以下、図面を参照しながら、荷電粒子装置、計測システム、及び、荷電粒子ビームの照射方法の実施形態について説明する。以下では、局所的な真空領域VSPを介して電子ビームEBを試料Wに照射して当該試料Wに関する情報を取得する(例えば、試料Wの状態を計測する)走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)SEMを用いて、荷電粒子装置、計測システム、及び、荷電粒子ビームの照射方法の実施形態を説明する。試料Wは、例えば、半導体基板である。但し、試料Wは、半導体基板とは異なる物体であってもよい。試料Wは、例えば、直径が約300ミリメートルであり、厚さが約700マイクロメートルから800マイクロメートルとなる円板状の基板である。但し、試料Wは、任意のサイズを有する任意の形状の基板(或いは、物体)であってもよい。例えば、試料Wは、液晶表示素子等のディスプレイのための角形基板やフォトマスクのための角形基板であってもよい。
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、走査型電子顕微鏡SEMを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。更に、+Z側が上方(つまり、上側)に相当し、-Z側が下方(つまり、下側)に相当するものとする。尚、Z軸方向は、走査型電子顕微鏡SEMが備える後述のビーム光学系11の光軸AXに平行な方向でもある。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。
(1)走査型電子顕微鏡SEMの構造
はじめに、図1から図5を参照しながら、走査型電子顕微鏡SEMの構造について説明する。図1は、走査型電子顕微鏡SEMの構造を示す断面図である。図2は、走査型電子顕微鏡SEMが備えるビーム照射装置1の構造を示す断面図である。図3は、走査型電子顕微鏡SEMが備えるビーム照射装置1の構造を示す斜視図である。図4は、走査型電子顕微鏡SEMが備えるステージ22の構造を示す断面図である。図5は、走査型電子顕微鏡SEMが備えるステージ22の構造を示す平面図である。尚、図面の簡略化のために、図1は、走査型電子顕微鏡SEMの一部の構成要素については、その断面を示していない。
図1に示すように、走査型電子顕微鏡SEMは、ビーム照射装置1と、ステージ装置2と、支持フレーム3と、制御装置4と、ポンプ系5とを備える。更に、ポンプ系5は、真空ポンプ51と、真空ポンプ52と、真空ポンプ53と、真空ポンプ54とを備える。尚、走査型電子顕微鏡SEMは、少なくともビーム照射装置1と、ステージ装置2と、支持フレーム3とを収容するチャンバを備えていてもよい。また、このチャンバに接続されて、チャンバ内の空間、特に試料Wの周囲の空間の温度・湿度を制御する空調機を備えていてもよい。
ビーム照射装置1は、ビーム照射装置1から下方に向けて電子ビームEBを射出可能である。ビーム照射装置1は、ビーム照射装置1の下方に配置されるステージ装置2が保持する試料Wに対して電子ビームEBを照射可能である。試料Wに対して電子ビームEBを照射するために、ビーム照射装置1は、図2及び図3に示すように、ビーム光学系11と、差動排気系12とを備えている。
図2に示すように、ビーム光学系11は、筐体111を備えている。筐体111は、ビーム光学系11の光軸AXに沿って延びる(つまり、Z軸に沿って延びる)ビーム通過空間SPb1が内部に確保されている円筒状の部材である。ビーム通過空間SPb1は、電子ビームEBが通過する空間として用いられる。ビーム通過空間SPb1を通過する電子ビームEBが筐体111を通過する(つまり、筐体111の外部へ漏れ出す)ことを防止するために、筐体111は、高透磁率材料から構成されていてもよい。高透磁率材料の一例として、パーマロイ及びケイ素鋼の少なくとも一方があげられる。これらの高透磁率材料の比透磁率は1000以上である。
ビーム通過空間SPb1は、電子ビームEBが照射される期間中は、真空空間となる。具体的には、ビーム通過空間SPb1には、ビーム通過空間SPb1に連通するように(つまり、つながるように)筐体111(更には、後述する側壁部材122)に形成される配管117を介して真空ポンプ51が連結されている。真空ポンプ51は、ビーム通過空間SPb1が真空空間となるように、ビーム通過空間SPb1を排気して大気圧よりも減圧する。このため、本実施形態における真空空間は、大気圧よりも圧力が低い空間を意味していてもよい。特に、真空空間は、電子ビームEBの試料Wへの適切な照射を妨げないほどにしか気体分子が存在しない空間(言い換えれば、電子ビームEBの試料Wへの適切な照射を妨げない真空度となる空間)を意味していてもよい。ビーム通過空間SPb1は、筐体111の下面に形成されたビーム射出口(つまり、開口)119を介して、筐体111の外部の空間(より具体的には、後述する差動排気系12のビーム通過空間SPb2)に連通している。尚、ビーム通過空間SPb1は、電子ビームEBが照射されない期間中に真空空間となってもよい。
ビーム光学系11は更に、電子銃113と、電磁レンズ114と、対物レンズ115と、電子検出器116とを備える。電子銃113は、-Z側に向けて電子ビームEBを放出する。尚、電子銃113の代わりに光が照射されたとき電子を放出する光電変換面を用いてもよい。電磁レンズ114は、電子銃113が放出した電子ビームEBを制御する。例えば、電磁レンズ114は、電子ビームEBが所定の光学面(例えば、電子ビームEBの光路に交差する仮想面)上に形成する像の回転量(つまり、θZ方向の位置)、当該像の倍率、及び、結像位置に対応する焦点位置のいずれか一つを制御してもよい。対物レンズ115は、電子ビームEBを所定の縮小倍率で試料Wの表面(具体的には、電子ビームEBが照射される面であり、図1及び図2に示す例では+Z側を向いている面であって且つXY平面に沿った面)WSuに結像させる。電子検出器116は、pn接合又はpin接合の半導体を使用した半導体型電子検出装置(つまり、半導体検出装置)である。電子検出器116は、試料Wに対する電子ビームEBの照射によって生じた電子(例えば、反射電子及び散乱電子の少なくとも一方。散乱電子は2次電子を含む)を検出する。制御装置4は、電子検出器116の検出結果に基づいて、試料Wの状態を特定する。例えば、制御装置4は、電子検出器116の検出結果に基づいて、試料Wの表面WSuの3次元形状を特定する。尚、本実施形態では、試料Wの表面WSuは理想的には平面であり、制御装置4は、その表面WSuに形成されている微細な凹凸パターンの形状を含む表面WSuの3次元形状を特定するものとする。尚、試料Wの表面WSuは平面でなくてもよい。また、電子検出器116は、後述する差動排気系12に設けられてもよい。
差動排気系12は、真空形成部材121と、側壁部材122とを備える。側壁部材122は、真空形成部材121から上方に延びる筒状の部材である。側壁部材122は、内部に筐体111(つまり、ビーム光学系11)を収容する。側壁部材122は、内部にビーム光学系11を収容した状態でビーム光学系11と一体化されるが、ビーム光学系11から分離可能であってもよい。真空形成部材121は、ビーム光学系11の下方(つまり、-Z側)に配置される。真空形成部材121は、ビーム光学系11の下方において、ビーム光学系11に接続される(つまり、連結)される。真空形成部材121は、ビーム光学系11に接続されてビーム光学系11と一体化されるが、分離可能であってもよい。真空形成部材121の内部には、ビーム通過空間SPb2が形成されている。尚、図3は、真空形成部材121が、ビーム通過空間SPb2の一部であるビーム通過空間SPb2-1が形成された真空形成部材121-1、ビーム通過空間SPb2の一部であるビーム通過空間SPb2-2が形成された真空形成部材121-2、及び、ビーム通過空間SPb2の一部であるビーム通過空間SPb2-3が形成された真空形成部材121-3が、ビーム通過空間SPb2-1からSPb2-3が連通するように積層された構造を有する例を示しているが、真空形成部材121の構造がこの例に限定されることはない。ビーム通過空間SPb2は、真空形成部材121の上面(図3に示す例では、真空形成部材121-3の+Z側の面)に形成されたビーム射出口(つまり、開口)1231を介して、ビーム光学系11のビーム通過空間SPb1に連通している。ビーム通過空間SPb2は、ビーム通過空間SPb1と共に、真空ポンプ51によって排気される(つまり、減圧される)。従って、ビーム通過空間SPb2は、電子ビームEBが照射される期間中は、真空空間となる。ビーム通過空間SPb2は、ビーム通過空間SPb1からの電子ビームEBが通過する空間として用いられる。ビーム通過空間SPb1及びSPb2の少なくとも一方を通過する電子ビームEBが真空形成部材121及び側壁部材122の少なくとも一方を通過する(つまり、差動排気系12の外部へ漏れ出す)ことを防止するために及び/又はビーム照射装置1の外部の磁場(いわゆる、外乱磁場)がビーム通過空間SPb1及びSPb2の少なくとも一方を通過する電子ビームEBに影響を与えることを防止するために、真空形成部材121及び側壁部材122の少なくとも一方は、高透磁率材料から構成されていてもよい。
真空形成部材121は更に、試料Wの表面WSuに対向可能な射出面121LSを備える。図3に示す例では、真空形成部材121-1が、射出面121LSを備えている。ビーム照射装置1は、射出面121LSと表面WSuとの間の間隔D(つまり、Z軸方向におけるビーム照射装置1と試料Wとの間の間隔D)が所望間隔D_target(例えば、10μm以下且つ1μm以上)となるように、後述する間隔調整系14によって、試料Wに対して位置合わせされる。尚、間隔Dは射出面121LSと表面WSuとのZ軸方向における距離と称してもよい。射出面121LSには、ビーム射出口(つまり、開口)1232が形成されている。尚、真空形成部材121は、試料Wの表面WSuに対向可能な射出面121LSを備えていなくてもよい。図2に示すように、ビーム通過空間SPb2は、ビーム射出口1232を介して、真空形成部材121の外部のビーム通過空間SPb3に連通している。つまり、ビーム通過空間SPb1は、ビーム通過空間SPb2を介してビーム通過空間SPb3に連通している。但し、ビーム通過空間SPb2が確保されていなくてもよい。つまり、ビーム通過空間SPb1は、ビーム通過空間SPb2を介することなくビーム通過空間SPb3に直接連通していてもよい。ビーム通過空間SPb3は、試料W上の局所的な空間である。ビーム通過空間SPb3は、ビーム照射装置1と試料Wとの間(具体的には、射出面121LSと表面WSuとの間)において電子ビームEBが通過する局所的な空間である。ビーム通過空間SPb3は、試料Wの表面WSuのうち電子ビームEBが照射される照射領域に少なくとも面する(或いは、覆う又は接する)空間である。ビーム通過空間SPb3は、ビーム通過空間SPb1及びSPb2と共に、真空ポンプ51によって排気される(つまり、減圧される)。従って、ビーム通過空間SPb3は、電子ビームEBが照射される期間中は、真空空間となる。このため、電子銃113から放出された電子ビームEBは、いずれも真空空間であるビーム通過空間SPb1からSPb3の少なくとも一部を介して試料Wに照射される。尚、ビーム通過空間SPb3は、電子ビームEBが照射されない期間中に真空空間となってもよい。
ビーム通過空間SPb3は、ビーム通過空間SPb1及びSPb2よりも真空ポンプ51から離れた位置にある。ビーム通過空間SPb2は、ビーム通過空間SPb1よりも真空ポンプ51から離れた位置にある。このため、ビーム通過空間SPb3の真空度は、ビーム通過空間SPb1及びSPb2の真空度よりも低くなる可能性があり、且つ、ビーム通過空間SPb2の真空度は、ビーム通過空間SPb1の真空度よりも低くなる可能性がある。尚、本実施形態における「空間Aの真空度よりも空間Bの真空度が低い」状態は、「「空間Aの圧力よりも空間Bの圧力が高い」ことを意味する。この場合、真空ポンプ51は、真空度が最も低くなる可能性があるビーム通過空間SPb3の真空度を、電子ビームEBの試料Wへの適切な照射を妨げない真空度にすることができる程度の排気能力を有する。一例として、真空ポンプ51は、ビーム通過空間SPb3の圧力(つまり、気圧)を1×10-3パスカル以下に維持する(例えば、概ね1×10-3パスカルから1×10-4パスカルのオーダーで維持する)ことができる程度の排気能力を有していてもよい。このような真空ポンプ51として、例えば、主ポンプとして用いられるターボ分子ポンプ(或いは、拡散ポンプ、クライオポンプ及びスパッタイオンポンプの少なくとも一つを含む他の種類の高真空用ポンプ)と補助ポンプとして用いられるドライポンプ(或いは、他の種類の低真空用ポンプ)とが組み合わせられた真空ポンプが用いられてもよい。尚、真空ポンプ51は、ビーム通過空間SPb3の圧力(つまり、気圧)を1×10-3パスカル以下に維持することができる程度の排気速度[m3/s]であってもよい。
但し、ビーム通過空間SPb3は、ビーム通過空間SPb1及びSPb2のように何らかの部材(具体的には、筐体111及び真空形成部材121)によって周囲を取り囲まれた閉鎖空間ではない。つまり、ビーム通過空間SPb3は、何らかの部材によって周囲を取り囲まれていない開放空間である。このため、ビーム通過空間SPb3が真空ポンプ51によって減圧されたとしても、ビーム通過空間SPb3には、ビーム通過空間SPb3の周囲から気体が流入する。その結果、ビーム通過空間SPb3の真空度が低下する可能性がある。そこで、差動排気系12は、ビーム照射装置1と試料Wとの間において差動排気を行うことで、ビーム通過空間SPb3の真空度を維持する。つまり、差動排気系12は、ビーム照射装置1と試料Wとの間において差動排気を行うことで、ビーム照射装置1と試料Wとの間に、周囲と比較して相対的に高い真空度が維持された局所的な真空領域VSPを形成し、局所的な真空領域VSPが局所的なビーム通過空間SPb3を含むようにする。言い換えれば、差動排気系12は、局所的なビーム通過空間SPb3が局所的な真空領域VSPに含まれるように、差動排気を行う。尚、本実施形態での差動排気は、試料Wとビーム照射装置1との間において、一の空間(例えば、ビーム通過空間SPb3)と一の空間とは異なる他の空間との間の気圧差が試料Wとビーム照射装置1との間の間隙の排気抵抗によって維持されるという性質を利用しながらビーム通過空間SPb3を排気することに相当する。ビーム通過空間SPb3が試料Wの表面WSuのうちの少なくとも一部(例えば、電子ビームEBが照射される照射領域)を局所的に覆うことから、真空領域VSPもまた、試料Wの表面WSuのうちの少なくとも一部(例えば、電子ビームEBが照射される照射領域)を局所的に覆う。具体的には、真空形成部材121の射出面121LSには、ビーム射出口1232を取り囲む排気溝(つまり、真空形成部材121を貫通しない開口)124が形成されている。排気溝124には、排気溝124に連通するように真空形成部材121及び側壁部材122に形成される配管125を介して真空ポンプ52が連結されている。尚、図3は、差動排気系12が、排気溝124から真空ポンプ52に到達するまでに配管125が集約されていく構造を有する例を示している。具体的には、図3は、排気溝124が形成されている真空形成部材121-1に、環状の排気溝124から真空形成部材121-1を貫通するように上方に延びる環状の流路125-1が形成され、真空形成部材121-2に、流路125-1に連通するN1本(図3に示す例では、4本)の配管125-21及びN1本の配管125-21を集約する環状の集約流路125-22が形成され、真空形成部材121-3に、集約流路125-22に連通するN2(但し、N2<N1)本(図3に示す例では、2本)の配管125-31及びN2本の配管125-31を集約する環状の集約流路125-32が形成され、集約流路125-32に配管125-4が連通し、配管125-4が真空ポンプ52に接続される例を示している。尚、ここでは配管125-31の本数N2を配管125-21の本数N1の半分であり、1本の配管125-31はこれと連通する2本の配管125-21からほぼ等距離に位置している。また、配管125-31の本数N2を配管125-4の本数(図3に示す例では、1本)の半分であり、配管125-4はこれと連通する2本の配管125-31からほぼ等距離に位置している。よって、それぞれの配管125-21を介した排気経路の長さと圧損はほぼ等しく、排気溝124から排気される空気の量は方位に依らず偏らない。但し、配管125の構造がこの例に限定されることはない。真空ポンプ52は、排気溝124を介して、ビーム通過空間SPb3の周囲の空間を排気する。その結果、差動排気系12は、ビーム通過空間SPb3の真空度を適切に維持することができる。尚、排気溝124は1つにつながった環状でなくてもよく、環の一部を複数有する複数の排気溝であってもよい。
図2に戻って、真空ポンプ52は、主として、ビーム通過空間SPb3の真空度を相対的に高くするために、ビーム通過空間SPb3の周囲の局所的な空間を排気するために用いられる。このため、真空ポンプ52は、真空ポンプ51が維持する真空度よりも低い真空度を維持することができる程度の排気能力を有していてもよい。つまり、真空ポンプ52の排気能力は、真空ポンプ51の排気能力よりも低くてもよい。例えば、真空ポンプ52は、ドライポンプ(或いは、他の種類の低真空用ポンプ)を含む一方でターボ分子ポンプ(或いは、他の種類の高真空用ポンプ)を含んでいない真空ポンプであってもよい。この場合、真空ポンプ52によって減圧される排気溝124及び配管125内の空間の真空度は、真空ポンプ51によって減圧されるビーム照射空間SPb1からSPb3の真空度よりも低くてもよい。尚、真空ポンプ52は、真空ポンプ51が維持する真空度よりも低い真空度を維持することができる程度の排気速度[m3/s][m3s-1]であってもよい。
このようにビーム通過空間SPb3に局所的な真空領域VSPが形成される一方で、試料Wの表面WSuのうちビーム通過空間SPb3に面していない部分(特に、ビーム通過空間SPb3から離れた部分)の少なくとも一部は、真空領域VSPよりも真空度が低い非真空領域に覆われていてもよい。典型的には、試料Wの表面WSuのうちビーム空間SPb3に面していない部分の少なくとも一部は、大気圧環境下にあってもよい。このため、真空領域VSPが局所的に形成される状態は、試料Wの表面WSu上において真空領域VSPが局所的に形成される状態(つまり、試料Wの表面WSuに沿った方向において真空領域VSPが局所的に形成される状態)を意味していてもよい。
再び図1において、ステージ装置2は、ビーム照射装置1の下方(つまり、-Z側)に配置される。ステージ装置2は、定盤21と、ステージ22とを備える。定盤21は、床等の支持面SF上に配置される。ステージ22は、定盤21上に配置される。ステージ22と定盤21との間には、定盤21の振動のステージ22への伝達を防止するための不図示の防振装置が設置されている。
