低減することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる。
上記実施の形態では、処理室内にマイクロ波の電界とこれに併せてECRを形成できる磁界を供給し、処理用ガスを放電させてプラズマを形成してプラズマエッチング処理を行うプラズマ処理装置を取り上げて説明した。しかしながら、上記プラズマ処理装置は、試料台にヒータ膜を備えた装置であれば、他の放電(有磁場UHF放電、容量結合型放電、誘導結合型放電、マグネトロン放電、表面波励起放電、トランスファー・カップルド放電)を用いてプラズマを形成する装置であってもよい。