以下に、本開示による接合装置および接合方法を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示による接合装置および接合方法が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向と呼ぶ場合がある。
<接合システム>
まず、実施形態に係る接合システムの構成について図1~図3を参照して説明する。図1および図2は、実施形態に係る接合システムの構成を示す模式図である。また、図3は、実施形態に係る第1基板および第2基板の接合前の状態を示す模式図である。
図1に示す接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合基板Tを形成する(図3参照)。
第1基板W1は、たとえばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、たとえば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2は、第1基板W1と同様に、シリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板であってもよい。
以下では、図3に示すように、第1基板W1の板面のうち、第2基板W2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、第2基板W2の板面のうち、第1基板W1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2は、処理ステーション3のX軸負方向側に配置され、処理ステーション3と一体的に接続される。
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(たとえば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1,C2,C3がそれぞれ載置される。たとえば、カセットC1は第1基板W1を収容するカセットであり、カセットC2は第2基板W2を収容するカセットであり、カセットC3は重合基板Tを収容するカセットである。
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能である。搬送装置22は、載置板11に載置されたカセットC1~C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tの搬送を行う。
なお、載置板11に載置されるカセットC1~C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1,C2,C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
処理ステーション3には、たとえば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。第1処理ブロックG1は、処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)に配置される。また、第2処理ブロックG2は、処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)に配置され、第3処理ブロックG3は、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)に配置される。
第1処理ブロックG1には、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化され易くするように接合面W1j,W2jを改質する。
具体的には、表面改質装置30では、たとえば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスまたは窒素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオン又は窒素イオンが、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、たとえば純水によって第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。具体的には、表面親水化装置40は、たとえばスピンチャックに保持された第1基板W1または第2基板W2を回転させながら、当該第1基板W1または第2基板W2上に純水を供給する。これにより、第1基板W1または第2基板W2上に供給された純水が第1基板W1または第2基板W2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。
接合装置41は、親水化された第1基板W1と第2基板W2とを分子間力により接合す
る。かかる接合装置41の構成については、後述する。
第3処理ブロックG3には、図2に示すように、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tのトランジション(TRS)装置50,51が、下から順に設けられる。
第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tを搬送する。
また、接合システム1は、制御装置70を備える。制御装置70は、接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置70は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部および記憶部を備える。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、後述する制御を実現する。また、記憶部は、たとえば、RAM、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置70の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
<接合装置>
次に、接合装置41の構成について図4および図5を参照して説明する。図4および図5は、実施形態に係る接合装置41の構成を示す模式図である。