ステージ22は、試料Wを保持可能である。ステージ22は、保持した試料Wをリリース可能である。試料Wをリリース可能に保持するために、ステージ22は、図4及び図5に示すように、底部材221と、側壁部材222と、複数の支持部材223とを備える。底部材221は、XY平面に沿って延びる円板状の(或いは、その他の任意の形状の)部材である。試料Wの外形又は輪郭が円形状である場合には、底部材221は円板状であってもよく、試料Wの外形又は輪郭が矩形状である場合には、底部材221は矩形状であってもよい。側壁部材222は、底部材221の外縁において、底部材221から上方(つまり、+Z側)に突き出るように形成される部材である。側壁部材222は、平面視において環状の形状(或いは、その他の任意の形状)を有する部材である。試料Wの外形又は輪郭が円形状である場合には、側壁部材222は平面視において環状の形状であってもよく、試料Wの外形又は輪郭が矩形状である場合には、側壁部材222は平面視において矩形状であってもよい。側壁部材222の上面(つまり、+Z側の面)222Suは、底部材221の上面221Suよりも上方に位置する。このため、ステージ22には、底部材221と側壁部材222とによって囲まれた凹部空間に相当するステージ空間SPsが形成されている。複数の支持部材223の夫々は、側壁部材222によって囲まれた領域(つまり、ステージ空間SPs)において、底部材221から上方(つまり、+Z側)に突き出るように底部材221に形成されるピン状の又は円錐状の若しくは角錐状の部材である。複数の支持部材223は、側壁部材222によって囲まれた領域において、規則的な(或いは、ランダムな)配列パターンで配列されている。尚、複数の支持部材223は、側壁部材222によって囲まれた領域において、一様に分布するという規則的な配列パターンであってもよく、側壁部材222によって囲まれた領域における当該領域の中心(重心)からの距離に応じて密度が異なるという規則的な配列パターンであってもよい。支持部材223の上面223Suは、側壁部材222の上面222Suと同じ高さに位置する。つまり、支持部材223の上面223Suは、側壁部材222の上面222Suと同じ平面に位置していてもよい。ステージ22は、試料Wの裏面(つまり、表面WSuの逆側の面であって、-Z側の面)WSlが側壁部材222の上面222Su及び複数の支持部材223の上面223Suに接触する状態で、試料Wを保持する。ステージ22は、試料Wの裏面WSlがステージ空間SPsに面する状態で、試料Wを保持する。
底部材221の上面221Suには、排気口2241が形成されている。排気口2241には、配管2251を介して真空ポンプ53が連結されている。真空ポンプ53は、底部材221と側壁部材222と試料Wとによって囲まれたステージ空間SPsを排気して大気圧よりも減圧可能である。ここで、試料Wの表面WSu(但し、試料Wの表面WSuのうち上述した局所的な真空領域VSPに面する真空面部分WSu_vacを除く)が大気圧にさらされている。このため、ステージ空間SPsが排気される(つまり、減圧される)と、試料Wには、試料Wをステージ空間SPsに引き寄せる負圧が作用する。ステージ22は、この負圧を利用して試料Wを真空吸着することで、試料Wを保持する。従って、ステージ22は、いわゆる真空チャックを利用して試料Wを保持するステージであると言える。
真空ポンプ53は、ステージ22が試料Wを真空吸着して保持することができる程度の排気能力を有していればよい。例えば、真空ポンプ53は、ステージ空間SPsの圧力を、大気圧(つまり、概ね1×105パスカル程度のオーダーの圧力)よりも小さい圧力(例えば、5×104パスカル程度のオーダーの圧力)に維持することができる程度の排気能力を有していればよい。更に、真空ポンプ53は、ビーム通過空間SPb1からSPb3を排気する真空ポンプ51よりも低い排気能力を有していてもよい。つまり、真空ポンプ53は、試料Wの裏面WSlに面するステージ空間SPsの圧力を、試料Wの表面WSuに面するビーム通過空間SPb3の圧力(つまり、真空領域VSPの圧力)ほどには低くしなくてもよい程度の排気能力を有していてもよい。尚、真空ポンプ53は、ステージ空間SPsの圧力を5×104パスカル以下に維持することができる程度の排気速度[m3/s]であってもよい。
底部材221の上面には更に、排気口2242が形成されている。排気口2242には、配管2252を介して真空ポンプ54が連結されている。真空ポンプ54は、真空ポンプ53と同様に、ステージ空間SPsを排気して大気圧よりも減圧可能である。ステージ空間SPsが減圧されると、ステージ空間SPsの圧力と真空領域VSPの圧力との差は、大気圧と真空領域VSPの圧力との差よりも小さくなる。この場合、底部材221と側壁部材222と試料Wとは、ステージ空間SPsの気密性を確保可能な部材(つまり、ステージ空間SPsを密閉可能な部材であって、ステージ空間SPsとステージ空間SPsの外部の空間との間に圧力差を形成可能な部材)として用いられる。真空ポンプ54は、ビーム通過空間SPb1からSPb3を排気する真空ポンプ51と同等程度の排気能力を有している。一例として、真空ポンプ54は、ステージ空間SPsの圧力を1×10-3パスカル以下に維持する(例えば、概ね1×10-3パスカルから1×10-4パスカルのオーダーで維持する)ことができる程度の排気能力を有していてもよい。尚、真空ポンプ54は、ステージ空間SPsの圧力を1×10-3パスカル以下に維持することができる程度の排気速度[m3/s]であってもよい。このような真空ポンプ54として、例えば、主ポンプとして用いられるターボ分子ポンプ(或いは、拡散ポンプ、クライオポンプ及びスパッタイオンポンプの少なくとも一つを含む他の種類の高真空用ポンプ)と補助ポンプとして用いられるドライポンプ(或いは、他の種類の低真空用ポンプ)とが組み合わせられた真空ポンプが用いられてもよい。このため、真空ポンプ54がステージ空間SPsを排気する場合には、真空ポンプ53がステージ空間SPsを排気する場合と比較して、試料Wの表面WSu(特に、局所的な真空領域VSPに面する真空面部分WSu_v)に対する圧力と、試料Wの裏面WSlに対する圧力との間の差(つまり、圧力差)が小さくなる。つまり、ステージ空間SPsの圧力と真空領域VSPの圧力との差が小さくなる。本実施形態では、走査型電子顕微鏡SEMは、このように真空ポンプ54を用いて試料Wの表面WSu(特に、真空面部分WSu_v)に対する圧力と試料Wの裏面WSlに対する圧力との間の差を小さくすることで、真空領域VSPの形成に起因した試料Wの変形を抑制するための変形抑制動作を行う。尚、変形抑制動作については、後に詳述する。
再び図1において、ステージ22は、制御装置4の制御下で、試料Wを保持したまま、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動可能である。ステージ22を移動させるために、ステージ装置2は、ステージ駆動系23を備えている。ステージ駆動系23は、例えば、任意のモータ(例えば、リニアモータ等)を用いて、ステージ22を移動させる。更に、ステージ装置2は、ステージ22の位置を計測する位置計測装置24を備えている。位置計測装置24は、例えば、エンコーダ及びレーザ干渉計のうちの少なくとも一方を含む。尚、ステージ22が試料Wを保持している場合には、制御装置4は、ステージ22の位置から試料Wの位置を特定可能である。尚、ステージ22は、ビーム照射装置1による電子ビームEBの位置と、ステージ22の位置(XYZ方向における位置)とを紐付けるための基準マークを備える基準板を有していてもよい。
ステージ22がXY平面に沿って移動すると、XY平面に沿った方向における試料Wとビーム照射装置1との相対位置が変わる。このため、ステージ22がXY平面に沿って移動すると、XY平面に沿った方向における試料Wと試料Wの表面WSuにおける電子ビームEBの照射領域との相対位置が変わる。つまり、ステージ22がXY平面に沿って移動すると、XY平面に沿った方向(つまり、試料Wの表面WSuに沿った方向)において、電子ビームEBの照射領域が試料Wの表面WSuに対して移動する。更に、ステージ22がXY平面に沿って移動すると、XY平面に沿った方向における試料Wとビーム通過空間SPb3及び真空領域VSPとの相対位置が変わる。つまり、ステージ22がXY平面に沿って移動すると、XY平面に沿った方向(つまり、試料Wの表面WSuに沿った方向)において、ビーム通過空間SPb3及び真空領域VSPが試料Wの表面WSuに対して移動する。制御装置4は、試料Wの表面WSuの所望位置に電子ビームEBが照射され且つビーム通過空間SPb3が設定される(つまり、真空領域VSPが形成される)ように、ステージ駆動系23を制御してステージ22をXY平面に沿って移動させてもよい。具体的には、例えば、制御装置4は、試料Wの表面WSuの第1部分に真空領域VSPが形成されるように、ステージ駆動系23を制御してステージ22をXY平面に沿って移動させる。試料Wの表面WSuの第1部分に真空領域VSPが形成されるようにステージ22が移動した後、ビーム照射装置1は、試料Wの表面WSuの第1部分に電子ビームEBを照射して、第1部分の状態を計測する。ビーム照射装置1が試料Wの表面WSuの第1部分に電子ビームEBを照射している期間中は、ステージ駆動系23は、ステージ22をXY平面に沿って移動させなくてもよい。第1部分の状態の計測が完了した後、制御装置4は、試料Wの表面WSuの第2部分に真空領域VSPが形成されるように、ステージ駆動系23を制御してステージ22をXY平面に沿って移動させる。試料Wの表面WSuの第2部分に真空領域VSPが形成されるようにステージ22が移動した後、ビーム照射装置1は、試料Wの表面WSuの第2部分に電子ビームEBを照射して、第2部分の状態を計測する。ビーム照射装置1が試料Wの表面WSuの第2部分に電子ビームEBを照射している期間中もまた、ステージ駆動系23は、ステージ22をXY平面に沿って移動させなくてもよい。以降、同様の動作が繰り返されることで、試料Wの表面WSuの状態が計測される。
ステージ22がZ軸に沿って移動すると、Z軸に沿った方向における試料Wとビーム照射装置1との相対位置が変わる。このため、ステージ22がZ軸に沿って移動すると、Z軸に沿った方向における試料Wと電子ビームEBのフォーカス位置との相対位置が変わる。制御装置4は、試料Wの表面WSuに(或いは、表面WSuの近傍に)電子ビームEBのフォーカス位置が設定されるように、ステージ駆動系23を制御してステージ22をZ軸に沿って移動させてもよい。ここで、電子ビームEBのフォーカス位置は、ビーム光学系11の結像位置に対応する焦点位置又は電子ビームEBのぼけが最も少なくなるようなZ軸方向の位置であってもよい。
更に、ステージ22がZ軸に沿って移動すると、試料Wとビーム照射装置1との間の間隔Dが変わる。このため、ステージ駆動系23は、制御装置4の制御下で、後述する間隔調整系14と協調しながら、間隔Dが所望間隔D_targetとなるようにステージ22を移動させてもよい。このとき、制御装置4は、位置計測装置24の計測結果(更には、後述するビーム照射装置1の位置(特に、真空形成部材121の位置)を計測する位置計測装置15の計測結果)に基づいて、実際の間隔Dを特定すると共に、特定した間隔Dが所望間隔D_targetとなるようにステージ駆動系23及び間隔調整系14の少なくとも一方を制御する。このため、位置計測装置15及び24は、間隔Dを検出する検出装置としても機能し得る。尚、試料WのZ軸方向の厚み(寸法)が既知である場合、制御装置4は、実際の間隔Dに代えて/或いは加えて、ビーム照射装置1と基準面(例えば基準板の表面)とのZ軸方向における距離に関する情報と、試料WのZ軸方向の厚み(寸法)に関する情報とを用いて、ビーム照射装置1から試料Wまでの距離を目標となる距離となるように、ステージ駆動系23及び間隔調整系14のうち少なくとも一方を制御してもよい。
支持フレーム3は、ビーム照射装置1を支持する。具体的には、支持フレーム3は、支持脚31と、支持部材32とを備える。支持脚31は、支持面SF上に配置される。支持脚31と支持面SFとの間には、支持面SFの振動の支持脚31への伝達を防止する、或いは低減するための不図示の防振装置が設置されていてもよい。支持脚31は、例えば、支持面SFから上方に延びる部材である。支持脚31は、支持部材32を支持する。支持部材32は、平面視において、中心に開口321が形成された環状のプレート部材である。支持部材32の上面には、間隔調整系14を介して、ビーム照射装置1の外面(図1から図3に示す例では、差動排気系12が備える側壁部材122の外面)から外側に延びるフランジ部材13の下面が連結されている。このとき、ビーム照射装置1は、開口321を貫通するように配置される。その結果、支持フレーム3は、ビーム照射装置1を支持部材32の上面から持ち上げるように支持することができる。但し、支持フレーム3は、ビーム照射装置1を支持することができる限りは、図1に示す支持方法とは異なる他の支持方法でビーム照射装置1を支持してもよい。例えば、支持フレーム3は、ビーム照射装置1を支持部材32の下面から吊り下げるように支持してもよい。尚、支持脚31と支持部材32との間に、支持面SFの振動の支持部材32への伝達を防止する、或いは低減するための不図示の防振装置が設けられていてもよい。
間隔調整系14は、少なくともZ軸に沿ってビーム照射装置1を移動させることで、真空形成部材121の射出面121LSと試料Wの表面WSuとの間の間隔D、或いは真空形成部材121の射出面121LSから試料Wの表面WSuまでのZ軸方向の距離を調整する。例えば、間隔調整系14は、間隔Dが所望間隔D_targetとなるように、ビーム照射装置1をZ軸方向に沿って移動させてもよい。このような間隔調整系14として、例えば、モータの駆動力を用いてビーム照射装置1を移動させる駆動系、ピエゾ素子の圧電効果によって発生する力を用いてビーム照射装置1を移動させる駆動系、クーロン力(例えば、少なくとも2つの電極間に発生する静電力)を用いてビーム照射装置1を移動させる駆動系、及び、ローレンツ力(例えば、コイルと磁極との間に発生する電磁力)を用いてビーム照射装置1を移動させる駆動系の少なくとも一つが用いられてもよい。但し、射出面121LSと表面WSuとの間の間隔Dを固定したままでよい場合には、間隔調整系14に代えて、シム等の間隔調整部材が、支持部材32とフランジ部材13との間に配置されていてもよい。尚、この場合、シム等の間隔調整部材は支持部材32とフランジ部材13との間に配置されていなくてもよい。また、ビーム照射装置1は、XY方向に沿って移動可能であってもよい。
間隔調整系14によって移動可能なビーム照射装置1のZ方向における位置(特に、真空形成部材121のZ方向における位置)を計測するために、走査型電子顕微鏡SEMは、位置計測器15を備えている。位置計測器15は、例えば、エンコーダ及びレーザ干渉計のうちの少なくとも一方を含む。尚、位置計測器15は、ビーム照射装置1のXY方向における位置やθX方向、θY方向における姿勢を計測してもよい。また、ビーム照射装置1のXY方向における位置やθX方向、θY方向における姿勢を計測する計測装置が位置計測器15と別に設けられていてもよい。
制御装置4は、走査型電子顕微鏡SEMの動作を制御する。例えば、制御装置4は、電子ビームEBを試料Wに照射するように、ビーム照射装置1を制御する。例えば、制御装置4は、ビーム通過空間SPb1からSPb3を真空空間にするように、ポンプ系5(特に、真空ポンプ51及び52)を制御する。例えば、制御装置4は、試料Wの表面WSuの所望位置に電子ビームEBが照射されるように、ステージ駆動系23を制御する。例えば、制御装置4は、真空形成部材121の射出面121LSと試料Wの表面WSuとの間の間隔Dが所望間隔D_targetとなるように、間隔調整系14を制御する。例えば、制御装置4は、ステージ22が試料Wを保持するように、ポンプ系5(特に、真空ポンプ53)を制御する。本実施形態では特に、制御装置4は、真空領域VSPの形成に起因した試料Wの変形を抑制するための変形抑制動作が行われるように、ポンプ系5(特に、真空ポンプ54)を制御する。以下、変形抑制動作について更に説明を進める。尚、走査型電子顕微鏡SEMの動作を制御するために、制御装置4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置及びメモリ等の記憶装置の少なくとも一方を含んでいてもよい。
(2)変形抑制動作
続いて、変形抑制動作について説明する。
(2-1)局所的な真空領域VSPの形成によって試料Wが変形する技術的理由
はじめに、変形抑制動作の前提として、図6(a)から図6(c)を参照しながら、真空領域VSPの形成に起因して試料Wが変形する技術的理由について説明した後に、当該変形を抑制するための具体的方法について説明する。
図6(a)に示すように、ステージ22が試料Wを保持する場合には、真空ポンプ53が、配管2251を介してステージ空間SPsを減圧する。その結果、上述したように、試料Wの裏面WSlをステージ空間SPsに引き寄せる負圧が試料Wの裏面WSlに作用する。試料Wが固体であるため、試料Wの裏面WSlをステージ空間SPsに引き寄せる負圧は、実質的には、試料Wそのものをステージ空間SPsに引き寄せる負圧と等価である。この負圧は、試料Wをステージ22(特に、側壁部材222の上面222Su及び複数の支持部材223の上面223Su)に押し付ける力として試料Wに作用する。従って、ステージ22は、この真空ポンプ53による減圧に起因して試料W(特に、試料Wの裏面WSl)に作用する力F_hold1を、試料Wを保持するための力として用いることで、試料Wを保持する。
図6(a)に示す状況下において、図6(b)に示すように、ビーム照射装置1と試料Wとの間に局所的な真空領域VSPが形成されるとする。この場合、試料Wの表面WSuのうち真空領域VSPに面する(つまり、ビーム通過空間SPb3に面する)真空面部分WSu_vacには、真空領域VSPの形成に起因した力(つまり、真空領域VSPが試料Wの表面WSuを吸引する力)F_VSPが作用する。更には、試料Wの裏面WSlのうち真空面部分WSu_vacに対応する真空面部分WSl_vacには、真空ポンプ53によるステージ空間SPsの減圧に起因した力F_hold1が依然として作用する。試料Wが固体であるため、真空面部分WSu_vacに作用する力F_VSPは、試料Wのうち真空領域VSPに面する(つまり、ビーム通過空間SPb3に面する)特定部分W_vacに間接的に作用する。同様に、真空面部分WSl_vacに作用する力F_hold1もまた、特定部分W_vac(或いは、真空面部分WSu_vacに間接的に作用する。つまり、試料Wの特定部分W_vacには、真空領域VSPから試料Wに作用する力(つまり、真空領域VSPが試料Wを吸引する力)F_VSPと、ステージ空間SPsから試料Wに作用する力(つまり、ステージ空間SPsが試料Wを吸引する力であって、ステージ22が試料Wを保持する力)F_hold1とを合算した力F_vacが作用する。ここで、上述したように、試料Wの表面WSuに面する真空領域VSPの圧力は、試料Wの裏面WSlに面するステージ空間SPsの圧力よりも低くなる。つまり、真空面部分WSu_vacに作用する圧力は、真空面部分WSl_vacに作用する圧力よりも小さくなる。このため、真空領域VSPが形成されると、特定部分W_vacに作用する力F_vacは、当該特定部分W_vacを真空領域VSPに引き寄せる力となる。つまり、真空領域VSPが形成される前は特定部分W_vacをステージ22に押し付ける力F_hold1が作用していた特定部分W_vacには、真空領域VSPの形成に起因して、特定部分W_vacをステージ22から引き離す力F_vacが作用する。言い換えれば、特定部分W_vacには、真空領域VSPの形成に起因して、ステージ22からビーム照射装置1へと向かう方向に向けて特定部分W_vacを押し出す、又は引き離す(つまり、変位させる)力F_vacが作用する。
このように真空領域VSPの形成に起因して特定部分W_vacをステージ22から引き離す力F_vacが特定部分W_vacに作用すると、図6(c)に示すように、試料Wの特定部分W_vacがステージ22から引き離される可能性がある。一方で、試料Wのうち特定部分W_vac以外の他の部分には、真空領域VSPが形成されない。このため、試料Wのうち特定部分W_vac以外の他の部分には、依然として当該他の部分をステージ22に押し付ける力F_hold1が作用し続ける。つまり、試料Wのうち特定部分W_vac以外の他の部分は、ステージ22から引き離されにくい。その結果、図6(c)に示すように、試料Wが変形してしまう可能性がある。このような試料Wの変形は、試料Wの状態の計測にとって好ましくない。そこで、本実施形態の走査型電子顕微鏡SEMは、変形抑制動作を行うことで、このような試料Wの変形を抑制する。
(2-2)変形抑制動作の具体的内容