図4に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器100を有する。処理容器100の搬送領域60側の側面には、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tの搬入出口101が形成され、当該搬入出口101には開閉シャッタ102が設けられている。
処理容器100の内部は、内壁103によって、搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口101は、搬送領域T1における処理容器100の側面に形成される。また、内壁103にも、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tの搬入出口104が形成される。
搬送領域T1には、トランジション110、基板搬送機構111、反転機構130および位置調節機構120が、たとえば搬入出口101側からこの順番で並べて配置される。
トランジション110は、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tを一時的に載置する。トランジション110は、たとえば2段に形成され、第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tのいずれか2つを同時に載置することができる。
基板搬送機構111は、図4および図5に示すように、たとえば鉛直方向(Z軸方向)、水平方向(Y軸方向、X軸方向)および鉛直軸周りの方向(θ方向)に移動自在な搬送アームを有する。基板搬送機構111は、搬送領域T1内または搬送領域T1と処理領域T2との間で第1基板W1、第2基板W2および重合基板Tを搬送することが可能である。
位置調節機構120は、第1基板W1および第2基板W2の水平方向の向きを調節する。具体的には、位置調節機構120は、第1基板W1および第2基板W2を保持して回転させる図示しない保持部を備えた基台121と、第1基板W1および第2基板W2のノッチ部の位置を検出する検出部122と、を有する。位置調節機構120は、基台121に保持された第1基板W1および第2基板W2を回転させながら検出部122を用いて第1基板W1および第2基板W2のノッチ部の位置を検出することにより、ノッチ部の位置を調節する。これにより、第1基板W1および第2基板W2の水平方向の向きが調節される。
反転機構130は、第1基板W1の表裏を反転させる。具体的には、反転機構130は、第1基板W1を保持する保持アーム131を有する。保持アーム131は、水平方向(X軸方向)に延伸する。また保持アーム131には、第1基板W1を保持する保持部材132がたとえば4箇所に設けられている。
保持アーム131は、たとえばモータなどを備えた駆動部133に支持される。保持アーム131は、かかる駆動部133によって水平軸周りに回動自在である。また、保持アーム131は、駆動部133を中心に回動自在であると共に、水平方向(X軸方向)に移動自在である。駆動部133の下方には、たとえばモータなどを備えた他の駆動部(図示せず)が設けられる。この他の駆動部によって、駆動部133は、鉛直方向に延伸する支持柱134に沿って鉛直方向に移動できる。
このように、保持部材132に保持された第1基板W1は、駆動部133によって水平軸周りに回動できると共に鉛直方向及び水平方向に移動することができる。また、保持部材132に保持された第1基板W1は、駆動部133を中心に回動して、位置調節機構120と後述する第1保持部140との間を移動することができる。
処理領域T2には、第1基板W1の上面(非接合面W1n)を上方から吸着保持する第1保持部140と、第2基板W2の下面(非接合面W2n)を下方から吸着保持する第2保持部141とが設けられる。第2保持部141は、第1保持部140よりも下方に設けられ、第1保持部140と対向配置可能に構成される。第1保持部140および第2保持部141は、たとえばバキュームチャックである。
図5に示すように、第1保持部140は、第1保持部140の上方に設けられた支持部材180によって支持される。支持部材180は、たとえば、複数の支持柱181を介して処理容器100の天井面に固定される。
第1保持部140の側方には、第2保持部141に保持された第2基板W2の上面(接合面W2j)を撮像する上部撮像部145が設けられている。上部撮像部145には、たとえばCCDカメラが用いられる。
第2保持部141は、第2保持部141の下方に設けられた第1移動部160に支持される。第1移動部160は、後述するように第2保持部141を水平方向(X軸方向)に移動させる。また、第1移動部160は、第2保持部141を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸周りに回転可能に構成される。
第1移動部160には、第1保持部140に保持された第1基板W1の下面(接合面W1j)を撮像する下部撮像部146が設けられている。下部撮像部146には、たとえばCCDカメラが用いられる。
第1移動部160は、一対のレール162、162に取り付けられている。一対のレール162,162は、第1移動部160の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する。第1移動部160は、レール162に沿って移動自在に構成されている。
一対のレール162、162は、第2移動部163に配設されている。第2移動部163は、一対のレール164、164に取り付けられている。一対のレール164,164は、第2移動部163の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する。第2移動部163は、レール164に沿って水平方向(Y軸方向)に移動自在に構成される。なお、一対のレール164、164は、処理容器100の底面に設けられた載置台165上に配設されている。
第1移動部160および第2移動部163等により、位置合わせ部166が構成される。位置合わせ部166は、第2保持部141をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることにより、第1保持部140に保持されている第1基板W1と、第2保持部141に保持されている第2基板W2との水平方向位置合わせを行う。また、位置合わせ部166は、第2保持部141をZ軸方向に移動させることにより、第1保持部140に保持されている第1基板W1と、第2保持部141に保持されている第2基板W2との鉛直方向位置合わせを行う。
なお、ここでは、第2保持部141をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることとしたが、位置合わせ部166は、たとえば、第2保持部141をX軸方向およびY軸方向に移動させ、第1保持部140をθ方向に移動させてもよい。また、ここでは、第2保持部141をZ軸方向に移動させることとしたが、位置合わせ部166は、たとえば、第1保持部140をZ軸方向に移動させてもよい。
次に、第1保持部140および第2保持部141の構成について図6を参照して説明する。図6は、実施形態に係る第1保持部140および第2保持部141を示す模式図である。
図6に示すように、第1保持部140は、本体部170を有する。本体部170は、第1基板W1より小さい径を有する。このため、第1基板W1は、本体部170から径方向外方に僅かにはみ出した状態で第1保持部140に吸着保持される。本体部170は、支持部材180によって支持される。
支持部材180および本体部170には、支持部材180および本体部170を鉛直方向に貫通する貫通孔176が形成される。貫通孔176の位置は、第1保持部140に吸着保持される第1基板W1の中心部に対応している。貫通孔176には、ストライカー190の押圧ピン191が挿通される。
ストライカー190は、支持部材180の上面に配置され、押圧ピン191と、アクチュエータ部192と、直動機構193とを備える。押圧ピン191は、鉛直方向に沿って延在する円柱状の部材であり、アクチュエータ部192によって支持される。
アクチュエータ部192は、たとえば電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気により一定方向(ここでは鉛直下方)に一定の圧力を発生させる。アクチュエータ部192は、電空レギュレータから供給される空気により、第1基板W1の中心部と当接して当該第1基板W1の中心部にかかる押圧荷重を制御することができる。また、アクチュエータ部192の先端部は、電空レギュレータからの空気によって、貫通孔176を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。
アクチュエータ部192は、直動機構193に支持される。直動機構193は、たとえばモータを内蔵した駆動部によってアクチュエータ部192を鉛直方向に移動させる。
ストライカー190は、以上のように構成されており、直動機構193によってアクチュエータ部192の移動を制御し、アクチュエータ部192によって押圧ピン191による第1基板W1の押圧荷重を制御する。これにより、ストライカー190は、第1保持部140に吸着保持された第1基板W1の中心部を押圧して第2基板W2に接触させる。
本体部170の下面には、第1基板W1の上面(非接合面W1n)に接触する複数のピン171が設けられている。複数のピン171は、たとえば、径寸法が0.1mm~1mmであり、高さが数十μm~数百μmである。複数のピン171は、たとえば2mmの間隔で均等に配置される。
第1保持部140は、これら複数のピン171が設けられている領域のうちの一部の領域に、第1基板W1を吸着する複数の吸着部を備える。本実施形態において、複数の吸着部は、第1基板W1の物性の異方性に応じて配置される。
ここで、第1保持部140が有する複数の吸着部について図7~図9を参照して説明する。図7および図8は、接合領域の拡大の様子の一例を示す模式図である。図9は、第1保持部140を下方から見た模式図である。なお、ミラー指数が負であることは、通常、数字の上に「-」(バー)を付すことによって表現するが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって表現する。
図7に示すように、第1基板W1および第2基板W2は、表面(接合面)と垂直な方向における結晶方向が[100]である単結晶シリコンウェハである。第1基板W1および第2基板W2のノッチ部Nは、第1基板W1および第2基板W2の[011]結晶方向の外縁に形成される。なお、第1基板W1および第2基板W2の直径は、たとえば300mmである。
第1基板W1の中心部を押し下げて第2基板W2の中心部に接触させると、第1基板W1の中心部と第2基板W2の中心部とが分子間力により接合されることによって両基板の中心部に接合領域Aが形成される。その後、接合領域Aが両基板の中心部から外周部に向かって拡大するボンディングウェーブが発生して、第1基板W1および第2基板W2の接合面W1j、W2j同士が全面で接合される。
仮に、第1基板W1の外縁の全周を保持する保持部を用いて第1基板W1を保持して上記の接合処理を行った場合、接合領域Aは、同心円状ではなく不均一に拡大することとなる。
具体的には、図8に示すように、接合領域Aは、90度方向と比較して45度方向に速く拡大する。90度方向とは、第1基板W1の中心部から第1基板W1の表面に対して平行な[0-11]結晶方向に向かう方向を基準とする90度周期の方向(図8に示す0度、90度、180度、270度の方向)である。45度方向とは、第1基板W1の中心部から第1基板W1の表面に対して平行な[010]結晶方向に向かう方向を基準とする90度周期の方向(図8に示す45度、135度、225度、315度の方向)である。この結果、当初円形状であった接合領域Aの形状は、拡大するにつれて45度方向を頂点とする四角形に近づいていくこととなる。
この原因としては、第1基板W1および第2基板W2のヤング率等の物性の異方性が考えられる。
たとえば、単結晶シリコンウェハのヤング率、ポアソン比、せん断弾性係数の値は、90度周期で変化する。具体的には、単結晶シリコンウェハのヤング率は、90度方向において最も高くなり、45度方向において最も低くなる。また、ポアソン比およびせん断弾性係数については、45度方向において最も高くなり、90度方向において最も低くなる。