続いて、図7を参照しながら、変形抑制動作の具体的内容(つまり、試料Wの変形を抑制するための具体的方法)について説明する。本実施形態では、走査型電子顕微鏡SEMは、制御装置4の制御下で、試料Wを保持するために用いられる真空ポンプ53に加えて又は代えて、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを排気して大気圧よりも減圧することで、試料Wの変形を抑制する。具体的には、上述したように、ステージ空間SPsを減圧する真空ポンプ54は、局所的な真空領域VSPを形成するための真空ポンプ51と同等程度の排気能力を有している。このため、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧すると、試料Wの裏面WSlに面するステージ空間SPsの圧力は、試料Wの表面WSu(特に、真空面部分WSu_vac)に面する真空領域VSPの圧力と同等程度になる。つまり、試料Wの表面WSuのうちの真空面部分WSu_vacに作用する圧力は、試料Wの裏面WSlのうちの真空面部分WSl_vacに作用する圧力と同等程度になる。このため、真空ポンプ54による減圧に起因した力F_hold2は、真空領域VSPから試料Wに作用する力F_VSPと同じ大きさであって且つ向きが逆向きの力となる。ここで、上述したように、試料Wが固体であるため、真空面部分WSl_vacに作用する力F_hold2は、特定部分W_vac(或いは、真空領域VSPの形成に起因した力F_VSPが作用している真空面部分WSu_vac)に間接的に作用する。このため、力F_hold2は、ビーム照射装置1からステージ22へと向かう方向に向けて特定部分W_vac(或いは、真空領域VSPの形成に起因した力F_VSPが作用している真空面部分WSu_vac)を押し出す(つまり、変位させる)力に相当する。このため、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧すると、特定部分W_vacでは、真空領域VSPから試料Wに作用する力F_VSPとステージ空間SPsから試料Wに作用する力F_hold2とが相殺し合う。尚、図7では、打ち消し合っている力F_VSPと力F_hold2とを点線で示している。このため、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧する前に特定部分W_vacに作用していた力F_vac(つまり、力F_VSPと力F_hold1とを合算した力)と比較して、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧した後に特定部分W_vacに作用する力F_vac(つまり、力F_VSPと力F_hold2とを合算した力)が小さくなる。典型的には、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧した後には、特定部分W_vacには力F_vacが作用しなくなる。つまり、ステージ空間SPsから試料Wに作用する力F_hold2は、特定部分W_vacに作用する力F_vacを小さくする(或いは、ゼロにする)ことが可能な力に相当する。言い換えれば、ステージ空間SPsから試料Wに作用する力F_hold2は、領域VSPから試料Wに作用する力F_VSPの影響を小さくする(或いは、相殺する)ことが可能な力に相当する。試料Wを変形させていた主たる原因が、特定部分W_vacをステージ22から引き離すように作用していた力F_vacであるため、特定部分W_vacに力F_vacが作用しなくなれば、図7に示すように、試料Wの変形が適切に抑制される。つまり、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧する前と比較して、試料Wの表面WSuの平面度が高くなる(つまり、試料Wの表面WSuが平面に近づく)。
一方で、真空ポンプ54が真空ポンプ51と同等程度の排気能力を有しているがゆえに、真空ポンプ54の排気能力は、真空ポンプ53の排気能力よりも高い。このため、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧している場合には、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧していない場合(つまり、真空ポンプ53がステージ空間SPsを減圧している)場合と比較して、試料Wをステージ空間SPsに引き寄せる負圧が相対的に大きくなる。このため、試料Wは、ステージ22に対してより強く押し付けられることになる。この場合であっても、試料Wの裏面WSlが側壁部材222の上面222Su及び複数の支持部材223の上面223Suによって支持されることに変わりはない。このため、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧することに起因して試料Wをステージ空間SPsに引き寄せる負圧が相対的に大きくなったとしても、当該相対的に大きな負圧に起因して試料Wが変形することは殆ど又は全くない。つまり、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧する場合においても、真空ポンプ53がステージ空間SPsを減圧する場合と同様に、ステージ22は、試料Wをステージ空間SPsに引き寄せる負圧を用いて試料Wを適切に保持することができる。つまり、ステージ22は、試料Wをステージ空間SPsに引き寄せる負圧を用いて試料Wを適切に保持することができる。
ビーム照射装置1と試料Wとの間に局所的な真空領域VSPが形成されていない場合には、真空領域VSPの形成に起因して試料Wが変形する可能性はない。このため、走査型電子顕微鏡SEMは、ビーム照射装置1と試料Wとの間に局所的な真空領域VSPが形成されていない期間の少なくとも一部において、変形抑制動作を行わなくてもよい。一方で、走査型電子顕微鏡SEMは、ビーム照射装置1と試料Wとの間に局所的な真空領域VSPが形成されている期間中は、変形抑制動作を行う。但し、走査型電子顕微鏡SEMは、ビーム照射装置1と試料Wとの間に局所的な真空領域VSPが形成されている期間の少なくとも一部において、変形抑制動作を行わなくてもよい。例えば、ビーム照射装置1と試料Wとの間に局所的な真空領域VSPが形成されている状況下で試料Wの変形が許容される場合には、走査型電子顕微鏡SEMは、変形抑制動作を行わなくてもよい。
尚、上述した説明では、真空領域VSPを形成するための真空ポンプ51と同等程度の排気能力を有する真空ポンプ54を用いて、ステージ空間SPsが減圧されている。しかしながら、真空ポンプ51よりも高い排気能力を有する真空ポンプ54を用いて、ステージ空間SPsが減圧されてもよい。つまり、真空ポンプ54が減圧しているステージ空間SPsの圧力が、真空ポンプ51が減圧しているビーム通過空間SPb3の圧力(つまり、真空領域VSPの圧力)よりも低くなってもよい。この場合、試料W(特に、特定部分W_vac)には、特定部分W_vacをステージ22に押し付ける力が作用する。この場合であっても、試料Wの裏面WSlが側壁部材222の上面222Su及び複数の支持部材223の上面223Suによって支持されることに変わりはない。このため、真空ポンプ54が真空ポンプ51よりも高い排気能力を有していたとしても、そのことに起因して試料Wが変形することは殆ど又は全くない。
或いは、真空ポンプ51よりも低い排気能力を有する真空ポンプ54を用いて、ステージ空間SPsが減圧されてもよい。つまり、真空ポンプ54が減圧しているステージ空間SPsの圧力が、真空ポンプ51が減圧しているビーム通過空間SPb3の圧力(つまり、真空領域VSPの圧力)よりも高くなってもよい。但し、この場合には、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧している場合におけるステージ空間SPsの圧力が、真空ポンプ53がステージ空間SPsを減圧している場合におけるステージ空間SPsの圧力よりも低くなるように、真空ポンプ53及び54の排気能力が設定される。例えば、真空ポンプ54は、真空ポンプ53よりも高い排気能力を有していてもよい。このように真空ポンプ53及び54の排気能力が設定されると、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧する前と比較して(つまり、真空ポンプ53がステージ空間SPsを減圧している場合と比較して)、ステージ空間SPsの真空度が、ビーム通過空間SPb3の真空度に近づく。つまり、ステージ空間SPsの圧力が、真空領域VSPの圧力に近づく。言い換えれば、ステージ空間SPsの圧力と真空領域VSPの圧力との差分(つまり、試料Wの裏面WSlに対する圧力と試料Wの表面WSuに対する圧力との差分)が小さくなる。このため、特定部分W_vacに作用する力F_vacが小さくなる。つまり、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧する前に特定部分W_vacに作用していた力F_vacよりも小さい力F_vacが、特定部分W_vacに作用する。特定部分W_vacに作用していた力F_vacが小さくなれば、試料Wの変形の程度が小さくなる。つまり、試料Wの変形がある程度は抑制可能である。従って、真空ポンプ53がステージ空間SPsを減圧している場合と比較して、ステージ空間SPsの圧力と真空領域VSPの圧力との差分(つまり、試料Wの裏面WSlに対する圧力と試料Wの表面WSuに対する圧力との差分)を小さくすることが可能な程度に排気能力を真空ポンプ54が有している限りは、試料Wの変形が抑制可能である。
上述した説明では、真空領域VSPを形成するための真空ポンプ51と同等程度の排気能力を有する真空ポンプ54を用いて、ステージ空間SPsが排気されている。しかしながら、真空ポンプ51を用いて、ステージ空間SPsが排気されてもよい。この場合であっても、試料Wの裏面WSlに面するステージ空間SPsの圧力は、試料Wの表面WSu(特に、真空面部分WSu_vac)に面する真空領域VSPの圧力と同等程度になる。このため、試料Wの変形が適切に抑制される。尚、この場合には、ポンプ系5は、真空ポンプ54を備えていなくてもよい。
真空ポンプ51を用いてステージ空間SPsが排気される場合には、真空ポンプ51は、配管117を介してビーム通過空間SPb1からSPb3に連結され、且つ、配管2252を介してステージ空間SPsに連結される。この場合、配管117に、配管117を開閉可能な開閉部材(例えば、バルブ)が配置されていてもよい。配管117に開閉部材が配置されることに加えて又は代えて、配管2252に、配管2252を開閉可能な開閉部材(例えば、バルブ)が配置されていてもよい。配管117及び2252の双方に開閉部材が配置されている場合には、走査型電子顕微鏡SEMは、真空ポンプ51の状態を、(i)ビーム通過空間SPb1からSPb3及びステージ空間SPsの双方を排気する第1状態、(ii)ビーム通過空間SPb1からSPb3を排気する一方で、ステージ空間SPsを排気しない第2状態、(iii)ビーム通過空間SPb1からSPb3を排気しない一方で、ステージ空間SPsを排気する第3状態、及び、(iv)ビーム通過空間SPb1からSPb3及びステージ空間SPsの双方を排気しない第4状態との間で切り替えることができる。但し、配管117及び2252の双方に開閉部材が配置されていない場合であっても、走査型電子顕微鏡SEMは、真空ポンプ51の状態を、第1状態と第4状態との間で切り替えることができる。
真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧する前に特定部分W_vacに作用していた力F_vacは、主として、真空領域VSPに起因した力F_VSPである。そうすると、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧する前に特定部分W_vacに作用していた力F_vacが、真空ポンプ54によるステージ空間SPsの減圧によって特定部分W_vacに作用しなくなることを考慮すれば、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを減圧する動作は、真空領域VSPに起因した力F_VSPを相殺する動作と等価であると言える。つまり、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを減圧する動作は、真空領域VSPに起因した力F_vacを相殺可能な力F_cancelを、上述した力F_hold2として試料W(特に、少なくとも特定部分W_vac)に付与する動作と等価であると言える。このため、走査型電子顕微鏡SEMは、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを減圧する動作に限らず、真空領域VSPの形成に起因して特定部分W_vacに作用していた力F_VSPを相殺する任意の動作を行うことで、試料Wの変形を抑制してもよい。走査型電子顕微鏡SEMは、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを減圧する動作に限らず、真空領域VSPの形成に起因して特定部分W_vacに作用していた力VSPを相殺可能な力F_cancelを試料Wに付与する任意の動作を行うことで、試料Wの変形を抑制してもよい。尚、特定部分W_vacに作用していた力F_VSPを相殺する(或いは、力F_VSPを相殺可能な力F_cancelを試料Wに付与する)任意の動作の一例は、後述する変形例(例えば、第6変形例)において説明する。
力F_VSPを相殺することが可能な力F_cancelは、力F_VSPに応じて定まる力であってもよい。力F_cancelの一例として、力F_VSPと比較して、作用する方向が逆向きであって且つ大きさが同じ力があげられる。例えば、上述したように力F_VSPがステージ22からビーム照射装置1に向かう方向(例えば、+Z方向)に試料Wを変位させるように作用する力であるため、力F_cancelは、ビーム照射装置1からステージ22に向かう方向(例えば、-Z方向)に試料Wを変位させるように作用し且つ力F_VSPと同じ大きさの力であってもよい。但し、力F_cancelは、力F_VSPに応じて定まる力に限らず、試料Wの変形を抑制することが可能な任意の力であってもよいし、試料Wの表面WSuの平面度を高める(つまり、試料Wの表面WSuを平面に近づける)ことが可能な任意の力であってもよい。
或いは、真空ポンプ54がステージ空間SPsを減圧する前に特定部分W_vacに作用していた力F_vacが、真空ポンプ54による空間SPsの減圧によって小さくなる場合には、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを減圧する動作は、特定部分W_vacに作用する力F_vacを小さくする動作と等価であると言える。つまり、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを減圧する動作は、特定部分W_vacに作用する力F_vacを小さくすることが可能な力F_reduceを、試料W(特に、少なくとも特定部分W_vac)に付与する動作と等価であると言える。このため、走査型電子顕微鏡SEMは、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを減圧する動作に限らず、特定部分W_vacに作用する力F_vacを小さくする任意の動作を行うことで、試料Wの変形を抑制してもよい。走査型電子顕微鏡SEMは、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを減圧する動作に限らず、特定部分W_vacに作用する力F_vacを小さくすることが可能な力F_reduceを試料Wに付与する任意の動作を行うことで、試料Wの変形を抑制してもよい。
特定部分W_vacに作用する力F_vacを小さくすることが可能な力F_reduceもまた、力F_VSPに応じて定まる力であってもよい。力F_reduceの一例として、力F_VSPと比較して、作用する方向が逆向きであって且つ大きさが異なる力があげられる。例えば、上述したように力F_VSPがステージ22からビーム照射装置1に向かう方向(例えば、+Z方向)に試料Wを変位させるように作用する力であるため、力F_reduceは、ビーム照射装置1からステージ22に向かう方向(例えば、-Z方向)に試料Wを変位させるように作用し且つ力F_VSPよりも小さい又は大きい力であってもよい。但し、力F_reduceは、力F_VSPに応じて定まる力に限らず、試料Wの変形を抑制することが可能な任意の力であってもよいし、試料Wの表面WSuの平面度を高める(つまり、試料Wの表面WSuを平面に近づける)ことが可能な任意の力であってもよい。
(3)変形例
続いて、走査型電子顕微鏡SEMの変形例について説明する。
(3-1)第1変形例
はじめに、第1変形例の走査型電子顕微鏡SEMaについて説明する。第1変形例の走査型電子顕微鏡SEMaは、上述した走査型電子顕微鏡SEMと比較して、ステージ22に代えてステージ22aを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMaのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図8を参照しながら、ステージ22aの構造について説明する。尚、以下では、既に説明済みの構成要件については、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
図8に示すように、ステージ22aは、上述したステージ22と比較して、側壁部材222に代えて側壁部材222aを備えているという点で異なっている。側壁部材222aは、側壁部材222と比較して、側壁部材222aの上面222Suが支持部材223の上面223Suよりも下方に位置するという点で異なっている。このため、第1変形例では、ステージ22aは、試料Wの裏面WSlが複数の支持部材223の上面223Suに接触する一方で側壁部材222aの上面222Suに接触しない状態で、試料Wを保持する。第1変型例では、ステージ22aは、試料Wと側壁部材222aの上面222Suとの間に外縁空間SPg1を形成すると言ってもよい。尚、この外縁空間SPg1のZ軸方向の寸法、言い換えると試料Wの下面WSlから側壁部材222aの上面222SuまでのZ軸方向に沿った距離は1μm以上且つ10μm以下であってもよい。尚、側壁部材222aの上面222Suに、試料Wの下面WSlと接触可能なピン状の又は円錐状の若しくは角錐状の支持部材を設けてもよい。この支持部材は側壁部材222aの上面222Su上に周方向に沿って複数設けられていてもよい。尚、このような支持部材は側壁部材222aの上面222Su上の周方向に沿って延びた環状であってもよい。この環状の支持部材は試料Wの裏面に接触していなくてもよい。ステージ22aのその他の構造は、上述したステージ22のその他の構造と同一であってもよい。
このようなステージ22aを備える第1変形例の走査型電子顕微鏡SEMaであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。加えて、第1変形例では、側壁部材222aの上面222Suに試料Wが接触しないため、側壁部材222aの上面222Suに不要物質(例えば、塵、埃及びゴミ等の少なくとも一つ)が付着している場合であっても、当該不要物質の影響による試料Wの歪み(つまり、変形)が防止可能となる。
(3-2)第2変形例
上述した第1変形例のステージ22aは、上述した図8に示すように、試料Wと側壁部材222aの上面222Suとの間に、外縁空間SPg1が存在する状態で試料Wを保持することになる。この外縁空間SPg1は、ステージ空間SPsに連通しているため、真空ポンプ54によって排気(つまり、減圧)される。一方で、この外縁空間SPg1は、ステージ空間SPsの外部の大気圧空間にも連通している。このため、外縁空間SPg1には、大気圧空間から気体が流入しやすい。その結果、外縁空間SPg1の圧力は、ステージ空間SPsの圧力よりも高くなる可能性がある。このため、図9(a)に示すように、試料Wのうち側壁部材222aの上面222Suに対向する外縁部分W_edgeをステージ22aに押し付けるように作用する力F_hold2が、試料Wのうち外縁部分W_edge以外の部分をステージ22aに押し付けるように作用する力F_hold2よりも小さくなる可能性がある。つまり、外縁部分W_edgeをステージ22aが保持する力F_hold2が、試料Wのうち外縁部分W_edge以外の部分をステージ22aが保持する力F_hold2よりも小さくなる可能性がある。