このように、単結晶シリコンウェハはヤング率等の物性に異方性を有することから、第1基板W1に加わるストレス・歪みの分布は、同心円状ではなく不均一な分布となる。そして、この不均一な分布が、接合領域Aを不均一に拡大させることにより、重合基板Tの歪み(ディストーション)を悪化させていると考えられる。
そこで、本実施形態では、第1基板W1の外周部の全周を保持するのではなく、第1基板W1の外周部のうち、接合領域Aが最も速く拡大する45度方向の領域を第1保持部140を用いて保持することとした。
具体的には、図9に示すように、第1保持部140における本体部170の下面には、第1基板W1を真空引きして吸着する複数の外側吸着部301および複数の内側吸着部302が設けられている。複数の外側吸着部301および複数の内側吸着部302は、平面視において円弧形状の吸着領域を有する。また、複数の外側吸着部301および複数の内側吸着部302は、ピン171と同じ高さを有する。
複数の外側吸着部301は、本体部170の外周部に対し、周方向に沿って並べて配置される。具体的には、複数の外側吸着部301は、90度間隔で配置される4つの第1外側吸着部311と、4つの第1外側吸着部311に対して周方向に45度ずれて配置される4つの第2外側吸着部312とを備える。4つの第1外側吸着部311および4つの第2外側吸着部312は、第1基板W1の外周部を吸着保持する。第1基板W1の外周部とは、第1基板W1の外周端から、第1基板W1の半径の15%以内の部分を意味する。
4つの第1外側吸着部311は、第1基板W1における45度方向に配置される。具体的には、4つの第1外側吸着部311は、円弧形状の吸着領域の中心部が第1基板W1における45度方向と一致する位置に配置される。また、4つの第2外側吸着部312は、第1基板W1における90度方向に合計4つ配置される。具体的には、4つの第2外側吸着部312は、円弧形状の吸着領域の中心部が第1基板W1における90度方向と一致する位置に配置される。
4つの第1外側吸着部311は、第1吸引管171aを介して単一の第1真空ポンプ171bに接続され、第1真空ポンプ171bによる真空引きによって第1基板W1を吸着する。また、4つの第2外側吸着部312は、第2吸引管172aを介して単一の第2真空ポンプ172bに接続され、第2真空ポンプ172bによる真空引きによって第1基板W1を吸着する。ここでは、理解を容易にするため、複数の第1外側吸着部311のうち、いずれか1つについての配管構成のみを示している。複数の第2外側吸着部312についても同様である。
このように、第1基板W1の中心部から第1基板W1の表面に対して平行な[0-11]結晶方向に向かう方向を0度と規定したとき、複数の第1外側吸着部311は45度の方向を基準に90度間隔で配置される。また、複数の第2外側吸着部312は、0度の方向を基準に90度間隔で配置される。
複数の内側吸着部302は、複数の外側吸着部301よりも本体部170の径方向内方において、周方向に沿って並べて配置される。具体的には、複数の内側吸着部302は、第1基板W1における45度方向に4つ配置されるとともに、90度方向に4つ配置される。複数の内側吸着部302は、第3吸引管173aを介して単一の第3真空ポンプ173bに接続され、第3真空ポンプ173bによる真空引きによって第1基板W1を吸着する。ここでは、理解を容易にするため、複数の内側吸着部302のうち、いずれか1つについての配管構成のみを示している。
なお、第1~第3真空ポンプ171b~173bの数や配置は、特に限定されない。第1~第3真空ポンプ171b~173bは、吸着圧力が独立に制御される領域毎に設けられればよい。たとえば、8つの内側吸着部302のうち、45度方向に配置される4つの内側吸着部302と、90度方向に配置される4つの内側吸着部302とは、異なる真空ポンプに接続されてもよい。
図6に戻り、第1保持部140の周囲には、複数の歪形成部150が配置されている。歪形成部150は、当接部材151と、移動機構152とを備える。当接部材151は、第1基板W1に当接する部材であり、たとえばPEEK(Poly Ether Ether Ketone)等の樹脂部材で形成される。これにより、たとえば第1基板W1の金属汚染を抑制することができる。
移動機構152は、第1基板W1の周縁部に当接する位置と第1基板W1の周縁部から離れた位置との間で当接部材151を移動させる。具体的には、移動機構152は、先端部において当接部材151に接続されるスライダ152aと、スライダ152aを水平方向、具体的には、第1基板W1の径方向に沿って移動させるアクチュエータ152bとを備える。アクチュエータ152bは、たとえば本体部170の上部に固定される。
歪形成部150は、上記のように構成されており、当接部材151を移動機構152により第1基板W1の径方向外方から第1基板W1へ向けて移動させて第1基板W1の周縁部に押し当てることで、第1基板W1の周縁部を径方向内方へ向かって押圧する。これにより、歪形成部150は、第1基板W1に歪みを形成する。
ここで、複数の歪形成部150の配置の一例について図10を参照して説明する。図10は、複数の歪形成部150の配置の一例を示す図である。なお、図10には、複数の歪形成部150を下方から見た模式図を示している。
図10に示すように、第1保持部140の周囲には、4つの歪形成部150が配置される。4つの歪形成部150は、複数の外側吸着部301のうち、4つの第1外側吸着部311の径方向外方に配置される。つまり、4つの歪形成部150は、第1基板W1における45度方向に配置される。そして、4つの歪形成部150は、4つの外側吸着部301の径方向外方に位置する第1基板W1の4つの周縁部、すなわち、第1基板W1の45度方向に位置する4つの周縁部を径方向内方に向かって押圧する。
上述したように、第1保持部140の本体部170は、第1基板W1より小さい径を有する。すなわち、第1基板W1は、本体部170から僅かにはみ出した状態で第1保持部140に吸着保持されており、歪形成部150は、第1基板W1の本体部170からはみ出した部分を当接部材151によって押圧する。