ここで、図9(b)に示すように、試料Wのうち外縁部分W_edgeに面する局所的な真空領域VSPが形成されると、外縁部分W_edgeには、真空領域VSPの形成に起因して外縁部分W_edgeをステージ22から引き離すように作用する力F_VSPが作用する。この場合、上述したように、外縁部分W_edgeの下方の外縁空間SPg1の圧力が相対的に低い。このため、真空ポンプ54によってステージ空間SPsを介して外縁空間SPg1が減圧されているにも関わらず、外縁部分W_edgeに作用する力F_hold2が力F_VSPを相殺することができない可能性がある。その結果、ステージ空間SPsを介して真空ポンプ54が外縁空間SPg1を減圧しているにも関わらず、外縁部分W_edgeには、外縁部分W_edgeをステージ22から引き離すように作用する力F_vac(つまり、相対的に大きい力F_VSPと相対的に小さい力F_hold2とを合算した力)が作用し続ける可能性がある。言い換えれば、外縁部分W_edgeをステージ22aが保持する力F_hold2が相対的に弱いがゆえに、ステージ空間SPsを介して真空ポンプ54が外縁空間SPg1を減圧しているにも関わらず、外縁部分W_edgeには、外縁部分W_edgeをステージ22から引き離すように作用する力F_vacが作用し続ける可能性がある。その結果、図9(b)に示すように、試料Wの外縁部分W_edgeがステージ22から引き離される可能性がある。このため、試料Wが変形してしまう可能性がある。
そこで、このような外縁部分W_edgeがステージ22から離れることに起因した試料Wの変形を抑制することが可能な第2変形例の走査型電子顕微鏡SEMbについて以下に説明を続ける。第2変形例の走査型電子顕微鏡SEMbは、上述した走査型電子顕微鏡SEMaと比較して、ステージ22aに代えてステージ22bを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMbのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMaのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図10を参照しながら、ステージ22bの構造について説明する。
図10に示すように、ステージ22bは、ステージ22aと比較して、側壁部材222aの上面222Suに排気口2243bが形成されているという点で異なっている。ステージ22bのその他の構造は、上述したステージ22aのその他の構造と同一であってもよい。
排気口2243bは、側壁部材222aの上面222Suのうち試料Wの裏面WSlと対向する部分に形成されている。この際、排気口2243bは、側壁部材222aの上面222Suのうち試料Wの裏面WSlと対向する部分の最外周に形成されていてもよい。排気口2243bは、側壁部材222aの上面222Suにおいて排気口2243bが連続的に分布するように環状の分布パターンで形成されていてもよい。排気口2243bは、側壁部材222aの上面222Suにおいて規則的な(或いは、ランダムな)配列パターンで配列するように、複数形成されていてもよい。但し、排気口2243bは、任意の配列パターン又は分布パターンで形成されていてもよい。尚、排気孔2243bは、側壁部材222aの上面222Suにおいて一様に分布するという規則的な配列パターンであっても良く、側壁部材222aの上面222Suにおいて、側壁部材222aに囲まれた領域における当該領域の中心(重心)を中心とする円周上に等間隔或いは不等間隔で分布するという配列パターンであってもよい。また、排気孔2243bは、上記領域の中心(重心)を中心とする、半径が互いに異なる複数の円周のそれぞれに沿って等間隔或いは不等間隔で分布するという配列パターンであってもよい。
排気口2243bには、配管2253bを介して真空ポンプ54が連結されている。真空ポンプ54は、外縁空間SPg1を排気して減圧可能である。つまり、第2変形例では、外縁空間SPg1は、真空ポンプ54によって、ステージ空間SPsを介して間接的に減圧されることに加えて又は代えて、ステージ空間SPsを介することなく直接的に減圧される。このため、ステージ空間SPsを介して外縁空間SPg1が間接的に減圧されるだけの場合と比較して、外縁空間SPg1の圧力がステージ空間SPsの圧力よりも高くなってしまう可能性が小さくなる。このため、試料Wの外縁部分W_edgeをステージ22aが保持する力F_hold2が、試料Wのうち外縁部分W_edge以外の部分をステージ22aが保持する力F_hold2よりも小さくなる可能性が小さくなる。その結果、試料Wの外縁部分W_edgeにおいて、力F_VSPと力F_hold2とが相殺し合う可能性が相対的に大きくなる。つまり、試料Wの外縁部分W_edgeに局所的な真空領域VSPが形成されたとしても、外縁部分W_edgeをステージ22から引き離すように作用する力F_vacが外縁部分W_edgeに作用し続ける可能性が小さくなる。このため、図10に示すように、試料Wの外縁部分W_edgeがステージ22から引き離される可能性が小さくなる。このため、試料Wが変形してしまう可能性が小さくなる。つまり、試料Wの変形が適切に抑制される。
典型的には、外縁空間SPg1及びステージ空間SPsが同じ真空ポンプ54によって減圧されるため、外縁空間SPg1の圧力は、ステージ空間SPsの圧力と同等になる。このため、試料Wの外縁部分W_edgeをステージ22aが保持する力F_hold2は、試料Wのうち外縁部分W_edge以外の部分をステージ22aが保持する力F_hold2と同等になる。その結果、試料Wの外縁部分W_edgeに局所的な真空領域VSPが形成されたとしても、外縁部分W_edgeをステージ22から引き離すように作用する力F_vacが外縁部分W_edgeに作用しなくなる。このため、図10に示すように、試料Wの外縁部分W_edgeがステージ22から引き離されなくなる。つまり、試料Wの外縁部分W_edgeは、ステージ22によって保持され続ける。このため、試料Wが変形しなくなる。つまり、試料Wの変形が適切に抑制される。
尚、真空領域VSPの形成に起因して外縁部分W_edgeがステージ22から引き離されるのは、外縁部分W_edgeに局所的な真空領域VSPが形成されている場合である。このため、走査型電子顕微鏡SEMbは、外縁部分W_edgeに局所的な真空領域VSPが形成されている期間の少なくとも一部において、真空ポンプ54を用いて排気口2243b及び排気管2253bを介して外縁空間SPg1を減圧する。一方で、外縁部分W_edgeに局所的な真空領域VSPが形成されていない場合には、真空領域VSPの形成に起因して外縁部分W_edgeがステージ22から引き離される可能性は相対的に低い。このため、走査型電子顕微鏡SEMbは、外縁部分W_edgeに局所的な真空領域VSPが形成されていない期間の少なくとも一部において、真空ポンプ54を用いて排気口2243b及び排気管2253bを介して外縁空間SPg1を減圧しなくてもよい。この場合、配管2253bに、配管2253bを開閉可能な開閉部材(例えば、バルブ)が配置されていてもよい。但し、走査型電子顕微鏡SEMbは、外縁部分W_edgeに局所的な真空領域VSPが形成されていない期間の少なくとも一部においても、真空ポンプ54を用いて排気口2243b及び排気管2253bを介して外縁空間SPg1を減圧してもよい。尚、外縁区間SPg1を減圧するための真空ポンプを、ステージ空間SPsを減圧する真空ポンプ54と異なる真空ポンプとしてもよい。
(3-3)第3変形例
続いて、第3変形例の走査型電子顕微鏡SEMcについて説明する。第3変形例の走査型電子顕微鏡SEMcは、上述した走査型電子顕微鏡SEMbと比較して、ステージ22bに代えてステージ22cを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMcのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMbのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図11を参照しながら、ステージ22cの構造について説明する。
図11に示すように、ステージ22cは、ステージ22bと比較して、ガード部材224cを備えているという点で異なっている。ステージ22cのその他の構造は、上述したステージ22bのその他の構造と同一であってもよい。
ガード部材224cは、側壁部材222aの上面222Suのうち試料Wの裏面WSlに対向しない部分に形成されている。ガード部材224cは、排気口2243bよりも外側に形成されている。ガード部材224cは、ステージ22cに保持されている試料Wよりも外側に形成されている。ガード部材224cの上面224Suは平面であってもよい。ガード部材224cの上面224Suは、ステージ22cに保持されている試料Wの表面WSuと同じ高さに位置していてもよい。つまり、ガード部材224cの上面224Suは、ステージ22cに保持されている試料Wの表面WSuと同じ平面に位置していてもよい。ガード部材224cの側面(例えば、内側面)の一部は、試料Wの側面(例えば、外側面)に対向する。この際、ガード部材224cの側面と試料Wの側面とは接触しない。つまり、ガード部材224cの側面と試料Wの側面との間に、空隙が確保されている。
このようなステージ22cを備える第3変形例の走査型電子顕微鏡SEMcであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMbが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。加えて、第3変形例の走査型電子顕微鏡SEMcは、側壁部材222aの上面222Suに形成されたガード部材224cを備えているため、試料Wの外縁部分W_edgeに真空領域VSPを適切に形成することができる。具体的には、仮にガード部材224cが存在していない場合には、試料Wの外縁部分W_edgeに真空領域VSPが形成される状況下で、真空領域VSPの一部が、試料Wとビーム照射装置1との間ではなく、試料Wの外側に位置する側壁部材222aの上面222Suとビーム照射装置1との間に形成される可能性がある。側壁部材222aの上面222Suとビーム照射装置1との間の間隔は、試料Wとビーム照射装置1との間の間隔Dよりも大きい。このため、真空領域VSPの一部が側壁部材222aの上面222Suとビーム照射装置1との間に形成されている場合には、真空領域VSPの全体が試料Wとビーム照射装置1との間に形成されている場合と比較して、真空領域VSPが維持しにくくなる。一方で、ガード部材224cが存在している場合には、試料Wの外縁部分W_edgeに真空領域VSPが形成される状況下で、真空領域VSPの一部が、試料Wとビーム照射装置1との間ではなく、試料Wの外側に位置するガード部材224cの上面224Suとビーム照射装置1との間に形成される可能性がある。ガード部材224cの上面224Suとビーム照射装置1との間の間隔は、試料Wとビーム照射装置1との間の間隔Dと同じである。このため、真空領域VSPの一部がガード部材224aの上面224Suとビーム照射装置1との間に形成されている場合であっても、真空領域VSPの全体が試料Wとビーム照射装置1との間に形成されている場合と同様に、真空領域VSPを適切に維持可能となる。このように、第3変形例では、試料Wの外縁部分W_edgeにおいて真空領域VSPを適切に形成可能となる。
尚、ガード部材224cの上面224Suは、ステージ22cに保持されている試料Wの表面WSuと同じ高さに位置していなくてもよい。つまり、ガード部材224cの上面224Suは、ステージ22cに保持されている試料Wの表面WSuと同じ平面に位置しなくてもよい。例えば、ガード部材224cの上面224Suは、ステージ22cに保持されている試料Wの表面WSuよりも上方に位置していてもよい。ガード部材224cの上面224Suは、ステージ22cに保持されている試料Wの表面WSuよりも下方に位置していてもよい。ガード部材224cの側面と試料Wの側面とが接触していてもよい。尚、ガード部材224cの上面224Suは、試料Wの表面WSuに対して傾斜していてもよい。このとき、試料Wの最外縁における表面WSuの高さと、傾斜しているガード部材224cの上面224Suの最内縁の高さとは同じ高さであってもよい。また、ガード部材224cの上面224Suの幅(XY平面における寸法)は、局所的な真空領域VSPのXY方向における寸法の1/2以上であってもよい。ガード部材224cの上面224Suの幅(XY平面における寸法)は、真空形成部材121の射出面121LSのXY方向における大きさの1/2以上、或いはビーム射出口1232の中心から射出面121LSの最外周位置までの距離以上であってもよい。また、ガード部材224cの上面224Suは曲面であってもよい。
ガード部材224cは、側壁部材222aと一体化されていてもよい。或いは、ガード部材224cは、側壁部材222aと一体化されていなくてもよい。例えば、ガード部材224cは、側壁部材222aから脱着可能な部材であってもよい。
(3-4)第4変形例
続いて、第4変形例の走査型電子顕微鏡SEMdについて説明する。第4変形例の走査型電子顕微鏡SEMdは、上述した走査型電子顕微鏡SEMと比較して、ステージ22に代えてステージ22dを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMdのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図12を参照しながら、ステージ22dの構造について説明する。
図12に示すように、ステージ22dは、ステージ22と比較して、側壁部材222に代えて側壁部材222dを備えているという点で異なる。側壁部材222dの上面222Suは、複数の支持部材223の上面223Suよりも上方に位置する。側壁部材222dは、ステージ22に保持されている試料Wよりも外側に形成される。このため、第4変形例では、ステージ22dは、試料Wの裏面WSlが複数の支持部材223の上面223Suに接触する一方で側壁部材222dの上面222Suに接触しない(特に、側壁部材222dが試料Wの外側に位置する)状態で、試料Wを保持する。側壁部材222dのその他の構造は、上述した側壁部材222のその他の構造と同一であってもよい。
側壁部材222dの上面222Suは平面であってもよい。側壁部材222dの上面222Suは、ステージ22dに保持されている試料Wの表面WSuと同じ高さに位置していてもよい。つまり、側壁部材222dの上面222Suは、ステージ22dに保持されている試料Wの表面WSuと同じ平面に位置していてもよい。この場合、側壁部材222dは、第3変形例のガード部材224cとしても機能可能である。つまり、側壁部材222dは、試料Wの外縁部分W_edgeにおいて真空領域VSPを適切に形成することに寄与する部材となり得る。但し、側壁部材222dの上面222Suは、ステージ22dに保持されている試料Wの表面WSuと同じ高さに位置していなくてもよい。つまり、側壁部材222dの上面222Suは、ステージ22dに保持されている試料Wの表面WSuと同じ平面に位置しなくてもよい。
側壁部材222dの側面(特に、ステージ空間SPsに面する側面であり、例えば、内側面、以下同じ)222Ssの一部は、試料Wの側面(例えば、外側面)に対向する。側壁部材222dの側面222Ssと試料Wの側面とは接触しない。つまり、側壁部材222dの側面222Ssと試料Wの側面との間に、空隙が確保されている。この場合、ステージ空間SPsのうち空隙を介してステージ空間SPsの外部の大気圧空間に連通する外縁空間SPg2は、上述した第2又は第3変形例における外縁空間SPg1と同様に、大気圧空間から気体が流入しやすい。その結果、外縁空間SPg2の圧力は、ステージ空間SPsのうち外縁空間SPg2以外の部分の圧力よりも高くなる可能性がある。このため、第4変形例のステージ22dにおいても、第1変形例のステージ22aと同様に、試料Wのうち外縁空間SPg2に面する外縁部分W_edge’がステージ22から引き離され、結果として、試料Wが変形してしまう可能性がある。
そこで、第4変形例においても、第2変形例と同様に、試料Wの変形を抑制するために、側壁部材222dに排気口2244dが形成される。但し、第4変形例では、側壁部材222dの上面222Suが外縁空間SPg2に面していないため、側壁部材222dのうち外縁空間SPg2に面する面(具体的には、側面222Ss)に排気口2244dが形成される。排気口2244dは、側壁部材222dの側面222Ssにおいて排気口2244dが連続的に分布するように環状の分布パターンで形成されていてもよい。排気口2244dは、側壁部材222dの側面222Ssにおいて規則的な(或いは、ランダムな)配列パターンで配列するように、複数形成されていてもよい。但し、排気口2244dは、任意の配列パターン又は分布パターンで形成されていてもよい。
排気口2244dには、配管2254dを介して真空ポンプ54が連結されている。真空ポンプ54は、外縁空間SPg2を排気して減圧可能である。つまり、第4変形例では、外縁空間SPg2は、真空ポンプ54によって、外縁空間SPg2から相対的に離れた排気口2242を介して減圧されることに加えて又は代えて、外縁空間SPg2に相対的に近接する排気口2244dを介して減圧される。このため、第4変形例においても、第2変形例と同様に、試料Wの外縁部分W_edge’がステージ22dから引き離される可能性が小さくなる。このため、試料Wが変形してしまう可能性が小さくなる。つまり、試料Wの変形が適切に抑制される。
尚、上述した説明では、排気口2244dは、側壁部材222dに形成されている。しかしながら、排気口2244dは、側壁部材222d以外の部材に形成されていてもよい。排気口2244dは、側壁部材222d以外の、外縁空間SPg2に面する部材に形成されていてもよい。排気口2244dは、側壁部材222d以外の部材のうち外縁空間SPg2に面する面に形成されていてもよい。図12に示す例で言えば、排気口2244dは、底部材221の上面221Suのうち外縁空間SPg2に面する部分に形成されていてもよい。排気口2244dは、複数の支持部材223のうち外縁空間SPg2に面する少なくとも一つの支持部材223に形成されていてもよい。上述した第2変形例から第3変形例においても同様に、排気口2243bは、側壁部材222b以外の部材に形成されていてもよい。排気口2243bは、側壁部材222b以外の、外縁空間SPg1に面する部材に形成されていてもよい。排気口2243bは、側壁部材222b以外の部材のうち外縁空間SPg1に面する面に形成されていてもよい。尚、側壁部材222dの上面222Suは、ステージ22dに保持されている試料Wの表面WSuに対して傾斜していてもよい。このとき、試料Wの最外縁における表面WSuの高さと、傾斜している上面222Suの最内縁の高さとは同じ高さであってもよい。また、側壁部材222dの上面222Suの幅(XY平面における寸法)は、局所的な真空領域VSPのXY方向における寸法の1/2以上であってもよい。側壁部材222dの上面222Suの幅(XY平面における寸法)は、真空形成部材121の射出面121LSのXY方向における大きさの1/2以上、或いはビーム射出口1232の中心から射出面121LSの最外周位置までの距離以上であってもよい。また、側壁部材222dの上面222Suは曲面であってもよい。
(3-5)第5変形例