当接部材151の先端部は、たとえば平面視V字状に形成されており、各歪形成部150は、第1基板W1の周縁部を2点で押圧する。これにより、たとえば第1基板W1の周縁部を1点で押圧する場合と比較して、第1基板W1の周縁部に局所的な負荷が掛かることを抑制することができる。なお、当接部材151の先端部の形状は、V字状に限定されず、たとえば、第1基板W1の周縁部の形状に沿った円弧状であってもよい。
ここでは、第1保持部140の周囲に4つの歪形成部150が配置されるものとするが、第1保持部140の周囲には、8つの歪形成部150が45度間隔で配置されてもよい。すなわち、第1基板W1の45度方向における周縁部を押圧する4つの歪形成部150と、第1基板W1の90度方向における周縁部を押圧する4つの歪形成部150とが設けられていてもよい。
図6に戻り、第2保持部141について説明する。第2保持部141は、第2基板W2と同径もしくは第2基板W2より大きい径を有する本体部200を有する。ここでは、第2基板W2よりも大きい径を有する第2保持部141を示している。本体部200の上面は、第2基板W2の下面(非接合面W2n)と対向する対向面である。
本体部200の上面には、第2基板W2の下面(非接合面Wn2)に接触する複数のピン201が設けられている。複数のピン201は、たとえば、径寸法が0.1mm~1mmであり、高さが数十μm~数百μmである。複数のピン201は、たとえば2mmの間隔で均等に配置される。
また、本体部200の上面には、下側リブ202が複数のピン201の外側に環状に設けられている。下側リブ202は、環状に形成され、第2基板W2の外周部を全周に亘って支持する。
また、本体部200は、複数の下側吸引口203を有する。複数の下側吸引口203は、下側リブ202によって囲まれた吸着領域に複数(ここでは、3つ)設けられる。複数の下側吸引口203は、図示しない吸引管を介して真空ポンプ等の図示しない吸引装置に接続される。
第2保持部141は、下側リブ202によって囲まれた吸着領域を複数の下側吸引口203から真空引きすることによって吸着領域を減圧する。これにより、吸着領域に載置された第2基板W2は、第2保持部141に吸着保持される。
下側リブ202が第2基板W2の下面の外周部を全周に亘って支持するため、第2基板W2は外周部まで適切に真空引きされる。これにより、第2基板W2の全面を吸着保持することができる。また、第2基板W2の下面は複数のピン201に支持されるため、第2基板W2の真空引きを解除した際に、第2基板W2が第2保持部141から剥がれ易くなる。
次に、実施形態に係る接合システム1の具体的な動作について図11~図13を参照して説明する。図11は、実施形態に係る接合システム1が実行する処理の一部を示すフローチャートである。また、図12および図13は、接合処理の動作説明図である。図13に示す各種の処理は、制御装置70による制御に基づいて実行される。
まず、複数枚の第1基板W1を収容したカセットC1、複数枚の第2基板W2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の第1基板W1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
次に、第1基板W1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが第1基板W1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、第1基板W1の接合面W1jが改質される(ステップS101)。
次に、第1基板W1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された第1基板W1を回転させながら、当該第1基板W1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は第1基板W1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置30において改質された第1基板W1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される。また、当該純水によって、第1基板W1の接合面W1jが洗浄される(ステップS102)。
次に、第1基板W1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された第1基板W1は、トランジション110を介して基板搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、第1基板W1の水平方向の向きが調節される(ステップS103)。
その後、位置調節機構120から反転機構130の保持アーム131に第1基板W1が受け渡される。続いて搬送領域T1において、保持アーム131を反転させることにより、第1基板W1の表裏面が反転される(ステップS104)。すなわち、第1基板W1の接合面W1jが下方に向けられる。
その後、反転機構130の保持アーム131が回動して第1保持部140の下方に移動する。そして、反転機構130から第1保持部140に第1基板W1が受け渡される。第1基板W1は、ノッチ部Nを予め決められた方向、すなわち、第2外側吸着部312が設けられる方向に向けた状態で、第1保持部140にその非接合面W1nが吸着保持される(ステップS105)。
ステップS105において、第1保持部140は、複数の外側吸着部301および複数の内側吸着部302の全てを用いて第1基板W1を吸着保持する。
つづいて、制御装置70は、第1真空ポンプ171bおよび第2真空ポンプ172bを停止することにより、複数の外側吸着部301および複数の内側吸着部302のうち、複数の外側吸着部301による吸着保持を解除する(ステップS106)。