続いて、第5変形例の走査型電子顕微鏡SEMeについて説明する。第5変形例の走査型電子顕微鏡SEMeは、上述した第1変形例の走査型電子顕微鏡SEMaと比較して、ステージ22aに代えてステージ22eを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMeのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMaのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図13を参照しながら、ステージ22eの構造について説明する。
図13に示すように、ステージ22eは、上述したステージ22aと比較して、温度調整装置2291e及び温度計測装置2292eを備えているという点で異なっている。ステージ22eのその他の構造は、上述したステージ22aのその他の構造と同一であってもよい。
温度調整装置2291eは、側壁部材222aに配置されている。但し、温度調整装置2291eは、側壁部材222a以外の部材(例えば、底部材221)に配置されていてもよい。温度調整装置2291eは、側壁部材222aの上面222Suに沿って連続的に分布するように環状の分布パターンで配置されている。但し、温度調整装置2291eは、任意の配列パターン又は分布パターンで配置されていてもよい。例えば、温度調整装置2291eは、側壁部材222aの上面222Suに沿って規則的な(或いは、ランダムな)配列パターンで配列するように、複数配置されていてもよい。温度調整装置2291eは、側壁部材222aの内部に埋め込まれているが、側壁部材222aの表面(例えば、上面222Su)に配置されていてもよい。温度計測装置2292eもまた、温度調整装置2291eと同様の配置態様で配置されていてもよい。
温度調整装置2291eは、側壁部材222aの周辺の空間の温度を調整する。具体的には、温度調整装置2291eは、外縁空間SPg1の少なくとも一部の温度を調整する。温度調整装置2291eは、外縁空間SPg1の少なくとも一部を加熱して外縁空間SPg1の少なくとも一部の温度を調整する。この場合、温度調整装置2291eは、例えば、ヒータを備えている。
このような外縁空間SPg1の少なくとも一部の加熱による温度調整は、試料Wの温度を均一にするために行われる。具体的には、上述したように、外縁空間SPg1には、大気圧空間から気体が流入しやすい。その結果、大気圧空間から外縁空間SPg1に流入した気体の温度が、断熱膨張によって低下する可能性がある。外縁空間SPg1に流入した気体の温度が低下すると、外縁空間SPg1に面する外縁部分W_edgeの温度もまた低下する可能性がある。その結果、試料Wの外縁部分W_edgeの温度が、試料Wの外縁部分W_edge以外の部分の温度よりも低くなってしまう可能性がある。この場合、試料Wが熱変形する可能性がある。そこで、第5変形例では、温度調整装置2291eは、外縁空間SPg1の少なくとも一部の温度を調整して、試料Wの温度を均一にする。その結果、試料Wの熱変形が抑制される。
温度計測装置2292eは、試料Wの温度を計測可能である。このため、温度調整装置2291eは、温度計測装置2292eの計測結果に基づいて、試料Wの温度が均一になるように、外縁空間SPg1の少なくとも一部の温度を調整する。
このようなステージ22eを備える第5変形例の走査型電子顕微鏡SEMeであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMaが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。加えて、第5変形例の走査型電子顕微鏡SEMeは、試料Wの熱変形を適切に抑制することができる。
尚、温度調整装置2291eが外縁空間SPg1の温度を調整する目的が、試料Wの温度を均一にする(つまり、試料Wの温度を調整する)ことであることを考慮すれば、温度調整装置2291eは、外縁空間SPg1に加えて又は代えて、試料Wの少なくとも一部(特に、外縁部分W_edge)の温度を調整してもよい。この場合、温度調整装置2291eは、試料Wの少なくとも一部(特に、外縁部分W_edge)に接触可能な位置に配置されていてもよい。尚、1以上の温度調整装置2291eを例えば底部材221に配置して、局所真空領域VSPに起因する試料Wの局所的な温度変動を低減させてもよい。
(3-6)第6変形例
続いて、第6変形例の走査型電子顕微鏡SEMfについて説明する。第6変形例の走査型電子顕微鏡SEMfは、上述した走査型電子顕微鏡SEMと比較して、ステージ22に代えてステージ22fを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMfのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図14を参照しながら、ステージ22fの構造について説明する。
図14に示すように、ステージ22fは、ステージ22と比較して、静電チャック225fを備えているという点で異なっている。静電チャック225fは、少なくとも一つの電極を備えている。静電チャック225fは、制御装置4の制御下で、静電力(つまり、クーロン力)F_elecを発生可能である。静電チャック225fは、試料Wに作用する静電力F_elecを発生可能である。静電チャック225fは、試料W(例えば、試料Wの裏面WSl)を静電チャック225fに引き寄せる(その結果、ステージ22fに引き寄せる)ように試料Wに作用する静電力F_elecを発生可能である。つまり、静電チャック225fは、試料Wからステージ22fに向かう方向に作用する静電力F_elecを発生可能である。静電チャック225fは、XY平面内において、試料Wに均等に作用する静電力F_elecを発生可能である。ステージ22fは、静電チャック225fが発生させる静電力F_elecを、試料Wを保持するための力として用いる。このため、第6変形例では、ステージ22fには、ステージ空間SPsを減圧して試料Wを保持するために上述したステージ22が備えている排気口2241が形成されていなくてもよい。更に、ステージ22fには、配管2251が配置されていなくてもよい。更に、ポンプ系5は、真空ポンプ53を備えていなくてもよい。但し、ステージ22fは、静電チャック225fが発生させる静電力F_elecに加えて、ステージ空間SPsを減圧して発生する負圧による力F_hold1を、試料Wを保持するための力として用いてもよい。この場合には、ステージ22fに排気口2241が形成されていてもよいし、ステージ22fに配管2251が配置されていてもよいし、ポンプ系5が、真空ポンプ53を備えていてもよい。
加えて、第6変形例では、走査型電子顕微鏡SEMfは、制御装置4の制御下で、静電チャック225fが発生する静電力F_elecを用いて、試料Wの変形を抑制する。つまり、ステージ22fは、静電チャック225fが発生させる静電力F_elecを、試料Wの変形を抑制するための力として用いる。このため、第6変形例では、ステージ22fには、ステージ空間SPsを減圧して試料Wの変形を抑制するために上述したステージ22が備えている排気口2242が形成されていなくてもよい。更に、ステージ22fには、配管2252が配置されていなくてもよい。更に、ポンプ系5は、真空ポンプ54を備えていなくてもよい。但し、ステージ22fは、静電チャック225fが発生させる静電力F_elecに加えて、ステージ空間SPsを減圧して試料Wの変形を抑制してもよい。この場合には、ステージ22fに排気口2242が形成されていてもよいし、ステージ22fに配管2252が配置されていなくてもよいし、ポンプ系5が、真空ポンプ54を備えていてもよい。
制御装置4は、真空領域VSPに起因した力F_VSP(つまり、特定部分W_vacをステージ22から引き離すように特定部分W_vacに作用する力)に応じて、静電チャック225fが発生する静電力F_elecを制御する。
例えば、制御装置4は、試料Wの変形を抑制するために、静電チャック225fが静電力F_elecを付与する前に特定部分W_vacに作用していた力(つまり、力F_VSP)が相殺されるように、静電チャック225fが発生する静電力F_elecを制御してもよい。この場合、制御装置4は、静電力F_elecによって力F_VSPが相殺される(つまり、静電力F_elecと力F_VSPとを合算した力F_vacがゼロになる)ように、力F_VSPに応じて静電力F_elecを制御してもよい。言い換えれば、制御装置4は、力F_VSPを相殺可能な静電力F_elecが試料Wに作用する(つまり、付与される)ように、力F_VSPに応じて静電力F_elecを制御してもよい。この場合、制御装置4は、力F_VSPと比較して、作用する方向が逆向きであって且つ大きさが同じになる静電力F_elecが試料Wに作用するように、静電力F_elecを制御してもよい。つまり、制御装置4は、ビーム照射装置1からステージ22fに向かう方向(例えば、-Z方向)に試料Wを変位させるように作用し且つ力F_VSPと大きさが同じになる静電力F_elecが試料Wに作用するように、静電力F_elecを制御してもよい。このような静電力F_elecが静電チャック225fによって試料Wに付与されると、特定部分W_vacには、真空領域VSPに起因した力F_VSP及び静電チャック225fが発生した静電力F_elecの双方が付与される。このため、静電チャック225fが静電力F_elecを付与する前に特定部分W_vacに作用していた力F_vacが、静電チャック225fが静電力F_elecを付与した後には特定部分W_vacに作用しなくなる。このため、特定部分W_vacがステージ22fから引き離されることがなくなる。その結果、試料Wの変形が適切に抑制される。尚、このような条件を満たす静電力F_elecは、真空領域VSPに起因した力F_VSPを相殺可能な上述した力F_cancelの一具体例となる。
或いは、例えば、制御装置4は、試料Wの変形を抑制するために、特定部分W_vacに作用する力F_vacが小さくなるように、静電チャック225fが発生する静電力F_elecを制御してもよい。この場合、制御装置4は、力F_VSPと比較して、作用する方向が逆向きであって且つ大きさが異なる静電力F_elecが試料Wに作用するように、静電力F_elecを制御してもよい。つまり、制御装置4は、ビーム照射装置1からステージ22に向かう方向(例えば、-Z方向)に試料Wを変位させるように作用し且つ力F_VSPと大きさが異なる静電力F_elecが試料Wに作用するように、静電力F_elecを制御してもよい。このような静電力F_elecが静電チャック225fによって試料Wに付与されると、特定部分W_vacには、真空領域VSPに起因した力F_VSP及び静電チャック225fが発生した静電力F_elecの双方が付与される。このため、静電チャック225fが静電力F_elecを付与する前に特定部分W_vacに作用していた力F_vac(つまり、力F_VSP)と比較して、静電チャック225fが静電力F_elecを付与した後に特定部分W_vacに作用する力F_vac(つまり、力F_VSPと力F_elecとを合算した力)が小さくなる。このため、特定部分W_vacがステージ22fから引き離されにくくなる。或いは、仮に特定部分W_vacがステージ22fから引き離されたとしても、その引き離され量(つまり、特定部分W_vacとステージ22fとの間の間隔)が小さくなる。その結果、少なくとも静電チャック225fが静電力F_elecを付与しない場合と比較すれば、試料Wの変形が適切に抑制される。つまり、試料Wの変形が相応に抑制される。尚、このような条件を満たす静電力F_elecは、特定部分W_vacに作用する力F_vacを小さくすることが可能な上述した力F_reduceの一具体例となる。
このようなステージ22fを備える第6変形例の走査型電子顕微鏡SEMfであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。
尚、静電チャック225fは、試料Wの下面WSlと接触するように設けられていてもよい。また、静電チャック225fは、ステージ22の支持部材223における試料Wの下面WSlと接触する部位に設けられていてもよい。
尚、上述した第2変形例から第4変形例においても、静電チャックが発生する静電力を用いて、試料Wの外縁部分W_edgeがステージ22a又は22bから引き離されることに起因した試料Wの変形が抑制されてもよい。例えば、上述した第2変形例及び第3変形例の夫々においても、ステージ22bは、空間SPgを減圧するための排気口2243bに加えて又は代えて、試料Wの外縁部分W_edgeをステージ22a(特に、側壁部材222aの上面222Su)に引き寄せるように外縁部分W_edgeに作用する静電力を発生可能な静電チャックを備えていてもよい。上述した第4変形例において、ステージ22bは、空間SPg2を減圧するための排気口2244dに加えて又は代えて、試料Wの外縁部分W_edge’をステージ22dに引き寄せる(特に、下方に向けて引き寄せる)ように外縁部分W_edge’に作用する静電力を発生可能な静電チャックを備えていてもよい。
走査型電子顕微鏡SEMfは、静電力F_elecとは異なる種類の力を用いて、試料Wの変形を抑制してもよい。つまり、走査型電子顕微鏡SEMfは、静電チャック225fに加えて又は代えて、試料Wの変形を抑制するための力として、静電力F_elecとは異なる種類の力を付与可能な付与装置を備えていてもよい。例えば、走査型電子顕微鏡SEMfは、試料Wの裏面WSlに付着可能であって且つ裏面WSlに付着したままZ軸に沿って移動可能なようにステージ22fに配置された移動部材を、付与装置の一例として備えていてもよい。この場合、走査型電子顕微鏡SEMfは、当該移動部材の移動に伴う力を、試料Wの変形を抑制するための力として用いてもよい。尚、複数の支持部材223の少なくとも一つが、移動部材として用いられてもよい。或いは、例えば、走査型電子顕微鏡SEMfは、試料Wの裏面WSlに対向するようにステージ22fに配置されたベルヌーイチャックを、付与装置の一例として備えていてもよい。この場合、走査型電子顕微鏡SEMfは、ベルヌーイチャックから噴出される気体に起因してベルヌーイチャックと試料Wの裏面WSlとの間に作用する力を、試料Wの変形を抑制するための力として用いてもよい。
(3-7)第7変形例
続いて、第7変形例の走査型電子顕微鏡SEMgについて説明する。第7変形例の走査型電子顕微鏡SEMgは、上述した走査型電子顕微鏡SEMと比較して、ステージ22に代えてステージ22gを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMgのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図15(a)から図15(b)を参照しながら、ステージ22gの構造について説明する。
図15(a)及び図15(b)に示すように、ステージ22gは、ステージ22と比較して、隔壁部材227gを備えているという点で異なる。隔壁部材227gは、側壁部材222によって囲まれた領域において、底部材221から上方(つまり、+Z側)に突き出るように形成される部材である。隔壁部材227gの上面227Suは、側壁部材222の上面222Su及び支持部材223の上面223Suと同じ高さに位置する。つまり、隔壁部材227gの上面227Suは、側壁部材222の上面222Su及び支持部材223の上面223Suと同じ平面に位置する。従って、ステージ22gは、試料Wの裏面WSlが側壁部材222の上面222Su、複数の支持部材223の上面223Su及び隔壁部材227gの上面227Suに接触する状態で、試料Wを保持する。
隔壁部材227gは、ステージ空間SPsを、底部材221と側壁部材222と隔壁部材227gとによって囲まれたN(但し、Nは2以上の整数)個の分割空間SPsg(具体的には、分割空間SPsg#1からSPsg#N)に区分けするための部材である。隔壁部材227gは、平面視において、ステージ空間SPsをN個の分割空間SPsgに区分け可能な分布パターンで分布するように、底部材221に形成される。図15(a)及び図15(b)は、隔壁部材227gがステージ空間SPsを9個の分割空間SPsg#1からSPsg#9に区分けする例(つまり、N=9となる例)を示している。
ステージ22gは更に、ステージ22と比較して、N個の分割空間SPsgに夫々対応するN個の排気口2241g(具体的には、排気口2241g#1から2241g#N)が形成されているという点で異なる。N個の排気口2241gには、夫々、N個の配管2251g(具体的には、配管2251g#1から2251g#N)を介して真空ポンプ53が連結されている。真空ポンプ53は、排気口2241g#i(但し、iは、1以上且つN以下の整数)及び配管2251g#iを介して、分割空間SPsg#iを排気して大気圧よりも減圧可能である。
ステージ22gは更に、ステージ22と比較して、N個の分割空間SPsgに夫々対応するN個の排気口2242g(具体的には、排気口2242g#1から2242g#N)が形成されているという点で異なる。N個の排気口2242gには、夫々、N個の配管2252g(具体的には、配管2252g#1から2252g#N)を介して真空ポンプ54が連結されている。真空ポンプ54は、排気口2242g#i及び配管2252g#iを介して、分割空間SPsg#iを排気して大気圧よりも減圧可能である。
N個の配管2251gには、夫々、N個の配管2251gを夫々開閉可能なN個の開閉部材2261g(具体的には、開閉部材2261g#1から2261g#N)が配置されている。開閉部材2261gは、例えば、バルブである。更に、N個の配管2252gには、夫々、N個の配管2252gを夫々開閉可能なN個の開閉部材2262g(具体的には、開閉部材2262g#1から2262g#N)が配置されている。開閉部材2262gは、例えば、バルブである。開閉部材2261g#iの状態は、制御装置4の制御下で、配管2251g#iを遮断する状態(つまり、真空ポンプ53が分割空間SPsg#iを減圧しない状態)と、配管2251g#iを開放する状態(つまり、真空ポンプ53が分割空間SPsg#iを減圧する状態)との間で切替可能である。開閉部材2262g#iの状態は、制御装置4の制御下で、配管2252g#iを遮断する状態(つまり、真空ポンプ54が分割空間SPsg#iを減圧しない状態)と、配管2252g#iを開放する状態(つまり、真空ポンプ54が分割空間SPsg#iを減圧する状態)との間で切替可能である。
第7変形例では、制御装置4は、N個の分割空間SPsgのうち、真空領域VSPが形成されている(つまり、電子ビームEBが照射される)特定部分W_vacに面する少なくとも一つの分割空間SPsgの状態が、真空ポンプ53ではなく真空ポンプ54によって減圧される状態になるように、N個の開閉部材2261g及びN個の開閉部材2262gを制御する。つまり、制御装置4は、N個の分割空間SPsgのうち、特定部分W_vacを間に挟んで真空領域VSPと対向する少なくとも一つの分割空間SPsgの状態が、真空ポンプ53ではなく真空ポンプ54によって減圧される状態になるように、N個の開閉部材2261g及びN個の開閉部材2262gを制御する。一方で、制御装置4は、N個の分割空間SPsgのうち、特定部分W_vacに面していない少なくとも他の一つの分割空間SPsgの状態が、真空ポンプ54ではなく真空ポンプ53によって減圧される状態になるように、N個の開閉部材2261g及びN個の開閉部材2262gを制御する。つまり、第7変形例では、制御装置4は、ステージ空間SPsの一部が真空ポンプ54によって減圧される一方で、ステージ空間SPsの他の一部が真空ポンプ53によって減圧されるように、N個の開閉部材2261g及びN個の開閉部材2262gを制御する。例えば、図16(a)に示すように、分割空間SPsg#2が特定部分W_vacに面する場合には、制御装置4は、分割空間SPsg#2が真空ポンプ54によって減圧される一方で、分割空間SPsg#1及びSPsg#3からSPsg#9が真空ポンプ53によって減圧されるように、N個の開閉部材2261g及びN個の開閉部材2262gを制御する。例えば、図16(b)に示すように、分割空間SPsg#3が特定部分W_vacに面する場合には、制御装置4は、分割空間SPsg#3が真空ポンプ54によって減圧される一方で、分割空間SPsg#1、SPsg#2及びSPsg#4からSPsg#9が真空ポンプ53によって減圧されるように、N個の開閉部材2261g及びN個の開閉部材2262gを制御する。尚、図16(a)及び図16(b)は、試料Wに作用する力の大きさを、矢印の太さで示している。具体的には、図16(a)及び図16(b)は、試料Wに作用する力が大きくなるほどの当該力を示す矢印が太くなるように、試料Wに作用する力の大きさを示している。