つづいて、制御装置70は、4つの歪形成部150を制御して第1基板W1に歪みを形成する(ステップS107)。具体的には、制御装置70は、第1基板W1から離れた位置に配置された当接部材151を第1基板W1へ向けて移動させて第1基板W1の周縁部に押し当てる。これにより、第1基板W1の45度方向における各周縁部が当接部材151によって径方向内方へ向かって押圧されて、第1基板W1の45度方向における各周縁部に径方向内方に向かう歪みが形成される。なお、たとえば第1基板W1の破損を抑制するために、歪形成部150による押圧力は、10N以下であることが好ましい。
ここで、ステップS105において、第1外側吸着部311による第1基板W1の吸着保持が解除されている。このため、ステップS106において、第1外側吸着部311によって歪みの形成が阻害されることを抑制することができ、周縁部から外周部の径方向に広い領域に歪みを形成することができる。ステップS105およびステップS106の処理は、歪形成処理の一例に相当する。
その後、制御装置70は、第1真空ポンプ171bおよび第2真空ポンプ172bを駆動することにより、複数の外側吸着部301による吸着保持を再開するする(ステップS108)。4つの第1外側吸着部311によって第1基板W1の外周部が吸着保持されることにより、第1基板W1に形成された歪みを第1外側吸着部311による吸着力によって固定することができる。ステップS108の処理は、歪固定処理の一例に相当する。その後、制御装置70は、歪形成部150を制御して、当接部材151を第1基板W1から離れた位置に退避させる。
なお、ここでは、4つの第1外側吸着部311および4つの第2外側吸着部312の全ての吸着保持を解除することとするが、制御装置70は、複数の外側吸着部301のうち、4つの第1外側吸着部311の吸着保持のみを解除してもよい。
第1基板W1に上述したステップS101~S108の処理が行われている間、第2基板W2に対する処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の第2基板W2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
次に、第2基板W2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、第2基板W2の接合面W2jが改質される(ステップS109)。ステップS109における第2基板W2の接合面W2jの改質は、上述したステップS101と同様である。
その後、第2基板W2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、第2基板W2の接合面W2jが親水化されるとともに当該接合面W2jが洗浄される(ステップS110)。ステップS110における第2基板W2の接合面W2jの親水化および洗浄は、上述したステップS102と同様である。
その後、第2基板W2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された第2基板W2は、トランジション110を介して基板搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、第2基板W2の水平方向の向きが調節される(ステップS111)。
その後、第2基板W2は、基板搬送機構111によって第2保持部141に搬送され、第2保持部141に吸着保持される(ステップS112)。第2基板W2は、ノッチ部Nを予め決められた方向、具体的には、第1基板W1のノッチ部Nと同じ方向に向けた状態で、第2保持部141にその非接合面W2nが吸着保持される。
次に、第1保持部140に保持された第1基板W1と第2保持部141に保持された第2基板W2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS113)。
次に、第1保持部140に保持された第1基板W1と第2保持部141に保持された第2基板W2との鉛直方向位置の調節を行う(ステップS114)。具体的には、第1移動部160が第2保持部141を鉛直上方に移動させることによって、第2基板W2を第1基板W1に接近させる。これにより、第2基板W2の接合面W2jと第1基板W1の接合面W1jとの間隔は所定の距離、たとえば50μm~200μmに調整される。
次に、複数の内側吸着部302および複数の第2外側吸着部312による第1基板W1の吸着保持を解除した後(ステップS115)、ストライカー190の押圧ピン191を下降させることによって、第1基板W1の中心部を押下する(ステップS116)。ストライカー190により第1基板W1を押し下げる直前まで、複数の内側吸着部302により第1基板W1の中心部を吸着保持しておくことで、第1基板W1の中心部の自重たわみ(たとえば1μm程度)を抑えることができる。
第1基板W1の中心部が第2基板W2の中心部に接触し、第1基板W1の中心部と第2基板W2の中心部とがストライカー190によって所定の力で押圧されると、押圧された第1基板W1の中心部と第2基板W2の中心部との間で接合が開始する。すなわち、第1基板W1の接合面W1jと第2基板W2の接合面W2jはそれぞれステップS101,S109において改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、第1基板W1の接合面W1jと第2基板W2の接合面W2jはそれぞれステップS102,S110において親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。このようにして、接合領域A(図7参照)が形成される。
その後、第1基板W1と第2基板W2との間では、第1基板W1および第2基板W2の中心部から外周部に向けて接合領域Aが拡大していくボンディングウェーブが発生する(図12参照)。
本実施形態に係る接合装置41では、第1基板W1の異方性に合わせて配置された複数の外側吸着部301のうち、接合領域Aが最も速く拡大する45°方向に配置した4つの第1外側吸着部311のみを用いて第1基板W1を吸着保持することとした。言い換えれば、接合領域Aが最も遅く拡大する90°方向においては第1基板W1を吸着保持しないこととした。
これにより、第1基板W1の外縁の全周を吸着保持する場合と比較して、第1基板W1に加わるストレス・歪みの分布の不均一さを緩和することができる。この結果、ボンディングウェーブの不均一さが緩和されて、接合領域Aが同心円状に近い状態で拡大するようになる。これにより、本実施形態に係る接合装置41は、異方性に起因する重合基板Tの歪み(ディストーション)を低減することができる。