その結果、特定部分W_vacに面していない分割空間SPsgの圧力は、大気圧よりも低くなる。このため、真空ポンプ53が特定部分W_vacに面していない分割空間SPsgを減圧すると、試料Wのうちの特定部分W_vac以外の部分には、真空ポンプ53による減圧に起因した力F_hold1(つまり、試料Wをステージ空間SPsに引き寄せる力)作用する。従って、試料Wがステージ22fによって保持される。一方で、特定部分W_vacに面する分割空間SPsgの圧力は、ビーム通過空間SPb3の圧力(つまり、真空領域VSPの圧力)と同等程度になる。つまり、特定部分W_vacに面する分割空間SPsgが真空ポンプ54によって排気されることで、特定部分W_vacに面する分割空間SPsgの圧力と真空領域VSPの圧力との差は、大気圧と真空領域VSPの圧力との差よりも小さくなる。このため、特定部分W_vacにおいて、真空領域VSPに起因した力F_VSPと真空ポンプ54による減圧に起因した力F_hold2とが相殺し合う。つまり、特定部分W_vacには、F_VSPと力F_hold2とを合算した力である力F_vacが作用しなくなる。従って、特定部分W_vacの変形が抑制される。このように、このようなステージ22gを備える第7変形例の走査型電子顕微鏡SEMgであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。
加えて、第7変形例では、ステージ空間SPs全体が真空ポンプ54によって減圧される場合と比較して、ステージ空間SPsの減圧に起因して試料Wをステージ空間SPsに引き寄せるように試料Wの裏面WSlに作用する負圧が小さくなる。なぜならば、第7変形例では、ステージ空間SPsの一部が真空ポンプ54によって減圧される一方で、ステージ空間SPsの他の一部が真空ポンプ54よりも排気能力の低い真空ポンプ53によって減圧されるからである。このため、ステージ空間SPsの減圧に起因した試料Wの変形(特に、試料Wのうち特定部分W_vac以外の部分の変形)が抑制される。このような試料Wのうち特定部分W_vac以外の部分の変形の抑制は、試料Wのうちの特定部分W_vacの状態を電子ビームEBの照射によって計測しながら試料Wのうちの特定部分W_vac以外の部分の状態を他の種類の計測装置(例えば、後述する光学顕微鏡等の計測装置)によって計測する場合において、他の種類の計測装置の計測精度の悪化の抑制にもつながる(後述する第14変形例参照)。
上述したように、ステージ22gの移動に伴って、試料Wと試料Wの表面WSuにおける真空領域VSPとの相対位置が変わる。つまり、ステージ22gの移動に伴って、試料Wと特定部分W_vacとの相対位置が変わる。言い換えれば、ステージ22gの移動に伴って、試料Wにおける特定部分W_vacの位置が変わる。このため、制御装置4は、試料Wにおける特定部分W_vacの位置に応じて、N個の分割空間SPsgのうちの真空ポンプ54によって減圧される少なくとも一つの分割空間SPsgを変更する。その結果、試料Wにおける特定部分W_vacの位置が変わる場合であっても、走査型電子顕微鏡SEMgは、ステージ22gによって試料Wを適切に保持しつつ、真空領域VSPの形成に起因した試料Wの変形を抑制することができる。尚、制御装置4は、試料Wにおける特定部分W_vacの位置とは異なる情報に応じて、N個の分割空間SPsgのうちの真空ポンプ54によって減圧される少なくとも一つの分割空間SPsgを変更してもよい。また、真空ポンプ54によって減圧された分割区間SPsgは、もとの圧力に戻されてもよく、また減圧されたままでもよい。
尚、上述したように、真空ポンプ54を用いてステージ空間SPsを減圧する動作は、力F_VSPを相殺可能な力F_cancel又は力F_vacを小さくすることが可能な力F_reduceを試料Wに付与する動作と等価である。そうすると、N個の分割空間SPsgのうちの真空ポンプ54によって減圧される少なくとも一つの分割空間SPsgを変更する動作は、力F_cancel又は力F_reduceが付与される位置を変更する動作と等価である。
(3-8)第8変形例
続いて、第8変形例の走査型電子顕微鏡SEMhについて説明する。第8変形例の走査型電子顕微鏡SEMhは、上述した第7変形例の走査型電子顕微鏡SEMgと比較して、ステージ22gに代えてステージ22hを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMhのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMgのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図17を参照しながら、ステージ22hの構造について説明する。
図17に示すように、ステージ22hは、ステージ22gと比較して、N個の分割空間SPsgに夫々対応するN個の給気口2249h(具体的には、排気口2249h#1から2249h#N)が形成されているという点で異なる。給気口2249h#iは、対応する分割空間SPsg#iに面する位置に形成される。図17に示す例では、各給気口2249hは、底部材221に形成されている。N個の給気口2249hには、夫々、N個の配管2259h(具体的には、配管2259h#1から2259h#N)を介して、気体供給装置55hが連結されている。気体供給装置55hは、給気口2249h#i及び配管2259h#iを介して、分割空間SPsg#iに気体を供給して加圧可能である。
N個の配管2259hには、夫々、N個の配管2259hを夫々開閉可能なN個の開閉部材2269h(具体的には、開閉部材2269h#1から2269h#N)が配置されている。開閉部材2269hは、例えば、バルブである。開閉部材2269h#iの状態は、制御装置4の制御下で、配管2259h#iを遮断する状態(つまり、気体供給装置55hが分割空間SPsg#iに気体を供給しない状態)と、配管2259h#iを開放する状態(つまり、気体供給装置55hが分割空間SPsg#iに気体を供給する状態)との間で切替可能である。
第8変形例では、制御装置4は、分割空間SPsg#iの状態が真空ポンプ54によって減圧される高真空状態から真空ポンプ53によって減圧される低真空状態へと切り替わるべきタイミングで、気体供給装置55hが分割空間SPsg#iに気体を供給するように、開閉部材2269h#iを制御する。つまり、制御装置4は、分割空間SPsg#iの状態が、真空度が相対的に高い高真空状態から真空度が相対的に低い低真空状態へと切り替わるべきタイミングで、気体供給装置55hが分割空間SPsg#iに気体を供給するように、開閉部材2269h#iを制御する。その結果、このタイミングで気体供給装置55hが分割空間SPsg#iに気体を供給しない場合と比較して、分割空間SPsg#iの状態が高真空状態から低真空状態へと切り替わるのに要する時間が短くなる。つまり、第8変形例の走査型電子顕微鏡SEMhは、上述した第7変形例の走査型電子顕微鏡SEMgが享受することが可能な効果と同様の効果を享受しつつも、分割空間SPsg#iの状態が高真空状態から低真空状態へと切り替わるのに要する時間を短くすることができる。
このような技術的効果を考慮すれば、気体供給装置55hは、分割空間SPsg#iの状態の高真空状態から低真空状態への切替を促進することができる程度の流量の気体を分割空間SPsg#iに供給すればよい。つまり、吸気装置55hは、分割空間SPsg#iが大気圧空間にまで戻ってしまうほどの流量の気体を分割空間SPsg#iに供給しなくてもよい。尚、真空ポンプ54によって減圧された分割区間SPsgは、減圧されたままでもよい。
尚、ステージ空間SPsがN個の分割空間SPsgに分割されていないステージ22等においても、少なくとも一つの給気口2249hが形成されていてもよい。この場合、制御装置4は、ステージ空間SPsの状態が真空ポンプ54によって減圧される高真空状態から真空ポンプ53によって減圧される低真空状態へと切り替わるべきタイミングで、気体供給装置55hがステージ空間SPsに気体を供給するように、気体供給装置55hとステージ空間SPsとを連結する配管2259hに配置される開閉部材2269hを制御してもよい。この場合も、ステージ空間SPsの状態が高真空状態から低真空状態へと切り替わるのに要する時間が短くなる。
また、制御装置4は、分割空間SPsg#iの状態が高真空状態から低真空状態へと切り替わるべきタイミングとは異なるタイミングで、気体供給装置55hが分割空間SPsg#iに気体を供給するように、開閉部材2269h#iを制御してもよい。例えば、制御装置4は、ステージ22hが保持している試料Wをリリースするタイミングで、気体供給装置55hが分割空間SPsg#iに気体を供給するように、開閉部材2269h#iを制御してもよい。その結果、高真空状態にある分割空間SPsg#iが大気圧空間に戻るまでに要する時間が短くなる。このため、試料Wのリリース(つまり、ステージ22hが保持する試料Wの交換)に要する時間が短くなる。
(3-9)第9変形例
続いて、第9変形例の走査型電子顕微鏡SEMiについて説明する。第9変形例の走査型電子顕微鏡SEMiは、上述した第6変形例の走査型電子顕微鏡SEMfと比較して、ステージ22fに代えてステージ22iを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMiのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMfのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図18を参照しながら、ステージ22iの構造について説明する。
図18に示すように、ステージ22iは、ステージ22fと比較して、単一の静電チャック225fに代えて、複数の静電チャック225iを備えているという点で異なっている。図18は、ステージ22iが9個の静電チャック225i#1から225i#9を備えている例を示している。各静電チャック225iは、上述した静電チャック225fと同様に、制御装置4の制御下で、試料Wを静電チャック225iに引き寄せる(その結果、ステージ22iに引き寄せる)ように試料Wに作用する静電力F_elecを発生可能である。ステージ22iは、複数の静電チャック225iの少なくとも一部が発生させる静電力F_elecを、試料Wを保持するための力として用いる。
各静電チャック225iは、XY平面内において、試料Wに局所的に(言い換えれば、部分的に)作用する静電力F_elecを発生可能である。つまり、各静電チャック225iは、試料Wのうち各静電チャック225iに対応する部分に局所的に(言い換えれば、部分的に)作用する静電力F_elecを発生可能である。例えば、複数の静電チャック225iのうちの第1の静電チャック225i#1は、試料Wの第1部分に作用する静電力F_elecを発生し、複数の静電チャック225iのうちの第1の静電チャック225i#1とは異なる第2の静電チャック225i#2は、第1部分とは異なる(或いは、第1部分と少なくとも部分的に重複する)試料Wの第2部分に作用する静電力F_elecを発生してもよい。
制御装置4は、複数の静電チャック225iのうち、真空領域VSPが形成されている(つまり、電子ビームEBが照射される)特定部分W_vacに対応する少なくとも一つの静電チャック225iが、試料Wの変形を抑制するための相対的に大きな静電力F_elec(以降、“静電力F_elec_L”と称する)を発生するように、複数の静電チャック225iを制御する。特定部分W_vacに対応する静電チャック225iは、特定部分W_vacに作用する静電力F_elecを発生可能な静電チャック225iである。このような特定部分W_vacに作用する静電力F_elecを発生可能な静電チャック225iは、典型的には、特定部分W_vacを間に挟んで真空領域VSPと対向する静電チャック225iである。従って、制御装置4は、複数の静電チャック225iのうち、特定部分W_vacに作用する静電力F_elecを発生可能な少なくとも一つの静電チャック225iが、試料Wの変形を抑制するための静電力F_elec_Lを発生するように、複数の静電チャック225iを制御する。具体的には、制御装置4は、複数の静電チャック225iのうち、特定部分W_vacに作用する静電力F_elecを発生可能な少なくとも一つの静電チャック225iを構成する電極に対して、試料Wの変形を抑制するための静電力F_elec_Lを発生可能な第1電圧を印加する。尚、試料Wの変形を抑制するための静電力F_elec_Lは、真空領域VSPに起因した力F_VSPに応じた静電力F_elecであって、第6変形例で静電チャック225fから試料Wに付与される静電力F_elecと同じ力である。一方で、制御装置4は、複数の静電チャック225iのうち、特定部分W_vacに対応していない少なくとも一つの静電チャック225iが、試料Wを保持するための相対的に小さな静電力F_elec(以降、“静電力F_elec_S”と称する)を発生するように、複数の静電チャック225iを制御する。つまり、制御装置4は、複数の静電チャック225iのうち、特定部分W_vac以外に作用する静電力F_elecを発生可能な少なくとも一つの静電チャック225iが、試料Wを保持するための相対的に小さな静電力F_elec_Sを発生するように、複数の静電チャック225iを制御する。具体的には、制御装置4は、複数の静電チャック225iのうち、特定部分W_vac以外に作用する静電力F_elecを発生可能な少なくとも一つの静電チャック225iを構成する電極に対して、試料Wを保持するための静電力F_elec_Sを発生可能な第2電圧(つまり、試料Wの変形を抑制するための静電力F_elec_Lを発生可能な第1電圧とは異なる電圧)を印加する。尚、静電力F_elec_Sが相対的に小さく且つ静電力F_elec_Lが相対的に大きいため、静電力F_elec_Sは静電力F_elec_Lよりも小さくなるが、静電力F_elec_Sが静電力F_elec_Lよりも大きくなってもよいし、同じ大きさになってもよい。
図18は、静電チャック225i#5が特定部分W_vacに作用する静電力F_elecを発生可能である例を示している。このため、図18は、静電チャック225i#5が、試料Wの変形を抑制するための静電力F_elec_Lを発生し、静電チャック225i#1から225i#4及び225i#6から225i#9が、試料Wを保持するための静電力F_elec_Sを発生している例を示している。尚、図18は、試料Wに作用する力の大きさを、矢印の長さ及び太さで示している。具体的には、図18は、試料Wに作用する力が大きくなるほどの当該力を示す矢印が太く且つ長くなるように、試料Wに作用する力の大きさを示している。
その結果、このような静電力F_elecが複数の静電チャック225iによって試料Wに付与されると、走査型電子顕微鏡SEMiは、ステージ22iによって試料Wを適切に保持しつつ、真空領域VSPの形成に起因した試料Wの変形を抑制することができる。
上述したように、ステージ22iの移動に伴って、試料Wにおける特定部分W_vacの位置が変わる。このため、制御装置4は、試料Wにおける特定部分W_vacの位置に応じて、複数の静電チャック225iのうち、試料Wの変形を抑制するための静電力F_elec_Lを付与するための少なくとも一つの静電チャック225iを変更する。その結果、試料Wにおける特定部分W_vacの位置が変わる場合であっても、走査型電子顕微鏡SEMiは、ステージ22iによって試料Wを適切に保持しつつ、真空領域VSPの形成に起因した試料Wの変形を抑制することができる。
尚、複数の静電チャック225iは、試料Wの下面WSlと接触するように設けられていてもよい。また、複数の静電チャック225iは、ステージ22iの支持部材223における試料Wの下面WSlと接触する部位にそれぞれ設けられていてもよい。
尚、第9変形例においても、第6変形例と同様に、走査型電子顕微鏡SEMiは、複数の静電チャック225iに加えて又は代えて、試料Wの変形を抑制するための力として、静電力F_elecとは異なる種類の力を付与可能な付与装置を複数備えていてもよい。この場合においても、制御装置4は、複数の付与装置のうち、真空領域VSPが形成されている特定部分W_vacに対応する少なくとも一つの付与装置が、試料Wの変形を抑制するための相対的に大きな力を発生するように、複数の付与装置を制御してもよい。制御装置4は、複数の付与装置のうち、特定部分W_vacに対応していない少なくとも一つの付与装置が、試料Wを保持するための相対的に小さな力を発生するように、複数の付与装置を制御してもよい。
(3-10)第10変形例
続いて、第10変形例の走査型電子顕微鏡SEMjについて説明する。第10変形例の走査型電子顕微鏡SEMjは、上述した走査型電子顕微鏡SEMと比較して、ステージ22に代えてステージ22jを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMjのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図19を参照しながら、ステージ22jの構造について説明する。
図19に示すように、ステージ22jは、ステージ22と比較して、真空チャック228jを備えているという点で異なっている。更に、ステージ22jは、ステージ22と比較して、底部材221に排気口2242が形成されていなくてもよく且つステージ22jに配管2252が配置されていなくてもよいという点で異なっている。ステージ22jのその他の構造は、上述したステージ22のその他の構造と同一であってもよい。尚、図19では、図面の簡略化のために、複数の支持部材223の記載を省略している。
真空チャック228jは、ステージ空間SPs内に配置される。真空チャック228jは、試料Wの裏面WSlを部分的に(つまり、局所的に)真空吸着可能である。具体的には、真空チャック228jは、ステージ空間SPs内の一部に、試料Wの裏面WSlに面する局所的な吸着空間SPsjを規定可能である。真空チャック228jには、排気口2245jが形成されている。排気口2245jには、配管2255jを介して真空ポンプ54が連結されている。このため、吸着空間SPsjの圧力は、ビーム通過空間SPb3の圧力(つまり、真空領域VSPの圧力)と同等程度になる。
真空チャック228jは、第10変形例のステージ装置2jが備える駆動系24jによって、ステージ空間SPs内を、XY平面に沿って(つまり、試料Wの裏面WSlに沿って)移動可能である。真空チャック228jが移動すると、試料Wと真空チャック228jとの相対位置が変わる。つまり、真空チャック228jが移動すると、ステージ空間SPs内において排気口2245jが移動する。第10変形例では特に、制御装置4は、駆動系24jを制御して、試料Wにおける特定部分W_vacの位置に応じて、真空チャック228jを移動させる。具体的には、制御装置4は、特定部分W_vacに吸着空間SPsjが面するように、真空チャック228jを移動させる。つまり、制御装置4は、特定部分W_vacに面する領域に排気口2245jが位置するように、真空チャック228jを移動させる。その結果、真空ポンプ54によって吸着空間SPsjが減圧されると、特定部分W_vacに面する吸着空間SPsjの圧力は、ビーム通過空間SPb3の圧力(つまり、真空領域VSPの圧力)と同等程度になる。つまり、特定部分W_vacに面する吸着空間SPsjが真空ポンプ54によって排気されることで、特定部分W_vacに面する吸着空間SPsjの圧力と真空領域VSPの圧力との差は、大気圧と真空領域VSPの圧力との差よりも小さくなる。このため、真空ポンプ54が吸着空間SPshを減圧すると、特定部分W_vacでは、真空領域VSPから試料Wに作用する力F_VSPと吸着空間SPsjから試料Wに作用する力F_hold2とが相殺し合う。従って、特定部分W_vacの変形が抑制される。その一方で、ステージ空間SPs(特に、ステージ空間SPsのうち吸着空間SPsj以外の空間)が真空ポンプ53によって減圧される。このため、試料Wのうち特定部分W_vac以外の部分の少なくとも一部には、真空ポンプ53による減圧に起因した力F_hold1が作用する。従って、ステージ22jは、この力F_hold1を、試料Wを保持するための力として用いることで、試料Wを保持する。