その後、4つの第1外側吸着部311による第1基板W1の吸着保持を解除する(ステップS117)。これにより、4つの第1外側吸着部311によって吸着保持されていた第1基板W1の45度方向における外周部が落下する。この結果、図13に示すように、第1基板W1の接合面W1jと第2基板W2の接合面W2jが全面で当接し、重合基板Tが形成される。
このように、本実施形態に係る接合装置41では、第1基板W1の45度方向における外周部を4つの第1外側吸着部311により、第1基板W1と第2基板W2とが接合される直前まで吸着保持する。このため、第1基板W1の45度方向における周縁部から外周部の領域には、径方向外方へ向かう歪みが生じる。この結果、第1基板W1の45度方向における周縁部から外周部の領域において第1基板W1および第2基板W2の貼り合わせ精度が低下するおそれがある。
これに対し、本実施形態に係る接合装置41では、第1基板W1の45度方向における周縁部から外周部の領域に対して予め径方向内方へ向かう歪みを形成しておくこととした。これにより、接合時に生じる径方向外方へ向かう歪みを、予め形成しておいた径方向内方へ向かう歪みによって相殺することができる。したがって、本実施形態に係る接合装置41によれば、重合基板Tの歪み、特に、45度方向における周縁部から外周部の領域に生じる歪みを抑えることができる。
4つの歪形成部150は、第1基板W1の周縁部を押圧するものであって、第1基板W1を吸着保持するものではないため、歪形成部150により第1基板W1を押圧しても、第1保持部140の平坦度が崩れることはない。このため、たとえば、第1保持部140の外周部を吸着保持する部分を径方向に沿って移動可能に構成した場合と比較して、第1保持部140の平坦度が崩れることによる貼り合わせ精度の低下を抑制することができる。
その後、押圧ピン191を第1保持部140まで上昇させ、第2保持部141による第2基板W2の吸着保持を解除する。その後、重合基板Tは、搬送装置61によってトランジション装置51に搬送され、その後、搬入出ステーション2の搬送装置22によってカセットC3に搬送される。こうして、一連の接合処理が終了する。
上述してきたように、本実施形態に係る接合装置41は、第1保持部140と、第2保持部141と、複数の歪形成部150とを備える。第1保持部140は、周方向に沿って並べられた複数の外側吸着部301を有し、複数の外側吸着部301を用いて第1基板W1の外周部を吸着保持する。第2保持部141は、第2基板W2を吸着保持する。ストライカー190は、第1保持部140に吸着保持された第1基板W1の中心部を押圧して第2保持部141に吸着保持された第2基板W2に接触させる。複数の歪形成部150は、複数の外側吸着部301の径方向外方に位置する第1基板W1の周縁部を径方向内方へ向かって押圧することによって第1基板W1に歪みを形成する。
複数の歪形成部150を用いて第1基板W1に径方向内方へ向かう歪みを予め形成しておくことで、第1基板W1と第2基板W2とを貼り合わせる際に生じる径方向外方へ向かう歪みを相殺することができる。したがって、本実施形態に係る接合装置41によれば、接合後の基板である重合基板Tの歪みを抑えることができる。
また、第1保持部140は、第1基板W1の外周部を吸着保持する本体部170を備える。そして、本体部170は、第1基板W1よりも小さい径を有する。すなわち、第1基板W1は、本体部170から僅かにはみ出した状態で第1保持部140に吸着保持される。したがって、歪形成部150は、本体部170からはみ出した第1基板W1の周縁部を径方向内側へ向かって押圧することができる。
また、本実施形態に係る接合装置41は、制御装置70(制御部の一例)を備える。制御装置70は、歪形成処理と、歪固定処理と、接合処理とを実行する。歪形成処理は、複数の歪形成部150を制御して、第1基板W1に歪みを形成する処理である。歪固定処理は、第1保持部140を制御して、歪形成処理によって第1基板W1に形成された歪みを外側吸着部301による吸着力によって固定する処理である。接合処理は、第1基板W1に歪みが形成された状態で、ストライカー190を制御して、第1基板W1の中心部を第2基板W2に接触させて第1基板W1と第2基板W2とを接合させる処理である。
このように、歪形成処理によって第1基板W1に形成された歪みは、歪固定処理によって固定される。これにより、歪形成部150を第1基板W1から離れた場所に退避させることができることから、接合処理において第1保持部140と第2保持部141とを接近させる際に、歪形成部150が邪魔になることがない。
また、第1保持部140は、複数の外側吸着部301よりも径方向内方に設けられた内側吸着部302を備える。そして、制御装置70は、歪形成処理において、第1保持部140を制御して、内側吸着部302により第1基板W1を吸着保持した状態で、複数の歪形成部150を制御して、第1基板W1に歪みを形成する。
このように、内側吸着部302により第1基板W1を吸着保持することで、仮に、複数の外側吸着部301による第1基板W1の吸着保持を解除したとしても、第1基板W1の落下を抑制することができる。
また、歪形成部150は、当接部材151と、当接部材151を移動させる移動機構152とを備える。そして、歪形成部150は、当接部材151を移動機構152により第1基板W1の径方向外方から第1基板W1へ向けて移動させることによって第1基板W1の周縁部に押し当てることで、第1基板W1の周縁部を径方向内方へ向かって押圧する。
このように、歪形成部150は、第1基板W1を吸着保持するものではない。このため、歪形成部150により第1基板W1を押圧しても、第1保持部140の平坦度が崩れることはない。したがって、たとえば、第1保持部140の外周部を吸着保持する部分を径方向に沿って移動可能に構成した場合と比較して、第1保持部140の平坦度が崩れることによる貼り合わせ精度の低下を抑制することができる。
また、複数の外側吸着部301は、90度間隔で配置される4つの第1外側吸着部311と、4つの第1外側吸着部311に対して周方向に45度ずれて配置される4つの第2外側吸着部312とを備える。そして、複数の歪形成部150は、4つの第1外側吸着部311の径方向外方に位置する第1基板W1の周縁部を径方向内方へ向かって押圧する。
たとえば、4つの第1外側吸着部311および4つの第2外側吸着部312のうち、4つの第1外側吸着部311の径方向外方に位置する第1基板W1の周縁部のみが、貼り合わせの際に径方向外方に向かって歪む場合がある。このような場合に、4つの第1外側吸着部311の径方向外方に位置する第1基板W1の周縁部に予め歪みを形成しておくことで、第1基板W1と第2基板W2とを貼り合わせる際に生じる径方向外方へ向かう歪みを相殺することができる。
また、第1基板W1は、表面の結晶方向が[100]である単結晶シリコンウェハである。そして、4つの第1外側吸着部311は、第1基板W1の中心部から第1基板W1の表面に対して平行な[0-11]結晶方向に向かう方向を0度と規定したとき、45度の方向を基準に90度間隔で配置される。
たとえば、複数の外側吸着部301のうち4つの第1外側吸着部311のみを用いて第1基板W1を吸着保持した状態で接合処理を行うことで、第1基板W1の物性の異方性に起因する第1基板W1の歪みを抑えることができる。一方、4つの第1外側吸着部311のみを用いて第1基板W1を吸着保持した状態で接合処理を行うと、第1基板W1の45度方向における周縁部に径方向外方へ向かう歪みが生じる。これに対し、本実施形態に係る接合装置41では、4つの歪形成部150により第1基板W1の45度方向における周縁部に予め径方向内方に向かう歪みを形成しておくことで、接合時に生じる径方向外方へ向かう歪みを相殺することができる。したがって、本実施形態に係る接合装置41によれば、重合基板Tの歪み、特に、45度方向における周縁部から外周部の領域に生じる歪みを抑えることができる。
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求お範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
ここで、上述した歪形成部150の変形例について図14~図17を参照して説明する。図14および図15は、第1の変形例に係る歪形成部の構成を示す模式図である。また、図16および図17は、第2の変形例に係る歪形成部の構成を示す模式図である。
図14および図15に示すように、第1の変形例に係る歪形成部150Aは、当接部材151Aと、移動機構152Aとを備える。当接部材151Aは、たとえば逆L字状の部材であり、水平方向に延在する第1部分151Aaと、第1部分151Aaの先端から鉛直下方に延在する第2部分151Abとを有する。移動機構152Aは、鉛直方向に延在し、当接部材151Aの第1部分151Aaを回転可能に支持する回転軸部152Aaと、回転軸部152Aaを鉛直軸まわりに回転させるアクチュエータ152Abとを備える。なお、図15では、アクチュエータ152Abを省略して示している。
第1の変形例に係る歪形成部150Aは、上記のように構成されており、移動機構152Aにより当接部材151Aを鉛直軸周りに回転させることによって、当接部材151Aを第1基板W1の径方向外方から第1基板W1へ向けて移動させる。これにより、当接部材151Aの第2部分151Abが第1基板W1の周縁部を押圧することで、第1基板W1の周縁部に径方向内方へ向かう歪みを形成することができる。
また、上述してきた例では、第1保持部140の本体部170が第1基板W1よりも小さい径を有しており、第1基板W1が全周にわたって本体部170からはみ出る場合について説明した。しかし、これに限らず、第1保持部の本体部は、第1基板W1と同径または第1基板W1よりも大きい径を有していてもよい。
この場合、たとえば、図16および図17に示すように、第1保持部140Bの本体部170Bは、本体部170Bを周縁部から外周部にかけて切り欠いた切欠部148を有していればよい。切欠部148は、第1基板W1の45度方向における周縁部(4箇所)に設けられる。あるいは、切欠部148は、第1基板W1の45度方向および90度方向における周縁部(8箇所)に設けられる。
第2の変形例に係る歪形成部150Bは、当接部材151Bと、移動機構152Bとを備える。当接部材151Bは、たとえば棒状の部材であり、切欠部148に配置される。移動機構152Bは、水平方向に延在し、当接部材151Bを回転可能に支持する回転軸部152Baと、回転軸部152Baを軸芯まわりに回転させるアクチュエータ152Bbとを備える。なお、図17では、アクチュエータ152Bbを省略して示している。
第2の変形例に係る歪形成部150Bは、上記のように構成されており、移動機構152Bにより当接部材151Bを水平軸周りに回転させることにより、当接部材151Bを第1基板W1の径方向外方から第1基板W1へ向けて移動させる。これにより、当接部材151Bが第1基板W1の周縁部を押圧することで、第1基板W1の周縁部に径方向内方へ向かう歪みを形成することができる。
なお、第2の変形例に係る第1保持部140Bの周囲には、歪形成部150Bに代えて、歪形成部150(図6参照)あるいは歪形成部150A(図14参照)が配置されてもよい。
上述した実施形態では、第1保持部140が、複数の外側吸着部301として、4つの第1外側吸着部311と4つの第2外側吸着部312とを備える場合の例について説明したが、第1保持部140の構成は上記の例に限定されない。たとえば、第1保持部は、複数の外側吸着部301のうち、4つの第1外側吸着部311のみを備える構成であってもよい。また、上述した実施形態では、第1保持部140が、複数の内側吸着部302を備える場合の例について説明したが、第1保持部は、リング状に繋がった単一の内側吸着部を備えていてもよい。
また、上述した実施形態では、第1保持部140が第1基板W1を真空吸着する場合の例について説明したが、第1保持部は、第1基板W1を静電吸着してもよい。
また、上述した実施形態では、複数の歪形成部150が、第1保持部140の周囲に配置される場合の例について説明したが、複数の歪形成部150は、第1保持部140に加えて第2保持部141の周囲にも配置されてよい。