尚、真空チャック228jの真空配管は、底部材221を貫通していなくてもよい。例えば、側壁部材222のステージ空間SPs側に真空ポンプ54に連通した開口部を設け、当該開口部と真空チャック228jとを接続する真空配管を設けてもよい。このとき、この真空配管は蛇腹等の可撓性を有する部材であってもよい。
このように、ステージ22jを備える第10変形例の走査型電子顕微鏡SEMjであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。特に、第10変形例の走査型電子顕微鏡SEMjは、試料Wにおける特定部分W_vacの位置が変わる場合であっても、ステージ22jによって試料Wを適切に保持しつつ、真空領域VSPの形成に起因した試料Wの変形を抑制することができる。
(3-11)第11変形例
続いて、第11変形例の走査型電子顕微鏡SEMkについて説明する。第11変形例の走査型電子顕微鏡SEMkは、上述した第10変形例の走査型電子顕微鏡SEMjと比較して、ステージ22jに代えてステージ22kを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMkのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMjのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図20を参照しながら、ステージ22kの構造について説明する。
図20に示すように、ステージ22kは、ステージ22jと比較して、真空チャック228jに代えて、静電チャック225kを備えているという点で異なっている。ステージ22kのその他の構造は、上述したステージ22jのその他の構造と同一であってもよい。尚、図20では、図面の簡略化のために、複数の支持部材223の記載を省略している。
静電チャック225kは、上述した第9変形例の静電チャック225iと同様に、制御装置4の制御下で、試料Wを静電チャック225kに引き寄せる(その結果、ステージ22kに引き寄せる)ように試料Wに作用する静電力F_elecを発生可能である。但し、静電チャック225kは、XY平面内において、試料Wに局所的に(言い換えれば、部分的に)作用する静電力F_elecを発生可能である。特に、静電チャック225kは、試料Wの変形を抑制するための静電力F_elecを局所的に発生可能である。
静電チャック225kは、第10変形例の真空チャック228jと同様に、第11変形例のステージ装置2kが備える駆動系24kによって、ステージ空間SPs内を、XY平面に沿って(つまり、試料Wの裏面WSlに沿って)移動可能である。静電チャック225kが移動すると、試料Wと静電チャック225kとの相対位置が変わる。第11変形例では特に、制御装置4は、駆動系24kを制御して、試料Wにおける特定部分W_vacの位置に応じて、静電チャック225kを移動させる。具体的には、制御装置4は、特定部分W_vacに静電力F_elecが付与されるように、静電チャック225kを移動させる。つまり、制御装置4は、間に特定部分W_vacを挟んで真空領域VSPと対向する位置に静電チャック225kを移動させる。その結果、静電チャック225kによって静電力F_elecが付与されると、特定部分W_vacでは、真空領域VSPから試料Wに作用する力F_VSPと静電チャック225kから試料Wに作用する力F_elecとが相殺し合う。このため、試料Wの変形が適切に抑制される。その一方で、ステージ空間SPsが真空ポンプ53によって減圧される。このため、試料Wには、真空ポンプ53による減圧に起因した力F_hold1もまた作用する。従って、ステージ22kは、この力F_hold1を、試料Wを保持するための力として用いることで、試料Wを保持する。
このように、ステージ22kを備える第11変形例の走査型電子顕微鏡SEMkであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。特に、第11変形例の走査型電子顕微鏡SEMkは、試料Wにおける特定部分W_vacの位置が変わる場合であっても、ステージ22kによって試料Wを適切に保持しつつ、真空領域VSPの形成に起因した試料Wの変形を抑制することができる。
尚、静電チャック225kは、試料Wに力F_elecを付与する期間の少なくとも一部において、試料Wの下面WSlに接触可能な構成であってもよい。
尚、第11変形例においても、第6変形例と同様に、走査型電子顕微鏡SEMkは、静電チャック225kに加えて又は代えて、試料Wの変形を抑制するための力として、静電力F_elecとは異なる種類の力を付与可能な付与装置を備えていてもよい。この場合においても、制御装置4は、試料Wにおける特定部分W_vacの位置に応じて、付与装置を移動させてもよい。つまり、制御装置4は、特定部分W_vacに付与装置から力が付与されるように、付与装置を移動させてもよい。更に、第11変形例では、試料Wの変形を抑制するために真空ポンプ54が用いられなくてもよいため、ポンプ系5は、真空ポンプ54を備えていなくてもよい。
(3-12)第12変形例
続いて、第12変形例の走査型電子顕微鏡SEMlについて説明する。第12変形例の走査型電子顕微鏡SEMlは、上述した走査型電子顕微鏡SEMと比較して、ステージ22に代えてステージ22lを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMlのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図21(a)及び図21(b)を参照しながら、ステージ22lの構造について説明する。
図21(a)及び図21(b)に示すように、ステージ22lは、上述したステージ22と比較して、複数の支持部材223の配置態様が異なるという点で異なっている。具体的には、ステージ22lは、上述したステージ22と比較して、ステージ22lの外縁部分22_edgeにおける支持部材223の配置態様が、ステージ22lの中心部分22_centerにおける支持部材223の配置態様とは異なるという点で異なっている。尚、ステージ22lの外縁部分22_edgeは、ステージ22lの中心部分22_centerよりも外側(つまり、側壁部材222に近い側)に位置する部分である。ステージ22lの中心部分22_centerは、ステージ22lの外縁部分22_edgeよりもステージ22lの中心(具体的には、XY平面内における中心であって、典型的には、表面WSuの中心)に近い側に位置する部分である。ステージ22lの外縁部分22_edgeは、典型的には、試料Wの外縁部分W_edgeに対向する部分を含む又は近接する部分である。ステージ22lの中心部分22_centerは、典型的には、試料Wの表面WSuの中心に対向する部分を含む又は近接する部分である。ステージ22lのその他の構造は、上述したステージ22のその他の構造と同一であってもよい。
第12変形例では、支持部材223の配置態様は、単位面積当たりの支持部材223の本数を含む。このため、ステージ22lの外縁部分22_edgeにおける単位面積当たりの支持部材223の本数は、ステージ22lの中心部分22_centerにおける単位面積当たりの支持部材223の本数とは異なる。より具体的には、図21(a)及び図21(b)に示すように、ステージ22lの外縁部分22_edgeにおける単位面積当たりの支持部材223の本数は、ステージ22lの中心部分22_centerにおける単位面積当たりの支持部材223の本数よりも少なくなる。
このようなステージ22lを備える第12変形例の走査型電子顕微鏡SEMlであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。加えて、第12変形例では、ステージ22lの中心部分22_centerにおける単位面積当たりの支持部材223の本数が相対的に多くなるため、支持部材223を介した試料Wの放熱がより一層促進される。その結果、試料Wの熱変形が抑制される。
尚、単位面積当たりの支持部材223の本数が相対的に多くなると、支持部材223と試料Wとの間に塵等が挟まる(その結果、塵等によって、試料Wが変形する)可能性が相対的に大きくなる。しかしながら、上述したように、ステージ空間SPsが真空ポンプ54によって減圧されている場合には、ステージ空間SPsが真空ポンプ53によって減圧されている場合と比較して、試料Wがより強く支持部材223に押し付けられる。このため、支持部材223と試料Wとの間に挟まった塵等が、試料Wが支持部材223に押し付けられる力によってつぶれる可能性が相対的に大きくなる。つまり、塵等によって試料Wが変形する可能性が相対的に小さくなる。従って、走査型電子顕微鏡SEMlは、塵等による試料Wの変形を引き起こすことなく、支持部材223を介した試料Wの放熱をより一層促進して試料Wの熱変形を抑制することができる。
特に、ステージ空間SPsのうちのステージ22lの外縁部分22_edgeにおける空間部分の圧力と比較して、ステージ空間SPsのうちのステージ22lの中心部分22_centerにおける空間部分の圧力は低下しにくい。なぜならば、ステージ空間SPsの圧力の低下は、ステージ22lの外縁部分22_edgeの近傍に位置する側壁部材222と試料Wとの間の隙間を介してステージ空間SPsに流入してくる気体によって引き起こされるところ、このような圧力の低下は、ステージ22lの中心部分22_centerよりもステージ22lの外縁部分22_edgeで起こりやすいからである。従って、外縁部分22_edge及び中心部分22_centerを区別することなく単に支持部材223の本数が相対的に多くなる比較例の走査型電子顕微鏡と比較して、ステージ22lの中心部分22_centerという特定の領域(つまり、ステージ空間SPsの圧力の低下が起こりにくい領域)における単位面積当たりの支持部材223の本数が相対的に多くなる第12変形例の走査型電子顕微鏡SEMlは、塵等による試料Wの変形を引き起こす可能性を過度に大きくすることなく、支持部材223を介した試料Wの放熱をより一層促進して試料Wの熱変形を抑制することができる。尚、この第12変型例に示した支持部材223の配置態様を、上述の実施形態及び他の変形例に適用してもよい。
(3-13)第13変形例
続いて、第13変形例の走査型電子顕微鏡SEMmについて説明する。第13変形例の走査型電子顕微鏡SEMmは、上述した走査型電子顕微鏡SEMと比較して、ステージ22に代えてステージ22mを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMmのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図22(a)及び図22(b)を参照しながら、ステージ22mの構造について説明する。
図22(a)及び図22(b)に示すように、ステージ22mは、上述したステージ22と比較して、複数の支持部材223の上面223Suのサイズ(つまり、実質的には面積)が異なるという点で異なっている。具体的には、ステージ22mは、上述したステージ22と比較して、ステージ22mの外縁部分22_edgeにおける支持部材223の上面223Suのサイズが、ステージ22lの中心部分22_centerにおける支持部材223の上面223Suのサイズよりも小さいという点で異なっている。ステージ22mのその他の構造は、上述したステージ22のその他の構造と同一であってもよい。尚、第13変形例における外縁部分22_edge及び中心部分22_centerは、第12変形例における外縁部分22_edge及び中心部分22_centerと同様の部分である。
このようなステージ22mを備える第13変形例の走査型電子顕微鏡SEMmであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。加えて、第13変形例では、ステージ22mの中心部分22_centerにおける支持部材223の上面223Suのサイズが相対的に大きくなるため、ステージ22mの中心部分22_centerにおける支持部材223と試料Wとの接触面積が相対的に大きくなる。つまり、ステージ22mの外縁部分22_edgeにおける支持部材223と試料Wとの接触面積と比較して、ステージ22mの中心部分22_centerにおける支持部材223と試料Wとの接触面積が相対的に大きくなる。このため、支持部材223を介した試料Wの放熱がより一層促進される。その結果、試料Wの熱変形が抑制される。
尚、単位面積当たりの支持部材223の本数が相対的に多くなる場合と同様に、支持部材223の上面223Suのサイズが相対的に大きくなる場合においても、支持部材223と試料Wとの間に塵等が挟まる(その結果、塵等によって、試料Wが変形する)可能性が相対的に大きくなる。しかしながら、第12変形例の走査型電子顕微鏡SEMlと同様の理由から、第13変形例の走査型電子顕微鏡SEMmもまた、塵等による試料Wの変形を引き起こすことなく、支持部材223を介した試料Wの放熱をより一層促進して試料Wの熱変形を抑制することができる。尚、この第13変型例に示した支持部材223の配置態様を、上述の実施形態及び他の変形例に適用してもよい。
(3-14)第14変形例
続いて、図23を参照しながら、第14変形例の走査型電子顕微鏡SEMnについて説明する。図23に示すように、第14変形例の走査型電子顕微鏡SEMnは、上述した走査型電子顕微鏡SEMと比較して、光学顕微鏡16nを備えているという点で異なる。走査型電子顕微鏡SEMnのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMのその他の構造と同一であってもよい。
光学顕微鏡16nは、試料Wの状態(例えば、試料Wの表面WSuの少なくとも一部の状態)を光学的に計測可能な装置である。つまり、光学顕微鏡16nは、試料Wの状態を光学的に計測して、試料Wに関する情報を取得可能な装置である。特に、光学顕微鏡16nは、試料Wの状態を大気圧環境下で計測可能であるという点で、試料Wの状態を真空環境下で計測するビーム照射装置1(特に、電子検出器116)とは異なる。
光学顕微鏡16nは、ビーム照射装置1が電子ビームEBを試料Wに照射して試料Wの状態を計測する前に、試料Wの状態を計測する。つまり、走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nを用いて試料Wの状態を計測した後に、ビーム照射装置1を用いて試料Wの状態を計測する。ここで、光学顕微鏡16nが大気圧環境下で試料Wの状態を計測可能であるため、光学顕微鏡16nが試料Wの状態を計測している期間中は、ビーム照射装置1は、真空領域VSPを形成しなくてもよい。その結果、光学顕微鏡16nが試料Wの状態を計測している期間中は、真空領域VSPの形成に起因して試料Wが変形することはない。従って、光学顕微鏡16nが試料Wの状態を計測している期間中は、ステージ空間SPsは、真空ポンプ53によって減圧されていてもよい。つまり、ステージ空間SPsの圧力は、ステージ22が試料Wを保持することができるように大気圧よりも低くなるものの、試料Wの変形を抑制することができるほどには低くはならなくてもよい。一方で、ビーム照射装置1は、光学顕微鏡16nが試料Wの状態の計測を完了した後に、真空領域VSPを形成して試料Wに電子ビームEBを照射する。このため、ビーム照射装置1が試料Wの状態を計測している期間中は、真空領域VSPの形成に起因して試料Wが変形する可能性がある。従って、ビーム照射装置1が試料Wの状態を計測している期間中は、ステージ空間SPsは、真空ポンプ54によって減圧される。つまり、ビーム照射装置1が試料Wの状態を計測している期間中のステージ空間SPsの圧力は、試料Wの変形を抑制することができるように、光学顕微鏡16nが試料Wの状態を計測している期間中のステージ空間SPsの圧力よりも低くなる。
走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nを用いた試料Wの状態の計測結果に基づいて、ビーム照射装置1を用いて試料Wの状態を計測してもよい。例えば、走査型電子顕微鏡SEMnは、まず、光学顕微鏡16nを用いて、試料Wのうちの所望領域の状態を計測してもよい。その後、走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nを用いた試料Wの所望領域の状態の計測結果に基づいて、ビーム照射装置1を用いて試料Wの同じ所望領域の状態(或いは、所望領域とは異なる領域の状態)を計測してもよい。この場合、試料Wの所望領域には、ビーム照射装置1を用いた試料Wの状態の計測のために利用可能な所定の指標物が形成されていてもよい。所定の指標物の一例として、例えば、試料Wとビーム照射装置1との位置合わせに用いられるマーク(例えば、フィデュシャルマーク及びアライメントマークの少なくとも一方)があげられる。
或いは、上述したように、試料Wの表面WSuには、微細な凹凸パターンが形成されている。例えば、試料Wが半導体基板である場合には、微細な凹凸パターンの一例として、レジストが塗布された半導体基板が露光装置によって露光され且つ現像装置によって現像された後に半導体基板に残るレジストパターンがあげられる。この場合、例えば、走査型電子顕微鏡SEMnは、まず、光学顕微鏡16nを用いて、試料Wのうちの所望領域に形成された凹凸パターンの状態を計測してもよい。その後、走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nを用いた試料Wの所望領域の状態の計測結果(つまり、所望領域に形成された凹凸パターンの状態の計測結果)に基づいて、ビーム照射装置1を用いて試料Wの同じ所望領域に形成された凹凸パターンの状態を計測してもよい。例えば、走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nの計測結果に基づいて、凹凸パターンの計測に最適な電子ビームEBが照射されるように電子ビームEBの特性を制御した上で、ビーム照射装置1を用いて試料Wの同じ所望領域に形成された凹凸パターンの状態を計測してもよい。
このような第14変形例の走査型電子顕微鏡SEMnであっても、上述した走査型電子顕微鏡SEMが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。加えて、第14変形例の走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nを備えていない比較例の走査型電子顕微鏡と比較して、電子ビームEBを用いて試料Wの状態をより適切に計測することができる。
尚、上述した説明では、走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nを用いて試料Wの状態を計測した後に、ビーム照射装置1を用いて試料Wの状態を計測している。しかしながら、走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nを用いた試料Wの状態の計測と、ビーム照射装置1を用いた試料Wの状態の計測とを並行して行ってもよい。例えば、走査型電子顕微鏡SEMnは、試料Wの所望領域の状態を、光学顕微鏡16n及びビーム照射装置1を用いて同時に計測してもよい。この場合には、試料Wの所望領域に真空領域VSPを介して電子ビームEBが照射されるため、ステージ空間SPsは、真空ポンプ54によって減圧される。或いは、走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nを用いた試料Wの第1領域の状態の計測と、ビーム照射装置1を用いた試料Wの第2領域(但し、第2領域は第1領域とは異なる)の状態の計測とを並行して行ってもよい。この場合には、試料Wの所望領域に真空領域VSPを介して電子ビームEBが照射されるため、ステージ空間SPsは、真空ポンプ54によって減圧される。或いは、ステージ空間SPsが複数の分割空間SPsgに区分けされている場合(図15(a)及び図15(b)に示す第7変形例のステージ22g参照)には、光学顕微鏡16nが状態を計測している試料Wの第1領域に対応する分割空間SPsgが真空ポンプ53によって相対的に低い真空度にまで減圧される一方で、ビーム照射装置1が状態を計測している試料Wの第2領域に対応する分割空間SPsgが真空ポンプ54によって相対的に高い真空度にまで減圧されてもよい。
また、走査型電子顕微鏡SEMnは、光学顕微鏡16nに加えて又は代えて、大気圧環境下で試料Wの状態を計測可能な任意の計測装置を備えていてもよい。任意の計測装置の一例として、回折干渉計があげられる。尚、回折干渉計は、例えば、光源光を分岐して計測光及び参照光を生成し、計測光を試料Wに照射して発生する反射光(或いは、透過光又は散乱光)と参照光とが干渉することで発生する干渉パターンを検出して試料Wの状態を計測する計測装置である。尚、任意の計測装置の他の一例として、スキャトロメータが挙げられる。スキャトロメータは、試料Wに計測光を照射して、試料Wからの散乱光(回折光等)を受光して試料Wの状態を計測する計測装置である。
(3-15)第15変形例
続いて、第15変形例の走査型電子顕微鏡SEMoについて説明する。第15変形例の走査型電子顕微鏡SEMoは、上述した第1変形例の走査型電子顕微鏡SEMaと比較して、ステージ22aに代えてステージ22oを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMoのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMaのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図24を参照しながら、ステージ22oの構造について説明する。
図24に示すように、ステージ22oは、上述したステージ22aと比較して、側壁部材222aに代えて側壁部材222oを備えているという点で異なっている。側壁部材222oは、側壁部材222aと同様に、側壁部材222oの上面222Suが支持部材223の上面223Suよりも下方に位置するという点で同じである。一方で、側壁部材222oは、側壁部材222aと比較して、側壁部材222oの外側面(つまり、外周端)222Soよりも外側(つまり、ステージ22oの中心から離れる側)に試料Wの外側面(つまり、外周端)WSoが位置しているという点で異なっている。つまり、側壁部材222oのサイズ(つまり、ステージ22oのサイズ)は、側壁部材222oの外側面2w22Soよりも外側に試料Wの外側面WSoが位置するように設定されている。その結果、図24に示すように、試料Wは、試料Wが側壁部材222oに対してオーバーハングする(つまり、ステージ22oに対してオーバーハングする)ようにステージ22oによって保持される。試料Wは、試料Wが側壁部材222oに対して張り出すようにステージ22oによって保持される。ステージ22oのその他の構造は、上述したステージ22aのその他の構造と同一であってもよい。
このようなステージ22oを備える第15変形例の走査型電子顕微鏡SEMoであっても、上述した第1変形例の走査型電子顕微鏡SEMaが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。加えて、第15変形例では、試料Wが側壁部材222oに対してオーバーハングすることが許容されるため、ステージ22oは、ステージ22oの外形よりも大きい外形を有する試料Wを保持することができる。つまり、ステージ22oが保持可能な試料Wのサイズに関する制約が緩和される。
(3-16)第16変形例
続いて、第16変形例の走査型電子顕微鏡SEMpについて説明する。第16変形例の走査型電子顕微鏡SEMpは、上述した第15変形例の走査型電子顕微鏡SEMoと比較して、ステージ22oに代えてステージ22pを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMpのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMoのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図25を参照しながら、ステージ22pの構造について説明する。
図25に示すように、ステージ22pは、上述したステージ22oと比較して、底部材221に代えて底部材221pを備えているという点で異なっている。更に、ステージ22pは、上述したステージ22oと比較して、ガード部材224pを備えているという点で異なっている。更に、ステージ22pは、上述したステージ22oと比較して、側壁部材222oの上面222Suに排気口2243pが形成されているという点で異なっている。ステージ22pのその他の構造は、上述したステージ22oのその他の構造と同一であってもよい。
底部材221pは、上述した底部材221と比較して、側壁部材222oよりも外側にまで延びているという点で異なっている。底部材221pのその他の構造は、上述した底部材221のその他の構造と同一であってもよい。
ガード部材224pは、底部材221pの上面221Suのうち側壁部材222oよりも外側の領域に形成されている。ガード部材224pは、ステージ22pに保持されている試料Wよりも外側に形成されている。ガード部材224pの上面224Suは、ステージ22pに保持されている試料Wの表面WSuと同じ高さに位置する。つまり、ガード部材224pの上面224Suは、ステージ22pに保持されている試料Wの表面WSuと同じ平面に位置する。ガード部材224pの側面(例えば、内側面)の一部は、試料Wの側面(例えば、外側面)に対向する。この際、ガード部材224pの側面と試料Wの側面とは接触しない。つまり、ガード部材224pの側面と試料Wの側面との間に、空隙が確保されている。ガード部材224pのその他の構造は、上述した第3変形例のガード部材224cのその他の構造と同一であってもよい。
排気口2243pは、側壁部材222oの上面222Suのうち試料Wの裏面WSlと対向する部分に形成されている。この際、排気口2243pは、側壁部材222oの上面222Suのうち試料Wの裏面WSlと対向する部分の最外周に形成されていてもよい。排気口2243pは、側壁部材222oの上面222Suにおいて連続的に分布するように環状の分布パターンで形成されていてもよい。排気口2243pは、側壁部材222oの上面222Suにおいて規則的な(或いは、ランダムな)配列パターンで配列するように、複数形成されていてもよい。但し、排気口2243pは、任意の配列パターン又は分布パターンで形成されていてもよい。排気口2243pには、配管2253pを介して真空ポンプ54が連結されている。真空ポンプ54は、試料Wと側壁部材222oの上面222Suとの間の外縁空間SPg1を排気して減圧可能である。つまり、第16変形例では、第2変形例と同様に、外縁空間SPg1は、真空ポンプ54によって、ステージ空間SPsを介して間接的に減圧されることに加えて又は代えて、ステージ空間SPsを介することなく直接的に減圧される。排気口2243pのその他の構造は、上述した第2変形例において側壁部材222aに形成される排気口2243bのその他の構造と同一であってもよい。
このようなステージ22pを備える第16変形例の走査型電子顕微鏡SEMpであっても、上述した第15変形例の走査型電子顕微鏡SEMoが享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第16変形例の走査型電子顕微鏡SEMpは、ガード部材224pを備えているため、上述した第3変形例の走査型電子顕微鏡SEMcと同様に、試料Wの外縁部分W_edgeに真空領域VSPを適切に形成することができる。更に、第16変形例では、側壁部材222oの上面222Suに排気口2243pが形成されるため、第2変形例と同様に、試料Wの変形(特に、試料Wの外縁部分W_edgeの変形)が適切に抑制される。
尚、ガード部材224pの上面224Suは、ステージ22pに保持されている試料Wの表面WSuと同じ高さに位置していなくてもよい。例えば、ガード部材224pの上面224Suは、ステージ22pに保持されている試料Wの表面WSuよりも上方に位置していてもよい。ガード部材224pの上面224Suは、ステージ22pに保持されている試料Wの表面WSuよりも下方に位置していてもよい。ガード部材224pの側面と試料Wの側面とが接触していてもよい。ガード部材224pは、底部材221pと一体化されていてもよい。或いは、ガード部材224pは、底部材221pと一体化されていなくてもよい。例えば、ガード部材224pは、底部材221pから脱着可能な部材であってもよい。排気口2243pは、側壁部材222o以外の部材に形成されていてもよい。排気口2243pは、外縁空間SPg1に面する部材に形成されていてもよい。
(3-17)第17変形例
続いて、第17変形例の走査型電子顕微鏡SEMqについて説明する。第17変形例の走査型電子顕微鏡SEMqは、上述した第9変形例の走査型電子顕微鏡SEMiと比較して、ステージ22iに代えてステージ22qを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMqのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMiのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図26を参照しながら、ステージ22qの構造について説明する。
図26に示すように、ステージ22qは、ステージ22iと同様に、複数の静電チャック225iを備えている。一方で、ステージ22qは、ステージ22iと比較して、複数の静電チャック225i(特に、静電チャック225iを構成する電極)がステージ空間SPs内に配置されているという点で異なっている。更に、ステージ22qは、ステージ22iと比較して、底部材221に排気口2246qが形成され、排気口2246qに配管2256qが連結されているという点で異なっている。ステージ22qのその他の構造は、ステージ22iのその他の構造と同一であってもよい。
第17変形例では、第9変形例と同様に、複数の静電チャック225iのうち、真空領域VSPが形成されている特定部分W_vacに対応する少なくとも一つの静電チャック225iが、試料Wの変形を抑制するための相対的に大きな静電力F_elec_Lを発生する一方で、複数の静電チャック225iのうち、特定部分W_vacに対応していない少なくとも一つの静電チャック225iが、試料Wを保持するための相対的に小さな静電力F_elec_Sを発生する。その結果、第17変形例の走査型電子顕微鏡SEMqは、第9変形例の走査型電子顕微鏡SEMiが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
第17変形例では特に、真空領域VSPが形成されている期間中は、真空ポンプ53及び54の少なくとも一方(或いは、ポンプ系5が備えるその他の真空ポンプ)は、排気口2246q及び配管2256qを介してステージ空間SPsを排気して減圧する。つまり、ステージ空間SPsは、大気圧よりも圧力が低い真空空間となる。このため、複数の静電チャック225iは、真空空間であるステージ空間SPsに配置される。その結果、複数の静電チャック225iが大気圧環境に配置されている場合と比較して、複数の静電チャック225iの意図せぬ放電が防止可能となる。
尚、上述した第6変形例では、ステージ22fが複数の静電チャック225iに代えて単一の静電チャック225fを備えているが、この場合においても、静電チャック225fが真空空間であるステージ空間SPsに配置されてもよい。その結果、静電チャック225fの意図せぬ放電が防止可能となる。また、上述した第11変形例においても、真空ポンプ53によって減圧されるステージ区間SPsに静電チャック225kが配置されているため、静電チャック225fの意図せぬ放電が防止可能となる。
複数の静電チャック225iは、ステージ空間SPsとは異なる真空空間に配置されていてもよい。例えば、複数の静電チャック225iは、ステージ空間SPsとは別個にステージ22qの内部に確保され且つ真空ポンプによって減圧可能(つまり、真空空間にすることが可能な)空間に配置されていてもよい。
また、複数の静電チャック225iは、試料Wの下面WSlと接触するように設けられていてもよい。また、複数の静電チャック225iは、ステージ22qの支持部材223における試料Wの下面WSlと接触する部位にそれぞれ設けられていてもよい。
(3-18)第18変形例
続いて、第18変形例の走査型電子顕微鏡SEMrについて説明する。第18変形例の走査型電子顕微鏡SEMrは、上述した第17変形例の走査型電子顕微鏡SEMqと比較して、ステージ22qに代えてステージ22rを備えているという点で異なっている。更に、第18変形例の走査型電子顕微鏡SEMrは、上述した第17変形例の走査型電子顕微鏡SEMqと比較して、気体供給装置55rを備えているという点で異なっている。走査型電子顕微鏡SEMrのその他の構造は、上述した走査型電子顕微鏡SEMqのその他の構造と同一であってもよい。このため、以下では、図27を参照しながら、ステージ22rの構造について説明する。
図27に示すように、ステージ22rは、ステージ22qと同様に、ステージ空間SPsに配置された複数の静電チャック225iを備えている。一方で、ステージ22rは、ステージ22qと比較して、底部材221に給気口2247rが形成され、給気口2247rに配管2257rが連結されているという点で異なっている。ステージ22rのその他の構造は、ステージ22iのその他の構造と同一であってもよい。
第18変形例では、給気口2247rには、配管2257rを介して、気体供給装置55rが連結されている。気体供給装置55rは、給気口2247r及び配管2257rを介して、ステージ空間SPsに気体を供給可能である。気体は、少なくとも湿度が所定湿度よりも低い値となる空気である。所定湿度は、複数の静電チャック225iの意図せぬ放電を防止可能な湿度である。つまり、所定湿度は、静電チャック2225iを構成する電極に電圧が印加された場合において、当該電極からの放電を防止可能な湿度である。このような気体の一例として、CDA(Clean Dry Air:クリーンドライエアー)があげられる。或いは、気体は、少なくとも湿度が所定湿度よりも低い値となる空気以外の気体(例えば、不活性ガス)であってもよい。不活性ガスの一例として、窒素ガス及びアルゴンガスの少なくとも一方があげられる。
その結果、ステージ空間SPsは、複数の静電チャック225iの意図せぬ放電を防止することができる程度に湿度が低い空間となる。このため、複数の静電チャック225iは、複数の静電チャック225iの意図せぬ放電を防止することができる程度に湿度が低い空間であるステージ空間SPsに配置される。その結果、複数の静電チャック225iが大気圧環境(特に、複数の静電チャック225iの意図せぬ放電を防止することができる程度に湿度が低くなっていない空間)に配置されている場合と比較して、複数の静電チャック225iの意図せぬ放電が防止可能となる。
尚、上述した第6変形例では、ステージ22fが複数の静電チャック225iに代えて単一の静電チャック225fを備えているが、この場合においても、静電チャック225fが、複数の静電チャック225iの意図せぬ放電を防止することができる程度に湿度が低い空間であるステージ空間SPsに配置されてもよい。その結果、静電チャック225fの意図せぬ放電が防止可能となる。
複数の静電チャック225fは、ステージ空間SPsとは異なり且つ複数の静電チャック225iの意図せぬ放電を防止することができる程度に湿度が低い空間に配置されていてもよい。例えば、複数の静電チャック225fは、ステージ空間SPsとは別個にステージ22rの内部に確保され且つ複数の静電チャック225iの意図せぬ放電を防止することができる程度に湿度が低い空間に配置されていてもよい。
尚、第18変形例においても、複数の静電チャック225iは、試料Wの下面WSlと接触するように設けられていてもよい。また、複数の静電チャック225iは、ステージ22rの支持部材223における試料Wの下面WSlと接触する部位にそれぞれ設けられていてもよい。
(3-19)その他の変形例
上述した説明では、差動排気系12は、単一の排気機構(具体的には、排気溝124及び配管125)を備える1段式の差動排気系である。しかしながら、差動排気系12は、複数の排気機構を備える多段式の差動排気系であってもよい。この場合、真空形成部材121の射出面121LSには、複数の排気溝124が形成され、真空形成部材121には、複数の排気溝124に夫々連通する複数の配管125が形成される。複数の配管125は、夫々、ポンプ系5が備える複数の真空ポンプ52に接続される。複数の真空ポンプ52の排気能力は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、上述した説明では、ポンプ系5は複数の真空ポンプを備えていたが、ポンプ系5は単一の真空ポンプを備える構成であってもよい。
また、上述した説明では、ビーム照射系1によるビーム照射位置を試料W上で任意の位置にするため、試料Wを保持するステージ22が少なくともXY平面内で移動可能であったが、ビーム照射系1をXY平面内で移動可能な構成としてもよい。
走査型電子顕微鏡SEMに限らず、電子ビームEBを試料W(或いは、その他の任意の物体)に照射する任意の電子ビーム装置が、上述した走査型電子顕微鏡SEMと同様の構造を有していてもよい。つまり、任意の電子ビーム装置が、上述したステージ22を備えていてもよい。任意の電子ビーム装置の一例として、電子ビームEBを用いて電子線レジストが塗布されたウェハを露光することでウェハにパターンを形成する電子ビーム露光装置、及び、電子ビームEBを母材に照射して発生する熱で母材を溶接する電子ビーム溶接装置の少なくとも一方があげられる。
或いは、電子ビーム装置に限らず、電子ビームEBとは異なる任意の荷電粒子ビーム又はエネルギビーム(例えば、イオンビーム)を任意の試料W(或いは、その他の任意の物体)に照射する任意のビーム装置が上述した走査型電子顕微鏡SEMと同様の構造を有していてもよい。つまり、荷電粒子ビーム又はエネルギビームを照射可能なビーム光学系を備える任意のビーム装置が、上述したステージ22を備えていてもよい。或いは、ビーム装置に限らず、電子を含む任意の荷電粒子を、ビームとは異なる照射形態で任意の試料W(或いは、その他の任意の物体)に照射する任意の照射装置が上述した走査型電子顕微鏡SEMと同様の構造を有していてもよい。つまり、荷電粒子を照射(例えば、放出、生成、噴出又は)可能な照射系を備える任意の照射装置が、上述したステージ22を備えていてもよい。任意の照射装置の一例として、プラズマを用いて物体をエッチングするエッチング装置、及び、プラズマを用いて物体に成膜処理を行う成膜装置(例えば、スパッタリング装置等のPVD(Physical Vapor Deposition)装置、及び、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置の少なくとも一方)の少なくとも一方があげられる。
上述の各実施形態(各変形例を含む、以下この段落において同じ)の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくてもよい。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う荷電粒子装置、計測システム、及び、荷電粒子ビームの照射方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。